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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131768
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】手鉤具
(51)【国際特許分類】
   B65G 7/12 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B65G7/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042225
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000170325
【氏名又は名称】鴻池運輸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003937
【氏名又は名称】弁理士法人前川知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩瀧 崇嗣
(57)【要約】
【課題】作業性を向上させた手鉤具を提供することを目的とする。
【解決手段】手鉤具10は、操作部12と、支持部20とを備える。操作部12は、本体部14と、本体部14の一方の端部に設けられる把持部16と、本体部14の他方の端部に設けられる第1係合部18とを含む。支持部20は、本体部14の軸線に沿った方向のうち、把持部16から第1係合部18に向かう方向である第1方向D1に向かって突出する。支持部20は、第2係合部26と、弾性部28とを含む。弾性部28は、第1係合部18と、第2係合部26とのそれぞれを本体部14の軸線に沿って互いに離間する方向に付勢する。第1係合部18と、第2係合部26とのそれぞれを弾性部28の付勢力に抗して、本体部14の軸線に沿って互いに近接させることができる。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、前記本体部の一方の端部に設けられる把持部と、前記本体部の他方の端部に設けられる第1係合部とを含む操作部と、
前記本体部の軸線に沿った方向のうち、前記把持部から前記第1係合部に向かう方向である第1方向に向かって突出する支持部とを備え、
前記支持部は、第2係合部と、弾性部とを含み、
前記弾性部は、前記第1係合部と、前記第2係合部とのそれぞれを前記本体部の軸線に沿って互いに離間する方向に付勢し、
前記第1係合部と、前記第2係合部とのそれぞれを前記弾性部の付勢力に抗して、前記本体部の軸線に沿って互いに近接させることができる、手鉤具。
【請求項2】
前記支持部は、前記第1係合部よりも前記第1方向に向かって突出する、請求項1に記載の手鉤具。
【請求項3】
前記支持部は、前記操作部の前記第2係合部に対する傾きを調整する傾き機構を含む、請求項1に記載の手鉤具。
【請求項4】
前記操作部は、前記支持部の軸線を回転軸とする回転動作が可能である、請求項1に記載の手鉤具。
【請求項5】
前記第1係合部の先端には、爪部が形成されている、請求項1に記載の手鉤具。
【請求項6】
前記第2係合部は、支持面を有する押圧部を含み、
前記支持面の前記第1方向の突出量は、荷役媒体において、前記第2係合部との係脱が可能な第2被係合部から、前記第1係合部と係脱が可能な第1被係合部までの高さに応じて設定され、
前記第1係合部と、前記第2係合部とが鉛直方向で互いに対向し前記押圧部の前記支持面が前記第2被係合部に接している状態において、前記第1係合部の前記爪部を前記第1被係合部と同高さに位置させることができる、請求項5に記載の手鉤具。
【請求項7】
前記第2係合部は、前記支持面に設けられる係止部を含み、
前記第1係合部と、前記第2係合部とが鉛直方向で互いに対向し、前記押圧部の前記支持面が前記第2被係合部に接している状態において、前記係止部は、前記第2被係合部と同高さに位置する、請求項6に記載の手鉤具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、手鉤具に関する。
【背景技術】
【0002】
物流倉庫や工場等の作業現場では、貨物の載せた又は収納した荷役媒体の運搬作業が行われる。荷役媒体を移動させる方法として、例えば、フォークリフトやハンドリフト等の運搬装置により移動させる方法があるが、より簡便な移動方法として棒状の手鉤具を用い牽引する等の方法がある。
【0003】
例として、特許文献1には、シャフト部材、前記シャフト部材の先端に設けられたL字状の掛止部材からなり、荷物を引きずりながら牽引するための手鉤具(牽引具)が開示されている。この手鉤具は、荷役媒体(物品収納容器)の取手に掛止部材を下方から引っ掛け、把持部材を握って引っ張ることにより、荷役媒体を引きずりながら牽引する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-74619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の手鉤具は、荷役媒体の牽引操作を行っている最中は荷役媒体との係合状態から外れ難いが、牽引の力を緩めると荷役媒体の取手との係合状態から脱落しやすく、作業性が悪い。そのため、作業者が牽引作業に集中することが難しい場合があり、より安全に作業可能な手鉤具が求められている。
【0006】
本開示は、上記実情を鑑みてなされたものであり、作業性を向上させた手鉤具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本開示に係る手鉤具は、操作部と、支持部とを備える。前記操作部は、本体部と、前記本体部の一方の端部に設けられる把持部と、前記本体部の他方の端部に設けられる第1係合部とを含む。前記支持部は、前記本体部の軸線に沿った方向のうち、前記把持部から前記第1係合部に向かう方向である第1方向に向かって突出する。前記支持部は、第2係合部と、弾性部とを含む。前記弾性部は、前記第1係合部と、前記第2係合部とのそれぞれを前記本体部の軸線に沿って互いに離間する方向に付勢する。前記第1係合部と、前記第2係合部とのそれぞれを前記弾性部の付勢力に抗して、前記本体部の軸線に沿って互いに近接させることができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、作業性を向上させた手鉤具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の手鉤具の構成の一例を示す概略図である。
図2】本実施形態の手鉤具の構成の一例を示す概略図である。
図3】本実施形態の手鉤具の構成の一例を示す概略図である。
図4】本実施形態の手鉤具の構成の一例を示す概略図である。
図5】本実施形態の手鉤具の使用例を説明するための概略図である。
図6】本実施形態の手鉤具の使用例を説明するための概略図である。
図7】本実施形態の手鉤具の使用例を説明するための概略図である。
図8】本実施形態の手鉤具の使用例を説明するための概略図である。
図9】本実施形態の手鉤具の使用例を説明するための概略図である。
図10】本実施形態の手鉤具の使用例を説明するための概略図である。
図11】本実施形態の手鉤具の位置調整機構を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.本実施形態の手鉤具の構成
図1図4は、本実施形態の手鉤具10の構成の一例を示す概略図である。具体的に、図1は、x方向に沿って手鉤具10を見た場合のその手鉤具10を示す概略図である。図2は、図1に示す手鉤具10をy方向に沿って見た場合のその手鉤具10を示す概略図である。なお、本実施形態の手鉤具10は、図1及び図2に示すような状態が標準状態とされる。
【0011】
本実施形態の手鉤具10は、貨物の載せた又は収納した荷役媒体40(図5参照)の運搬作業に使用することができる。荷役媒体40は、例えば、貨物を載置する載置部42を有する樹脂製又は木製等の材質により形成されたパレットである。
【0012】
手鉤具10の操作部12は、本体部14、把持部16及び第1係合部18を含む。本体部14は、長尺な円柱棒状の部材である。把持部16は、本体部14の一方の端部に設けられ、第1係合部18は、本体部14の他方の端部に設けられる。つまり、本体部14は、把持部16と、第1係合部18とを接続する長尺な円柱棒状の部材である。
【0013】
把持部16は、長尺な円柱棒状の部材である。把持部16は、本体部14の軸線Aに対して中央部において略直角に接続される。したがって、把持部16は、T字状に本体部14と接続される。把持部16は、その把持部16の略中央において接続された本体部14を挟んだ一方の端部及び他方の端部を両手で把持して、手鉤具10の引張操作に使用される。
【0014】
第1係合部18は、図2に示すように、側面視、具体的には、把持部16の延長方向から見るとJ字状のフック形状である。そのため、第1係合部18については、フック部とも言える。
【0015】
第1係合部18は、基部18a、底部18b及び爪部18cを含む。基部18aは本体部14から底部18bに向けて幅方向(y方向)に拡がった板状をなす。底部18bは、基部18aの先端から90度よりもやや鈍角に屈曲して形成される。爪部18cは、底部18bの先端から基部18a側へ略直角に折り曲げるよう形成される。なお、把持部16及び第1係合部18は、本体部14の各端部に設けられる。そのため、軸線Aについては、操作部12の軸線とも言える。
【0016】
手鉤具10の支持部20は、本体部14の軸線Aに沿った方向(A軸方向)のうち、把持部16から第1係合部18に向かう方向である第1方向D1に向かって突出する。また、支持部20は、第1係合部18よりも第1方向D1に向かって突出している。以下、第1方向D1と反対方向を第2方向D2とする。
【0017】
支持部20は、軸体部22、傾き機構24、第2係合部26、弾性部28、離間規制部30及び回転規制機構32を含む。また、手鉤具10は、軸支部34及び連結部36を備える。軸体部22は、長尺な円柱棒状の部材である。
【0018】
操作部12の軸線A及び支持部20の軸線B、具体的には、本体部14の軸線A及び軸体部22の軸線Bは、略平行である。つまり、操作部12及び支持部20は、略平行である。また、具体的には、操作部12の軸線A及び支持部20の軸線Bは、平行である。そのため、操作部12及び支持部20は、平行である。
【0019】
軸支部34は、支持部20の軸体部22を相対的に動作可能に支持しており、支持部20に設けられる。具体的には、軸支部34は、円筒状の部材であり、軸体部22の外径よりも大きい内径を有し、軸体部22が挿通される。軸支部34は、軸体部22の軸線Bに沿った方向(B軸方向)の移動動作を可能に軸体部22を支持している。また、軸支部34は、軸線Bを回転軸とする回転動作を可能に軸体部22を支持している。
【0020】
連結部36は、操作部12と、支持部20の軸支部34とを連結する。具体的に、連結部36は、操作部12と、軸支部34の周面とを例えば溶接により連結する。なお、操作部12は、第1係合部18の爪部18cが、支持部20の軸体部22の径方向に沿って突出するように、軸支部34と連結する。より具体的には、連結部36は、第1係合部18の基部18aにおいて爪部18cとは逆側の面にて、軸支部34を連結する。
【0021】
これらのことから、支持部20は、操作部12に対してB軸方向の移動動作が可能であり、言い換えると操作部12は支持部20に対してA軸方向の移動動作が可能である。例えば、支持部20が固定された状態では、操作部12がA軸方向に摺動可能である。
【0022】
傾き機構24は、軸体部22の第2係合部26に対する傾きを調整する。軸支部34に軸体部22が挿通されることから、傾き機構24については、軸支部34の第2係合部26に対する傾きを調整する。また、操作部12と、その軸支部34とが連結されることから、傾き機構24は、操作部12の第2係合部26に対する傾きを調整する。
【0023】
傾き機構24は、回転軸部24a及び固定部24bを含む。回転軸部24aは、円柱棒状の部材である。軸体部22の第1方向D1側の端部には、B軸方向と直行する方向に延び、かつ、回転軸部24aの外径よりも大きい径を有する貫通孔(図示は省略)が形成されている。また、後述する第2係合部26の軸受部26aにも、同様の貫通孔が形成されている。軸体部22及び軸受部26aの貫通孔は、B軸方向と直行する方向において互いに重なり、各貫通孔には、回転軸部24aが挿通される。
【0024】
言い換えると、回転軸部24aは、B軸方向と直行する方向において、軸体部22の第1方向D1側の端部及び第2係合部26の軸受部26aを貫通する。また、このことから、回転軸部24aの軸線Cは、軸線Aと直行する。固定部24bは、回転軸部24aが、その回転軸部24aに対応する貫通孔から脱落するのを防止する。固定部24bは、回転軸部24aの少なくとも一方の端部に設けられる。具体的には、回転軸部24aと一方の固定部24bはボルトとして構成され、他方の固定部24bはナットとして構成されている。
【0025】
このような傾き機構24によれば、軸体部22と第2係合部26とを軸線Cを回転軸として相対的に回転動作可能とする。そのため、傾き機構24によれば、図3に示すように、操作部12の第2係合部26に対する傾きを調整することができる。
【0026】
第2係合部26は、軸受部26a、押圧部26b及び係止部26dを含む。軸受部26aは、回転軸部24aを回転可能に支持する。押圧部26bは、略板状の部材であって、その押圧部26bの第2方向D2側の面に、軸受部26aが設けられる。
【0027】
また、押圧部26bの第1方向D1側の面(支持面)26cには、係止部26dが設けられる。以下、軸線C、つまり、回転軸に沿って第2係合部26を見て、係止部26dが設けられる方向を第2係合部26の前方、その反対方向を第2係合部26の後方とする。係止部26dは、例えば押圧部26bに取り付けられたボルトであり、押圧部26bから突出している。
【0028】
図1及び図2に示す例では、A軸方向に沿って手鉤具10を見て、第1係合部18が延びている方向(x方向)と、第2係合部26が延びている方向(y方向)との相対的な角度が略直角、具体的には、直角である。そのため、軸線B及び第1係合部18を含む第1平面(xz平面)と、軸線B及び第2係合部26を含む第2平面(yz平面)は、略直行、具体的には、直行する。
【0029】
弾性部28は、第2係合部26と、軸支部34とのそれぞれをB軸方向に沿って互いに離間する方向に付勢する。また、軸支部34と操作部12とは連結されていることから、弾性部28は、第1係合部18と、第2係合部26とのそれぞれをA軸方向に沿って互いに離間する方向に付勢するとも言える。さらに、このことから、第1係合部18と、第2係合部26については、それぞれを弾性部28の付勢力に抗して、A軸方向に沿って互いに近接させることができるとも言える。
【0030】
弾性部28は、第2係合部26と、軸支部34との間に、予めある程度圧縮された状態で設けられる。弾性部28の第1方向D1側の端部は、第2係合部26と接触し、弾性部28の第2方向D2側の端部は、軸支部34と接触する。また、弾性部28の付勢力は、操作部12の重量と、軸支部34の重量と、連結部36の重量との合計の重量では圧縮されない程度の強さで設定される。
【0031】
例えば、第2係合部26が固定されているのであれば、弾性部28は、第1係合部18を第2方向D2に付勢する。また、この場合、第1係合部18は、弾性部28の付勢力に抗して、第1方向D1に移動可能とされる。
【0032】
なお、弾性部28として、圧縮コイルばねのような円筒状の弾性部材が用いられる場合、弾性部28は、軸体部22の外径よりも大きく、かつ、軸支部34の内径よりも大きい内径を有する。また、この場合、弾性部28自体の撓みを防止するため、その弾性部28には、軸体部22が挿通される。なお、弾性部28は、圧縮コイルばねに限られず、エアダンパ等であってもよい。
【0033】
離間規制部30は、第1係合部18と、第2係合部26とのA軸方向の離間動作を規制する。具体的に、離間規制部30は、軸体部22と、第1係合部18とのA軸方向の離間動作を規制することで、第1係合部18と、第2係合部26とのA軸方向の離間動作を規制する。また、離間規制部30については、弾性部28の予めの圧縮の程度を設定するとも言える。
【0034】
離間規制部30は、軸支部34よりも第2方向D2側に位置し、A軸方向において、軸支部34と重なる。したがって、第1係合部18と、第2係合部26とのA軸方向の離間動作は、離間規制部30と、軸支部34とがA軸方向において互いに引っ掛かることで規制される。
【0035】
離間規制部30は、例えば、軸体部22の周面において、軸支部34よりも第2方向D2側に設けられる。図1等に示す例では、軸体部22の周面にねじ穴22aが形成されており、そのねじ穴22aに嵌められるボルト38が離間規制部30としての役割を担う。
【0036】
また、離間規制部30については、B軸方向において、位置が変えられるのが好ましい。このことによれば、第1係合部18と、第2係合部26との離間動作に関し、規制の程度を調整することができる。すなわち、弾性部28の予めの圧縮の程度について、調整できる。
【0037】
また、離間規制部30については、B軸方向において、位置が変えられるのであれば、支持部20、具体的には、第2係合部26の支持面26cの第1方向D1の突出量を調整することができる。突出量は、軸支部34の第1方向D1側の端部から第2係合部26の支持面26cまでの距離である。このことから、A軸方向において、第2係合部26の支持面26cから第1係合部18の爪部18cまでの距離は、第2係合部26の支持面26cの第1方向D1の突出量に基づいて設定される。
【0038】
図1等に示す例では、軸体部22の周面に、ねじ穴22aがA軸方向に沿って複数並べられており、ボルト38の位置の調整が可能とされる。なお、離間規制部30の位置をB軸方向において変化させるための構成は、同様の役割を担うのであれば、特に限定されない。
【0039】
回転規制機構32は、第1係合部18と、第2係合部26とのA軸方向の離間動作が規制されている場合に、軸支部34の回転動作を規制する。軸支部34は、上述したように、操作部12と連結される。そのため、軸支部34の軸線Bを回転軸とする回転動作は、操作部12の軸線Bを回転軸とする回転動作と併せて行われる。したがって、回転規制機構32については、第1係合部18と、第2係合部26とのA軸方向の離間動作が規制されている場合に、操作部12の回転動作を規制するとも言える。
【0040】
回転規制機構32は、被嵌め部32a及び切欠部32bを含む。被嵌め部32aは、A軸方向において、軸支部34よりも第2方向D2側に位置するA軸方向。なお、本実施形態では、図1等に示すように、ボルト38が被嵌め部32aとしての役割を担う。切欠部32bは、軸支部34の第2方向D2側の端部に形成される。
【0041】
第1係合部18と、第2係合部26とのA軸方向の離間動作が規制されている状態、即ち軸支部34が付勢されている状態で、被嵌め部32aが、切欠部32bに嵌合すると軸支部34の回転動作が規制される。これにより、操作部12の支持部20に対する回転動作が規制される。
【0042】
また、このことから、操作部12の回転動作を実施する場合は、第1係合部18と、第2係合部26とをA軸方向に沿って互いに近接させることで、被嵌め部32aが切欠部32bに嵌め込まれている状態を解除する必要がある。
【0043】
例えば、標準状態の手鉤具10、つまり、図1に示す状態の手鉤具10において、操作部12の回転動作の規制が解除され、上記第1平面と、上記第2平面とが重なるように、操作部12の回転動作が実施されると(第1係合部と第2係合部の向きを同方向に合わせると)、手鉤具10は、図4に示す状態となる。
【0044】
2.荷役媒体
本実施形態の荷役媒体40について、図5を参照して説明する。荷役媒体40は、貨物の載置部42を有するパレットである。荷役媒体40は、全体が略正方形厚板状に形成されており、ハンドリフトのフォーク部又はフォークリフトを挿抜可能な差込口44を有する。
【0045】
荷役媒体40は、例えば、上面及び下面が載置部42をなす平型樹脂パレットである。載置部42には縦横に格子状にリブが延び、複数の開口部42aが形成される。例えば、荷役媒体40の差込口44の載置部42側には、荷役媒体40の側面の長尺方向に亘って形成されるリブが、手鉤具10に対する被係合部46となる。
【0046】
以下、鉛直方向において、互いに重なる被係合部46のうち、上方に位置する被係合部46を第1被係合部46aとし、下方に位置する被係合部46を第2被係合部46bとする。また、このことから、第1被係合部46aは、第2被係合部46bは上下対称である。
【0047】
手鉤具10の第1係合部18は、第1被係合部46aに対して係脱可能である。手鉤具10の第2係合部26は、第2被係合部46bに対して係脱可能である。なお、荷役媒体40の差込口44は、4側面のうちの一方向に貫通して設けられていてもよいし、直交する二方向に貫通して設けられてもよい。
【0048】
標準状態の手鉤具10に関し、第2係合部26の支持面26cの第1方向D1の突出量、つまり、第1係合部18の爪部18cの高さは、第2被係合部46bから第1被係合部46aまでの高さに応じて設定される。本実施形態では、第2係合部26の支持面26cの突出量は、第2係合部26の係止部26dから第1係合部18の爪部18cまでの高さが、第2被係合部46bから第1被係合部46aまでの高さ以上になるように構成される。
【0049】
3.手鉤具の使用例
次に、手鉤具10の使用例について、図5図10を参照して説明する。図5図10は、本実施形態の手鉤具10の使用例を説明するための概略図である。なお、手鉤具10の操作は、作業者が把持部16を把持して行う。
【0050】
まず、図5に示すように、標準状態の手鉤具10の第2係合部26の前方を荷役媒体40側へ接近させる。このとき、第1係合部18が差込口44周辺に当たらないよう、上記第1平面と、上記第2平面とが略直行させた状態とする。これにより、第1係合部18の側面が荷役媒体40に接触するまで、手鉤具10を荷役媒体40側へ容易に接近させることができる。
【0051】
次に、図6に示すように、手鉤具10全体を荷役媒体40と反対側へ傾けた状態で、押圧部26bの支持面26cを第2被係合部46bに接触させる。具体的には、支持面26cの中央から前方の間で、その支持面26cを第2被係合部46bに接触させる。また、このとき、支持面26cの後方を地面と接触させることで、第2被係合部46bの抗力により、第2係合部26がさらに傾くのを防止する。さらに、このとき、第2係合部26の係止部26dが差込口44内に挿入される。
【0052】
次に、作業者が把持部16を第1方向D1に向かって押すと、図7に示すように、弾性部28が圧縮される。また、このとき、被嵌め部32aと、切欠部32bとが互いに離間するため、操作部12の回転動作の規制が解除される。さらに、このとき、第1係合部18の爪部18cが第1被係合部46aよりも下方となるように把持部16を第1方向D1に向かって押すことで、操作部12の回転動作に伴う爪部18cの差込口44内への挿入が可能とする。
【0053】
次に、作業者が把持部16を第1方向D1に向かって押したまま、把持部16を回すことで、操作部12の回転動作が実施されると、図8に示すように、第1係合部18の爪部18cが差込口44内に挿入される。このとき、上記第1平面は、上記第2平面と重なる。このように、第2係合部26の位置が定められていたとしても、把持部16を回すだけで、第1係合部18の爪部18cを差込口44内に挿入することができる。
【0054】
次に、図9に示すように、操作部12を荷役媒体40と反対側へ傾けることで、第2係合部26に作用する前方方向の力を下方方向の力よりも大きくし、第1係合部18及び第2係合部26を差込口44内へさらに挿入する。また、操作部12を荷役媒体40と反対側へ傾けるとき、第1係合部18の爪部18cが第1被係合部46aの奥側に掛かる。
【0055】
また、第1係合部18及び第2係合部26が差込口44内へさらに挿入されるとき、押圧部26bと、第2被係合部46bとの接触箇所が第2係合部26の後方に徐々移動する。このことに併せて、押圧部26bの後方がその第2被係合部46bにより上方に徐々に押し上げられる。そのため、第1係合部18及び第2係合部26が差込口44内へさらに挿入されると、第2係合部26が徐々に回転する。さらに、その結果、第2被係合部46bの上面全体が押圧部26bの支持面26cと接触し、第2係合部26の係止部26dが被係合部46の奥側に掛かる。
【0056】
なお、第1係合部18及び第2係合部26の差込口44内への挿入は、第2被係合部46bの奥側に存在する被係合部に第2係合部26の係止部26dが引っ掛かることで停止する。また、第1係合部18及び第2係合部26の差込口44内への挿入は、支持面26cと、第2被係合部46bとの摩擦を利用したり、第2係合部26の一部又は全部が第2被係合部46b間の開口部42aに嵌ることで停止されてもよい。
【0057】
第1係合部18の爪部18cが第1被係合部46aの奥側に掛かり、かつ、第2係合部26の係止部26dが第2被係合部46bの奥側に掛かっている場合、作業者は、把持部16に付与される第1方向D1の力を弱めることで、つまり、弾性部28の弾性力を利用することで、図10に示すように、第1係合部18を第2係合部26から離間させる。なお、作業者は、把持部16を引っ張ることで、第1係合部18を第2係合部26から離間させてもよい。
【0058】
図9及び図10によれば、第1係合部18と、第2係合部26とが鉛直方向で互いに対向し、さらに、押圧部26bの支持面26cが、第2被係合部46bに接している状態において、第1係合部18の爪部18cを第1被係合部46aと同高さに位置させることができる。なお、第1係合部18及び第2係合部26については、具体的に、同方向に向き、かつ、鉛直方向で互いに対向する状態である。また、押圧部26bの支持面26cについては、具体的に、第2被係合部46b上に載置されている状態である。
【0059】
また、図10によれば、第1係合部18と、第2係合部26とが鉛直方向で互いに対向し、押圧部26bの支持面26cが第2被係合部46bに接し、第1係合部18の爪部18cは、第1被係合部46aに掛かる。また、このような状態において、第1係合部18の爪部18cは、第1被係合部46aと同高さに位置する。
【0060】
さらに、図9及び図10によれば、上述した状態において、第2係合部26の係止部26dが第2被係合部46bと同高さに位置する。
【0061】
本実施形態の手鉤具10によれば、作業者は、第1係合部18と、第1被係合部46aとの係合状態が解除されないように、操作部12を上方に常に負荷かけるなどの操作を行わなくても、係合状態を維持させたまま、引っ張り操作を行うだけで荷役媒体40を容易に移動させることができる。
【0062】
また、第1係合部18の爪部18cが外れ難い手鉤具10を構成することで、作業者は手鉤具10を用いて荷役媒体40の引っ張り操作に集中することができる。さらに、支持部20が差込口44内に位置するため、支持部20が差込口44外に位置する場合と比べて、手鉤具10の支持部20が地面と接触したり、隙間に嵌ったりすることに伴う破損を防止することができる。
【0063】
以上のように本実施形態に係る手鉤具10によれば、手鉤具10は、把持部16側を力点部、第2係合部26の支持面26cを支点部、第1係合部18側を作用点部として機能させることができ、支点部と把持部16との間に重心を有するため、作業者が把持部16を操作している状態又は操作を解除した場合のいずれの状態であっても、第1係合部18及び第1被係合部46aの係合状態に加え、第2係合部26及び第2被係合部46bの係合状態を維持させることができる。したがって、手鉤具10は、作業者による作業性及び安全性を向上させることができる。
【0064】
以上、本開示のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものとする。
【0065】
なお、第2係合部26は、係止部26dの位置を前後方向に調整するための位置調整機構26eを含んでもよい。図11は、本実施形態の手鉤具10の位置調整機構26eを説明するための図である。図11に示す例では、押圧部26bの支持面26cに対して、前後方向に並べられる複数のねじ穴26fが位置調整機構26eに該当し、係止部26dを任意のねじ穴26fに嵌めることができる。つまり、図11に示す例では、係止部26dの位置を前後方向に段階的に調整することができる。また、係止部26dの位置は、前後方向に連続的に調整されてもよい。この場合、例えば、押圧部26bの支持面26cに、前後方向に延びるレールが設けられ、そのレール上を係止部26dが移動可能にされる。
【0066】
また、第2係合部26は、係止部26dを複数含んでもよい。この場合、押圧部26bの支持面26cに対して、複数の係止部26dが前後方向に並べられる。
【0067】
さらに、本実施形態では、荷役媒体40がパレットである例について説明したが、荷役媒体40は、貨物を収納可能な箱状に形成された樹脂製、木製又は金属製などの材料により形成されたコンテナボックス等、貨物を載置又は収納可能なその他の荷役媒体であってもよい。
【0068】
さらにまた、第1係合部18、第2係合部26及び被係合部46の形状は、本実施形態で説明した形状に限らず、互いに係脱可能な形状又は位置であれば任意の形状とすることができる。例えば、第1係合部18の形状は、側面視においてL字状、J字状又はU字状等としてもよい。
【0069】
また、手鉤具10に関し、操作部12と、支持部20を同軸状に配置してもよい。この場合、例えば、A軸方向に沿って基部18a内に軸体部22が挿入される。つまり、この場合、基部18aは、円筒状の部材であり、軸体部22の外径よりも大きい内径を有する。また、この場合、弾性部28は、基部18aと、第2係合部26との間に位置する。さらに、この場合、例えば、基部18aには、T字状のスリットが設けられ、軸体部22には、その軸体部22の径方向に延び、かつ、そのスリットに挿通される突出部が設けられる。つまり、突出部及び上記T字状のスリットのうちのA軸方向のスリットは、離間規制部30としての役割を担う。また、突出部及び上記T字状のスリットは、離間規制部30としての役割に加え、回転規制機構32としての役割も担う。なお、基部18a内に軸体部22が挿入される場合、軸支部34は、省略されてもよい。
【0070】
本開示は、例えば以下の態様を含む。
[1]
本体部と、前記本体部の一方の端部に設けられる把持部と、前記本体部の他方の端部に設けられる第1係合部とを含む操作部と、
前記本体部の軸線に沿った方向のうち、前記把持部から前記第1係合部に向かう方向である第1方向に向かって突出する支持部とを備え、
前記支持部は、第2係合部と、弾性部とを含み、
前記弾性部は、前記第1係合部と、前記第2係合部とのそれぞれを前記本体部の軸線に沿って互いに離間する方向に付勢し、
前記第1係合部と、前記第2係合部とのそれぞれを前記弾性部の付勢力に抗して、前記本体部の軸線に沿って互いに近接させることができる、手鉤具。
[2]
前記支持部は、前記第1係合部よりも前記第1方向に向かって突出する、[1]に記載の手鉤具。
[3]
前記支持部は、前記操作部の前記第2係合部に対する傾きを調整する傾き機構を含む、[1]又は[2]のいずれか一項に記載の手鉤具。
[4]
前記操作部は、前記支持部の軸線を回転軸とする回転動作が可能である、[1]から[3]のいずれか一項に記載の手鉤具。
[5]
前記第1係合部の先端には、爪部が形成されている、[1]から[4]のいずれか一項に記載の手鉤具。
[6]
前記第2係合部は、支持面を有する押圧部を含み、
前記支持面の前記第1方向の突出量は、荷役媒体において、前記第2係合部との係脱が可能な第2被係合部から、前記第1係合部と係脱が可能な第1被係合部までの高さに応じて設定され、
前記第1係合部と、前記第2係合部とが鉛直方向で互いに対向し前記押圧部の前記支持面が前記第2被係合部に接している状態において、前記第1係合部の前記爪部を前記第1被係合部と同高さに位置させることができる、[5]に記載の手鉤具。
[7]
前記第2係合部は、前記支持面に設けられる係止部を含み、
前記第1係合部と、前記第2係合部とが鉛直方向で互いに対向し、前記押圧部の前記支持面が前記第2被係合部に接している状態において、前記係止部は、前記第2被係合部と同高さに位置する、[6]に記載の手鉤具。
【符号の説明】
【0071】
10 手鉤具
12 操作部
14 本体部
16 把持部
18 第1係合部
18c 爪部
20 支持部
24 傾き機構
26 第2係合部
26b 押圧部
26c 支持面
26d 係止部
28 弾性部
34 軸支部
36 連結部
40 荷役媒体
46 被係合部
46a 第1被係合部
46b 第2被係合部
A 軸線
B 軸線
C 軸線
D1 第1方向
D2 第2方向

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11