(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131769
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20240920BHJP
G01Q 60/40 20100101ALI20240920BHJP
G01N 27/00 20060101ALI20240920BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01L21/66 N
G01Q60/40
G01N27/00 Z
H01L21/265 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042226
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西出 拓矢
【テーマコード(参考)】
2G060
4M106
【Fターム(参考)】
2G060AA08
2G060AE20
2G060AF07
2G060AG11
2G060KA10
4M106AA02
4M106BA14
4M106CA51
4M106CB02
4M106DH16
(57)【要約】
【課題】 半導体装置を破壊することなく、半導体装置の内部のドーパント濃度分布を検査する。
【解決手段】 半導体装置の製造方法であって、半導体ウエハの素子領域(20)にドーパントをイオン注入することによって第1拡散領域(26)を形成する工程と、前記半導体ウエハのダイシング領域に前記第1拡散領域に対するイオン注入と同じ条件でドーパントをイオン注入することによって第2拡散領域(56)を形成する工程と、切断面に前記第2拡散領域が露出するように前記半導体ウエハをダイシングする工程と、前記切断面にプローブ(80)を接触させて前記第2拡散領域内のドーパント濃度分布を測定する工程、を有する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置の製造方法であって、
半導体ウエハの素子領域(20)にドーパントをイオン注入することによって第1拡散領域(26)を形成する工程と、
前記半導体ウエハのダイシング領域に前記第1拡散領域に対するイオン注入と同じ条件でドーパントをイオン注入することによって第2拡散領域(56)を形成する工程と、
切断面に前記第2拡散領域が露出するように前記半導体ウエハをダイシングする工程と、
前記切断面にプローブ(80)を接触させて前記第2拡散領域内のドーパント濃度分布を測定する工程、
を有する製造方法。
【請求項2】
前記第1拡散領域に対するイオン注入と前記第2拡散領域に対するイオン注入を同時に実行する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第1拡散領域に対するイオン注入では、第1開口部(70a)が設けられたマスクを介して前記素子領域にドーパントをイオン注入し、
前記第2拡散領域に対するイオン注入では、第2開口部(70b)が設けられたマスクを介して前記ダイシング領域にドーパントをイオン注入し、
前記第1開口部の幅が前記第2開口部の幅と実質的に等しい、
請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記半導体ウエハをダイシングする前記工程では、へき開によってダイシングを行う請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記半導体ウエハの表面に、pn接合を介さずに前記第2拡散領域に電気的に接続された電極(46)を形成する工程をさらに有し、
前記第2拡散領域内のドーパント濃度分布を測定する前記工程では、前記プローブと前記電極の間に電流を流す、
請求項1または2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、半導体装置の製造方法に関する。
【0002】
特許文献1には、走査型プローブ顕微鏡によって半導体装置の内部のドーパント濃度分布を測定する技術が開示されている。走査型プローブ顕微鏡としては、例えば、走査型容量顕微鏡(すなわち、SCM:Scanning Capacitance Microscope)や走査型拡がり抵抗顕微鏡(すなわち、SSRM:Scanning Spreading Resistance Microscope)が知られている。特許文献1の測定方法では、半導体装置を切断し、切断面に走査型プローブ顕微鏡のプローブを接触させてその切断面におけるドーパント濃度分布を測定する。これにより、半導体装置の内部のドーパント濃度分布を測定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、半導体装置を切断して半導体装置の内部のドーパント濃度分布を測定する。このため、半導体装置を非破壊で検査することができない。本明細書では、半導体装置を破壊することなく、半導体装置の内部のドーパント濃度分布を検査する技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する半導体装置の製造方法は、半導体ウエハの素子領域にドーパントをイオン注入することによって第1拡散領域を形成する工程と、前記半導体ウエハのダイシング領域に前記第1拡散領域に対するイオン注入と同じ条件でドーパントをイオン注入することによって第2拡散領域を形成する工程と、切断面に前記第2拡散領域が露出するように前記半導体ウエハをダイシングする工程と、前記切断面にプローブを接触させて前記第2拡散領域内のドーパント濃度分布を測定する工程、を有する。
【0006】
なお、上記の「条件」には、イオン注入の加速電圧、イオン注入するイオン種、イオン注入時のドーズ量、イオン注入時のチルト角、イオン注入時のツイスト角の少なくとも1つが含まれる。
【0007】
この製造方法では、半導体ウエハのダイシング領域に、第1拡散領域に対するイオン注入と同じ条件でドーパントをイオン注入することによって第2拡散領域を形成する。したがって、第2拡散領域では、第1拡散領域に対応する態様でドーパントが分布する。その後、切断面に第2拡散領域が露出するように半導体ウエハをダイシングし、切断面にプローブを接触させて第2拡散領域内のドーパント濃度分布を測定する。第2拡散領域には第1拡散領域に対応する態様でドーパントが分布しているので、第2拡散領域のドーパント濃度分布を測定することで、第1拡散領域(すなわち、半導体装置の内部)のドーパント濃度分布を検査することができる。このように、この製造方法によれば、半導体装置を破壊することなく、半導体装置の内部のドーパント濃度分布を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書が開示する一例の製造方法では、前記第1拡散領域に対するイオン注入と前記第2拡散領域に対するイオン注入を同時に実行してもよい。
【0010】
この構成によれば、第1拡散領域に対するイオン注入と第2拡散領域に対するイオン注入を同じ条件で実施することができる。
【0011】
本明細書が開示する一例の製造方法においては、前記第1拡散領域に対するイオン注入では第1開口部が設けられたマスクを介して前記素子領域にドーパントをイオン注入し、前記第2拡散領域に対するイオン注入では第2開口部が設けられたマスクを介して前記ダイシング領域にドーパントをイオン注入してもよい。この場合、前記第1開口部の幅が前記第2開口部の幅と実質的に等しくてもよい。
【0012】
なお、第1開口部の幅が第2開口部の幅と実質的に等しいとは、第1開口部の幅が第2開口部の幅に対して開口部形成時の誤差範囲内の値であることを意味する。
【0013】
この構成によれば、第2拡散領域のドーパント濃度分布が第1拡散領域のドーパント濃度分布により近くなるので、第1拡散領域のドーパント濃度分布をより正確に検査できる。
【0014】
本明細書が開示する一例の製造方法においては、前記半導体ウエハをダイシングする前記工程では、へき開によってダイシングを行ってもよい。
【0015】
この構成によれば、切断面において結晶が破壊され難いので、好適に第2拡散領域のドーパント濃度分布を測定できる。
【0016】
本明細書が開示する一例の製造方法は、pn接合を介さずに前記第2拡散領域に電気的に接続された電極(46)を形成する工程をさらに有していてもよい。前記第2拡散領域内のドーパント濃度分布を測定する前記工程では、前記プローブと前記電極の間に電流を流してもよい。
【0017】
この構成によれば、第2拡散領域のドーパント濃度分布を好適に測定できる。
【0018】
図1は、実施形態の製造方法で使用する半導体ウエハの上面の拡大図を示している。半導体ウエハは、Si、SiC、または、GaN等の半導体により構成されている。加工前の半導体ウエハの全体は、
図2等に示すn型のドレイン領域22により構成されている。
図1に示すように、半導体ウエハの上面に、複数の素子領域20、ダイシング領域50及びTEG領域52が設定されている。なお、素子領域20、ダイシング領域50及びTEG領域52は、仮想的に設定される領域であり、加工前の段階では視認することができない領域である。素子領域20は、後述する素子形成工程において半導体素子が形成される領域である。半導体ウエハの上面には、複数の素子領域20がマトリクス状に設定されている。ダイシング領域50は、各素子領域20の間に設けられた間隔である。ダイシング領域50は、後述するダイシング工程において切断される領域である。TEG領域52は、ダイシング領域50内に設定されている。TEG領域52は、後述する素子形成工程においてTEG(Test Element Group)が形成される領域である。
【0019】
図2~8は、製造工程中における半導体ウエハの断面図を示している。
図2~8の各図において、左側の図(a)は
図1のA-A線の位置における素子領域20の断面であり、右側の図(b)は
図1のB-B線の位置におけるTEG領域52の断面である。実施形態の製造方法では、素子形成工程、ダイシング工程及び検査工程を順に実施する。
【0020】
(素子形成工程)
まず、
図2に示すように、ドレイン領域22上にn型の第1ドリフト領域24をエピタキシャル成長により形成する。第1ドリフト領域24は、ドレイン領域22よりもn型不純物濃度が低いn型領域である。第1ドリフト領域24は、素子領域20とダイシング領域50の全域に形成される。
【0021】
次に、
図3に示すように、第1ドリフト領域24上にマスク層70を形成する。マスク層70は、素子領域20とダイシング領域50の全域に形成される。次に、マスク層70に開口部70a、70bを形成する。ここでは、素子領域20に複数の開口部70aを形成し、TEG領域52に複数の開口部70bを形成する。なお、図示していないが、素子領域20には、広い範囲に多数の開口部70aが形成される。TEG領域52に形成される開口部70bの数は、素子領域20に形成される開口部70aの数よりも少ない。開口部70a、70bは、
図3の紙面に対して垂直な方向に長く伸びている。開口部70aの長手方向の寸法は、開口部70bの長手方向の寸法よりも大きい。開口部70aの幅W70aは、開口部70bの幅W70bと等しい。
【0022】
次に、
図4に示すように、マスク層70を介して上側から第1ドリフト領域24にp型不純物を注入する。これにより、素子領域20に複数のp型領域26を形成し、TEG領域52に複数のp型領域56を形成する。一度のイオン注入で素子領域20とTEG領域52に同時にp型不純物を注入するので、素子領域20(すなわち、p型領域26)とTEG領域52(すなわち、p型領域56)に同じ条件でp型不純物が注入される。すなわち、p型領域26に対するイオン注入とp型領域56に対するイオン注入とで、加速電圧が等しく、注入されるイオン種が等しく、ドーズ量が等しく、チルト角が等しく、ツイスト角が等しい。また、上述したように、開口部70aの幅W70aと開口部70bの幅W70bは等しい。したがって、
図4に示す断面において、p型領域26の形状とp型領域56の形状がほぼ等しくなる。また、
図4に示す断面において、p型領域26内のp型不純物濃度分布とp型領域56内のp型不純物濃度分布がほぼ等しくなる。p型領域26、56の形成後に、マスク層70を除去する。
【0023】
次に、
図5に示すように、半導体ウエハ上にn型の第2ドリフト領域30をエピタキシャル成長により形成する。第2ドリフト領域30は、第1ドリフト領域24と略等しいn型不純物濃度を有するn型領域である。第2ドリフト領域30は、素子領域20とダイシング領域50の全域に形成される。
【0024】
次に、
図6に示すように、第2ドリフト領域30上にマスク層72を形成する。マスク層72は、素子領域20とダイシング領域50の全域に形成される。次に、マスク層72に開口部72a、72bを形成する。ここでは、素子領域20に複数の開口部72aを形成し、TEG領域52に複数の開口部72bを形成する。ここでは、各p型領域26の上部に開口部72aを形成し、各p型領域56の上部に開口部72bを形成する。開口部72aの幅W72aは、開口部72bの幅W72bと等しい。幅W72a、W72bは、幅W70a、W70bよりも狭い。
【0025】
次に、
図7に示すように、マスク層72を介して上側から第2ドリフト領域30にp型不純物を注入する。これにより、素子領域20に複数のp型領域27を形成し、TEG領域52に複数のp型領域57を形成する。各p型領域26の上部に、p型領域26と繋がるようにp型領域27が形成される。以下では、p型領域26、27をまとめてp型領域28という。各p型領域56の上部に、p型領域56と繋がるようにp型領域57が形成される。以下では、p型領域56、57をまとめてp型領域58という。一度のイオン注入で素子領域20とTEG領域52に同時にp型不純物を注入するので、素子領域20(すなわち、p型領域27)とTEG領域52(すなわち、p型領域57)に同じ条件でp型不純物が注入される。すなわち、p型領域27に対するイオン注入とp型領域57に対するイオン注入とで、加速電圧が等しく、注入されるイオン種が等しく、ドーズ量が等しく、チルト角が等しく、ツイスト角が等しい。また、上述したように、開口部72aの幅W72aと開口部72bの幅W72bは等しい。したがって、
図7に示す断面において、p型領域27の形状とp型領域57の形状がほぼ等しくなる。また、
図7に示す断面において、p型領域27内のp型不純物濃度分布とp型領域57内のp型不純物濃度分布がほぼ等しくなる。p型領域27、57の形成後に、マスク層72を除去する。
【0026】
次に、
図8に示すように、素子領域20内において、半導体ウエハ上(すなわち、第2ドリフト領域30とp型領域27の上部)に半導体層をさらに積層し、積層した半導体層内にp型のボディ領域32、p型のコンタクト領域34及びn型のソース領域36を形成する。また、素子領域20内において、半導体ウエハ上にゲート絶縁膜38、ゲート電極40、層間絶縁膜42、ソース電極44を形成する。
図8に示すように、TEG領域52を含むダイシング領域50内には、ボディ領域32、コンタクト領域34、ソース領域36、ゲート絶縁膜38、ゲート電極40、層間絶縁膜42及びソース電極44は形成されない。次に、
図8に示すように、TEG領域52内に、第2ドリフト領域30の上面とp型領域57の上面に接する検査電極46を形成する。検査電極46は、ソース電極44と繋がっていてもよいし、ソース電極44から分離されていてもよい。なお、検査電極46は、ソース電極44と同時に形成されてもよい。次に、半導体ウエハの下面に、ドレイン領域22に接するドレイン電極48を形成する。ドレイン電極48は、半導体ウエハの下面全域に形成される。
【0027】
図8のように加工を行うことで、素子領域20内にMOSFET(metal-oxide-semiconductor field effect transistor)が形成される。ドリフト領域24、30内には、間隔を空けて配置された複数のp型領域28によってスーパージャンクション構造が設けられている。したがって、MOSFETは高い耐圧を有している。また、TEG領域52内には、p型領域28とほぼ同じ断面形状及びp型不純物濃度分布を有するp型領域58が形成される。半導体装置の使用時にTEG領域52には電流が流れないので、TEG領域52はMOSFETの特性にほとんど影響を与えない。
【0028】
(ダイシング工程)
次に、半導体ウエハをダイシングすることによって、半導体ウエハを複数のチップ(すなわち、半導体装置)に分割する。ここでは、
図1に示す各ダイシング領域50の中心線50cに沿って半導体ウエハを分割する。
図9、10は、ダイシング工程の詳細を示している。ダイシング工程では、まず、
図9に示すように、半導体ウエハの上面を吸着テーブル94で支持した状態で、半導体ウエハの下面にローラブレード90を押し当てる。すると、半導体ウエハの下面のうちのローラブレード90によって加圧された箇所に半導体ウエハの厚さ方向に沿ってクラック92が形成される。ここでは、ローラブレード90をダイシング領域50の中心線50cに沿って移動させることで、中心線50cに沿ってクラック92を形成する。次に、
図10に示すように、半導体ウエハの下面のうちのダイシング領域50の中心と重ならない範囲を支持板96で支持する。次に、支持板96で半導体ウエハを支持した状態で、半導体ウエハの上面に中心線50cに沿って分離板98の先端部を押し当てる。分離板98を半導体ウエハの上面に押し当てると、半導体ウエハがクラック92に沿って(すなわち、
図1の中心線50cに沿って)へき開する。これによって、半導体ウエハが複数の半導体装置に分割される。半導体ウエハを分割すると、切断面に
図8(b)に示すTEG領域52のp型領域58の断面が露出する。
【0029】
(検査工程)
次に、半導体装置の検査工程を実施する。検査工程では、SCMまたはSRRMによってp型領域58内のp型不純物濃度分布を測定する。上述したように、各半導体装置の側面(すなわち、ダイシング工程における切断面)には、p型領域58が露出している。検査工程では、
図11に示すように、半導体装置の側面に露出しているp型領域58に検査装置のプローブ80を接触させる。また、検査電極46に検査装置の導電性ステージ82を接触させる。そして、プローブ80と検査電極46の間に電流を流す。このように電流を流しながらプローブ80でp型領域58の表面を走査することで、p型領域58内のp型不純物濃度分布を測定する。p型領域58はpn接合を介さずに検査電極46に電気的に接続されているので、検査工程ではpn接合の影響を受けることなくp型領域58内のp型不純物濃度分布を正確に測定できる。p型領域58内のp型不純物濃度分布は、p型領域28内のp型不純物濃度分布と略等しい。したがって、検査工程では、p型領域28内のp型不純物濃度分布を把握することができる。したがって、この方法によれば、半導体装置を破壊することなく、p型領域28内のp型不純物濃度分布を検査することができる。
【0030】
以上の通り、この製造方法では、半導体装置を破壊することなくp型領域28内のp型不純物濃度分布を検査できる。これにより、検査済みの半導体装置として、信頼性が高い半導体装置を製造することができる。
【0031】
なお、上述した実施形態では、p型領域26に対するイオン注入とp型領域56に対するイオン注入を同時に行ったが、p型領域26に対するイオン注入とp型領域56に対するイオン注入を別工程で実施してもよい。これらを別工程で実施する場合でも、p型領域26に対するイオン注入とp型領域56に対するイオン注入を同じ条件で実施すれば、p型領域56内にp型領域26内とほぼ同じp型不純物濃度分布を形成できる。同様に、p型領域27に対するイオン注入とp型領域57に対するイオン注入を別工程で実施してもよい。
【0032】
また、上述した実施形態では、イオン注入により形成されたp型領域28を検査したが、イオン注入により形成されたn型領域を本明細書に開示の技術によって検査してもよい。この場合、素子領域とTEG領域にイオン注入によってn型領域を形成し、TEG領域内のn型領域内のn型不純物濃度分布を測定することで素子領域内のn型領域を検査することができる。この場合、TEG領域内のn型領域を検査電極に対してpn接合を介さずに電気的に接続することで、TEG領域内のn型領域のn型不純物濃度を正確に検出できる。
【0033】
また、上述した実施形態では、ローラブレード90を用いて半導体ウエハをへき開したが、他の方法によって半導体ウエハをへき開してもよい。また、ダイシングソー等を使用した切削加工により半導体ウエハをダイシングしてもよい。ただし、この場合には、切削後の切断面に結晶性が破壊されたダメージ層が形成される。したがって、ダメージ層をエッチング等によって除去する処理が必要となる場合がある。これに対し、へき開によりダイシングを行う場合には、結晶性が高い切断面を形成することができる。
【0034】
以下に、本明細書に開示の技術の構成を列記する。
(構成1)
半導体装置の製造方法であって、
半導体ウエハの素子領域にドーパントをイオン注入することによって第1拡散領域を形成する工程と、
前記半導体ウエハのダイシング領域に前記第1拡散領域に対するイオン注入と同じ条件でドーパントをイオン注入することによって第2拡散領域を形成する工程と、
切断面に前記第2拡散領域が露出するように前記半導体ウエハをダイシングする工程と、
前記切断面にプローブを接触させて前記第2拡散領域内のドーパント濃度分布を測定する工程、
を有する製造方法。
(構成2)
前記第1拡散領域に対するイオン注入と前記第2拡散領域に対するイオン注入を同時に実行する、構成1に記載の製造方法。
(構成3)
前記第1拡散領域に対するイオン注入では、第1開口部が設けられたマスクを介して前記素子領域にドーパントを注入し、
前記第2拡散領域に対するイオン注入では、第2開口部が設けられたマスクを介して前記ダイシング領域にドーパントを注入し、
前記第1開口部の幅が前記第2開口部の幅と実質的に等しい、
構成1または2に記載の製造方法。
(構成4)
前記半導体ウエハをダイシングする前記工程では、へき開によってダイシングを行う構成1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
(構成5)
前記半導体ウエハの表面に電極を形成する工程をさらに有し、
前記第2拡散領域が、前記電極に対してpn接合を介さずに電気的に接続されており、
前記第2拡散領域内のドーパント濃度分布を測定する前記工程では、前記プローブと前記電極の間に電流を流す、
構成1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【0035】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0036】
20:素子領域、24:第1ドリフト領域、28:p型領域、30:第2ドリフト領域、46:検査電極、50:ダイシング領域、52:TEG領域、58:p型領域、80:プローブ