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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131778
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】タッチスイッチ
(51)【国際特許分類】
   H01H 36/00 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H01H36/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042237
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】土肥 泉
(72)【発明者】
【氏名】福島 一幸
(72)【発明者】
【氏名】山口 翔也
【テーマコード(参考)】
5G046
【Fターム(参考)】
5G046AA03
5G046AB02
5G046AC24
5G046AE05
(57)【要約】
【課題】電磁ノイズの照射による操作の誤判断を防止できるタッチスイッチを提供する。
【解決手段】タッチスイッチ1は、面状の操作部51と、操作部51への人体の接近を静電容量の変化によって検出可能な第1センサ部66A及び第2センサ部66Bと、操作部51が操作されたと判断する判断部35とを備える。第2センサ部66Bは、操作部51が延びる方向の長さL2が第1センサ部66Aの長さL1よりも長く、判断部35は、第1センサ部66Aの静電容量が変化した第1時点Pt1と第2センサ部66Bの静電容量が変化した第2時点Pt2との時間差Δt1が、定められた判定時間Jt1以上のとき、操作部51が操作されたと判断する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面状の操作部と、
前記操作部への人体の接近を静電容量の変化によって検出可能な第1センサ部と、
前記操作部への人体の接近を静電容量の変化によって検出可能で、前記操作部が延びる方向の長さが前記第1センサ部の前記操作部が延びる方向の長さよりも長い第2センサ部と、
前記第1センサ部の静電容量が変化した第1時点と前記第2センサ部の静電容量が変化した第2時点との時間差が、定められた判定時間以上のとき、前記操作部が操作されたと判断する判断部と
を備える、タッチスイッチ。
【請求項2】
少なくとも前記第1センサ部は、前記操作部又は前記操作部の背後の対向位置に配置されている、請求項1に記載のタッチスイッチ。
【請求項3】
前記第2センサ部は、前記第1センサ部を取り囲む有端状の電極によって構成されている、請求項2に記載のタッチスイッチ。
【請求項4】
前記操作部には、切り換える機能を示すマークが設けられ、
前記第1センサ部と前記第2センサ部は、前記マークと対向する位置に配置されている、請求項3に記載のタッチスイッチ。
【請求項5】
前記第1センサ部は平面状の導電部を備える、請求項4に記載のタッチスイッチ。
【請求項6】
前記操作部が延びる方向の長さが前記第2センサ部の前記長さよりも長い第3センサ部を備え、
前記第3センサ部は、前記第1センサ部及び前記第2センサ部を取り囲む有端状の電極によって構成されている、請求項3から5のいずれか1項に記載のタッチスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車室内の天井に配置される室内灯に用いられるタッチスイッチが開示されている。このタッチスイッチは静電容量式のセンサを備え、制御部が、乗員のタッチ操作による静電容量の変化を検出すると、室内灯の点灯状態と消灯状態を切り換える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-84437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のタッチスイッチでは、例えばラジオ電波又は携帯電話の電波等の電磁ノイズの照射によって誤作動し、乗員が操作したと誤判断することがある。この誤判断は、電磁ノイズによりセンサ電極にノイズ電圧が誘起されることによって静電容量の検出に誤差が発生し、この誤差によって生じていると推測される。このような電磁ノイズ照射時の誤判断について、特許文献1では何ら考慮されていない。
【0005】
本発明は、電磁ノイズの照射による操作の誤判断を防止できるタッチスイッチを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、面状の操作部と、前記操作部への人体の接近を静電容量の変化によって検出可能な第1センサ部と、前記操作部への人体の接近を静電容量の変化によって検出可能で、前記操作部が延びる方向の長さが前記第1センサ部の前記操作部が延びる方向の長さよりも長い第2センサ部と、前記第1センサ部の静電容量が変化した第1時点と前記第2センサ部の静電容量が変化した第2時点との時間差が、定められた判定時間以上のとき、前記操作部が操作されたと判断する判断部とを備える、タッチスイッチを提供する。
【0007】
第2センサ部の操作部が延びる方向の長さは、第1センサ部の操作部が延びる方向の長さよりも長い。これにより、面状の操作部に対して交差する方向における検出範囲は、第2センサ部の方が第1センサ部よりも広くなる。また、電磁ノイズが操作部に近づく速度は、操作目的で乗員が指を操作部に近づける速度よりも遙かに早い。よって、乗員が指で操作部を操作したときには、第2センサ部の静電容量が変化した後、所定の時間差を経て第1センサ部の静電容量が変化する。一方で、電磁ノイズが照射された場合、第2センサ部の静電容量変化と第1センサ部の静電容量変化に時間差は殆どない。
【0008】
判断部は、第1センサ部の静電容量が変化した第1時点と第2センサ部の静電容量が変化した第2時点との時間差が、定められた判定時間以上のとき、操作部が操作されたと判断する。つまり、第1時点と第2時点の時間差が判定時間未満のときには、指による操作部の操作ではなく、電磁ノイズによる誤作動と判断する。よって、電磁ノイズの照射による操作の誤判断を防止できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のタッチスイッチでは、電磁ノイズの照射による操作の誤判断を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るタッチスイッチを用いた室内灯の底面図。
図2図1の室内灯の分解斜視図。
図3図2のセンサユニットを示す正面図。
図4図3のIV-IV線断面図。
図5】1つのセンサによって検出した人体と電磁ノイズを示すグラフ。
図6図3の検出部によって人体を検出したときのグラフ。
図7図3の検出部に電磁ノイズが照射されたときのグラフ。
図8】制御部による切換処理を示すフローチャート。
図9】センサユニットの検出部の変形例を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0012】
図1及び図2を参照すると、本発明の実施形態に係るタッチスイッチ1は、車室内の天井に配置される室内灯5に用いられている。まず、この室内灯5の概要を説明する。
【0013】
添付図面におけるX方向、Y方向、及びZ方向は、それぞれ車長方向、車幅方向、及び車高方向である。そのうち、X方向の矢印が示す向きが前側で、矢印とは逆向きが後側である。Z方向の矢印が示す向きが上側(車外側)で、矢印とは逆向きが下側(車内側)である。
【0014】
室内灯5は、外装パネル10、カバー20、回路基板30、フレーム40、操作パネル50、及びセンサユニット60を備え、車室内の天井に配置されている。そのうち、操作パネル50が備える操作部51、センサユニット60が備える検出部61、及び回路基板30が備える制御部35によって、本実施形態のタッチスイッチ1が構成されている。
【0015】
外装パネル10とカバー20は、互いに組み付けられて室内灯5の外郭を構成する。回路基板30は、外装パネル10とカバー20の間に配置されている。フレーム40と操作パネル50は、外装パネル10の開口部11に組み付けられている。センサユニット60は、操作パネル50とフレーム40との間に配置されている。
【0016】
外装パネル10は、遮光性を有する色の樹脂によって成形され、車両への室内灯5の取り付けによって車内側に露出する。外装パネル10には、フレーム40と操作パネル50を組み付けるための開口部11が設けられている。また、外装パネル10には、車室内を照明するために、矩形状の貫通部12と円形状で一対の貫通部13とが設けられている。
【0017】
カバー20は、遮光性を有する色の樹脂によって成形されている。このカバー20は、外装パネル10の上側に組み付けられ、車両への室内灯5の取り付けによって天井に埋め込まれる。カバー20には、車両のバッテリとECU(Electronic Control Unit)に回路基板30を接続するケーブルの挿通口(図示せず)が設けられている。
【0018】
回路基板30は、外装パネル10に対向する下面側に、センサユニット60を接続するためのコネクタ31と、3種のLED32~34とを備える。LED32は、外装パネル10の貫通部12,13を通して車室内を照明するために設けられている。LED33は、フレーム40が備える貫通部41とセンサユニット60を透して、操作パネル50が備えるシンボルマーク52を点灯させるために設けられている。LED34は、フレーム40が備える貫通部42を透して、操作パネル50が備えるマーク54を点灯させるために設けられている。
【0019】
回路基板30は、カバー20に対向する上面側に、バッテリとECUに接続するためのコネクタ(図示せず)、LED32~34に電力を供給するための電源回路(図示せず)、及び制御部35(図3参照)を備える。この制御部35は、操作部51が操作されたか否かを判断する判断部としての機能を兼ね備える。つまり、本実施形態の制御部35が本発明の判断部である。なお、制御部35については後に詳述する。
【0020】
フレーム40は、車外側の端部が回路基板30に当接するように外装パネル10の開口部11内に配置され、操作パネル50を支持する。フレーム40には、LED33が発した光を通す複数の貫通部41と、LED34が発した光を通す複数の貫通部42とが設けられている。それぞれ複数の貫通部41,42は、操作パネル50が備えるマーク52,54にそれぞれ個別に対応するように設けられている。また、フレーム40には、センサユニット60が備える接続部68を貫通させる貫通部43が設けられている。
【0021】
操作パネル50は、外装パネル10の開口部11に組み付けられ、車両への室内灯5の取り付けによって車内側に露出する。
【0022】
操作パネル50の車長方向の中間部分には、個々のLED33とフレーム40の個々の貫通部41に対応する4つの操作部51が設けられている。これらの操作部51は、いずれもXY平面に沿って延びる平坦面状であり、車幅方向に間隔をあけて設けられている。個々の操作部51には、切り換える機能を表すシンボルマーク52が設けられている。4つのシンボルマーク52はいずれも異なっている。
【0023】
操作パネル50の車長方向前側には、乗員に促す注意内容を表す表示部53が設けられている。この表示部53には、シンボル又は文字からなる合計で8つのマーク54が車幅方向に間隔をあけて設けられている。これらのマーク54は、いずれも異なっており、個々のLED34とフレーム40の個々の貫通部42に対応する位置に設けられている。
【0024】
このように構成された操作パネル50は、例えば二色成形によって形成されている。具体的には、複数のマーク52,54は透光性を有する樹脂によって成形され、マーク52,54以外が遮光性を有する樹脂によって成形されている。これにより、所定のLED33,34を発光させることで、対応するマーク52,54のみを照明し、点灯させることができる。
【0025】
図2及び図3を参照すると、センサユニット60は、フレーム40と操作パネル50の間に配置され、コネクタ31への接続部68の差し込みによって、回路基板30に接続されている。このセンサユニット60は、操作パネル50の操作部51に対応する4つの検出部61を備え、操作部51への乗員の指の接近を静電容量の変化によって検出する。具体的には、センサユニット60は、静電容量式のフィルムタッチセンサによって構成されており、フィルム基材62と、1つのグランド電極63と、複数の導体パターン64とを備える。
【0026】
フィルム基材62は、透光性及び可撓性を有する樹脂からなる。このフィルム基材62は、T字形状であり、車幅方向に延びる矩形状の基部62aと、基部62aの中央から車長方向に突出した突出部62bとを備える。フィルム基材62のうちグランド電極63と導体パターン64が配置されていない部分には、フレーム40と操作パネル50の定位置に位置決めするための位置決め孔62cが設けられている。
【0027】
グランド電極63は可撓性を有する帯状の導電板からなり、両端がフィルム基材62の突出部62bの端部に配置され、複数の導体パターン64を取り囲むようにフィルム基材62の外周縁に沿って配線されている。
【0028】
導体パターン64は、可撓性を有する帯状の導電板からなり、検出部61を形成するために設けられている。導体パターン64は、接続配線65と、検出部61を構成する自己容量型のセンサ電極66とを備える。本実施形態では、3つの導体パターン64それぞれのセンサ電極66によって、1つの検出部61が構成されている。4つの検出部61を備えるため、合計で12本の導体パターン64が用いられている。
【0029】
接続配線65は、フィルム基材62の突出部62bの端部から、4つの検出部61のうち定められた1つまで延びている。全ての接続配線65は、車長方向及び車幅方向の異なる位置に設けられている。これらの接続配線65の端部を含む突出部62bの端部によって、接続部68が構成されている。
【0030】
センサ電極66は、接続配線65に連なり、操作部51の背部に配置されている。3つのセンサ電極66によって構成された図1及び図2において左側2つの検出部61は概ね同様の形状であり、図1及び図2において右側2つの検出部61は左側2つの検出部61と対称な形状である。
【0031】
タッチスイッチ1は、操作パネル50が備える操作部51、センサユニット60が備える検出部61、及び回路基板30が備える制御部35によって構成されている。検出部61は、1つであってもよいし、本実施形態のように複数であってもよい。
【0032】
以下、図3を参照して、1つの検出部61を構成する3つのセンサ電極66について具体的に説明する。
【0033】
以下の説明では、1つの検出部61を構成する3つのセンサ電極66のうち、最も内側に位置する1つを第1センサ電極(第1センサ部)66Aといい、第1センサ電極66Aの外側に隣接した1つを第2センサ電極(第2センサ部)66Bといい、最も外側に位置する1つを第3センサ電極(第3センサ部)66Cということがある。
【0034】
第1センサ電極66A、第2センサ電極66B、及び第3センサ電極66Cは、いずれも操作部51への人体の接近を静電容量C1~C3の変化によって検出するために設けられている。これらのセンサ電極66A~66Cは、いずれも車幅方向の寸法が車長方向の寸法よりも長い矩形状である。これらの大きさ(面積)は、第1センサ電極66Aが最も小さく、第3センサ電極66Cが最も大きくなっている。
【0035】
センサ電極66A~66Cは、操作部51の背後、より具体的にはシンボルマーク52の背後の対向位置に配置されている。操作部51の中心及びシンボルマーク52の中心を含むセンサ電極66A~66Cそれぞれの図心Cは、車長方向及び車幅方向において一致している。但し、センサ電極66A~66Cそれぞれの図心Cは、幾何学的に厳密な意味で一致してなくてもよく、最も大きい第3センサ電極66C内に残りのセンサ電極66A,66Bの図心Cが位置していればよい。
【0036】
第1センサ電極66Aは、操作部51の中心を概ね取り囲む有端状であり、操作部51と同様にXY平面に沿って延びている。この第1センサ電極66Aは、接続配線65に連なって車長方向に延びる第1部分66a、第1部分66aに連なって車幅方向に延びる第2部分66b、及び第2部分66bに連なって車長方向に延びる第3部分66cによって構成されている。第2部分66bと対向する位置は開放されている。
【0037】
第1センサ電極66A内には、透明な導電性インクの印刷によって平面状の導電部67が設けられている。この導電部67の外周縁は第1センサ電極66Aの内周縁に接し、これらの間の電気的な導通が確立されている。
【0038】
第2センサ電極66Bは、第1センサ電極66Aを概ね取り囲む有端状であり、操作部51と同様にXY平面に沿って延びている。この第2センサ電極66Bは、接続配線65に連なって車長方向に延びる第1部分66d、第1部分66dに連なって車幅方向に延びる第2部分66e、第2部分66eに連なって車長方向に延びる第3部分66f、及び第3部分66fに連なって車幅方向に延びる第4部分66gによって構成されている。図3において第1部分66dの下端と第4部分66gの右端との間は開放されている。この開放部分を通して第1センサ電極66Aに連なる接続配線65が配線されている。
【0039】
図3において第1部分66dは、第1センサ電極66Aの第1部分66aの右側上方に間隔をあけて位置している。図3において第2部分66eは、第1センサ電極66Aの第2部分66bの上側に間隔をあけて位置している。図3において第3部分66fは、第1センサ電極66Aの第3部分66cの左側に間隔をあけて位置している。図3において第4部分66gは、第1センサ電極66Aの第1部分66aの下端及び第3部分66cの下端の下側に間隔をあけて位置している。第2センサ電極66B内には、第1センサ電極66Aのように導電部は設けられていない。
【0040】
第3センサ電極66Cは、第2センサ電極66Bを概ね取り囲む有端状であり、操作部51と同様にXY平面に沿って延びている。この第3センサ電極66Cは、接続配線65に連なって車長方向に延びる第1部分66h、第1部分66hに連なって車幅方向に延びる第2部分66i、第2部分66iに連なって車長方向に延びる第3部分66j、及び第3部分66jに連なって車幅方向に延びる第4部分66kによって構成されている。図3において第1部分66hの下端と第4部分66kの右端との間は開放されている。この開放部分を通して、第1センサ電極66Aと第2センサ電極66Bにそれぞれ連なる2つの接続配線65が配線されている。
【0041】
図3において第1部分66hは、第2センサ電極66Bの第1部分66dの右側上方に間隔をあけて位置している。図3において第2部分66iは、第2センサ電極66Bの第2部分66eの上側に間隔をあけて位置している。図3において第3部分66jは、第2センサ電極66Bの第3部分66fの左側に間隔をあけて位置している。図3において第4部分66kは、第2センサ電極66Bの第4部分66gの下側に間隔をあけて位置している。第3センサ電極66C内には、第1センサ電極66Aのように導電部は設けられていない。
【0042】
このように構成されたセンサ電極66A~66Cが延びる方向の長さ、より具体的には第1センサ電極66Aの対角方向の長さL1、第2センサ電極66Bの対角方向の長さL2、及び第3センサ電極66Cの対角方向の長さL3は、この順で長くなっている。つまり、第2センサ電極66Bの長さL2は、第1センサ電極66Aの長さL1よりも長く、第3センサ電極66Cの長さL3は、第2センサ電極66Bの長さL2よりも長い(L1<L2<L3)。
【0043】
図4を参照すると、センサ電極66A~66Cによって人体を検出可能な範囲(以下「検出範囲」という)R1~R3は、第1センサ電極66Aの検出範囲R1、第2センサ電極66Bの検出範囲R2、及び第3センサ電極66Cの検出範囲R3の順で広くなる(R1<R2<R3)。これは、センサ電極66A~66Cの検出範囲R1~R3が、センサ電極66A~66Cの長さL1~L3に対応するためである。つまり、本実施形態では、3つのセンサ電極66A~66Cによって、三段階の検出範囲R1~R3を設定している。センサ電極66A~66Cは、車高方向から見ていずれも長方形状であるため、個々の検出範囲R1~R3はいずれも概ね半楕円球状である。
【0044】
図5は、1つのセンサ電極66からなる検出部61に、人体の指が近づいた場合の静電容量Cの変化と電磁ノイズが照射された場合の静電容量Cの変化とを重ね合わせたグラフである。図6は、3つのセンサ電極66A~66Cからなる検出部61に、人体の指を検出した場合の静電容量C1~C3の変化を示すグラフであり、図7は、3つのセンサ電極66A~66Cからなる検出部61に、電磁ノイズが照射された場合の静電容量C1~C3の変化を示すグラフである。図5から図7において、縦軸は静電容量であり、横軸は時間である。
【0045】
図5を参照すると、1つのセンサ電極66によって構成された検出部61に人体の指が接近すると、センサ電極66と指の間に生じる静電容量Cが定められた閾値Tを超えて増加し、この増加状態が指を離すまで継続する一方、指を離すと静電容量Cが増加前の状態まで低下する。一方で、1つのセンサ電極66によって構成された検出部61にラジオ電波又は携帯電話の電波等の電磁ノイズが照射されると、電磁ノイズによりセンサ電極66が誘起されることによって、定められた閾値Tを超えて静電容量Cが上昇し、電磁ノイズの照射が無くなると増加前の状態まで低下する。
【0046】
図6を参照すると、3つのセンサ電極66A~66Cによって構成された検出部61に人体の指が接近すると、センサ電極66A~66Cと指の間に生じる静電容量C1~C3がそれぞれ定められた閾値T1~T3を超えて増加し、この増加状態が指を離すまで継続する一方、指を離すと静電容量C1~C3が増加前の状態まで低下する。但し、3つのセンサ電極66A~66Cは、いずれも長さL1~L3の相違によって検出範囲R1~R3も異なっている。そのため、まず第3センサ電極66Cの静電容量C3が増加し、続いて時間差Δt2を経て第2センサ電極66Bの静電容量C2が変化した後、更に時間差Δt1を経て第1センサ電極66Aの静電容量C1が変化する。
【0047】
一方で、図7を参照すると、3つのセンサ電極66A~66Cによって構成された検出部61に電磁ノイズが照射されると、第3センサ電極66C、第2センサ電極66B、及び第1センサ電極66Aそれぞれの静電容量C1~C3は、殆ど時差なく定められた閾値T1~T3を超えて増加し、直ぐに増加前の状態まで低下する。これは、電磁ノイズがセンサ電極66A~66Cに近づく速度が、操作目的で乗員が指をセンサ電極66A~66Cに近づける速度よりも遙かに早いためである。
【0048】
制御部35は、単一又は複数のマイクロコンピュータ、及びその他の電子デバイスにより構成されている。この制御部35は、判断部としての機能を兼ね備えており、センサ電極66A~66Cの静電容量C1~C3の変化を検出し、操作部51が操作されたか否かの判断を行う。そして、操作部51がタッチ操作されたと判断すると、操作部51に対応する機能、つまり本実施形態では図1に示すLED32のオン(点灯)状態とオフ(消灯)状態を切り換える。但し、制御部35は、車両に搭載されたECUによって構成されてもよい。また、判断部は、制御部35とは別に設けられた単一又は複数のマイクロコンピュータ、及びその他の電子デバイスにより構成されてもよい。
【0049】
制御部35は、図示しないメモリとタイマを備える。メモリには、乗員による操作であるのか電磁ノイズによる誤作動であるのかを判断するための判定時間Jt1,Jt2が記憶されている。第1の判定時間Jt1は、第1センサ電極66Aの静電容量C1が変化した第1時点Pt1と、第2センサ電極66Bの静電容量C2が変化した第2時点Pt2との時間差Δt1と比較するために設定されている。第2の判定時間Jt2は、第2センサ電極66Bの静電容量C2が変化した第2時点Pt2と、第3センサ電極66Cの静電容量C3が変化した第3時点Pt3との時間差Δt2と比較するために設定されている。ここで、センサ電極66の静電容量Cが変化した時点Ptとは、静電容量Cが定められた閾値Tを超えた時点のことを意味する。
【0050】
具体的には、制御部35は、第3センサ電極66Cの静電容量C3が変化した後、第2センサ電極66Bの静電容量C2が変化するまでの時間差Δt2が、判定時間Jt2(例えば20ms)以上であるか、判定時間Jt2未満であるかを判断する。また、制御部35は、第2センサ電極66Bの静電容量C2が変化した後、第1センサ電極66Aの静電容量C1が変化するまでの時間差Δt1が、判定時間Jt1(例えば20ms)以上であるか、判定時間Jt1未満であるかを判断する。そして、時間差Δt1,Δt2がいずれも判定時間Jt1,Jt2以上の場合、乗員によるタッチ操作であると判断し、LED32の表示状態の切り換えを行う。一方で、時間差Δt1,Δt2がいずれも判定時間Jt1,Jt2未満の場合、電磁ノイズによる誤作動であると判断し、LED32の表示状態の切り換えは行わない。
【0051】
次に、図8を参照して制御部35による室内灯5の切換処理を具体的に説明する。
【0052】
制御部35は、ステップS1で、第3センサ電極66Cの静電容量C3が閾値T3以上になるまで待機し、静電容量C3が閾値T3以上になると、ステップS2で、第2センサ電極66Bの静電容量C2が閾値T2以上になったか否かを判断する。そして、静電容量C2が閾値T2未満の場合にはステップS1に戻り、静電容量C2が閾値T2以上の場合にはステップS3に進む。ステップS3では、第1センサ電極66Aの静電容量C1が閾値T1以上になったか否かを判断する。そして、静電容量C1が閾値T1未満の場合にはステップS1に戻り、静電容量C1が閾値T1以上の場合にはステップS4に進む。つまり、制御部35は、全てのセンサ電極66A~66Cの静電容量C1~C3が、定められた閾値T1~T3以上になるまで待機する。
【0053】
ステップS4では、第2センサ電極66Bの静電容量C2が変化した第2時点Pt2と、第3センサ電極66Cの静電容量C3が変化した第3時点Pt3との時間差Δt2が、判定時間Jt2以上であるか否かを判断する。そして、時間差Δt2が判定時間Jt2未満の場合にはステップS1に戻り、時間差Δt2が判定時間Jt2以上の場合にはステップS5に進む。
【0054】
ステップS5では、第1センサ電極66Aの静電容量C1が変化した第1時点Pt1と、第2センサ電極66Bの静電容量C2が変化した第2時点Pt2との時間差Δt1が、判定時間Jt1以上であるか否かを判断する。そして、時間差Δt1が判定時間Jt1未満の場合にはステップS1に戻り、時間差Δt1が判定時間Jt1以上の場合にはステップS6に進む。
【0055】
ステップS6では、LED32がオン(点灯)状態であるか否かを判断する。そして、LED32がオン状態の場合にはステップS7に進み、LED32をオフしてステップS1に戻る。一方で、LED32がオフ(消灯)状態の場合にはステップS8に進み、LED32をオンしてステップS1に戻る。
【0056】
このように構成したタッチスイッチ1は、以下の特徴を有する。
【0057】
第1センサ電極66Aと、操作部51が延びる方向の長さが第1センサ電極66Aよりも長い第2センサ電極66Bとを備え、制御部35は、第1センサ電極66Aの静電容量が変化した第1時点Pt1と第2センサ電極66Bの静電容量が変化した第2時点Pt2との時間差Δt1が、定められた判定時間Jt1以上のとき、操作部51が操作されたと判断する。つまり、第1時点Pt1と第2時点Pt2の時間差Δt1が判定時間Jt1未満のときには、指による操作部51の操作ではなく、電磁ノイズによる誤作動と判断する。よって、電磁ノイズの照射による操作の誤判断を防止でき、意図しない状態切り換えを防止できる。
【0058】
第1センサ電極66Aが操作部51の背後に配置されているため、操作部51に対する操作を確実に検出できる。
【0059】
第2センサ電極66Bは、第1センサ電極66Aを取り囲む有端状に形成されている。これにより、第1センサ電極66Aと第2センサ電極66Bを横並びに配置する場合と比較して、配置に関するスペースの無駄を低減できるうえ、操作部51に向かってくる指のみを確実に検出できる。また、複数の操作部51を横並びに配置した場合、操作目的の操作部51とは異なる隣の操作部51のセンサ電極66による誤検出が生じ得るが、このような不都合を確実に防止できる。
【0060】
操作部51にはシンボルマーク52が設けられ、このシンボルマーク52と対向する位置に第1センサ電極66Aと第2センサ電極66Bが配置されている。これにより、乗員はシンボルマーク52に向けて手と指を伸ばすため、制御部35によって、第1センサ電極66Aと第2センサ電極66Bによって乗員の操作を確実に検出でき、状態の切り換えを確実に実現できる。
【0061】
第2センサ電極66Bは第1センサ電極66Aを取り囲む有端状に形成され、第1センサ電極66Aが平面状の導電部67を備える。よって、操作部51に対する操作をより確実に検出できる。
【0062】
操作部51が延びる方向の長さが第2センサ電極66Bよりも長い第3センサ電極66Cを備え、この第3センサ電極66Cが第2センサ電極66Bを取り囲むように構成されている。これにより、操作部51に対して交差する方向の検出範囲を三段階にすることができる。そのため、第1センサ電極66Aの静電容量が変化した第1時点Pt1と第2センサ電極66Bの静電容量が変化した第2時点Pt2との時間差Δt1、及び第2センサ電極66Bの静電容量が変化した第2時点Pt2と第3センサ電極66Cの静電容量が変化した第3時点Pt3との時間差Δt2によって、制御部35は、乗員の指による操作であるのか、電磁ノイズによる誤作動であるのかを判断できる。その結果、電磁ノイズの照射による操作の誤判断を防止でき、意図しない状態切り換えを確実に防止できる。
【0063】
なお、本発明は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0064】
例えば、図9に示すように、検出部61を構成するセンサ電極66A~66Cの形状は、必要に応じて変更可能である。図9に示す例では、第1センサ電極66Aは第1部分660aから第5部分660eによって構成され、第2センサ電極66Bは第1部分660fから第5部分660jによって構成され、第3センサ電極66Cは第1部分660mから第5部分660qによって構成されている。第1部分660a,660f,660mは、いずれも接続配線65に連なって車幅方向に延びている。第2部分660b,660g,660nは、対応する第1部分660a,660f,660mに連なり、車幅方向において第1部分660a,660f,660mから離れる向きかつ車長方向前側に傾斜して延びている。第3部分660c,660h,660oは、対応する第2部分660b,660g,660nに連なり、車幅方向において第1部分660a,660f,660mに近づく向きかつ車長方向前側に傾斜して延びている。第4部分660d,660i,660pは、対応する第3部分660c,660h,660oに連なり、車幅方向に延びている。第5部分660e,660j,660qは、対応する第4部分660d,660i,660pに連なり、第3部分660c,660h,660oに沿って傾斜して延びている。第1部分660a,660f,660mから第5部分660e,660j,660qは、それぞれいずれも互いに間隔をあけて位置している。
【0065】
検出部61は、少なくとも第1センサ電極66Aが操作部51の背面に対向配置されていればよい。つまり、第2センサ電極66Bと第3センサ電極66Cは、図心Cが操作部51の中心とは一致しない位置に配置されてもよし、隣接した操作部51との間隔を確保できるのであれば、第1センサ電極66Aに対して横並びに配置されてもよい。
【0066】
検出部61を構成する3つのセンサ電極66A~66Cは、操作部51自体、より具体的には操作パネル50における操作部51の背面又は正面に配置されてもよい。
【0067】
検出部61は、第3センサ電極66Cを設けることなく、第1センサ電極66Aと第2センサ電極66Bのみによって構成されてもよい。また、検出部61は、4つ以上のセンサ電極66によって構成されてもよい。
【0068】
制御部(判断部)35によるセンサ電極66の静電容量Cが変化したことの判断は、閾値T1~T3の代わりに、定められた時間内での静電容量の上昇勾配によって行ってもよく、その判断基準は必要に応じて変更が可能である。
【0069】
センサ電極66の静電容量Cが変化したと判断する時点Ptは、静電容量Cが閾値Tを最初に超えた時に限られず、静電容量Cが閾値Tを超えた状態が所定時間(例えば17ms)以上継続した時としてもよい。また、判断する時点Ptは、静電容量Cが閾値Tを超えた状態が所定時間(例えば17ms)以上継続した場合において、閾値Tを最初に超えた時としてもよい。
【0070】
制御部35は、時間差Δt1,Δt2のいずれか1つのみが判定時間Jt1,Jt2以上になったときに、乗員によるタッチ操作であると判断してもよい。また、制御部35は、時間差Δt1,Δt2がいずれも判定時間Jt1,Jt2以上、かつ3つのセンサ電極66A~66Cの静電容量がそれぞれ閾値T1~T3を超えている状態が維持されたときに、乗員によるタッチ操作であると判断してもよい。
【0071】
検出部61は、駆動電極と測定電極を備える相互容量型のタッチセンサによって構成されてもよい。言い換えれば、2以上のセンサ部によって1つの検出部61を構成する態様は、相互容量型にも適用可能である。
【0072】
タッチスイッチ1は、室内灯5以外の機器にも適用可能である。つまり、車両のインストルメントパネルに配置され、車載機器を操作するための操作部に用いられてもよいし、車両以外の機器の操作部に用いられてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 タッチスイッチ
5 室内灯
10 外装パネル
11 開口部
12 貫通部
13 貫通部
20 カバー
30 回路基板
31 コネクタ
32~34 LED
35 制御部(判断部)
40 フレーム
41~43 貫通部
50 操作パネル
51 操作部
52 シンボルマーク
53 表示部
54 マーク
60 センサユニット
61 検出部
62 フィルム基材
62a 基部
62b 突出部
62c 位置決め孔
63 グランド電極
64 導体パターン
65 接続配線
66 センサ電極
66A 第1センサ電極(第1センサ部)
66B 第2センサ電極(第2センサ部)
66C 第3センサ電極(第3センサ部)
66a 第1センサ電極の第1部分
66b 第1センサ電極の第2部分
66c 第1センサ電極の第3部分
66d 第2センサ電極の第1部分
66e 第2センサ電極の第2部分
66f 第2センサ電極の第3部分
66g 第2センサ電極の第4部分
66h 第3センサ電極の第1部分
66i 第3センサ電極の第2部分
66j 第3センサ電極の第3部分
66k 第3センサ電極の第4部分
660a 第1センサ電極の第1部分
660b 第1センサ電極の第2部分
660c 第1センサ電極の第3部分
660d 第1センサ電極の第4部分
660e 第1センサ電極の第5部分
660f 第2センサ電極の第1部分
660g 第2センサ電極の第2部分
660h 第2センサ電極の第3部分
660i 第2センサ電極の第4部分
660j 第2センサ電極の第5部分
660m 第3センサ電極の第1部分
660n 第3センサ電極の第2部分
660o 第3センサ電極の第3部分
660p 第3センサ電極の第4部分
660q 第3センサ電極の第5部分
67 導電部
68 接続部
L1 第1センサ電極の長さ
L2 第2センサ電極の長さ
L3 第3センサ電極の長さ
R1 第1センサ電極の検出範囲
R2 第2センサ電極の検出範囲
R3 第3センサ電極の検出範囲
Pt1 第1センサ電極の静電容量が変化した時点
Pt2 第2センサ電極の静電容量が変化した時点
Pt3 第3センサ電極の静電容量が変化した時点
Δt1 第1時点Pt1と第2時点Pt2の時間差
Δt2 第2時点Pt2と第3時点Pt3の時間差
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9