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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131780
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】装飾フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240920BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20240920BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/00
C09J11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042240
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】阿部 秀俊
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AA18
4J004AB01
4J004FA01
4J040DF001
4J040HA066
4J040HA136
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA42
4J040LA01
4J040LA08
4J040LA10
4J040NA12
4J040NA15
(57)【要約】
【課題】装飾フィルムの位置決め及び位置換えを可能にするスライド性を有しており、低温条件下でも安定した接着性を発揮し、高い装飾性能を有する装飾フィルムを提供する。
【解決手段】一実施態様の位置決め及び位置換え可能な装飾フィルムは、フィルム層と、アクリル系粘着性ポリマー及び顔料を含むアクリル系感圧接着層と、剥離ライナーとを含む。アクリル系粘着性ポリマーの重量平均分子量は200,000~350,000であり、ガラス転移温度は-10℃以下である。アクリル系感圧接着層は、アクリル系粘着性ポリマー100質量部を基準として、顔料を3質量部~60質量部含み、互いに離間した複数の粒子集団を更に含み、かつ複数の粒子集団の1つ以上をそれぞれ含む複数の突起を有する。アクリル系感圧接着層のアクリル系粘着性ポリマーの含有量は、全樹脂成分の質量を基準として70質量%~100質量%である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム層と、アクリル系粘着性ポリマー及び顔料を含むアクリル系感圧接着層と、剥離ライナーとを含む、位置決め及び位置換え可能な装飾フィルムであって、
前記アクリル系粘着性ポリマーの重量平均分子量は200,000~350,000であり、
前記アクリル系粘着性ポリマーのガラス転移温度は-10℃以下であり、
前記アクリル系感圧接着層は、前記アクリル系粘着性ポリマー100質量部を基準として、前記顔料を3質量部~60質量部含み、
前記アクリル系感圧接着層の前記アクリル系粘着性ポリマーの含有量は、全樹脂成分の質量を基準として70質量%~100質量%であり、
前記アクリル系感圧接着層は、前記アクリル系感圧接着層の表面から突出した又は前記アクリル系粘着性ポリマーで覆われた、互いに離間した複数の粒子集団を更に含み、かつ前記複数の粒子集団の1つ以上をそれぞれ含む複数の突起を有し、
前記剥離ライナーは、前記複数の粒子集団の1つ以上をそれぞれ保護する複数の窪みを有する、装飾フィルム。
【請求項2】
前記顔料が金属顔料を含み、前記アクリル系感圧接着層の前記金属顔料の含有量が、前記アクリル系粘着性ポリマー100質量部を基準として3質量部~30質量部である、請求項1に記載の装飾フィルム。
【請求項3】
前記顔料が白色顔料を含み、前記アクリル系感圧接着層の前記白色顔料の含有量が、前記アクリル系粘着性ポリマー100質量部を基準として30質量部~60質量部である、請求項1に記載の装飾フィルム。
【請求項4】
前記アクリル系感圧接着層が、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーと、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーとを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の装飾フィルム。
【請求項5】
前記アクリル系感圧接着層が連通溝を更に有し、前記剥離ライナーが前記アクリル系感圧接着層の前記連通溝と相補的な微細構造化表面を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の装飾フィルム。
【請求項6】
前記装飾フィルムにおいて、背景色を白色及び黒色として前記フィルム層側から測定したときの前記白色背景色の部分と前記黒色背景色の部分との色差ΔEが11以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の装飾フィルム。
【請求項7】
前記装飾フィルムが、JIS Z 0237:2009に準拠して、アルミニウム板を被着体として測定したときに、5℃で10N/25mm以上の接着力を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の装飾フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、装飾フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
着色された又は金属外観を呈する装飾フィルムは、建築用看板、車両、船舶、航空機などのマーキング、カーラッピング、建築物の内装及び外装、照明看板などにおいて広く使用されている。これらの装飾フィルムは、例えば、車両の製造時若しくは建築物の建築時、又は車両若しくは建築物の修繕時に使用される。
【0003】
装飾フィルムを着色する、あるいは装飾フィルムに金属外観を付与するために、二酸化チタン、金属フレークなどの顔料を含む接着剤を用いて装飾フィルムの接着層を形成することが知られている。このような接着層は、着色又は金属外観付与と接着の2つの機能を兼ね備えることから装飾フィルムの層構造を簡略化することができ、溶剤系インクジェット印刷による着色と比較して耐溶剤性にも優れている。
【0004】
特許文献1(特開2009-203370号公報)は、「着色ベースフィルム層と、前記着色ベースフィルム層にアクリル系白色粘着剤からなる粘着剤層を積層してなるマーキングフィルムにおいて、前記アクリル系白色粘着剤が、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、25~150質量部の白色顔料、及び芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含むマーキングフィルム」を記載している。
【0005】
特許文献2(特開2003-183602号公報)は、「全光線透過率が3~80%である着色フィルムの片面に、粘着剤のベースポリマー100重量部に対して3~50重量部の白色顔料、及び白色顔料添加量の0.3~2重量%のアルミ金属片が含有されてなる粘着剤が積層されてなることを特徴とする装飾用粘着シート」を記載している。
【0006】
特許文献3(特開2006-88593号公報)は、「紫外線吸収剤を含み可視光に対する全光線透過率が85%以上のアクリル系樹脂層(A)、アクリル系粘着剤にアルミ金属粉及びパール顔料が含有されてなるメタリック粘着剤層(B)、着色された軟質塩化ビニル樹脂層(C)、アクリル系粘着剤層(D)の順に積層されてなることを特徴とする装飾用メタリック粘着シート」を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-203370号公報
【特許文献2】特開2003-183602号公報
【特許文献3】特開2006-88593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
屋外で使用される装飾フィルムは、夏季及び冬季も含めて通年で施工性に優れることが望ましい。施工性の一つとして、装飾フィルムの位置決め及び位置換えを可能にするスライド性が挙げられる。顔料を含む接着剤は高い弾性率を有するため、冬季の低温条件下において接着性が低下する傾向がある。そのような接着剤を用いて接着層を形成し、その表面にスライド性を付与するための低粘着性領域を設けると、冬季での接着安定性が低下する。一方、低温条件下での接着性を高めるために顔料の含有量を減少させると、装飾フィルムの彩度、隠蔽性などの装飾性能が低下する。
【0009】
本開示は、装飾フィルムの位置決め及び位置換えを可能にするスライド性を有しており、低温条件下でも安定した接着性を発揮し、高い装飾性能を有する装飾フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、特定の分子量を有する粘着性ポリマーと顔料とを組み合わせることにより、低温条件下であっても低い弾性率と高い凝集力の両方の特性を有する感圧接着剤組成物が得られること、当該感圧接着剤組成物を用いて形成した感圧接着層にスライド性を付与したときに低温条件下でも安定した接着性が得られることを見出した。
【0011】
一実施態様によれば、フィルム層と、アクリル系粘着性ポリマー及び顔料を含むアクリル系感圧接着層と、剥離ライナーとを含む、位置決め及び位置換え可能な装飾フィルムであって、前記アクリル系粘着性ポリマーの重量平均分子量は200,000~350,000であり、前記アクリル系粘着性ポリマーのガラス転移温度は-10℃以下であり、前記アクリル系感圧接着層は、前記アクリル系粘着性ポリマー100質量部を基準として、前記顔料を3質量部~60質量部含み、前記アクリル系感圧接着層の前記アクリル系粘着性ポリマーの含有量は、全樹脂成分の質量を基準として70質量%~100質量%であり、前記アクリル系感圧接着層は、前記アクリル系感圧接着層の表面から突出した又は前記アクリル系粘着性ポリマーで覆われた、互いに離間した複数の粒子集団を更に含み、かつ前記複数の粒子集団の1つ以上をそれぞれ含む複数の突起を有し、前記剥離ライナーは、前記複数の粒子集団の1つ以上をそれぞれ保護する複数の窪みを有する、装飾フィルムが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、装飾フィルムの位置決め及び位置換えを可能にするスライド性を有しており、低温条件下でも安定した接着性を発揮し、高い装飾性能を有する装飾フィルムが提供される。
【0013】
なお、上述の記載は、本発明の全ての実施態様及び本発明に関する全ての利点を開示したものとみなしてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施態様の装飾フィルムの概略断面図である。
図2】別の実施態様の装飾フィルムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の代表的な実施態様を例示する目的で、図面を参照しながらより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されない。
【0016】
本開示において「(メタ)アクリル」とはアクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0017】
本開示において「フィルム」には「シート」と呼ばれる物品も包含される。
【0018】
本開示において「感圧接着(性)」とは、使用温度範囲で、例えば0℃以上、50℃以下の範囲において、短時間わずかな圧力を加えただけで様々な表面に接着し、相変化(液体から固体へ)を呈さない材料又は組成物の特性を意味する。本開示において「粘着(性)」は「感圧接着(性)」と相互に交換可能に使用される。
【0019】
本開示において「上に配置される」とは、直接的に上に配置される場合のみならず、間接的に、すなわち他の材料又は層を介して上に配置される場合も含む。
【0020】
本開示において「酸化チタン」は「二酸化チタン(TiO)」と交換可能に使用される。
【0021】
本開示において「重量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による標準ポリスチレンで換算した分子量を意味する。
【0022】
本開示において「全樹脂成分」とは、アクリル系粘着性ポリマー、分散剤及び架橋剤を含む、アクリル系感圧接着層に含まれる全ての有機高分子成分又はその前駆体を意味する。
【0023】
一実施態様の位置決め及び位置換え可能な装飾フィルムは、フィルム層と、アクリル系粘着性ポリマー及び顔料を含むアクリル系感圧接着層と、剥離ライナーとを含む。アクリル系粘着性ポリマーの重量平均分子量は200,000~350,000であり、アクリル系粘着性ポリマーのガラス転移温度は-10℃以下である。アクリル系感圧接着層は、アクリル系粘着性ポリマー100質量部を基準として、顔料を3質量部~60質量部含み、アクリル系感圧接着層のアクリル系粘着性ポリマーの含有量は、全樹脂成分の質量を基準として70質量%~100質量%であり、アクリル系感圧接着層は、アクリル系感圧接着層の表面から突出した又はアクリル系粘着性ポリマーで覆われた、互いに離間した複数の粒子集団を更に含み、かつ複数の粒子集団の1つ以上をそれぞれ含む複数の突起を有する。剥離ライナーは、複数の粒子集団の1つ以上をそれぞれ保護する複数の窪みを有する。
【0024】
フィルム層とアクリル系感圧接着層とは直接接触していてもよく、これらの層の間に他の層、例えば着色層、印刷層、バルク層などが介在してもよい。フィルム層の上に他の層、例えば、着色層、印刷層、バルク層、表面保護層などが積層されていてもよい。装飾フィルムは、フィルム層とアクリル系感圧接着層の密着性を高めるプライマー層などの他の機能層をさらに有してもよい。フィルム層のアクリル系感圧接着層と接触する表面に、コロナ処理、プラズマ処理などの表面処理が施されていてもよい。
【0025】
一実施態様では、装飾フィルムは、フィルム層と、アクリル系感圧接着層と、剥離ライナーとからなる。この実施態様の装飾フィルムは、簡素な層構造を有することから各国の難燃性に関する規制により有利に対応することができる。
【0026】
図1に一実施態様の装飾フィルムの概略断面図を示す。装飾フィルム10は、フィルム層12、アクリル系感圧接着層14、及び剥離ライナー16を有する。アクリル系感圧接着層14は、アクリル系粘着性ポリマー141と、アクリル系粘着性ポリマー141中に分散した顔料142とを含む。
【0027】
フィルム層としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、フッ化ビニリデン系樹脂フィルム、これらの積層体などのプラスチックフィルムを使用することができる。フィルム層は熱可塑性エラストマーフィルムであってもよい。
【0028】
フィルム層の厚さは様々であってよく、例えば、約5μm以上、約10μm以上、又は約20μm以上、約500μm以下、約300μm以下、又は約200μm以下とすることができる。
【0029】
一実施態様では、フィルム層の可視光線透過率は約70%以上、約80%以上、又は約90%以上である。本開示において「可視光線透過率」とは、JIS A 5759:2008に準拠して測定された波長380nm~780nmにおける平均可視光線透過率を意味する。
【0030】
アクリル系感圧接着層は、アクリル系粘着性ポリマーと、顔料とを含む。
【0031】
アクリル系粘着性ポリマーは、(メタ)アクリル系モノマー及び必要に応じてその他のモノエチレン性不飽和基を有するモノマーを含む重合性組成物を重合又は共重合することにより得ることができる。本開示において、(メタ)アクリル系モノマー及びその他のモノエチレン性不飽和基を有するモノマーを合わせて重合性成分という。(メタ)アクリル系モノマー及びその他のモノエチレン性不飽和基を有するモノマーは、それぞれ1種を使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
(メタ)アクリル系モノマーは、一般にアルキル(メタ)アクリレートを含む。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素原子数は1~12であってよい。アルキル(メタ)アクリレートとして、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-メチルブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレートなどの直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート;及びシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの脂環式(メタ)アクリレートが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートは、メチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-メチルブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、又はそれらの組み合わせを含むことが好ましい。
【0033】
アルキル(メタ)アクリレートは、アクリル系粘着性ポリマーの主成分を構成する。一実施態様では、アクリル系粘着性ポリマーは、アルキル(メタ)アクリレートを、重合性成分の質量を基準として、約50質量%以上、約70質量%以上、又は約80質量%以上、約99.5質量%以下、約99質量%以下、又は約98質量%以下の量で含む重合性組成物を共重合して得られたものであり、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を上記質量比で含む。
【0034】
(メタ)アクリル系モノマーは、フェニル(メタ)アクリレート、p-トリル(メタ)アクリレートなどの芳香族(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレート;メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-メトキシブチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;又はグリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどの環状エーテル含有(メタ)アクリレートを含んでもよい。
【0035】
(メタ)アクリル系モノマー又はその他のモノエチレン性不飽和基を有するモノマーは、アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な極性モノマーを含んでもよい。極性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、マレイン酸などのカルボキシ基含有モノマー;アミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノアルキル(メタ)アクリレート、ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのモノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)などのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチルビニルエーテル、N,N-ジエチルアミノエチルビニルエーテルなどのジアルキルアミノアルキルビニルエーテルなどのアミノ基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタムなどのアミド基含有モノマー;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有モノマー;及び(メタ)アクリロニトリルなどの不飽和ニトリルが挙げられる。これらの極性モノマーはアクリル系感圧接着層の凝集力を高めて接着力を向上させることができる。
【0036】
その他のモノエチレン性不飽和基を有するモノマーとして、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニルモノマー;及び酢酸ビニルなどのビニルエステルも挙げられる。
【0037】
アクリル系粘着性ポリマーは、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーであることが好ましい。カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、カルボキシ基含有モノマーを重合性成分として含む重合性組成物を共重合することにより得ることができる。カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、カルボキシ基の存在により凝集力を高めて接着力を向上させることができる。カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、フィルム層とアクリル系感圧接着層との密着性を高めることができる場合もある。カルボキシ基含有モノマーとしては(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0038】
一実施態様では、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、カルボキシ基含有モノマーを、重合性成分の質量を基準として、約0.5質量%以上、約1質量%以上、又は約2質量%以上、約15質量%以下、約10質量%以下、又は約8質量%以下の量で含む重合性組成物を共重合して得られたものであり、カルボキシ基含有モノマーに由来する構成単位を上記質量比で含む。
【0039】
アクリル系粘着性ポリマーの重合又は共重合は、ラジカル重合により行なうことができる。ラジカル重合として、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、塊状重合などの公知の重合方法を用いることができる。高分子量のポリマーを容易に合成することができる溶液重合を用いることが有利である。重合開始剤として、例えば、過酸化ベンゾイル、ラウロイルペルオキシド、ビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートなどの有機過酸化物;又は2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ジメチル-2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリアン酸)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(AVN)などのアゾ系重合開始剤を用いることができる。重合開始剤の使用量は、重合性成分100質量部に対して、一般に約0.01質量部以上、又は約0.05質量部以上、約5質量部以下、又は約3質量部以下である。
【0040】
アクリル系粘着性ポリマーのガラス転移温度(Tg)は約-10℃以下である。アクリル系粘着性ポリマーのガラス転移温度を約-10℃以下とすることにより、アクリル系感圧接着層に広い温度範囲(例えば0℃~40℃)における感圧接着性及びスライド性を付与することができる。一実施態様では、アクリル系粘着性ポリマーのガラス転移温度は、約-20℃以下、又は約-35℃以下である。一実施態様では、アクリル系粘着性ポリマーのガラス転移温度は、約-70℃以上、約-65℃以上、又は約-60℃以上である。アクリル系粘着性ポリマーのガラス転移温度を約-70℃以上とすることにより、接着力及び保持力をアクリル系感圧接着層に付与することができる。
【0041】
アクリル系粘着性ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、各ポリマーが、n種類のモノマーが共重合して形成されているとして、下記のFOXの式(Fox, T. G., Bull. Am. Phys. Soc., 1 (1956), p. 123)
【数1】
を用いて計算ガラス転移温度として求めることができる。式中、Tgは成分iのホモポリマーのガラス転移温度(℃)、Xは重合の際に添加した成分iのモノマーの質量分率をそれぞれ示し、iは1~nの自然数であり、
【数2】
である。
【0042】
アクリル系粘着性ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、約200,000~約350,000である。アクリル系粘着性ポリマーの重量平均分子量を上記範囲とすることにより、アクリル系感圧接着層に低温条件下でも低い弾性率と高い凝集力の両方の特性を付与することができる感圧接着剤組成物が得られ、当該感圧接着剤組成物を用いて形成した感圧接着層にスライド性を付与したときに低温条件下でも安定した接着性を得ることができる。一実施態様では、アクリル系粘着性ポリマーの重量平均分子量は、約220,000以上、又は約250,000以上、約320,000以下、又は約300,000以下である。
【0043】
アクリル系感圧接着層に含まれる顔料は、装飾フィルムに装飾性、隠蔽性又はそれら両方を付与することができる。顔料は1種を使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
アクリル系感圧接着層の顔料の含有量は、アクリル系粘着性ポリマー100質量部を基準として約3質量部~約60質量部である。アクリル系感圧接着層がアクリル系粘着性ポリマー100質量部を基準として顔料を約3質量部以上含むことにより、装飾フィルムに装飾性、隠蔽性又はそれら両方を効果的に付与することができる。アクリル系感圧接着層がアクリル系粘着性ポリマー100質量部を基準として顔料を約60質量部以下含むことにより、低温条件下における接着性を高めることができる。一実施態様では、アクリル系感圧接着層の顔料の含有量は、アクリル系粘着性ポリマー100質量部を基準として約5質量部以上、又は約10質量部以上、約55質量部以下、又は約50質量部以下である。2種以上の顔料を使用する場合、顔料の含有量はそれら顔料の合計含有量である。
【0045】
顔料としては、例えば、酸化チタン、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、カーボンブラック、黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、赤色酸化鉄、硫酸バリウム、アルミナ、ジルコニア、酸化鉄系顔料、水酸化鉄系顔料、酸化クロム系顔料、スピネル型焼成系顔料、クロム酸系顔料、クロムバーミリオン系顔料、紺青系顔料、アルミニウム粉末系顔料、ブロンズ粉末系顔料、リン酸カルシウムなどの無機顔料;及びフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、アゾレーキ系顔料、アントラキノン系顔料、インジゴ系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチンアゾ系顔料、アニリンブラック系顔料、トリフェニルメタン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドンレッドなどのキナクリドン系顔料などの有機顔料が挙げられる。
【0046】
装飾フィルムに隠蔽性が要求される実施態様では、顔料は酸化チタン、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの白色顔料、特に酸化チタンを含むことが好ましい。酸化チタンは難燃剤として作用して、装飾フィルムの難燃性を高めることもできる。
【0047】
顔料が白色顔料を含む実施態様では、アクリル系感圧接着層の白色顔料の含有量は、アクリル系粘着性ポリマー100質量部を基準として約30質量部~約60質量部であることが好ましい。アクリル系感圧接着層が白色顔料をアクリル系粘着性ポリマー100質量部を基準として約30質量部以上含むことにより、装飾フィルムを適用した被着体(下地)表面を部分的に又は完全に隠蔽することができる。アクリル系感圧接着層が白色顔料をアクリル系粘着性ポリマー100質量部を基準として約60質量部以下含むことにより、低温条件下における接着性を高めることができる。一実施態様では、アクリル系感圧接着層の白色顔料の含有量は、アクリル系粘着性ポリマー100質量部を基準として約35質量部以上、又は約40質量部以上、約55質量部以下、又は約50質量部以下である。
【0048】
顔料として金属顔料を使用することもできる。金属顔料を使用することにより装飾フィルムに金属光沢を付与することができる。金属顔料に含まれる金属は、特に限定されず、例えば、アルミニウム、亜鉛、鉄、マグネシウム、銅、ニッケル、及びそれらの合金が挙げられる。より少ない使用量で効果的に金属光沢を提供でき、安価であることから、金属顔料はアルミニウムを含むことが好ましい。
【0049】
金属顔料は、樹脂被覆金属顔料であってもよい。樹脂被覆金属顔料は、金属顔料の表面の少なくとも一部が樹脂で被覆された顔料であり、アクリル系粘着性ポリマーとの混和性に優れている。樹脂被覆金属顔料を用いることで、アクリル系感圧接着層に金属外観を付与しつつ、低温条件下での接着性を高めることができる。
【0050】
樹脂被覆金属顔料の樹脂被覆を構成する材料は、特に限定されず、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、フッ素樹脂、ポリビニルエーテル、ポリスチレン、並びにこれらの共重合体及びブレンドが挙げられる。アクリル系粘着性ポリマーとの混和性に優れることから、樹脂被覆金属顔料はアクリル系樹脂被覆を有することが好ましい。
【0051】
金属顔料の形状は、特に限定されず、例えば、鱗片状、球状、針状、及び塊状が挙げられる。より少ない使用量で効果的に金属光沢を提供できることから、金属顔料は鱗片状であることが好ましい。
【0052】
一実施態様では、金属顔料の平均粒径は、約5μm以上、約7μm以上、又は約10μm以上、約70μm以下、約50μm以下、又は約40μm以下である。金属顔料の平均粒径を上記範囲とすることにより、金属顔料をより均一にアクリル系感圧接着層に分散することができる。金属顔料の平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定を用いて決定することができる体積累積粒径D50である。
【0053】
顔料が金属顔料を含む実施態様では、アクリル系感圧接着層の金属顔料の含有量は、アクリル系粘着性ポリマー100質量部を基準として約3質量部~約30質量部であることが好ましい。アクリル系感圧接着層が金属顔料をアクリル系粘着性ポリマー100質量部を基準として約3質量部以上含むことにより、装飾フィルムに金属光沢を効果的に付与することができる。アクリル系感圧接着層が金属顔料をアクリル系粘着性ポリマー100質量部を基準として約30質量部以下含むことにより、低温条件下における接着性を高めることができる。一実施態様では、アクリル系感圧接着層の金属顔料の含有量は、アクリル系粘着性ポリマー100質量部を基準として約4質量部以上、又は約5質量部以上、約25質量部以下、又は約20質量部以下である。
【0054】
顔料が金属顔料を含む実施態様では、フィルム層の可視光線透過率を約80%以上、約85%以上、又は約90%以上とすることが有利な場合がある。フィルム層の可視光線透過率を高めることにより、フィルム層を通してアクリル系感圧接着層の金属光沢をより直接的に視認することができる。
【0055】
アクリル系感圧接着層は、顔料に加えて染料も含んでもよい。染料は1種を使用してもよく、2種以上を併用してもよい。染料としては、例えば、アゾ系染料、アントラキノン系染料、キノンフタロン系染料、スチリル系染料、ジフェニルメタン系染料、トリフェニルメタン系染料、オキサジン系染料、トリアジン系染料、キサンタン系染料、アゾメチン系染料、アクリジン系染料、及びジアジン系染料が挙げられる。
【0056】
アクリル系感圧接着層は、アクリル系粘着性ポリマー中での顔料の分散性を高める分散剤を更に含んでもよい。分散剤としては、例えば、アニオン性化合物、カチオン性化合物及び非イオン性化合物を包含する低分子分散剤、及びアニオン性、カチオン性若しくは非イオン性の極性基を有する高分子分散剤が挙げられる。分散剤は1種を使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
分散剤は酸性基又は塩基性基を有することが好ましい。酸性基又は塩基性基を有する分散剤は、顔料をアクリル系粘着性ポリマーに対してより効果的に分散させることができる。アクリル系粘着性ポリマーがカルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含む実施態様では、塩基性基を有する分散剤は、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーと相互作用してアクリル系感圧接着層の凝集力を高め、それによりアクリル系感圧接着層の接着力及び保持力を高めることもできる。
【0058】
一実施態様では、分散剤は、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー及びアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーからなる群より選ばれる高分子分散剤を含む。
【0059】
高分子分散剤としてのカルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーとしては、例えば、前記アクリル系粘着性ポリマーに関連して説明したカルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーと同様の重合性成分に由来する構造単位を含む共重合体が挙げられる。高分子分散剤としてのカルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、約200,000以上、約300,000以上、約400,000以上、又は約500,000以上であることが好ましい。但し、本開示において、高分子分散剤として機能するが、重量平均分子量及びガラス転移温度の両方に関して前記アクリル系粘着性ポリマーにも該当するものは、アクリル系粘着性ポリマーとみなされる。すなわち、重量平均分子量が200,000~350,000であり、ガラス転移温度が-10℃以下であるカルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、アクリル系粘着性ポリマーとして機能するだけでなく、使用される顔料の種類によっては高分子分散剤としても機能する場合があるが、その含有量はアクリル系粘着性ポリマーの含有量として考慮される。
【0060】
一実施態様では、アクリル系感圧接着層は、アクリル系粘着性ポリマーとしてカルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーと、高分子分散剤としてアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーとを含む。アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、顔料の分散性を高めるだけではなく、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーとの相溶性にも優れている。アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、アクリル系粘着性ポリマーに関して説明した重合性組成物のうち、アミノ基含有モノマーを重合性成分として含む重合性組成物を共重合することにより得ることができる。アミノ基含有モノマーとしては、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)などのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0061】
一実施態様では、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、アミノ基含有モノマーを、重合性成分の質量を基準として、約0.5質量%以上、約1質量%以上、又は約3質量%以上、約20質量%以下、約15質量%以下、又は約10質量%以下の量で含む重合性組成物を共重合して得られたものであり、アミノ基含有モノマーに由来する構成単位を上記質量比で含む。
【0062】
一実施態様では、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、約0℃以上、約20℃以上、又は約40℃以上、約150℃以下、約135℃以下、又は約120℃以下である。アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度は、アクリル系粘着性ポリマーと同様にFOXの式を用いて決定することができる。
【0063】
アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、特に限定されず、例えば、約1,000以上、約5,000以上、約10,000以上、約200,000以下、約100,000以下、又は約80,000以下とすることができる。
【0064】
アクリル系感圧接着層の分散剤の含有量は、顔料100質量部に対して約5質量部以上、約10質量部以上、又は約20質量部以上、約500質量部以下、約400質量部以下、又は約300質量部以下とすることができる。
【0065】
アクリル系感圧接着層は、アクリル系粘着性ポリマー及び顔料、並びに必要に応じて分散剤、架橋剤、溶剤、及び/又はその他の添加剤を含む感圧接着剤組成物を用いて剥離ライナーの上に形成することができる。
【0066】
感圧接着剤組成物の調製前に、顔料と、分散剤とを混合してプレミックス(ミルベースともいう。)を調製してもよい。混合は、例えば、ペイントシェイカー、サンドグラインドミル、ボールミル、アトライターミル、又は3本ロールミルを用いて行うことができる。混合時に、必要に応じて水系溶媒又は有機溶媒を加えてもよい。得られたプレミックスを、感圧接着剤組成物の他の成分と混合することにより、多量の顔料をアクリル系感圧接着層中に安定に分散させることが可能な感圧接着剤組成物を調製することができる。複数の顔料を用いる場合、顔料ごとにプレミックスを調製し、これらのプレミックスを適宜混合することにより調色した後、プレミックス混合物を感圧接着剤組成物の他の成分と混合してもよい。
【0067】
顔料の合計と分散剤との質量比は、約1~100:約5~1000、約1~100:約10~700、又は約1~100:約10~500とすることができる。分散剤は、全量がプレミックスの調製時に使用されてもよく、一部がプレミックスの調製時に使用され、残りが感圧接着剤組成物の調製時に使用されてもよい。
【0068】
架橋剤としては、アクリル系粘着性ポリマーのポリマー鎖間に架橋を形成することができるものであれば特に限定されない。架橋剤を使用することにより、アクリル系感圧接着層の凝集力を高めて、それによりアクリル系感圧接着層の接着力及び保持力を高めることができる。例えば、アクリル系粘着性ポリマーがカルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーである場合、架橋剤として、エポキシ系架橋剤、ビスアミド系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、イソシアネート系架橋剤などを使用することができる。架橋剤は1種を使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-1,3-ベンゼンジ(メタンアミン)(商品名として、TETRAD-X(三菱ガス化学株式会社、日本国東京都千代田区)、E-AX及びE-5XM(いずれも綜研化学株式会社、日本国東京都豊島区))、及びN,N’-(シクロヘキサン-1,3-ジイルビスメチレン)ビス(ジグリシジルアミン)(商品名として、TETRAD-C(三菱ガス化学株式会社、日本国東京都千代田区)、及びE-5C(綜研化学株式会社、日本国東京都豊島区))が挙げられる。
【0070】
ビスアミド系架橋剤としては、例えば、1,1’-(1,3-フェニレンジカルボニル)ビス(2-メチルアジリジン)、1,4-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ベンゼン、4,4’-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、及び1,8-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)オクタンが挙げられる。
【0071】
アジリジン系架橋剤としては、例えば、2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート(商品名として、ケミタイト(登録商標)PZ-33(株式会社日本触媒、日本国大阪府大阪市)、及びCrosslinker CX-100(DSM Coating Resins B.V.、オランダ王国ズヴォレ)が挙げられる。
【0072】
カルボジイミド系架橋剤としては、例えば、カルボジライトV-03、V-05、及びV-07(いずれも日清紡ケミカル株式会社、日本国東京都中央区)が挙げられる。
【0073】
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、コロネートL、及びコロネートHK(いずれも東ソー株式会社、日本国東京都港区)が挙げられる。
【0074】
架橋剤は、アクリル系粘着性ポリマー100質量部を基準として、約0.01質量部以上、約0.02質量部以上、又は約0.05質量部以上、約0.5質量部以下、約0.4質量部以下、又は約0.3質量部以下の量で使用することができる。
【0075】
溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなど又はこれらの混合溶剤が挙げられる。
【0076】
その他の添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、充填材、粘着付与剤などが挙げられる。
【0077】
アクリル系感圧接着層のアクリル系粘着性ポリマーの含有量は、全樹脂成分の質量を基準として約70質量%~約100質量%である。アクリル系感圧接着層のアクリル系粘着性ポリマーの含有量を上記範囲とすることにより、アクリル系感圧接着層に低温条件下でも低い弾性率と高い凝集力の両方の特性を付与することができる感圧接着剤組成物が得られ、当該感圧接着剤組成物を用いて形成した感圧接着層にスライド性を付与したときに低温条件下でも安定した接着性を得ることができる。一実施態様では、アクリル系感圧接着層のアクリル系粘着性ポリマーの含有量は、全樹脂成分の質量を基準として約70質量%以上、又は約80質量%以上、100質量%以下、又は約99質量%以下である。
【0078】
アクリル系感圧接着層の厚さは、特に限定されず、例えば、約5μm以上、約10μm以上、又は約20μm以上、約200μm以下、約100μm以下、又は約80μm以下とすることができる。アクリル系感圧接着層の厚さとは、突起を含まないアクリル系感圧接着層の平滑な領域において、アクリル系感圧接着層に接触する層(例えばフィルム層)とアクリル系感圧接着層の界面と、剥離ライナーとアクリル系感圧接着層の界面との間の面間距離を意味する。例えば、アクリル系感圧接着層が後述する連通溝を有する場合、突起及び連通溝を含まない平滑な表面領域における厚さをアクリル系感圧接着層の厚さとする。
【0079】
アクリル系感圧接着層は、アクリル系感圧接着層の表面から突出した又はアクリル系粘着性ポリマーで覆われた、互いに離間した複数の粒子集団を更に含み、かつ複数の粒子集団の1つ以上をそれぞれ含む複数の突起を有する。1つの突起が1つの粒子集団を含んでもよく、2つ以上の粒子集団を含んでもよい。アクリル系感圧接着層の複数の粒子集団を含む複数の突起は、剥離ライナーを除去した後に、装飾フィルムを正確な位置まで被着体表面に沿ってスライドさせることを可能にする。その後、被着体上の所望の位置で装飾フィルムの上から圧力を加えて、粒子集団を含む突起をアクリル系感圧接着層の内部に押し込むことにより、アクリル系感圧接着層と被着体表面との接触面積を増加させることができ、これにより装飾フィルムを被着体に接着することができる。また、圧力を調整することによりアクリル系感圧接着層の被着体に対する接触面積を調整することができるため、装飾フィルムの位置を換えて再度接着することもできる。
【0080】
図1に示す装飾フィルム10のアクリル系感圧接着層14は、複数の粒子143をそれぞれ含む、互いに離間した複数の粒子集団を含み、粒子集団の存在する部分に粒子集団を含む突起144が形成されている。図1に示される実施態様では、剥離ライナー16は複数の粒子集団のうち1つをそれぞれ保護する複数の窪み164を有する。
【0081】
粒子集団を構成する粒子として、例えば、セラミック、ガラス、金属又はポリマーの粒子を使用することができる。
【0082】
粒子集団を構成する粒子の平均粒径は、突起がアクリル系感圧接着層内に押し込まれたときにフィルム層に影響を与えないように、アクリル系感圧接着層の厚さよりも小さいことが好ましい。例えば、アクリル系感圧接着層の厚さが約20μm~約40μmの範囲である場合、粒子の平均粒径は、一般に約10μm未満であり、好ましくは約0.1μm~約8μm、より好ましくは約0.2μm~約5μmである。
【0083】
隣り合う粒子集団の間隔は、約0.1mm~約0.5mmとすることができ、好ましくは約0.2mm~約0.4mmである。隣り合う粒子集団の間隔を上記範囲内とすることにより、良好なスライド性と接着性を得ることができる。
【0084】
複数の粒子集団の個数は、アクリル系感圧接着層の表面1cmあたり約100個~約10000個とすることができ、好ましくは約200個~約5000個、より好ましくは約400個~約3000個である。複数の粒子集団の個数を上記範囲内とすることにより、良好なスライド性と接着性を得ることができる。
【0085】
複数の粒子集団がアクリル系感圧接着層の表面を占める面積割合は、アクリル系感圧接着層の表面積の約0.1%~約5%とすることができ、好ましくは約0.2%~約3%、より好ましくは約0.4%~約1.5%である。複数の粒子集団の面積割合を上記範囲内とすることにより、良好なスライド性と接着性を得ることができる。
【0086】
突起の形状は様々であってよく、例えば、半球、円柱、角柱、四角錐、切頭円錐台、又は切頭角錐台とすることができる。
【0087】
突起の底幅は、約10μm~約60μmとすることができ、好ましくは約15μm~約50μm、より好ましくは約20μm~約40μmである。突起の底幅を上記範囲内とすることにより、より向上したスライド性又は空気抜け性をアクリル系感圧接着層に付与することができる。
【0088】
突起の高さは、約5μm~約35μmとすることができ、好ましくは約9μm~約30μm、より好ましくは約13μm~約25μmである。突起の高さを上記範囲内とすることにより、より向上したスライド性又は空気抜け性をアクリル系感圧接着層に付与することができる。
【0089】
隣り合う突起の間隔は、約30μm~約1000μmとすることができ、好ましくは約50μm~約750μm、より好ましくは約100μm~約500μmである。隣り合う突起の間隔を上記範囲内とすることにより、より向上したスライド性又は空気抜け性をアクリル系感圧接着層に付与することができる。
【0090】
一実施態様では、アクリル系感圧接着層は連通溝を更に有し、後述する剥離ライナーはアクリル系感圧接着層の連通溝と相補的な微細構造化表面を有する。連通溝を有するアクリル系感圧接着層は、向上した空気抜け性を提供することができる。連通溝は、装飾フィルムの外部と連通することが好ましい。このような連通溝は、高い空気抜け性をアクリル系感圧接着層に付与することができる。
【0091】
図2に示す実施態様では、アクリル系感圧接着層14は台形断面を有する連通溝145を有し、剥離ライナー16はアクリル系感圧接着層14の連通溝145と相補的な微細構造化表面165を有する。図1と同様に、図2に示すアクリル系感圧接着層14は、複数の粒子143をそれぞれ含む、互いに離間した複数の粒子集団を含み、粒子集団の存在する部分に粒子集団を含む突起144が形成されている。図2に示される実施態様においても図1と同様に、剥離ライナー16は複数の粒子集団の1つをそれぞれ保護する複数の窪み164を有する。
【0092】
連通溝の配置は規則的であってもよく、不規則であってもよい。複数の連通溝が互いに略平行に配置されるように形成される場合、連通溝の間隔は約10μm~約2000μmとすることができ、好ましくは約15μm~約1500μm、より好ましくは約20μm~約1000μmである。連通溝の深さは、アクリル系感圧接着層の厚さよりも小さく、例えば約10μm~約50μmとすることができる。連通溝の最大幅は、約5μm~約200μmとすることができ、好ましくは約10μm~約150μm、より好ましくは約20μm~約100μmである。
【0093】
連通溝の開口部がアクリル系感圧接着層の表面を占める面積割合は、アクリル系感圧接着層の表面積の約1%~約50%とすることができ、好ましくは約2%~約40%、より好ましくは約5%~約30%である。連通溝の開口部の面積割合を上記範囲内とすることにより、より向上した空気抜け性をアクリル系感圧接着層に付与しつつ接着性を確保することができる。
【0094】
連通溝の断面形状は、例えば、三角形、矩形、台形、半円形、又は半楕円形とすることができる。
【0095】
剥離ライナーは、アクリル系感圧接着層の表面にある複数の粒子集団を保護する複数の窪みを有する。1つの窪みが1つの粒子集団を保護してもよく、2つ以上の粒子集団を保護してもよい。剥離ライナーの窪みは、装飾フィルムの保管中に、粒子集団を構成する粒子に外力が加わることで粒子がアクリル系感圧接着層内部に移行し、アクリル系感圧接着層のスライド性が低下することを抑制することができる。アクリル系感圧接着層が連通溝を有する実施態様では、剥離ライナーはアクリル系感圧接着層の連通溝と相補的な微細構造化表面を有する。
【0096】
剥離ライナーは、シリコーン剥離処理された、プラスチックフィルム又はポリエチレンラミネート紙であることが好ましい。エンボス加工により、プラスチックフィルム又はポリエチレンラミネート紙に、窪み及び必要に応じて相補的な微細構造化表面を容易に形成することができる。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、及びポリプロピレンフィルムが挙げられる。
【0097】
剥離ライナーの厚さは、窪みの深さ、相補的な微細構造化表面の形状などによって様々であってよく、例えば、約10μm以上、又は約25μm以上、約500μm以下、又は約200μm以下とすることができる。
【0098】
装飾フィルムは、例えば以下の方法によって製造することができる。剥離処理面に窪み及び必要に応じて相補的な微細構造化表面を形成した剥離ライナーを用意する。窪みは、例えば、逆切頭円錐台状、半球状又は皿状であってよい。剥離ライナーの窪みに粒子を充填する。剥離ライナーの剥離処理面に感圧接着剤組成物をナイフコート、バーコートなどにより適用して、感圧接着剤組成物を粒子と接触させる。感圧接着剤組成物を乾燥及び必要に応じて熱風、オーブンなどを用いて加熱することにより硬化して、アクリル系感圧接着層を形成する。剥離ライナーの窪みに配置された粒子は、アクリル系感圧接着層の表面から突出して又はアクリル系粘着性ポリマーに覆われた状態で、アクリル系感圧接着層に少なくとも部分的に埋設され、アクリル系感圧接着層において、剥離ライナーの窪みに対応する位置に、粒子集団及び当該粒子集団を含む突起が形成される。剥離ライナーが相補的な微細構造化表面を有する場合、アクリル系感圧接着層の表面に連通溝が更に形成される。
【0099】
得られたアクリル系感圧接着層の上にフィルム層、又はフィルム層を含む積層体をドライラミネートなどの方法により積層することにより、装飾フィルムを製造することができる。剥離ライナーが除去されたアクリル系感圧接着層の表面はスライド性を有しており、装飾フィルムの位置決め又は位置換えを可能にする。
【0100】
装飾フィルムの厚さは、約30μm以上、約50μm以上、又は約70μm以上、約1mm以下、約500μm以下、又は約300μm以下とすることができる。装飾フィルムの厚さには、剥離ライナーの厚さは含まれない。装飾フィルムの厚さの基準となるアクリル系感圧接着層の厚さは前記定義したとおりである。一実施態様では、装飾フィルムの厚さは約240μm以下である。装飾フィルムの厚さを約240μm以下とすることにより、装飾フィルムに必要な難燃性を付与することができる。難燃性が要求される装飾フィルムの厚さは、好ましくは約200μm以下、より好ましくは約180μm以下である。
【0101】
一実施態様では、装飾フィルムは、被着体(下地)表面の色、模様などを効果的に隠蔽する。この実施態様では、装飾フィルムにおいて、背景色を白色及び黒色としてフィルム層側から測定したときの白色背景色の部分と黒色背景色の部分との色差ΔEは11以下である。色差ΔEは11以下である装飾フィルムは、下地の隠蔽性に優れており、カーラップ用途に好適に使用することができる。上記色差ΔEは、分光測色計を用いて、実施例の「1.隠蔽力」の項で説明された手順に従い決定される。
【0102】
一実施態様の装飾フィルムの接着力(常温接着力)は、JIS Z 0237:2009に準拠して、アルミニウム板を被着体として測定したときに、20℃で約10N/25mm以上、約15N/25mm以上、又は約20N/25mm以上である。装飾フィルムの上記接着力は、一般に約60N/25mm以下、約50N/25mm以下、又は約40N/25mm以下である。本開示において、装飾フィルムの常温接着力の測定手順及び条件は、実施例に記載の「2-1.常温接着力」を参照する。
【0103】
一実施態様の装飾フィルムの接着力(低温接着力)は、JIS Z 0237:2009に準拠して、アルミニウム板を被着体として測定したときに、5℃で約10N/25mm以上、約15N/25mm以上、又は約20N/25mm以上である。装飾フィルムの上記接着力は、一般に約50N/25mm以下、約45N/25mm以下、又は約40N/25mm以下である。本開示において、装飾フィルムの低温接着力の測定手順及び条件は、実施例に記載の「2-2.低温接着力」を参照する。
【0104】
本開示の装飾フィルムは、建築用看板、車両、船舶、航空機などのマーキング、カーラッピング、建築物の内装及び外装、照明看板などに使用することができ、特に通年で施工が行われる屋外用途に好適に使用することができる。
【実施例0105】
以下の実施例において、本開示の具体的な実施態様を例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。部及びパーセントは全て、特に明記しない限り質量による。数値は本質的に測定原理及び測定装置に起因する誤差を含む。数値は、表に記載のものも含めて、通常の丸め処理が行われた有効数字で示される。
【0106】
装飾フィルムの作製に使用した材料を表1に示す。剥離ライナー1(L1)及び剥離ライナー2(L2)のシリコーン処理面に設けられた窪みは、シリコーン処理面(剥離面)を上にしてこれらの剥離ライナーを置いたときに、開口幅(剥離面における幅)が約35μm、底部幅(剥離ライナー内部における幅)が約30μmである、逆切頭円錐台状(切頭円錐台を上下反転させた形状)であった。
【0107】
【表1】
【0108】
装飾フィルムの作製に使用した顔料1~4を表2に示す。
【表2】
【0109】
装飾フィルムの作製に使用したミルベース1~4(プレミックス)の配合を表3に示す。
【表3】
【0110】
装飾フィルムの作製に使用した感圧接着剤組成物CA1~CA5及びWA1~WA2の組成を表4に示す。CA2の調製にはMB1及びMB2を用いた。CA3の調製にはMB2及びMB3を用いた。CA4及びCA5の調製にはMB2を用いた。WA1及びWA2の調製にはMB4を用いた。
【0111】
【表4】
【0112】
例1
感圧接着剤組成物CA1を剥離ライナー1(L1)の上にナイフコーターで塗工した。塗布層を95℃で5分間乾燥した。乾燥後に厚さ38μmのアクリル系感圧接着層が得られた。アクリル系感圧接着層とフィルム1(FL1)とを貼り合わせることによりFL1にアクリル系感圧接着層を転写して、例1の装飾フィルムを得た。
【0113】
例2~例11
感圧接着剤組成物、アクリル系感圧接着層の厚さ、及び剥離ライナーを表5に示すとおり変更した以外は、例1と同様の手順で例2~例11の装飾フィルムを得た。
【0114】
剥離ライナーL1に感圧接着剤組成物を塗布及び乾燥しフィルムと貼り合わせて得られた積層体から剥離ライナーを除去すると、剥離ライナー中の窪みに充填された粒子が突起として感圧接着層面に転写されて、感圧接着層表面に微細構造を設けることができる。剥離ライナーとしてL1を用いて形成されたアクリル系感圧接着層は、L1の窪みに対応する位置に、頂部の直径が約30μm、底部の直径が約35μm、高さが約18μmの切頭円錐台状であって粒子を含む複数の突起を約300μmの間隔で有していた。
【0115】
剥離ライナーL2に感圧接着剤組成物を塗布及び乾燥しフィルムと貼り合わせて得られた積層体から剥離ライナーを除去すると、剥離ライナー中の窪みに充填された粒子が突起として感圧接着層面に転写され、更に連通溝が感圧接着層面に転写されて、感圧接着層表面に微細構造を設けることができる。剥離ライナーとしてL2を用いて形成されたアクリル系感圧接着層は、L2の窪みに対応する位置に、頂部の直径が約30μm、底部の直径が約35μm、高さが約18μmの切頭円錐台状であって粒子を含む複数の突起を約300μmの間隔で有しており、更に、L2の相補的な微細構造化表面(ライナー全面に直線状に設けた隆起部)に対応する位置に、断面形状が台形であって、開口幅が約50μm、底部幅が約40μm、高さが約28μmの直線状に延びる連通溝を約340μmの間隔で有していた。
【0116】
比較例1
3M(登録商標)Scotchcal(登録商標)フィルムJS1805XLシルバーメタリックフィルム(スリーエムジャパン株式会社(日本国東京都品川区))を使用した。
【0117】
例12
感圧接着剤組成物WA1を剥離ライナー1(L1)の上にナイフコーターで塗工した。塗布層を95℃で5分間乾燥した。乾燥後に厚さ38μmのアクリル系感圧接着層が得られた。アクリル系感圧接着層とフィルム2(FL2)とを貼り合わせることによりFL2にアクリル系感圧接着層を転写して、例12の装飾フィルムを得た。
【0118】
例13~例19
フィルム層、感圧接着剤組成物、及びアクリル系感圧接着層の厚さを表6に示すとおり変更した以外は、例12と同様の手順で例13~例19の装飾フィルムを得た。
【0119】
比較例2
粘着性ポリマー2(ADH2)と架橋剤2(CL2)を混合して感圧接着剤組成物を調製した。ADH2とCL2の質量比は固形分で100:0.20であった。感圧接着剤組成物を剥離ライナー1(L1)の上にナイフコーターで塗工した。塗布層を95℃で5分間乾燥した。乾燥後に厚さ30μmのアクリル系感圧接着層が得られた。アクリル系感圧接着層とフィルム3(FL3)とを貼り合わせることによりFL3にアクリル系感圧接着層を転写して、比較例2の装飾フィルムを得た。
【0120】
装飾フィルムを以下の項目について評価した。
【0121】
1.隠蔽力
装飾フィルムを長さ100mm、幅50mmの長方形に切断して試験片を作製した。試験片を隠蔽率試験紙(市松、隠ぺい性試験紙(ハイディングパワーチャート)、精英堂印刷株式会社(日本国山形県米沢市))上に貼り付けた。白色領域及び黒色領域について、試験片のL、a、bの値を、分光測色計(CM-3700d、コニカミノルタジャパン株式会社(日本国東京都港区))を用いて測定した。白色領域の測定値をL 、a 、b とし、黒色領域の測定値をL 、a 、b としたときに、隠蔽力の指標として色差ΔEを以下の式:
ΔE=[(L -L +(a -a +(b -b 1/2
で計算して求めた。ΔEが6未満をA、6以上12未満をB、12以上をCと評価した。評価A又は評価Bの装飾フィルムは隠蔽力を有するものとみなされる。
【0122】
2-1.常温接着力
装飾フィルムを長さ150mm、幅25mmの長方形に切断して試験片を作製した。試験片をメラミン塗装板(株式会社パルテック、日本国神奈川県平塚市)、又はアルミニウム板(株式会社パルテック、日本国神奈川県平塚市)の上に20℃で貼り付けた。貼り付け方法はJIS Z 0237:2009 8.2.3に準拠した。試験片を20℃で48時間放置した。引張試験機(テンシロン(登録商標)万能試験機、型番:RTC-1210A、株式会社エー・アンド・デイ、日本国東京都豊島区)を用いて温度20℃、剥離速度300mm/分で180度剥離を行ったときの接着力(N/25mm)を測定した。
【0123】
2-2.低温接着力
装飾フィルムを長さ150mm、幅25mmの長方形に切断して試験片を作製した。試験片をメラミン塗装板(株式会社パルテック、日本国神奈川県平塚市)、又はアルミニウム板(株式会社パルテック、日本国神奈川県平塚市)の上に5℃で貼り付けた。貼り付け方法はJIS Z 0237:2009 8.2.3に準拠した。試験片を5℃で24時間放置した。引張試験機(テンシロン(登録商標)万能試験機、型番:RTC-1210A、株式会社エー・アンド・デイ、日本国東京都豊島区)を用いて温度20℃、剥離速度300mm/分で180度剥離を行ったときの接着力(N/25mm)を測定した。
【0124】
3.スライド性
装飾フィルムを長さ100mm、幅50mmの長方形に切断して試験片を作製した。剥離ライナーを剥がし、試験片の接着面をガラス板に25℃で軽く接触させた。直方体の重り(底面40mm×60mm、質量約40g)を試験片の上に置いた。重りを載せた状態で、試験片をガラス板上で滑らせることができた場合を「良好」、試験片がガラス板に貼り付いて滑らせることができなかった場合を「不良」と評価した。
【0125】
4.空気抜け性
装飾フィルムを長さ100mm、幅50mmの長方形に切断して試験片を作製した。剥離ライナーを剥がし、試験片の接着面をガラス板に25℃で軽く接触させた。スキージを用いて試験片に圧力を掛けながら試験片を擦った。試験片とガラス板の間に気泡が残らなかった場合を「良好」、気泡が残った場合を「不良」と評価した。
【0126】
5.熱収縮性
装飾フィルムを長さ100mm、幅50mmの長方形に切断して試験片を作製した。23℃の環境下で試験片をアルミニウム板(株式会社パルテック、日本国神奈川県平塚市)の上にローラーで貼り付けて、23℃の環境下、24時間放置した。試験片にカッターで十字に切り込みを入れた。その後、試験片を65℃で48時間加熱した。加熱エージング後、顕微鏡でフィルムの収縮量(mm)を測定し、最大値を記録した。
【0127】
例1~例11及び比較例1の装飾フィルムの評価結果を表5に示す。
【0128】
【表5】
【0129】
例12~例19及び比較例2の装飾フィルムの評価結果を表6に示す。
【0130】
【表6】
【0131】
本発明の基本的な原理から逸脱することなく、上記の実施態様及び実施例が様々に変更可能であることは当業者に明らかである。また、本発明の様々な改良及び変更が本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに実施できることも当業者には明らかである。本開示の実施態様の一部を以下に記載する。
[態様1]
フィルム層と、アクリル系粘着性ポリマー及び顔料を含むアクリル系感圧接着層と、剥離ライナーとを含む、位置決め及び位置換え可能な装飾フィルムであって、
前記アクリル系粘着性ポリマーの重量平均分子量は200,000~350,000であり、
前記アクリル系粘着性ポリマーのガラス転移温度は-10℃以下であり、
前記アクリル系感圧接着層は、前記アクリル系粘着性ポリマー100質量部を基準として、前記顔料を3質量部~60質量部含み、
前記アクリル系感圧接着層の前記アクリル系粘着性ポリマーの含有量は、全樹脂成分の質量を基準として70質量%~100質量%であり、
前記アクリル系感圧接着層は、前記アクリル系感圧接着層の表面から突出した又は前記アクリル系粘着性ポリマーで覆われた、互いに離間した複数の粒子集団を更に含み、かつ前記複数の粒子集団の1つ以上をそれぞれ含む複数の突起を有し、
前記剥離ライナーは、前記複数の粒子集団の1つ以上をそれぞれ保護する複数の窪みを有する、装飾フィルム。
[態様2]
前記顔料が金属顔料を含み、前記アクリル系感圧接着層の前記金属顔料の含有量が、前記アクリル系粘着性ポリマー100質量部を基準として3質量部~30質量部である、態様1に記載の装飾フィルム。
[態様3]
前記顔料が白色顔料を含み、前記アクリル系感圧接着層の前記白色顔料の含有量が、前記アクリル系粘着性ポリマー100質量部を基準として30質量部~60質量部である、態様1に記載の装飾フィルム。
[態様4]
前記アクリル系感圧接着層が、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーと、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーとを含む、態様1~3のいずれか一態様に記載の装飾フィルム。
[態様5]
前記アクリル系感圧接着層が連通溝を更に有し、前記剥離ライナーが前記アクリル系感圧接着層の前記連通溝と相補的な微細構造化表面を有する、態様1~4のいずれか一態様に記載の装飾フィルム。
[態様6]
前記装飾フィルムにおいて、背景色を白色及び黒色として前記フィルム層側から測定したときの前記白色背景色の部分と前記黒色背景色の部分との色差ΔEが11以下である、態様1~5のいずれか一態様に記載の装飾フィルム。
[態様7]
前記装飾フィルムが、JIS Z 0237:2009に準拠して、アルミニウム板を被着体として測定したときに、5℃で10N/25mm以上の接着力を有する、態様1~6のいずれか一態様に記載の装飾フィルム。
【符号の説明】
【0132】
10 装飾フィルム
12 フィルム層
14 アクリル系感圧接着層
141 アクリル系粘着性ポリマー
142 顔料
143 粒子
144 突起
145 連通溝
16 剥離ライナー
164 窪み
165 相補的な微細構造化表面
図1
図2