(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131781
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】車両用リッド装置
(51)【国際特許分類】
B60K 15/05 20060101AFI20240920BHJP
E05B 83/34 20140101ALI20240920BHJP
【FI】
B60K15/05 B
E05B83/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042241
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】田中 優希
【テーマコード(参考)】
2E250
3D038
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ52
2E250LL13
2E250MM03
2E250RR11
2E250SS02
3D038CB01
3D038CC16
(57)【要約】
【課題】リッドの押し込みによって自動開放可能とした利便性の良い車両用リッド装置におけるアクチュエータの過負荷を抑制する。
【解決手段】車両用リッド装置10は、開放位置、閉鎖位置、及び押込位置に移動可能なリッド25と、リッド25を閉鎖位置から開放位置に移動させるためのアクチュエータ30と、リッド25を押込位置から閉鎖位置に付勢する付勢部材37a,40aと、押込位置へのリッド25の移動を検出する検出部39と、検出部39からの信号に基づいて、アクチュエータ30によってリッド25を開作動させるリッド開処理を実行する制御部45とを備える。リッド開処理で制御部45は、検出部39からの信号によって押込位置からのリッド25の離反を検出すると、開作動を開始するか否かを判断する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の受給口を開放した開放位置、前記受給口を閉鎖した閉鎖位置、及び前記閉鎖位置よりも車内側に位置する押込位置に移動可能なリッドと、
前記リッドを前記閉鎖位置から前記開放位置に移動させるためのアクチュエータと、
前記リッドを前記押込位置から前記閉鎖位置に付勢する付勢部材と、
前記押込位置への前記リッドの移動を検出する検出部と、
前記検出部からの信号に基づいて、前記アクチュエータによって前記リッドを前記閉鎖位置から前記開放位置に開作動させるリッド開処理を実行する制御部と
を備え、
前記リッド開処理で前記制御部は、前記検出部からの信号によって前記押込位置からの前記リッドの離反を検出すると、前記開作動を開始するか否かを判断する、車両用リッド装置。
【請求項2】
前記制御部による前記リッド開処理には、前記リッドの押込操作を受け付ける有効期間が定められるとともに、前記有効期間の後に前記リッドの押込操作を受け付けない第1無効期間が定められており、
前記制御部は、前記押込位置からの前記リッドの離反を検出した操作終了時点が前記有効期間内であるときに前記開作動を開始する一方、前記操作終了時点が前記第1無効期間内であるときには前記開作動は行わない、
請求項1に記載の車両用リッド装置。
【請求項3】
前記制御部による前記リッド開処理には、前記有効期間の前に前記リッドの押込操作を受け付けない第2無効期間が定められており、
前記制御部は、前記操作終了時点が前記第2無効期間内であるときには前記開作動は行わない、
請求項2に記載の車両用リッド装置。
【請求項4】
前記検出部は、
前記受給口内に配置され、押込操作によってオン状態及びオフ状態のうちの一方の第1状態に切り換わり、非操作状態では前記オン状態及び前記オフ状態のうちの他方の第2状態に切り換わる操作検出部と、
前記閉鎖位置よりも前記開放位置側に移動した前記リッドを検出する開放検出部と
を含み、
前記アクチュエータは、前記リッドを前記開放位置から前記閉鎖位置に移動可能であり、
前記制御部は、前記開放検出部からの信号によって前記開放位置側への前記リッドの移動を検出していないときに、前記リッド開処理を実行する一方、前記開放検出部からの信号によって前記開放位置側への前記リッドの移動を検出しているときに、前記アクチュエータによって前記リッドを前記開放位置から前記閉鎖位置に閉作動させるリッド閉処理を実行し、
前記リッド閉処理で前記制御部は、前記操作検出部からの信号が前記第1状態を示すと前記閉作動を開始する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用リッド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用リッド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電気自動車に用いられる車両用リッド装置が開示されている。この車両用リッド装置のリッドは、開放位置と閉鎖位置に移動可能であり、リモートキー又は車内に配置された操作パネルの操作により、アクチュエータによって自動開閉される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の車両用リッド装置では、ユーザによるリモートキーの取り出し又は車内への移動を行わなければ、リッドを開操作できないため、利便性について改善の余地がある。一方で、閉鎖位置からのリッドの押し込みを検出する検出部を設け、検出部の検出結果に基づいてリッドを自動開放可能にすれば、ユーザの利便性は向上する。しかし、ユーザがリッドから手を離していないのにも拘わらず、アクチュエータによってリッドを開作動させると、ユーザが手でリッドの開作動を妨げることになるため、アクチュエータに過剰な負荷が加わるという不都合がある。
【0005】
本発明は、リッドの押し込みによって自動開放可能とした利便性の良い車両用リッド装置におけるアクチュエータの過負荷の抑制を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、車両の受給口を開放した開放位置、前記受給口を閉鎖した閉鎖位置、及び前記閉鎖位置よりも車内側に位置する押込位置に移動可能なリッドと、前記リッドを前記閉鎖位置から前記開放位置に移動させるためのアクチュエータと、前記リッドを前記押込位置から前記閉鎖位置に付勢する付勢部材と、前記押込位置への前記リッドの移動を検出する検出部と、前記検出部からの信号に基づいて、前記アクチュエータによって前記リッドを前記閉鎖位置から前記開放位置に開作動させるリッド開処理を実行する制御部とを備え、前記リッド開処理で前記制御部は、前記検出部からの信号によって前記押込位置からの前記リッドの離反を検出すると、前記開作動を開始するか否かを判断する、車両用リッド装置を提供する。
【0007】
ユーザが閉鎖位置のリッドを押し込むと、押込位置へのリッドの移動によって検出部からの信号が変化する。また、ユーザがリッドから手を離すと、付勢部材による付勢力によってリッドが押込位置から離反して閉鎖位置に復帰するため、検出部からの信号が再び変化する。
【0008】
制御部は、検出部からの信号によって、押込位置からのリッドの離反を検出すると、アクチュエータによるリッドの開作動を開始するか否かを判断する。つまり、制御部は、ユーザがリッドを押込操作している状態ではアクチュエータによるリッドの開作動は行わず、ユーザがリッドから手を離すとアクチュエータによるリッドの開作動を開始するか否かを判断する。このように、リッドの開作動は、ユーザがリッドから手を離さなければ開始されないため、ユーザが手でリッドの開作動を妨げることはない。よって、アクチュエータに過剰な負荷が加わることを抑制できる。また、リッドの押し込みによってリッドを自動開放できるため、ユーザの利便性を向上できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、リッドの押し込みによって自動開放可能とした利便性の良い車両用リッド装置におけるアクチュエータの過負荷を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用リッド装置の斜視図。
【
図4】リッドが閉鎖位置に回転した車両用リッド装置の
図3と同様の断面図。
【
図5】リッドが押込位置に回転した車両用リッド装置の
図3と同様の断面図。
【
図7】リッドが正常に開操作されたときのスイッチの出力状態を示すタイムチャート。
【
図8】意図せずにリッドが押し込まれたときのスイッチの出力状態を示すタイムチャート。
【
図9】意図せずにリッドが押し込まれた
図8とは異なるスイッチの出力状態を示すタイムチャート。
【
図10】制御部によるリッド開閉制御を示すフローチャート。
【
図13】リッドが正常に開操作されたときのスイッチの出力状態の変形例を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0012】
図1及び
図2を参照すると、本発明の実施形態に係る車両用リッド装置10は、車両のアウタパネル1の受給口2に配置され、閉鎖状態の受給口2を自動開放可能である。受給口2は、車両側面のアウタパネル1に形成された凹部3の底に設けられている。但し、受給口2は、車両前部のボンネットに設けられてもよい。
【0013】
添付図面におけるX方向は車長方向であり、矢印が示す向きが前側で、矢印とは逆向きが後側である。Y方向は車幅方向であり、矢印が示す向きが内側(車内側)で、矢印とは逆向きが外側(車外側)である。Z方向は車高方向であり、矢印が示す向きが上側で、矢印とは逆向きが下側である。
【0014】
引き続いて
図1及び
図2を参照すると、車両用リッド装置10は、ベース20とリッド25を備え、ベース20に給電コネクタ15が取り付けられている。また、車両用リッド装置10は、ベース20に対してリッド25を自動開閉するためのアクチュエータ30と、アクチュエータ30を制御する制御装置35とを備える。
【0015】
本実施形態では、ユーザの利便性向上のために、リッド25の押込操作によってアクチュエータ30を作動させてリッド25を開放可能とし、この作動時にアクチュエータ30に過剰な負荷が加わることを抑制する。
【0016】
以下、給電コネクタ15、ベース20、リッド25、アクチュエータ30、及び制御装置35について、具体的に説明する。
【0017】
給電コネクタ15は、受給口2内に配置され、充電プラグ(図示せず)の接続によって、車両の外部から供給される電気を補充するための受給部である。但し、受給部は、ガソリン及び軽油等の液体燃料、並びに水素及びLPガス等の気体燃料のうちのいずれかが補充される構成であってもよい。
【0018】
ベース20は、アウタパネル1の車幅方向内側に取り付けられる。このベース20は、受給口2を塞ぐベース本体21と、アーム26を介してリッド25を軸支する軸受部23とを備える。
【0019】
ベース本体21には、車幅方向内側に窪む凹部からなる取付部21aが設けられ、この取付部21aに車幅方向内側から給電コネクタ15が取り付けられている。また、ベース本体21には、車幅方向外側から見て受給口2内に位置するように、アーム26を挿通する挿通孔21bと、制御装置35が備えるスイッチ40(
図3参照)を配置する貫通した開口部21cとが設けられている。また、ベース本体21の外周部には、閉鎖状態のリッド25とベース本体21との間をシールするシール部材22が取り付けられている。
【0020】
軸受部23は、ベース本体21と一体構造であり、取付部21aに対して車長方向前側に隣接して設けられ、車幅方向内側に突出している。この軸受部23は、車高方向に対向するように配置され、XY平面に沿って延びる一対の壁部23aを備え、これらの間の隙間にアーム26の内端部が配置されている。
【0021】
リッド25は、受給口2よりも小さくシール部材22よりも大きい楕円形状の板体からなる。リッド25は、軸受部23に軸支されるアーム26を備え、車高方向に延びる回転軸まわりに回動可能で、受給口2を開放可能に閉鎖する。より具体的には、リッド25は、
図1から
図3に示す開放位置、
図4に示す閉鎖位置、及び
図5に示す押込位置に回動可能である。
【0022】
図1から
図3に示す開放位置では、リッド25は、車外側に突出し、受給口2内に位置する給電コネクタ15の接続部15aを車外側に露出させる。
図4に示す閉鎖位置では、リッド25は、アウタパネル1に対して面一に延びて受給口2を閉鎖し、給電コネクタ15を覆い隠す。
図5に示す押込位置では、リッド25は、
図4に示す閉鎖位置よりも車内側に位置する。
【0023】
以下の説明では、アクチュエータ30による
図4に示す閉鎖位置から
図1から
図3に示す開放位置へのリッド25の回動を開作動と言い、アクチュエータ30による
図1から
図3に示す開放位置から
図4に示す閉鎖位置へのリッド25の回動を閉作動と言うことがある。また、ユーザによる
図4に示す閉鎖位置から
図5に示す押込位置への回動を押込操作と言い、
図5に示す押込位置から
図4に示す閉鎖位置への回動を復帰回動と言うことがある。
【0024】
図1及び
図4を参照すると、リッド25には、アーム26とは反対側に一対の突出部25a,25bが設けられている。なお、これらの突出部25a,25bについては、後に詳述する。
【0025】
図1及び
図2を参照すると、アーム26は、挿通孔21bを通してベース20の車幅方向の外側から内側に跨がって配置されている。アーム26は、軸受部23の一対の壁部23a間に回転可能に配置された軸部材26a、軸部材26aから突出した平板状の第1アーム部26b、及び第1アーム部26bの先端に連なる第2アーム部26cによって構成されている。そのうち、第2アーム部26cは、軸部材26aまわりの周方向に延びる円弧状であり、挿通孔21bに挿通されている。この第2アーム部26cの先端がリッド25に連なっている。
【0026】
引き続いて
図1及び
図2を参照すると、アクチュエータ30は、制御装置35からの制御信号によってリッド25を開作動又は閉作動させる。このアクチュエータ30は、
図6に示すモータ31と、モータ31の出力軸とアーム26の軸部材26aとを機械的に接続する伝達機構(図示せず)とを備える。
【0027】
モータ31は、ステッピングモータによって構成され、アーム26の回転角度位置を制御可能である。モータ31は、制御装置35が備える制御部45(
図6参照)に接続された駆動回路(図示せず)によって正転又は逆転される。正転によってモータ31は、アーム26を介してリッド25を
図4に示す閉鎖位置から
図1及び
図3に示す開放位置に回動させる(開作動)。逆転によってモータ31は、アーム26を介してリッド25を
図1及び
図3に示す開放位置から
図4に示す閉鎖位置に回動させる(閉作動)。また、モータ31は、
図4に示す閉鎖位置と
図5に示す押込位置との間のリッド25の回動を許容する。
【0028】
制御装置35は、ベース20の取付部21aの車長方向後側に車幅方向内側から取り付けられている。
図3を参照すると、制御装置35は、ケーシング36、ケーシング36の車幅方向外側の表面を覆うカバー37、ケーシング36内に収容された回路基板38、及びケーシング36内に回路基板38を位置決めする位置決め部材44を備える。
【0029】
ケーシング36は、透光性を有する樹脂により形成されている。このケーシング36は、ベース20の内側面に沿って配置される外壁36aと、外壁36aの外周縁から車幅方向内側に突出する筒状の外周壁36bとを備え、車幅方向内側が開口されている。
【0030】
外壁36aには、ベース20の開口部21cと対応するように、車幅方向に貫通する円形状の貫通孔36cが設けられている。この貫通孔36cの孔径は、成人の手の指を挿入可能な大きさである。また、外壁36aには、貫通孔36cの車長方向後側に位置するように、車幅方向の外側と内側に突出した円柱状のレンズ部36dが設けられている。このレンズ部36dの車幅方向の外端は、ベース本体21に形成された貫通部21d内に配置され、リッド25が
図1に示す開放位置に回動したときに車外側に露出する。
【0031】
外周壁36bには、ベース20の取付部21aと対向する部分から車長方向前側へ突出したレンズ部36eが設けられている。このレンズ部36eの先端は、取付部21aに形成された貫通部21e内に配置され、取付部21a内に露出している。
【0032】
カバー37は、遮光性を有する色のゴム製であり、ケーシング36の車幅方向外側を覆っている。このカバー37には、貫通孔36cに対応して車幅方向に弾性的に変形可能な操作部37aが設けられている。この操作部37aには、非プッシュ状態のスイッチ40の操作部40aに概ね当接するように、車幅方向内側へ突出する押圧部37bが設けられている。また、カバー37には、レンズ部36dが貫通される貫通孔37bが設けられている。
【0033】
回路基板38の車外側の面には、スイッチ(操作検出部)40、ホールIC(開放検出部)41、第1のLED42、及び第2のLED43が配置されている。そのうち、スイッチ40とホールIC41は、
図5に示す押込位置へのリッド25の移動を検出する検出部39(
図6参照)を構成する。
【0034】
スイッチ40は、プッシュスイッチからなり、ケーシング36の貫通孔36cの車幅方向内側に配置されている。
図7を参照すると、このスイッチ40は、操作部40aのプッシュ操作(
図5参照)によってオン状態(第1状態)に切り換わって信号を出力し、操作部40aの非操作状態(
図4参照)ではオフ状態(第2状態)に切り換わって信号を出力しない。但し、スイッチ40は、プッシュ操作によってオフ状態(第1状態)に切り換わり、非操作状態でオン状態(第2状態)に切り換わる構成であってもよい。
【0035】
スイッチ40は、
図4に示す閉鎖位置にリッド25が回動した状態では、ユーザによるリッド25の押込操作によって、リッド25が備える突出部25aを介して操作される(
図5参照)。一方で、スイッチ40は、
図1から
図3に開放位置にリッド25が回動した状態では、ユーザの指で直接プッシュ操作される。つまり、スイッチ40は、ベース20の開口部21cとケーシング36の貫通孔36cを通して押込操作を検出する操作検出部を構成する。但し、操作検出部は、ひずみゲージであってもよく、車幅方向の外側から内側への押込操作によってオン状態に切り換わり、非操作状態ではオフ状態に切り換わる構成であればよい。
【0036】
図1、
図4、及び
図5を参照すると、リッド25が備える突出部25aは、
図4に示す閉鎖位置にリッド25が回動した状態で、スイッチ40の車幅方向外側に位置している。この突出部25aは、
図4に示す閉鎖位置でカバー37の操作部37aに概ね当接しており、
図5に示す押込位置へのリッド25の押込操作によって、操作部37aを弾性的に変形させてスイッチ40の操作部40aをプッシュ操作する。一方で、リッド25の押込操作が解除されると、スイッチ40の操作部40aがバネ(図示せず)によって初期位置に復帰するとともに、カバー37の操作部37aが弾性的に初期位置に復帰する。これにより、突出部25aが車幅方向外側に付勢されて、リッド25が
図4に示す閉鎖位置に復帰回動する。つまり、スイッチ40の操作部40aとカバー37の操作部37aは、リッド25を
図5に示す押込位置から
図4に示す閉鎖位置に付勢する付勢部材として機能する。但し、付勢部材は、専用のスプリングであってもよく、リッド25を
図4に示す閉鎖位置に付勢できる構成であればよい。
【0037】
図3を参照すると、ホールIC41は、一部のみがケーシング36の貫通孔36c内に位置し、残りの部分が外壁36aによって覆われるように配置されている。このホールIC41は、
図4に示す閉鎖位置及び
図5に示す押込位置にリッド25が回動した状態では、リッド25が備える磁石41aの磁気の検出によってオフ状態に切り換わって信号を出力しない。一方で、ホールIC41は、
図1から
図3に開放位置にリッド25が回動した状態では、磁石41aの磁気の非検出によってオン状態に切り換わって信号を出力する。但し、ホールIC41は、磁気の検出によってオン状態に切り換わり、磁気の非検出によってオフ状態に切り換わる構成であってもよい。
【0038】
図1、
図4、及び
図5を参照すると、リッド25が備える磁石41aは、リッド25に形成された突出部25bに配置されている。この突出部25bは、
図4に示す閉鎖位置にリッド25が回動した状態で、ホールIC41の車幅方向外側に位置している。
図4に示す閉鎖位置と
図5に示す押込位置にリッド25が回動した状態では、突出部25bに近接したホールIC41が磁石41aの磁気を検出可能である。一方で、
図1及び
図3に示す開放位置にリッド25が回動した状態では、突出部25bから離反したホールIC41は磁石41aの磁気を検出できない。
【0039】
このように構成されたホールIC41は、
図1から
図3に示す開放位置側へのリッド25の移動を検出する開放検出部である。但し、開放検出部は、MR素子又は光センサであってもよく、
図4に示す閉鎖位置よりも
図1及び
図3に示す開放位置側に回動したリッド25を検出できる構成であればよい。
【0040】
LED42は、ケーシング36のレンズ部36dの車幅方向内側に対向して配置されている。このLED42は、フルカラーLEDによって構成され、レンズ部36dを透して車載バッテリ5(
図6参照)の充電状態を発光色によって知らせるための光源である。
【0041】
LED43は、ケーシング36のレンズ部36eの車長方向後側に配置されている。このLED43は、昼光色LEDによって構成され、レンズ部36eを透して取付部21a内を照らす光源である。
【0042】
位置決め部材44は、矩形枠状で、回路基板38の車幅方向内側に位置するようにケーシング36の外周壁36b内に嵌め込まれ、外壁36aとの間に回路基板38を位置決めする。
【0043】
図3及び
図6を参照すると、制御装置35が備える回路基板38には、リッド25を開閉制御する制御部45が更に設けられている。制御部45は、単一又は複数のマイクロコンピュータ、及びその他の電子デバイスにより構成され、回路基板38の車内側の面に配置されている。但し、制御部45は、車両に搭載されたECU(Electronic Control Unit)によって構成されてもよい。
【0044】
図6を参照すると、制御部45には、バッテリ5、モータ31、スイッチ40、ホールIC41、及びLED42,43が接続されている。この制御部45は、スイッチ40及びホールIC41からの信号(検出結果)に基づいて、モータ31を制御するとともに、LED42,43を制御する。
【0045】
制御部45は、メモリ46とタイマ47を備える。メモリ46には、スイッチ40及びホールIC41からの信号に基づいて、モータ31を制御してリッド25を開閉するためのプログラム、及びプログラムに用いられる設定値等が記憶されている。本実施形態のリッド開閉制御には、リッド開処理とリッド閉処理が含まれている(
図10参照)。タイマ(計測部)47は、リッド開処理において、ユーザによるリッド25の押込操作時間Otを計測する。
【0046】
制御部45は、リッド開処理とリッド閉処理のいずれを実行するかの判断を、ホールIC41からの信号に基づいて行う。具体的には、制御部45は、ホールIC41からの信号に基づいて、リッド25が
図1から
図3に示す開放位置に回動しているか否かを判断し、開放しているときにはリッド閉処理を実行し、閉鎖しているときにはリッド開処理を実行する。
図1から
図3に示す開放位置にリッド25が回動している場合、ホールIC41が磁気の非検出により信号を出力するため、この信号の入力によって制御部45は、リッド25が開放していると判断できる。一方で、
図4に示す閉鎖位置にリッド25が回動している場合、ホールIC41が磁気の検出によって信号を出力しないため、信号の未入力によって制御部45は、リッド25が閉鎖していると判断できる。
【0047】
制御部45は、リッド開処理とリッド閉処理のいずれでも、モータ31によってリッド25を作動させるか否かの判断を、スイッチ40が押込操作されたか否か、つまりスイッチ40からの信号に基づいて行う。
図7から
図9を参照すると、リッド開処理では、制御部45は、スイッチ40からの信号から得られる操作終了時点Eptと、予め設定された有効期間Vtとに基づいて、リッド25を開作動させるか否かを判断する。リッド閉処理では、制御部45は、スイッチ40からの信号から得られる操作開始時点Sptのみに基づいて、リッド25を閉作動させるか否かを判断する。
【0048】
具体的には、押込操作されたスイッチ40は信号を出力するため、この信号の入力によって制御部45は、スイッチ40が操作されたと判断できる。また、非操作状態のスイッチ40は信号を出力しないため、信号の未入力によって制御部45は、スイッチ40が操作されていないと判断できる。一方で、制御部45は、ホールIC41からの信号によってリッド25が閉鎖していると判断している場合、スイッチ40の操作はリッド25の押し込み(
図5参照)によって行われていると判断できる。また、制御部45は、ホールIC41からの信号によってリッド25が開放していると判断している場合、スイッチ40の操作はユーザが指で直接行っていると判断できる。
【0049】
また、制御部45は、リッド開処理によって
図1から
図3に示す開放位置にリッド25を回動させると、LED42を発光させてバッテリ5の充電状態を表示するとともに、LED43を発光させて受給口2内を照明する。一方で、制御部45は、リッド閉処理によって
図4に示す閉鎖位置にリッド25を回動させると、LED42,43を消灯する。
【0050】
次に、
図7から
図9を参照して、制御部45によるリッド開処理について具体的に説明する。なお、
図7はユーザによるリッド25の正常な開操作状態を示し、
図8は意図しないリッド25の過剰な操作状態を示し、
図8は意図しないリッド25の瞬間的な操作状態を示している。
【0051】
リッド開処理では、制御部45は、スイッチ40からの信号によって
図5に示す押込位置からのリッド25の離反(
図7に示す操作終了時点Ept)を検出すると、アクチュエータ30によるリッド25の開作動を開始するか否かを判断する。具体的には、以下の通りである。
【0052】
図7を参照すると、制御部45によるリッド開処理には、有効期間Vtが定められ、有効期間Vtの直前には前無効期間(第2無効期間)It1が定められ、有効期間Vtの直後には後無効期間(第1無効期間)It2が定められている。制御部45は、スイッチ40からの信号によって
図5に示す押込位置に移動したリッド25を検出すると(操作開始時点Spt)、タイマ47によって連続した操作時間Otを計測する。そして、制御部45は、
図5に示す押込位置からのリッド25の離反を検出すると、その操作終了時点Eptが有効期間Vt内であるときのみ、リッド25の押込操作を受け付けて、リッド25の開作動を開始する。つまり、制御部45は、操作終了時点Eptが無効期間It1又はIt2内であるときには、リッド25の押込操作を受け付けずに、リッド25の開作動は行わない。
【0053】
前無効期間It1は、意図しない瞬間的なリッド25の押し込みによって、リッド25が開作動することを防止するために設けられている。この前無効期間It1は、
図5に示す押込位置にリッド25を押込操作した第1時点Pt1(操作開始時点Spt)から第2時点Pt2までの、いわゆる長押し操作とは言えない短い時間範囲であり、例えば0秒よりも大きく0.3秒未満に設定される。
図9に示すように、リッド25の押込操作時間Otの操作終了時点Eptが前無効期間It1内にある場合、制御部45は、モータ31によるリッド25の開作動は行わない。つまり、制御部45は、リッド25の押込操作を受け付けず、リッド25の開作動を否認する。
【0054】
有効期間Vtは、リッド25の押込操作を受け付け、リッド25を開作動させるために設けられている。この有効期間Vtは、前無効期間It1の上限である第2時点Pt2から第3時点Pt3までの、いわゆる長押し操作と言われる時間範囲であり、例えば0.3秒以上3秒未満に設定される。
図7に示すように、リッド25の押込操作時間Otの操作終了時点Eptが有効期間Vt内にある場合、制御部45は、モータ31によるリッド25の開作動を開始する。つまり、制御部45は、リッド25の押込操作を受け付けて、リッド25の開作動を容認する。
【0055】
後無効期間It2は、過度に長いリッド25の押し込みによって、リッド25が開作動することを防止するために設けられている。この後無効期間It2は、有効期間Vtの上限である第3時点Pt3を超える、過剰な押込操作と言える時間範囲であり、例えば3秒以上に設定される。この後無効期間It2に上限値はない。
図8に示すように、リッド25の押込操作時間Otの操作終了時点Eptが後無効期間It2内にある場合、制御部45は、モータ31によるリッド25の開作動は行わない。つまり、制御部45は、リッド25の押込操作を受け付けず、リッド25の開作動を否認する。
【0056】
次に、
図10から
図12を参照して、制御部45によるリッド開閉制御について具体的に説明する。
【0057】
図10を参照すると、リッド開閉制御で制御部45は、リッド25の開閉状態によって、リッド開処理とリッド閉処理のいずれかを実行する。
【0058】
具体的には、制御部45は、ステップS1で、ホールIC41からの信号を検出し、リッド25が
図1から
図3に示す開放位置に回動しているか否かを判断する。そして、リッド25が
図1から
図3に示す開放位置に回動していないと判断した場合、ステップS2に進み、リッド開処理を実行する。一方で、リッド25が
図1から
図3に示す開放位置に回動していると判断した場合、ステップS3に進み、リッド閉処理を実行する。
【0059】
図11を参照すると、リッド開処理で制御部45は、リッド25の押込操作をスイッチ40からの信号によって検出し、リッド25の操作時間Otと有効期間Vtに基づいてモータ31によるリッド25の開作動を行うか否かを判断し、操作終了時点Eptが有効期間Vt内であるときのみ、開作動を開始する。
【0060】
具体的には、制御部45は、ステップS10で、スイッチ40からの信号を検出し、スイッチ40がオフ状態からオン状態に切り換わるまで待機する。そして、スイッチ40がオン状態になることによって、
図4に示す閉鎖位置から
図5に示す押込位置に移動したリッド25を検出すると、ステップS11で、タイマ47をリセットしてスタートし、操作時間Otの計測を開始する。
【0061】
続いて、ステップS12で、スイッチ40からの信号を検出し、スイッチ40がオン状態からオフ状態に切り換わるまで待機する。そして、スイッチ40がオフ状態になることによって、リッド25の押込操作の解除、つまり
図5に示す押込位置からのリッド25の離反を検出すると、ステップS13で、タイマ47を停止し、操作時間Otの計測を終了する。
【0062】
続いて、ステップS14で、操作終了時点Eptと有効期間Vtを比較する。そして、操作終了時点Eptが有効期間Vt内にないとき、つまり操作終了時点Eptが無効期間It1又はIt2内にあるときには、リッド25の押込操作を無効としてステップS10に戻る。つまり、モータ31を含むアクチュエータ30によるリッド25の開作動は行うことなく、ステップS10に戻る。一方で、操作終了時点Eptが有効期間Vt内にあるときにはステップS15に進み、モータ31を含むアクチュエータ30によってリッド25を開作動させた後、ステップS16で、LED42,43をオン(発光)状態として、リターンする。
【0063】
このように、リッド開処理では、ユーザが
図4に示す閉鎖位置のリッド25を押し込むと、
図5に示す押込位置へのリッド25の移動によってスイッチ40からの信号が変化する。また、ユーザがリッド25から手を離すと、スイッチ40の操作部40aとカバー37の操作部37aの付勢力によって、リッド25が
図5に示す押込位置から離反して
図4に示す閉鎖位置に復帰回動するため、スイッチ40からの信号が再び変化する。そして、制御部45は、スイッチ40の信号変化によって、ユーザがリッド25から手を離したと判断すると、リッド25の開作動を開始する。よって、ユーザがリッド25の開作動を妨げることはないため、モータ31に過剰な負荷が加わることを抑制できる。
【0064】
図12を参照すると、リッド閉処理で制御部45は、スイッチ40の操作をスイッチ40からの信号によって検出し、操作開始時点Spt(
図7参照)を検出すると閉作動を開始する。
【0065】
具体的には、制御部45は、ステップS20で、スイッチ40からの信号を検出し、スイッチ40がオフ状態からオン状態に切り換わるまで待機する。そして、スイッチ40がオン状態になることによって、操作部40aのプッシュ操作を検出すると、ステップS21で、モータ31を含むアクチュエータ30によってリッド25を閉作動させる。その後、ステップS22で、LED42,43をオフ(消灯)状態として、リターンする。
【0066】
このように、リッド閉処理では、スイッチ40の操作を検出すると直ぐにリッド25の閉作動を開始するため、プログラムを簡素化できる。また、
図1から
図3に示す開放位置から
図4に示す閉鎖位置へのリッド25の回動には時間を要するため、ユーザが手でリッド25の閉作動を妨げることはない。よって、モータ31に過剰な負荷が加わることを抑制できる。
【0067】
このように構成した車両用リッド装置10は、以下の特徴を有する。
【0068】
制御部45は、検出部39からの信号によって、押込位置からのリッド25の離反を検出すると、アクチュエータ30によるリッド25の開作動を開始するか否かを判断する。つまり、制御部45は、ユーザがリッド25を押込操作している状態ではアクチュエータ30によるリッド25の開作動は行わず、ユーザがリッド25から手を離すとアクチュエータ30によるリッド25の開作動を開始するか否かを判断する。このように、リッド25の開作動は、ユーザがリッド25から手を離さなければ開始されないため、ユーザが手でリッド25の開作動を妨げることはない。よって、アクチュエータ30に過剰な負荷が加わることを抑制できる。また、リッド25の押し込みによってリッド25を自動開放できるため、ユーザの利便性を向上できる。
【0069】
制御部45は、ユーザによる操作終了時点Eptが有効期間Vt内であるときにリッド25の開作動を開始する一方、操作終了時点Eptが有効期間Vtよりも後の後無効期間It2内であるときにはリッド25の開作動は行わない。よって、例えばユーザによる洗車時、リッド25の汚れを高圧洗車機によって落としているときに、リッド25が意図せずに開放することを抑制できる。
【0070】
制御部45は、ユーザによる操作終了時点Eptが有効期間Vtよりも前の前無効期間It1内であるときにはリッド25の開作動は行わない。つまり、リッド25は、ユーザによる長押しによって、前無効期間It1を超えて有効期間Vt内であるときのみリッド25の開作動を開始する。よって、ユーザによる洗車時、高圧洗車機による水圧がリッド25に瞬間的に加わったときに、リッド25が意図せずに開放することを抑制できる。
【0071】
制御部45は、ホールIC41からの信号によって、開放位置側へのリッド25の移動を検出していないときにリッド開処理を実行する一方、開放位置側へのリッド25の移動を検出しているときにリッド閉処理を実行する。つまり、リッド25が閉鎖位置に移動している状態では、リッド25を介してスイッチ40を押込操作するとリッド25が開作動し、リッド25が開放位置に移動している状態では、スイッチ40を直接操作するとリッド25が閉作動する。このように、1つのスイッチ40によってリッド25を自動開閉できるため、ユーザの利便性を向上できる車両用リッド装置10を低コストで提供できる。
【0072】
以下、本発明の他の実施形態並びに種々の変形例を説明するが、これらの説明において、特に言及しない点は前記実施形態と同様である。
【0073】
図13に示すように、ユーザによるリッド25の正常な開操作は断続的であってもよい。言い換えれば、定められた許容時間(例えば2秒)At以内の間隔でリッド25を2回以上操作し、これらの総操作時間Otの操作終了時点Eptが有効期間Vt内であるときに、リッド25の開作動を開始する構成であってもよい。このようにしても、前記実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0074】
リッド開処理に設定する有効期間Vt、前無効期間It1、及び後無効期間It2それぞれの具体的な時間範囲は、必要に応じて変更可能である。
【0075】
リッド25は、車長方向に延びる回転軸まわりに回動可能であってもよいし、アウタパネル1に沿ってスライド可能であってもよく、開放位置、閉鎖位置、及び押込位置に移動可能な構成であればよい。
【0076】
車両用リッド装置10は、アクチュエータ30によってリッド25を開作動のみ可能で、リッド25の閉鎖は手動で行う構成であってもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 アウタパネル
2 受給口
3 凹部
5 バッテリ
10 車両用リッド装置
15 給電コネクタ
15a 接続部
20 ベース
21 ベース本体
21a 取付部
21b 挿通孔
21c 開口部
21d 貫通部
21e 貫通部
22 シール部材
23 軸受部
23a 壁部
25 リッド
25a 突出部
25b 突出部
26 アーム
26a 軸部材
26b 第1アーム部
26c 第2アーム部
30 アクチュエータ
31 モータ
35 制御装置
36 ケーシング
36a 外壁
36b 外周壁
36c 貫通孔
36d レンズ部
36e レンズ部
37 カバー
37a 操作部(付勢部材)
37b 押圧部
37b 貫通孔
38 回路基板
39 検出部
40 スイッチ(操作検出部)
40a 操作部(付勢部材)
41 ホールIC(開放検出部)
41a 磁石
42 LED
43 LED
44 位置決め部材
45 制御部
46 メモリ
47 タイマ
Vt 有効期間
It1 前無効期間(第2無効期間)
It2 後無効期間(第1無効期間)
Pt1 第1時点
Pt2 第2時点
Pt3 第3時点
Ot 操作時間
Spt 操作開始時点
Ept 操作終了時点
At 許容時間