(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131787
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H01M10/48 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042249
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 一徳
【テーマコード(参考)】
5H030
【Fターム(参考)】
5H030AA01
5H030AS08
5H030FF32
(57)【要約】
【課題】電池セルの膨張量の検出精度を向上させる。
【解決手段】検査装置は、積層して配置された複数の電池セルから構成される電池モジュールと、前記電池モジュールにおける前記複数の電池セルの積層方向に直交する方向の1つの面に配置されるフレキシブル基板と、前記電池モジュールを囲繞して前記複数の電池セル同士を結束する結束部材と、前記フレキシブル基板に設けられ、前記フレキシブル基板の歪を検出する歪センサと、制御装置と、を有し、前記結束部材は、前記結束部材の囲繞の中心軸に沿った方向が、前記電池モジュールにおける前記フレキシブル基板が配置される面の法線方向に重なるように前記電池モジュールを囲繞し、前記電池モジュールにおける前記法線方向の中央に対して前記法線方向に偏移して設けられ、前記制御装置のプロセッサは、前記歪センサの検出値に基づいて前記複数の電池セルの膨張量を検査すること、を含む処理を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層して配置された複数の電池セルから構成される電池モジュールと、
前記電池モジュールにおける前記複数の電池セルの積層方向に直交する方向の1つの面に配置されるフレキシブル基板と、
前記電池モジュールを囲繞して前記複数の電池セル同士を結束する結束部材と、
前記フレキシブル基板に設けられ、前記フレキシブル基板の歪を検出する歪センサと、
制御装置と、
を有し、
前記結束部材は、
前記結束部材の囲繞の中心軸に沿った方向が、前記電池モジュールにおける前記フレキシブル基板が配置される面の法線方向に重なるように前記電池モジュールを囲繞し、
前記電池モジュールにおける前記法線方向の中央に対して前記法線方向に偏移して設けられ、
前記制御装置は、
1つまたは複数のプロセッサと、
前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、
を有し、
前記プロセッサは、
前記歪センサの検出値に基づいて前記複数の電池セルの膨張量を検査すること、
を含む処理を実行する、検査装置。
【請求項2】
前記フレキシブル基板に設けられ、前記前記フレキシブル基板の姿勢を検知する地磁気センサをさらに備え、
前記プロセッサは、
前記歪センサの検出値と前記地磁気センサの検出値とに基づいて前記複数の電池セルの膨張量を検査すること、
を含む処理を実行する、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記地磁気センサにより検出された前記フレキシブル基板における水平面に対する角度と、前記歪センサにより検出された前記フレキシブル基板における歪量とから、前記フレキシブル基板における水平方向の歪量を導出することと、
前記フレキシブル基板における前記水平方向の歪量に基づいて前記複数の電池セルの膨張量を検査することと、
を含む処理を実行する、請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記地磁気センサは、複数設けられ、
複数の前記地磁気センサは、前記電池モジュールにおける前記積層方向の中央に対して前記積層方向の一方側と、前記積層方向の他方側とに、それぞれ配置され、
前記プロセッサは、
前記積層方向の一方側に配置された前記地磁気センサにより検出された水平面に対する角度と、前記積層方向の他方側に配置された前記地磁気センサにより検出された水平面に対する角度との組み合わせに基づいて、前記複数の電池セルの膨張量の検査を実行するかの判定を行うこと、
を含む処理を実行する、請求項2に記載の検査装置。
【請求項5】
前記歪センサは、複数設けられ、
複数の前記歪センサは、前記電池モジュールにおける前記積層方向の中央に対して前記積層方向に対称に配置され、
前記プロセッサは、
対称に配置された前記歪センサのそれぞれの検出値に基づいて前記複数の電池セルの膨張量を検査すること、
を含む処理を実行する、請求項1に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池セルの膨張量を検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、電池モジュールを構成する複数の電池セルの膨張による異常を検知する技術が開示されている。かかる特許文献1では、電池モジュールにおける一方の端部に配置される端板と、他方の端部に配置される端板とを接続する接続板に歪ゲージが設けられ、歪ゲージの検出結果によって電池セルの膨張による異常が検知される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の接続板は、そもそも、複数の電池セル同士を結束して、電池セルの膨張を抑制するように作用するため、電池セルの膨張が生じたとしても、電池セルの膨張に起因する接続板の歪は、非常に小さい。このため、特許文献1の技術では、電池セルの膨張量の検出精度が低かった。
【0005】
そこで、本発明は、電池セルの膨張量の検出精度を向上させることが可能な検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態に係る検査装置は、
積層して配置された複数の電池セルから構成される電池モジュールと、
前記電池モジュールにおける前記複数の電池セルの積層方向に直交する方向の1つの面に配置されるフレキシブル基板と、
前記電池モジュールを囲繞して前記複数の電池セル同士を結束する結束部材と、
前記フレキシブル基板に設けられ、前記フレキシブル基板の歪を検出する歪センサと、
制御装置と、
を有し、
前記結束部材は、
前記結束部材の囲繞の中心軸に沿った方向が、前記電池モジュールにおける前記フレキシブル基板が配置される面の法線方向に重なるように前記電池モジュールを囲繞し、
前記電池モジュールにおける前記法線方向の中央に対して前記法線方向に偏移して設けられ、
前記制御装置は、
1つまたは複数のプロセッサと、
前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、
を有し、
前記プロセッサは、
前記歪センサの検出値に基づいて前記複数の電池セルの膨張量を検査すること、
を含む処理を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電池セルの膨張量の検出精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態にかかる検査装置の構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の電池モジュールを上方から見た平面図である。
【
図3】
図3は、複数の電池セルが膨張したときの電池モジュールの一例を示す側面図である。
【
図4】
図4は、検査部による複数の電池セルの膨張量の検査の概要を説明する図である。
【
図6】
図6は、検査部の動作の流れを説明するフローチャートである。
【
図7】
図7は、第1変形例の検査装置における電池モジュールの一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料、数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0010】
図1は、本実施形態にかかる検査装置1の構成を示す概略図である。検査装置1は、電池モジュール10が搭載される車両12に適用される。
図1では、電池モジュール10を側面図で示している。
図2は、本実施形態の電池モジュール10を上方から見た平面図である。
図1および
図2を参照して、検査装置1の概要を説明する。
【0011】
車両12は、駆動源としてモータを備える電気自動車であってもよいし、駆動源としてモータとエンジンとを備えるハイブリッド電気自動車であってもよい。電池モジュール10は、駆動源としてのモータに電力を供給する。
【0012】
電池モジュール10は、複数の電池セル20から構成される。電池セル20は、例えば、リチウムイオン電池などの充放電が可能な2次電池である。電池セル20は、扁平した角形形状に形成されている。電池セル20の内部には、リチウムイオンなどの荷電粒子が含まれる電解液などが収容されている。複数の電池セル20は、電気的に直列接続されている。
【0013】
図1および
図2で示すように、複数の電池セル20は、図中左右方向に積層して配置されている。以後、複数の電池セル20が積層されている方向、換言すると、複数の電池セル20が対向している方向を、積層方向という場合がある。
図1および
図2の両矢印A10は、積層方向を示す。
【0014】
電池モジュール10は、例えば、車両12の車体に設置される。電池モジュール10は、複数の電池セル20の積層方向が車体に平行となるように設置される。例えば、電池モジュール10は、複数の電池セル20の積層方向が車両12の前後方向と重なるように設置される。複数の電池セル20の積層方向が車両12の前後方向に対応する場合、両矢印A12で示す電池モジュール10の高さ方向は、車両12の上下方向に対応し、両矢印A14で示す電池モジュール10の幅方向は、車両12の左右方向に対応する。
【0015】
ところで、電池セル20は、充放電が繰り返されると、内部の電気化学反応の性能が低下し、電池セル20の体積が次第に膨張する。電池セル20が扁平した角形形状に形成されている場合、電池セル20を形成する筐体の剛性の関係で、電池セル20は、積層方向に膨張することになる。より詳細には、電池セル20は、電池セル20における積層方向の平面の中央が、当該平面の周縁よりも、電池セル20の外側に突出するように膨張する。
【0016】
電池セル20の過度な膨張は、電池セル20の劣化が過度に進行していることに相当する。そこで、検査装置1は、電池セル20の膨張量を検査することで、電池セル20の劣化の診断を行う。
【0017】
検査装置1は、電池モジュール10の他、シート部材30、フレキシブル基板32、結束部材34、第1歪センサ36a、第2歪センサ36b、第1地磁気センサ38a、第2地磁気センサ38bおよび制御装置40を備える。
【0018】
シート部材30は、積層された複数の電池セル20の間に設けられ、緩衝材として機能する。シート部材30は、電池モジュール10の高さ方向に延在している。シート部材30の上端は、電池モジュール10の高さ方向の上側の面である天面に突出している。
【0019】
フレキシブル基板32は、それぞれの電池セル20の電圧を検出する回路などが形成された電子基板である。フレキシブル基板32は、柔軟な構造となっており、湾曲などの変形が可能となっている。フレキシブル基板32は、湾曲することで、湾曲により突出した方の面が伸び、湾曲により窪んだ方の面が収縮する。また、フレキシブル基板32は、フレキシブル基板32の延在方向に伸縮可能であってもよい。
【0020】
フレキシブル基板32は、電池モジュール10における複数の電池セル20の積層方向に直交する方向の1つの面に配置される。例えば、フレキシブル基板32は、
図1で示すように、積層方向に直交する上方向の面、すなわち、電池モジュール10の高さ方向の天面に配置される。なお、フレキシブル基板32は、電池モジュール10の天面に配置される態様に限らず、例えば、電池モジュール10の幅方向の左側面、幅方向の右側面、高さ方向の底面のいずれかに配置されてもよい。
【0021】
フレキシブル基板32は、電池モジュール10の天面に突出したシート部材30に固定されている。フレキシブル基板32が電池モジュール10の天面に配置される場合、フレキシブル基板32が配置される面の法線方向、すなわち、天面の法線方向は、
図1の両矢印A12で示すように、電池モジュール10の高さ方向と重なる。なお、面の法線方向は、面に垂直な方向を意味する。
【0022】
結束部材34は、エンドプレート50および結束ロッド52を有する。エンドプレート50は、積層された複数の電池セル20のうち、最前面の電池セル20の前面側と、最後面の電池セル20の後面側とに配置される。エンドプレート50は、平板状に形成され、エンドプレート50の平面が電池セル20に接触するように配置される。エンドプレート50の平面の面積は、電池セル20における積層方向の平面の面積よりも小さい。
【0023】
結束ロッド52は、電池セル20の積層方向に延在する。結束ロッド52は、電池モジュール10におけるフレキシブル基板32が配置される面の法線方向および電池セル20の積層方向のそれぞれに直交する方向の両面に配置される。フレキシブル基板32が電池モジュール10の天面に配置される場合、結束ロッド52は、電池モジュール10における幅方向の両面、すなわち、左側面および右側面に配置される。
【0024】
結束ロッド52における延在方向の一方の端部は、最前面の電池セル20の前面側のエンドプレート50に固定される。結束ロッド52における延在方向の他方の端部は、最後面の電池セル20の後面側のエンドプレート50に固定される。
【0025】
このように、結束部材34は、複数の電池セル20から構成される電池モジュール10を囲繞するように設けられ、複数の電池セル20同士を結束している。これにより、結束部材34は、積層されている複数の電池セル20が離散することを抑制している。
【0026】
ここで、結束部材34により囲まれた平面の中心を通り、結束部材34により囲まれたる平面に垂直な軸を、結束部材34の囲繞の中心軸という場合がある。結束部材34は、結束部材34の囲繞の中心軸に沿った方向が、電池モジュール10におけるフレキシブル基板32が配置される面の法線方向に重なるように電池モジュール10を囲繞する。例えば、フレキシブル基板32が電池モジュール10の天面に配置される場合、当該法線方向が電池モジュール10の高さ方向に対応するため、結束部材34は、電池モジュール10の高さ方向が結束部材34の囲繞の中心軸に沿った方向となるように、電池モジュール10の前側面、左側面、後側面および右側面を囲繞する。
【0027】
以後、説明の便宜のため、電池モジュール10におけるフレキシブル基板32が配置される面の法線方向を、単に、法線方向という場合がある。電池モジュール10におけるフレキシブル基板32が配置される面の法線方向の中央を、単に、法線方向の中央という場合がある。
図1の両矢印A12は、法線方向を示している。
図1の一点鎖線C10は、法線方向の中央を示している。
【0028】
結束部材34は、一点鎖線C10で示す法線方向の中央に対して、当該法線方向に偏移して設けられる。より詳細には、結束部材34は、電池モジュール10の法線方向の中央に対して、当該法線方向におけるフレキシブル基板32から離隔する方向に偏移して設けられる。例えば、フレキシブル基板32が電池モジュール10の天面に配置される場合、結束部材34は、法線方向の中央よりも電池モジュール10の底面側に偏移して設けられる。
【0029】
ここで、結束部材34における両矢印A10で示す積層方向の結束力の、両矢印A12で示す法線方向のバランスの中央の位置を、結束力の中立位置という場合がある。上述の結束部材34が偏移して設けられるとは、結束部材34における結束力の中立位置が、電池モジュール10における法線方向の中央に対して当該法線方向にずれていることを意味する。例えば、結束ロッド52における法線方向の寸法が積層方向に亘って一定である場合、結束ロッド52における法線方向の物理的な中央と、結束力の中立位置とが、実質的に重なる。この場合、
図1で示すように、結束ロッド52全体を、法線方向の中央に対して法線方向にずらすように、結束ロッド52を配置させる。
【0030】
また、例えば、結束ロッド52における法線方向の一方の端部に、結束ロッド52の厚さ方向、換言すると、電池モジュール10の幅方向に貫通するスリットを設け、結束ロッド52における法線方向の寸法を積層方向の少なくとも一部において変化させた結束ロッド52を用いることもできる。このような結束ロッド52では、結束力の中立位置が、結束ロッド52における法線方向の物理的な中央に対して、スリットとは反対側に偏移する。このため、このようなスリットを有する結束ロッド52を用いる場合、結束ロッド52における法線方向の物理的な中央が、電池モジュール10における法線方向の中央に重なるように、結束ロッド52を設けたとしても、結束力の中立位置を偏移させることができる。すなわち、スリットを有する結束ロッド52を用いても、実質的に、結束部材34を偏移して設けたことと同じ効果を得ることができる。このように結束部材34を偏移して設ける理由については、後述する。
【0031】
第1歪センサ36aおよび第2歪センサ36bは、フレキシブル基板32に設けられる。以後、第1歪センサ36aおよび第2歪センサ36bを総称して、単に、歪センサ36という場合がある。なお、
図1および
図2の例では、歪センサ36が複数設けられているが、歪センサ36は、複数に限らず、少なくとも1つ以上設けられていればよい。
【0032】
以後、説明の便宜のため、電池モジュール10における積層方向の中央を、単に、積層方向の中央という場合がある。
図1および
図2の一点鎖線C12は、電池モジュール10における積層方向の中央を示している。
【0033】
歪センサ36は、一点鎖線C12で示す積層方向の中央に対して、積層方向の一方側と積層方向の他方側とにそれぞれ配置される。より詳細には、歪センサ36は、積層方向の中央に対して積層方向に対称に配置される。
【0034】
第1歪センサ36aは、フレキシブル基板32における前側の端部に設けられている。第2歪センサ36bは、フレキシブル基板32における後側の端部に設けられている。
【0035】
歪センサ36は、当該歪センサ36が設けられている位置でのフレキシブル基板32の歪量を検出する。より詳細には、第1歪センサ36aは、フレキシブル基板32における前側の端部の歪量を検出する。第2歪センサ36bは、フレキシブル基板32における後側の端部の歪量を検出する。
【0036】
なお、歪センサ36は、例示した位置に配置される態様に限らず、フレキシブル基板32における歪量の検出を所望する任意の位置に配置されてもよい。
【0037】
第1地磁気センサ38aおよび第2地磁気センサ38bは、フレキシブル基板32に設けられる。以後、第1地磁気センサ38aおよび第2地磁気センサ38bを総称して、単に、地磁気センサ38という場合がある。なお、
図1および
図2の例では地磁気センサ38が複数設けられているが、地磁気センサ38は、複数に限らず、少なくとも1つ以上設けられていればよい。
【0038】
地磁気センサ38は、一点鎖線C12で示す積層方向の中央に対して、積層方向の一方側と積層方向の他方側とにそれぞれ配置される。より詳細には、地磁気センサ38は、積層方向の中央に対して積層方向に対称に配置される。
【0039】
第1地磁気センサ38aは、フレキシブル基板32における前側の端部に設けられている。第1地磁気センサ38aは、第1歪センサ36aの近傍に配置される。例えば、第1地磁気センサ38aは、第1歪センサ36aに対してフレキシブル基板32の中央側に配置される。なお、第1地磁気センサ38aは、例示した位置に配置される態様に限らず、例えば、第1歪センサ36aに対してフレキシブル基板32の中央とは反対側に配置されてもよいし、第1歪センサ36aに対して電池モジュール10の幅方向側に配置されてもよい。
【0040】
第2地磁気センサ38bは、フレキシブル基板32における後側の端部に設けられている。第2地磁気センサ38bは、第2歪センサ36bの近傍に配置される。例えば、第2地磁気センサ38bは、第2歪センサ36bに対してフレキシブル基板32の中央側に配置される。なお、第2地磁気センサ38bは、例示した位置に配置される態様に限らず、例えば、第2歪センサ36bに対してフレキシブル基板32の中央とは反対側に配置されてもよいし、第2歪センサ36bに対して電池モジュール10の幅方向側に配置されてもよい。
【0041】
地磁気センサ38は、当該地磁気センサ38が設けられている位置での水平面に対する角度を検出する。すなわち、地磁気センサ38は、当該地磁気センサ38が設けられている位置でのフレキシブル基板32の姿勢を検知する。より詳細には、第1地磁気センサ38aは、フレキシブル基板32における前側の端部の水平面に対する角度を検出する。第2地磁気センサ38bは、フレキシブル基板32における後側の端部の水平面に対する角度を検出する。
【0042】
なお、地磁気センサ38は、例示した位置に配置される態様に限らず、フレキシブル基板32における角度の検出を所望する任意の位置に配置されてもよい。
【0043】
制御装置40は、1つまたは複数のプロセッサ60、プロセッサ60に接続される1つまたは複数のメモリ62を有する。メモリ62は、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAMを含む。プロセッサ60は、メモリ62に含まれるプログラムと協働して、電池モジュール10を制御する。また、プロセッサ60は、電池セル20の膨張量を検査する検査部70としても機能する。
【0044】
検査部70は、歪センサ36の検出値と地磁気センサ38の検出値とに基づいて、複数の電池セル20の膨張量を検査する。
【0045】
図3は、複数の電池セル20が膨張したときの電池モジュール10の一例を示す側面図である。上述のように、結束部材34は、電池モジュール10における法線方向の中央に対して当該法線方向におけるフレキシブル基板32から離隔する方向に偏移して設けられている。
【0046】
ここで、上述のように、電池セル20における積層方向の平面の中央が膨張すると、複数の電池セル20における法線方向の中央よりも天面側が、積層方向に離散するように広がる。その一方、複数の電池セル20における法線方向の中央よりも底面側については、結束部材34によって結束され、複数の電池セル20の離散が抑制される。そうすると、電池セル20の膨張によって、
図3で示すように、電池モジュール10は、底面側に対して天面側が扇状に広がる形状に変形する。
【0047】
複数の電池セル20の天面側が扇状に広がると、複数の電池セル20の間に位置する複数のシート部材30も、複数の電池セル20の広がりに応じて、底面側に対して天面側が扇状に広がる。これにより、シート部材30に固定されているフレキシブル基板32も、複数の複数のシート部材30の広がりに応じて、電池モジュール10とは反対側、すなわち、上側に突出する円弧状の曲面に変形する。そうすると、フレキシブル基板32における突出している上側の表面が、フレキシブル基板32の延在方向に伸びる。
【0048】
歪センサ36は、フレキシブル基板32がこのように変形したときのフレキシブル基板32の伸び歪を検出する。また、地磁気センサ38は、フレキシブル基板32がこのように変形したときのフレキシブル基板32の水平面に対する角度を検出する。
【0049】
検査部70は、歪センサ36により検出された歪量を、地磁気センサ38により検出された角度を用いて水平方向の歪量に補正することができる。検査部70は、水平方向の歪量を用いて電池セル20の膨張量を検査することができる。
【0050】
複数の電池セル20の膨張に応じてフレキシブル基板32が変形することから、水平方向の歪量は、複数の電池セル20の膨張量に関連付けることができる。例えば、水平方向の歪量と複数の電池セル20の膨張量との対応関係を、実験あるいはシミュレーションにより求め、得られた対応関係が、メモリ62に予め記憶されていてもよい。
【0051】
また、結束部材34における偏移量は、結束部材34によって複数の電池セル20同士を適切に結束可能であり、かつ、電池セル20が膨張したときにフレキシブル基板32が円弧状に適切に変形可能な量に設定される。例えば、結束部材34は、結束部材34から電池モジュール10の天面までの距離と、結束部材34から電池モジュール10の底面までの距離との比率が、「6:4」となるように偏移される。なお、具体的な偏移量は、例示した比率に限らず、結束部材34の機能およびフレキシブル基板32の変形を考慮して任意の比率に設定することができる。
【0052】
図4は、検査部70による複数の電池セル20の膨張量の検査の概要を説明する図である。
図4では、説明の便宜のため、フレキシブル基板32、歪センサ36および地磁気センサ38以外の構成要素については記載を省略している。
【0053】
ここで、第1歪センサ36aにより検出される歪量を、第1歪量「a」と呼ぶこととする。第1歪量「a」は、第1歪センサ36aの位置におけるフレキシブル基板32の上面の接線方向の歪量である。第2歪センサ36bにより検出される歪量を、第2歪量「b」と呼ぶこととする。第2歪量「b」は、第2歪センサ36bの位置におけるフレキシブル基板32の上面の接線方向の歪量である。
【0054】
また、第1地磁気センサ38aにより検出される水平面に対する角度を、第1角度「α」と呼ぶこととする。第1角度「α」は、フレキシブル基板32における積層方向の中央に向かう方向側の角度、換言すると、第2地磁気センサ38bに対向する方向側の角度で表すこととする。第2地磁気センサ38bにより検出される水平面に対する角度を、第2角度「β」と呼ぶこととする。第2角度「β」は、フレキシブル基板32における積層方向の中央に向かう方向側の角度、換言すると、第1地磁気センサ38aに対向する方向側の角度で表すこととする。
【0055】
検査部70は、第1角度「α」と第2角度「β」との組み合わせに基づいて、複数の電池セル20の膨張量の検査を実行するかの判定を行ってもよい。
【0056】
上述のように第1角度「α」および第2角度「β」を定義すると、電池セル20の膨張によりフレキシブル基板32が適正に円弧状に変形したとき、第1角度「α」および第2角度「β」の両方が「仰角」になる。
【0057】
また、フレキシブル基板32が適正に円弧状に変形して第1角度および第2角度の両方が仰角になったとしても、フレキシブル基板32が全体的に傾くと、第1角度および第2角度のいずれか一方が俯角になる場合がある。
【0058】
例えば、車両12が登坂状態の場合などのように車両12の姿勢が仰角となっている場合、フレキシブル基板32が全体的に仰角に傾く。この場合、フレキシブル基板32の全体的な角度およびフレキシブル基板32の変形度合いによっては、第2角度が仰角となるものの、第1角度が俯角となる場合がある。
【0059】
また、例えば、車両12が降坂状態の場合などのように車両12の姿勢が俯角となっている場合、フレキシブル基板32が全体的に俯角に傾く。この場合、フレキシブル基板32の全体的な角度およびフレキシブル基板32の変形度合いによっては、第1角度が仰角となるものの、第2角度が俯角となる場合がある。
【0060】
また、フレキシブル基板32が全体的に仰角または俯角に傾いたとしても、フレキシブル基板32が、上側に突出する適正な円弧状に変形すれば、第1角度および第2角度の両方が俯角になることはない。
【0061】
したがって、本実施形態の検査装置1において、第1角度「α」および第2角度「β」の両方が「俯角」である場合、フレキシブル基板32が適正な円弧状に変形していないと推定される。この場合、検査部70は、複数の電池セル20の膨張量の検査を実行しないようにしてもよい。
【0062】
これに対し、第1角度「α」および第2角度「β」の少なくとも一方が「仰角」である場合、フレキシブル基板32が適正な円弧状に変形している可能性が高いと推定される。この場合、検査部70は、複数の電池セル20の膨張量の検査を実行する。
【0063】
なお、フレキシブル基板32が適正に変形していない場合、フレキシブル基板32が全体的に傾斜していない状態で、第1角度および第2角度のいずれか一方が俯角になることもある。これを考慮して、検査部70は、第1角度および第2角度の両方が仰角である場合に、複数の電池セル20の膨張量の検査を実行し、第1角度および第2角度のいずれか一方または双方が俯角である場合に、複数の電池セル20の膨張量の検査を実行しないようにしてもよい。
【0064】
検査部70は、第1歪量「a」および第1角度「α」から、第1歪量「a」の水平方向成分である第1水平歪量を導出する。より詳細には、検査部70は、第1歪量「a」に第1角度「α」の余弦を乗算して、第1水平歪量「acosα」を導出する。
【0065】
検査部70は、第2歪量「b」および第2角度「β」から、第2歪量「b」の水平方向成分である第2水平歪量を導出する。より詳細には、検査部70は、第2歪量「b」に第2角度「β」の余弦を乗算して、第2水平歪量「bcosβ」を導出する。
【0066】
検査部70は、第1水平歪量「acosα」および第2水平歪量「bcosβ」の平均を示す平均水平歪量を導出する。より詳細には、検査部70は、第1水平歪量「acosα」に第2水平歪量「bcosβ」を加算した値を2で除算して平均水平歪量を導出する。
【0067】
検査部70は、このようにして導出した平均水平歪量を所定の基準値と比較し、平均水平歪量が基準値以上であると判定した場合、複数の電池セル20の膨張量が過大となっていると判定する。
【0068】
図5は、比較の基準値を説明する図である。比較の基準値は、例えば、
図5で示すような基準値マップに基づいて設定される。基準値マップは、実験あるいはシミュレーションにより予め設定され、予めメモリ62に記憶されている。
【0069】
基準値マップは、電池モジュール10が車両12に搭載されてから現在までの車両12の走行距離の総数である総走行距離、電池モジュール10が車両12に搭載されてから現在までの経過時間、および、複数の電池セル20の膨張量の関係により設定されている。また、基準値マップでは、複数の電池セル20の膨張量と、フレキシブル基板32の水平方向の歪量とが関連付けられている。
【0070】
例えば、総走行距離が長くなるほど、電池モジュール10の充放電の繰り返し回数が多くなるため、電池セル20の膨張量が多くなる。このため、基準マップでは、総走行距離が長くなるほど比較の基準値も大きな値となっている。また、経過時間が長くなるほど、電池モジュール10の充放電の繰り返し回数が多くなるため、電池セル20の膨張量が多くなる。このため、基準マップでは、経過時間が長くなるほど比較の基準値も大きな値となっている。
【0071】
例えば、総走行距離および経過時間に応じた電池セル20の標準的な膨張量のデータを、実験あるいはシミュレーションなどにより予め準備しておく。また、電池セル20の膨張量と水平方向の歪量との対応関係のデータを、実験あるいはシミュレーションなどにより予め準備しておく。比較の基準値は、例えば、標準的な膨張量に対して所定膨張量分だけ大きい膨張量に対応する歪量に設定される。基準値マップでは、このような基準値が、
図5で示すように、総走行距離および経過時間ごとに設定されている。
【0072】
図6は、検査部70の動作の流れを説明するフローチャートである。検査部70は、予め設定された所定の実行開始タイミングが到来すると、
図6の一連の処理を開始する。所定の実行開始タイミングは、例えば、車両12がイグニッションオンされたタイミングなど、適宜設定することができる。また、所定の実行開始タイミングは、所定時間間隔で繰り返し到来するように設定されてもよい。
【0073】
所定の実行開始タイミングが到来すると、検査部70は、第1歪センサ36aから第1歪量「a」を取得し、第2歪センサ36bから第2歪量「b」を取得する(S10)。検査部70は、第1地磁気センサ38aから第1角度「α」を取得し、第2地磁気センサ38bから第2角度「β」を取得する(S11)。
【0074】
次に、検査部70は、第1角度「α」が俯角であり、かつ、第2角度「β」が俯角であるかを判定する(S12)。
【0075】
第1角度「α」および第2角度「β」の両方が俯角であると判定した場合(S12におけるYES)、検査部70は、フレキシブル基板32が適切な形状および姿勢になっていないと推定されるため、一連の処理を終了する。
【0076】
第1角度「α」および第2角度「β」の少なくとも一方が仰角であると判定した場合(S12におけるNO)、検査部70は、第1歪量および第1角度から第1水平歪量「acosα」を導出する(S13)。検査部70は、第2歪量および第2角度から第2水平歪量「bcosβ」を導出する(S14)。検査部70は、第1水平歪量および第2水平歪量から平均水平歪量を導出する(S15)。
【0077】
次に、検査部70は、車両12の現時点の総走行距離、車両12の現時点の経過時間、および、基準マップに基づいて、現時点の比較の基準値を設定する(S16)。
【0078】
次に、検査部70は、ステップS15において導出した平均水平歪量が、ステップS16において設定した基準値以上であるかを判定する(S17)。
【0079】
平均水平歪量が基準値以上であると判定した場合(S17におけるYES)、検査部70は、電池セル20に過度な膨張があると判定する(S18)。この場合、電池セル20の劣化が過度に進行していると想定されるため、検査部70は、インストルメントパネルなどの所定の報知装置に、電池セル20の交換を報知させ(S19)、一連の処理を終了する。
【0080】
一方、平均水平歪量が基準値未満であると判定した場合(S17におけるNO)、検査部70は、電池セル20に過度な膨張がないと判定する(S20)。この場合、電池セル20に過度な劣化の進行が見られないと想定されるため、検査部70は、インストルメントパネルなどの所定の報知装置に、継続して使用することを許可する旨の報知を行わせ(S21)、一連の処理を終了する。
【0081】
なお、ステップS12において、第1角度および第2角度の両方が俯角であると判定した場合においても(S12におけるYES)、検査部70は、第1水平歪量、第2水平歪量および平均水平歪量を導出するようにしてもよい。しかし、この態様では、検査部70は、導出した平均水平歪量を用いた比較を実行しないようにする。
【0082】
また、ステップS12の前に第1歪量および第2歪量の取得を行わず、検査部70は、第1角度および第2角度の少なくとも一方が仰角であると判定した場合に限り(S12におけるNO)、第1歪量および第2歪量を取得するようにしてもよい。
【0083】
また、上記フローチャートでは、ステップS12において、第1角度が俯角であり、かつ、第2角度が俯角である場合に、ステップS13以降の処理を行わないようにしていた。しかし、ステップS12において、第1角度が仰角であり、かつ、第2角度が仰角である場合に限り、ステップS13以降の処理を行い、それ以外の角度の組み合わせの場合に、一連の処理を終了する、すなわち、複数の電池セル20の膨張量の検査を実行しないようにしてもよい。この態様では、車両12自体が傾斜していない状態で、複数の電池セル20の膨張量の検査を行うことができるため、検査精度をより向上させることができる。
【0084】
また、ステップS17では、平均水平歪量が基準値以上であるかが判定されていた。しかし、検査部70は、平均水平歪量の導出を行わず、第1水平歪量および第2水平移動量のいずれか一方が基準値以上であると判定した場合、電池セル20に過度な膨張があると判定してもよい。また、検査部70は、第1水平歪量および第2水平移動量の両方が基準値以上であると判定した場合に限り、電池セル20に過度な膨張があると判定してもよい。
【0085】
また、検査部70は、地磁気センサ38の検出値を用いずに、歪センサ36の検出値に基づいて電池セル20の膨張量の検査を行ってもよい。例えば、検査部70は、第1歪量および第2歪量を平均した平均歪量が基準値以上であると判定した場合、電池セル20に過度な膨張があると判定してもよい。また、検査部70は、第1歪量および第2歪量のいずれか一方が基準値以上であると判定した場合、電池セル20に過度な膨張があると判定してもよい。また、検査部70は、第1歪量および第2歪量の両方が基準値以上であると判定した場合に限り、電池セル20に過度な膨張があると判定してもよい。
【0086】
以上のように、本実施形態の検査装置1では、複数の電池セル20同士を結束する結束部材34が、電池モジュール10におけるフレキシブル基板32が配置される面の法線方向の中央に対して当該法線方向に偏移して設けられる。本実施形態の検査装置1では、フレキシブル基板32に設けられた歪センサ36の検出値に基づいて複数の電池セル20の膨張量が検査される。
【0087】
これにより、本実施形態の検査装置1では、電池セル20の膨張に応じて、歪センサ36による歪量の検出対象となるフレキシブル基板32が円弧状に広がるように変形するため、歪センサ36による歪量の検出精度を向上させることができる。その結果、本実施形態の検査装置1によれば、電池セル20の膨張量の検出精度を向上させることが可能となる。
【0088】
また、本実施形態の検査装置1では、フレキシブル基板32に地磁気センサ38がさらに設けられ、歪センサ36の検出値と地磁気センサ38の検出値とに基づいて複数の電池セル20の膨張量が検査される。
【0089】
これにより、本実施形態の検査装置1では、フレキシブル基板32が円弧状に広がるように変形したとしても、湾曲したフレキシブル基板32の角度を地磁気センサ38で検出することができる。このため、本実施形態の検査装置1では、歪センサ36の検出値を地磁気センサ38による検出値によって補正することができる。すなわち、本実施形態の検査装置1では、電池セル20の膨張に応じたフレキシブル基板32の変形による、より正確な歪量を取得することができる。その結果、本実施形態の検査装置1では、電池セル20の膨張量の検出精度を、より向上させることが可能となる。
【0090】
また、本実施形態の検査装置1では、地磁気センサ38により検出されたフレキシブル基板32における水平面に対する角度と、歪センサ36により検出されたフレキシブル基板32における歪量とから、フレキシブル基板32における水平方向の歪量が導出される。本実施形態の検査装置1では、フレキシブル基板32における水平方向の歪量に基づいて複数の電池セル20の膨張量が検査される。
【0091】
これにより、本実施形態の検査装置1では、電池セル20の膨張に応じたフレキシブル基板32の変形による、より正確な歪量を取得することができる。また、本実施形態の検査装置1では、水平方向の歪量に基づいて電池セル20の膨張量の検査が行われるため、フレキシブル基板32が円弧状に変形したとしても、歪量が基準値以上であるかの比較を適切に行うことが可能となる。その結果、本実施形態の検査装置1では、電池セル20の膨張量の検査を、より適切に行うことが可能となる。
【0092】
また、本実施形態の検査装置1では、電池モジュール10における積層方向の中央に対して積層方向の一方側と、積層方向の他方側とに、それぞれ地磁気センサ38が配置される。本実施形態の検査装置1では、積層方向の一方側に配置された地磁気センサ38により検出された水平面に対する角度と、積層方向の他方側に配置された地磁気センサ38により検出された水平面に対する角度との組み合わせに基づいて、複数の電池セル20の膨張量の検査を実行するかの判定が行われる。
【0093】
これにより、本実施形態の検査装置1では、一方側の地磁気センサ38による角度と他方側の地磁気センサ38による角度とが、適切な組み合わせとならない場合、電池セル20の膨張量の検査を実行しないようにすることができる。その結果、本実施形態の検査装置1では、電池セル20の膨張量の検査の処理負荷を軽減することが可能となる。
【0094】
また、本実施形態の検査装置1では、複数の歪センサ36が、電池モジュール10における積層方向の中央に対して積層方向に対称に配置される。本実施形態の検査装置1では、対称に配置された歪センサ36のそれぞれの検出値に基づいて複数の電池セル20の膨張量が検査される。
【0095】
これにより、本実施形態の検査装置1では、電池セル20の膨張量の検査精度を、より向上させることができる。例えば、本実施形態の検査装置1では、歪センサ36が対称に配置されるため、一方側の歪センサ36の歪量と他方側の歪センサ36の歪量とが大凡同じになると推定される。このことから、例えば、一方側の歪センサ36の歪量と他方側の歪センサ36の歪量との平均値を導出した場合、歪センサ36の配置が対称となっていない態様と比べ、当該平均値の精度を高くすることができる。その結果、本実施形態の検査装置1では、当該平均値を基準値と比較した結果の精度も向上させることができる。
【0096】
図7は、第1変形例の検査装置100における電池モジュール10の一例を示す側面図である。
図7で示すように、検査装置100では、結束部材34が、両矢印A12で示す法線方向の中央に対して、当該法線方向におけるフレキシブル基板32に接近する方向に偏移して設けられる。例えば、フレキシブル基板32が電池モジュール10の天面に配置される場合、結束部材34は、法線方向の中央よりも天面側に偏移して設けられる。
【0097】
結束部材34がフレキシブル基板32に接近する方向に偏移して設けられるため、電池セル20における積層方向の平面の中央が膨張すると、
図7で示すように、複数の電池セル20における法線方向の中央よりも底面側が、積層方向に離散するように広がる。その一方、複数の電池セル20における法線方向の中央よりも天面側については、結束部材34によって結束されるとともに、底面側が広がることの反動により、複数の電池セル20が、より集合するように作用する。そうすると、
図7で示すように、電池モジュール10は、底面側が扇状に広がるとともに、天面側が積層方向の中央に向かう方向に集合する形状に変形する。
【0098】
複数の電池セル20の天面側が積層方向の中央に向かう方向に集合すると、複数の電池セル20の間に位置する複数のシート部材30の天面側も、複数の電池セル20の集合に応じて積層方向の中央に向かう方向に集合する。これにより、シート部材30に固定されているフレキシブル基板32は、複数のシート部材30の集合に応じて、電池モジュール10側、すなわち、下側に突出する円弧状の曲面に変形する。そうすると、フレキシブル基板32における窪んでいる上側の表面が、フレキシブル基板32の延在方向に収縮する。
【0099】
歪センサ36は、フレキシブル基板32がこのように変形したときのフレキシブル基板32の収縮歪を検出する。また、地磁気センサ38は、フレキシブル基板32がこのように変形したときのフレキシブル基板32の水平面に対する角度を検出する。
【0100】
検査部70は、第1角度「α」と第2角度「β」との組み合わせに基づいて、複数の電池セル20の膨張量の検査を実行するかの判定を行ってもよい。
【0101】
検査装置100では、電池セル20の膨張によりフレキシブル基板32が収縮するように変形したとき、第1地磁気センサ38aによる第1角度「α」および第2地磁気センサ38bによる第2角度「β」の両方が「俯角」になる。
【0102】
また、検査装置100において、例えば、車両12の姿勢が仰角となっている場合、フレキシブル基板32の全体的な角度およびフレキシブル基板32の変形度合いによっては、第1角度が俯角となるものの、第2角度が仰角となる場合がある。
【0103】
また、検査装置100において、例えば、車両12の姿勢が俯角となっている場合、フレキシブル基板32の全体的な角度およびフレキシブル基板の変形度合いによっては、第2角度が俯角となるものの、第1角度が仰角となる場合がある。
【0104】
また、検査装置100において、フレキシブル基板32が全体的に仰角または俯角に傾いたとしても、フレキシブル基板32が、下側に突出する適正な円弧状に変形すれば、第1角度および第2角度の両方が仰角になることはない。
【0105】
したがって、検査装置100において、第1角度「α」および第2角度「β」の両方が「仰角」である場合、フレキシブル基板32が適正な円弧状に変形していないと推定される。この場合、検査部は、複数の電池セル20の膨張量の検査を実行しないようにしてもよい。
【0106】
これに対し、検査装置100において、第1角度「α」および第2角度「β」の少なくとも一方が「俯角」である場合、フレキシブル基板32が適正な円弧状に変形している可能性が高いと推定される。この場合、検査部70は、複数の電池セル20の膨張量の検査を実行する。
【0107】
なお、検査装置100において、フレキシブル基板32が適正に変形していない場合、フレキシブル基板32が全体的に傾斜していない状態で、第1角度および第2角度のいずれか一方が仰角になることもある。これを考慮して、検査部70は、第1角度および第2角度の両方が俯角である場合に、複数の電池セル20の膨張量の検査を実行し、第1角度および第2角度のいずれか一方または双方が仰角である場合に、複数の電池セル20の膨張量の検査を実行しないようにしてもよい。
【0108】
検査装置100においても、検査部70は、第1歪量および第1角度から第1水平歪量を導出し、第2歪量および第2角度から第2水平歪量を導出する。検査部70は、第1水平歪量と第2水平歪量とから平均水平歪量を導出する。検査部70は、平均水平歪量が基準値以上であると判定した場合、複数の電池セル20の膨張量が過大となっていると判定する。
【0109】
このように、第1変形例の検査装置100では、電池セル20の膨張に応じて、歪センサ36による歪量の検出対象となるフレキシブル基板32が円弧状に収縮するように変形するため、歪センサ36による歪量の検出精度を向上させることができる。その結果、第1変形例の検査装置100によれば、上記実施形態の検査装置1と同様に、電池セル20の膨張量の検出精度を向上させることが可能となる。
【0110】
ただし、フレキシブル基板32の収縮歪を検出する態様よりもフレキシブル基板32の伸び歪を検出する態様の方が、歪量の検出精度をより向上させることができるため、第1変形例の検査装置100よりも上記実施形態の検査装置1の方がより好ましい。
【0111】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0112】
1、100 検査装置
10 電池モジュール
20 電池セル
32 フレキシブル基板
34 結束部材
36 歪センサ
38 地磁気センサ
40 制御装置
60 プロセッサ
62 メモリ