(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013180
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】気体ろ過装置及び気体ろ過装置を備えたレチクルキャリア
(51)【国際特許分類】
H01L 21/673 20060101AFI20240124BHJP
B65D 85/48 20060101ALI20240124BHJP
B01D 46/10 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
H01L21/68 T
B65D85/48
B01D46/10 B
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191973
(22)【出願日】2022-11-30
(31)【優先権主張番号】63/390,353
(32)【優先日】2022-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506017182
【氏名又は名称】家登精密工業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】GUDENG PRECISION INDUSTRIAL CO.,LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【弁理士】
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】邱銘乾
(72)【発明者】
【氏名】莊家和
(72)【発明者】
【氏名】薛新民
(72)【発明者】
【氏名】林書弘
【テーマコード(参考)】
3E096
4D058
5F131
【Fターム(参考)】
3E096AA01
3E096BA24
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3E096CB03
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5F131AA10
5F131BA13
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5F131DC06
5F131GA13
5F131GA19
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5F131JA24
5F131JA32
5F131JA33
5F131JA35
5F131KA22
(57)【要約】
【課題】気体ろ過装置及び気体ろ過装置を備えたレチクルキャリアを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、レチクルキャリアに着脱可能に取り付けられる気体ろ過装置を開示する。前記気体ろ過装置は、少なくとも1つの多孔質拡散要素と、複数の連結部とを含む。前記多孔質拡散要素は、前記複数の連結部を介してレチクルキャリアに着脱可能に連結されることで、前記多孔質拡散要素がレチクルキャリアに制限されてろ過機能を提供する。
【選択図】
図2D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レチクルキャリアに着脱可能に取り付けられる気体ろ過装置であって、
少なくとも1つの中空部を備え、前記レチクルキャリアに着脱可能に連結されるフレームと、
少なくとも1つの多孔質拡散要素であって、前記フレームの前記少なくとも1つの中空部に適合する形状を有することで、前記フレームにしっかりと結合して、前記レチクルキャリアの内部収容空間が前記少なくとも1つの多孔質拡散要素を介して前記レチクルキャリアの外部と連通する少なくとも1つの多孔質拡散要素と、
を含む気体ろ過装置。
【請求項2】
前記フレームは複数の中空部を有し、かつ前記複数の中空部が中心に対して対称的に分布している請求項1に記載の気体ろ過装置。
【請求項3】
前記フレームは、外枠と、前記外枠に連結された少なくとも1つの内枠とを有し、前記外枠と前記内枠との間で前記中空部を画定し、前記外枠が複数の連結部を含み、前記複数の連結部がそれぞれ締結具と協働して、前記外枠を前記レチクルキャリアの蓋に着脱可能に連結させ、前記内枠が前記多孔質拡散要素と結合するために用いられる請求項1に記載の気体ろ過装置。
【請求項4】
前記内枠の内側は、少なくとも1つの結合部を有し、前記結合部は前記多孔質拡散要素の縁を制限して、前記多孔質拡散要素が前記中空部から脱落するのを防止する請求項3に記載の気体ろ過装置。
【請求項5】
前記内枠の内側は、前記結合部に連結された少なくとも1つの支持部を有し、前記支持部は前記多孔質拡散要素内に嵌め込まれることで、前記多孔質拡散要素が前記中空部から脱落するのを防止する請求項4に記載の気体ろ過装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの結合部と前記フレームの上面又は下面とは、不連続な階段構造を呈し、前記多孔質拡散要素は焼結によって前記内枠の前記少なくとも1つの結合部と結合される請求項4に記載の気体ろ過装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの多孔質拡散要素は、上面、下面及び前記上面と前記下面との間に延びる厚さを有し、前記厚さは0.1mm~3.0mmの範囲である請求項1に記載の気体ろ過装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの多孔質拡散要素は、多孔質粉末材料から焼結によって作製され、前記焼結の温度は210℃~240℃の範囲である請求項1に記載の気体ろ過装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの多孔質拡散要素の各孔又は平均孔径は、0.1μm~10μmの範囲である請求項1に記載の気体ろ過装置。
【請求項10】
蓋と、基台と、請求項1に記載の気体ろ過装置とを含み、前記気体ろ過装置は前記蓋に着脱可能に連結されるレチクルキャリア。
【請求項11】
レチクルキャリアに着脱可能に取り付けられる気体ろ過装置であって、
多孔質拡散要素であって、板体と、前記板体の外縁に位置する複数の連結部とを有し、前記複数の連結部がそれぞれ複数の締結具と協働して、前記複数の連結部を介して前記多孔質拡散要素を前記レチクルキャリアに着脱可能に連結させ、前記レチクルキャリアの内部収容空間が前記多孔質拡散要素を経由して前記レチクルキャリアの外部と連通し、前記多孔質拡散要素の前記板体と前記複数の連結部とが一体に形成されている多孔質拡散要素を含む気体ろ過装置。
【請求項12】
前記多孔質拡散要素の前記板体は、上面、下面及び前記上面と前記下面との間に延びる厚さを有し、前記厚さは0.1mm~3.0mmの範囲である請求項11に記載の気体ろ過装置。
【請求項13】
前記多孔質拡散要素の前記板体及び前記複数の連結部は、多孔質粉末材料から焼結によって作製され、前記焼結の温度は210℃~240℃の範囲である請求項11に記載の気体ろ過装置。
【請求項14】
前記多孔質拡散要素の各孔又は平均孔径は、0.1μm~10μmの範囲である請求項11に記載の気体ろ過装置。
【請求項15】
レチクルキャリアであって、
収容空間を画定する蓋及び基台と、
前記蓋に着脱可能に取り付けられ、少なくとも1つの多孔質拡散要素を備えた気体ろ過装置であって、前記少なくとも1つの多孔質拡散要素が前記蓋に着脱可能に連結されて、前記収容空間が前記少なくとも1つの多孔質拡散要素を経由して前記レチクルキャリアの外部と連通する気体ろ過装置と、
を含むレチクルキャリア。
【請求項16】
レチクルキャリアであって、
収容空間を画定する蓋及び基台と、
前記蓋に着脱可能に取り付けられ、外枠及び内枠を備えたフレームであって、前記外枠及び前記内枠が少なくとも1つの中空部を画定し、前記中空部が、多孔質粉末材料から焼結によって作製された多孔質拡散要素が充填されるためのものであるフレームと、
を含むレチクルキャリア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レチクルを保管及び輸送するためのレチクルキャリアに関し、特に、空気が気体ろ過装置を介してレチクルキャリア内に入ることができるように、気体ろ過装置を設けたレチクルキャリアに関する。
【背景技術】
【0002】
基板の清浄度を維持するため、レチクルは一般的にマスクパッケージ(Mask Package)又はレチクル搬送ポッド(Reticle SMIF Pod)などのいわゆるレチクルキャリアに保管され、製造工程環境のパーティクルがレチクルの表面に付着することを避ける。
【0003】
図1は、既知のレチクルキャリアを示し、通常、レチクル搬送ポッドとして使用されるデュアルポッド(dual pod)である。前記デュアルポッドは、外側ポッド(10)と、外側ポッド(10)に収容された内側ポッド(20)とを含む。外側ポッド(10)は、蓋(11)と、基台(12)とを有し、内側ポッド(20)も蓋(22)と、基台(21)とを有する。レチクル(R)は、内側ポッド(20)の基台(21)に格納され、蓋(22)で閉じられて密閉収容を形成する。内側ポッド(20)は、外側ポッド(10)に収容された後、天井走行式無人搬送車(OHT)で搬送することができる。図示されていないが、外側ポッド(10)及び内側ポッド(20)には、シール要素、ロック装置及び構造制限要素などの他の要素を設けることもできる。
【0004】
既知の内側ポッド(20)の蓋(22)の上面には、穴あき蓋(perforated cover)及び前記上面と前記穴あき蓋との間にあるろ過膜が設けられる。ろ過膜は通常、PTFE又は不織布で製造されたフレキシブルなシートである。したがって、空気はろ過膜を経由して内側ポッドの外部に入ることで、蓋(22)と基台(21)とによって画定される収容空間に入り、ろ過膜は空気中のパーティクルをろ過し、きれいな空気が収容空間に入って気体交換を行わせるか、清浄機能を有する。
【0005】
半導体製造工程において、さまざまな目的に応じてデュアルポッドは真空引き・空気交換又は気体充填などの処理が必要とされる。内側ポッド(20)に内外圧力差がある状態において、外側ポッドに導入された乾燥空気は内側ポッド(20)のろ過膜を経由して内側ポッド(20)のレチクル収容空間に流入する。又は、内側ポッドに内外圧力差がある状態において、レチクル収容空間内の気体は、ろ過膜を経由して排出される。したがって、ろ過膜は、主にレチクルを汚染する可能性のある粒子を内側ポッド(20)の外でブロックする。
【0006】
しかしながら、このような従来のろ過膜にはいくつかの問題がある。この種のろ過膜の厚さが薄く可撓性構造特性を持つため、内側ポッド(20)の内外圧力差に変化が発生した時、例えばろ過膜を経由して内側ポッドのレチクル収容空間に気流が出入りする過程中、或いは内外気体が繰り返し交換される時、ろ過膜は、構造特性により穴あき蓋と蓋(22)との間でうなり振動を発生する。振動するろ過膜は、周囲の金属部品(窪みの底面、支持体又は穴あき蓋など)と擦れて破損しやすいことで、パーティクルが発生してレチクル収容空間に落下する。次に、半導体製造工程設備に入って一定時間が経ったデュアルポッドは洗浄する必要がある。ろ過膜は、洗浄作業中に容易に破損及び剥がれることで、パーティクルが発生してレチクル収容空間に落下する。
【0007】
これ故に、従来のろ過膜は、レチクルを汚染する潜在的リスク因子の1つになる。レチクルキャリアの保護力を高めるため、フィルタ装置のろ過能力を犠牲にすることなく、汚染リスクを低減するフィルタ装置を開発する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、レチクルキャリアに着脱可能に取り付けられる気体ろ過装置を提供することである。前記気体ろ過装置は、少なくとも1つの中空部を備え、前記レチクルキャリアに着脱可能に連結されるフレームと、少なくとも1つの多孔質拡散要素であって、前記フレームの前記少なくとも1つの中空部に適合する形状を有することで、前記フレームにしっかりと結合するものであり、前記フレームが前記レチクルキャリアに連結された場合、前記少なくとも1つの多孔質拡散要素が前記フレームを介して前記レチクルキャリア上に位置決めされて、前記レチクルキャリアの内部収容空間が前記少なくとも1つの多孔質拡散要素を介して前記レチクルキャリアの外部と連通する少なくとも1つの多孔質拡散要素とを含む。
【0009】
一具体的実施形態において、前記フレームは、複数の中空部を有し、かつ各中空部は扇形で、かつ前記複数の中空部が中心に対して対称的に分布している。
【0010】
一具体的実施形態において、前記フレームは、外枠と、前記外枠に連結された少なくとも1つの内枠とを有し、前記外枠と前記内枠との間で前記中空部を画定し、前記外枠が複数の連結部を含み、前記複数の連結部がそれぞれ締結具と協働して、前記外枠を前記レチクルキャリアの蓋に着脱可能に連結させ、前記内枠が前記多孔質拡散要素を結合するために用いられる。
【0011】
一具体的実施形態において、前記内枠の内側には、少なくとも1つの結合部が設けられ、前記結合部は前記多孔質拡散要素の縁を制限して、前記多孔質拡散要素が前記中空部から脱落するのを防止する。
【0012】
一具体的実施形態において、前記内枠の内側には、前記結合部に連結された少なくとも1つの支持部を有し、前記支持部は前記多孔質拡散要素内に嵌め込まれることで、前記多孔質拡散要素が前記中空部から脱落するのを防止する。
【0013】
一具体的実施形態において、前記少なくとも1つの結合部と前記フレームの上面又は下面とは、不連続な階段構造を呈し、前記多孔質拡散要素は焼結によって前記内枠の結合部と結合される。
【0014】
一具体的実施形態において、前記少なくとも1つの多孔質拡散要素は、上面、下面及び前記上面と前記下面との間に延びる厚さを有し、前記厚さは0.1mm~3.0mmの範囲である。
【0015】
一具体的実施形態において、前記少なくとも1つの多孔質拡散要素は、多孔質粉末材料から焼結によって作製され、前記焼結の温度は210℃~240℃の範囲である。
【0016】
一具体的実施形態において、前記少なくとも1つの多孔質拡散要素の各孔又は平均孔径は、0.1μm~10μmの範囲である。
【0017】
本発明の別の目的は、蓋と、基台と、前記気体ろ過装置とを含むレチクルキャリアを提供することである。前記気体ろ過装置は、前記蓋に着脱可能に連結される。
【0018】
本発明の別の目的は、レチクルキャリアに着脱可能に取り付けられる気体ろ過装置を提供することである。前記気体ろ過装置は、多孔質拡散要素であって、板体と、前記板体の外縁に位置する複数の連結部とを有し、前記複数の連結部がそれぞれ複数の締結具と協働して、前記複数の連結部を介して前記多孔質拡散要素を前記レチクルキャリアに着脱可能に連結させ、前記レチクルキャリアの内部収容空間が前記多孔質拡散要素を経由して前記レチクルキャリアの外部と連通し、前記多孔質拡散要素の前記板体と前記複数の連結部とが一体に形成されている多孔質拡散要素を含む。
【0019】
本発明の更なる目的は、レチクルキャリアであって、収容空間を画定する蓋及び基台であって、蓋に気体通路が貫通され、前記収容空間が前記気体通路を介して前記レチクルキャリアの外部と連通する蓋及び基台と、多孔質拡散要素であって前記レチクルキャリアの蓋に着脱可能に連結され、前記多孔質拡散要素が前記気体通路と連通して、前記気体通路から前記収容空間に入る空気をろ過する多孔質拡散要素とを含むレチクルキャリアを提供することである。
【0020】
本発明をよりよく理解するため、以下の図面及び説明を参照することができる。以下の図面を参照しつつ、非限定的かつ非網羅的な実施形態を説明する。図面中の構成要素は必ずしも実際のサイズに描かれているわけではなく、構造及び原理の説明に焦点を合わせて描かれている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2A】本発明の実施例1に係る気体ろ過装置を示す図である。
【
図2J】多孔質拡散要素と結合部を結合したその他の変形例を示す図である。
【
図2K】多孔質拡散要素と結合部を結合したその他の変形例を示す図である。
【
図3A】本発明の実施例2に係る気体ろ過装置を示す図である。
【
図4B】本発明のレチクルキャリアと従来のレチクルキャリアの湿度降下曲線を示している気体充填実験のテスト結果グラフである。
【
図5B】本発明のレチクルキャリアと従来のレチクルキャリアの内外圧力差の変化を示している排気実験のテスト結果グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下は、図面を参照しつつ本発明をより完全に説明し、かつ特定の実施形態を例示する。しかし、請求された主題は、様々な異なる形態で具体的に実施され得、したがって、カバー又は出願の請求する主題の構成は、本明細書に開示された具体的実施形態に限定されない。具体的実施形態は、単なる例示である。同様に、本発明は、出願又はカバーされる請求の主題に対して合理的に広い範囲を提供することを意図している。また、例えば請求された主題は、方法、装置又はシステムとして具体的に実施され得る。したがって、具体的実施形態は、例えばハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア又はこれらの任意の組み合わせ(ソフトウェアではないことが知られている)の形をとることができる。
【0023】
本明細書で使用される用語「一実施形態において」は、必ずしも同じ具体的実施形態を指すとは限らず、本明細書で使用される用語「他の(いくつか/特定)の実施形態において」は、必ずしも異なる具体的実施形態を指すとは限らない。請求される主題は、具体的実施形態の全部或いは一の組み合わせを含むことが意図されている。
【実施例0024】
図2A及び
図2Bは、本発明の実施例1に係る気体ろ過装置30を示す。気体ろ過装置30は、レチクルキャリアの蓋22に着脱可能に連結される。レチクルキャリアの基台は、省略されて示していないが、当業者は、
図1の基台21に基づいて理解することができる。
【0025】
図2Bは、蓋22の上面に気体ろ過装置30に適合する窪み222が形成され、窪み222は蓋22の上面より低い底面によって画定され、前記底面の形状が気体ろ過装置30の形状に適合し、例えば実施例1内の窪み222は外側に延びる四隅(outward extending corners)を有する中心対称形状である。4つの連結部224は、底面の四隅にそれぞれ位置し、気体ろ過装置30を連結するために用いられる。同時に
図2Cを参照すると、連結部224は窪み222の底面から隆起した構造で、ねじ挿入用のねじ穴を有することを示している連結部224の拡大図である。前記ねじ穴は、蓋22の下面を貫通していないため、蓋22の気密性を確保している。
【0026】
図2Dは、気体ろ過装置30が主にフレーム31と、複数の多孔質拡散要素32とから構成されていることを示している。
【0027】
フレーム31は、主に外枠311と、内枠312とから構成される。外枠311は、基本的に環状構造で、内枠312は複数のビームからなる放射状構造である。全体の構造強度を向上させるため、内枠312の隣り合うビームとビームとの間に支持部3121が橋架される。外枠311の内側は、内枠312の外側に連結され、中空部313の構造を画定し、中空部313の数は外枠311及び内枠312の設計によって変更する。実施例1において、複数の中空部313を例に挙げると、これらの中空部313の形状各々は扇形であり、かつ全てが中心に対して対称に配置されている。中空部313は、支持部3121によってさらに2つの中空部に分割することができる。外枠311の外側には、蓋22の連結部224に適合するための複数の連結部314が設けられ、連結部314及び連結部224はねじなどの締結具の協働によって分解又は締結することができるが、ねじ要素に限定されない。外枠311と連結部314とが画定したフレーム31の形状は、フレーム31を蓋22の上面の窪み222に配置させることができる。
図2Eは、連結部314の底面図であり、連結部314の底部には蓋22の連結部224に適合するための凹部が形成される。図に示すように、連結部314にねじを設ける場合、ねじの先端は凹部から下方に突出する。連結部314の底部の凹部及び連結部224の隆起した構造の設計は、気体ろ過装置30を蓋22上に位置決めするのに役立ち、上の連結部314のねじ穴を下の連結部224のねじ穴に位置合わせすることを確保する。
【0028】
図2Dを再び参照すると、多孔質拡散要素32は、上面、下面及び上面と下面との間に延びる厚さを有し、厚さは0.1mm~3.0mmの範囲である。多孔質拡散要素32は、中空部313に適合する形状を有することで、中空部313内に隙間なく良好に制限される。多孔質拡散要素32の縁は、外枠311及び内枠312と結合し、多孔質拡散要素32の下面を少なくとも支持部3121で支持し、多孔質拡散要素32の脱落を防止することができる。他の可能な実施形態において、支持部3121を省略することができ、多孔質拡散要素32は外枠311及び内枠312によってのみ制限される。多孔質拡散要素32は、基本的に210℃~240℃の範囲などの高温で多孔質粉末材料から焼結によって作製され、ランダムに分布した多孔質構造を有するが、本発明はこれに限定されない。前記多孔質粉末とは、高温で成形して多孔質焼結ブロック体を形成することができる粉末を指す。好ましい実施形態において、多孔質拡散要素32の厚さは、0.1mm~3.0mmの範囲で、多孔質拡散要素32の各孔又は平均孔径は0.1μm~10μmである。
【0029】
図2F及び
図2Gは、頂部及び底部の角度から中空部313内の構造をさらに拡大した図である。結合部315は、外枠311の内側及び内枠312の内側に延びる凸状リブ構造であり、すなわち、結合部315は中空部313の縁に沿って延びる。図に示すように、結合部315とフレーム31の上面は、不連続な階段構造で、支持部3121は結合部315から延びる橋架(bridge connection)構造である。
【0030】
図2Bを再び参照すると、窪み222の底面には、中空部313に対応する形状を有することができる1つ又は複数の気体通路223を設けることができるが、本発明は、これに限定されない。気体通路223は、蓋22を貫通し、蓋22の内側と外側を連通させる。窪み222の底面には、複数の対応する連結部224が設けられ、前述のように、フレーム31の連結部314と窪み222内の連結部224とを位置合わせした後締結具でフレーム31を蓋22の窪み222に締結することができる。
【0031】
図2Hは、
図2DのA-A線に沿った別の実施形態の断面図であり、多孔質拡散要素32の下面が結合部315及び支持部3121上に位置する前の実施形態とは異なり、この変形例の結合部316と内枠312の上面・下面とが階段構造を形成し、結合部316も同様に支持部3121のような橋架構造を有する。多孔質粉末が中空部313に充填されて焼結して成形した後、結合部316及びその橋架構造は多孔質拡散要素32に嵌め込まれることで、多孔質拡散要素32の脱落を防止する。
図2Iは、橋架構造で連結されていない結合部316を示している
図2DのB-B線に沿った別の実施形態の断面図である。
図2Jの別の変形例において、結合部316’は、内枠312の表面に近接するように構成することができ、多孔質拡散要素32の縁と結合部316’との間の摩擦力により多孔質拡散要素32の脱落を防止する。
図2Kの更なる変形例において、結合部316”は、傾斜面を有する凸状リブであり得る。これらの結合部315、316、316’、316”は、多孔質拡散要素32の焼結成形時多孔質拡散要素32に併せて嵌め込まれるか、結合されることができる。他の可能な変形例において、多孔質拡散要素32は、別個に成形した後フレーム31に組み付けられることができる。結合部315、316’、316”は、内枠312及び外枠311の内側に延在し、すなわち、中空部313の輪郭に沿って延在する連続構造であってもよい。勿論、結合部315、316、316’、316”は、不連続構造であってもよく、結合部315、316、316’、316”の数も異なる組み合わせを有することができる。さらに、結合部のサイズを適切に設計することができるので、適切な力を加えることによって予め成形された多孔質拡散要素を中空部内の結合部に結合させる又は中空部から分解させることができる。これにより、多孔質拡散要素をより交換しやすくなる。前記多孔質拡散要素32とフレーム31との間にシール要素を設けて、気体が多孔質拡散要素32の周囲から漏れるのを防止することができる。
図には示されていないがシールリング又はシールパッキンなどの適切なシール手段を、多孔質拡散要素32と気体通路223との間に設けて、気体が隙間から漏れるのを防ぐことができる。上記実施例は単層の多孔質拡散要素32のみを示しているが、本発明は単層構成に限定されない。例えば少なくとも2層の多孔質拡散要素であり、かつこの2層間は空気又は従来のろ過膜であってもよい。本発明の多孔質拡散要素32は、着脱のため締結具の使用に限定されず、多孔質拡散要素32を位置決めし、蓋の気体通路と連通できる限り、挿入又は埋め込みなどの他の接合方法が利用可能である。例えば多孔質拡散要素32は、気体通路の頂側(前の実施形態のように)に位置することができ、蓋の内側に取り付けて気体通路の底端に位置することもできる。或いは、多孔質拡散要素32は、気体通路内に充填するように特別に成形することができる。したがって、気体がレチクルキャリアの外部から内部収容空間に入る場合でも、又は気体が内部収容空間からレチクルキャリアの外に放出される場合でも、気体中のパーティクルは多孔質拡散要素32によって効果的に阻止及びろ過されることができる。
また、本発明の多孔質拡散要素の厚みを適切に制御する場合、従来のろ過膜より良好な通気性を備える以外に、非常に優れたろ過性能も有する。ろ過実験において、多孔質拡散要素の各孔又は平均孔径のサイズが0.1μmより大きい(ただし、10μmを超えない)場合、前記多孔質拡散要素のろ過効率は99%以上に達することができる。前記実験は、所定の粒子源を設けて気体交換過程で測定を行い、最終的に「多孔質拡散要素」を通過した粒子の割合から求めたパーセントの値を濾過効率とした。
要するに、本発明の気体ろ過装置は、ろ過手段として柔軟性のない多孔質拡散要素を利用し、本発明の気体ろ過装置を備えたレチクルキャリアは、気体交換過程でろ過機能を提供するだけではなく、多孔質拡散要素が振動や摩擦による汚染パーティクルの発生を防ぎ、従来のろ過膜の技術的欠陥を解決することもできる。また、気体ろ過装置は、レチクルキャリアに着脱可能に連結され、多孔質拡散要素も気体ろ過装置に着脱可能に連結されるため、気体ろ過装置又は多孔質拡散要素は、一定期間使用後に交換することができる。
上述の詳細な説明は、本発明の実施可能な実施形態を具体的に説明してものであるが、特許請求の範囲から逸脱することなく特定の変更と修正を行うことができるのは、当業者には明らかである。したがって、上記実施形態は限定ではなく例示のみを目的としており、かつ本発明は本明細書に記載の詳細に限定されないが、添付する特許請求の範囲における記載の範囲内及び均等物で種々の変更が可能である。