(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131808
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ケーブルコネクタ・アッセンブリ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/652 20060101AFI20240920BHJP
H01R 13/6591 20110101ALI20240920BHJP
【FI】
H01R13/652
H01R13/6591
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042280
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】前馬 光佑
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA08
5E021FA16
5E021FB10
5E021FC21
5E021FC31
5E021LA06
5E021LA12
5E021LA15
5E021LA21
(57)【要約】
【課題】組立性の点でより好適な電磁シールドの構成を備えたケーブルコネクタ・アッセンブリを供すること。
【解決手段】コネクタおよび該コネクタに接続されるケーブルを備えるケーブルコネクタ・アッセンブリであって、前記ケーブルは、内部ケーブルと、前記内部ケーブルを包囲するケーブル・シールドとを備え、前記コネクタは、前記ケーブルの一端を収容するケーシングと、前記ケーシング内にて、前記ケーブルに挿通されるリング状部材とを備え、前記リング状部材は、前記ケーブル・シールドと前記ケーシングとの間に延在し、前記ケーブル・シールドおよび前記ケーシングの双方と接触可能な板ばね部を備える、ケーブルコネクタ・アッセンブリが提供される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタおよび該コネクタに接続されるケーブルを備えるケーブルコネクタ・アッセンブリであって、
前記ケーブルは、内部ケーブルと、前記内部ケーブルを包囲するケーブル・シールドとを備え、
前記コネクタは、前記ケーブルの一端を収容するケーシングと、前記ケーシング内にて、前記ケーブルに挿通されるリング状部材とを備え、
前記リング状部材は、前記ケーブル・シールドと前記ケーシングとの間に延在し、前記ケーブル・シールドおよび前記ケーシングの双方と接触可能な板ばね部を備える、ケーブルコネクタ・アッセンブリ。
【請求項2】
前記板ばね部が、前記ケーブル・シールドと互いに接触する第1接触部分と、前記ケーシングと互いに接触する第2接触部分とを備える、請求項1に記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
【請求項3】
前記板ばね部が、前記ケーブル側に向かって凸を成して曲がった曲部分を含み、当該曲部分にてケーブル・シールドと互いに接触する、請求項1に記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
【請求項4】
前記板ばね部は、前記板ばね部の先端側にて、前記ケーシングの内側面に向かって突出する突起を備え、前記突起にて前記ケーシングと互いに接触する、請求項1に記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
【請求項5】
前記ケーシングと前記ケーブル・シールドとが、前記リング状部材の前記板ばね部を介して互いに電気的に接続される、請求項1に記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
【請求項6】
前記リング状部材が、前記ケーブル・シールドの外周側に位置付けられる、請求項1に記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
【請求項7】
前記リング状部材が、前記ケーブルが挿通される基部をさらに備え、
前記基部は、前記ケーシング内に収容された前記ケーブルの前記一端側に位置し、
前記板ばね部は、前記基部から、前記ケーブルの他端側に向かって延在する、請求項1に記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
【請求項8】
前記ケーシングは、前記ケーシングの内部にて、前記ケーブルの径方向に沿って延在する被当接面を備え、
前記基部は、前記被当接面と互いに当接可能な当接面を備える、請求項7に記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
【請求項9】
前記ケーブルの延在方向から見て、前記基部は、少なくとも一部に角部を含む輪郭を有する、請求項7に記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
【請求項10】
前記ケーブルの延在方向から見て、前記基部の輪郭形状は多角形である、請求項7に記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
【請求項11】
前記ケーシングは、前記ケーブルに挿通された前記リング状部材を収容可能なリング状部材収容領域を備え、
ケーブルの延在方向から見て、前記リング状部材収容領域は、前記基部の輪郭と相補的な形状を有する、請求項7に記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
【請求項12】
前記ケーシングは、前記ケーブルの引出方向に沿って前記ケーシングの側面から筒状に突出する挿通口を備え、
前記コネクタは、前記挿通口から前記ケーシング内に挿入され、前記挿通口の内側面と組み合わされるねじ部材をさらに備える、請求項1に記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
【請求項13】
前記リング状部材は、前記ねじ部材の前記挿通口への挿入に伴って、前記ケーシングの内部に向かって移動可能となっている、請求項12に記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
【請求項14】
前記コネクタが、前記リング状部材と前記ねじ部材との間に位置する中間封止部材をさらに備える、請求項12に記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
【請求項15】
前記中間封止部材は、前記リング状部材に向かって、前記ケーシングと前記ケーブルとの間に延在する支持部を備える、請求項14に記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
【請求項16】
前記支持部は、前記リング状部材と前記中間封止部材との間において、前記板ばね部の非存在領域に設けられている、請求項15に記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
【請求項17】
前記板ばね部と前記支持部とが、前記ケーブルの周方向にて互いに隣接している、請求項15に記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
【請求項18】
前記リング状部材が複数の前記板ばね部を備え、
前記中間封止部材が複数の前記支持部を備え、
前記複数の前記板ばね部と前記複数の前記支持部とは、前記ケーブルの外周に沿って互い違いに位置付けられる、請求項15に記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はケーブルコネクタ・アッセンブリに関する。特に、本開示は、電気的に接続されるケーブルを有するケーブルコネクタ・アッセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、多芯ケーブルを電気装置へ接続するためのコネクタが開示されている。
【0003】
かかるコネクタでは、電気装置へ送達される信号による電磁波の外部への放射や外部からの電磁波の侵入を抑制するため、コネクタに取り付けられたケーブルと、コネクタに設けられた端子とを電気的に遮蔽する電磁シールド構造が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、従来のコネクタの電磁シールドの構造に克服すべき課題があることに気づき、そのための対策をとる必要性を見出した。具体的には、以下の課題があることを見出した。
【0006】
例えば、特許文献1に記載のコネクタでは、ケーブルのシールド編組と、ケーブルの一端を収容するコネクタとが接続部材によって電気的に接続される。接続部材は筒部とばね片とで構成されており、シールド編組の内周側に筒部を配置し、当該シールド編組の外周側に位置するコネクタの内壁にまで達するように、シールド編組を貫通してばね片を突出させることで、シールド編組とコネクタとが接続される。
【0007】
しかしながら、上述のような接続構造では、接続部材の取り付けに際して、当該接続部材の筒部に設けられた複数のばね片をシールド編組に貫通させる作業が必要となる。かかる作業は比較的煩雑であり得、特に小型のコネクタにおいては細かな作業となるため、コネクタの組立に多くの時間を要し得る。
【0008】
本開示は、かかる課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本開示の主たる目的は、組立性の点でより好適な電磁シールドの構成を備えたケーブルコネクタ・アッセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本開示では、コネクタおよび該コネクタに接続されるケーブルを備えるケーブルコネクタ・アッセンブリであって、
前記ケーブルは、内部ケーブルと、前記内部ケーブルを包囲するケーブル・シールドとを備え、
前記コネクタは、前記ケーブルの一端を収容するケーシングと、前記ケーシング内にて、前記ケーブルに挿通されるリング状部材とを備え、
前記リング状部材は、前記ケーブル・シールドと前記ケーシングとの間に延在し、前記ケーブル・シールドおよび前記ケーシングの双方と接触可能な板ばね部を備える、ケーブルコネクタ・アッセンブリが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係るケーブルコネクタ・アッセンブリは、組立性の点でより好適な電磁シールドの構成を実現する。
【0011】
より具体的には、本開示のケーブルコネクタ・アッセンブリでは、ケーブルに挿通されたリング状部材は、板ばね部にてケーブル・シールドとケーシングの双方に接触可能となっている。そのため、当該構成によれば、リング状部材をケーブルに挿通させながらケーシング内に移動させるだけで、板ばね部を介してケーブル・シールドとケーシングとを互いに電気的に接続させることが可能となる。つまり、本開示によれば、ケーブルに沿ってリング状部材を移動させるというより簡易な操作によって組立可能である、より好適な電磁シールドが供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るケーブルコネクタ・アッセンブリを模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に係るケーブルコネクタ・アッセンブリを模式的に示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態に係るケーブルコネクタ・アッセンブリを模式的に示す分解斜視図である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態に係るケーブルを模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4に示すケーブルのA-A断面を模式的に示す断面図である。
【
図6A】
図6Aは、本開示の一実施形態に係るリング状部材を模式的に示す斜視図である。
【
図6B】
図6Bは、本開示の一実施形態に係るリング状部材を模式的に示す側面図である。
【
図6C】
図6Cは、本開示の一実施形態に係るリング状部材を模式的に示す側面図である。
【
図7A】
図7Aは、本開示の別の実施形態に係るリング状部材を模式的に示す斜視図である。
【
図7B】
図7Bは、本開示の別の実施形態に係るリング状部材を模式的に示す側面図である。
【
図8】
図8は、本開示の一実施形態に係るケーシングを模式的に示す側面図である。
【
図9】
図9は、
図8に示すケーシングのB-B断面を模式的に示す断面図である。
【
図10】
図10は、本開示の一実施形態に係るケーブルコネクタ・アッセンブリを模式的に示す側面図である。
【
図11】
図11は、
図10に示すケーブルコネクタ・アッセンブリのC-C断面を模式的に示す断面図である。
【
図12】
図12は、
図11に示すケーブルコネクタ・アッセンブリのI部分の模式的拡大図である。
【
図13】
図13は、本開示のケーブルコネクタ・アッセンブリを模式的に示す平面図である。
【
図14】
図14は、
図13に示すケーブルコネクタ・アッセンブリのD-D断面を模式的に示す断面図である。
【
図15】
図15は、本開示の一実施形態における、中間封止部材を備えるケーブルコネクタ・アッセンブリを模式的に示す分解斜視図である。
【
図16A】
図16Aは、本開示の一実施形態に係る中間封止部材を模式的に示す斜視図である。
【
図16B】
図16Bは、本開示の一実施形態に係る中間封止部材を模式的に示す側面図である。
【
図16C】
図16Cは、本開示の一実施形態に係る中間封止部材を模式的に示す側面図である。
【
図17】
図17は、本開示の一実施形態に係るリング状部材と中間封止部材とが組み合わされた状態を模式的に示す側面図である。
【
図18】
図18は、本開示の一実施形態における、中間封止部材を備えるケーブルコネクタ・アッセンブリのC-C断面を模式的に示す断面図である。
【
図19】
図19は、
図18に示すケーブルコネクタ・アッセンブリのII部分の模式的拡大図である。
【
図20】
図20は、本開示の一実施形態における、中間封止部材を備えるケーブルコネクタ・アッセンブリのD-D断面を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、図面を参照して本開示の一実施形態に係るケーブルコネクタ・アッセンブリをより詳細に説明する。図面における各種の要素は、本開示の説明のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観や寸法比などは実物と異なり得る。
【0014】
さらに、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語を用いる。しかしながら、これらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、これらの用語の意味によって本開示の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面の同一符号の部分は、同一または同等の部分を指す。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合がある。
【0015】
また、本開示の例示態様の説明は、添付の図面(記載された説明全体の一部とみなされる図面)に関連して読まれることを意図している。本願明細書で開示される本開示の態様に関する説明において、方向または向きに関する言及は、単に説明の便宜上であり、本開示の範囲を限定することは意図されていない。「下方」、「上方」、「水平」、「垂直」、「上」、「下」、「頂」、「底」などの相対的な用語、ならびに、その派生用語、「水平に」、「下方に」、「上方に」などは、記載された如くまたは図示される如くの方向に言及すると解されるべきである。かかる相対的な用語は説明の便宜のためのみであり、特に明示的な説明がされない限り、特定の方向に装置が構成または操作されていることを要するものではない。また、「取り付けられた」、「付加された」、「接続された」、「結合された」および「相互接続された」などの用語、ならびに、同様の用語は、別途で明示的に説明されない限り、介在物によって構造物同士が互いに直接的または間接的に固定または取り付けられている関係や、双方が可動もしくは剛性の取り付けまたはその関係であることを述べている。
【0016】
本開示の特徴または利益は、好ましい態様を参照することによって例示されている。このような態様は十分に詳細に説明されており、当業者が本開示を実施できるようになっている。また、他の態様も利用することができ、プロセス、電気的もしくは機械的な変更が本開示の範囲を逸脱せずに可能であることを理解されたい。便宜上、実施形態に分けて示す場合があるものの、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組合せは可能である。したがって、本開示は、考えられる特徴の非制限的な組合せを例示する好ましい態様(単独または他の特徴と組み合わされた態様)に明示的に限定されない。後述の実施形態においては、前述と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態ごとに逐次言及しないものとする。
【0017】
本開示の特徴は、ケーブルコネクタ・アッセンブリにおける電磁シールドの構造に関係する。ただし、ここでは、ケーブルコネクタ・アッセンブリの全体構造の把握のため、図面を参照して、以下にケーブルコネクタ・アッセンブリの概要を説明する。
【0018】
[ケーブルコネクタ・アッセンブリの基本構造]
図1は、本開示の一実施形態に係るケーブルコネクタ・アッセンブリ1を模式的に示す斜視図である。
図2および
図3は、それぞれ本開示の一実施形態におけるケーブルコネクタ・アッセンブリの分解斜視図である。ケーブルコネクタ・アッセンブリ1は、主たる構成要素として、コネクタ10と、コネクタ10に接続されるケーブル20とを備える。図示されていないものの、ケーブルコネクタ・アッセンブリ1は、デバイス(例えば、サーボモータなどの電気機器)と組み合わされ、ケーブル20内に含まれる内部ケーブル230と電気的に接続されてよい。例えば、ケーブルコネクタ・アッセンブリ1は、デバイスと互いに組み合わされ、ボルト150等の適当な固定手段によって固定されてもよい。
【0019】
なお、本開示における「アッセンブリ」は、複数の構成要素を有して成る複合品または組合せ品などに相当する。したがって、本開示のケーブルコネクタ・アッセンブリ1は、ケーブル20と、ケーブル20の端部に取り付けられたコネクタ10とを少なくとも有して成るコネクタ複合品またはコネクタ組合せ品に相当し得る。
【0020】
コネクタ10は、主としてケーシング110および当該ケーシング110内に配置される内部ハウジング120を備えてよい。内部ハウジング120は、ケーシング110内に挿入されたケーブルの内部ケーブル230と電気的に接続する端子130を収容する。ケーシング110および内部ハウジング120は、その相対的な配置関係から、それぞれアウタ・ハウジングおよびインナ・ハウジングとも称され得る。
【0021】
ケーシング110は、中空の略箱型形状を有していてよく、デバイスと組み合わされる方向に位置する主面において開口していてよい。また、ケーシング110の少なくとも1つの側面には、ケーブル20が挿通可能な挿通口112が形成されていてよい。本開示のケーブルコネクタ・アッセンブリ1において、コネクタ10と組み合わされたケーブル20は、挿通口112を通ってケーシング110から外部に引き出される(
図1参照)。挿通口112は、ケーシング110の外側に向かって筒状に突出した形状を有していてよい。挿通口112を通ってケーシング110に挿通されたケーブル20の一方の端部は、ケーシング110内に収容される。このケーブル20の端部から所定長さの内部ケーブル230が内部ハウジング120に向かって延びており、内部ケーブル230の先端は、内部ハウジング120内に収容される端子130と電気的に接続される。
【0022】
ケーシング110は、導電性の材料で形成されてよい。代替的には、ケーシング110は、めっき加工等によって表面が導電性である材料で形成されていてよい。例えば、ケーシング110は、樹脂材上に金属めっきを施すことで、表面に導電性が付与された部材であることができる。つまり、ケーシング110は、少なくとも外表面および内表面が導電性を有するように形成されていてよい。
【0023】
内部ハウジング120は、内部ケーブル230に接続された端子130を支持するように構成されている(
図3参照)。デバイスがコネクタ10と組み合わされた状態において、内部ハウジング120内に収容された端子130の各々は、デバイスに備えられた端子130の各々と電気的に接続されてよい。
【0024】
内部ハウジング120は、絶縁性の材料から形成されてよい。例えば、絶縁性の材料は、絶縁性を有する樹脂材であってよい。特に限定されないものの、樹脂材としては、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、および不飽和ポリエステル樹脂から成る群から選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂であることができる。
【0025】
また、本開示の一実施形態において、コネクタ10は、止水のためのパッキン140等の封止部材を有してよい。パッキン140は、例えば、ケーシング110の周縁に沿って、ケーシング110とデバイスとの接合箇所に設けられてよい。これにより、コネクタ10とデバイスとの組合せ箇所に生じ得る隙間が埋められ、コネクタ10内に収容されている内部ケーブル230および端子130などの電気的要素が適切に防水され得る。
【0026】
図4は、本開示の一実施形態に係るケーブル20の模式的斜視図である。
図5は、
図4に示すケーブル20のA-A断面の模式的断面図である。ケーブル20は、複数の内部ケーブル230から構成される内部ケーブル束240、内部ケーブル束240を包囲するケーブル・シールド220、ならびにケーブル・シールド220を包囲する絶縁性の被覆部材210を備える。図示されるように、複数の内部ケーブル230の各々は、純銅線または錫めっき銅線などの導線231の外周を絶縁性の内部ケーブル皮膜232によって被覆することで形成され得る。複数の内部ケーブル230は内部ケーブル束240を構成し、内部ケーブル束240の外周は導電性のケーブル・シールド220によって包囲される。被覆部材210はケーブル・シールド220の外周を覆い、ケーブル20の外周を規定する。かかる被覆部材210は、ケーブル・ジャケットとも称され得る。なお、説明を明確にするため、以降の図面においては内部ケーブルの図示を省略する場合がある。
【0027】
ケーブル・シールド220は、内部ケーブル束240を電気的に遮蔽するため、導電性材料から形成される。ケーブル・シールド220に用いられる導電性材料は、狭い空間に配置された機器などへの配索における優位性から、柔軟性を有する導電性材料であることが好ましい。特に、本開示の一実施形態に係るケーブル・シールド220は、耐久性および可撓性に優れた複数の導電性ストランドまたはファイバーなどの導電性素線から形成された編組であることが好ましい。特に限定されないものの、本開示のケーブル・シールドに用いられる編組は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金などの導電性に優れた材料によって形成されてよい。また、材料表面には、酸化や錆の発生を防止するため、スズめっき、ニッケルめっきまたは銀めっきなどの導電性めっき層が形成されていてよい。
【0028】
被覆部材210は絶縁性の材料によって形成されてよい。ケーブル20の配策における優位性を重視すると、被覆部材210は、可撓性の絶縁性材料であることが好ましい。例えば、被覆部材210は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン、フルオロポリマー、ポリエチレンおよび/またはそれらと同種のものといったポリマーなどから形成されてよい。
【0029】
ケーシング110内に収容されるケーブル20の端部においては、ケーブル・シールド220が露出していてよい(
図4参照)。例えば、
図4に示すように、ケーブル20の端部において最外周の被覆部材210が除去され、ケーブル・シールド220が全体的に被覆部材210上に折り返されていてよい。これにより、ケーブル20の端部にて、ケーブル・シールド220がケーブル20の最外周に配置される。リング状部材160は、露出したケーブル・シールド220上に配置されていてよい。
【0030】
代替的には、露出したケーブル・シールド220上に導電性テープ250が配置されていてもよい。例えば、
図3に示すように、折り返されたケーブル・シールド220上に導電性テープ250が巻き付けられていてもよい。リング状部材160は、当該導電性テープ250上に配置されていてよい。つまり、ケーブル・シールド220とリング状部材160とは、導電性テープ250を介して導通していてもよい。導電性テープ250の材料は特に限定されないものの、例えば銅箔などの金属箔が用いられてよい。
【0031】
本開示のケーブルコネクタ・アッセンブリは、内部ケーブル230と、内部ケーブル230に接続された端子130とを電気的に遮蔽するための電磁シールドの構造に特徴を有する。特に、本開示のケーブルコネクタ・アッセンブリは、内部ケーブル束240を包囲しているケーブル・シールド220と、コネクタ10内の内部ケーブル230および端子130を包囲しているケーシング110との間の接続機構において特徴を有する。
【0032】
[本開示のケーブルコネクタ・アッセンブリの特徴]
本開示のケーブルコネクタ・アッセンブリにおける電磁シールドの構成には、ケーシング110、ケーブル・シールド220、およびケーシング110とケーブル・シールド220とを接続するリング状部材160が関与する。一実施形態においては、ケーシングの挿通口112と組み合わされるねじ部材180がさらに関与する。別の実施形態においては、ねじ部材180とリング状部材160との間に配置される中間封止部材170も電磁シールドの構成に用いられる。以下に、本開示のケーブルコネクタ・アッセンブリにおける電磁シールド構成について詳細に説明する。
【0033】
[リング状部材]
本開示のケーブルコネクタ・アッセンブリにおいて、電磁シールドを構成するためのケーブル・シールド220とケーシング110との電気的な接続は、ケーシング110内に配置されるリング状部材160によって達成される。
図2に示すように、リング状部材160は、ケーブル20に挿通された状態でケーシング110内に配置される。そのため、リング状部材160は、「内部リング状部材」等と称すこともできる。
図6A~
図6Cは、本開示の一実施形態に係るリング状部材160の模式図である。リング状部材160は導電性の部材であり、ケーブル20が挿通される基部161と、当該基部161の端部から全体としてケーブルの延在方向Xに沿って延びる板ばね部165とを備える。
【0034】
以下では、リング状部材160とケーブル・シールド220との接触構造について説明するものの、当該構造は、導電性テープ250を備える態様における、リング状部材160と導電性テープ250との接触構造と同様である。すなわち、ケーブル・シールド上に導電性テープ250を適用した場合において、リング状部材160と導電性テープ250との接続に関する特徴およびその効果は、後述するリング状部材160とケーブル・シールドとの接続に関する特徴およびその効果と同様である。
【0035】
リング状部材160の基部161は、ケーブル20が挿通可能な貫通穴163を備えた、リング状の形状を備えていてよい。つまり、本開示のリング状部材160は、基部161の貫通穴163にてケーブル20に挿通される。換言すれば、ケーブル20は、ケーシング110内にてリング状部材160の貫通穴163を通って延在していてよい。本明細書において、リング状とは、必ずしも真円でなくてよく、楕円形などの非真円形、および多角形などの任意の形状を含む。また、リング状とは必ずしも周方向に全てつながっていなくてよく、一部が欠けた形状(例えば、Cリング状など)であってもよい。
【0036】
一実施形態において、基部161は、全周が閉じられた形状を有する。換言すれば、ケーブル20が挿通する貫通穴163は、全周を閉じられた穴であってよい。つまり、ケーブルの延在方向Xから見て、基部161は、一部が切り欠かれた断続的な形状ではなく、貫通穴163の全周を閉じるように連続した形状を備えていてよい。このような構造により、基部161に対して加えられ得る力が基部161全体により均等に分散され得、強度の点でより好適なリング状部材160が得られ得る。
【0037】
図6A~6Cに示すように、基部161の端部から延びる板ばね部165は、全体として基部161の延在方向と交差する方向に延在する。例えば、板ばね部165の延在方向は、貫通穴163を備える基部161の主面の延在方向に対して略垂直な方向であってよい。
【0038】
図11は、本開示の一実施形態に係るケーブルコネクタ・アッセンブリ1の断面図である。また、
図12は、
図11のI部分の部分拡大図である。図示されるように、リング状部材の板ばね部165は、ケーブル20とケーシング110との隙間にて、全体としてケーブルの延在方向Xに沿って延在してよい。板ばね部165は、当該隙間にて、ケーブル20およびケーシング110の双方に対して接触可能となっている。より具体的には、板ばね部165は、ケーブル20の端部にて露出したケーブル・シールド220とケーシング110の双方に弾性接触可能であってよい。
図11および
図12に示すように、板ばね部165は、被覆部材210上に折り返されたケーブル・シールド220に接触し、かつケーシング110の内側面117に接触可能に構成されている。すなわち、板ばね部165は、ケーブル20の最外周に位置するケーブル・シールド220と互いに接触する第1接触部分166と、ケーシング110の内側面と互いに接触する第2接触部分167とを備えていてよい。前述したように、リング状部材160は、導電性の部材である。そのため、かかる構造において、ケーブル・シールド220とケーシング110とは、板ばね部165を介して互いに電気的に接続され得る。
【0039】
かかる構造によれば、ケーシング110内にて、ケーブル・シールド220とケーシング110との間に板ばね部165を配置することで、ケーブル・シールド220とケーシング110とが互いに電気的に接続され、ケーブルコネクタ・アッセンブリの電磁シールドが構成される。これは、ケーシング110内にて、ケーブル・シールド220が露出したケーブル20にリング状部材160を挿通させることで達成され得る。つまり、本開示によれば、カシメや溶接などの別途の工具を用いる作業を必ずしも必要とせずに、より容易に電磁シールドを構成することが可能である。本開示では、ケーシング110内に挿入されたケーブル20にリング状部材160を挿通させた状態で、ケーブル20に沿ってケーシング110内にリング状部材160を移動させるという簡易な操作のみによって、ケーブル・シールド220とケーシング110との接続を実現可能である。したがって、本開示のケーブルコネクタ・アッセンブリは、組立性の点でより好適な電磁シールドの構成を備え得る。
【0040】
板ばね部165は、全体としてケーブルの延在方向Xに沿って延在しているものの、部分的に曲がっていてよい。より具体的には、
図12に示すように、板ばね部165は、ケーブルの径方向に沿って凸を成して曲がった曲部分を含んでいてよい。板ばね部165は、少なくとも一部分において、ケーブルの径方向に沿って略V字状に突出するように曲がっていてよい。板ばね部165は、当該曲部分にて、ケーブル・シールド220および/またはケーシング110と互いに弾性接触していてよい。例えば、板ばね部165は、第1接触部分166にて、ケーブル・シールド220に向かって(すなわち、ケーシング110の内部側に向かって)傾斜するように屈曲し、ケーブル・シールド220に接触した後、ケーシング110側に向かって(すなわち、ケーシング110の外部側に向かって)折り返すように屈曲していてよい。また例えば、板ばね部165は、第2接触部分167にて、ケーシング110に向かって屈曲し、ケーシング110に接触した後、ケーブル・シールド220側に向かって折り返すように屈曲していてもよい。
【0041】
板ばね部165は、第1接触部分166および/または第2接触部分167にて曲がっていてよい。例えば、
図12に示すように、第1接触部分166および第2接触部分167のいずれか一方において凸を成すように曲がり、他方においては曲部分を備えず、ケーブルの延在方向Xに沿って延在していてよい。一実施形態において、板ばね部165は、第1接触部分166にてケーブル・シールド220側に突出するように曲がっており、第2接触部分167はケーシング110の内面に沿って延在している(
図6A~Cおよび
図12参照)。代替的には、第1接触部分166および第2接触部分167の双方にて曲部分を備えていてもよい。板ばね部165が少なくとも一部に上述の曲部分を備えることで、板ばね部165は、ケーシング110およびケーブル・シールド220に対して弾性付勢力をより好適に作用させることができる。つまり、上述の構造により、板ばね部165は、ケーシング110およびケーブル・シールド220の各々に対してより好適に密着可能となり、ケーブル・シールド220とケーシング110との接続信頼性が向上し得る。
【0042】
なお、本開示において「曲がる」または「曲がっている」とは、屈曲、湾曲または折曲も包含する。すなわち、
図6Bに示す側面視または
図12に示すような断面視において、板ばね部165は、略曲線的(例えば、湾状または弓状)に丸みを帯びて曲がっていてもよく、または略直線的に角張って折れ曲がっていてもよい。このような曲形状は、例えば「折り返し形状」、「ドッグレッグ状」、「略U字形状」、「略V字形状」または「極大点を有する曲線形状」などと称すことも可能である。
【0043】
また、
図6A~6Cに示すように、板ばね部165は、ケーシング110との接触部分において少なくとも1つの突起167を備えていてよい。突起167は、ケーシング110の内表面に対向する板ばね部165の主面にて、ケーシング110に向かって突出していてよい。かかる構造において、板ばね部165とケーシング110とは、突起167において互いに接触していてよい。換言すれば、ケーシング110と接触する板ばねの第2接触部分167は、板ばね部165に設けられた突起167であることができる。
【0044】
板ばね部165がケーシング110と当接可能な突起167を備えることで、面接触である場合と比較して、より確実に板ばね部165とケーシング110との接点を得ることが可能となり得る。さらに、突起167の存在により、ケーシング110に対して板ばね部165による弾性付勢力をより好適に作用させることが可能となる。さらに、ケーシング110の反対側に位置するケーブル・シールド220に対する弾性付勢力も増加され得る。そのため、本開示によれば、組立性が高いことに加え、ケーブル・シールド220とケーシング110との電気的接続において、より接続信頼性の高い電磁シールドの構成が実現され得る。図示されていないものの、代替的には、板ばね部165は、ケーブル・シールド220との接触部分166においても突起を備えていてもよい。
【0045】
リング状部材160の組立性および接続信頼性などをより重視すると、第1接触部分166と第2接触部分167とは、板ばね部165の延在方向(すなわち、ケーブルの延在方向X)にて互いに隣り合っていてよい。例えば、第1接触部分166が相対的に板ばね部165の根元側(すなわち、基部161側)に位置し、第2接触部分167が相対的に板ばね部165の先端側に位置していてよく、あるいはその逆の配置関係であってもよい。すなわち、
図12に示すように、板ばね部165は、根元側にてケーブル・シールド220と接触し、先端側にてケーシング110と互いに接触していてよい。
【0046】
また、リング状部材の基部161は、板ばね部165に対して相対的に内部ハウジング120に近位するように配置されていてよい。他方、板ばね部165は、基部161より内部ハウジング120に遠位して配置されていてよい。つまり、基部161は、ケーシング110内に収容されたケーブル20の一端側に位置し、板ばね部165は、ケーブル20の他端側に向かって延在していてよい。このような構造において、板ばね部165は、ケーブル20がケーシング110から引き出される方向に向かって延在していると解することもできる。
【0047】
かかる構成によれば、ケーブルコネクタ・アッセンブリの組立に際して、リング状部材160は、基部161がケーブル20の先端側に位置するようにケーブル20に挿通され、当該ケーブル20に沿ってケーシング110内に挿入される。その際、リング状部材160は基部161からケーシング110内に挿入されるため、板ばね部165は根元側からケーシング110内に挿入される。そのため、ケーブルの径方向に弾性付勢力を有する板ばね部165をより円滑にケーシング110に挿入可能となり、電磁シールドを構成するための部材をより容易に組み立てることができる。
【0048】
本開示のリング状部材160は、導電性の部材である。リング状部材の基部161と、当該基部161から延びる板ばね部165とは、一体化物であってよい。リング状部材160は、板状の金属部材を加工することによって形成されていてよい。より具体的には、例えば、板状の金属部材を打ち抜き加工することで貫通穴163を形成し、当該貫通穴163を備える基部161から延在する長尺片を曲げ加工することによって板ばね部165を形成してよい。
【0049】
上述の板ばね部165は、複数設けられていてもよい。すなわち、本開示の一実施形態において、リング状部材160は、所定の間隔を空けて、基部161の輪郭に沿って離隔配置されている複数の板ばね部165を備えていてよい。板ばね部165を複数備えることで、ケーブル・シールド220と板ばね部165との接続箇所、およびケーシング110と板ばね部165との接続箇所を複数設けることができる。さらに、板ばね部165からケーブル20への弾性付勢力を複数方向から作用させることができるため、ケーブル20が好適に姿勢保持されるとともに、接続の確実性をも向上させることができる。
【0050】
上述するように、本開示のリング状部材160は、ケーブル・シールド220とケーシング110とを接続する板ばね部165によって、組立性の点でより好適な電磁シールドの構成を実現している。本開示のケーブルコネクタ・アッセンブリは、電気的接続には直接的に関与しないものの、組立性のさらなる向上を実現可能とする特徴をさらに備え得る。例えば、板ばね部165から連続している基部161、およびリング状部材160と関連するその他の部材について後述の特徴をさらに備えることで、組立性のさらなる向上を実現可能としている。
【0051】
本開示のリング状部材160において、基部161は、ケーブルの延在方向Xと交差する方向(例えば、貫通穴163を挿通するケーブルの径方向)に沿って延在し、ケーシング110の内壁面116と当接可能な当接面164を備えていてよい(
図6Bおよび
図12参照)。換言すれば、ケーシング110は、ケーブルの径方向に沿って延在する内壁面116にて、リング状部材160における基部の当接面164と当接可能であってよい。例えば、基部161は、貫通穴163の周縁に当接面164を備えていてよい。
【0052】
かかる当接面164は、ケーシング110内におけるリング状部材160の姿勢保持に助力し得る。具体的には、ケーブルに挿通された状態でケーシング110内に収容されるリング状部材160は、基部の当接面164がケーシングの内壁面116に当接することで、さらなるケーシング110内への進入を阻止される。かかる構造において、ケーシングの内壁面116は、基部の当接面164と当接可能であるところ、被当接面116と称すこともできる。つまり、リング状部材160の取り付けに際して、基部の当接面164とケーシングの被当接面116との当接により、リング状部材160を適切な位置に配置することが可能となる。
【0053】
図6Cは、本開示の一実施形態に係るリング状部材160の、ケーブルの延在方向Xから見た側面図である。基部161は、ケーブルの延在方向Xから見て、少なくとも一部に角部162を備えていてよい。基部161は、ケーブルの延在方向Xから見て、少なくとも一部に、ケーシングの内側面117側に向かって突出する角部162を含む輪郭形状を備えていてよい。すなわち、基部161の輪郭形状は、円形でなくてよい。基部161は、角部162にてケーシングの内側面117と当接可能となっていてよい。なお、ケーシングの内側面117とは、ケーシング110の内部にて、ケーブルの延在方向Xに沿って延在する側面を意味する。より具体的には、内側面117とは、リング状部材160が配置されるケーシングの挿通口112内部の側面を包含する。本開示の構造によれば、角部162がケーシング110の内表面と当接することで、ケーシング110内におけるリング状部材160の移動を規制することができる。特に、リング状部材160がケーブルの径方向に回転することを防止可能となる。
【0054】
ケーシング110内におけるリング状部材160の回転などの相対的な移動は、板ばね部165とケーブル・シールド220、または板ばね部165とケーシング110との接点において、接続不良、および/または部材同士の擦れに起因する抵抗値の上昇を引き起こし得る。本開示のケーブルコネクタ・アッセンブリによれば、ケーシング110内にてリング状部材160が適切に保持されるため、そのような接続不良や擦れの発生が抑制され、接続信頼性の点でより好適な電磁シールドが実現され得る。
【0055】
例えば、基部161の輪郭形状は、多角形の形状であってよい。例えば、基部161の輪郭形状は、
図6Cに示すように略六角形であってよく、四角形、五角形などの他の多角形の形状であってよい。多角形の少なくとも1つの角部162がケーシング110の内表面と当接することで、ケーシング110内におけるリング状部材160の姿勢が好適に保持され得る。
【0056】
好ましくは、リング状部材160が位置するケーシング110の内部空間の形状は、基部161の輪郭形状と相補的な形状を有していてよい(
図8および
図9参照)。図示されるように、ケーシング110内にてリング状部材160が位置付けられるリング状部材収容領域115は、ケーブルの延在方向Xから見て、リング状部材の基部161の輪郭形状と合致した形状を有していてよい。かかる構造において、リング状部材収容領域115は、ケーブルの延在方向Xから見て、少なくとも1つの角部162を含む形状を有していてよい。
【0057】
リング状部材の基部161が多角形状である場合、ケーシング110のリング状部材収容領域115は、当該基部161の多角形状に対応した多角柱の空間を有していてよい。例えば、
図6Cおよび
図8にそれぞれ示されるように、リング状部材の基部161およびケーシング110のリング状部材収容領域115は、ケーブルの延在方向Xから見て、共に略六角形の形状を有していてよい。リング状部材の基部161は、ケーシング110の内側面117によって画定されるリング状部材収容領域115に嵌まり込むように収容される。これにより、基部の角部162の移動が複数の内側面117によって規制され、リング状部材160のガタ付きや回転などの相対的な移動がより好適に抑制され得る。
【0058】
[ねじ部材]
本開示のケーブルコネクタ・アッセンブリにおける電磁シールドの構成には、ケーシングの挿通口112と組み合わされるねじ部材180(
図11参照)がさらに関与していてよい。ねじ部材180は中空構造を備え、ケーシング110から引き出されるケーブル20は、ねじ部材180の中空部分を挿通可能となっている。そのため、当該ねじ部材180は、「中空ねじ部材」等と称すこともできる。ねじ部材180の外周面には、ねじ山185が形成されていてよい。また、ケーシングの挿通口112の内周面には、ねじ部材180のねじ山185と係合可能なねじ溝113が形成されていてよい(
図9参照)。かかる構造により、ねじ部材180は、ケーシングの挿通口112の内周面と組み合わされ得る。すなわち、ねじ部材180とケーシング110との螺合に際しては、ねじ部材180が挿通口112内に入り込むように組み合わされる。
【0059】
ケーブルコネクタ・アッセンブリの組立に際しては、ケーブル20がケーシング110内に挿入された後、ケーブル20に挿通されたリング状部材160がケーブル20に沿って移動し、挿通口112からケーシング110内に入れられる。その後、ねじ部材180が挿通口112と螺合されることによって、挿通口112から引き出されるケーブル20の姿勢が保持される。この際、ねじ部材180が挿通口112内に挿入されるように組み合わされることで、リング状部材160は、ねじ部材180の挿入に伴ってケーシング110内の内部へと移動可能となっている。換言すれば、ねじ部材180は、挿通口112との締結のため、回転しながら挿通口112内に進入する際、ねじ部材180の端部にてリング状部材160と当接することで、リング状部材160をケーシング110のさらに奥へと押し込むことができる。これにより、リング状部材160は、ケーシング110内のリング状部材収容領域115へと移動され、ケーブル・シールド220およびケーシング110との電気的接続のための適切な位置に配置され得る。つまり、上述の構造によれば、特別な工具および煩雑な操作を要さずに、ねじ部材180の締結によってリング状部材160を適切な位置に配置させることができる。
【0060】
図7Aおよび
図7Bは、本開示の一実施形態におけるリング状部材の模式図である。図示されるように、ねじ部材180と当接可能となっている板ばね部165の先端は、ケーブル20に向かって折り返すように曲がっていてよい。板ばね部165の先端は、ケーブルの延在方向Xに向かって凸を成すように、略J字状に屈曲して折り返していてよい。板ばね部165は、先端に折り返し部分を備え、当該折り返しの極大点付近でねじ部材180と当接可能になっていてよい。かかる構造によれば、ねじ部材180と板ばね部165との当接面積をより多く確保できるため、ねじ部材180によるリング状部材160のケーシング110内部への移動をより好適に実施することができる。さらに、ねじ部材180との当接に起因する板ばね部165の変形が抑制され得るため、本構造は、ケーブルコネクタ・アッセンブリの長寿命化の点においても好適であり得る。
【0061】
[中間封止部材]
図15は、本開示の別の実施形態におけるケーブルコネクタ・アッセンブリの模式図である。本開示のケーブルコネクタ・アッセンブリは、電磁シールドの組立に関与する構成要素として、リング状部材160とねじ部材180との間に配置される中間封止部材170をさらに備えていてよい。
図16A~16Cは、本開示の一実施形態における中間封止部材170の模式図である。なお、中間封止部材170の「中間」とは、ケーブルコネクタ・アッセンブリが組み立てられた状態にて、かかる封止部材170が、リング状部材160とねじ部材180との間に位置付けられることを意味する。中間封止部材170は、リング状部材160とねじ部材180との間に介在する部材と解することもでき、「介在封止部材」などと称すこともできる。
【0062】
中間封止部材170は、中空の筒状構造を備えていてよく、当該中空部分をケーブルが挿通可能となっている。ケーブルに挿通された中間封止部材170は、挿通口112内にて、リング状部材160とねじ部材180との間に位置付けられる(
図18および
図19参照)。中間封止部材170の外周面には、挿通口112の内周面と当接可能な突条172aが設けられていてよい。また、中間封止部材170の内周面には、ケーブルの外周と当接可能な突条172bが設けられていてよい。当該突条(172a、172b)が、挿通口112の内周面および/またはケーブルの外周に対して密接することにより、ケーシング110の内部が封止され、ケーシング110内の端子130、ならびに、ケーシング110およびケーブル・シールド220とリング状部材160との接続箇所を含む電気的要素が好適に保護され得る。
【0063】
中間封止部材170を備えるケーブルコネクタ・アッセンブリの組立に際しては、ケーブルがケーシング110内に挿入された後、ケーブルに挿通されたリング状部材160および中間封止部材170が、この順で挿通口112からケーシング110内に入れられる。その後、ねじ部材180を締結することにより、リング状部材160と中間封止部材170とが共に挿通口112内に押し込まれる。つまり、ねじ部材180の締結操作によって中間封止部材170が挿通口112内に圧入されることにより、リング状部材160は、間接的にケーシング110の奥へと移動させられる。したがって、本開示の構成によれば、ねじ部材180と挿通口112とを組み合わせる簡易な操作のみによって、ケーシング110とケーブル・シールド220との電気的接続、およびケーシング110内の封止を達成することができる。これにより、組立性に優れた電磁シールドの構成を備えるより好適なケーブルコネクタ・アッセンブリが実現され得る。
【0064】
中間封止部材170とねじ部材180とは、ケーブルの径方向にて一部が互いに重なるように組み合わされていてよい。例えば、
図18に図示されるように、中間封止部材170は、一部がねじ部材180の内周面と接するように組み合わされていてよい。より具体的には、中間封止部材170とねじ部材とは、中間封止部材170の筒部171がねじ部材の内周側に位置するように組み合わされていてよい。
【0065】
また、ねじ部材180の先端は、中間封止部材170の外周側に位置する突条172aと当接可能となっていてよい。かかる構造によれば、ねじ部材180の締結に伴ってケーシング110内に向かってねじ部材180が移動する際、ねじ部材180の先端と当該突条172aが当接することで、中間封止部材170がケーシング110内に向かって移動され得る。
【0066】
図15A~Cに示されるように、中間封止部材170は、突条を備える筒部171と、筒部171からケーブルに沿って延在する支持部175を備えていてよい。支持部175は、筒部171からリング状部材160に向かって突出する略長尺状の形状を有していてよい。より具体的には、支持部175は、筒部171から、リング状部材の基部161に向かって突出していてよい(
図16~19参照)。支持部175により、リング状部材160と中間封止部材170との間に延在するケーブルの姿勢が保持され得、リング状部材160を介するケーブル・シールド220とケーシング110との接続状態をより好適に保持することができる。
【0067】
図17は、本開示の一実施形態におけるリング状部材160と中間封止部材170とが組み合わされた状態を示す側面図である。支持部175は、リング状部材の板ばね部165の非存在領域に位置付けられてよい。換言すれば、板ばね部165は、中間封止部材170の支持部175の非存在領域に位置付けられていてよい。すなわち、ケーシング110の挿通口112内にて、板ばね部165は、中間封止部材170の筒部171に向かって延在している一方、支持部175は、当該板ばね部165が位置していない領域にて、リング状部材の基部161に向かって延在していてよい。かかる構造によれば、支持部175は、板ばね部165による弾性付勢力が作用されているケーブルの姿勢の好適な保持に資することができる。
【0068】
より好適な態様においては、支持部175は、板ばね部165の非存在領域において、支持部175は、ケーブル20とケーシング110との隙間に嵌まるように延在していてよい。換言すれば、支持部175は、ケーブル20とケーシング110との隙間形状に対応した形状を備えていてよい。これにより、より好適にケーブル姿勢が保持され得る。
【0069】
より具体的には、支持部175は、ケーブルの周方向にて、板ばね部165と互いに隣接していてよい(
図17および
図20参照)。すなわち、支持部175と板ばね部165とは、ケーブルの周方向に沿って互いに隣接配置されていてよい。換言すれば、ケーブル20の外周に沿って互いに隣接している支持部175と板ばね部165によって、ケーブル20の外周の少なくとも一部が覆われていてよい。なお、本明細書における「隣接」とは、支持部175と板ばね部165とが相互に接する場合の他、支持部175と板ばね部165とが相互に接することなく、互いに離隔して隣り合う場合を含む。
【0070】
ある好適な態様において、支持部175は複数設けられていてよい。また、リング状部材の板ばね部165もまた、複数設けられていてよい。つまり、リング状部材160は複数の板ばね部165を備え、中間封止部材170もまた複数の支持部175を備えていてよい。より具体的には、リング状部材160は、所定の間隔を空けて、基部161の輪郭に沿って離隔配置されている複数の板ばね部165を備えていてよい。同様に、中間封止部材170も所定の間隔を空けて離隔配置された複数の支持部175を備えていてよい。かかる構造において、板ばね部165は、複数の支持部175の間に位置付けられてよい。換言すれば、支持部175は、板ばね部165の、ケーブルの周方向における両隣に支持部175が位置付けられてよい。
【0071】
好ましくは、リング状部材160と中間封止部材170とは、板ばね部165と支持部175とが互い違いになるように組み合わされる。すなわち、
図17および
図20に示されるように、複数の板ばね部165の間に支持部175が嵌まり込むように、リング状部材160と中間封止部材170とが組み合わされてよい。ケーブル20は、リング状部材160および中間封止部材170を挿通する部分にて、互い違いに配置された板ばね部165と支持部175とによって包囲されていてよい。
【0072】
板ばね部165と支持部175とが互い違いに組合せ可能となっていることで、ケーブル20の姿勢が好適に保持され得る。さらに、上述の構造によれば、板ばね部165の両側に支持部175が配置できるため、ケーブルの周方向における板ばね部165の相対的な移動が規制され、接続信頼性をより向上させることができる。そのため、板ばね部165とケーブル・シールド220との導通状態が好適に保持可能となり、ケーブル・シールド220とリング状部材160との接続信頼性がより向上し得る。
【0073】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、上記構成を組み合わせるなど、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【0074】
なお、本開示のケーブルコネクタ・アッセンブリは、以下の好適な態様を包含している。
<1>コネクタおよび該コネクタに接続されるケーブルを備えるケーブルコネクタ・アッセンブリであって、
前記ケーブルは、内部ケーブルと、前記内部ケーブルを包囲するケーブル・シールドとを備え、
前記コネクタは、前記ケーブルの一端を収容するケーシングと、前記ケーシング内にて、前記ケーブルに挿通されるリング状部材とを備え、
前記リング状部材は、前記ケーブル・シールドと前記ケーシングとの間に延在し、前記ケーブル・シールドおよび前記ケーシングの双方と接触可能な板ばね部を備える、ケーブルコネクタ・アッセンブリ。
<2>前記コネクタは、前記ケーブルの一端を収容するケーシングと、前記ケーシング内に位置するリング状部材とを備え、
前記リング状部材は、前記ケーブルが挿通される基部と、前記基部から前記ケーブルの延在方向に向かって延びる板ばね部とを備え、
前記板ばね部は、前記ケーブル・シールドおよび前記ケーシングの双方と接触可能である、<1>に記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
<3>前記板ばね部が、前記ケーブル・シールドと互いに接触する第1接触部分と、前記ケーシングと互いに接触する第2接触部分とを備える、<1>または<2>に記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
<4>前記板ばね部が、前記ケーブル側に向かって凸を成して曲がった曲部分を含み、当該曲部分にてケーブル・シールドと互いに接触する、<1>~<3>のいずれかに記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
<5>前記板ばね部は、前記板ばね部の先端側にて、前記ケーシングの内壁に向かって突出する突起を備え、前記突起にて前記ケーシングと互いに接触する、<1>~<4>のいずれかに記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
<6>前記ケーシングと前記ケーブル・シールドとが、前記リング状部材の前記板ばね部を介して互いに電気的に接続される、<1>~<5>のいずれかに記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
<7>前記リング状部材が、前記ケーブル・シールドの外周側に位置付けられる、<1>~<6>のいずれかに記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
<8>前記リング状部材が、前記ケーブルが挿通される基部をさらに備え、
前記基部は、前記ケーシング内に収容された前記ケーブルの前記一端側に位置し、
前記板ばね部は、前記基部から、前記ケーブルの他端側に向かって延在する、<1>~<7>のいずれかに記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
<9>前記ケーシングは、前記ケーシングの内部にて、前記ケーブルの径方向に沿って延在する被当接面を備え、
前記基部は、前記被当接面と互いに当接可能な当接面を備える、<2>~<7>のいずれかに記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
<10>前記ケーブルの延在方向から見て、前記基部は、少なくとも一部に角部を含む輪郭を有する、<2>~<9>のいずれかに記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
<11>前記ケーブルの延在方向から見て、前記基部の輪郭形状は多角形である、<2>~<10>のいずれかに記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
<12>前記ケーシングは、前記ケーブルに挿通された前記リング状部材を収容可能なリング状部材収容領域を備え、
ケーブルの延在方向から見て、前記リング状部材収容領域は、前記基部の輪郭と相補的な形状を有する、<2>~<11>のいずれかに記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
<13>前記ケーシングは、前記ケーブルの引出方向に沿って前記ケーシングの側面から筒状に突出する挿通口を備え、
前記コネクタは、前記挿通口から前記ケーシング内に挿入され、前記挿通口の内側面と組み合わされるねじ部材をさらに備える、<1>~<12>のいずれかに記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
<14>前記リング状部材は、前記ねじ部材の前記挿通口への挿入に伴って、前記ケーシングの内部に向かって移動可能となっている、<13>に記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
<15>前記コネクタが、前記リング状部材と前記ねじ部材との間に位置する中間封止部材をさらに備える、<13>または<14>に記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
<16>前記中間封止部材は、前記リング状部材に向かって、前記ケーシングと前記ケーブルとの間に延在する支持部を備える、<15>に記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
<17>前記支持部は、前記リング状部材と前記中間封止部材との間において、前記板ばね部の非存在領域に設けられている、<16>に記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
<18>前記板ばね部と前記支持部とが、前記ケーブルの周方向にて互いに隣接している、<16>または<17>に記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
<19>前記リング状部材が複数の前記板ばね部を備え、
前記中間封止部材が複数の前記支持部を備え、
前記複数の前記板ばね部と前記複数の前記支持部とは、前記ケーブルの外周に沿って互い違いに位置付けられる、<16>~<18>のいずれかに記載のケーブルコネクタ・アッセンブリ。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本開示の電磁シールド構成を備えたケーブルコネクタ・アッセンブリは、電気的接続を要する各種技術分野で好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 ケーブルコネクタ・アッセンブリ
10 コネクタ
110 ケーシング
112 挿通口
113 ねじ溝
115 リング状部材収容領域
116 被当接面
117 内側面
120 内部ハウジング
130 端子
140 パッキン
150 ボルト
160 リング状部材
161 基部
162 角部
163 貫通穴
164 当接面
165 板ばね部
166 第1接触部分
167 第2接触部分(突起)
170 中間封止部材
171 筒部
172a 突条
172b 突条
175 支持部
180 ねじ部材
185 ねじ山
20 ケーブル
210 被覆部材
220 ケーブル・シールド
230 内部ケーブル
231 導線
232 内部ケーブル皮膜
240 内部ケーブル束
250 導電性テープ