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特開2024-131816エレベータ制御装置、およびエレベータ制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131816
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】エレベータ制御装置、およびエレベータ制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/14 20060101AFI20240920BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B66B1/14 F
B66B3/00 P
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042289
(22)【出願日】2023-03-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】廣畑 圭司朗
【テーマコード(参考)】
3F303
3F502
【Fターム(参考)】
3F303CB24
3F502HB10
3F502JA10
3F502JA21
3F502JA34
3F502JA54
3F502JA57
3F502KA01
3F502KA11
3F502KA44
3F502KA50
(57)【要約】
【課題】利用者の輸送効率の低下を抑制しつつ、ウィルス感染のリスクを低減するための乗車制限を効果的に行うことを可能とする。
【解決手段】エレベータ制御装置(1)は、乗りかご(31)に乗車する予定の利用者、および、前記乗りかごに乗車中の利用者の少なくともいずれか一方のウィルスに感染している可能性を示す感染可能性情報を取得する情報取得部(12)と、乗りかご(31)の換気状態の履歴を記録する制御を行う換気履歴制御部(16)と、感染可能性情報および換気状態の履歴に基づいて乗車可能人数を制御する乗車制限部(13)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの乗りかごに乗車する予定の利用者、および、前記乗りかごに乗車中の利用者の少なくともいずれか一方のウィルスに感染している可能性を示す感染可能性情報を取得する情報取得部と、
前記乗りかごの換気状態の履歴を記録する制御を行う換気履歴制御部と、
前記感染可能性情報および前記換気状態の履歴に基づいて乗車可能人数を制御する乗車制限部と、備えるエレベータ制御装置。
【請求項2】
前記換気状態の履歴は、前記乗りかごの戸開時間の履歴であり、
前記乗車制限部は、前記感染可能性情報が、前記乗りかごに乗車中の前記利用者のウィルスに感染している可能性を示すウィルス感染可能性が所定値よりも低いと示している状態、あるいは前記乗りかごが空の状態において、前記戸開時間の累積時間が制限運転閾値よりも小さい期間で前記乗りかごの乗車可能人数を通常よりも少なくする制御を行う、請求項1に記載のエレベータ制御装置。
【請求項3】
前記戸開時間の累積時間は、前記ウィルス感染可能性が所定値を超えている利用者が前記乗りかごを降車した時点からの累積時間である請求項2に記載のエレベータ制御装置。
【請求項4】
前記乗りかごの戸開閉を制御する戸開閉制御部をさらに備え、
前記戸開閉制御部は、前記乗車制限部が、乗車可能人数を通常よりも少なくする制御を行っている期間に、前記乗りかごが所定の階において停車しており、かつ、運行待機中である場合に、所定の期間で戸開状態とする制御を行う、請求項2に記載のエレベータ制御装置。
【請求項5】
前記感染可能性情報より、前記乗りかごに乗車中の前記利用者のウィルス感染可能性が所定値を超えていると検知した場合に、検知した時点で、前記乗りかごに乗車している全ての利用者が降車する、あるいは通常の乗車可能人数よりも少ない所定人数となるまで、前記乗りかごに対する乗場呼びに応答しない乗場呼び制限を行う乗場呼び制限部を、備える、請求項1に記載のエレベータ制御装置。
【請求項6】
前記情報取得部は、前記乗りかご内の二酸化炭素濃度に関する情報をさらに取得し、
前記乗車制限部は、前記ウィルス感染可能性が所定値を超えている利用者が前記乗りかごを降車した時点の二酸化炭素濃度が第1所定濃度以上である場合に、乗車可能人数を通常よりも少なくする制御を行っている期間において前記二酸化炭素濃度が第2所定濃度以下となった場合に、前記制限運転閾値を低くする制御を行う、請求項2に記載のエレベータ制御装置。
【請求項7】
前記情報取得部は、前記乗りかごに設けられている換気装置の稼働状態に関する換気装置稼働情報をさらに取得すると共に、
前記乗車制限部は、さらに前記換気装置稼働情報に基づいて、前記乗りかごの乗車可能人数を制御する、請求項1に記載のエレベータ制御装置。
【請求項8】
エレベータの乗りかごに乗車する予定の利用者、および、前記乗りかごに乗車中の利用者の少なくともいずれか一方のウィルスに感染している可能性を示す感染可能性情報を取得する情報取得ステップと、
前記乗りかごの換気状態の履歴を記録する制御を行う換気履歴制御ステップと、
前記感染可能性情報および前記換気状態の履歴に基づいて乗車可能人数を制御する乗車制限ステップと、備えるエレベータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ制御装置およびエレベータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飛沫感染やエアロゾル感染などのリスクがあるウィルスが流行している状況においては、密閉された空間に多人数が存在する状況は回避されるべきとされている。エレベータの乗りかご内は密閉された空間となるため、ウィルス流行時にはある程度乗車制限が行われることが好ましい。
【0003】
例えば、特許文献1には、乗場にいる乗客の状態に応じて乗車制限を変更することで、乗客間の感染リスクを抑えるエレベータシステムが開示されている。具体的には、該エレベータシステムは、撮像手段によって撮影された画像から乗場の乗客の状態を解析して、その解析結果から感染リスクに関わる情報を抽出し、乗りかごの積載荷重に対する満員判定の閾値を定格荷重よりも低い値に切り替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許7059412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、感染リスクを有する乗客(利用者)が乗車した場合に、乗りかごが待機状態となったとき等の所定のタイミングで、特定の階に移動して一定時間戸開することにより換気する換気運転を行うことが開示されている。しかしながら、この構成では、戸開している一定時間の間、エレベータを利用できなくなるため輸送効率が低下する。また、待機状態となることなく運行が継続された場合には、乗りかご内が十分に換気されない状態で、通常の乗車可能人数が乗車する可能性がある。
【0006】
また、特許文献1には、感染リスクを有する乗客が乗車した場合に、乗車可能人数を通常よりも減らす乗車制限することも開示されている。しかしながら、この構成では、一旦、乗車制限を行っても、次に停車した階で乗り込む乗客に感染リスクを有する乗客が含まれていない場合、乗車制限が解除される。したがって、この場合も、乗りかご内が十分に換気されない状態で、通常の乗車可能人数が乗車する可能性がある。
【0007】
本発明の一態様は、利用者の輸送効率の低下を抑制しつつ、ウィルス感染のリスクを低減するための乗車制限を効果的に行うことを可能とするエレベータ制御装置およびエレベータ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るエレベータ制御装置は、エレベータの乗りかごに乗車する予定の利用者、および、前記乗りかごに乗車中の利用者の少なくともいずれか一方のウィルスに感染している可能性を示す感染可能性情報を取得する情報取得部と、前記乗りかごの換気状態の履歴を記録する制御を行う換気履歴制御部と、
前記感染可能性情報および前記換気状態の履歴に基づいて乗車可能人数を制御する乗車制限部と、を備える。
【0009】
上記構成によれば、感染可能性情報と換気状態とに基づいて、乗りかごの乗車可能人数を制限する乗車制限を行う。よって、ウィルス感染している可能性の高い利用者が乗車し、その後降車した場合であっても、換気状態が改善されるまで乗車可能人数の制限を継続する、などの制御が可能となる。また、換気を行うためにエレベータを一時的に使用できなくすることもないので、エレベータの輸送効率の低下を抑制することができる。これにより、利用者の輸送効率の低下を抑制しつつ、ウィルスに感染するリスクを低減するための乗車制限を効果的に行うことができる。
【0010】
本発明の一態様に係るエレベータ制御装置は、さらに、前記換気状態の履歴は、前記乗りかごの戸開時間の履歴であり、前記乗車制限部は、前記感染可能性情報が、前記乗りかごに乗車中の前記利用者のウィルスに感染している可能性を示すウィルス感染可能性が所定値よりも低いと示している状態、あるいは前記乗りかごが空の状態において、前記戸開時間の累積時間が制限運転閾値よりも小さい期間で前記乗りかごの乗車可能人数を通常よりも少なくする制御を行うようにしてもよい。
【0011】
上記の構成によれば、感染している可能性の高い利用者が降車して、乗りかごに乗車中の利用者のウィルス感染可能性が所定値よりも低いと示している状態、あるいは、前記乗りかごが空の状態になっても、戸開時間の累積時間が制限運転閾値よりも小さい期間では、乗車可能人数を通常よりも少なくする乗車の制限が継続され、戸開による乗りかご内の換気が十分に行われてから乗車の制限が解除されることになる。よって、ウィルス感染リスクをより的確に低減することができる。
【0012】
また、前記戸開時間の累積時間は、前記ウィルス感染可能性が所定値を超えている利用者が前記乗りかごを降車した時点からの累積時間であってもよい。これにより、乗車の制限を終了するタイミングがより適切にすることができる。
【0013】
また、前記乗りかごの戸開閉を制御する戸開閉制御部をさらに備え、前記戸開閉制御部は、前記乗車制限部が、乗車可能人数を通常よりも少なくする制御を行っている期間に、前記乗りかごが所定の階において停車しており、かつ、運行待機中である場合に、所定の期間で戸開状態とする制御を行うようにしてもよい。
【0014】
上記の構成によれば、乗場からの乗車要求や乗りかご内利用者からの運行指示などが行われていない運行待機中においては、乗りかごの戸開が行われることになる。よって、戸開時間を増大させることができるので、乗りかご内の換気をより早く行うことができる。したがって、乗車制限が行われる期間を短くすることができるので、利用者の輸送効率を向上させることができる。
【0015】
本発明の一態様に係るエレベータ制御装置は、さらに、前記感染可能性情報より、前記乗りかごに乗車中の前記利用者のウィルス感染可能性が所定値を超えていると検知した場合に、検知した時点で、前記乗りかごに乗車している全ての利用者が降車する、あるいは通常の乗車可能人数よりも少ない所定人数となるまで、前記乗りかごに対する乗場呼びに応答しない乗場呼び制限を行う乗場呼び制限部を、備えていてもよい。
【0016】
上記の構成によれば、乗りかご内に感染可能性の有る利用者が存在することを検知した時点で、いち早く、乗りかご内の利用者を増やさない対応をとることができる。これにより、リスクレベルが高くなった乗りかごに、新たな利用者が乗車して感染が広がるといった事態を回避することができる。
【0017】
本発明の一態様に係るエレベータ制御装置は、さらに、前記情報取得部は、前記乗りかご内の二酸化炭素濃度に関する情報をさらに取得し、前記乗車制限部は、前記ウィルス感染可能性が所定値を超えている利用者が前記乗りかごを降車した時点の二酸化炭素濃度が第1所定濃度以上である場合に、乗車可能人数を通常よりも少なくする制御を行っている期間において前記二酸化炭素濃度が第2所定濃度以下となった場合に、前記制限運転閾値を低くする制御を行うようにしてもよい。
【0018】
上記の構成によれば、二酸化炭素濃度の低下が検出された場合に、戸開時間の累積時間に対する制限運転閾値が下げられるので、乗車制限運転の解除までに必要な戸開時間の累積時間を短くすることができる。よって、必要な換気を確保しつつ、利用者の輸送効率をさらに向上させることができる。
【0019】
本発明の一態様に係るエレベータ制御装置は、さらに、前記情報取得部は、前記乗りかごに設けられている換気装置の稼働状態に関する換気装置稼働情報をさらに取得すると共に、前記乗車制限部は、さらに前記換気装置稼働情報に基づいて、前記乗りかごの乗車可能人数を制御するようにしてもよい。
【0020】
上記の構成によれば、乗りかごに設けられている換気装置の稼働状態に応じて、乗車制限期間を変更することができる。よって、例えば換気装置が強く稼働している場合には、乗車制限期間を短くするなどの制御が可能となるので、利用者の輸送効率をさらに向上させることができる。
【0021】
本発明の一態様に係るエレベータ制御方法は、エレベータの乗りかごに乗車する予定の利用者、および、前記乗りかごに乗車中の利用者の少なくともいずれか一方のウィルスに感染している可能性を示す感染可能性情報を取得する情報取得ステップと、前記乗りかごの換気状態の履歴を記録する制御を行う換気履歴制御ステップと、前記感染可能性情報および前記換気状態の履歴に基づいて乗車可能人数を制御する乗車制限ステップと、備える。
【0022】
本発明の各態様に係るエレベータ制御装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記エレベータ制御装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記エレベータ制御装置をコンピュータにて実現させるエレベータ制御装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様によれば、利用者の輸送効率の低下を抑制しつつ、ウィルス感染のリスクを低減するための乗車制限を効果的に行うことを可能とするエレベータ制御装置およびエレベータ制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係るエレベータ制御装置を含むエレベータシステムの構成を示す図である。
図2図1に示すエレベータ制御装置における乗車制限部の構成を示す図である。
図3図1に示すエレベータ制御装置における運転制御部の構成を示す図である。
図4図1に示すエレベータ制御装置にて実行される処理のフローチャートである。
図5図4における換気パラメータ設定処理を示すフローチャートである。
図6図4における乗車制限運転処理を示すフローチャートである。
図7】本発明のその他の実施形態に係るエレベータ制御装置を含むエレベータシステムの構成を示す図である。
図8図7に示すエレベータ制御装置における乗車制限部の構成を示す図である。
図9図7に示すエレベータ制御装置にて実行される処理のフローチャートである。
図10図9における乗車制限運転処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。ただし、以下の説明は本発明に係るエレベータ制御装置の一例であり、本発明の技術的範囲は図示例に限定されるものではない。
【0026】
(エレベータシステム)
図1は、本発明の一実施形態に係るエレベータ制御装置1を含むエレベータシステム100の構成を示す図である。図1に示すように、エレベータシステム100は、エレベータ30と、エレベータ制御装置1と、を備えている。なお、図1では、エレベータ30が1台である場合を例にして説明するが、1台のエレベータ制御装置1が複数台のエレベータ30を制御する構成であってもよい。
【0027】
(エレベータ)
図1に示すように、エレベータ30は、乗りかご31、かご扉32、カメラ33、報知部34、およびファン35を備えている。乗りかご31は、利用者を載せて昇降路を昇降するかごであり、各階の乗場に停まって、利用者を乗り降りさせる。
【0028】
かご扉32は、乗りかご31の扉であり、各階の乗場における乗りかご31の到着口に設置された乗場扉と一緒に開閉する。以下の説明においては、かご扉32が戸開している状態では乗場扉も戸開しており、かご扉32が戸閉している状態では乗場扉も戸閉しているものとする。そして、かご扉32が戸開している状態を単に「戸開状態」と表現し、かご扉32が戸閉している状態を単に「戸閉状態」と表現する。
【0029】
カメラ33は、乗りかご31内の利用者を撮影する。カメラ33によって撮影された画像は、エレベータ制御装置1に送られる。報知部34は、乗りかご31内の利用者に文字や音声等で情報を報知するものである。報知部34は、具体的には、表示装置、スピーカ等である。
【0030】
ファン35は、換気装置であり、乗りかご31内の換気を行うものである。ファン35は、乗りかご31が昇降する昇降路から乗りかご31内に空気を引き込む吸気用ファンであってもよいし、戸開状態で、乗場から乗りかご31内に空気を引き込んで昇降路に排気する排気用ファンであってもよい。戸開状態で乗りかご31を換気する場合、換気効率を考慮すると、吸気用ファンよりも排気用ファンが好ましい。
【0031】
(エレベータ制御装置)
図1に示すように、エレベータ制御装置1は、エレベータ30全体の制御を行う。本実施形態において、エレベータ制御装置1は、制御部10と、記憶部20と、を備えている。制御部10は、記憶部20に記憶されたプログラムを、CPU(Central Processing Unit)が実行することで実現されてよい。制御部10は、解析部11、情報取得部12、乗車制限部13、戸開閉制御部14、運転制御部15、換気履歴制御部16、および報知制御部17を備えている。
【0032】
解析部11は、エレベータ30を利用する利用者を撮影した画像を解析して、利用者のウィルスに感染している可能性を示す感染可能性情報を抽出する。解析部11は、画像処理技術を用いて画像より利用者の状態を解析し、解析した結果を基に感染可能性情報を抽出する。エレベータの利用者は、乗りかごに乗車する予定の利用者であっても、乗りかごに乗車中の利用者であってもよい。
【0033】
本実施形態では、解析部11は、乗りかご31に搭載されたカメラ33にて撮影された画像を用い、乗りかご31に乗車している利用者を対象として感染可能性情報を抽出する。感染可能性情報は、例えば、マスクの装着状態と症状とを組み合わせた以下の4パターンが考えられる。症状は、咳、くしゃみ、発熱の何れか1つを指し、咳、くしゃみ、発熱の何れか1つでも認められる場合は症状有りとなる。
パターン1:マスク未装着で、咳、くしゃみ、あるいは発熱の何れか1つでも認められる利用者が含まれている(マスク未装着で症状の有る利用者が含まれている)。
パターン2:マスクは装着しているが、咳、くしゃみ、あるいは発熱の何れか1つでも認められる利用者が含まれている(マスクは装着しているが症状の有る利用者が含まれている)。
パターン3:咳、くしゃみ、あるいは発熱の何れも認められないが、マスク未着装である利用者が含まれている(症状は無いがマスク未装着の利用者が含まれている)。
パターン4:マスク未装着の利用者、および、咳、くしゃみ、あるいは発熱の何れか1つでも認められる利用者は、含まれていない(利用者全てがマスクを装着し、かつ症状も無い)。
【0034】
なお、画像より発熱している利用者を特定するには、カメラ33に遠赤外線を検出するサーマルカメラ機能が必要である。解析部11は、抽出した感染可能性情報を情報取得部12に送る。
【0035】
なお、本実施形態では、エレベータ制御装置1が解析部11を備える構成を例示しているが、解析部11は外部サーバ等、エレベータ制御装置1の外部に備えられていてもよい。
【0036】
情報取得部12は、種々の情報を取得する機能部である。情報取得部12は、エレベータの乗りかごに乗車する予定の利用者、および、前記乗りかごに乗車中の利用者の少なくともいずれか一方の感染可能性情報を取得する。情報取得部12は、取得した感染可能性情報を乗車制限部13に送る。本実施形態では、情報取得部12は、解析部11より感染可能性情報を取得するが、外部サーバ等より感染可能性情報を取得してもよい。
【0037】
乗車制限部13は、情報取得部12にて取得された感染可能性情報と、乗りかご31の換気状態の履歴とに基づいて乗車可能人数を制御する。
【0038】
本実施形態では、乗車制限部13は、感染可能性情報が、乗りかご31に乗車中の利用者のウィルス感染の可能性を示すウィルス感染可能性が所定値よりも低いと示している状態、あるいは乗りかご31が空の状態において、戸開時間の累積時間が制限運転閾値よりも小さい期間で乗りかごの乗車可能人数を通常よりも少なくする制御を行う。
【0039】
また、本実施形態において、上記戸開時間の累積時間は、ウィルス感染可能性が所定値を超えている利用者が乗りかご31を降車した時点からの累積時間である。なお、乗車制限部13について情報取得部12は、取得した感染可能性情報を乗車制限部13に送る。
【0040】
戸開閉制御部14は、乗りかご31の戸開閉を制御する。戸開閉制御部14は、乗車制限部13が、乗車可能人数を通常よりも少なくする制御を行っている期間に、乗りかご31が所定の階において停車しており、かつ、運行待機中である場合に、所定の期間で戸開状態とする制御を行う。
【0041】
運転制御部15は、乗りかご31の運転を制御する。運転制御部15は、乗りかご31の運行情報を取得する。乗りかご31の運行情報は、乗りかご31の現在位置階情報、現在運転方向情報、呼び登録情報および乗りかご31の乗車状況情報等を含む。
【0042】
運転制御部15は、例えば、エレベータ30の呼び登録等に基づき、乗りかご31を利用者の乗車階から降車階まで運行させる。呼び登録情報には、乗りかご31内より利用者が停止階を指定する「かご呼び」と、乗場に居る利用者が乗場のボタンより乗りかご31を呼び寄せる「乗場呼び」とがある。
【0043】
また、本実施形態では、運転制御部15は、「制限運転部」、「乗場呼び制限部」、「戸開換気運転部」と、を備える。なお、これらの詳細については図3を用いて後述する。
【0044】
換気履歴制御部16は、乗りかごの換気状態の履歴を記憶部20に記録する制御を行う。本実施形態では、換気履歴制御部16は、乗りかごの換気状態の履歴として、乗りかご31の戸開時間を記録する。
【0045】
報知制御部17は、乗りかご31に設置された報知部34を制御して、乗車制限運転を実施中である等の各種の情報を利用者に報知するものある。記憶部20には、制御部10が用いる各種の情報が記憶されている。記憶部20には、後述する制限運転閾値情報21、制限人数情報22、換気履歴制御部16により記録された換気状態履歴データ23等、も記憶されている。
【0046】
<乗車制限部>
図2は、エレベータ制御装置1における乗車制限部13の構成を示す図である。図2に示すように、乗車制限部13は、リスクレベル判定部131と、パラメータ設定部132と、を備えている。
【0047】
(リスクレベル判定部)
リスクレベル判定部131は、情報取得部12にて取得された感染可能性情報に基づいてリスクレベルを判定する。リスクレベルとは、乗りかご31に乗車した利用者が乗りかご31内でウィルス感染する可能性、つまり、乗りかご31内での感染し易さをレベル分けして示す情報である。リスクレベルは、高い程、ウィルス感染しやすいことを示す。
【0048】
本実施形態では、一例として、感染リスクが有る場合に、感染リスクの高さに基づいて、リスクレベル「高」あるいはリスクレベル「中」とする。リスクレベル「高」は、リスクレベル「中」よりもウィルスに感染する感染リスクが高い。感染リスクが無い場合は、リスクレベル「低」とする。
【0049】
具体的には、感染可能性情報が、前述したパターン1「マスク未装着で、咳、くしゃみ、あるいは発熱の何れか1つでも認められる利用者が含まれている」の場合、リスクレベル判定部131は、「感染リスク有り」、リスクレベル「高」と判定する。
【0050】
感染可能性情報が、前述したパターン2「マスクは装着しているが、咳、くしゃみ、あるいは発熱の何れか1つでも認められる利用者が含まれている」の場合、リスクレベル判定部131は、「感染リスク有り」、リスクレベル「中」と判定する。
【0051】
つまり、マスク未装着で、咳、くしゃみ、あるいは発熱の何れか1つでも認められる利用者、および、マスクは装着しているが、咳、くしゃみ、あるいは発熱の何れか1つでも認められる利用者が、ウィルス感染可能性が所定値を超えている利用者である。以下、このような利用者を、「感染リスク者」とも表現する。
【0052】
感染可能性情報が、前述したパターン3「咳、くしゃみ、あるいは発熱の何れも認められないが、マスク未着装である利用者が含まれている」の場合、リスクレベル判定部131は、「感染リスク無し」、リスクレベル「低」と判定する。感染可能性情報が、前述したパターン4「マスク未装着の利用者、および、咳、くしゃみ、あるいは発熱の何れか1つでも認められる利用者が、含まれていない」の場合についても、リスクレベル判定部131は、「感染リスク無し」、リスクレベル「低」と判定する。また、後述する制限運転閾値を超える時間の換気が行われた場合も、リスクレベル判定部131は、「感染リスク無し」、リスクレベル「低」と判定する。
【0053】
(パラメータ設定部)
パラメータ設定部132は、リスクレベル判定部131にて「感染リスク有り」と判定された場合に、「制限人数」および「制限運転閾値」を設定する。
【0054】
制限人数は、乗車制限運転において乗りかご31へ乗車させる最大人数(乗車可能人数)である。パラメータ設定部132は、少なくとも、乗りかご31のサイズに基づいて制限人数を設定する。例えば、乗りかご31内において、利用者同士の距離(中心間距離)が1m以上確保できるような人数に設定することが考えられる。乗りかご31のサイズ以外の別の条件を含めて制限人数を設定してもよい。制限人数を設定するために必要な制限人数情報22は、記憶部20に記憶されている。
【0055】
制限運転閾値は、乗りかご31内の空気を入れ替えて、リスクレベルが「低」と同等と推定し得る程度にまで、乗りかご31内の空気を清浄化するのに必要な換気時間である。そのため、制限運転閾値は、乗りかご31のサイズが大きい場合、サイズが小さい場合よりも高く(長く)なる。制限運転閾値は、乗りかご31の容積[m]を、ファン35の能力[m/単位時間]で割ることで求められるものとする。
【0056】
また、換気を行う前の乗りかご31内の空気のリスクレベルによっても変えてもよい。本実施形態では、例えば、乗りかご31のサイズが同じであっても、リスクレベルが「高」の場合は、乗りかご31の容積分の全ての空気が入れ替わる時間とし、リスクレベルが「中」の場合は、乗りかご31の容積の半分の空気が入れ替わる時間としている。
【0057】
本実施形態では、パラメータ設定部132は、少なくとも、乗りかご31のリスクレベルと、乗りかご31のサイズとに基づいて制限運転閾値を設定する。制限運転閾値を設定するために必要な制限運転閾値情報21は、記憶部20に記憶されている。
【0058】
また、乗車制限部13は、リスクレベル判定部131にて「感染リスク有り」と判定された場合、ファン35が稼働しているかを判断し、停止している場合はファン35の運転を開始させる。
【0059】
<運転制御部>
図3は、エレベータ制御装置1における運転制御部15の要部の構成を示す図である。図3に示すように、運転制御部15は、制限運転部151、乗場呼び制限部152と、戸開換気運転部153と、を備えている。
【0060】
(制限運転部)
制限運転部151は、パラメータ設定部132に設定された制限人数および制限運転閾値を用いて、乗りかご31の乗車可能人数を通常よりも少なくしてエレベータ30を運行する乗車制限運転を実行する。
【0061】
(乗場呼び制限部)
乗場呼び制限部152は、感染可能性情報より、乗りかご31に乗車中の利用者のウィルス感染可能性が所定値を超えていると検知した場合に、検知した時点で、乗りかご31の乗車している人数が通常の乗車可能人数よりも少ない所定人数となるまで、前記乗りかごに対する乗場呼びに応答しない乗場呼び制限制御を行う。
【0062】
本実施形態では、乗場呼び制限部152は、乗りかご31の乗車している利用者の人数が、パラメータ設定部132にて設定された制限人数となるまで乗場呼び制限制御を行う。なお、乗りかご31の乗車している全ての利用者が降車するまで、乗場呼び制限制御を行うようにしてもよい。
【0063】
(戸開換気運転部)
戸開換気運転部153は、1台のエレベータ制御装置1が複数台の乗りかご31を制御する、いわゆる群管理において有効になる機能である。戸開換気運転部153は、乗車制限部13が、乗車可能人数を通常よりも少なくする制御を行っている期間に乗りかご31が運転待機になると、乗りかご31を最寄りの階あるいは所定の階に停車させて戸開状態とする制御を行う。
【0064】
(エレベータ制御装置の動作)
図4図6に基づき、エレベータ制御装置1にて実行される処理の一例を説明する。図4は、エレベータ制御装置1にて実行される処理のフローチャートである。図4は、エレベータ制御方法を示すフローチャートでもある。図5は、図4における換気パラメータ設定処理を示すフローチャートである。図6は、図4における乗車制限運転処理を示すフローチャートである。
【0065】
図4に示すように、運転制御部15が通常運転を行なっている(S1)間、乗車制限部13は、情報取得部12にて感染可能性情報を取得し(取得ステップ)、取得した感染可能性情報に基づいて、感染リスク有りか?を繰り返し判断している(S2)。乗車制限部13は、感染リスク有りと判断すると(ステップS2でYES)、換気パラメータを設定する(S3)。
【0066】
図5に示すように、乗車制限部13は、感染可能性情報に基づいて、感染リスクが高いか?を判断する(S11)。乗車制限部13は、感染リスクが高いと判断すると(ステップS11でYES)、リスクレベル「高」を設定する(S12)。一方、乗車制限部13は、感染リスクが高くないと判断すると(ステップS11でNO)、リスクレベル「中」を設定する(S13)。
【0067】
乗車制限部13は、設定したリスクレベルに応じた制限運転閾値を設定し(S14)、次いで、制限人数を設定する(S15)。前述したように、制限運転閾値は、乗りかご31内の空気を入れ替えて、リスクレベルが「低」と同等と推定し得る程度にまで、乗りかご31内の空気を清浄化するのに必要な換気時間である。したがって、S14で設定される制限運転閾値は、リスクレベルが「高」の場合、リスクレベルが「中」の場合よりも高くなる。また、乗車制限部13は、通常運転時のファン35の設定を確認し、通常運転時にファン35を停止する設定の場合は、ファン35を稼働させる。なお、停止しているファン35を稼働させるにあたり、報知制御部17が、報知部34を介して、「換気のためにファンを運転します。」等のアナウンスを行ってもよい。
【0068】
図4に戻り、乗車制限部13にて換気パラメータが設定されると、運転制御部15は、乗場呼び制限制御を開始する(S4)。これにより、乗場呼びには応答せず、かご呼びにのみ応答し、目的階で乗客を順次降ろす。なお、たまたま乗場に新たな利用者がいた場合は、乗りかご13に乗車させてもよいし、報知部34より、「換気運転中のため、ご乗車にならないでください。」等のアナウンスを行ってもよい。
【0069】
次に、乗車制限部13は、感染リスク者が降車したか?を判断する(S5)。なお、感染リスク者が降車したか?の判断は、いかなる手法でもよい。例えば、カメラ33にて撮影された乗りかご31内の利用者の画像等から判断することができる。
【0070】
乗車制限部13は、感染リスク者が降車したと判断すると(ステップS5でYES)、累計戸開時間の計測を開始する(S6:換気履歴制御ステップ)。累計戸開時間の計測が開始されると、運転制御部15は、乗りかご31内の乗客が、S3で設定された制限人数以上であるか?を判断する(S7)。なお、乗りかご31の乗車人数の検知方法もいかなる手法でもよい。これについても、例えば、カメラ33にて撮影された乗りかご31内の利用者の画像等から検知できる。
【0071】
運転制御部15は、乗りかご31の乗車人数が制限人数を下回ったと判断すると(ステップS7でNO)、乗場呼び制限制御を解除する(S8)。これにより、乗場呼びには応答して、新しい利用者の乗車が可能となる。
【0072】
その後、運転制御部15は、S3で設定された、制限運転閾値および制限人数にて、乗車制限運転を実行する(S9:乗車制限ステップ)。そして、戸開時間の累積時間が制限運転閾値以上となり、乗りかご31内が十分に換気された場合に、処理をS1に戻し、通常運転に戻る。通常運転に戻す際、乗車制限部13は、通常運転時のファン35の設定を確認し、通常運転時にファン35を停止する設定の場合は、ファン35を停止させる。
【0073】
図6示すように、乗車制限運転において運転制御部15は、まず、複数の乗りかご31を群管理しているか?を判断する(S21)。群管理ではないと判断すると(ステップS21でNO)、S22に進んで、かご呼びまたは乗場呼び発生したか?を判断する。かご呼びまたは乗場呼び発生したと判断すると(ステップS22でYES)、乗車人数をS3で設定された制限人数に制限しながら、エレベータ30を運行する(S23)。
【0074】
一方、S22にて、かご呼びまたは乗場呼び発生していないと判断すると(ステップS22でNO)、戸開閉制御部14は、かご扉32を戸開状態として、所定の期間、待機させる(S24)。かご呼びまたは乗場呼び発生していない状態は、運行待機中である。戸開閉制御部14は、運行待機中で、かつ、乗りかご31が所定の階に停車している場合に、戸開状態として待機する。所定の階は、乗りかご31の乗車していた最後の乗客が降車した階(最寄りの階)であってもよいし、最も多くの人が乗車する特定の階などであってもよい。
【0075】
一方、運転制御部15は、S21において群管理していると判断すると(ステップS21でYES)、S26に進んで、当該乗りかご31は停止可能か?を判断する(S26)。群管理している他の乗りかご31で、利用者の輸送サービスが不可能な場合は、当該乗りかご31は停止可能ではないと判断し(ステップS26でNO)、前述したS27に進み、群管理でない場合と同じ処理に進む。
【0076】
一方、群管理している他の乗りかご31で、利用者の輸送サービスが可能な場合は、当該乗りかご31は停止可能と判断し(ステップS26でYES)、S27に進んで、所定の階でかご扉32を開いた状態で、当該乗りかご31の運行を停止する。ここでの所定の階は、乗りかご31の乗車していた最後の乗客が降車した階(最寄りの階)であってもよいが、屋上や使用されていない階など、乗場に存在する人が少ない階が好ましい。S27においては、報知部34より、「換気運転中のため、ご乗車にならないでください。」等のアナウンスを行ってもよい。
【0077】
運転制御部15は、S23の乗車人数を制限しながらのエレベータ30の運行、S24の運行待機中の戸開き待機、S27の運行停止を伴う戸開き待機、のいずれを実行した場合も、S25に進む。S25では、乗車制限部13が、図4のS6で開始した累積戸開時間の計測値が、S3で設定された制限運転閾値以上になったか?を判断する。累積戸開時間は戸開時間の累積時間であり、乗車制限部13が、記憶部20における換気状態履歴データ23に基づいて判断する。ここで、制限運転閾値以上になったと判断されると(ステップS25でYES)、運転制御部15は、乗車制限運転を終了し、前述したように、図4のS1に処理を戻す。一方、制限運転閾値以上になっていないと判断された場合は(ステップS25でNO)、運転制御部15は、S21に処理を戻し、乗車制限運転を継続する。
【0078】
図4のS5にて、感染リスク者の降車を確認してから、図6のS25にて制限運転閾値以上であると判断されるまでの期間が、「感染可能性情報が乗りかごに乗車中の利用者のウィルス感染可能性が所定値よりも低いと示している状態、あるいは乗りかごが空の状態において、戸開時間の累積時間が制限運転閾値よりも小さい期間で、乗りかごの乗車可能人数を通常よりも少なくする制御」が行われている期間に相当する。
【0079】
(効果の記載)
上記構成では、乗りかご31の換気状態の履歴を記録する制御を行う換気履歴制御部16を備えており、乗車制限部13は、エレベータ30の利用者の感染可能性情報および換気状態の履歴に基づいて、乗りかご31の乗車可能人数を制御する。
【0080】
したがって、ウィルス感染している可能性の高い感染リスク者が乗りかご13に乗車し、その後、降車した場合であっても、換気状態が改善されるまで乗車可能人数の制限を継続する、などの制御が可能となる。また、換気を行うためにエレベータ30を一時的に使用できなくすることもないので、エレベータ30の輸送効率の低下を抑制することができる。これにより、利用者の輸送効率の低下を抑制しつつ、ウィルス感染リスクを低減するための乗車制限を効果的に行うことができる。
【0081】
また、上記構成では、乗車制限部13は、感染可能性情報が、乗りかご31に乗車中の利用者のウィルス感染可能性が所定値よりも低いと示している状態、あるいは乗りかご31が空の状態において、戸開時間の累積時間が制限運転閾値よりも小さい期間で乗りかごの乗車可能人数を通常よりも少なくする制御を行う。
【0082】
したがって、感染リスク者が降車しても、戸開時間の累積時間が制限運転閾値よりも小さい期間では、乗車可能人数を通常よりも少なくする乗車の制限が継続され、戸開による乗りかご内の換気が十分に行われてから乗車の制限が解除されることになる。よって、ウィルス感染リスクをより的確に低減することができる。
【0083】
また、本実施形態では、戸開時間の累積時間は、感染リスク者が乗りかご31を降車した時点からの累積時間としているので、乗車の制限を終了するタイミングがより適切にすることができる。
【0084】
また、上記構成では、戸開閉制御部14が、乗車可能人数を通常よりも少なくする制御を行っている期間に、乗りかご31が所定の階において停車しており、かつ、運行待機中である場合に、所定の期間で戸開状態とする制御を行う。
【0085】
したがって、運行待機中においては、乗りかご31の戸開が行われることになる。よって、戸開時間を増大させることができるので、乗りかご31の換気をより早く行うことができる。ひいては、乗車制限が行われる期間を短くすることができるので、利用者の輸送効率を向上させることができる。
【0086】
また、上記構成では、乗場呼び制限部152は、乗りかご31に乗車中の感染リスク者の存在を検知した場合に、検知した時点で、乗りかご31に乗車している全ての利用者が降車する、あるいは通常の乗車可能人数よりも少ない所定人数となるまで、乗りかご31に対する乗場呼びに応答しない乗場呼び制限を行う。
【0087】
したがって、乗りかご31内における感染リスク者の存在を検知した時点で、いち早く、乗りかご31内の乗車人数をこれ以上増やさない対応をとることができる。これにより、リスクレベルが高くなった乗りかご31に、新たな利用者が乗車して感染が広がるといった事態を回避することができる。
【0088】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0089】
図7は、本発明のその他の実施形態に係るエレベータ制御装置1Aを含むエレベータシステム100Aの構成を示す図である。図7に示すように、エレベータシステム100Aは、エレベータ30に代えてエレベータ30Aを備え、エレベータ制御装置1に代えてエレベータ制御装置1Aを備えている。エレベータ30Aは、乗りかご31内の二酸化炭素濃度を測定するCOセンサ36を備えている。この点がエレベータ30と異なる。
【0090】
エレベータ制御装置1Aは、乗車制限部13に代えて乗車制限部13Aを備える。また、情報取得部12は、乗りかご31内の二酸化炭素濃度に関する情報をさらに取得する。本実施形態では、乗りかご31に設置されたCOセンサ36より、二酸化炭素濃度に関する情報を取得する。
【0091】
図8は、乗車制限部13Aの構成を示す図である。図8に示すように、乗車制限部13Aは、リスクレベル判定部131、およびパラメータ設定部132に加えて、さらに、制限運転閾値変更部133を備えている。制限運転閾値変更部133をさらに備える点が乗車制限部13と異なる。
【0092】
制限運転閾値変更部133は、ウィルス感染可能性が所定値を超えている利用者が乗りかごを降車した時点の二酸化炭素濃度が第1所定濃度以上である場合に、乗車可能人数を通常よりも少なくする制御を行っている期間において二酸化炭素濃度が第2所定濃度以下となった場合に、制限運転閾値を低くする制御を行う。
【0093】
第1所定濃度と第2所定濃度は同じであっても、違っていてもよい。本実施形態では、第1所定濃度と第2所定濃度は同じとし、「所定濃度」と称する。第1所定濃度、第2所定濃度は、二酸化炭素濃度の低下によって、乗りかご31の換気が進んだと推定することができる二酸化炭素濃度がある程度高い値である。
【0094】
図9図10に基づき、エレベータ制御装置1Aにて実行される処理の一例を説明する。図9は、エレベータ制御装置1Aにて実行される処理のフローチャートである。図10は、図9における乗車制限運転処理を示すフローチャートである。
【0095】
図9は、図4におけるS5とS6の間に、S31~S33のステップが追加されている点が、図4と異なる。同様に、図10は、図6におけるS23、S24、あるいはS27と、S25との間に、S41~S44のステップが追加されている点が図6と異なる。したがって、ここでは、異なる点についてのみ説明する。
【0096】
図9に示すように、乗車制限部13Aは、感染リスク者が降車したと判断すると(ステップS5でYES)、累計戸開時間の計測を開始する(S6)前に、情報取得部12が取得した乗りかご31内の二酸化炭素濃度に関する情報に基づいて、二酸化炭素濃度が所定濃度以上か?を判断する(S31)。
【0097】
ここで、二酸化炭素濃度が所定濃度以上であると判断すると(ステップS31でYES)、乗車制限部13Aは、乗車制限運転中の制限運転閾値の変更を有効とする(S32)。一方、二酸化炭素濃度が所定濃度以上ではないと判断すると(ステップS31でNO)、乗車制限部13Aは、乗車制限運転中の制限運転閾値の変更を無効とする(S33)。その後、S6に進み、乗車制限部13Aは、累計戸開時間の計測を開始する。
【0098】
乗車制限運転においては、図10に示すように、運転制御部15にて、S23、S24、およびS27の何れが実行されると、乗車制限部13Aは、乗車制限閾値の変更が有効か?を判断する(S41)。乗車制限部13Aは、車制限閾値の変更が有効ではないと判断すると(ステップS41でNO)、処理をS25に進める。
【0099】
一方、乗車制限部13Aは、S41にて、乗車制限閾値の変更が有効であると判断すると(ステップS41でYES)、その時点で情報取得部12にて取得された二酸化炭素濃度に関す情報に基づいて、二酸化炭素濃度が所定濃度以下か?を判断する(S42)。乗車制限部13Aは、二酸化炭素濃度が所定濃度以下ではないと判断すると(ステップS42でNO)、処理をS25に進める。
【0100】
乗車制限部13Aは、S42にて、二酸化炭素濃度が所定濃度以下であると判断すると(ステップS42でYES)、乗りかご31内の空気の入れ替えに必要な残りの戸開時間が所定値A以上であるか?を判断する(S43)。ここで、乗車制限部13Aは、残りの戸開時間が所定値A以上ではないと判断すると(ステップS43でNO)、処理をS25に進める。
【0101】
一方、乗車制限部13Aは、S43で、残りの戸開時間が所定値A以上であると判断すると(ステップS43でYES)、S44に進み、制限運転閾値を所定値Aに変更する。残りの戸開時間とは、制限運転閾値と累計戸開時間の差である。
【0102】
また、所定値Aは、例えば、S3にて設定された制限運転閾値の半分、つまり、もともと必要と設定された戸開時間の半分とすることができる。また、リスクレベル「高」と設定され、S3でリスクレベル「高」の制限運転閾値が設定されている場合は、所定値Aを、リスクレベル「中」の制限運転閾値としてもよい。乗車制限部13Aは、S43にて、制限運転閾値を変更した後、処理をS25に進める。
【0103】
換気前の二酸化炭素濃度がある程度高い状態では、乗りかご31内の二酸化炭素濃度の低下が検出された場合に、換気が進んだと推定することができる。上記構成では、このような場合に、戸開時間の累積時間に対する制限運転閾値が下げられるので、乗車制限運転の解除までに必要な戸開時間の累積時間を短くすることができる。よって、必要な換気を確保しつつ、利用者の輸送効率をさらに向上させることができる。
【0104】
〔変形例〕
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。例えば、以下のような変更が可能である。
【0105】
1)前述したエレベータ制御装置1、1Aは、さらに、情報取得部12が、乗りかご31に設けられている換気装置であるファン35の稼働状態に関する換気装置稼働情報を取得し、乗車制限部13,13Aが、さらに換気装置稼働情報に基づいて、乗りかご31の乗車可能人数を制御するようにしてもよい。
【0106】
上記の構成によれば、乗りかご31に設けられているファン35の稼働状態に応じて、乗車制限期間を変更することができる。よって、例えばファン35が強く稼働している場合には、乗りかご13のリスクレベルと乗りかご31のサイズにて決まる乗車制限閾値をさらに低くして、乗車制限期間を短くするなどの制御が可能となる。これにより、利用者の輸送効率をさらに向上させることができる。
【0107】
2)また、エレベータ制御装置1、1Aは、乗りかご31に乗車している利用者を対象として感染可能性情報を抽出していたが、乗りかご31に乗車する予定の利用者を対象として感染可能性情報を抽出してもよい。その場合、各階の乗場を撮影するカメラの画像や、乗りかご31に設置されたカメラ33にて乗場で乗車待ちしている利用者を撮影した画像等を用いればよい。
【0108】
乗りかご31に乗車する予定の利用者を対象として感染リスク者を検出する場合、感染リスク者が乗りかご31に乗車した階からの出発以降において、図4図9にて示した制御を実行すればよい。
【0109】
3)また、乗りかご31のリスクレベルを下げるための運転中は、換気に必要な残りの戸開時間(つまり、制限運転閾値と累計戸開き時間との差)に応じて、戸開毎の戸開時間を調整するようにしてもよい。例えば、乗車制限運転中の乗降時は、最初の乗降時(最初の戸開)は通常より長い戸開時間とし、2回目以降の戸開においては、運転を重ねる毎に徐々に戸開時間が通常の時間に近づくようにする。
【0110】
これにより、乗車人数を制限して運転するトータルの運転時間の短縮化を図り得る可能性がある。なお、このような制御を実行した場合、最後の乗客が乗車した以降も、戸閉状態にならないことに対して利用者が不信感を持つことも想定される。したがって、報知制御部17が、例えば、「換気を行なっています。しばらくお持ちください」等のアナウンスを、報知部34を介して報知するようにしてもよい。
【0111】
4)また、エレベータ制御装置1、1Aでは、制限人数および制限運転閾値を設定して、乗車制限運転を行う構成を説明したが、制限を行う場合に、その旨をアナウンスしてもよい。また、乗りかご31のリスクレベルに応じて必要とされる換気時間、つまり制限運転閾値を、報知制御部17が、報知部34を介してアナウンスするような構成であってもよい。
【0112】
〔ソフトウェアによる実現例〕
エレベータ制御装置1(1A)(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部10に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0113】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0114】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0115】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0116】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0117】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0118】
1、1A エレベータ制御装置
12 情報取得部
13、13A 乗車制限部
14 戸開閉制御部
15 運転制御部
16 換気履歴制御部
21 制限運転閾値情報
22 制限人数情報
23 換気状態履歴データ
30、30A エレベータ
35 ファン(換気装置)
152 乗場呼び制限部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10