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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131817
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】警報器及び発報方法
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20240920BHJP
   G08B 21/00 20060101ALI20240920BHJP
   G08B 23/00 20060101ALI20240920BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G08B17/00 C
G08B21/00 A
G08B23/00 520B
G08B25/00 510B
G08B25/00 510H
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042290
(22)【出願日】2023-03-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 豊
(72)【発明者】
【氏名】石野 智敬
(72)【発明者】
【氏名】柏谷 康介
(72)【発明者】
【氏名】上野 泰正
【テーマコード(参考)】
5C086
5C087
5G405
【Fターム(参考)】
5C086AA01
5C086AA02
5C086AA06
5C086AA09
5C086CB01
5C086CB07
5C086CB11
5C086DA40
5C086FA06
5C087AA02
5C087AA03
5C087AA32
5C087AA37
5C087DD04
5C087DD07
5C087EE05
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087GG07
5C087GG54
5C087GG66
5C087GG84
5G405AB02
5G405AB03
5G405AB05
5G405AB08
5G405AC07
5G405AD06
5G405CA05
5G405CA23
5G405CA25
5G405CA60
(57)【要約】
【課題】通信で得られる情報に基づく発声に阻害されずに音声による警報機能を発揮し得る警報器、及びそのような警報器での発報方法を提供する。
【解決手段】実施形態の警報器100は、少なくとも火災又はガスを検知可能である検知手段50と、検知手段50による検知情報に基づいて発報する報知機能を制御する第1処理装置10と、通信を制御する、第1処理装置10と別個の第2処理装置20と、第1処理装置10の制御により検知情報に基づく音声を発する出力装置40と、を備えている。第2処理装置20は第1処理装置10による制御を受ける。第2処理装置20は受信情報に基づく音声の発声指示I2を出力装置40に送るように構成される。第1処理装置10は、検知情報に基づく発報を行うときに、発声指示I2の禁止指示I3を第2処理装置20に送ると共に、出力装置40への発声指示I2の到達を防ぐように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも火災若しくはガスのいずれか一方を検知可能である検知手段と、
前記検知手段で取得される検知情報に基づいて発報する報知機能を制御する第1処理装置と、
前記第1処理装置と別個に設けられていて外部機器との通信を制御する第2処理装置と、
前記第1処理装置の制御により前記検知情報に基づく音声を発する出力装置と、
を備えている、通信機能を有する警報器であって、
前記第2処理装置は、前記第1処理装置による制御を受けるように構成されると共に、前記通信による受信情報に基づく音声の発声指示を前記出力装置に送るように構成されており、
前記第1処理装置は、前記検知情報に基づく発報を行うときに、前記発声指示の禁止指示を前記第2処理装置に送ると共に、前記出力装置への前記発声指示の到達を防ぐように構成されている、警報器。
【請求項2】
前記第2処理装置と前記出力装置との間の前記発声指示の伝達経路に配置される絶縁手段をさらに備える、請求項1記載の警報器。
【請求項3】
前記第2処理装置は、前記受信情報に基づく音声の発声中に前記禁止指示を受けたときには、検知情報に基づく発報の終了後に、前記禁止指示によって停止した発声指示を再開するように構成されている、請求項1又は2記載の警報器。
【請求項4】
前記第1処理装置は、前記検知情報に基づく発報を行うときに、ガス又は火災を少なくとも含む前記検知手段の検知対象ごとに予め定められた優先順位に応じて、前記禁止指示を送ると共に前記発声指示の到達を防ぐように構成されている、請求項1又は2記載の警報器。
【請求項5】
少なくとも火災若しくはガスのいずれか一方を検知可能である検知手段と、前記検知手段で取得される検知情報に基づいて発報する報知機能を制御する第1処理装置と、前記検知情報に基づく音声を発する出力装置と、外部機器との通信を制御すると共に前記通信に基づいて音声の発声指示を前記出力装置に送る第2処理装置と、を備える警報器において前記検知情報に基づく発報を行う発報方法であって、
前記発声指示の禁止指示を前記第1処理装置から前記第2処理装置に送ることと、
前記出力装置への前記発声指示の到達を防ぐ手段を講じることと、
を含んでいる、発報方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信機能を有する警報器、及び、警報器における発報方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、周囲環境を温度センサやガスセンサで監視して、異常な状態の検出に応じて警報を発してユーザーに危険を報せる警報器が、一般家庭や、商業施設、及び工場などで用いられている。このような警報器は、ユーザーの安全確保のために重要な役割を果たしている。近年、このような警報器では、単純なビープ音だけでなく、多様な情報を伝えるメッセージを発し得るように、音声信号の処理装置や、スピーカなどの発声手段が備えられている。
【0003】
さらに、得られた情報を警報器の周囲だけでなく遠方の関係者にも伝えられるように、通信機能を有する警報器が普及している。そして、そのような通信機能を有する警報器には、特定の通信先との交信だけではなく、広く情報を発信できるように、また、多くの情報を外部から入手して警報器の周囲のユーザーの便益を高められるように、インターネットのようなネットワーク回線に接続可能なものも存在する。例えば、特許文献1には、警報メッセージを発するスピーカ、及び、インターネットへの接続を可能にするLANポートを備える警報器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-326360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の警報器では、前述したスピーカやLANポート、さらに、周囲環境を監視して警報機能を担うCOセンサなどの各種センサが、一つの信号処理回路に接続されている。そして、この一つの信号処理回路によって、警報器の主機能である警報機能に加えて、通信機能も制御されている。しかしこのような構成の場合、一つの信号処理回路で警報機能も通信機能も制御しているが故に、主機能である警報機能に支障を来たすことがある。例えば、新たな制御方式の取り込みやセキュリティレベルの向上のために繰り返される通信プロトコルのバージョンアップによって警報機能が影響を受けることがある。すなわち、このようなバージョンアップに伴って必要となる通信機能に関するソフトウェアのアップデート中に警報機能が機能停止に陥ったり、そのアップデートの不具合によって信号処理回路全体が動作不能に陥ったりすることが考えられる。このような警報機能の不具合は、ユーザーなどの安全確保という役割を担う警報器にとって、至って好ましくない。
【0006】
このようなリスクを軽減する手段として、警報機能を制御する警報用信号処理装置と、通信機能を制御する通信用信号処理装置とを、互いに独立して個別に設けることが考えられる。しかしこのように信号処理装置を機能ごとに単に個別に設けて動作させると、インターネットなどを通じた外部機器との通信が、その内容次第で、主機能たる警報機能に影響を及ぼすことがある。例えば、音声情報が外部機器から送られてその情報が警報機能と共用のスピーカによって発せられる場合には、音声による警報が、通信により得られた情報を発する音声で阻害されることもある。
【0007】
このような警報の阻害が生じないように、通信用信号処理装置とスピーカとの間を、通信用信号処理装置から独立した制御によって遮断可能にすることも考えられる。しかし、通信用信号処理装置から独立した制御、例えば警報用信号処理装置による制御が、必要とされるときに常に作用し得るとは限らず、特定の条件の下で一時的にしか通信用信号処理装置とスピーカとの間を遮断し得ないこともある。例えば、個別に設けられたこれら信号処理装置が互いに独立して動作するように構成されていると、通信用信号処理装置は、何らかの切っ掛けで(例えば外部機器からの音声情報の受信の度に)、警報用信号処理装置の状態に依らずに随時スピーカに発声を行わせる。一方、警報用信号処理装置は、通信用信号処理装置による独立した制御の下で発せられている音声で警報が掻き消されていることに気づかず、発報中の警報がユーザーに届かない状態が継続されることも起こり得る。このような場合も、ユーザーなどの安全が脅かされることになり兼ねない。すなわち、例え通信用信号処理装置とスピーカとの間が遮断可能であったとしても、ユーザーの確実な安全確保の点で万全ではない。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、通信により得られる情報に基づく発声が可能でありながら、その発声に阻害されることなく音声による警報機能を適切に発揮し得る警報器、及び警報器における発報方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の警報器は、少なくとも火災若しくはガスのいずれか一方を検知可能である検知手段と、前記検知手段で取得される検知情報に基づいて発報する報知機能を制御する第1処理装置と、前記第1処理装置と別個に設けられていて外部機器との通信を制御する第2処理装置と、前記第1処理装置の制御により前記検知情報に基づく音声を発する出力装置と、を備えている、通信機能を有する警報器であって、前記第2処理装置は、前記第1処理装置による制御を受けるように構成されると共に、前記通信による受信情報に基づく音声の発声指示を前記出力装置に送るように構成されており、前記第1処理装置は、前記検知情報に基づく発報を行うときに、前記発声指示の禁止指示を前記第2処理装置に送ると共に、前記出力装置への前記発声指示の到達を防ぐように構成されている。
【0010】
前記警報器は、前記第2処理装置と前記出力装置との間の前記発声指示の伝達経路に配置される絶縁手段をさらに備えていてもよい。
【0011】
前記第2処理装置は、前記受信情報に基づく音声の発声中に前記禁止指示を受けたときには、検知情報に基づく発報の終了後に、前記禁止指示によって停止した発声指示を再開するように構成されていてもよい。
【0012】
前記第1処理装置は、前記検知情報に基づく発報を行うときに、ガス又は火災を少なくとも含む前記検知手段の検知対象ごとに予め定められた優先順位に応じて、前記禁止指示を送ると共に前記発声指示の到達を防ぐように構成されていてもよい。
【0013】
本発明の警報器における発報方法は、少なくとも火災若しくはガスのいずれか一方を検知可能である検知手段と、前記検知手段で取得される検知情報に基づいて発報する報知機能を制御する第1処理装置と、前記検知情報に基づく音声を発する出力装置と、外部機器との通信を制御すると共に前記通信に基づいて音声の発声指示を前記出力装置に送る第2処理装置と、を備える警報器において前記検知情報に基づく発報を行う発報方法であって、前記発声指示の禁止指示を前記第1処理装置から前記第2処理装置に送ることと、前記出力装置への前記発声指示の到達を防ぐ手段を講じることと、を含んでいる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、火災若しくはガスの少なくとも一方に関する警報を発する警報器において、通信により得られる情報に基づく発声が可能であり、しかも、その発声に阻害されることなく音声による警報機能を適切に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態の警報器の構成の概略を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態の警報器に用いられ得る、出力装置への発声指示の到達を防ぐ手段の一例を示す回路図である。
図3】本発明の一実施形態の警報器における検知情報に基づく発報時の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態の警報器における検知情報に基づく発報時の各指示や信号、及び出力装置の発声の推移の一例を示すタイミングチャートである。
図5】本発明の一実施形態の警報器における検知情報に基づく発報時の各指示や信号、及び出力装置の発声の推移の他の例を示すタイミングチャートである。
図6】本発明の一実施形態の警報器における検知情報に基づく発報時の処理手順の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る警報器及び警報器における発報方法を説明する。但し、以下に説明される実施形態及び添付の図面は、本発明に係る警報器又は警報器における発報方法の一例を示しているに過ぎない。本発明に係る警報器及び警報器における発報方法の構成及び作用は、以下に説明される実施形態及び添付の図面に例示される構成及び作用に限定されない。
【0017】
<一実施形態の警報器の構成及び作用>
図1には、本発明の一実施形態の警報器100の主要な構成要素がブロック図で示されている。一実施形態の警報器100は、例えば、住居や工場などに設置されたり、ユーザーに携帯されたりして、警報器100の周囲の環境を監視する。そして、警報器100は、周囲の環境が特定の状態にある場合にはそれを検知して、例えば、警報を発したり、信号を送ったりして、周囲環境が特定の状態、例えば人体や物的資産に危害が及び得る異常な状態にあることを周囲の人や所定の機器に報せる。警報器100は、特定の状態として、少なくとも火災の発生及びガス漏れのいずれか一方を検知する。警報器100が他に検知し得る特定の状態としては、一酸化炭素の濃度上昇、煙の充満、及び過剰な温湿度、などが例示されるが、警報器100が検知し得る特定の状態は、これらに限定されない。
【0018】
警報器100は、図1に示されるように、警報部1及び通信部2を備えている。警報部1は、周囲環境の監視から監視結果に基づく報知までの機能を含む報知機能を担っている。警報器100は通信機能を有しており、通信部2は警報器100の通信機能を担っている。通信部2は、少なくとも警報器100の外部からの信号を受信し、さらに、警報器100の外部へと信号を送信してもよい。図1の例において警報器100は、外部機器Eとの間で信号を送受する。
【0019】
警報器100は、さらに、出力装置40を備えている。出力装置40は、警報部1から送られる指示に従って音声を発する。出力装置40は、さらに、通信部2から送られる指示に従って音声を発する。本開示において「音声」は、人間が声として発する音や人間の声を模して人工的に生成された音だけでなく、楽曲の音、及び、雨風や波、又は人間以外の生物などによって自然界で生成される特段の意味を有さない音、並びに、それらの録音後の再生音、などのあらゆる音を含んでいる。
【0020】
図1の警報器100は、さらに、通信部2と出力装置40との間に配置されている絶縁手段30を備えている。絶縁手段30は、警報部1からの指示に従って、通信部2から出力装置40への音声の発声指示I2の伝達を妨げる。警報器100は、警報器100の構成部品を収容する筐体60を有しており、警報部1、通信部2、出力装置40、及び絶縁手段30は、筐体60の中に収められている。
【0021】
<警報部>
警報部1は、第1処理装置10及び検知手段50を含んでいる。警報部1は、主に第1処理装置10及び検知手段50で構成され、例えば第1処理装置10及び検知手段50と、それらの周辺部品(図示せず)とで構成される。第1処理装置10は、検知手段50で取得される検知情報に基づいて警報を発報する報知機能を制御する。第1処理装置10は、マイコンやASICなどの半導体装置からなり、内蔵されたプログラム、又は、警報部1が備える、第1処理装置10の外部のROMなどの記憶装置(図示せず)に格納されたプログラムに従って動作する。第1処理装置10は、好ましくは、演算機能、比較機能、記憶機能などを有しており、検知手段50の動作を含む警報部1の動作を全体的に制御すると共に、必要に応じて出力装置40に警報を発報させる。すなわち、第1処理装置10は、検知手段50によって得られる検知情報に基づく音声の発声指示I1を出力装置40に送るように構成されている。このように、第1処理装置10は、周囲環境を監視する警報器100の動作中に、検知手段50による周囲環境の監視から、例えば出力装置40による警報の発報のような異常の報知に至る動作を全体的に制御する。
【0022】
なお、本明細書において、第1処理装置10(又は、後述される第2処理装置20)が特定の動作又は処理を行うように(又は行わないように)「構成されている」は、各処理装置などにその特定の動作又は処理を行わせる(又は行わせない)命令が、各処理装置の動作や処理を記述するプログラムに含まれていることを含んでいる。
【0023】
検知手段50は、警報器100の周囲の監視対象領域の物理現象を監視して監視データを出力する1以上の各種のセンサであり得る。警報器100において検知手段50は、警報部1及び通信部2の構成要素並びに出力装置40と共に、筐体60内に設けられている。そのため、検知手段50は、警報器100の近傍の領域を監視することができる。検知手段50として機能する各種のセンサは、たとえば、一酸化炭素ガス(CO)、メタンガス(CH4)又はプロパンガス(C38)を検知する各種ガスセンサ、サーミスタなどからなる温度センサ、湿度センサ、煙センサ、臭気センサ、又は、部外者の立ち入りを検知する侵入センサなどであってよい。検知手段50は、これらセンサの1つ又は複数で構成され得る。警報器100において検知手段50は、少なくとも火災若しくはガスのいずれか一方を検知可能である。例えば、各種のガスセンサによって、警報器100の周囲の空間におけるガス漏れが検知される。また、温度センサ及び煙センサなどによって、警報器100の周囲での火災の発生が検知される。
【0024】
警報部1において第1処理装置10は、例えば、検知手段50による周囲環境の監視動作の開始や停止を制御する。また、第1処理装置10は、検知手段50から送られる検知情報が示す、一酸化炭素やガスの濃度、周囲の温度、及び、煙の濃度などが、所定の閾値を超えているか否かを判断する。そして、温度や濃度などが閾値を超えている場合には、例えばその超過の程度に応じて警報の態様(音声の鳴動の仕方や後述の発光ダイオード等の発光部における発光の仕方など)を決定し、決定した方法で、出力装置40に警報を発報させる。
【0025】
<通信部>
通信部2は、第2処理装置20及び通信装置21を含んでいる。通信部2は、主に第2処理装置20及び通信装置21で構成され、例えば第2処理装置20及び通信装置21と、それらの周辺部品(図示せず)とで構成される。第2処理装置20は、警報器100と外部機器Eとの通信を制御する。第2処理装置20は、マイコンやASICなどの半導体装置からなり、内蔵されたプログラム、又は、通信部2が備える、第2処理装置20の外部のROMなどの記憶装置(図示せず)に格納されたプログラムに従って動作する。第2処理装置20は、好ましくは、演算機能や記憶機能、及び比較機能などを有し、警報器100の動作中に通信装置21で行われる、警報器100と外部機器Eとの間での通信に必要な動作を全体的に制御する。
【0026】
さらに、第2処理装置20は、外部機器Eのような外部機器と警報器100との間の通信による受信情報に基づく音声の発声指示I2を出力装置40に送るように構成されている。音声を発しさせるべく第1処理装置10及び第2処理装置20それぞれから出力装置40に送られる発声指示I1、I2は、発せられる音の大きさ、長さ、音調、及び/又は音質などの情報を含む電気信号であり得る(以下では、このような電気信号を「音声信号」とも称する)。第1処理装置10及び第2処理装置20は、発しさせる音声に対応する適切な音声信号を、発声指示I1又は発声指示I2として出力装置40に送信してもよい。或いは、音声信号の送信に先行して、信号レベル、振幅、及び/又は、周波数などについて予め定められた特定の値や変化パターンを有する信号が、発声指示I1又は発声指示I2として出力装置40に送られてもよい。
【0027】
通信装置21は、無線通信又は有線通信によって外部機器Eとの間で信号を送受する。通信装置21は、外部機器Eと警報器100との間で電気信号を送受するように構成された、集積回路装置や個々の部品からなる電気回路などのハードウェアにより構成される。通信装置21は、外部機器Eとの通信に必要となる、信号の変換(アナログ/デジタル変換や信号のレベル変換など)、信号の増幅、信号の合成及び分解、信号の変調及び復調、外部機器Eとの間のリンクの設定、及び/又は誤り制御、などを行うように構成され得る。例えば、通信装置21は、外部機器Eとの通信に必要な信号処理を行うように設計されたASICなどからなる通信制御IC、又はモデムIC、及びその周辺回路で構成されていてもよい。通信装置21は、第2処理装置20と一体の集積回路装置として構成されていてもよい。
【0028】
警報器100において通信部2は、無線回線又は有線回線を介して外部機器Eとの間で直接送受信を行ってもよく、無線回線又は有線回線で接続された、例えばインターネットやローカルエリアネットワーク(LAN)などのネットワークNを介して外部機器Eとの間で信号の送受信を行ってもよい。外部機器Eとしては、警報器100以外の同種、又は検知対象の異なる警報器、並びに、警報器100の動作を監視若しくは制御する、及び/又は、警報器100での検知結果若しくは警報発報経過を収集して統計処理若しくは解析するサーバーのような情報処理装置が例示される。さらに、インターネットなどのネットワークNに繋がり得る警報器100にとって、外部機器Eは、各者各様の情報を提供する任意の個人又は機関がネットワークNに接続可能な態様で設置する、サーバー、データベース、及び/又は情報処理装置などであり得る。
【0029】
<出力装置>
出力装置40は、第1処理装置10の制御により、検知手段50で取得される検知情報に基づく音声を発する。出力装置40は、さらに、第2処理装置20の制御により、通信部2における通信による受信情報に基づく音声を発する。従って出力装置40は、少なくとも、例えば、スピーカ及び/又はブザーなどのような音声の発生装置41を含んでいる。出力装置40は、スピーカなどの音声発生装置41を1以上の任意の数で含み得る。図1の例の出力装置40は、さらに、出力装置40に第1処理装置10から入力される音声信号及び第2処理装置20から入力される音声信号を増幅する増幅回路42を含んでいる。増幅回路42は、例えば、集積化された演算増幅器や、その周囲に配置される、トランジスタなどの能動素子及び抵抗器やキャパシタのような受動素子によって構成される。
【0030】
出力装置40は、検知手段50で周囲環境の異常が検知されると、第1処理装置10の制御に従って、鳴動、及び/又は音響を発することにより警報を発する。また、出力装置40は、警報を発する以外にも、警報器100の状態や、警報を発するに至らない監視領域の環境に関する情報をユーザーなどに伝えるために動作してもよい。なお、警報器100は、図1に示される、音声を発する出力装置40以外にも、警報器100のユーザーの視覚を通じて検知情報を伝える、発光ダイオードやディスプレイなどの報知手段(図示せず)を含んでいてもよい。また、図1に示される出力装置40が、発光ダイオードなどの視覚的に警報を発する報知手段を含んでいてもよい。
【0031】
<第1処理装置と第2処理装置との関係>
本実施形態の警報器100では、第2処理装置20は、図1に示されるように、第1処理装置10と別個に設けられている。そして、第2処理装置20は、通信で得られる情報に基づく音声を独自の制御の下で、出力装置40に発声させることができる。外部機器Eからリアルタイムで得られる時事情報や気象情報などの各種の情報を、第1処理装置10に負荷をかけることなく、適時に且つ速やかに、ユーザーなどに音声によって伝えることができる。
【0032】
その一方で、第2処理装置20がこのように独自に出力装置40に発声させ得るように構成されていると、外部機器Eとの通信に基づいて発せられる音声で、検知手段50による検知情報に基づく出力装置40からの音声による警報が阻害されることがある。
【0033】
そこで、本実施形態の警報器100では、第1処理装置10は、検知手段50で取得される検知情報に基づく発報を行うときに、第2処理装置20から出力装置40への発声指示I2の到達を防ぐように構成されている。出力装置40への発声指示I2の到達が防がれるので、検知手段50で取得される検知情報に基づいて音声で発せられる警報などを、通信に基づく音声で阻害されずにユーザーなどに伝えることができる。
【0034】
さらに、本実施形態の警報器100において第2処理装置20は、第1処理装置10による制御を受けるように構成されている。すなわち、第2処理装置20は、第1処理装置10から特に指示がないときには、第1処理装置10から独立して自身の制御プログラムに従って独自に動作可能ではあるものの、第1処理装置10から特定の指示がある場合には、その指示に従って動作するように構成されている。例えば、第2処理装置20が従うプログラムの命令と相反する指示が第1処理装置10から送られてくる場合は、第2処理装置20は第1処理装置10からの指示を優先させる。
【0035】
そして、本実施形態の警報器100において第1処理装置10は、検知手段50で取得される検知情報に基づく発報を行うときに、第2処理装置20による発声指示I2の禁止指示I3を第2処理装置20に送るように構成されている。禁止指示I3の態様は、特に限定されないが、一例として、任意の電気信号であり得る。例えば、信号レベル、振幅、及び/又は、周波数などについて予め定められた特定の値や変化パターンを有する信号が、禁止指示I3として、第1処理装置10から第2処理装置20に送られてもよい。禁止指示I3を受けると、第2処理装置20は、発声指示I2の送出を停止するか、発声指示I2の送出を始めない。そのため、警報器100では、検知手段50により取得された検知情報に基づく警報を、阻害されることなく、一層確実にユーザーなどに届けることができる。
【0036】
加えて、第1処理装置10が禁止指示I3を第2処理装置20に送るので、出力装置40に発声指示I2が到達していないことを第2処理装置20が知ることができる。そのため、第2処理装置20は、例えば検知情報に基づく警報などの発報の終了後、出力装置40への到達が防止された発声指示I2を再送することができる。従って、通信に基づく情報を、例えば警報の終了後に、音声で漏らさずユーザーなどに伝え得ることがある。
【0037】
このように、本実施形態の警報器100では、警報のような、検知情報に基づく発報を行うときには第1処理装置10が第2処理装置20に発声指示I2の禁止指示I3を送るので、第1処理装置10による制御を受ける第2処理装置20は、そもそも、発声指示I2を出力装置40に送らない。
【0038】
しかし、例えばプログラムによってソフト的に第2処理装置20がそのように禁止指示I3に従うように構成されていても、例えばハードウェア上の不具合によって、禁止指示I3が第2処理装置20に認識されないことも考えられる。例えば、第2処理装置20における禁止指示I3の入力ポートに不具合があると、禁止指示I3は、第2処理装置20内の中央処理装置(CPU)に届かず、第2処理装置20に認識されない。また、第2処理装置20が従う制御プログラムに対して、前述したように不具合を伴うアップデートが実行されると、第2処理装置20が第1処理装置10の制御に従わなくなることも考えられる。これらのような場合、禁止指示I3が送られているにも関わらず、発声指示I2が出力装置40に送られてしまうことも起こり得る。
【0039】
このような事態に備えて、警報器100では、検知情報に基づく発報が行われる時には、第1処理装置10が、出力装置40への発声指示I2の到達を防止する。そのため、万一、第2処理装置20による発声指示I2の送出を禁止指示I3で阻止できなくても、検知情報に基づく発報が行われる時には、通信による音声は出力装置40から発せられない。従って、検知手段50からの検知情報に基づく警報の発報によって、ユーザーに危険が迫っていることなどを確実に報せることができる。このように、本実施形態によれば、通信により得られる情報に基づく発声が可能であり、しかも、その通信に基づく発声に阻害されることなく音声による警報機能を適切に発揮させることができる。
【0040】
なお、禁止指示I3は、一例として、検知情報に基づく音声の発声中、その発声の終了まで連続して送出される。また、禁止指示I3は、検知情報に基づく発声の開始時にだけ送出されてもよく、検知情報に基づく発声の終了時には、発声指示I2の禁止解除を報せる通知が、第1処理装置10から第2処理装置20に送られてもよい。
【0041】
<受信情報に基づく発声指示の到達防止手段>
出力装置40への発声指示I2の到達を防ぐ手段として、図1の例の警報器100は絶縁手段30を備えている。絶縁手段30は第2処理装置20と出力装置40との間の発声指示I2の伝達経路CLに配置されている。絶縁手段30は、制御端30cと、いずれも被制御端である一端30a及び他端30bと、を有している。絶縁手段30は、外部からの制御に従って、第2処理装置20側の一端30aと、出力装置40側の他端30bとの間を、導通状態と非導通状態(すなわち絶縁状態)との間で切り替え得る構造を有している。なお「導通状態」は、一例として50Ω未満の電気抵抗を有する状態であり得、「非導通状態」は、1MΩ以上の電気抵抗を有する状態であり得る。図1の警報器100において第1処理装置10は、絶縁手段30の制御端30cに接続されている。第1処理装置10は、制御端30cに所定の制御信号Scを送って一端30aと他端30bとの間を非導通状態へと制御することによって、出力装置40への発声指示I2の到達を防止する。
【0042】
絶縁手段30は、第1処理装置10の制御により出力装置40への発声指示I2の到達を防止できるものであれば特に限定されず、任意の態様を有し得る。絶縁手段30は、例えば、バイポーラトランジスタ、電界効果型トランジスタ、及びサイリスタなどの、スイッチング機能を有する個別半導体素子、電磁リレー、半導体リレー、並びに、アナログスイッチとして集積された半導体集積回路装置、などのスイッチング素子であり得る。
【0043】
出力装置40への発声指示I2の到達は、上述したような、第2処理装置20と出力装置40との間の導通状態(電気抵抗値)を切り替える回路とは異なる構成の回路によって防止されてもよい。例えば、出力装置40への発声指示I2の到達は、出力装置40への信号の入力を不能にする回路によって防止されてもよい。図2には、出力装置40への信号の入力を不能にする回路の例である、出力装置40の入力の接地回路31が示されている。
【0044】
接地回路31は、トランジスタTと電気抵抗Rとを含んでいる。接地回路31は、図1の絶縁手段30の代わりに配置され得る。すなわち、接地回路31の端子31aが第2処理装置20に、端子31bが出力装置40に、そして端子31cが第1処理装置10に、それぞれ接続される。そして、第1処理装置10によってトランジスタTのゲート電流が制御される。すなわち、第1処理装置10は、検知手段50で取得される検知情報に基づく発報を行うときには、トランジスタTをオンさせる電流をトランジスタTのゲートに供給する。トランジスタTがオン状態となって、トランジスタTのコレクタ、すなわち端子31bがGNDに電気的に接続されるので、出力装置40への発声指示I2の到達が防止される。
【0045】
出力装置40への発声指示I2の到達は、さらに他の方法によって防止されてもよい。例えば、増幅回路42(図1参照)が、第1処理装置10及び第2処理装置20それぞれについて別個に設けられ、第2処理装置20用の増幅回路42が出力装置40と別個に設けられてもよい。そして、第1処理装置10が、検知手段50で取得される検知情報に基づく発報を行うときに、第2処理装置20用の増幅回路42への電源電圧の供給を遮断するように構成されてもよい。
【0046】
<第2処理装置による発声指示の送出再開又は再送出>
警報器100において検知情報に基づく発報が行われるときには第1処理装置10から第2処理装置20へと禁止指示I3が送られるので、前述したように、発声指示I2が出力装置40に到達していないことを、第2処理装置20が知ることができる。第2処理装置20は、検知情報に基づく発報の終了後に、禁止指示I3を受けて停止した発声指示I2の送出を再開してもよく、送出を停止した発声指示I2を改めて再送出してもよい。このように、第2処理装置20は、受信情報に基づく音声の発声中に禁止指示I3を受けたときには、検知手段50で取得される検知情報に基づく発報の終了後に、禁止指示I3によって停止した発声指示I2の送出再開若しくは再送出をするように構成されていてもよい。また、第2処理装置20は、検知情報に基づく発報の終了後に、禁止指示I3の受領によって送出を始めなかった発声指示I2の送出を開始してもよい。通信に基づく情報を漏らさずユーザーなどに伝え得ることがある。
【0047】
一方、発声指示I2の再開などが必ずしも好ましいとは限らず、時機を逸して報知されると低価値だったり誤認を招いたりするような情報が外部機器から送られてくることもある。そのような情報は、検知情報に基づく発報の終了後に発せられない方がむしろ好ましいこともある。従って、第2処理装置20は、受信情報に基づく音声の発声中に禁止指示I3を受けた後に検知情報に基づく発報が終了しても、停止した発声指示I2の送出を再開しないように構成されていてもよい。また、第2処理装置20は、受信情報の内容や送信元に応じて、発声指示I2の送出の再開又は再送の要否を判断するように構成されていてもよい。
【0048】
<検知対象に応じた措置>
警報器100において検知手段50の検知対象には、前述したように少なくとも火災又はガスのいずれか一方が含まれ、検知手段50は、さらに、湿度、臭い、及び/又は部外者の立ち入りなどの周囲環境の任意の状況が検知可能であってもよい。警報器100において第1処理装置10は、検知情報に基づく発報を行うときに、このような検知手段50の検知対象ごとに、禁止指示I3を送出したり、出力装置40への発声指示I2の到達を防止したりするように構成されていてもよい。重要性の低い検知情報よりも有益な可能性のある通信に基づく情報を、ユーザーなどに速やかに伝え得ることがある。
【0049】
例えば、検知手段50の検知対象ごとに、重要度に応じた優先順位が予め設定される。そして、第1処理装置10が、検知手段50で取得される検知情報に基づく発報を行うときに、検知手段50による検知対象ごとに予め定められた優先順位に応じて、第2処理装置20に禁止指示I3を送ると共に、出力装置40への発声指示I2の到達を防いでもよい。一例として、ガス漏れや火災では、受信情報に基づく音声の発声よりも重要度又は緊急度が高いことが多いと考えられるため、高い優先順位が設定される。そして、ガス漏れ又は火災の検知に基づく警報の発報時には、第1処理装置10は、禁止指示I3の送出、及び発声指示I2の到達防止措置を行う。煙や異臭、及び、部外者の侵入の検知についても高い優先順位が設定され、これらの検知に基づく警報などの発報時には、第1処理装置10によって、禁止指示I3の送出、及び発声指示I2の到達防止措置が行われてもよい。
【0050】
一方、ある程度までの高温や高湿度が単独で検出されたことに伴う報知、例えば熱中症の危険性についての予備警報などの発報に対しては、ガスや火災の検知に基づく発報よりも低い優先順位が設定されてもよい。そして、その発報のときには、禁止指示I3の送出や発声指示I2の到達防止が行われず、通信に基づく音声の発声の終了後、温度や湿度などについての音声による報知が、第1処理装置10の指示のもとに行われてもよい。
【0051】
<検知情報に基づく発報時の処理フローの一例>
図3には、検知手段50で得られる検知情報に基づく発報時の処理フローの一例が示されている。図3は、検知情報に基づく発報の終了後に、受信情報に基づく発声指示が再開される例を示している。また、図4には、図3の処理フローに対応する、各指示や信号、及び出力装置40の発声の推移についてのタイミングチャートが示されている。図3及び図4を参照して、検知情報に基づく音声の発報時の各処理装置での処理手順や発声の推移が説明される。なお、図3(及び、後に参照される図6)において、二点鎖線L1から左側には、第1処理装置10による処理が示され、右側には、第2処理装置20による処理が示されている。
【0052】
ステップS11で周囲環境の監視が開始され、一方、ステップS21で外部機器との通信が開始される。通信部2(図1参照)において音声で報知すべき情報が受信されると(図3のステップS22)、第2処理装置20から出力装置40へ、受信情報に基づく音声の発声指示I2が送られる(ステップS23、図4の時点T1)。図4に示されるように、出力装置40から受信情報に基づく音声Vcが発せられる。
【0053】
なお、図4において、発声指示I1、発声指示I2、及び禁止指示I3は、ハイレベルとロウレベルの二値で示されており、ハイレベルは、各指示が送出されていることを示し、ロウレベルは、各指示が送出されていないことを単に模式的に示している。実際には、各発声指示は、前述したように、発せられる音についての情報を含む音声信号であり得、所定の振幅や周波数などを有する任意の電気信号であってもよい。同様に、禁止指示I3も、所定の振幅や周波数などを有する任意の電気信号であり得る。また、図4において、同様にハイレベルとロウレベルの二値で示されている「制御信号Sc」は、第1処理装置10によって、出力装置40への発声信号I2の到達防止措置が行われているか否かを示している。ハイレベルは到達防止措置が行われていることを示し、ロウレベルは、到達防止措置が行われていないことを示している。
【0054】
検知手段50によって、例えば火災やガス漏れの発生のような、音声で報知すべき状況が検知されると(図3のステップS12)、第1処理装置10から第2処理装置20へ、音声信号I2の送出を禁じる禁止指示I3が送出される(ステップS13、図4の時点T2)。第2処理装置20では、発声信号I2の送出が停止される(ステップS24、時点T2)。さらに、第1処理装置10によって、第2処理装置20からの発声指示I2の出力装置40への到達が防止される(ステップS14、時点T2)。例えば、図1に示される絶縁手段30に、一端30aと他端30bとの間を導通状態から非導通状態に切り替えさせる制御信号Scが、第1処理装置10から送られる。さらに、検知情報に基づく音声の発声指示I1が、第1処理装置10から出力装置40に送られる(ステップS15、時点T2)。図4に示されるように、出力装置40から、検知情報に基づく音声Vd、例えば火災警報やガス漏れ警報が発せられる。
【0055】
その後、警報などが発せられるべき状態からの復旧や、ユーザーによる停止操作などによって検知情報に基づく音声Vdによる発報が終了すると(図3のステップS16、図4の時点T3)、図3及び図4の例では、第1処理装置10による、第2処理装置20からの発声指示I2の出力装置40への到達防止措置が解除され(ステップS17、時点T4)、さらに、禁止指示I3の送出が停止されて(ステップS18、時点T4)、周囲環境の監視が継続される。
【0056】
第2処理装置20では、禁止指示I3が送られてこなくなるので、受信情報に基づく音声の発声指示I2の送出が再開される(図3のステップS25、図4の時点T5)。また、第1処理装置10による、発声指示I2の出力装置40への到達防止措置が解除されるので、発声指示I2が出力装置40に到達し、出力装置40から、受信情報に基づく音声Vcが発せられる(時点T5)。その後、音声で報知すべき情報の受信が終了すると、発声指示I2の送出が終了する(ステップS26)と共に、受信情報に基づく音声Vcの発声が終了する(時点T6)。通信部2では、適宜、外部機器との通信が行われる。
【0057】
なお、図3のステップS13~S15は、図4の時点T2に示されるように、略同時に行われてもよく、いずれの処理が、最初、2番目、又は最後に行われてもよい。或いは、ステップS13とステップS14とが略同時に行われ、その後、ステップS15が行われてもよい。同様に、ステップS17とステップS18とが略同時に行なわれてもよく、必要に応じて、ステップS18(禁止指示I3の送出終了)がステップS17(出力装置40への発声指示I2の到達防止措置の解除)よりも先に行われてもよい。また、禁止指示I3の送出停止、及び出力装置40への発声指示I2の到達防止措置の解除(時点T4)から、発声指示I2の送出再開(時点T5)までに、図4の例のように遅延時間があってもよく、意図的な遅延時間がなくてもよく、又は、回路素子の応答時間の制約などから必然的に生じる遅延時間だけがあってもよい。
【0058】
また、図4の例のように、検知情報に基づく音声の発報中に、継続して禁止指示I3が送出されなくてもよい。例えば、検知情報に基づく音声の発報開始時にトリガとして例えばワンパルスの電気信号のような禁止指示I3が送出され、禁止指示I3の受領後の状態であることが、第2処理装置20内のメモリなどの記憶手段によって記憶されてもよい。そして、図3のステップS18において、発声指示I2の禁止の解除通知が、第1処理装置10から第2処理装置20に送られてもよい。
【0059】
また、図3のステップS25において、禁止指示I3の受領によりステップS24で停止した発声指示I2の送出を単に再開するのではなく、ステップS23で開始した、音声信号である発声指示I2を、最初から再送出してもよい。そのような再送出を可能にするために、第2処理装置20は、音声信号である発声指示I2を記憶する、メモリなどの記憶手段を備えていてもよい。
【0060】
図5には、図4と同様の方法で、各指示や信号、及び出力装置40による発声の推移に関する他の例のタイミングチャートが示されている。図5は、禁止指示I3の送出から一定の遅延時間後に、出力装置40への発声指示I2の到達防止措置が行われる(すなわち、図5において制御信号Scがハイレベルとなる)例である。また、図5は、前述したようにハードウェア上の不具合などにより、禁止指示I3が第2処理装置20に認識されない状況での出力装置40による発声の推移を例示している。なお、図5において、図4に示される各指示や信号の送出と同様のタイミングでの各指示や信号の送出についての繰り返しとなる説明は省略される。
【0061】
図5の時点T2において、禁止指示I3が送出される。しかし、図5の例は不具合などにより禁止指示I3が第2処理装置20に認識されない状況にあるので、時点T2を過ぎても発声指示I2の送出が継続されている。一方、時点T2から発声指示I1の送出が開始されるため、出力装置40からは、受信情報に基づく音声と検知情報に基づく音声とが重なった聴取困難な音Vxが発せられる可能性がある。しかし、その後の時点T2aにおいて、第1処理装置10によって、第2処理装置20からの発声指示I2の出力装置40への到達が防止される。そのため、時点T2aからは、出力装置40から、検知情報に基づく音声Vdだけが発せられ、例えばガス漏れなどの発生を適確にユーザーなどに認知させることができる。なお、発声指示I2の送出が継続しているので、時点T3において発声指示I1の送出が終了し、その後、時点T4において、発声指示I2の出力装置40への到達の防止が解除されると、出力装置40から、再び、受信情報に基づく音声Vcが発せられる。
【0062】
なお、図5の例のように、禁止指示I3の送出から一定の遅延時間の経過後に出力装置40への発声指示I2の到達防止措置が行われる場合、その到達防止措置が行われてから、検知情報に基づく音声Vdの発声指示I1が送出されてもよい。発声指示I1の送出を発声指示I2の到達防止措置よりも後に開始することで、図5に示されるような聴取困難な音Vxが発せられることを防ぐことができる。
【0063】
<検知情報に基づく発報時の処理フローの他の例>
図6には、検知情報に基づく発報時の処理フローの他の例が示されている。図6は、図3のステップS25、S26を含んでいない点で、図3に示される一例と異なっている。すなわち、図6の例では、検知情報に基づく発報の終了後に、受信情報に基づく発声指示が再開されない。また、図6は、検知情報に基づく発報時に受信情報に基づく音声が発せられているときだけ、禁止指示I3が送出されると共に、出力装置40への発声指示I2の到達が防止される例を示している。そのため、図6の例の処理フローは、さらに、ステップS19及びステップS19からの分岐先での処理であるステップS15a、S16a、並びにステップS27を含んでいる点で、図3に示される一例と異なっている。これら以外の図3に示される処理フローの例の各ステップと同様のステップについては、図3に付された符号と同様の符号が図6において付され、それら各ステップについての繰り返しとなる説明は省略される
【0064】
図6の例では、第2処理装置20は、発声指示I2の送出を開始すると(図6のステップS23)、発声指示I2を送出中であることを第1処理装置10に通知する(ステップS27)。この通知によって、第1処理装置10は、発声指示I2が送出されている、すなわち、受信情報に基づく音声が発せられていることを知ることができる。そして、第1処理装置10は、音声で報知すべき状況が検知されると(ステップS12)、受信情報に基づく音声の発声中である場合は(ステップS19で「Y」)、禁止信号I3の送出(ステップS13)等、図3の例と同様にステップS13~ステップS18の処理を実行する。なお、ステップS18で禁止指示I3の送出が終了しても、第2処理装置20において発声指示I2の送出は再開されない。
【0065】
一方、音声で報知すべき状況の検知時に、すなわち検知情報に基づく発報時に受信情報に基づく音声の発声中でない場合は(ステップS19で「N」)、第1処理装置10は、禁止指示I3の送出も、出力装置40への発声指示I2の到達防止措置も行うことなく、検知情報に基づく音声の発声指示I1を送出する(ステップS15a)。そして検知情報に基づく音声による発報終了後(ステップS16a)、周囲環境の監視が継続される。このように、第1処理装置10は、受信情報に基づく音声が発声されているときに検知情報に基づく発報を行うときだけ、禁止指示I3を送ると共に、出力装置40への受信情報に基づく発声指示I2の到達を防ぐように構成されていてもよい。
【0066】
なお、図6において、ステップS27が省略され、その代わり、ステップS19での判断において、第1処理装置10が第2処理装置20に発声指示I2の送出中か否かを問い合わせ、第2処理装置20がそれに応答するように、これら両処理装置が構成されていてもよい。
【0067】
<実施形態の発報方法>
本発明の一実施形態の発報方法は、先に参照した図1に示されるような、少なくとも火災若しくはガスのいずれか一方を検知可能である検知手段50と、検知手段50で取得される検知情報に基づいて発報する報知機能を制御する第1処理装置10と、検知手段50で取得される検知情報に基づく音声を発する出力装置40と、外部機器Eとの通信を制御すると共に通信に基づいて音声の発声指示I2を出力装置40に送る第2処理装置20と、を少なくとも備える、警報器100のような警報器において検知情報に基づく発報を行う方法である。そして、本実施形態の発報方法は、図3又は図6を参照して説明した各ステップで行われる処理を含んでいてもよく、少なくとも、発声指示I2の禁止指示I3を第1処理装置10から第2処理装置20に送ることと(図3及び図6のステップS13)、出力装置40への発声指示I2の到達を防ぐ手段を講じることと(図3及び図6のステップS14)、を含んでいる。少なくともこの両方のステップを含んでいるので、本実施形態の発報方法によれば、通信により得られる情報に基づく発声が可能な警報器100のような警報器に、通信により得られる情報に基づく発声に阻害されることなく音声による警報機能を適切に発揮させることができる。
【0068】
なお、出力装置40への発声指示I2の到達を防ぐ手段を講じることは、第2処理装置20と出力装置40との間を非導通状態(すなわち絶縁状態)にすることを含み得る。そして、第2処理装置20と出力装置40との間を非導通状態にするために、図1の例の絶縁手段30のような、第2処理装置20と出力装置40との間の発声指示I2の伝達経路CLに配置された、伝達経路の開閉手段が用いられてもよい。
【0069】
また、本実施形態の発報方法では、検知情報に基づく発報を行うときに、ガス漏れ、火災、異常な温度及び湿度、臭い、並びに部外者の侵入などの、検知手段50の検知対象毎に予め定められた優先順位に応じて、禁止指示I3を送ると共に、出力装置40への発声指示I2の到達を防ぐ手段を講じてもよい。一例として、一部の検知対象についての検知情報に基づく発報時には、禁止指示I3を送ると共に、出力装置40への発声指示I2の到達防止手段を講じ、他の一部又は全部の検知対象についての検知情報に基づく発報時には、禁止指示I3が送出されず、及び/又は、出力装置40への発声指示I2の到達が防止されずともよい。
【0070】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0071】
また、上記実施形態では、説明の便宜上、実施形態の警報器の処理動作を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、警報器の処理動作を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動及びフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0072】
100 警報器
1 警報部
2 通信部
10 第1処理装置
20 第2処理装置
30 絶縁手段
40 出力装置
41 音声発生装置
42 増幅回路
50 検知手段
60 筐体
CL 伝達経路
E 外部機器
I1 検知情報に基づく音声の発声指示
I2 受信情報に基づく音声の発声指示
I3 禁止指示
Sc 制御信号
Vc 受信情報に基づく音声
Vd 検知情報に基づく音声
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-08-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも火災若しくはガスのいずれか一方を検知可能である検知手段と、
前記検知手段で取得される検知情報に基づいて発報する報知機能を制御する第1処理装置と、
前記第1処理装置と別個に設けられていて外部機器との通信を制御する第2処理装置と、
前記第1処理装置の制御により前記検知情報に基づく音声を発する出力装置と、
を備えている、通信機能を有する警報器であって、
前記第2処理装置は、前記第1処理装置による制御を受けるように構成されると共に、前記通信による受信情報に基づく音声の発声指示を前記出力装置に送るように構成されており、
前記第1処理装置は、前記検知情報に基づく発報を行うときに、前記発声指示の禁止指示を前記第2処理装置に送出するように構成されており、
前記第1処理装置は、前記検知情報に基づく発報を行うときに、前記禁止指示の送出に加えて、前記第2処理装置から前記出力装置への前記発声指示の到達防止措置を講じるように構成されている、警報器。
【請求項2】
前記第2処理装置と前記出力装置との間の前記発声指示の伝達経路に、前記第2処理装置と前記出力装置との間の導通状態と非導通状態とを前記第1処理装置からの制御に従って切り替える手段をさらに備える、請求項1記載の警報器。
【請求項3】
前記第2処理装置は、前記受信情報に基づく音声の発声中に前記禁止指示を受けたときには、検知情報に基づく発報の終了後に、前記禁止指示によって停止した発声指示を再開するように構成されている、請求項1又は2記載の警報器。
【請求項4】
前記第1処理装置は、前記検知情報に基づく発報を行うときに、ガス又は火災を少なくとも含む前記検知手段の検知対象ごとに予め定められた優先順位に応じて、前記禁止指示を送ると共に前記発声指示の到達を防ぐように構成されている、請求項1又は2記載の警報器。
【請求項5】
少なくとも火災若しくはガスのいずれか一方を検知可能である検知手段と、前記検知手段で取得される検知情報に基づいて発報する報知機能を制御する第1処理装置と、前記検知情報に基づく音声を発する出力装置と、外部機器との通信を制御すると共に前記通信に基づいて音声の発声指示を前記出力装置に送る第2処理装置と、を備える警報器において前記検知情報に基づく発報を行う発報方法であって、
前記発声指示の禁止指示を前記第1処理装置から前記第2処理装置に送ることと、
前記禁止指示を送ることに加えて、前記第2処理装置から前記出力装置への前記発声指示の到達を防ぐ手段を講じることと、
を含んでいる、発報方法。