IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 現代自動車株式会社の特許一覧 ▶ 起亞自動車株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013182
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】二次電池の絶縁評価装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/389 20190101AFI20240124BHJP
【FI】
G01R31/389
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198799
(22)【出願日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】10-2022-0089145
(32)【優先日】2022-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA CORPORATION
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジュキョン
(72)【発明者】
【氏名】ユン、スンボム
【テーマコード(参考)】
2G216
【Fターム(参考)】
2G216AB01
2G216BA56
2G216BB02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】測定信頼度が向上した二次電池の絶縁評価装置を提供する。
【解決手段】二次電池の絶縁評価装置は、二次電池の電池セルに交流電圧を印加し、印加交流電圧に対する出力信号に基づいて獲得されるインピーダンスから電池セルの絶縁有無を判断するように構成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の絶縁評価装置であって、
前記二次電池の電池セルに交流電圧を印加し、印加された交流電圧に対する出力信号に基づいて獲得されるインピーダンスから前記電池セルの絶縁有無を判断するように構成される、評価装置。
【請求項2】
前記電池セルは、
包装材と、
前記包装材内に密封され、分離膜によって互いに分離され、互いに積層される正極及び負極と、
前記包装材内に充填されて密封される電解液と、
を含む、請求項1に記載の評価装置。
【請求項3】
前記評価装置は、前記包装材を介して前記包装材の内部と外部との間の絶縁破壊有無を評価するように構成される、請求項2に記載の評価装置。
【請求項4】
前記包装材は、
前記電池セルの外部と接する外側絶縁層と、
前記電池セルの内部と接する内側絶縁層と、
前記外側絶縁層と内側絶縁層との間に介在されるアルミニウム層と、を含む、請求項3に記載の評価装置。
【請求項5】
前記評価装置は測定モジュールを含み、前記測定モジュールは、
前記電池セルと電気的に連結するための一対のプローブと、
前記電池セルに印加される交流電圧を生成するように構成される信号生成部と、
印加された前記交流電圧に対する出力信号を収集するように構成される出力収集部と、
を含む、請求項2に記載の評価装置。
【請求項6】
前記一対のプローブのうちの一方は前記包装材に連結され、前記一対のプローブのうちの他方は前記正極及び負極のうちのいずれか一つのタブに連結される、請求項5に記載の評価装置。
【請求項7】
前記評価装置は、
印加された交流電圧に対する出力信号を分析して前記電池セルの絶縁有無を判断するように構成される制御器をさらに含む、請求項5に記載の評価装置。
【請求項8】
前記制御器は、前記インピーダンスから前記電池セルの電気容量及び抵抗を算出するように構成され、算出された電気容量及び抵抗に基づいて前記セルの絶縁有無を判断するように構成される、請求項7に記載の評価装置。
【請求項9】
追加抵抗をさらに含み、
前記追加抵抗は両端に前記一対のプローブのそれぞれが連結されるように装着される、請求項5に記載の評価装置。
【請求項10】
前記セルを固定するように構成される固定装置をさらに含む、請求項1に記載の評価装置。
【請求項11】
測定モジュールの測定プローブを電池セルに連結する段階と、
測定モジュールによって前記電池セルに交流電圧を印加する段階と、
制御器によって印加された交流電圧に対する出力信号を分析する段階と、
分析された前記出力信号に基づいてインピーダンスを算出する段階と、
算出された前記インピーダンスに基づいて前記電池セルの絶縁有無を判断する段階と、
を含む、絶縁評価装置の作動方法。
【請求項12】
前記測定プローブの連結の前、固定装置に検査対象である電池セルを固定する段階をさらに含む、請求項11に記載の作動方法。
【請求項13】
算出された前記インピーダンスを視覚化する段階をさらに含み、
前記視覚化はナイキスト線図またはボード線図によって提供する、請求項11に記載の作動方法。
【請求項14】
前記交流電圧を印加する段階で、予め設定された周波数範囲内で高周波数の交流電圧から低周波数の交流電圧に減少させながら印加する、請求項11に記載の作動方法。
【請求項15】
前記絶縁有無を判断する段階で、
前記予め設定された周波数範囲内で低周波数の交流電圧に行くほど算出されたインピーダンスの位相角が90°に近づく場合、前記セルの絶縁が正常であると判断する、請求項14に記載の作動方法。
【請求項16】
前記絶縁有無を判断する段階で、
前記予め設定された周波数範囲内で低周波数の交流電圧に行くほど算出されたインピーダンスの位相角が90°より小さい値に収斂する場合、前記セルの絶縁が破壊されたと判断する、請求項14に記載の作動方法。
【請求項17】
前記測定プローブは、前記電池セルの包装材のアルミニウム層と前記電池セルの電極タブとにそれぞれ連結される、請求項14に記載の作動方法。
【請求項18】
前記電池セルは、パウチ型セル、角型セル及び円筒型セルのうちのいずれか一つである、請求項1~10のいずれか一項に記載の評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二次電池の絶縁評価装置に関するものであり、より具体的には、電池セルの絶縁性を評価するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンの代わりに、モーターによって駆動される電気車に対する関心が高くなっている。電気車の核心的な構成要素の一つである二次電池はモーターに電力を供給するように構成される。
【0003】
高電圧及び高容量を有するように、電気車の二次電池は、複数の単位セルがモジュールまたはパックの形態に組み立てられる。単位セルは、包装材の類型によって、パウチ型、角型、円筒型などに分類することができる。
【0004】
例えば、このうちパウチ型セルは、空間効率に優れてエネルギー密度が高い利点があるので、広く使われている。図1に示すように、パウチ型セルCは、分離膜10、正極20、及び負極30が包装材40内に収容され、電解液が注入された後、シーリングされる。そして、パウチ型セルCの包装材40は、外側絶縁層42、アルミニウム層44、及び内側絶縁層46を含む。
【0005】
外側絶縁層42はセルCを外部の衝撃から保護するように構成され、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthalate、PET)樹脂を含むことができる。アルミニウム層44は機械的強度を維持し、酸素及び水分に対するバリア層の役割をする。内側絶縁層46はシーリングの役割を果たし、例えば、ポリプロピレン(polypropylene、PP)などを含むことができる。
【0006】
パウチ型セルCの製作中に多くの理由で包装材40のアルミニウム層44が損傷されることがある。例えば、電極の形状の形成のために包装材40の成形を遂行するが、不良セルの場合、内側絶縁層46が溶ける現象が発生する。もしくは、完成された電極20、30をセルCに挿入してセルを組み立てるとき、内側絶縁層46が損傷(スクラッチが発生)されるかまたは密封の際に内側絶縁層46が溶ける現象が発生することもある。この際、アルミニウム層44と接着層とが剥離して包装材40の絶縁が破壊され、電極20、30と包装材40との間の短絡が発生する。
【0007】
セルCの組立中にアルミニウム層44が露出される場合、アルミニウム層44とセルCの電極20、30との間に接触が発生することがある。仮に、電極20、30と包装材40との間が絶縁されなければ、二次電池の充放電の際にアルミニウム層44の腐食現象が進む。アルミニウム層44が腐食すれば、漏電が発生することがあり、多数のセルが接触している電気車の二次電池の場合、安全性に深刻な影響を及ぼすことがある。それで、製作の際、パウチ型セルの絶縁抵抗検査を遂行している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国登録特許第10-1021706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は測定信頼度が向上した絶縁評価装置を提供しようとする。
【0010】
本発明の目的は以上で言及した目的に限定されず、言及しなかった他の目的は以下の記載から本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者(以下、「当業者」という)に明らかに理解可能であろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記のような本発明の目的を達成し、後述する本発明の特徴的な機能を遂行するための本発明の特徴は次の通りである。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態による二次電池の絶縁評価装置は、前記二次電池の電池セルに交流電圧を印加し、印加された交流電圧に対する出力信号に基づいて獲得されるインピーダンスから前記電池セルの絶縁有無を判断するように構成される。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態による絶縁評価装置の作動方法は、測定モジュールの測定プローブを電池セルに連結する段階と、測定モジュールによって前記電池セルに交流電圧を印加する段階と、制御器によって印加された交流電圧に対する出力信号を分析する段階と、分析された前記出力信号に基づいてインピーダンスを算出する段階と、算出された前記インピーダンスに基づいて前記電池セルの絶縁有無を判断する段階とを含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、交流電圧を使って測定信頼度が向上した絶縁評価装置が提供される。
【0015】
本発明によれば、既存の検査装置の簡素化によって費用を節減し、生産性を向上させることができる絶縁評価装置が提示される。
【0016】
本発明の効果は前述したものに限定されず、言及しなかった他の効果は以下の記載から通常の技術者に明らかに認識可能であろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】パウチ型電池セルの断面図である。
図2a】パウチ型セルの絶縁電圧検査の概略的なレイアウトを示す図である。
図2b】パウチ型セルの絶縁抵抗検査の概略的なレイアウトを示す図である。
図2c】本発明による絶縁評価の際の概略的なレイアウトを示す図である。
図3】本発明による絶縁評価装置の構成図である。
図4】本発明による絶縁評価装置による絶縁性測定を説明するためのパウチ型セルの断面図である。
図5a-5b】それぞれ絶縁された正常セルのナイキスト線図及び等価回路図である。
図6a-6c】それぞれ電極とアルミニウム層との間の絶縁が破壊されたセルのナイキスト線図及び等価回路図である。
図7a-7b】損傷程度が相異なる包装材のセルに本発明による絶縁評価を遂行した結果を示すボード線図である。
図7c】損傷程度が相異なる包装材のセルに本発明による絶縁評価を遂行した結果を示すナイキスト線図である。
図8a-8b】それぞれセルに追加抵抗が連結された場合の等価回路図及びナイキスト線図である。
図9】本発明による絶縁評価装置の作動を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施例で提示する特定の構造や機能の説明はただ本発明の概念による実施例を説明するための目的で例示するものであり、本発明の概念による実施例は多様な形態に実施可能である。また、本明細書で説明する実施例によって本発明が限定されるものと解釈されてはいけなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるすべての変更物、均等物及び代替物を含むものと理解されなければならない。
【0019】
一方、本発明で、第1及び/または第2などの用語は多様な構成要素を説明するのに使うことができるが、前記構成要素は前記用語によって限定されない。前記用語は一構成要素を他の構成要素と区別する目的で使われる。例えば、本発明の概念による権利範囲から逸脱しない範囲内で、第1構成要素は第2構成要素と名付けることができ、同様に第2構成要素は第1構成要素と名付けることができる。
【0020】
ある構成要素が他の構成要素に「連結」されているかまたは「接続」されていると言及されたとき、その他の構成要素に直接的に連結されるか接続されることもできるが、中間に他の構成要素が存在することもできると理解されなければならないであろう。一方、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結」されているかまたは「直接接触」していると言及されたとき、中間に他の構成要素が存在しないものと理解されなければならないであろう。構成要素との関係を説明するための他の表現、すなわち「~の間に」及び「すぐ~の間に」または「~に隣接する」及び「~に直接隣接する」などの表現も同様に解釈されなければならない。
【0021】
明細書全般にわたって同じ参照番号は同じ構成要素を示す。本明細書で使用する用語は実施例を説明するためのものであり、本発明を限定しようとするものではない。本明細書で、単数型は、文句で特に言及しない限り、複数型も含む。明細書で使用する「含む(comprises)」及び/または「含む(comprising)」は言及された構成要素、段階、動作及び/または素子が一つ以上の他の構成要素、段階、動作及び/または素子の存在または追加を排除しない。
【0022】
前述したように、二次電池の絶縁抵抗及び絶縁電圧検査は二次電池の安全性と直結される非常に重要な検査項目の一つである。
【0023】
図2a及び図2bを参照すると、従来の検査方法で絶縁電圧及び絶縁抵抗を測定することが示されている。セル組立段階のデガス(degas)段階での絶縁測定方法は、セルCのガス室50を穿孔(piercing)して穿孔部52を形成する。プローブ60を介して直流電圧を印加することで、正極20の場合には穿孔部52と正極タブ22との間の絶縁電圧Vを測定し、負極30の場合には穿孔部52と負極タブ32との間の絶縁抵抗Rを測定する。セル組立を完成した後、絶縁検査をさらに遂行することができる。絶縁電圧の場合、貯蔵された電荷量によって測定値の誤差が発生し、絶縁抵抗の場合、測定時間、測定方式、設備構成によって誤差が発生することがある。
【0024】
このように、現在の技術では、絶縁抵抗及び絶縁電圧の検査の際、個別的に別途の検査装置が必要である。また、現在の方式では、正極タブ22または負極タブ32の接触によって包装材40が正極20または負極30の電位を帯びる場合、電解液が内側絶縁層46の損傷された部分に浸透して電位を測定することができる場合にのみ検出が可能である。すなわち、包装材40の損傷部位が微小であって損傷部位に電解液が接触しない場合には検出が不可能である。そして、電池セルの内部の絶縁抵抗に影響を与える因子としては、内側絶縁層46の抵抗、及びアルミニウム層44と正極及び負極との間の電荷貯蔵容量の因子がある。ただ、現在の測定法では、絶縁層の抵抗値と包装材40の電荷貯蔵容量の値とを分離して求めることが難しいという問題がある。
【0025】
したがって、図2cのように、本発明は、交流電圧ACの印加によって損傷部をより精密に区分することができる二次電池の絶縁評価装置及び方法を提供しようとする。
【0026】
本発明によれば、絶縁評価のために、従来において用いられる電圧検査装置及び抵抗検査装置を単一の装置に統合して分析することができるようにすることで、費用を節減し、生産性向上に寄与することができる二次電池絶縁評価装置及び方法が提供される。
【0027】
また、本発明による絶縁評価は、ゼリーロール状態、製造中のセルだけでなく完成されたセル(老朽化したセル含み)、モジュール、パック及びバッテリーにも用いることができる。
【0028】
以下では、添付図面を参照して本発明について詳細に説明する。
【0029】
図3及び図4を参照すると、本発明による二次電池の絶縁評価装置は、固定装置110、測定モジュール120、及び制御器160を含む。
【0030】
固定装置110は、上面に載せられた検査対象であるセルCを固定するように構成される。固定装置110は検査中にセルCが動かないように固定させることで、検査中の誤差を最小化することができるように構成される。
【0031】
測定モジュール120は絶縁性判断のための入力信号を生成し、入力信号に対するセルCの応答である出力信号を収集するように構成される。測定モジュール120はアルミニウム層44及びタブ22、32の絶縁及び電解液漏出有無を測定するように構成される。
【0032】
本発明の具現例によれば、測定モジュール120は、測定プローブ130、信号生成部140、及び出力収集部150を含む。
【0033】
測定モジュール120はセルCに連結可能に構成される。具体的には、測定プローブ130は測定モジュール120とセルCとを電気的に連結する。非制限的例として、測定プローブ130は、通電ゴム、メタルフォーム(金属ファブリックフォーム)、または金属から構成されることができる。
【0034】
本発明の具現例によれば、測定プローブ130は、少なくとも二つの測定プローブ130を含むことができる。少なくとも二つの測定プローブ130のうちの一方の測定プローブ130は電池セルCの正極タブ22及び負極タブ32のうちの一つに連結され、少なくとも二つの測定プローブ130のうちの他方の測定プローブ130は包装材40のアルミニウム層44に接触する。セルCの製造中にはセルCのガス室を穿孔することで、測定プローブ130をアルミニウム層44に接触させることもでき、包装材40の端部に露出されるアルミニウム層44に測定プローブ130を接触させて測定を遂行することもできる。そして、完成されたセルC、電池モジュール段階または電池パック段階では各セルCの端部に露出されるアルミニウム層44に測定プローブ130を接触させて非破壊検査を遂行することができる。
【0035】
信号生成部140は交流電圧を生成し、生成された交流電圧はセルCに印加される。信号生成部140は、特に、高周波数から低周波数に変更しながら交流電圧を印加することができる。非制限的例として、周波数は500KHzから100mHzまで減少しながら印加されることができる。他の非制限的例として、交流電圧の振幅は1mV~500mVまで変更されることができる。包装材40と電極タブとの間を充放電して一定の電圧(例えば、2V~5V)に維持させながら交流電圧を印加することもできる。本発明によれば、交流の電気的特性を用いてセルCの損傷有無を解釈する。交流では、印加された電圧によって電流の振幅及び位相が変化する。本発明はこれを用いて等価回路と解釈することで、内部の電気的特性を容易に把握することができる。
【0036】
出力収集部150は入力された交流電圧に対するセルCの応答を収集するように構成される。具体的には、出力収集部150はセルCを介して出力される出力信号の振幅及び位相の変化を測定する。
【0037】
出力収集部150によって収集された測定データは記憶部170に保存される。いくつかの具現例で、記憶部170は測定モジュール120内に備えられる保存所であり得る。いくつかの具現例で、記憶部170は測定モジュール120とは別個に備えられる保存所であり得る。記憶部170は非揮発性メモリであり得る。また、記憶部170は制御器160と通信可能に構成され、制御器160は記憶部170に保存された測定データにアクセス可能に構成される。いくつかの具現例で、記憶部170は制御器160に含まれることができる。
【0038】
制御器160は測定データを処理するように構成される。具体的には、制御器160は印加された交流電圧に対する電流の応答特性を解釈することで、抵抗、電気容量を算出し、インピーダンスを算出するように構成される。
【0039】
また、制御器160は、算出されたインピーダンスを視覚化して提供する。例えば、算出されたデータはボード線図またはナイキスト線図によって視覚化することができ、視覚化したデータはモニターのような出力部180に表示することができる。例えば、周波数応答解釈中にナイキスト線図化またはボード線図化して見ると、特定の周波数区間で抵抗成分と電気容量の成分とを容易に区分することができ、結果の信頼度を向上させることができる。
【0040】
電池の抵抗成分と包装材の損傷によって発生した電気容量とはそれぞれの周波数で振幅及び位相が変化する。これを用いて電気的特性をインピーダンス分析によって電子回路のような標準モデルに等価化して解釈すれば、電気的特性を容易に把握することができる。本発明は、周波数帯域別に包装材40の絶縁層のシーリング部に流れる電流と、包装材40と電極との間に貯蔵される電流とを分離して分析することができる。
【0041】
セルCの絶縁抵抗は包装材40のアルミニウム層44とタブとの間の絶縁層の抵抗と包装材40の電荷貯蔵容量から構成され、包装材40と電極との間に貯蔵される電流は蓄電器(capacitor)の特性を有する。
【0042】
以下では、本発明による絶縁評価方法を説明する。
【0043】
絶縁評価のために、測定モジュール120によって、セルCには高周波数から低周波数の交流電圧が印加される。周波数応答の解釈をナイキスト線図を介して調べる。図5a及び図6aにはナイキスト線図が示されている。ここで、横軸はインピーダンスの実数部(Re、Z’)を示し、縦軸はインピーダンスの虚数部(Im、-Z”)を示す。
【0044】
図5aに示すように、セルCの絶縁が正常の場合、ナイキスト線図は低周波数に行くほど-Z”軸またはIm軸に沿って垂直に上昇する。絶縁状態が優れるほど-Z”軸またはIm軸方向に沿って特定の抵抗値で垂直に上昇するグラフに変化する。すなわち、絶縁が正常であるセルCの場合、インピーダンスの位相角は実質的に90°または90°に近づくことになる。
【0045】
絶縁が正常のセルCの等価回路は図5bのように図式化することができる。すなわち、前記等価回路は、測定プローブ130、包装材40のアルミニウム層44の接触部などの測定器具自体抵抗R1と、アルミニウム層44とタブ22、32との間の絶縁抵抗R2、及び包装材40の電荷貯蔵容量C1からなることができる。
【0046】
反対に、包装材40に損傷がある場合などのようにセルCの絶縁が破壊された場合、図6aに示すように、抵抗成分によってZ’軸またはRe軸方向に沿う変化が増加することを確認することができ、これにより半円形にナイキスト線図が描かれる。そして、インピーダンスの位相角は90°より小さくなる。
【0047】
絶縁が破壊されたセルCでは、包装材40の内側絶縁層46のクラックが発生した部分に電流(i)が流れるのに伴って他の抵抗成分R3が発生するか(図6b参照)、既存の貯蔵容量C1の値が他の値C1’に変わる(図6c参照)。
【0048】
このような絶縁評価の結果は特定の周波数でインピーダンスの絶対値と位相角の定量値とで表現することができ、絶縁破壊だけではなく包装材40の内側絶縁層46の損傷程度またはガス発生の進行性不良の類型も区分することができ、測定回数、測定器具の構成にかかわらず、測定抵抗値は同一である。
【0049】
例えば、図7a~図7cのように、包装材40の損傷程度がひどくなるほど、測定された周波数範囲の特定周波数で絶対値インピーダンスの値は増加し、位相角は90°より徐々に小さくなる。以下の表の各値は図7aに示すボード線図から獲得した。
【表1】
また、図8a及び図8bを参照すると、本発明は、追加抵抗190を含むことができる。より定量化した資料確保のために、測定の際に追加抵抗190を連結して包装材40の短絡程度を定量化することができる。追加抵抗190は検査中に測定プローブ130を連結するように装着されることができる。結局、絶縁破壊時の包装材40の損傷程度によって抵抗成分の大きさが変わり、グラフ上で内部発生抵抗の分だけ追加抵抗の抵抗値が減少する。
【0050】
本発明によれば、特に、絶縁評価の際に交流電圧が使われる。直流絶縁電圧は計測器の内部の高抵抗素子によって極微小電流の発生中に回路にかかる電圧を測定するものであり、包装材と電極との間に貯蔵された電荷量によって電圧値を測定する。しかし、貯蔵された電荷量によって測定値の誤差が発生する。例示的に、包装材に損傷がない場合、直流電圧として各測定部の電圧を測定したとき、正極の電圧は3.7Vが測定され、パウチ電圧は2.4Vが測定される。よって、電圧はこれらの間の差である1.3Vが測定されなければならないが、直流電圧を使う場合、絶縁電圧が絶縁状態の1.3Vより低く測定される傾向がある。また、正極と包装材との間の短絡の発生または負極と包装材との間の短絡の発生の際、0Vまたは約3.55Vの値が測定されなければならないが、実際には正確な値が測定されない。これは、測定の際、実際値ではなく、短絡の程度によってセル内の電気容量が測定されるうちに発生するエラーである可能性が高い。したがって、直流電圧測定の際、短絡の程度を容易に区分することができないが、本発明によれば、交流電圧を使用することで、電気容量成分を容易に区分することができる。直流絶縁抵抗は高電圧の印加の後に回路に流れる電流の測定の後に抵抗として換算される値であり、絶縁層を流れる電流と包装材と電極との間に貯蔵される電流とが合わせられた電流が測定される。よって、直流絶縁抵抗の場合、両電流による影響の区分が不可能であり、測定時間、測定方式及び/または設備構成によって誤差が発生し得る。
【0051】
図9を参照して本発明による二次電池の絶縁評価装置を用いた絶縁評価方法について説明する。
【0052】
まず、段階S10で、固定装置110に検査対象であるセルCを載置し、固定装置110に備えられた用締結部材でセルCを堅固に固定させる。
【0053】
そして、段階S20で、測定モジュール120の測定プローブ130をそれぞれ正極タブ22または負極タブ32とアルミニウム層44とに連結する。前述したように、測定プローブ130はガス室の穿孔を通してアルミニウム層44に接触するかまたは包装材40の端部に露出されるアルミニウム層44に接触することができる。
【0054】
次いで、測定モジュール120の信号生成部140にとって連結されたセルCに交流電圧を印加するようにする(S30)。ここで、高周波数から低周波数に交流電圧が印加されるように構成される。
【0055】
その後、測定モジュール120は印加された交流電圧に対する出力信号を収集し、制御器160にとってこれを分析するようにする(S40)。
【0056】
制御器160は出力信号に基づいてインピーダンスを算出し(S50)、算出された結果をボードプロット、ナイキストプロットなどで視覚化し(S60)、出力部180を介して使用者に提供する。すなわち、周波数応答分析結果、インピーダンスの位相角が高周波数から低周波数に行くほど90°に近づく場合、当該セルは正常と判定することができる。反対に、インピーダンスの位相角が高周波数から低周波数に行くほど90°より小さい値、例えば0~85°に収斂する場合、当該セルは絶縁が破壊されたものと判定することができる。
【0057】
以上では電池セルのうちパウチ型セルを例として説明したが、本発明による絶縁評価装置はパウチ型セルだけでなく、角型セル、円筒型セルにも適用することができる。
【0058】
本発明によれば、交流電圧を使用してデータをインピーダンスとして確保することで、抵抗値の信頼度を高めることができる絶縁評価装置が提供される。
【0059】
本発明による絶縁評価装置は、従来の絶縁電圧及び絶縁抵抗測定装置を一つに統合することで、費用を節減し、生産性を向上させることができる。
【0060】
本発明では、非破壊検査方式を使うので、二次電池組立の直後に及び一定の期間使用した後にも測定が可能であるという利点がある。
【0061】
以上で説明した本発明は前述した実施例及び添付図面に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で様々な置換、変形及び変更が可能であるというのは本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に明らかであろう。
【符号の説明】
【0062】
10 分離膜
20 正極
22 正極タブ
30 負極
32 負極タブ
40 包装材
42 外側絶縁層
44 アルミニウム層
46 内側絶縁層
50 ガス室
52 穿孔部
60 プローブ
110 固定装置
120 測定モジュール
130 測定プローブ
140 信号生成部
150 出力収集部
160 制御器
170 記憶部
180 出力部
190 追加抵抗
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5a
図5b
図6a
図6b
図6c
図7a
図7b
図7c
図8a
図8b
図9