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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131850
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/10 20060101AFI20240920BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20240920BHJP
【FI】
B60W30/10
B60W50/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042328
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立花 啓一
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA11
3D241BA57
3D241BB16
3D241BB37
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CE00
3D241CE04
3D241CE05
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DC25Z
3D241DC30Z
3D241DC31Z
3D241DC50Z
(57)【要約】
【課題】車両に合理的な車線変更動作を実行させる。
【解決手段】自車両の走行を制御する車両用制御装置は、自車両の位置を推定し、自車両の周囲の物体を認識する。また、自車両が現在、片側だけで3つ以上の車線を有する道路においていずれかの車線を走行していて、かつ、自車両が現在走行している車線である現在車線から2つ以上隣の車線である目標車線に移動する必要があるか否かを判定する。目標車線に移動する必要があると判定した場合、現在車線から目標車線までの1回ごとの車線変更に関して、物体認識部による周囲の物体の認識結果に基づいて車線変更を行う前に安全確認を行う時間である安全確認時間をすべて加算して総安全確認時間を出力する。そして、総安全確認時間と、車線変更を完了するまでに走行可能な距離と、に基づいて、目標車線までの車線変更が可能であるか否かを判定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の走行を制御する車両用制御装置であって、
所定のセンサデータに基づいて前記自車両の位置を推定する位置推定部と、
所定のセンサデータに基づいて前記自車両の周囲の物体を認識する物体認識部と、
前記自車両が現在、片側だけで3つ以上の車線を有する道路においていずれかの前記車線を走行していて、かつ、前記自車両が現在走行している車線である現在車線から2つ以上隣の車線である目標車線に移動する必要があるか否かを判定する第1判定部と、
前記第1判定部において前記目標車線に移動する必要があると判定した場合、前記現在車線から前記目標車線までの1回ごとの車線変更に関して、前記物体認識部による周囲の物体の認識結果に基づいて車線変更を行う前に安全確認を行う時間である安全確認時間をすべて加算して総安全確認時間を出力する加算部と、
前記総安全確認時間、および、車線変更を完了するまでに走行可能な距離に基づいて、前記目標車線までの車線変更が可能であるか否かを判定する第2判定部と、
前記第2判定部において可能であると判定した場合、前記総安全確認時間、および、前記物体認識部による周囲の物体の認識結果に基づいて、前記自車両の前記目標車線までの車線変更を実行する車両制御部と、を備える車両用制御装置。
【請求項2】
前記第2判定部において不可能であると判定した場合、前記車両制御部は、前記総安全確認時間、および、前記車線変更を完了するまでに走行可能な距離に基づいて、前記自車両を減速すれば前記目標車線までの車線変更が可能になるときには、前記自車両の減速を実行する、請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記第2判定部において不可能であると判定した場合、前記目標車線までの車線変更が不可能である旨を、表示部を用いた表示、および/または、音声出力部を用いた音声出力によって乗員に通知する出力制御部を、さらに備える請求項1に記載の車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両(乗用車など)をユーザの運転操作によらずに自動で走行させる自動運転技術の開発が盛んに行われている。自動運転技術の1つとして、走行中の車両に車線変更動作を行わせる技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-26357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、現在車線(現在走行している車線)から、2つ以上離れた他の車線に移る場合について、改善の余地がある。具体的には、従来技術では、例えば、目標車線(移動目標の車線)が現在車線の2つ隣の車線の場合、まず、隣の車線に移動可能か否かを判定して、移動可能と判定すれば隣の車線に移動する。次に、目標車線に移動可能か否かを判定して、移動可能と判定すれば目標車線に移動する。
【0005】
このような従来技術では、最初の車線変更時に現在車線から目標車線へ移動可能か否かを判定していないので、最終的に目標車線に移動できない場合がある。その場合、例えば、最初の車線変更時から減速していれば最終的に目標車線に移動できることもある。また、最初の車線変更時から減速しても最終的に目標車線に移動できないのであれば、最初の車線変更を実行しないほうがよいこともある。つまり、従来技術では、車両に合理的な車線変更動作を実行させることができていなかった。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、車両に合理的な車線変更動作を実行させることができる車両用制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、自車両の走行を制御する車両用制御装置であって、所定のセンサデータに基づいて前記自車両の位置を推定する位置推定部と、所定のセンサデータに基づいて前記自車両の周囲の物体を認識する物体認識部と、前記自車両が現在、片側だけで3つ以上の車線を有する道路においていずれかの前記車線を走行していて、かつ、前記自車両が現在走行している車線である現在車線から2つ以上隣の車線である目標車線に移動する必要があるか否かを判定する第1判定部と、前記第1判定部において前記目標車線に移動する必要があると判定した場合、前記現在車線から前記目標車線までの1回ごとの車線変更に関して、前記物体認識部による周囲の物体の認識結果に基づいて車線変更を行う前に安全確認を行う時間である安全確認時間をすべて加算して総安全確認時間を出力する加算部と、前記総安全確認時間、および、車線変更を完了するまでに走行可能な距離に基づいて、前記目標車線までの車線変更が可能であるか否かを判定する第2判定部と、前記第2判定部において可能であると判定した場合、前記総安全確認時間、および、前記物体認識部による周囲の物体の認識結果に基づいて、前記自車両の前記目標車線までの車線変更を実行する車両制御部と、を備える。
【0008】
この構成によれば、1回ごとの車線変更に関する安全確認時間をすべて加算した総安全確認時間を用いて目標車線までの車線変更が可能であるか否かを判定することで、車両に合理的な車線変更動作を実行させることができる。
【0009】
また、車両用制御装置において、前記第2判定部において不可能であると判定した場合、前記車両制御部は、前記総安全確認時間、および、前記車線変更を完了するまでに走行可能な距離に基づいて、前記自車両を減速すれば前記目標車線までの車線変更が可能になるときには、前記自車両の減速を実行する。
【0010】
この構成によれば、目標車線までの車線変更が不可能であると判定した場合でも、自車両を減速すれば目標車線までの車線変更が可能になるときには、自車両を最初の車線変更の前から減速させることで、目標車線までの車線変更を可能にすることができる。
【0011】
また、車両用制御装置において、前記第2判定部において不可能であると判定した場合、前記目標車線までの車線変更が不可能である旨を、表示部を用いた表示、および/または、音声出力部を用いた音声出力によって乗員に通知する出力制御部を、さらに備える。
【0012】
この構成によれば、目標車線までの車線変更が不可能であると判定した場合、その不可能の旨を表示や音声出力によって乗員に通知することで、乗員は早期に対策をとることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車両に合理的な車線変更動作を実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態の車両の構成を示すブロック図である。
図2図2は、実施形態の車両の自動運転ECUの機能構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態における車両の車線変更時の処理の例を説明するための図である。
図4図4は、実施形態の自動運転ECUによる処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の車両用制御装置の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は、実施形態の車両1の構成を示すブロック図である。図1に示す車両1は、ユーザの運転操作によらずに自動で走行を可能とする自動運転機能を搭載した車両である。車両1は、各部を制御するための複数のECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)を備えている。各ECUは、マイコン(マイクロコントローラユニット)を備えている。当該マイコンは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性メモリなどを内蔵している。
【0017】
具体的には、車両1は、図1に示すように、駆動ECU11と、操舵ECU12と、ブレーキECU13と、メータECU14と、ボディECU15と、通信ECU16と、自動運転ECU31と、を備えている。各ECUは、バスライン19を介して、互いに通信可能となるように接続されている。バスライン19は、例えば、CAN(Controller Area Network)等のシリアル通信プロトコルに基づく通信を実現する。なお、通信手法は、これに限定されず、その他の通信プロトコルによる手法であってもよい。
【0018】
また、車両1は、自動運転ECU31に接続される、ライダ(LiDAR:Light Detection And Ranging)ECU32と、単眼カメラECU33と、を備えている。さらに、車両1は、駆動装置21と、操舵装置22と、制動装置23と、緊急停止スイッチ24と、通信装置26と、全方位ライダ34と、測位信号受信部35と、車速センサ36と、表示装置37(表示部)と、スピーカ38(音声出力部)と、ライダ42と、単眼カメラ43と、を備えている。
【0019】
駆動ECU11は、車両1の駆動装置21を制御するECUである。駆動装置21は、駆動源として、エンジンおよびモータのうち少なくともいずれかを備えている。また、駆動装置21は、必要に応じて、駆動源からの駆動力を変速して出力する変速機を備える。
【0020】
操舵ECU12は、車両1の操舵装置22を制御するECUである。操舵装置22は、例えば、電動モータのトルクをステアリング機構に伝達する電動パワーステアリング装置である。ステアリング機構は、例えば、ラックアンドピニオン式のステアリングギヤを含み、電動モータのトルクによりラック軸が車幅方向に移動すると、当該ラック軸の移動に伴って左右の操向輪が左右に転舵するように構成されている。
【0021】
ブレーキECU13は、車両1の制動装置23を制御するECUである。制動装置23は、油圧式であってもよいし、電動式であってもよい。例えば、制動装置23が油圧式である場合、制動装置23は、ブレーキアクチュエータを備え、当該ブレーキアクチュエータの機能により各車輪に設けられたブレーキのホイールシリンダに油圧を分配し、その油圧により各ブレーキから駆動輪を含む車輪に制動力を付与する。
【0022】
メータECU14は、車両1のメータパネルの各部を制御するECUである。メータパネルは、車速やエンジン回転数を表示する計器類や、各種の情報を表示するための液晶ディスプレイ等の表示器を含む。また、メータECU14は、自動運転の緊急停止を指示するために操作される緊急停止スイッチ24と接続されている。
【0023】
ボディECU15は、車両のイグニッションスイッチがオフの状態でも動作の必要がある左右の各ウィンカやドアロックモータ等を制御するECUである。
【0024】
通信ECU16は、車両1内部の通信と車両1外部の通信とを制御するECUである。通信ECU16は、バスライン19を介した内部通信を制御するとともに、外部との通信処理を行う通信装置26を制御する。
【0025】
自動運転ECU31は、自動運転制御の中枢となるECUであり、車両1の走行を制御する車両用制御装置の一例である。また、自動運転ECU31は、メモリ41を備えている。メモリ41は、後述する高精度地図D等を記憶するフラッシュメモリ等の不揮発性記憶装置である。
【0026】
自動運転ECU31は、ライダECU32、単眼カメラECU33、全方位ライダ34、測位信号受信部35、車速センサ36、表示装置37、および、スピーカ38と接続されている。
【0027】
ライダECU32は、例えば6個のライダ42(FR、FM、FL、RR、RM、RL)と接続され、各ライダ42により検出された検出信号を受信して処理するECUである。また、ライダECU32は、例えば、イーサネット(登録商標)規格の通信ケーブルを介して、自動運転ECU31と通信可能に接続されており、ライダ42から受信した検出信号について処理を行ったデータを自動運転ECU31に送信する。ライダ42は、探索範囲にレーザ光を照射し、当該探索範囲内に存在する物体からの反射光を受光して、当該反射光に応じた検出信号を出力することにより、物体までの距離および方向を測定する装置である。ライダ42は、例えば、車両1のフロントバンパの左端、中央および右端、ならびに、リヤバンパの左端、中央および右端にそれぞれ配置されている。なお、ライダ42の個数および配置箇所は、上述したものに限定されるものではなく、異なる個数や異なる配置箇所であってもよい。
【0028】
単眼カメラECU33は、単眼カメラ43と接続され、単眼カメラ43により撮像された静止画の画像信号を受信して処理することにより画像データを生成するECUである。また、単眼カメラECU33は、例えば、USB(Universal Serial Bus)規格の通信ケーブルを介して、自動運転ECU31と通信可能に接続されており、単眼カメラ43から受信した画像信号について処理を行った画像データを自動運転ECU31に送信する。単眼カメラ43は、車両1の前方および後方のうち少なくともいずれかの探索範囲の静止画を所定のフレームレートで連続して撮像可能なカメラである。
【0029】
全方位ライダ34は、360°全方位にレーザ光を照射し、探索範囲内に存在する物体からの反射光を受光して、その反射光に応じた検出信号を出力する装置である。全方位ライダ34は、例えば、イーサネット規格の通信ケーブルを介して、自動運転ECU31と通信可能に接続され、検出信号を自動運転ECU31に出力する。全方位ライダ34により検出された検出信号は、自動運転ECU31で物体を表す点群データに変換される。
【0030】
測位信号受信部35は、GNSS(Global Navigation Satellite System)に基づき、測位衛星から測位信号を受信する受信装置である。測位信号受信部35は、例えば、USB規格の通信ケーブルを介して、自動運転ECU31と通信可能に接続されており、受信した測位信号を自動運転ECU31に出力する。自動運転ECU31は、測位信号受信部35から受信した測位信号に基づいて、車両1が存在する地点を検出する。なお、GNSSの一例として、例えばGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)等が挙げられる。
【0031】
車速センサ36は、例えば車両1の車輪の付近に設置され、当該車輪の回転速度または回転数を示す車速パルスを生成するセンサである。車速センサ36は、自動運転ECU31と通信可能に接続されており、生成した車速パルスを自動運転ECU31に出力する。自動運転ECU31は、車速センサ36から受信した車速パルスをカウントすることによって車両1の車速を算出する。ただし、自動運転ECU31が車速を算出する手法は、これに限定されない。
【0032】
表示装置37は、車両1の車室内のダッシュボード等に設置された、地図情報や物体の認識情報等を表示するLCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)や、OELD(Organic Electro-Luminescent Display:有機ELディスプレイ)等の表示装置である。表示装置37は、自動運転ECU31と通信可能に接続されている。
【0033】
スピーカ38は、車両1の車室内に設置された、音(音声など)を出力する音響装置である。スピーカ38は、自動運転ECU31と通信可能に接続されている。
【0034】
<自動運転ECUの構成>
図2は、実施形態の車両1の自動運転ECU31の機能構成を示すブロック図である。図2に示すように、自動運転ECU31は、位置推定部51と、物体認識部53と、周辺情報統合部54と、経路計画部55と、処理部56と、車両制御部57と、出力制御部58と、記憶部59と、を有する。なお、図2において、矢印は主な情報の流れを示すものであり、矢印のない部分で情報の流れがある場合もありえる。
【0035】
記憶部59は、高精度地図D等の各種情報を記憶する機能部である。記憶部59は、図1に示すメモリ41などによって実現される。なお、記憶部59は、外部のHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記憶装置によって実現されてもよい。
【0036】
位置推定部51は、所定のセンサデータに基づいて車両1の位置を推定する。具体的には、例えば、位置推定部51は、測位信号受信部35から受信した測位信号と、記憶部59に記憶されている高精度地図Dとをマッチングさせて、車両1の位置(自己位置)を推定する機能部である。高精度地図Dは、高精度な三次元地図の情報であり、例えば、道路の幅、区画線、車線数、路肩の線、交差点(信号)の停止線、右折レーン上の右折表示や左折レーン上の左折標示、横断歩道、標識、ガードレール、縁石、歩道、信号機等の情報を含む。位置推定部51は、推定した自己位置の情報を、周辺情報統合部54に出力する。なお、位置推定部51は、全方位ライダ34から受信した検出信号を用いて自己位置の推定精度を高めてもよい。また、高精度地図Dは、処理部56などにも参照される。また、高精度地図Dは、通信ECU16を介した通信装置26により、ほぼリアルタイムで更新される。
【0037】
物体認識部53は、所定のセンサデータに基づいて車両1の周囲の物体を認識する。具体的には、例えば、物体認識部53は、単眼カメラECU33により生成された画像データ、および、全方位ライダ34から受信した検出信号により求まる移動物標(車両、二輪車、歩行者、建物、縁石等の障害物)までの距離の情報に基づいて、移動物標を認識する機能部である。物体認識部53は、認識した移動物標の情報を、周辺情報統合部54に出力するとともに、処理部56に出力する。
【0038】
周辺情報統合部54は、物体認識部53による移動物標の認識結果や、位置推定部51による自己位置の推定結果や、ライダECU32から受信したデータなどに基づいて、記憶部59に記憶されている高精度地図Dが示す地図上に、車両1および車両1以外の物標(他車両など)を配置(統合)した周辺情報統合地図データを作成する機能部である。この周辺情報統合地図データには、高精度地図Dが示す実道路上の実在地物の位置や内容が含まれる。周辺情報統合部54は、作成した周辺情報統合地図データを、経路計画部55や処理部56に出力する。
【0039】
経路計画部55は、周辺情報統合部54により作成された周辺情報統合地図データに基づいて、車両1を目標地点に移動させるための計画経路および当該計画経路上の各地点での目標速度を含めて計画する機能部である。経路計画部55は、計画した計画経路および目標速度を含む計画経路データを作成し、処理部56、車両制御部57および出力制御部58に出力する。
【0040】
処理部56は、周辺情報統合部54により作成された周辺情報統合地図データや、経路計画部55により作成された計画経路データなどに基づいて、各種処理を実行する機能部である。また、処理部56には、車速センサ36から車両1の車速データが入力される。なお、上記のように、周辺情報統合地図データからではなく、高精度地図Dから直接、実在地物の位置や内容を取得するようにしてもよい。
【0041】
処理部56は、機能構成として、第1判定部60、加算部61、第2判定部62を備える。以下、図3も併せて参照して説明する。
【0042】
図3は、実施形態における車両1の車線変更時の処理の例を説明するための図である。図3に示す道路Rは、車線L1~L4の4車線を有する。車両1は、車線L1を走行している。以下では、車線L1を「現在車線」とも称する。また、計画経路データに基づいて、車両1は、現在車線から車線L4に移動する必要があるものとする。以下では、車線L4を「目標車線」とも称する。
【0043】
第1判定部60は、高精度地図Dや、位置推定部51による自己位置の推定結果や、経路計画部55によって作成された計画経路データなどに基づいて、車両1が現在、片側だけで3つ以上の車線を有する道路においていずれかの車線を走行していて、かつ、車両1が現在走行している車線である現在車線(車線L1)から2つ以上隣の車線である目標車線(車線L4)に移動する必要があるか否かを判定する。
【0044】
また、加算部61は、第1判定部60において目標車線に移動する必要があると判定した場合、現在車線から目標車線までの1回ごとの車線変更に関して、物体認識部53による周囲の物体の認識結果に基づいて車線変更を行う前に安全確認を行う時間である安全確認時間をすべて加算して総安全確認時間を出力する。
【0045】
図3の例では、時間t1が、1回目の車線変更に関する安全確認時間である。また、時間t2が、2回目の車線変更に関する安全確認時間である。また、時間t3が、3回目の車線変更に関する安全確認時間である。時間t1、t2、t3の順で、次第に時間が長くなっている。これは、現在の車両1の位置から遠い場所ほど、物体認識部53による周囲の物体の認識結果などの精度が下がることに起因する。このように、現在の車両1の位置から遠い場所における車線変更に関する安全確認時間を長く設定しておくことで、より安全かつ確実に、車線変更を実行できるようになる。
【0046】
また、第2判定部62は、少なくとも、総安全確認時間と、車線変更を完了するまでに走行可能な距離(図3の地点T(車線変更可能な最終地点)までの距離D1)と、に基づいて、目標車線までの車線変更が可能であるか否かを判定する。この場合、第2判定部62は、さらに、車両1の現在の車速や、車線変更時間(車線変更に要する時間)などの情報も使う。
【0047】
図3の例では、時間t11が、1回目の車線変更に関する車線変更時間である。また、時間t12が、2回目の車線変更に関する車線変更時間である。また、時間t13が、3回目の車線変更に関する車線変更時間である。これらの車線変更時間は、例えば、実験やシミュレーションによって予め決定しておくことができる。また、車線変更時間は、車速に応じて異なる値としてもよい。
【0048】
次に、出力制御部58は、表示装置37の表示制御、および、スピーカ38の音声出力制御を行う機能部である。例えば、出力制御部58は、第2判定部62において目標車線までの車線変更が不可能であると判定した場合、目標車線までの車線変更が不可能である旨を、表示装置37を用いた表示、および/または、スピーカ38を用いた音声出力によって乗員に通知する。
【0049】
また、後述するように目標車線まで車線変更するために車両1の減速を行う場合、出力制御部58は、その旨を、表示装置37を用いた表示、および/または、スピーカ38を用いた音声出力によって乗員に通知するようにしてもよい。
【0050】
また、出力制御部58は、周辺情報統合部54により作成された周辺情報統合地図データ、経路計画部55により作成された計画経路データ等を表示装置37に表示させる。
【0051】
車両制御部57は、経路計画部55により作成された計画経路データや、処理部56による処理結果などに基づいて車両1の走行を制御することで、車両1を計画経路に沿って走行させる。そして、車線変更を行うとき、車両制御部57は、第2判定部62において目標車線までの車線変更が可能であると判定した場合、総安全確認時間や、物体認識部53による周囲の物体の認識結果や、車両1の現在の車速や、車線変更時間などに基づいて、車両1の目標車線までの車線変更を実行する。
【0052】
また、第2判定部62において目標車線までの車線変更が不可能であると判定した場合、車両制御部57は、総安全確認時間や、車両1の現在の車速や、車線変更時間や、車線変更を完了するまでに走行可能な距離(図3の距離D1)などに基づいて、車両1を減速すれば目標車線までの車線変更が可能になるときには、車両1の減速を実行する。
【0053】
次に、図4を参照して、実施形態の自動運転ECU31による処理について説明する。図4は、実施形態の自動運転ECU31による処理を示すフローチャートである。
【0054】
まず、ステップS1において、第1判定部60は、高精度地図Dや、位置推定部51による自己位置の推定結果や、経路計画部55によって作成された計画経路データなどに基づいて、車両1が車線変更する必要があるか否かを判定し、Yesの場合はステップS2に進み、Noの場合はステップS1に戻る。
【0055】
ステップS2において、第1判定部60は、現在車線(図3の車線L1)から目標車線(図3の車線L4)に移動するときに行う車線変更の回数が2回以上か否かを判定し、Yesの場合はステップS3に進み、Noの場合はステップS4に進む。
【0056】
ステップS3において、加算部61は、複数の安全確認時間(図3の時間t1、t2、t3)を加算して総安全確認時間を出力する。その後、ステップS4に進む。
【0057】
ステップS4において、第2判定部62は、総安全確認時間や、車両1の現在の車速や、車線変更時間(図3の時間t11、t12、t13)や、車線変更を完了するまでに走行可能な距離(図3の距離D1)などに基づいて、目標車線までの車線変更が可能であるか否かを判定し、Yes(可能)の場合はステップS8に進み、No(不可能)の場合はステップS5に進む。
【0058】
ステップS5において、車両制御部57は、総安全確認時間や、車両1の現在の車速や、車線変更時間(図3の時間t11、t12、t13)や、車線変更を完了するまでに走行可能な距離(図3の距離D1)などに基づいて、車両1を減速したら目標車線までの車線変更が可能になるか否かを判定し、Yesの場合はステップS6に進み、Noの場合はステップS7に進む。
【0059】
ステップS7において、出力制御部58は、目標車線までの車線変更が不可能である旨を、表示装置37を用いた表示、および/または、スピーカ38を用いた音声出力によって乗員(ドライバ等)に通知する。ステップS7の後、処理を終了する。
【0060】
ステップS6において、車両制御部57は、車両1の減速を実行する。そのときに、併せて、出力制御部58が、目標車線までの車線変更を可能にするために車両1を減速することについて、表示装置37やスピーカ38を用いて乗員に通知するようにしてもよい。なお、図4では、図示や説明の便宜上、ステップS6で車両1の減速を実行するものとしているが、実際の減速は、ステップS6だけでなく、ステップS8やステップS9でも実行してもよい。ステップS6の後、ステップS8に進む。
【0061】
ステップS8において、車両制御部57は、物体認識部53による移動物標(他車両など)の認識結果などに基づいて、安全確認を実施する。
【0062】
次に、ステップS9において、車両制御部57は、操舵ECU12などに指示を出すことによって、車線変更を実施する。
【0063】
次に、ステップS10において、車両制御部57は、車線変更が完了したか否かを判定し、Yesの場合は処理を終了し、Noの場合はステップS8に戻る。
【0064】
このように、本実施形態の自動運転ECU31などによれば、1回ごとの車線変更に関する安全確認時間をすべて加算した総安全確認時間を用いて目標車線までの車線変更が可能であるか否かを判定することで、車両1に合理的な車線変更動作を実行させることができる。
【0065】
また、目標車線までの車線変更が不可能であると判定した場合でも、車両1を減速すれば目標車線までの車線変更が可能になるときには、車両1を最初の車線変更の前から減速させることで、目標車線までの車線変更を可能にすることができる。これにより、目標車線に移動できないケースを減らすことができる。
【0066】
また、目標車線までの車線変更が不可能であると判定した場合、その不可能の旨を表示や音声出力によって乗員に通知することで、乗員は早期に対策をとることができる。
【0067】
また、本実施形態の自動運転ECU31などの各ECUで実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)、フレキシブルディスク(FD)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータ装置で読み取り可能な記録媒体に記録して提供することができる。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。
【0068】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0069】
例えば、目標車線までの車線変更が可能と判定した場合であっても、その後の他車両の状況などによって目標車線までの車線変更ができなくなったときは、車線変更動作を中止するなどの対応処理を行う。
【符号の説明】
【0070】
1…車両、31…自動運転ECU、51…位置推定部、53…物体認識部、54…周辺情報統合部、55…経路計画部、56…処理部、57…車両制御部、58…出力制御部、59…記憶部、60…第1判定部、61…加算部、62…第2判定部、D…高精度地図
図1
図2
図3
図4