(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131852
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】オーディオ用D/Aコンバータ
(51)【国際特許分類】
H03M 1/66 20060101AFI20240920BHJP
H03M 1/74 20060101ALI20240920BHJP
H03M 7/32 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H03M1/66 C
H03M1/74
H03M1/66 B
H03M7/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042330
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】山上 真司
【テーマコード(参考)】
5J022
5J064
【Fターム(参考)】
5J022BA07
5J022CA08
5J064BA03
5J064BA06
5J064BC07
(57)【要約】
【課題】ハードウェアを有効活用可能なオーディオ用D/Aコンバータを提供する。
【解決手段】第1セグメントD/Aコンバータ150Aおよび第2セグメントD/Aコンバータ150Bは、エレメント数がNである。オーディオ用D/Aコンバータ100は、ステレオモードとモノモードが切り替え可能である。モノモードにおいて、第1オーバーサンプリングフィルタ120A、第2オーバーサンプリングフィルタ120Bには、同一チャンネルのPCM信号が入力される。第1マルチレベルΔΣ変調器130Aの出力は、その階調数が2×Nに変更され、第1スイッチングコントローラ140Aおよび第2スイッチングコントローラ140Bに振り分けて供給される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレメント数がNである第1セグメントD/Aコンバータと、
エレメント数がNである第2セグメントD/Aコンバータと、
PCM信号を処理する第1オーバーサンプリングフィルタと、
PCM信号を処理する第2オーバーサンプリングフィルタと、
前記第1オーバーサンプリングフィルタの出力を処理する第1マルチレベルΔΣ変調器と、
前記第2オーバーサンプリングフィルタの出力を処理する第2マルチレベルΔΣ変調器と、
その入力に応じて、前記第1セグメントD/Aコンバータを制御する第1スイッチングコントローラと、
その入力に応じて、前記第2セグメントD/Aコンバータを制御する第2スイッチングコントローラと、
を備え、
ステレオモードとモノモードが切り替え可能であり、
(1)前記ステレオモードにおいて、前記第1オーバーサンプリングフィルタおよび前記第2オーバーサンプリングフィルタに異なるチャンネルのPCM信号が入力され、前記第1マルチレベルΔΣ変調器および前記第2マルチレベルΔΣ変調器の出力の階調数はNであり、前記第1マルチレベルΔΣ変調器の出力が前記第1スイッチングコントローラに供給され、前記第2マルチレベルΔΣ変調器の出力が前記第2スイッチングコントローラに供給され、
(2)前記モノモードにおいて、前記第1オーバーサンプリングフィルタおよび前記第2オーバーサンプリングフィルタには、同一チャンネルのPCM信号が入力され、前記第1マルチレベルΔΣ変調器の出力の階調数は2×Nであり、前記第1マルチレベルΔΣ変調器の出力が前記第1スイッチングコントローラおよび前記第2スイッチングコントローラに振り分けて供給される、オーディオ用D/Aコンバータ。
【請求項2】
前記オーディオ用D/Aコンバータは、第1モードと第2モードとが切り替え可能であり、
前記第1モードにおいてイネーブル状態となり、第2モードで動作する別のオーディオ用D/Aコンバータにタイミング同期信号を出力可能なタイミング同期回路をさらに備え、
第2モードにおいて、第1モードで動作する別のオーディオ用D/Aコンバータから供給される前記タイミング同期信号と同期して動作する、請求項1に記載のオーディオ用D/Aコンバータ。
【請求項3】
ひとつの半導体基板に一体集積化された、請求項1または2に記載のオーディオ用D/Aコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オーディオ信号処理に関する。
【背景技術】
【0002】
オーディオ用D/Aコンバータは、多チャンネルを1チップで構成する場合がある。このようなオーディオ用D/Aコンバータは、多チャンネルに、同じチャンネルのオーディオ信号を入力し、多チャンネル分のアナログ出力を合成するモノモードで利用することが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
オーディオ用D/Aコンバータは、チャンネルごとに、N階調のアナログ信号を出力できるとする。従来のモノモードは、N階調の同一のアナログ信号が加算されるため、合成後のアナログ信号も、N階調となる。Mチャンネルのオーディオ用D/Aコンバータでは、M×N階調に相当するハードウェアを備えているにもかかわらず、それを最大限に有効活用できていないと言える。
【0004】
本開示はかかる状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、ハードウェアを有効活用可能なオーディオ用D/Aコンバータの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のある態様は、オーディオ用D/Aコンバータに関する。オーディオ用D/Aコンバータは、エレメント数がN(N≧2)である第1セグメントD/Aコンバータと、エレメント数がNである第2セグメントD/Aコンバータと、PCM信号を処理する第1オーバーサンプリングフィルタと、PCM信号を処理する第2オーバーサンプリングフィルタと、第1オーバーサンプリングフィルタの出力を処理する第1マルチレベルΔΣ変調器と、第2オーバーサンプリングフィルタの出力を処理する第2マルチレベルΔΣ変調器と、その入力に応じて、第1セグメントD/Aコンバータを制御する第1スイッチングコントローラと、その入力に応じて、第2セグメントD/Aコンバータを制御する第2スイッチングコントローラと、を備える。オーディオ用D/Aコンバータは、ステレオモードとモノモードが切り替え可能である。(1)ステレオモードにおいて、第1オーバーサンプリングフィルタおよび第2オーバーサンプリングフィルタに異なるチャンネルのPCM信号が入力され、第1マルチレベルΔΣ変調器および第2マルチレベルΔΣ変調器の出力の階調数はNであり、第1マルチレベルΔΣ変調器の出力が第1スイッチングコントローラに供給され、第2マルチレベルΔΣ変調器の出力が第2スイッチングコントローラに供給され、(2)モノモードにおいて、第1オーバーサンプリングフィルタおよび第2オーバーサンプリングフィルタには、同一チャンネルのPCM信号が入力され、第1マルチレベルΔΣ変調器の出力の階調数は2×Nであり、第1マルチレベルΔΣ変調器の出力が第1スイッチングコントローラおよび第2スイッチングコントローラに振り分けて供給される。
【0006】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明あるいは本開示の態様として有効である。さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0007】
本開示のある態様によれば、ハードウェアを最大限に活用して音質を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るオーディオ用D/Aコンバータのブロック図である。
【
図2】
図2は、ステレオモードのオーディオ用D/Aコンバータを示す図である。
【
図3】
図3は、モノモードのオーディオ用D/Aコンバータを示す図である。
【
図4】
図4は、比較技術に係るオーディオ用D/Aコンバータのモノモードを説明する図である。
【
図5】
図5は、ステレオモード、比較技術に係るモノモード、実施形態に係るモノモードそれぞれにおけるアナログ出力を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、変形例に係るオーディオ用D/Aコンバータを利用したDACシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0010】
一実施形態に係るオーディオ用D/Aコンバータは、エレメント数がN(N≧2)である第1セグメントD/Aコンバータと、エレメント数がNである第2セグメントD/Aコンバータと、PCM信号を処理する第1オーバーサンプリングフィルタと、PCM信号を処理する第2オーバーサンプリングフィルタと、第1オーバーサンプリングフィルタの出力を処理する第1マルチレベルΔΣ変調器と、第2オーバーサンプリングフィルタの出力を処理する第2マルチレベルΔΣ変調器と、その入力に応じて、第1セグメントD/Aコンバータを制御する第1スイッチングコントローラと、その入力に応じて、第2セグメントD/Aコンバータを制御する第2スイッチングコントローラと、を備える。ステレオモードとモノモードが切り替え可能であり、(1)ステレオモードにおいて、第1オーバーサンプリングフィルタおよび第2オーバーサンプリングフィルタに異なるチャンネルのPCM信号が入力され、第1マルチレベルΔΣ変調器および第2マルチレベルΔΣ変調器の出力の階調数はNであり、第1マルチレベルΔΣ変調器の出力が第1スイッチングコントローラに供給され、第2マルチレベルΔΣ変調器の出力が第2スイッチングコントローラに供給され、(2)モノモードにおいて、第1オーバーサンプリングフィルタおよび第2オーバーサンプリングフィルタには、同一チャンネルのPCM信号が入力され、第1マルチレベルΔΣ変調器の出力の階調数は2×Nであり、第1マルチレベルΔΣ変調器の出力が第1スイッチングコントローラおよび第2スイッチングコントローラに振り分けて供給される。
【0011】
この構成によると、モノモードにおいて、第1マルチレベルΔΣ変調器の出力は、2×N階調となる。この2×N階調の出力を、エレメント数がNである第1セグメントD/Aコンバータおよびエレメント数がNである第2セグメントD/Aコンバータに分配することにより、第1セグメントD/Aコンバータのアナログ出力と第2セグメントD/Aコンバータのアナログ出力はそれぞれ独立して、N階調で変化するため、2つのアナログ出力の合成信号は、2×N階調を有することとなる。これにより従来のモノモードに比べて、ハードウェアを最大限に活用し、音質を改善できる。
【0012】
一実施形態において、オーディオ用D/Aコンバータは、第1モードと第2モードとが切り替え可能であってもよい。オーディオ用D/Aコンバータは、第1モードにおいてイネーブル状態となり、第2モードで動作する別のオーディオ用D/Aコンバータにタイミング同期信号を出力可能なタイミング同期回路をさらに備えてもよい。オーディオ用D/Aコンバータは、第2モードにおいて、第1モードで動作する別のオーディオ用D/Aコンバータから供給されるタイミング同期信号と同期して動作してもよい。この構成によれば、2個のオーディオ用D/Aコンバータを同期させて動作させることができる。
【0013】
一実施形態において、オーディオ用D/Aコンバータは、ひとつの半導体基板に一体集積化されていてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0014】
(実施の形態)
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0015】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0016】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に接続された(設けられた)状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0017】
(実施形態)
図1は、実施形態に係るオーディオ用D/Aコンバータ100のブロック図である。オーディオ用D/Aコンバータ100(以下、単にD/Aコンバータともいう)は、ひとつの半導体基板に集積化されたDACチップである。
【0018】
オーディオ用D/Aコンバータ100は、2チャンネルで構成される。オーディオ用D/Aコンバータ100は、ステレオモードとモノモードが切り替え可能であり、ステレオモードでは2チャンネルのPCM信号を、2チャンネルのアナログ信号に変換する。オーディオ用D/Aコンバータ100は、モノモードにおいて、2チャンネルのハードウェアリソースを利用して1チャンネルのPCM信号を、1チャンネルのアナログ信号に変換する。
【0019】
オーディオ用D/Aコンバータ100は、インタフェース回路110、第1オーバーサンプリングフィルタ120A、第2オーバーサンプリングフィルタ120B、第1マルチレベルΔΣ変調器130A、第2マルチレベルΔΣ変調器130B、第1スイッチングコントローラ140A、第2スイッチングコントローラ140B、第1セグメントD/Aコンバータ150A、第2セグメントD/Aコンバータ150Bを備える。添え字のA、Bはチャンネルを示す。
【0020】
インタフェース回路110は、外部の音源(不図示)から、PCM信号を受信する。
【0021】
第1セグメントD/Aコンバータ150Aおよび第2セグメントD/Aコンバータ150Bは、エレメント数がNである。
【0022】
第1オーバーサンプリングフィルタ120Aは、入力されたPCM信号をオーバーサンプリング処理する。第2オーバーサンプリングフィルタ120Bは、入力されたPCM信号をオーバーサンプリング処理する。
【0023】
第1マルチレベルΔΣ変調器130Aは、第1オーバーサンプリングフィルタ120Aの出力を処理する。第2マルチレベルΔΣ変調器130Bは、第2オーバーサンプリングフィルタ120Bの出力を処理する。第1マルチレベルΔΣ変調器130A、第2マルチレベルΔΣ変調器130Bはそれぞれ、出力段に量子化器を含んでおり、量子化器の階調数が、オーディオ用D/Aコンバータ100の動作モード(ステレオモード、モノモード)に応じて、Nレベルと2×Nレベルの二状態で切り替え可能に構成されている。
【0024】
第1スイッチングコントローラ140Aは、その入力に応じて、第1セグメントD/Aコンバータ150Aを制御する。第2スイッチングコントローラ140Bは、その入力に応じて、第2セグメントD/Aコンバータ150Bを制御する。第1スイッチングコントローラ140Aおよび第2スイッチングコントローラ140Bは、DEM(Dynamic Element Matching)やDWA(Data Weighted Average)などの技術を利用することができる。第2スイッチングコントローラ140Bには、動作モードに応じて、第1マルチレベルΔΣ変調器130Aの出力と第2マルチレベルΔΣ変調器130Bの出力の一方が供給可能である。
【0025】
以下、ステレオモードとモノモードについて説明する。
【0026】
(1)ステレオモード
図2は、ステレオモードのオーディオ用D/Aコンバータ100を示す図である。第1オーバーサンプリングフィルタ120Aおよび第2オーバーサンプリングフィルタ120Bに異なるチャンネルのPCM信号が入力される。第1マルチレベルΔΣ変調器130Aおよび第2マルチレベルΔΣ変調器130Bの出力の階調数はNであり、第1マルチレベルΔΣ変調器130Aの出力が第1スイッチングコントローラ140Aに供給され、第2マルチレベルΔΣ変調器130Bの出力が第2スイッチングコントローラ140Bに供給される。
【0027】
(2)モノモード
図3は、モノモードのオーディオ用D/Aコンバータ100を示す図である。第1オーバーサンプリングフィルタ120Aおよび第2オーバーサンプリングフィルタ120Bには、同一チャンネル(チャンネルA)のPCM信号が入力される。
【0028】
モノモードにおいて、第1マルチレベルΔΣ変調器130Aの出力の階調数は2×Nが選択される。そして、第1マルチレベルΔΣ変調器130Aの出力が第1スイッチングコントローラ140Aおよび第2スイッチングコントローラ140Bに振り分けて供給される。具体的には、第1マルチレベルΔΣ変調器130Aの出力の値がZ、第1スイッチングコントローラ140Aの入力の値がX、第2スイッチングコントローラ140Bの入力の値がYであるとき、
Z=X+Y
を満たすように振り分けられる。ただし、X≦N、Y≦Nである。
【0029】
第1セグメントD/Aコンバータ150Aの出力と第2セグメントD/Aコンバータ150Bの出力は加算され、チャンネルAのアナログ出力となる。
【0030】
以上がオーディオ用D/Aコンバータ100の構成である。このオーディオ用D/Aコンバータ100の利点は、比較技術との対比によって明確となる。
【0031】
図4は、比較技術に係るオーディオ用D/Aコンバータ100のモノモードを説明する図である。比較技術では、第1マルチレベルΔΣ変調器130A、第2マルチレベルΔΣ変調器130Bの出力階調数は、第1セグメントD/Aコンバータ150A、第2セグメントD/Aコンバータ150Bのセグメント数と等しくNである。
【0032】
図5は、ステレオモード、比較技術に係るモノモード、実施形態に係るモノモードそれぞれにおけるアナログ出力を模式的に示す図である。
【0033】
ここではN=8であるとする。ステレオモードではアナログ出力は8階調で変化することとなる。比較技術に係るモノモードでは、ステレオモードで得られるアナログ信号を2倍で増幅した信号となり、これによりS/N比は改善されるが、階調数はN=8のままである。つまり、比較技術のモノモードでは、オーディオ用D/Aコンバータ100Rの出力段のD/Aコンバータとして、16個のセグメントを備えているにもかかわらず、アナログ出力は8階調に留まっており、ハードウェアを最大限に活用できているとは言えない。
【0034】
これに対して実施形態に係るモノモードでは、振幅が2倍となり、また階調数も2×Nとなっている。つまり、16個のセグメントをフルに活用することができ、比較技術に比べて音質を改善できるという利点がある。
【0035】
図6は、変形例に係るオーディオ用D/Aコンバータ100Cを利用したDACシステム200を示す図である。DACシステム200は、2個のオーディオ用D/Aコンバータ100Cを備える。オーディオ用D/Aコンバータ100Cは、実施形態に係るオーディオ用D/Aコンバータ100に加えて、タイミング同期回路160を備える。
【0036】
オーディオ用D/Aコンバータ100Cは、第1モード(コントローラモード、上位モード)と第2モード(ターゲットモード、下位モード)が切り替え可能である。
図6では、上側のオーディオ用D/Aコンバータ100Cが第1モード、下側のオーディオ用D/Aコンバータ100Cが第2モードである。タイミング同期回路160は、第1モードにおいてイネーブル状態となり、第2モードで動作する別のオーディオ用D/Aコンバータ100Aにタイミング同期信号SYNCを出力可能となっている。
【0037】
第2モードのオーディオ用D/Aコンバータ100Cは、第1モードの別のオーディオ用D/Aコンバータ100から供給されるタイミング同期信号SYNCと同期して動作する。
【0038】
第1モードと第2モードのオーディオ用D/Aコンバータ100Cはそれぞれ、モノモードで動作し、同じチャンネルCHAのPCM信号をアナログ信号に変換する。
図6の構成において、第1マルチレベルΔΣ変調器130Aの出力の階調数は4×Nが選択される。2個のオーディオ用D/Aコンバータ100Cの出力は加算され、アナログ信号が生成される。
【0039】
以上がオーディオ用D/Aコンバータ100の構成である。
【0040】
図6のDACシステム200Cによれば、
図5の実施形態に係るモノモードの波形を2倍に増幅したアナログ信号を得ることができ、S/N比をさらに改善できる。
【0041】
本開示に係る実施形態について、具体的な用語を用いて説明したが、この説明は、理解を助けるための例示に過ぎず、本開示あるいは請求の範囲を限定するものではない。本発明の範囲は、請求の範囲によって規定されるものであり、したがって、ここでは説明しない実施形態、実施例、変形例も、本発明の範囲に含まれる。
【0042】
(付記)
本明細書には以下の技術が開示される。
【0043】
(項目1)
エレメント数がNである第2セグメントD/Aコンバータと、
PCM信号を処理する第1オーバーサンプリングフィルタと、
PCM信号を処理する第2オーバーサンプリングフィルタと、
前記第1オーバーサンプリングフィルタの出力を処理する第1マルチレベルΔΣ変調器と、
前記第2オーバーサンプリングフィルタの出力を処理する第2マルチレベルΔΣ変調器と、
その入力に応じて、前記第1セグメントD/Aコンバータを制御する第1スイッチングコントローラと、
その入力に応じて、前記第2セグメントD/Aコンバータを制御する第2スイッチングコントローラと、
を備え、
ステレオモードとモノモードが切り替え可能であり、
(1)前記ステレオモードにおいて、前記第1オーバーサンプリングフィルタおよび前記第2オーバーサンプリングフィルタに異なるチャンネルのPCM信号が入力され、前記第1マルチレベルΔΣ変調器および前記第2マルチレベルΔΣ変調器の出力の階調数はNであり、前記第1マルチレベルΔΣ変調器の出力が前記第1スイッチングコントローラに供給され、前記第2マルチレベルΔΣ変調器の出力が前記第2スイッチングコントローラに供給され、
(2)前記モノモードにおいて、前記第1オーバーサンプリングフィルタおよび前記第2オーバーサンプリングフィルタには、同一チャンネルのPCM信号が入力され、前記第1マルチレベルΔΣ変調器の出力の階調数は2×Nであり、前記第1マルチレベルΔΣ変調器の出力が前記第1スイッチングコントローラおよび前記第2スイッチングコントローラに振り分けて供給される、オーディオ用D/Aコンバータ。
【0044】
(項目2)
前記オーディオ用D/Aコンバータは、第1モードと第2モードとが切り替え可能であり、
前記第1モードにおいてイネーブル状態となり、第2モードで動作する別のオーディオ用D/Aコンバータにタイミング同期信号を出力可能なタイミング同期回路をさらに備え、
第2モードにおいて、第1モードで動作する別のオーディオ用D/Aコンバータから供給される前記タイミング同期信号と同期して動作する、項目1に記載のオーディオ用D/Aコンバータ。
【0045】
(項目3)
ひとつの半導体基板に一体集積化された、項目1または2に記載のオーディオ用D/Aコンバータ。
【符号の説明】
【0046】
100 オーディオ用D/Aコンバータ
110 インタフェース回路
120A 第1オーバーサンプリングフィルタ
120B 第2オーバーサンプリングフィルタ
130A 第1マルチレベルΔΣ変調器
130B 第2マルチレベルΔΣ変調器
140A 第1スイッチングコントローラ
140B 第2スイッチングコントローラ
150A 第1セグメントD/Aコンバータ
150B 第2セグメントD/Aコンバータ