(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131863
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】爪切り
(51)【国際特許分類】
A45D 29/02 20060101AFI20240920BHJP
B26B 17/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A45D29/02 G
B26B17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042344
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001454
【氏名又は名称】株式会社貝印刃物開発センター
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100137947
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 貴文
(72)【発明者】
【氏名】栗林 輝佳
(72)【発明者】
【氏名】富永 崇仁
【テーマコード(参考)】
3C065
【Fターム(参考)】
3C065BA21
(57)【要約】
【課題】スムーズかつきれいに爪を切れるとともに、高い耐久性を有する爪切りを提供する。
【解決手段】本発明の爪切りは、先端部分に位置する第1先端部(12)に第1刃付部(13)を有する第1刃体(10)と、先端部分に位置する第2先端部(22)に第2刃付部(23)を有する第2刃体(20)と、第1刃付部と第2刃付部とを互いに近接及び離間させるよう操作する操作部材(30)と、を備える。第1先端部(12)は、外側に露出する刃表(15)と、刃表の裏側に位置する刃裏(16)とを有する。刃裏(16)は、第1刃付部の先端の刃先から離れるにつれて鉛直方向に対する角度が大きくなるよう湾曲しており、第1刃付部の刃先において、刃表と刃裏とがなす角度が20°以上35°以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部分に位置する第1先端部に第1刃付部を有する第1刃体と、
先端部分に位置する第2先端部に第2刃付部を有する第2刃体と、
前記第1刃付部と前記第2刃付部とを互いに近接及び離間させるよう操作する操作部材と、を備え、
前記第1先端部は、外側に露出する刃表と、前記刃表の裏側に位置する刃裏とを有し、前記刃裏は、前記第1刃付部の先端の刃先から離れるにつれて鉛直方向に対する角度が大きくなるよう湾曲しており、
前記第1刃付部の前記刃先において、前記刃表と前記刃裏とがなす角度が20°以上35°以下である、
爪切り。
【請求項2】
前記第1刃付部の前記刃先において、前記刃表と前記刃裏とがなす角度が27°以上33°以下である、
請求項1に記載の爪切り。
【請求項3】
前記刃裏は、曲率半径が5mm以上50mm以下の円弧状に湾曲して形成される、
請求項1に記載の爪切り。
【請求項4】
前記第1刃体は、前記第1先端部から連続する第1本体部をさらに有し、
前記第1先端部は、前記第1本体部に対して前記第2刃体側に屈曲しており、
前記刃表は、前記刃先を含み鉛直方向に水平に延びる第1刃表と、前記第1刃表から連続するとともに鉛直方向に対して鋭角を有して直線状に延びる第2刃表とを有し、
前記第2刃表は、前記第1本体部に対して55°以上75°以下の角度をなすよう形成される、
請求項1に記載の爪切り。
【請求項5】
前記第1刃体は、前記第1先端部から連続する第1本体部をさらに有し、
前記第1先端部は、前記第1本体部に対して前記第2刃体側に屈曲しており、
前記刃裏と前記第1本体部とを接続する刃裏接続部は、前記刃裏の曲率半径よりも小さい曲率半径を有するよう湾曲して形成されている、
請求項1に記載の爪切り。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、爪切りに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1または2に記載されたような爪切りがあった。特許文献1に記載の爪切りは、上刃先と下刃先とが相対向した状態で、上操作てこの支持部と下操作てこの支持部とが、上下両刃体間にそれらの支持孔から挿入されて、上下両刃体間で回動連結部により互いに回動可能に支持されている。上操作てこの力点部は、上下両刃先と回動連結部との間に位置し、下刃体で支持孔の外側に対し係合している。下操作てこの力点部は、上下両刃先と回動連結部との間に位置し、上刃体で支持孔の外側に対し係合している。
【0003】
特許文献2に記載の爪切りは、支持体を備えている。支持体内にはカット部材が配置されている。カット部材の前端には切刃が形成されており、同切刃側は互いに離間する方向への弾性を有している。支持体及びカット部材の前端部には支軸が挿通されている。支軸の上端部には押圧操作てこが回動自在に支持されている。カット部材は支軸に対して、同支軸の軸心を回動中心として時計方向及び反時計方向に回動自在に支持されている。爪切りの使用時には、切欠面から突出されたカット部材の一部を引っ張り出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-248013号公報
【特許文献2】特開2018-102408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
爪切りに対しては、切れ味を向上させて切断抵抗を減少させ、スムーズかつきれいに爪を切れるものに対するニーズが継続的に存在している。上記特許文献1または2に記載の爪切りでは、爪をスムーズかつきれいに切る観点において改善の余地があった。爪切りの切れ味を向上させるためには刃先を鋭角にすることが考えられるが、単純に刃先を鋭角にするために刃先を薄くすると、刃体がたわんだり破損したりすることがあった。
【0006】
また、SDGsの目標12の「つくる責任つかう責任」における12.5「2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。」の観点からも、破損しづらく継続的に使用可能な日用品に関するニーズが高まっている。本発明は、持続可能な世界の実現に寄与するためにも、機能のみでなく耐久性にも優れた製品のひとつとなる爪切りを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、次のような手段を提供する。なお、以下の説明において、発明の理解を容易にするために図面中の符号等を括弧書きで付記する場合があるが、本発明の各構成要素はこれらの具体的な構成に限定されるものではなく、当業者が技術的に理解しうる範囲にまで広く解釈されるべきものである。
【0008】
本発明の一態様の爪切りは、先端部分に位置する第1先端部(12)に第1刃付部(13)を有する第1刃体(10)と、先端部分に位置する第2先端部(22)に第2刃付部(23)を有する第2刃体(20)と、第1刃付部と第2刃付部とを互いに近接及び離間させるよう操作する操作部材(30)と、を備える。第1先端部(12)は、外側に露出する刃表(15)と、刃表の裏側に位置する刃裏(16)とを有する。刃裏(16)は、第1刃付部の先端の刃先から離れるにつれて鉛直方向に対する角度が大きくなるよう湾曲しており、第1刃付部の刃先において、刃表と刃裏とがなす角度が20°以上35°以下である。
【0009】
上記構成の爪切りは、刃表と刃裏とがなす角度が、従来の爪切りよりも鋭角な20°以上35°以下になっており、使用時の切断抵抗を減少させつつ、爪をスムーズに切断可能となる。また、刃裏が直線状ではなく湾曲しており、刃先から離れるにつれて第1先端部の厚みが増していく形状であるため、刃体がたわんだり破損したりすることを抑制可能となる。これにより、爪を切る機能として十分な性能を有しつつ、耐久性を高めた爪切りを提供できる。
【0010】
上記爪切りにおいて好ましくは、第1刃付部の刃先において、刃表と刃裏とがなす角度が27°以上33°以下である。
【0011】
上記構成の爪切りによれば、使用者が特にストレスなく爪を切ることができる構成となる。
【0012】
上記爪切りにおいて好ましくは、刃裏は、曲率半径が5mm以上50mm以下の円弧状に湾曲して形成される。
【0013】
上記構成の爪切りによれば、刃先を十分に鋭利にしつつ、刃先の耐久性の十分に確保可能な構成にすることができる。
【0014】
上記爪切りにおいて好ましくは、第1刃体(10)は、第1先端部(12)から連続する第1本体部(11)をさらに有し、第1先端部(12)は、第1本体部に対して第2刃体側に屈曲しており、刃表(15)は、刃先を含み鉛直方向に水平に延びる第1刃表(15a)と、第1刃表から連続するとともに鉛直方向に対して鋭角を有して直線状に延びる第2刃表(15b)とを有し、第2刃表は、第1本体部に対して55°以上75°以下の角度をなすよう形成される。
【0015】
従来の特許文献などにおいて、刃裏が湾曲した形状の爪切りが記載されているものが存在するが、これらは単なる図面上の概念的表現であって、実際に刃裏を湾曲させた形状を採用したものは確認できなかった。これは、従来は、刃裏を湾曲させる製造技術上の困難性に対して、有用性が認められていないことに起因していた。
【0016】
今回、発明者らは、上記のように刃表が直線状で、刃裏が湾曲した形状の爪切りの形状を採用することで、製造技術上の困難性を考慮したとしても十分な有用性が認められる構成にできることを見出した。上記のような構成の爪切りによれば、刃体がたわんだり破損したりすることを抑制可能であって、かつ耐久性を高めた爪切りを、比較的容易な製造技術を採用しつつ提供することができる。
【0017】
また、発明者らの検討によれば、第1本体部に対する第2刃表の角度が55°より小さい場合には、刃先の肉厚が小さくなることで剛性が低くなり、使用時に刃先がたわんでしまって爪を切りづらくなることが判った。また、第2刃表の角度が75°より大きい場合には、プレス加工によって刃先を成形することが困難になってしまうことが判った。そこで、第1本体部に対する第2刃表の角度を55°以上75°以下とする上記構成を採用することで、爪を切りやすく、かつ成形時にも問題のない構成とすることができる。
【0018】
さらに、第1刃表を上記のように鉛直方向に水平に延びるようにすることで、第1刃体と第2刃体とに同時に刃付をすることができ、製造工程における効率が向上する。また、爪切りの使用時に、爪を切断しやすい構成とすることができる。
【0019】
上記爪切りにおいて好ましくは、第1刃体は、第1先端部から連続する第1本体部をさらに有し、第1先端部は、第1本体部に対して第2刃体側に屈曲しており、刃裏と第1本体部とを接続する刃裏接続部(16b)は、刃裏の曲率半径よりも小さい曲率半径を有するよう湾曲して形成されている。
【0020】
上記構成の爪切りによれば、比較的成形しやすく、かつ第1本体部と第1先端部との屈曲した接続部が応力により破損することを十分抑制可能な構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】
図2は、刃先を噛み合わせた状態の爪切りの側面図である。
【
図3】
図3は、刃先を噛み合わせた状態の爪切りの刃先近傍の拡大図である。
【
図6】
図6は、変形例の上刃体の刃先近傍の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一形態の爪切りは、刃先から離れるにつれて鉛直方向に対する角度が大きくなるように刃裏が円弧上に湾曲しており、刃先において、刃表と刃裏とがなす角度が20°以上35°以下となる構成としている点を特徴のひとつとしている。
【0023】
以下、本発明の一形態の爪切りについて、図面を参照しながら具体的に説明する。ただし、以下で説明する実施形態及び実施例はあくまで本発明の一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定的に解釈させるものではない。なお、各図面において、同一の構成要素には同一の符号を付している。
【0024】
本明細書では、説明の便宜上、上刃体10の上刃付部13と、下刃体20の下刃付部23の刃表側の面において、上刃体10側から下刃体20側に向かう方向を「鉛直方向」というが、ここでいう鉛直方向は、爪切り1の向きに応じて変化する重力の方向を指すものではない。
【0025】
図1~
図3は、本実施形態の爪切り1の図であって、
図1は斜視図、
図2は刃先を噛み合わせた状態の側面図、
図3は同状態の刃先近傍の拡大図である。
図4及び
図5は、爪切り1を構成する上刃体10の図であって、
図4は上面図、
図5は上刃体10の幅方向の中央の位置での刃先近傍の拡大断面図である。
【0026】
図1及び
図2に示されるように、爪切り1は、上刃体10、下刃体20、及び操作部材30を含んで構成される。操作部材30は、てこ(梃子)31及び支軸32を含んで構成される。上刃体10と下刃体20とは、連結部11aで溶接されて連結している。上刃体10と下刃体20とはさらに、互いの先端近傍で、支軸32によって、上刃体10と下刃体20とが互いに近接及び離間する方向に移動可能に連結される。支軸32は、円柱状の部材であって、支軸32の軸線を中心として、てこ31が回動可能に連結される。
【0027】
図1~
図4に示されるように、上刃体10は、上本体部11及び上先端部12を含む。上本体部11は板状である。上先端部12は、上本体部11から連続して形成されており、上先端部12に対して下刃体20側に屈曲している。上先端部12には、刃付により鋭利に加工された上刃付部13が形成される。上刃付部13は、刃の先端となる刃先14を有する。上先端部12は、外側に露出する刃表15と、刃表の裏側に位置する刃裏16とを有する。
図4に示されるように、上刃体10の上刃付部13は、幅方向の両端に対して中央が窪んだ円弧状に湾曲している。この上刃付部13の曲率半径は、例えば28mmであるが、任意に変更してよい。
【0028】
図5の上刃体10の拡大図に示されるように、上本体部11は、外面10aと内面10bとを有する。内面10bは下刃体20の下本体部21と対向する位置に設けられ、外面10aは内面10bの逆側の面である。
【0029】
刃裏16は、刃先14から刃裏接続部16bまでの領域に形成された湾曲部16aと、刃裏16と上本体部11の内面10bとを接続する刃裏接続部16bを有する。湾曲部16a及び刃裏接続部16bは、刃先14から離れるにつれて鉛直方向に対する角度が大きくなるよう湾曲している。具体的には、湾曲部16aは円弧状に湾曲しており、その曲率半径は、好ましくは5mm以上50mm以下であり、より好ましくは30mm以下であり、さらに好ましくは15mm以下であり、例えば11.3mmである。刃裏接続部16bも円弧状に湾曲しており、その曲率半径は、0.1mm~2.0mmであり、例えば1.0mmである。刃裏接続部16bの曲率半径は、刃裏16の湾曲部16aの曲率半径より小さくなるよう形成されている。
【0030】
刃表15は、刃先14から鉛直方向に延びる第1刃表15a、第1刃表15aから連続する第2刃表15b、及び第2刃表15bと外面10aとを接続する第3刃表15cとを有する。第2刃表15bは、鉛直方向に対して鋭角を有する方向に延びる。第2刃表15bが上本体部11の外面10aに対して有する角度θ2は、好ましくは55°以上75°以下であり、より好ましくは60°以上70°以下であり、例えば65°である。第3刃表15cは円弧状に湾曲しており、その曲率半径は1.0mm以上4.0mm以下であり、例えば2.8mmである。
【0031】
外面10aと刃先14との距離L1は、例えば3.0mm以上6.0mm以下であり、例えば4.6mmである。
【0032】
刃先14の位置において、刃表15と刃裏16とがなす角度θ1、より具体的には第1刃表15aと湾曲部16aとがなす角度は、好ましくは20°以上35°以下であり、より好ましくは27°以上33°以下であり、例えば30°である。
【0033】
上記の刃表15と刃裏16とがなす角度θ1の測定は、上刃体10の断面において、刃裏16が形成する曲線で、刃先14の先端の点における接線と、刃表15の第1刃表15aとがなす角度を測定することにより行う。
【0034】
下刃体20は、上刃体10と概ね同じ形状であるが、上刃体10との噛み合わせの調整などのため、僅かに形状が異なる。
【0035】
下刃体20は、下本体部21及び下先端部22を含む。下本体部21は板状である。下先端部22は、下本体部21から連続して形成されており、下本体部21に対して上刃体10側に屈曲している。下先端部22には、刃付により鋭利に加工された下刃付部23が形成される。下刃付部23は、刃の先端となる刃先24を有する。
【0036】
ここで、上刃体10と下刃体20との形状の違いの理解のため、爪切り1の製造方法について概要を説明する。爪切りの製造方法としては周知であるため、詳細な説明は省略するが、爪切り1は以下のように製造される。
【0037】
まず、上刃体10及び下刃体20の基材となる刃体を準備する。この基材となる刃体は、上刃体10と下刃体20とで共通である。なお、加工前の基材となる刃体は、以下の工程を経て完成した上刃体10及び下刃体20の形状とはわずかに相違する。次に、上刃体10と下刃体20とを連結部11aで溶接して連結させる。次に、それぞれの先端部分に刃付けを行うことで刃先14及び24が形成される。このとき、刃先14と刃先24との表側の面は、刃付け前及び刃付け後のいずれにおいても同一面上に形成される。そのため、上刃体10の刃先14と、下刃体20の刃先24の刃付は、一度の刃付け加工により同時に行うことができる。次に、上刃体10の刃先14と下刃体20の刃先24とをわずかにズレさせて、使用時に刃先同士が接することを避けるための「かぶり」を形成するため、上刃体10と下刃体20との角度を「刃広げ」によりそれぞれ調整する。
【0038】
[爪切り1の使用]
図1の状態では、てこ31が倒伏しており、
図2の状態では、てこ31が支軸32に対して回動されて起立している。
図2のようにてこ31が起立した使用状態で、使用者によりてこ31が操作されて上刃体10の上本体部11が下刃体20の下本体部21側に押圧されると、上刃体10の上先端部12と下刃体20の下先端部22とが弾性力に抗して互いに近接し、刃先14と24とが接する状態となる。なお、上記のように、正確には刃先14と24とは僅かにズレた状態となる。使用者がてこ31に与える力を弱めると、弾性力により上刃体10の上先端部12と下刃体20の下先端部22とが互いに離間する。すなわち、操作部材30は、上先端部12の上刃付部13と、下先端部22の下刃付部23とを互いに近接及び離間させるよう操作するための部材である。
【0039】
[変形例]
図6は、実施形態の
図5に対応する、変形例における爪切りの上刃体110の刃先近傍の拡大図である。実施形態の上刃体10と比較すると、刃裏16に対応する本変形例の刃裏116は、湾曲部116a及び刃裏接続部116bの曲率半径、及び刃表15となす角度が相違する。以下、実施形態との相違点について具体的に説明する。
【0040】
刃裏116は、刃先14から刃裏接続部116bまでの領域に形成された湾曲部116aと、刃裏116と上本体部11の内面10bとを接続する刃裏接続部116bを有する。湾曲部116a及び刃裏接続部116bは、刃先14から離れるにつれて鉛直方向に対する角度が大きくなるよう湾曲している。具体的には、湾曲部116aは円弧状に湾曲しており、その曲率半径は、例えば7.6mmである。刃裏接続部116bも円弧状に湾曲しており、その曲率半径は、例えば1.0mmである。
【0041】
刃先14の位置において、刃表15と刃裏116とがなす角度、より具体的には第1刃表15aと湾曲部116aとがなす角度θ3は、例えば25°である。
【0042】
本発明は、実施形態及び変形例の構成に限定されるものではなく、実施形態及び変形例の構成に基づいて改変を加えたものも含む。
【0043】
[爪切りの評価]
上記実施形態の爪切り1、変形例の爪切り、及び参考例の爪切りを準備し、複数人で実際に使用して評価を行った。参考例の爪切りでは、刃表と刃裏とがなす角度を40°としたものを準備した。以下では、説明の便宜上、実施形態の爪切り1を爪切りA、変形例の爪切りを爪切りB、参考例の爪切りを爪切りCとして説明する。
【0044】
評価は、複数人で、爪を切ったときの切れ感の良さ、及び切れ味をそれぞれ、1.良い、2.まあ良い、3.少し悪い、及び4.悪い、の4段階で評価した。切れ感の良さは、爪を切ったときの切り口のきれいさ、切り離した爪の離れ易さ、及びバリの発生などを総合的に判断するものとした。切れ味は、軽い力で爪を切ることができる程度に基づいて判断するものとした。切れ感の良さ、及び切れ味は4段階の評価の平均値とした。すなわち、値が低いほど評価が高いこととなる。
【0045】
上記評価の結果、爪切りAは、切れ感の良さ:1.3、切れ味:2.0、爪切りBは、切れ感の良さ:1.4、切れ味:1.6、爪切りCは、切れ感の良さ:1.8、切れ味:2.2、となった。すなわち、切れ感の良さでは爪切りAが最も評価が高く、切れ味では爪切りBが最も評価が高くなった。これらの評価結果より、切れ味は爪切りBが最高であるものの、総合的には爪切りAが使用者に好まれるであろうことが判った。
【0046】
[爪切りの特徴]
上記のような実施形態及び変形例の爪切りでは、刃裏16が、上刃付部13の先端の刃先14から離れるにつれて鉛直方向に対する角度が大きくなるよう湾曲しており、上刃付部13の刃先14において、刃表15と刃裏16とがなす角度が20°以上35°以下となるよう構成している。このような構成にすることで、使用時の切断抵抗を減少させつつ、爪をスムーズに切断可能となる。また、刃裏16が直線状ではなく湾曲しており、刃先14から離れるにつれて上先端部12の厚みが増していく形状であるため、上刃体10がたわんだり破損したりすることを抑制可能となる。これにより、爪を切る機能として十分な性能を有しつつ、耐久性を高めた爪切りを提供できる。
【0047】
また、刃表15と刃裏16とがなす角度を27°以上33°以下にしているため、使用者が特にストレスなく爪を切ることができる構成となっている。
【0048】
また、刃裏16を、曲率半径が5mm以上50mm以下の円弧状に湾曲して形成しているため、刃先14を十分に鋭利にしつつ、刃先14の耐久性の十分に確保可能な構成となっている。
【0049】
また、上刃体10は、上先端部12が上本体部11に対して下刃体20側に屈曲している。刃表15において、刃先14を含み鉛直方向に水平に延びる第1刃表15aから連続するとともに鉛直方向に対して鋭角を有して直線状に延びた第2刃表15bは、上本体部11に対して55°以上75°以下の角度θ2をなすよう形成されている。このような構成により、刃体がたわんだり破損したりすることを抑制可能であって、かつ耐久性を高めた爪切りを、比較的容易な製造技術を採用しつつ提供できる。
【0050】
また、刃裏接続部16bが、刃裏16の湾曲部16aの曲率半径よりも小さい曲率半径を有するよう湾曲して形成されているため、比較的成形しやすく、かつ上本体部11と上先端部12との屈曲した接続部が応力により破損することを十分抑制可能な構成となっている。
【0051】
なお、実施形態でも説明したように、上記の各構成は上刃体10のみでなく、下刃体20にも適用され、上刃体10及び下刃体20を上記のような構成とすることが、より好ましい。ただし、上刃体10または下刃体20のみに上記構成を採用したとしても一定の効果が得られる。
【符号の説明】
【0052】
1…爪切り
10、110…上刃体
11…上本体部
12…上先端部
13…上刃付部
14…刃先
15…刃表
16、116…刃裏
16a、116a…湾曲部
16b、116b…刃裏接続部
20…下刃体
21…下本体部
22…下先端部
23…下刃付部
24…刃先
30…操作部材
31…てこ
32…支軸