(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131869
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】充電装置、充電方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/10 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H02J7/10 B
H02J7/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042357
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】322003732
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 孝太
(72)【発明者】
【氏名】辻本 直生
(72)【発明者】
【氏名】西井 和彦
(72)【発明者】
【氏名】三輪 達哉
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA02
5G503CA11
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】電池部の充電時間を短縮する。
【解決手段】充電装置2は、電動工具3に用いられる。充電装置2は、全固体電池を含む電池部5の充電を行う。充電装置2は、充電部21を備える。充電部21は、充電時における電池部5の電圧値が、満充電状態における電池部5の電圧値より大きい所定の電圧値となるまで、電池部5に対する定電流充電を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動工具に用いられ、全固体電池を含む電池部の充電を行う充電装置であって、
充電時における前記電池部の電圧値が、満充電状態における前記電池部の電圧値より大きい所定の電圧値となるまで、前記電池部に対する定電流充電を行う充電部を備える、
充電装置。
【請求項2】
前記充電部は、
充電時における前記電池部の電圧値が前記所定の電圧値となった後に、前記電池部の再充電を行い、
再充電において、前回の定電流充電の電流値より小さい電流値で、充電時における前記電池部の電圧値が前記所定の電圧値となるまで定電流充電を行う、
請求項1に記載の充電装置。
【請求項3】
前記電池部の電圧値は、前記充電部による定電流充電によって第1電圧値から前記所定の電圧値に上昇し、前記充電部による定電流充電が完了したときに前記所定の電圧値から第2電圧値に低下し、
前記第2電圧値は前記第1電圧値より大きい値であり、
前記充電部は、前回の定電流充電が完了したときの前記第2電圧値と1回目の定電流充電における前記第1電圧値との差、及び、前回の定電流充電の電流値、に基づく電流値で再充電を行う、
請求項2に記載の充電装置。
【請求項4】
前記充電部は、充電時における前記電池部の電圧値が前記所定の電圧値となった後に、所定の条件を満たすまで、前記電池部の再充電を繰り返し行い、
前記所定の条件は、定電流充電の電流値が前記所定の電流値より大きい電流値から前記所定の電流値以下の電流値となったときの再充電が完了することを含む、
請求項2に記載の充電装置。
【請求項5】
1以上のプロセッサによって実行され、電動工具に用いられ全固体電池を含む電池部を充電する充電方法であって、
充電時における前記電池部の電圧値が、満充電状態における前記電池部の電圧値より大きい所定の電圧値となるまで、前記電池部に対する定電流充電を行う、
充電方法。
【請求項6】
請求項5に記載の充電方法を、1以上のプロセッサに実行させるための、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に充電装置、充電方法及びプログラムに関し、より詳細には、電動工具に用いられる電池部に関する充電装置、充電方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動工具用の電池パックを充電する充電回路が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような充電回路(充電装置)では、電池パック(電池部)の充電時間を短縮することが望まれている。
【0005】
本開示は上記事由に鑑みてなされており、電池部の充電時間の短縮を図ることができる充電装置、充電方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る充電装置は、電動工具に用いられる。前記充電装置は、全固体電池を含む電池部の充電を行う。前記充電装置は、充電部を備える。前記充電部は、充電時における前記電池部の電圧値が、満充電状態における前記電池部の電圧値より大きい所定の電圧値となるまで、前記電池部に対する定電流充電を行う。
【0007】
本開示の一態様に係る充電方法は、1以上のプロセッサによって実行される。前記充電方法は、電動工具に用いられ全固体電池を含む電池部を、充電する方法である。前記充電方法では、充電時における前記電池部の電圧値が、満充電状態における前記電池部の電圧値より大きい所定の電圧値となるまで、前記電池部に対する定電流充電を行う。
【0008】
本開示の一態様に係るプログラムは、前記充電方法を、1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本開示の上記態様に係る充電装置、充電方法及びプログラムによれば、電池部の充電時間の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る充電システムの構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、同上の充電システムの外観を示す概略図である。
【
図3】
図3は、同上の充電システムが備える充電装置による充電方法を説明するための波形図である。
【
図4】
図4は、同上の充電装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に関する好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態において互いに共通する要素には同一符号を付しており、共通する要素についての重複する説明は省略する場合がある。以下の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、実施形態(変形例を含む)は、適宜組み合わせて実現されてもよい。
【0012】
本開示において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さのそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0013】
(1)概要
本実施形態に係る充電システム1の概要について、
図1を参照して説明する。
【0014】
本実施形態の充電装置2は、電池部5の充電を行う。電池部5は、電動工具3に用いられ、全固体電池を含む。より具体的には、本実施形態の電池部5は、複数の電池セルを有する。本実施形態の電池部5が有する複数の電池セルは、全て全固体電池セルである。
【0015】
充電装置2は、充電部21を備える。充電部21は、充電時における電池部5の電圧値が、満充電状態における電池部5の電圧値より大きい所定の電圧値となるまで、電池部5に対する定電流充電を行う。
【0016】
本開示でいう「電池部5の電圧値」は、電池部5(又は電池パック4)の端子間の電圧値、単電池セル間の電圧値、又は複数の電池セル間の電圧値である。本実施形態では、電池部5の電圧値は、電池部5(又は電池パック4)の端子間の電圧値である場合を例示する。また、「充電時における電池部5の電圧値」は、充電部21が電池部5に対する定電流充電を行っているときの電池部5の電圧値である。また、「満充電状態」は、SOC(State of Charge)が例えば100%である状態である。ただし、「満充電状態」は、SOCが例えば90%以上である状態等を含んでいてもよい。
【0017】
全固体電池を用いた電池部5は、例えばリチウムイオン電池を用いた電池部と比べて、大電流で充電が可能である。さらに、本実施形態の充電装置2によれば、電池部5の充電時の電圧値が満充電状態の電池部5の電圧値より大きい所定の電圧値となるまで電池部5に対する定電流充電を行うため、電池部5の充電時間の短縮を図ることができる。
【0018】
(2)詳細
以下、本実施形態に係る充電システム1の詳細な構成について、
図1~
図3を参照して説明する。
【0019】
(2.1)充電システムの構成
本実施形態の充電システム1は、例えば、工場におけるワークの組立作業を行う組立ラインに用いられる。
図1に示すように、充電システム1は、充電装置2と、電動工具3と、電池パック4と、を備える。本実施形態の充電システム1では、電動工具3に着脱可能な電池パック4を、充電装置2が充電する。なお、充電システム1が電池パック4を備えることは必須ではなく、充電システム1は、充電装置2と、電池部5が内蔵された電動工具3と、を備えていてもよい。また、充電システム1は、1つの充電装置2と、複数の電動工具3及び複数の電池パック4と、を備えていてもよい。
【0020】
(2.2)電動工具の構成
図2に示すように、本実施形態の電動工具3は、例えばインパクトドライバ等のインパクト回転工具である。本実施形態の電動工具3は、ユーザが片手で把持可能な電動工具である。ただし、電動工具3は、インパクト回転工具に限られず、ドリルドライバ又はハンマードリル等の他の電動工具であってもよい。
【0021】
本実施形態の電動工具3は、電池パック4を着脱することが可能に構成されている。なお、電動工具3が電池パック4を着脱可能に構成されていることは必須ではなく、電動工具3が電池パック4(又は電池部5)を内蔵している構成であってもよい。
【0022】
図1に示すように、電動工具3は、駆動部31を備える。電動工具3は、電池パック4の電池部5を動力源として、電池部5から供給される電力(電気エネルギ)で駆動部31を動作させる。
【0023】
駆動部31は、モータを有する。駆動部31は、動力源である電池部5からモータに供給される電力を動力として動作するように構成されている。また、駆動部31は、モータが動作するのに応じて回転する出力軸を有する。出力軸には、ネジ等の締付部品を回転させるためのドライバビットが、取外し可能に取り付けられる。電動工具3は、ドライバビットが締付部品の工具穴に嵌め合わされた状態でユーザがトリガを引くことで、ドライバビットが回転して締付部品を締め付ける又は緩めることができる。
【0024】
ユーザが作業を終了又は中断するときに、
図2に示すように電動工具3を充電装置2にセットすることで、電動工具3に取り付けられている電池パック4の電池部5が充電装置2によって充電される。なお、電動工具3に電池部5が内蔵されている場合も同様に、ユーザが作業を終了又は中断するときに電動工具3を充電装置2にセットすることで、電動工具3に内蔵されている電池部5が充電装置2によって充電される。
【0025】
(2.3)電池パックの構成
上述のように、本実施形態の電池パック4は、電動工具3に着脱可能に構成されている。なお、電池パック4は、電動工具3から取り外すことができない構成であってもよい。
図1に示すように、電池パック4は、電池部5を備える。
【0026】
本実施形態の電池部5は、例えば電池パック4のハウジングに収容されている。上述のように、本実施形態の電池部5は、複数の全固体電池セルを有する。本実施形態の複数の全固体電池セルは、所定方向において積層された複数のラミネートセル(パウチ型セル)である。
【0027】
全固体電池を用いた電池部5は、例えばリチウムイオン電池を用いた電池部と比べて、大電流で充電可能である。つまり、全固体電池とリチウムイオン電池とでは、電気容量が互いに同じである場合、全固体電池の方がリチウムイオン電池より早く充電することが可能である。
【0028】
また、電池パック4は、充電装置2からの給電を受ける受電端子を有する。受電端子は、高電位端子と低電位端子とを含む一対の端子を、少なくとも1組有する。電池部5の充電時において、高電位端子の電位は、低電位端子の電位より高い。充電装置2に電動工具3がセットされた状態において、電池パック4の受電端子と、充電装置2の給電端子とは機械的及び電気的に接続される。なお、本開示でいう「電気的に接続」とは、電気的に導通した状態の接続を意味し、直接的な接続だけでなく、例えば電線等の導体やブレーカやリレー(接続装置)を介した間接的な接続も含む。
【0029】
(2.4)充電装置の構成
充電装置2は、電池部5を充電することが可能な装置である。
図2に示すように、本実施形態の充電装置2は、電動工具3を固定可能に構成されている。つまり、ユーザが作業を終了又は中断するときに、電動工具3を充電装置2にセットすることで、電動工具3は充電装置2に固定される。なお、充電装置2が電動工具3を固定可能に構成されていることは必須ではなく、充電装置2は、電池パック4を固定可能に構成されていればよい。また、充電装置2は、複数の電動工具3又は複数の電池パック4をセットすることが可能に構成されていてもよい。
【0030】
充電装置2は、電池部5に電力を供給するための給電端子を有する。給電端子は、高電位端子と低電位端子とを含む一対の端子を、少なくとも1組有する。電池部5の充電時において、高電位端子の電位は、低電位端子の電位より高い。上述のように、充電装置2に電動工具3がセットされた状態において、充電装置2の給電端子と、電池パック4の受電端子と、は機械的及び電気的に接続される。より具体的には、充電装置2に電動工具3がセットされた状態において、給電端子の高電位端子と受電端子の高電位端子とが機械的及び電気的に接続され、給電端子の低電位端子と受電端子の低電位端子とが機械的及び電気的に接続される。
【0031】
図1に示すように、本実施形態の充電装置2は、電源部20と、充電部21と、電池検知部22と、電圧検知部23と、記憶部24と、制御部25と、を備える。
【0032】
電源部20は、外部電源と電気的に接続される。外部電源は、系統電源、太陽電池等の分散電源、及びポータブル電源等の可搬型電源を含む。本実施形態では、外部電源は系統電源である場合を例示する。
【0033】
電源部20は、外部電源からの電力を、充電装置2の各部(充電部21、電池検知部22、電圧検知部23、記憶部24、及び制御部25)に供給するための電力に変換して、充電装置2の各部に出力する。より具体的には、電源部20は、系統電源からの交流電力を、充電装置2の各部に供給するための直流電力に変換して、充電装置2の各部に出力する。
【0034】
電池検知部22は、充電部21と電池部5とが電気的に接続されているか否かを検知する。言い換えると、本実施形態の電池検知部22は、充電装置2に電動工具3がセットされたことを検知する。例えば、電池検知部22は、給電端子に設けられた接触センサであり、充電装置2が有する給電端子と電池パック4とが有する受電端子との機械的な接続を検知する。
【0035】
電圧検知部23は、電池パック4の電池部5の電圧値を検知する。本実施形態の電圧検知部23は、充電装置2に電動工具3がセットされている状態において、電池部5の電圧値を検知する。例えば電圧検知部23は、給電端子の高電位端子と低電位端子とに電気的に接続されており、高電位端子と低電位端子との電位差を検知することで、電池部5の電圧値を検知する。
【0036】
記憶部24は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、又はEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の半導体メモリである。また、記憶部24は、制御部25のメモリでもよい。また、記憶部24は、充電装置2に対して取外し可能に装着されるメモリカード等の記録媒体であってもよい。
【0037】
記憶部24は、電圧検知部23が検知した電池部5の電圧値の情報を記憶している。記憶部24は、条件決定部251が決定した充電条件の情報を記憶している。
【0038】
制御部25は、例えば、1以上のプロセッサ(マイクロプロセッサ)と1以上のメモリとを含むコンピュータシステムにより実現され得る。1以上のプロセッサが1以上のメモリに記憶された1以上のプログラムを実行することで、制御部25として機能する。プログラムは、ここでは制御部25のメモリに予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0039】
制御部25は、充電装置2の動作を制御する。つまり、制御部25は、充電部21、電池検知部22、電圧検知部23、及び記憶部24の動作を制御する。
図1に示すように、制御部25は、条件決定部251と、充電制御部252と、を有する。
【0040】
条件決定部251は、充電制御部252が行う充電制御の充電条件を決定する。また、条件決定部251は、制御指令を充電制御部252に出力する。また、条件決定部251は、決定した充電条件の情報を、記憶部24に記憶させる。制御指令は、充電の開始又は停止の指令である。制御指令が充電の開始の指令である場合には、制御指令は、充電条件を含む。充電条件は、充電電流の電流値の条件を含む。
【0041】
条件決定部251は、電池検知部22の検知結果に基づいて、充電を開始させるか否かの判断を行う。条件決定部251は、充電装置2に電動工具3がセットされたことを電池検知部22が検知した場合に、電池部5の充電を開始させると判断する。
【0042】
条件決定部251は、1回目の充電における充電電流の電流値を設定する。1回目の充電における充電電流の電流値は、あらかじめ設定された値であってもよいし、電池部5の電圧値に基づいて条件決定部251が設定してもよい。本実施形態では、1回目の充電における充電電流の電流値は、あらかじめ設定された値である。
【0043】
条件決定部251は、電圧検知部23が検知した電圧値の情報に基づいて、充電を停止させるか否かの判断を行う。言い換えると、条件決定部251は、充電時における電池部5の電圧値に基づいて、充電を停止させるか否かの判断を行う。より具体的には、条件決定部251は、充電時における電池部5の電圧値が所定の電圧値となったか否かに基づいて、充電を停止させるか否かの判断を行う。条件決定部251は、充電時における電池部5の電圧値が所定の電圧値以上である場合に、電池部5の充電を停止させると判断し、充電の停止の指令(制御指令)を充電制御部252に出力する。
【0044】
本実施形態の条件決定部251は、充電時における電池部5の電圧値が所定の電圧値となった後に、電池部5の再充電を少なくとも1回行わせる。本開示でいう「再充電」は、充電装置2に電動工具3がセットされた後に、電池部5に対して行われる2回目以降の定電流充電のことである。条件決定部251は、再充電における充電電流の電流値を、前回の定電流充電における充電電流の電流値より小さい値に設定する。
【0045】
ここで、電池部5の電圧値は、充電部21による定電流充電によって第1電圧値から所定の電圧値に上昇する。そして、電池部5の電圧値は、充電部21による定電流充電が完了したときに、充電電流と電池部5(又は電池パック4)の内部抵抗とに基づく電圧降下により、所定の電圧値から第2電圧値に低下する。第2電圧値は、第1電圧値より大きい値である。
【0046】
条件決定部251は、前回の定電流充電が完了したときの第2電圧値と1回目の定電流充電における第1電圧値との差、及び、前回の定電流充電における充電電流の電流値、に基づいて再充電における充電電流の電流値を設定する。より具体的には、本実施形態の条件決定部251は、以下の式(1)を用いて、再充電における充電電流の電流値を設定する。
【0047】
[数1]
In+1=In-α×ΔVn 式(1)
式(1)中のIn+1は、再充電(n+1回目の定電流充電)における充電電流の電流値である。Inは、前回(n回目)の定電流充電における充電電流の電流値である。αは係数であり、正の定数又は正の値となる関数である。ΔVnは、前回(n回目)の定電流充電が完了したときの第2電圧値と、1回目の定電流充電における第1電圧値との差である。つまりΔVnは、n回の充電で、電池部5の初期電圧からどれだけ電圧が高くなったのかを示す。言い換えると、ΔVnは、n回の充電での電圧上昇量である。
【0048】
条件決定部251は、電圧検知部23が検知した電圧値の情報に基づいて、再充電を停止させるか否かの判断を行う。言い換えると、条件決定部251は、再充電時における電池部5の電圧値に基づいて、再充電を停止させるか否かの判断を行う。より具体的には、条件決定部251は、再充電時における電池部5の電圧値が所定の電圧値となったか否かに基づいて、再充電を停止させるか否かの判断を行う。条件決定部251は、再充電時における電池部5の電圧値が所定の電圧値以上である場合に、電池部5の再充電を停止させると判断し、再充電の停止の指令(制御指令)を充電制御部252に出力する。
【0049】
条件決定部251は、充電時における電池部5の電圧値が所定の電圧値となった後に、所定の条件を満たすまで、電池部5の再充電を繰り返し行わせる。所定の条件は、前回の充電時における充電電流の電流値が、所定の電流値より大きい電流値から所定の電流値以下の電流値となったときの再充電が完了することである。つまり、条件決定部251は、充電時における充電電流の電流値が所定の電流値以下の電流値である再充電が完了した後には、電池部5の再充電を行わせない。
【0050】
充電制御部252は、条件決定部251が出力する制御指令に基づいて、充電部21の制御を行う。
【0051】
充電部21は、充電装置2に電動工具3がセットされた状態において、充電装置2が有する給電端子及び電池パック4が有する受電端子等を介して、電池部5と電気的に接続される。充電部21は、電池パック4の電池部5を充電することが可能に構成されている。充電部21は、電源部20からの直流電力を電池部5に供給するための直流電力に変換して電池部5に出力する。本実施形態の充電部21は、充電制御部252による制御に基づいて、電池部5に対して定電流充電を行う。
【0052】
充電部21は、充電制御部252による制御に基づいて、充電時における電池部5の電圧値が所定の電圧値となった後に、電池部5の再充電を行う。充電部21は、充電制御部252による制御に基づいて、前回の定電流充電の電流値より小さい電流値で、充電時における電池部5の電圧値が所定の電圧値となるまで再充電を行う。
【0053】
本実施形態の充電装置2によれば、電流値を下げて再充電を行うことで充電完了時の電圧降下を小さくすることができ、充電完了時の電圧値を目標の電圧値(満充電状態における電圧値)に近付けることができる。つまり、本実施形態の充電装置2によれば、容易な制御方法で、電池部5に対する充電の制御を行うことができる。
【0054】
充電部21は、充電制御部252による制御に基づいて、前回の定電流充電が完了したときの第2電圧値と1回目の定電流充電における第1電圧値との差、及び、前回の定電流充電の電流値、に基づく電流値で再充電を行う。
【0055】
本実施形態の充電装置2によれば、電圧上昇量と前回の充電時の電流値とに基づく電流値にて再充電を行うため、適切な電流値で再充電を行うことができる。
【0056】
充電部21は、充電制御部252による制御に基づいて、充電時における電池部5の電圧値が所定の電圧値となった後に、所定の条件を満たすまで、電池部5の再充電を繰り返し行う。
【0057】
本実施形態の充電装置2によれば、所定の条件を満たすまで、電流値を下げての再充電を繰り返し行うことで、充電完了時の電圧値を目標の電圧値(満充電状態における電圧値)に近付けることができる。つまり、本実施形態の充電装置2によれば、容易な制御方法で、電池部5に対する充電の制御を行うことができる。
【0058】
図3は、充電装置2に電動工具3がセットされてから電池部5が満充電状態になるまでの電池部5の電圧値及び充電電流の電流値の推移を示す図である。
図3中のグラフG1は、電池部5の電圧値の推移を示す電圧波形である。グラフG2は、充電電流の電流値の推移を示す電流波形である。ここで、
図3の例では、電池部5の初期電圧値はV
sであり、所定の電圧値はV
mであり、満充電状態における電池部5の電圧値はV
5であり、所定の電流値はI
5である。
【0059】
まず、タイミングt0にて、充電装置2に電動工具3がセットされたとする。電池検知部22は、タイミングt0と略同時のタイミングにて、充電装置2に電動工具3がセットされたことを検知する。充電部21は、タイミングt1にて、電池検知部22の検知結果に基づいて、電池部5の充電を開始する。
図3の例では、電池部5の初期電圧値はV
sである。つまり、1回目の充電における第1電圧値はV
sである。充電部21は、タイミングt1と、電池部5の電圧値が所定の電圧値となるタイミングt2との間の期間において、1回目の定電流充電を行う。1回目の定電流充電が完了したとき、つまりタイミングt2の直後のタイミングにて、電池部5の電圧値は、V
mからV
1に下がる。
図3の例では、1回目の定電流充電の電流値はI
1であり、1回目の定電流充電の第2電圧はV
1である。V
1は、V
sより大きい値である。
【0060】
1回目の定電流充電の電流値であるI
1は、所定の電流値であるI
5より大きいため、充電部21は電池部5の再充電を行う。充電部21は、タイミングt3と、電池部5の電圧値が所定の電圧値となるタイミングt4との間の期間において、2回目の定電流充電を行う。2回目の定電流充電が完了したとき、つまりタイミングt4の直後のタイミングにて、電池部5の電圧値は、V
mからV
2に下がる。
図3の例では、2回目の定電流充電の電流値はI
2であり、第1電圧はV
1であり、第2電圧はV
2である。I
2は、I
1とΔV
1(つまりV
1-V
s)とに基づく値であり、I
1より小さい値である。V
2は、V
1より大きい値である。
【0061】
2回目の定電流充電の電流値であるI
2は、所定の電流値であるI
5より大きいため、充電部21は電池部5の再充電を行う。充電部21は、タイミングt5と、電池部5の電圧値が所定の電圧値となるタイミングt6との間の期間において、3回目の定電流充電を行う。3回目の定電流充電が完了したとき、つまりタイミングt6の直後のタイミングにて、電池部5の電圧値は、V
mからV
3に下がる。
図3の例では、3回目の定電流充電の電流値はI
3であり、第1電圧はV
2であり、第2電圧はV
3である。I
3は、I
2とΔV
2(つまりV
2-V
s)とに基づく値であり、I
2より小さい値である。V
3は、V
2より大きい値である。
【0062】
3回目の定電流充電の電流値であるI
3は、所定の電流値であるI
5より大きいため、充電部21は電池部5の再充電を行う。充電部21は、タイミングt7と、電池部5の電圧値が所定の電圧値となるタイミングt8との間の期間において、4回目の定電流充電を行う。4回目の定電流充電が完了したとき、つまりタイミングt8の直後のタイミングにて、電池部5の電圧値は、V
mからV
4に下がる。
図3の例では、4回目の定電流充電の電流値はI
4であり、第1電圧はV
3であり、第2電圧はV
4である。I
4は、I
3とΔV
3(つまりV
3-V
s)とに基づく値であり、I
3より小さい値である。V
4は、V
3より大きい値である。
【0063】
4回目の定電流充電の電流値であるI
4は、所定の電流値であるI
5より大きいため、充電部21は電池部5の再充電を行う。充電部21は、タイミングt9と、電池部5の電圧値が所定の電圧値となるタイミングt10との間の期間において、5回目の定電流充電を行う。5回目の定電流充電が完了したとき、つまりタイミングt10の直後のタイミングにて、電池部5の電圧値は、V
mからV
5に下がる。
図3の例では、5回目の定電流充電の電流値はI
5であり、第1電圧はV
4であり、第2電圧はV
5である。I
5は、I
4とΔV
4(つまりV
4-V
s)とに基づく値であり、I
4より小さい値である。V
5は、V
4より大きい値である。
【0064】
5回目の定電流充電の電流値であるI5は、所定の電流値であるI5と等しいため、充電部21は電池部5の充電を完了する。なお、5回目の充電が完了したときの電池部5の電圧値であるV5は、満充電状態における電池部5の電圧値である。
【0065】
(3)充電システムの動作
次に、
図4を参照して充電システム1が備える充電装置2の動作について説明する。
図4は、充電装置2が行う充電方法の一例を示すフローチャートである。
【0066】
まず、充電装置2は、電池部5を検知したか否か、つまり充電装置2に電動工具3(又は電池パック4)がセットされたか否かを判断する(S1)。充電装置2は、充電装置2に電動工具3がセットされていない判断した場合(S1:No)、ステップS1の処理を繰り返す。充電装置2は、充電装置2に電動工具3がセットされていると判断した場合(S1:Yes)、充電電流の電流値を設定する(S2)。そして、充電装置2は、定電流充電を開始する(S3)。
【0067】
次に、充電装置2は、電池部5の電圧値が所定の電圧値以上になったか否かを判断する(S4)。充電装置2は、電池部5の電圧値が所定の電圧値未満であると判断した場合(S4:No)、ステップS4の処理を繰り返す。一方で、充電装置2は、電池部5の電圧値が所定の電圧値以上であると判断した場合(S4:Yes)、定電流充電を終了する(S5)。
【0068】
次に、充電装置2は、ステップS2にて設定した電流値が所定の電流値以下であるか否かを判断する(S6)。充電装置2は、ステップS2にて設定した電流値が所定の電流値より大きいと判断した場合(S6:No)、ステップS2~ステップS6の処理をもう1度繰り返す。一方で、充電装置2は、ステップS2にて設定した電流値が所定の電流値以下であると判断した場合(S6:Yes)、電池部5の充電を終了する。
【0069】
なお、
図4に示すフローチャートは、一例に過ぎず、処理の順番が適宜変更されてもよいし、処理が適宜追加又は削除されてもよい。
【0070】
(4)変形例
以下、上記実施形態の変形例を列挙する。
【0071】
実施形態1に係る充電システム1(又は充電装置2)と同等の機能は、充電方法、(コンピュータ)プログラム、又はプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化されてもよい。一態様に係る充電方法は、1以上のプロセッサによって実行される。充電方法は、電動工具3に用いられ全固体電池を含む電池部5を、充電する方法である。充電方法では、充電時における電池部5の電圧値が、満充電状態における電池部5の電圧値より大きい所定の電圧値となるまで、電池部5に対する定電流充電を行う。一態様に係るプログラムは、上記の充電方法を、1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【0072】
本開示における充電システム1(又は充電装置2)又は充電方法の実行主体は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における充電システム1又は充電方法の実行主体としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1又は複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1又は複数の電子回路で構成される。
【0073】
また、充電システム1における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは充電システム1に必須の構成ではなく、充電システム1の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、充電システム1の少なくとも一部の機能、例えば、充電装置2の一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0074】
上記実施形態では、条件決定部251が式(1)に基づいて再充電における充電電流の電流値を設定する場合を例示した。しかし、再充電における充電電流の電流値は、再充電の回数に応じてあらかじめ設定された値であってもよい。
【0075】
電池部5が電動工具3に内蔵される場合、電動工具3は、充電装置2の給電端子と機械的及び電気的に接続される受電端子を備える。
【0076】
上記実施形態では、電池部5が複数の電池セルを有する場合を例示したが、電池部5が有する電池セルは1つのみであってもよい。つまり、電池部5は、電池セルとして1つの全固体電池セルのみを有する構成であってもよい。
【0077】
上記実施形態では、全固体電池セルがラミネートセル(パウチ型セル)である場合を例示したが、全固体電池セルは、円筒型セル(ボタン型セルを含む)又は角型セルであってもよい。
【0078】
(まとめ)
以上述べた実施形態から明らかなように、第1の態様に係る充電装置(2)は、電動工具(3)に用いられる。充電装置(2)は、全固体電池を含む電池部(5)の充電を行う。充電装置(2)は、充電部(21)を備える。充電部(21)は、充電時における電池部(5)の電圧値が、満充電状態における電池部(5)の電圧値より大きい所定の電圧値となるまで、電池部(5)に対する定電流充電を行う。
【0079】
この態様によれば、リチウムイオン電池と比較して大電流で充電可能な全固体電池を含む電池部(5)の充電時に、充電時の電圧値が満充電状態の電圧値より大きい所定の電圧値となるまで電池部(5)に対する定電流充電を行うため、電池部(5)の充電時間の短縮を図ることができる。
【0080】
第2の態様に係る充電装置(2)では、第1の態様において、充電部(21)は、充電時における電池部(5)の電圧値が所定の電圧値となった後に、電池部(5)の再充電を行う。充電部(21)は、再充電において、前回の定電流充電の電流値より小さい電流値で、充電時における電池部(5)の電圧値が所定の電圧値となるまで定電流充電を行う。
【0081】
この態様によれば、容易な制御方法で、電池部(5)に対する充電の制御を行うことができる。
【0082】
第3の態様に係る充電装置(2)では、第2の態様において、電池部(5)の電圧値は、充電部(21)による定電流充電によって第1電圧値から所定の電圧値に上昇する。電池部(5)の電圧値は、充電部(21)による定電流充電が完了したときに所定の電圧値から第2電圧値に低下する。第2電圧値は第1電圧値より大きい値である。充電部(21)は、前回の定電流充電が完了したときの第2電圧値と1回目の定電流充電における第1電圧値との差、及び、前回の定電流充電の電流値、に基づく電流値で再充電を行う。
【0083】
この態様によれば、電圧上昇量と前回の充電時の電流値とに基づく電流値にて再充電を行うため、適切な電流値で再充電を行うことができる。
【0084】
第4の態様に係る充電装置(2)では、第2又は第3の態様において、充電部(21)は、充電時における電池部(5)の電圧値が所定の電圧値となった後に、所定の条件を満たすまで、電池部(5)の再充電を繰り返し行う。所定の条件は、定電流充電の電流値が所定の電流値より大きい電流値から所定の電流値以下の電流値となったときの再充電が完了することを含む。
【0085】
この態様によれば、容易な制御方法で、電池部(5)に対する充電の制御を行うことができる。
【0086】
第1の態様以外の構成については、充電装置(2)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【0087】
第5の態様に係る充電方法は、1以上のプロセッサによって実行される。充電方法は、電動工具(3)に用いられ全固体電池を含む電池部(5)を、充電する方法である。充電方法では、充電時における電池部(5)の電圧値が、満充電状態における電池部(5)の電圧値より大きい所定の電圧値となるまで、電池部(5)に対する定電流充電を行う。
【0088】
この態様によれば、リチウムイオン電池と比較して大電流で充電可能な全固体電池を含む電池部(5)の充電時に、充電時の電圧値が満充電状態の電圧値より大きい所定の電圧値となるまで電池部(5)に対する定電流充電を行うため、電池部(5)の充電時間の短縮を図ることができる。
【0089】
第6の態様に係るプログラムは、第5の態様に係る充電方法を、1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【0090】
この態様によれば、リチウムイオン電池と比較して大電流で充電可能な全固体電池を含む電池部(5)の充電時に、充電時の電圧値が満充電状態の電圧値より大きい所定の電圧値となるまで電池部(5)に対する定電流充電を行うため、電池部(5)の充電時間の短縮を図ることができる。
【符号の説明】
【0091】
2 充電装置
21 充電部
3 電動工具
5 電池部