(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131876
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H01L25/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042367
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】森永 雄司
(57)【要約】
【課題】寄生インダクタンスの低減化を図るとともに半導体チップ同士の熱の干渉を抑制する。
【解決手段】
4個の半導体チップQ1~Q4、4枚の第4配線パターン10~40、第1、第2電源端子51,52、第1、第2中点端子61,62を備え、半導体チップQ1及び半導体チップQ3をハイサイドとし、半導体チップQ2及び半導体チップQ4をローサイドとするブリッジ回路が構成されている半導体モジュール1であって、配線パターン10の凹部12には、第1斜辺21及び第2斜辺22を有する凸部23が形成された配線パターン20が配置され、配線パターン30,40には、第1斜辺21及び第2斜辺22に平行な斜辺31,41が形成されており、各斜辺31,41に沿って半導体チップQ2,Q4が斜め配置されている。配線パターン20は、中点端子61,62から電源端子52への電流経路として機能する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1~第4半導体チップ、第1~第4配線パターン、第1電源端子、第2電源端子、第1中点端子及び第2中点端子を備え、前記第1半導体チップ及び前記第3半導体チップをハイサイドとし、前記第2半導体チップ及び前記第4半導体チップをローサイドとするブリッジ回路が構成されている半導体モジュールであって、
前記第1配線パターンには前記第1電源端子が接続されるとともに前記第1半導体チップ及び前記第3半導体チップが搭載され、前記第2配線パターンには前記第2電源端子が接続され、前記第3配線パターンには前記第1中点端子が接続されるとともに前記第2半導体チップが搭載され、前記第4配線パターンには前記第2中点端子が接続されるとともに前記第4半導体チップが搭載されており、
前記第1配線パターンは、当該第1配線パターンの複数の辺のうちの1つの辺を当該第1配線パターンの第1辺としたとき、当該第1辺の所定範囲には、前記第1配線パターンを平面視したときに凹形状をなす凹部が形成され、当該凹部を挟み、かつ、当該凹部に隣接した位置に前記第1半導体チップ及び前記第3半導体チップが搭載されており、
前記第2配線パターンは、前記第1配線パターンの前記凹部によって三方が囲まれ、一部が当該凹部の開口から外方に突出するように配置され、少なくとも前記凹部から突出する部分には、第1斜辺及び第2斜辺を有する先細り形状の凸部が形成されており、
前記第3配線パターン及び前記第4配線パターンは、前記第1配線パターンの前記第1辺における一方の端部から他方の端部に沿って配置されており、
前記第3配線パターンには前記先細り形状の凸部が有する前記第1斜辺に沿った斜辺が形成され、前記第4配線パターンには前記先細り形状の凸部が有する前記第2斜辺に沿った斜辺が形成されており、
前記第1~第4半導体チップはそれぞれが少なくとも第1電極及び第2電極を有し、
前記第1半導体チップは、当該第1半導体チップの複数の辺のうちの1つの辺を当該第1半導体チップの第1辺としたとき、当該第1半導体チップの第1辺が前記第1配線パターンの第1辺に沿って配置され、当該第1半導体チップが有する前記第1電極が第1接続部材を介して前記第3配線パターンに接続されており、
前記第2半導体チップは、当該第2半導体チップの複数の辺のうちの1つの辺を当該第2半導体チップの第1辺としたとき、当該第2半導体チップの第1辺が前記第3配線パターンに形成されている前記斜辺に沿って配置され、当該第2半導体チップが有する前記第1電極が第2接続部材を介して前記第2配線パターンに接続されており、
前記第3半導体チップは、当該第3半導体チップの複数の辺のうちの1つの辺を当該第3半導体チップの第1辺としたとき、当該第3半導体チップの第1辺が前記第1配線パターンの第1辺に沿って配置され、当該第3半導体チップが有する前記第1電極が第3接続部材を介して前記第4配線パターンに接続されており、
前記第4半導体チップは、当該第4半導体チップの複数の辺のうちの1つの辺を当該第4半導体チップの第1辺としたとき、当該第4半導体チップの第1辺が前記第4配線パターンに形成されている前記斜辺に沿って配置され、当該第4半導体チップが有する前記第1電極が第4接続部材を介して前記第2配線パターンに接続されていることを特徴とする半導体モジュール。
【請求項2】
前記第1電源端子と前記第2電源端子とは隣接して配置されているとともに前記第1中点端子と前記第2中点端子とは隣接して配置されており、
前記第1電源端子及び前記第2電源端子、前記第1中点端子及び前記第2中点端子は、前記第1電源端子のアウターリード部及び前記第2電源端子のアウターリード部と、前記第1中点端子のアウターリード部及び前記第2中点端子のアウターリード部とが、前記第2配線パターンを挟んで半導体モジュール反対側に位置するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
第1電源端子、前記第2電源端子、前記第1中点端子及び前記第2中点端子の少なくとも1つの端子のインナーリード部は、前記半導体モジュールに形成されている他の端子のインナーリード部に比べて幅広となっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
前記第1接続部材は、前記第1半導体チップの第1辺の側から当該第1半導体チップの第1辺に直交するように延出して前記第3配線パターンに接続され、
前記第2接続部材は、前記第2半導体チップの第1辺の側から当該第2半導体チップの第1辺に直交するように延出して前記第2配線パターンに接続され、
前記第3接続部材は、前記第3半導体チップの第1辺の側から当該第3半導体チップの第1辺に直交するように延出して前記第4配線パターンに接続され、
前記第4接続部材は、前記第4半導体チップの第1辺の側から当該第4半導体チップの第1辺に直交するように延出して前記第2配線パターンに接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の半導体チップからブリッジ回路を構成することが広く行われている。ブリッジ回路において、回路内の寄生インダクタンスが要因で損失やリンギングが発生することがある。特に、半導体チップとしてワイドバンドギャップ半導体を使用する場合においては、その高スルーレートと高い動作周波数により、回路内の寄生インダクタンスが要因で損失やリンギングが発生し易い。寄生インダクタンスは、配線経路長(電流経路長ともいう。)に大きく依存するので、寄生インダクタンスを低減するためにモジュール化することも考えられる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、単にモジュール化しただけでは寄生インダクタンスの低減効果は不十分であり、これが問題となっていた。すなわち、特許文献1に開示されている半導体装置900においては、第1半導体チップQ1及び第4半導体チップQ4がともにオンのときの電流経路は、
図10の実線Aで示すように、第1電源端子911から第1半導体チップQ1を通り、第1中点端子921から図示しない負荷を通った後に、第2中点端子922から第4半導体チップQ4を通って第2電源端子912に至る経路である。
【0004】
一方、第3半導体チップQ3及び第2半導体チップQ2がともにオンのときの電流経路は、
図10の破線Bで示すように、第1電源端子911から第3半導体チップQ3を通り、第2中点端子922から図示しない負荷を通った後に、第1中点端子921から第2半導体チップQ2を通って第2電源端子912に至る経路である。
【0005】
なお、第1半導体チップQ1及び第4半導体チップQ4がともにオンのときは第3半導体チップQ3及び第2半導体チップQ2はともにオフしており、第3半導体チップQ3及び第2半導体チップQ2がともにオンのときは第1半導体チップQ1及び第4半導体チップQ4はともにオフしているが、オフしていることの記載は以下の説明においては省略する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されている半導体装置900においては、
図10に示すように、第1半導体チップQ1及び第4半導体チップQ4がともにオンしたときの電流経路(実線A)並びに第3半導体チップQ3及び第2半導体チップQ2がともにオンしたときの電流経路(破線B)は、いずれも長いものとなる。このため、特許文献1に開示されている半導体装置においては、寄生インダクタンスが増大してしまうといった問題がある。
【0008】
また、寄生インダクタンスの問題に加えて、第1~第4半導体チップQ1~Q4の発熱による半導体チップ同士の熱の干渉も問題となる。これに対処するためには、半導体チップ同士の熱が干渉しないように、各半導体チップの間隔が広くなるように配置する必要があるが、各半導体チップの間隔を広くすると、電流経路が長くなり、寄生インダクタンスが増大するという問題が生じてしまう。特に、特許文献1に開示されている半導体装置900においては、第2半導体チップQ2と第4半導体チップQ4とが隣接して平行配置されているため、これら第2、第4半導体チップQ2,Q4同士の熱の干渉が生じやすいものとなる。
【0009】
そこで、本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、寄生インダクタンスの低減化を図るとともに、半導体チップ同士の熱の干渉を抑制することができる半導体モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の半導体モジュールは、第1~第4半導体チップ、第1~第4配線パターン、第1電源端子、第2電源端子、第1中点端子及び第2中点端子を備え、前記第1半導体チップ及び前記第3半導体チップをハイサイドとし、前記第2半導体チップ及び前記第4半導体チップをローサイドとするブリッジ回路が構成されている半導体モジュールであって、前記第1配線パターンには前記第1電源端子が接続されるとともに前記第1半導体チップ及び前記第3半導体チップが搭載され、前記第2配線パターンには前記第2電源端子が接続され、前記第3配線パターンには前記第1中点端子が接続されるとともに前記第2半導体チップが搭載され、前記第4配線パターンには前記第2中点端子が接続されるとともに前記第4半導体チップが搭載されており、前記第1配線パターンは、当該第1配線パターンの複数の辺のうちの1つの辺を当該第1配線パターンの第1辺としたとき、当該第1辺の所定範囲には、前記第1配線パターンを平面視したときに凹形状をなす凹部が形成され、当該凹部を挟み、かつ、当該凹部に隣接した位置に前記第1半導体チップ及び前記第3半導体チップが搭載されており、前記第2配線パターンは、前記第1配線パターンの前記凹部によって三方が囲まれ、一部が当該凹部の開口から外方に突出するように配置され、少なくとも前記凹部から突出する部分には、第1斜辺及び第2斜辺を有する先細り形状の凸部が形成されており、前記第3配線パターン及び前記第4配線パターンは、前記第1配線パターンの前記第1辺における一方の端部から他方の端部に沿って配置されており、前記第3配線パターンには前記先細り形状の凸部が有する前記第1斜辺に沿った斜辺が形成され、前記第4配線パターンには前記先細り形状の凸部が有する前記第2斜辺に沿った斜辺が形成されており、前記第1~第4半導体チップはそれぞれが少なくとも第1電極及び第2電極を有し、前記第1半導体チップは、当該第1半導体チップの複数の辺のうちの1つの辺を当該第1半導体チップの第1辺としたとき、当該第1半導体チップの第1辺が前記第1配線パターンの第1辺に沿って配置され、当該第1半導体チップが有する前記第1電極が第1接続部材を介して前記第3配線パターンに接続されており、前記第2半導体チップは、当該第2半導体チップの複数の辺のうちの1つの辺を当該第2半導体チップの第1辺としたとき、当該第2半導体チップの第1辺が前記第3配線パターンに形成されている前記斜辺に沿って配置され、当該第2半導体チップが有する前記第1電極が第2接続部材を介して前記第2配線パターンに接続されており、前記第3半導体チップは、当該第3半導体チップの複数の辺のうちの1つの辺を当該第3半導体チップの第1辺としたとき、当該第3半導体チップの第1辺が前記第1配線パターンの第1辺に沿って配置され、当該第3半導体チップが有する前記第1電極が第3接続部材を介して前記第4配線パターンに接続されており、前記第4半導体チップは、当該第4半導体チップの複数の辺のうちの1つの辺を当該第4半導体チップの第1辺としたとき、当該第4半導体チップの第1辺が前記第4配線パターンに形成されている前記斜辺に沿って配置され、当該第4半導体チップが有する前記第1電極が第4接続部材を介して前記第2配線パターンに接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の半導体モジュールにおいては、第1半導体チップから第1中点端子までの配線経路に配置されている第3配線パターン上に第2半導体チップを搭載し、当該第2半導体チップを第2接続部材で第2配線パターンに接続している。また、第3配線パターンの一部の辺には、第2配線パターンの先細り形状の凸部の第1斜辺に沿った斜辺が形成されており、第2半導体チップも当該斜辺に沿って配置されている。これにより、第2半導体チップと第2配線パターンとを第2接続部材で最短で接続することができるため、第2半導体チップを通る電流経路である第1中点端子から第2電源端子までの配線長が短くなり、それによって寄生インダクタンスが低減される。
【0012】
同様に、第3半導体チップから第2中点端子までの配線経路に配置されている第4配線パターン上に第4半導体チップを搭載し、当該第4半導体チップを第4接続部材で第2配線パターンに接続している。また、第4配線パターンの一部の辺には、第2配線パターンの先細り形状の凸部の第2斜辺に沿った斜辺が形成されており、第4半導体チップも当該斜辺に沿って配置されている。これにより、第4半導体チップと第2配線パターンとを第4接続部材で最短で接続することができるため、第4半導体チップを通る電流経路である第2中点端子から第2電源端子までの配線長が短くなり、それによって寄生インダクタンスが低減される。
【0013】
また、本発明の半導体モジュールにおいては、半導体チップ同士の熱の干渉の抑制という点においても効果が得られる。特に、第2半導体チップと第4半導体チップとは、それぞれが搭載される配線パターンの各斜辺に沿った斜め配置となることにより、これら半導体チップ(第2半導体チップ及び第4半導体チップ)が隣接して平行配置される場合に比べて互いの間隔が広くなる。このため、それぞれが発する熱が放散し易くなり、半導体チップ同士の熱の干渉を受けにくくなり、半導体チップ同士の熱の干渉を抑制することができる。
【0014】
具体的には、第2半導体チップが搭載される第3配線パターンと第4半導体チップが搭載される第4配線パターンとが互いに隣接するそれぞれの隣接辺を第3配線パターン側の隣接辺及び第4配線パターン側の隣接辺としたとき、第2半導体チップと第3配線パターン側の隣接辺との間隔が広くなるとともに、第4半導体チップと第4配線パターン側の隣接辺との間隔とが広くなる。これにより、半導体チップQ2と半導体チップQ4との間隔は、第2半導体チップと第4半導体チップとが隣接した平行配置となっている場合に比べて広いものとなる。
【0015】
これを、後述する実施形態の説明において用いる
図2を参照して簡単に説明すると(詳細は後述する実施形態において説明する。)、第2半導体チップQ2の辺b1(第1長辺b1)と第3配線パターン30側の隣接辺33(右辺33)との間隔は、第2半導体チップQ2の辺a2(第2短辺a2)側に向かうに従って広がって行くこととなる。第4半導体チップQ4も同様に、当該第4半導体チップQ4の辺b2(第2長辺b2)と第4配線パターン40側の隣接辺43(左辺43)との間隔は、第4半導体チップQ4の辺a2(第2短辺a2)側に向かうに従って広がって行くこととなる。
【0016】
このため、第2半導体チップQ2と第4半導体チップQ4との間隔は、第2半導体チップQ2と第4半導体チップQ4とが隣接した平行配置となっている場合に比べて広いものとなる。例えば、本発明の半導体モジュールと、前述した特許文献1に記載の半導体装置900(
図10参照。)及び後述する実施形態において本発明との比較例で用いた半導体モジュール1A(
図5参照。)とを比較すると、特許文献1に記載の半導体装置900及び比較例で用いた半導体モジュール1Aにおいては、半導体チップQ2,Q4が隣接した平行配置となっているため、第2、第4半導体チップ同士が熱の干渉を受けやすくなる。これに対して、本発明においては、第2半導体チップQ2と第4半導体チップQ4とは、それぞれが搭載される配線パターンの各斜辺に沿った斜め配置となることにより、半導体チップQ2と半導体チップQ4との間隔が広くなり、第2、第4半導体チップ同士の熱の干渉を抑制することができ、第2半導体チップQ2及び第4半導体チップQ4の温度上昇が抑えられる。
【0017】
また、第2配線パターンは発熱源でもある半導体チップが搭載されていないため、第2半導体チップが搭載されている第3配線パターン及び第4半導体チップが搭載されている第4配線パターンよりも配線パターンの温度を低くすることができる。熱は温度が高い方から低い方へ伝わるため、発熱源でもある第2半導体チップと発熱源でもある第4半導体チップとの間に温度の低い第2配線パターンが配置されていることにより、互いの熱の干渉を低減することができ、第2半導体チップ及び第4半導体チップの温度上昇が抑えられる。
【0018】
このように、本発明の半導体モジュールによれば、寄生インダクタンスの低減化を図ることができるとともに、半導体素子同士の熱の干渉を抑制することができる半導体モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係る半導体モジュール1の内部構成の平面図である。
【
図2】
図1に示す半導体モジュール1の要部の拡大図である。
【
図3】
図1に示す半導体モジュール1のブリッジ回路の等価回路図である。
【
図4】実施形態に係る半導体モジュール1の電流経路の説明図である。
【
図5】実施形態に係る半導体モジュール1との比較を行うために準備した半導体モジュール1Aの内部構成の平面図である。
【
図6】比較を行うために準備した半導体モジュール1Aの電流経路の説明図である。
【
図7】実施形態に係る半導体モジュール1において発生する寄生インダクタンス及び半導体モジュール1Aにおいて発生する寄生インダクタンスの測定結果を示す図である。
【
図8】実施形態に係る半導体モジュール1と半導体モジュール1Aとに搭載されている半導体チップQ1~Q4が発する熱による温度の様子を示す図である。
【
図9】実施形態に係る半導体モジュール1及び半導体モジュール1Aにおける半導体チップQ1~Q4の温度を測定した測定結果を示す図である。
【
図10】特許文献1に記載されている半導体装置900の内部構成の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の半導体モジュールの実施形態について説明する。
【0021】
図1は、実施形態に係る半導体モジュール1の内部構成を平面視した図である。
図2は、
図1に示す半導体モジュール1の要部を拡大して示す図である。
図2においては、
図1に示す半導体モジュール1の要部として、主に、第1~第4配線パターン10~40と当該第1~第4配線パターン10~40に搭載されている半導体チップQ1~Q4、第1、第2電源端子51,52、第1、第2中点端子61,62が示されている。
【0022】
なお、図面の煩雑化を防ぐために、
図1においては一部の構成要素に付されている符号が省略されているが、これらの符号は
図2に示すこととする。以下、
図1及び
図2を参照して実施形態に係る半導体モジュール1の内部構成について説明する。
【0023】
実施形態に係る半導体モジュール1は、第1~第4半導体チップQ1~Q4、第1~第4配線パターン10~40、第1電源端子51、第2電源端子52、第1中点端子61及び第2中点端子62を備え、第1~第4半導体チップのうちの第1半導体チップQ1及び第3半導体チップQ3をハイサイドとし、第2半導体チップQ2及び第4半導体チップQ4をローサイドとするブリッジ回路が構成されている。このようなブリッジ回路において、第1半導体チップQ1及び第4半導体チップQ4がともにオンする動作と、第3半導体チップQ3及び第2半導体チップQ2がともにオンする動作とを交互に繰り返す。
【0024】
なお、第1~第4配線パターン10~40は、第1配線パターン10、第2配線パターン20、第3配線パターン30、第4配線パターン40である。また、以下の説明において、第1~第4半導体チップQ1~Q4をまとめて説明する場合には、「第1」、「第2」等を省略して、「半導体チップQ1~Q4」と表記する場合もある。また、第1~第4配線パターン10~40も同様に、第1~第4配線パターン10~40をまとめて説明する場合には、「第1」、「第2」等を省略して、「配線パターン10~40」と表記する場合もある。
【0025】
実施形態に係る半導体モジュール1においては、半導体チップQ1~Q4はMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であるとし、その平面視形状は矩形をなしているものとして説明する。また、実施形態に係る半導体モジュール1においては、セラミック(アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等)からなるベースに金属(銅)を直接接合したセラミック基板であるDCB(Direct Copper Bonding)基板70上に配線パターン10~40が形成されているものとする。なお、本発明の半導体モジュールに用いる基板はDCB基板に限られるものではなく、AMB(Active Metal Brazing)基板のような他のセラミック基板や、銅ベースやアルミニウムベースの金属ベース基板等を用いることもできる。セラミック基板に接合する金属としては、銅以外の金属(例えば、アルミニウム)を用いることもできる。
【0026】
半導体チップQ1~Q4はそれぞれソース電極(第1電極)S、ドレイン電極(第2電極)D、ゲート電極(制御電極)Gを有しているが、半導体チップQ1~Q4として縦型トランジスタチップ(SiやSiC材料で構成されるMOSFET等の縦型トランジスタチップ)を用いた場合のドレイン電極Dは、半導体チップQ1~Q4における配線パターン10~40側の面(半導体チップQ1~Q4の裏面)に設けるように構成する。なお、実施形態に係る半導体モジュール1においては、半導体チップQ1~Q4として縦型トランジスタチップを用いた場合を例示している。従って、ドレイン電極Dは配線パターン10~40側に設けられていて目視できないため、ドレイン電極を示す符号「D」は図示されていない。また、ゲート電極Gは、半導体チップQ1~Q4におけるソース電極S側の面に設けられている。
【0027】
また、半導体チップQ1~Q4は、本発明の要旨を変更しない範囲であれば適宜変更可能であり、例えば、半導体チップQ1~Q4として、例えば、横型トランジスタチップ(例えば、GaNオンSi材料で構成されるGaN-HEMT、その他Ga2O3オンSi材料で構成される化合物半導体トランジスタ等)を用いてもよい。なお、横型トランジスタチップの場合、ドレイン電極Dを含め、ゲート電極G及びソース電極Sは、半導体チップの表面に複数形成すると好適である。また、半導体チップQ1~Q4は、トランジスタチップに限定せず、回路アプリケーションに対応して、適宜、トランジスタチップをダイオードチップに置き換えた変形的構成としてもよい。このような変形的構成にすれば、適宜トーテムポール型ブリッジレスPFC回路等にも適応可能となる。
【0028】
第1配線パターン10は、当該第1配線パターン10の複数の辺のうちの1つの辺11を当該第1配線パターン10の第1辺11としたとき、当該第1辺11の所定範囲には、当該第1配線パターン10を平面視したときに凹形状をなす凹部12が形成されている。ここで、第1配線パターン10の第1辺11は、
図1及び
図2において、第1配線パターン10の図示の左右方向(x軸に沿った方向)に延在する辺のうちの図示の上側に位置する辺を第1辺11としている。
【0029】
なお、「凹部12」は、基板70の厚み方向にへこんだ凹部ではなく、
図1において破線枠Zで囲まれた領域内に示されているように、第1配線パターン10を平面視したとき、基板70の平面上において、図示のy軸に沿った紙面の下方向に凹状にへこんだ凹部である。
【0030】
また、第1配線パターン10には、第1電源端子51が接続されているとともに第1半導体チップQ1及び第3半導体チップQ3が搭載されている。ここで、第1半導体チップQ1及び第3半導体チップQ3は、凹部12を挟み、かつ、当該凹部12に隣接した位置に配置されている。なお、凹部12が形成されている位置は、第1配線パターン10における図示のx軸に沿った紙面の左右方向のほぼ中央付近であるとする。
【0031】
続いて、第2配線パターン20について説明する。第2配線パターン20は、第1配線パターン10の凹部12によって三方が囲まれ、一部が当該凹部12の開口から外方(図示のy軸に沿った紙面の上方向)に突出するように配置されている。そして、少なくとも凹部12から突出する部分には、第1斜辺21及び第2斜辺22を有する先細り形状の凸部23が形成されている。なお、「先細り形状の凸部23」は、以下では「先細り形状の」を省略して、単に「凸部23」と表記する場合もある。
【0032】
また、当該第2配線パターン20の下辺24(第1配線パターン10の凹部12の底辺12aに対向する辺)は、第1配線パターン10の凹部12の底辺12aに対して平行配置されている。そして、この第2配線パターン20には第2電源端子52が接続されている(
図2参照。)。
【0033】
また、第2配線パターン20は、実施形態1に係る半導体モジュール1においては、下辺24に直交する当該第2配線パターン20の中心線Cを対称軸とする線対称の形状となっているものとする。但し、ここでの線対称の形状というのは、厳密なものではなく、対称軸を中心とする一方の側と他方の側とで形状が多少異なるものを含むものとする。また、実施形態1に係る半導体モジュール1においては、凸部23は第1斜辺21と第2斜辺22とのなす角度が鋭角であり、先端部に頂点Pを有するものとする。なお、中心線Cは凸部23の頂点Pを通り、かつ、下辺24に直交する線であるとする。
【0034】
凸部23の第1斜辺21と第2斜辺22とのなす角度θ(
図2参照。)は、特に限定されるものではないが、実施形態に係る半導体モジュール1においては90度であるとする。このため、第1斜辺21と中心線Cとのなす角度、及び、第2斜辺22と中心線Cとのなす角度はそれぞれ45度である。
【0035】
続いて、第3配線パターン30及び第4配線パターン40について説明する。第3配線パターン30及び第4配線パターン40は、第1配線パターン10の第1辺11における一方の端部(左端部)11aから他方の端部(右端部)11bに沿って配置されている。具体的には、
図1及び
図2に示すように、第1配線パターン10の第1辺11のy軸に沿った紙面の左右方向の左側には第3配線パターン30が配置されており、右側には第4配線パターン40が配置されている。
【0036】
第3配線パターン30には、第1中点端子61が接続されているとともに第2半導体チップQ2が搭載されている。また、第3配線パターン30は、図示におけるx軸に沿った紙面の左右方向に延在する水平部30a(
図2参照。)と当該水平部30aの端部(図示における紙面の右端部)からy軸に沿った紙面の上下方向に延在する垂直部30b(
図2参照。)とを有している。なお、第1中点端子61は第3配線パターン30の垂直部30bに接続されており、y軸に沿って紙面の上方向に延出している。
【0037】
また、第3配線パターン30には、第2配線パターン20の凸部23が有する第1斜辺21に沿った斜辺31(
図2参照。)が形成されている。斜辺31は第3配線パターン30において水平部30aと垂直部30bとの角部に形成されており、第2配線パターン20の第1斜辺21に対向し、かつ、平行となっている。なお、第2半導体チップQ2は第3配線パターン30の斜辺31に沿うように搭載されているが、これについては後述する。
【0038】
このように構成されている第3配線パターン30は、第3配線パターン30の水平部30aにおける第1配線パターン10側の辺(下辺32とする。)が第1配線パターン10の第1辺11に沿うように配置されている。
【0039】
一方、第4配線パターン40には、第2中点端子62が接続されているとともに第4半導体チップQ4が搭載されている。また、第4配線パターン40は、図示におけるx軸に沿った紙面の左右方向に延在する水平部40a(
図2参照。)と当該水平部40aの端部(図示における紙面の左端部)からy軸に沿った紙面の上下方向に延在する垂直部40b(
図2参照。)とを有している。なお、第2中点端子62は第4配線パターン40の垂直部40bに接続されており、図示におけるy軸に沿った紙面の上方向に延出している。
【0040】
また、第4配線パターン40には、第2配線パターン20の凸部23が有する第2斜辺22に沿った斜辺41(
図2参照。)が形成されている。斜辺41は第4配線パターン40における水平部40aと垂直部40bとの角部に形成されており、第2配線パターン20の第2斜辺22に対向し、かつ、平行となっている。なお、第4半導体チップQ4は第4配線パターン40の斜辺41に沿うように搭載されているが、これについては後述する。
【0041】
このように構成されている第4配線パターン40は、当該第4配線パターン40の水平部40aにおける第1配線パターン10側の辺(下辺42とする。)が第1配線パターン10の第1辺11に沿うように配置されており、垂直部40bが第3配線パターン30の垂直部30aに対して隣接して配置されている。具体的には、第3配線パターン30の垂直部30bにおいて第4配線パターン40に対向する当該第3配線パターン30の右辺33(
図2参照。)と、第4配線パターン40の垂直部40bにおいて第3配線パターン30に対向する当該第4配線パターン40の左辺43(
図2参照。)とは、互いに隣接して配置されている。このため、第3配線パターン30の右辺33及び第4配線パターン40の左辺43は、第3配線パターン30と第4配線パターン40とが隣接する隣接辺ともいえる。
【0042】
なお、実施形態に係る半導体モジュール1においては、第1配線パターン10は、第2配線パターン20の中心線Cを対称軸とする線対称の形状となっているものとする。また、第3配線パターン30と第4配線パターン40とは、同じ形状をなしており、第2配線パターン20の中心線Cを対称軸として線対称の形状となるように配置されている。但し、この場合においても、線対称の形状というのは、厳密なものではなく、対称軸を中心とする一方の側と他方の側とで形状が多少異なるものを含むものとする。
【0043】
配線パターン10~40がこのような配置となっていることにより、第2配線パターン20は、第1配線パターン10、第3配線パターン30及び第4配線パターン40で囲まれており、基板70の中央部付近に位置するものとなる。
【0044】
ところで、実施形態に係る半導体モジュール1においては、半導体チップQ1~Q4は平面視形状は矩形であり、正方形であってもよく、また、長方形であってもよいが、ここでは、長方形であるとして説明する。そして、半導体チップQ1~Q4のそれぞれの複数の辺すなわち第1辺~第4辺のうちの第1辺と当該第1辺とは反対側の第2辺とがそれぞれ短辺であり、第3辺と当該第3辺とは反対側の第4辺とがそれぞれ長辺であるとする。但し、半導体チップQ1~Q4は、長辺が短辺に比べてやや長い程度の長方形であるとする。
【0045】
ここで、
図2に示すように、半導体チップQ1~Q4において、個々の半導体チップの一方の短辺である第1辺を「第1短辺a1」、他方の短辺である第2辺を「第2短辺a2」とし、一方の長辺である第3辺を「第1長辺b1」、他方の長辺である第4辺を「第2長辺b2」とする。これを第1半導体チップQ1を例にとって説明すると、当該第1半導体チップQ1の一方の短辺である第1辺を「第1短辺a1」、他方の短辺である第2辺を「第2短辺a2」とし、一方の長辺である第3辺を「第1長辺b1」、他方の長辺である第4辺を「第2長辺b2」とする。これは、他の半導体チップQ2~Q4においても同様である(
図2参照。)。
【0046】
第1配線パターン10に搭載されている第1半導体チップQ1は、
図2に示すように、当該第1半導体チップQ1の第1辺である第1短辺a1が第1配線パターン10の第1辺11に沿って配置され、当該第1半導体チップQ1のソース電極Sがアルミニウムワイヤーなどの第1接続部材81を介して第3配線パターン30に接続されている。なお、第1接続部材81は、第1半導体チップQ1の第1辺である第1短辺a1の側から当該第1短辺1aに直交するように延出して第3配線パターン30に接続されている。このとき、第1接続部材81は第3配線パターン30の下辺32に対しても直交している。
【0047】
また、第1配線パターン10に搭載されている第3半導体チップQ3は、
図2に示すように、当該第3半導体チップQ3の第1辺である第1短辺a1が第1配線パターン10の第1辺11に沿って配置され、当該第3半導体チップQ3のソース電極Sがアルミニウムワイヤーなどの第3接続部材83を介して第4配線パターン40に接続されている。なお、第3接続部材83は、第3半導体チップQ3の第1辺である第1短辺a1の側から当該第1短辺a1に直交するように延出して第4配線パターン40に接続されている。このとき、第3接続部材83は第4配線パターン40の下辺42に対しても直交している。
【0048】
また、第3配線パターン30に搭載されている第2半導体チップQ2は、
図2に示すように、当該第2半導体チップQ2の第1辺である第1短辺a1が第3配線パターン30に形成されている斜辺31に沿って配置され、当該第2半導体チップQ2のソース電極Sがアルミニウムワイヤーなどの第2接続部材82を介して第2配線パターン20に接続されている。なお、第2接続部材82は、第2半導体チップQ2の第1辺である第1短辺a1の側から当該第1短辺1aに直交するように延出して第2配線パターン20に接続されている。このとき、第2接続部材82は第2配線パターン20の第1斜辺21に対しても直交している。
【0049】
また、第4配線パターン40に搭載されている第4半導体チップQ4は、
図2に示すように、当該第4半導体チップQ4の第1辺である第1短辺a1が第4配線パターン40に形成されている斜辺41に沿って配置され、当該第4半導体チップQ4のソース電極Sがアルミニウムワイヤーなどの第4接続部材84を介して第2配線パターン20に接続されている。なお、第4接続部材84は、第4半導体チップQ4の第1辺である第1短辺a1の側から当該第1短辺a1に直交するように延出して第2配線パターン20に接続されている。このとき、第4接続部材84は第2配線パターン20の第2斜辺22に対しても直交している。
【0050】
このように、第3配線パターン30に搭載されている第2半導体チップQ2は、当該第2半導体チップQ2の第1短辺a1(
図2参照。)が第3配線パターン30に形成されている斜辺31に沿って配置され、また、第4配線パターン40に搭載されている第4半導体チップQ4は、当該第4半導体チップQ4の第1短辺a1(
図2参照。)が第4配線パターン40に形成されている斜辺41に沿って配置されている。このため、これら第2半導体チップQ2と第4半導体チップQ4とは、互いに平行配置とならずに斜め配置となる。
【0051】
ここで、第2配線パターン20の凸部23が有する第1斜辺21と第2斜辺22とのなす角度(頂点Pの内角)は90度であるとしているため、第2半導体チップQ2は、中心線Cに対して反時計方向に45度傾斜しており、第4半導体チップQ4は中心線Cに対して時計方向に45度傾斜していることとなる。このように、第2半導体チップQ2と第4半導体チップQ4とは、中心線Cに互いに平行ではなく、所定角度(この場合45度)となるように配置されているが、このように配置されていることを以下では、「第2半導体チップQ2と第4半導体チップQ4とが斜め配置なっている」というように簡略化して表記する場合もある。
【0052】
一方、第1配線パターン10に搭載されている第1半導体チップQ1及び第3半導体チップQ3は、凹部12を挟んで互いに平行となるように配置されている。このため、第1半導体チップQ1と第3半導体チップQ3とは平行配置であり、また、第1半導体チップQ1と第3半導体チップQ3との間隔は少なくとも凹部12の開口幅以上の間隔で配置されている。
【0053】
また、基板70に形成されている配線パターンとしては、上述した配線パターン10~40の他に、第1~第4制御配線パターン111~114と、第1~第4検出配線パターン121~124とが存在する。
【0054】
第1~第4制御配線パターン111~114は、半導体チップQ1~Q4の各ゲート電極Gにそれぞれアルミニウムワイヤーなどの接続部材を介して接続されている。これらの接続部材を第1~第4制御用接続部材131~134とする。そして、第1~第4制御配線パターン111~114には、第1~第4制御端子T11~T14が接続されている。一方、第1~第4検出配線パターン121~124は、半導体チップQ1~Q4の各ソース電極Sにそれぞれアルミニウムワイヤーなどの接続部材を介して接続されている。これらの接続部材を第1~第4検出用接続部材141~144とする。そして、第1~第4検出配線パターン121~124には、第1~第4検出端子T21~T24が接続されている。
【0055】
ここで、第1半導体チップQ1を例にとって説明すると、当該第1半導体チップQ1のゲート電極Gに対応して第1制御配線パターン111と第1検出配線パターン121が形成されている。そして、第1半導体チップQ1のゲート電極Gと第1制御配線パターン111との間は、第1制御用接続部材131によって接続されている。また、第1半導体チップQ1のソース電極Sと第1検出配線パターン121との間は、第1検出用接続部材141によって接続されている。なお、第1制御用接続部材131及び第1検出用接続部材141は、第1半導体チップQ1の第2短辺a2(
図2参照。)側から当該半導体チップQ1のゲート電極G及びソース電極Sに接続されている。
【0056】
他の半導体チップ(第2~第4半導体チップQ2~Q4)においても同様に、第2~第4半導体チップQ2~Q4のそれぞれに対応して、第2~第4制御配線パターン112~114と第2~第4検出配線パターン122~124とがそれぞれに形成されている。そして、第2~第4半導体チップQ2~Q4の各ゲート電極Gと第2~第4制御配線パターン112~114との間は、第2~第4制御用接続部材132~134によって接続されている。また、第2~第4半導体チップQ2~Q4の各ソース電極Sと第2~第4検出配線パターン122~124との間は、第2~第4検出用接続部材142~144によって接続されている。
【0057】
なお、第2~第4半導体チップQ2~Q4においても、第2~第4制御用接続部材132~134及び第2~第4制御用接続部材142~144は、第2~第4半導体チップQ2~Q4の各第2短辺a2(
図2参照。)の側から半導体チップQ2~Q4の各ゲート電極G及び各ソース電極Sに接続されている。
【0058】
このように、半導体チップQ1~Q4は、
図2に示すように、それぞれの第1辺である第1短辺a1の側には、第1~第4接続部材81~84が接続され、第1短辺a1とは反対側の第2短辺a2の側には、第1~第4制御用接続部材131~134と第1~第4検出用接続部材141~144とが接続される構造となっている。そして、第1~第4接続部材81~84は半導体チップQ1~Q4の各第1短辺a1側から外方に延出するように配置され、また、第1~第4制御用接続部材131~134及び第1~第4検出用接続部材141~144は、半導体チップQ1~Q4の各第2短辺a2側から外方に延出するように配置されている。
【0059】
このような構造となっていることから、半導体チップQ1~Q4は第1~第4接続部材81~84と、第1~第4制御用接続部材131~134及び第1~第4検出用接続部材141~144とを接続するためのスペースを確保し易いものとなっている。
【0060】
このため、半導体チップQ1~Q4の各ソース電極Sと配線パターン10~40とを接続するための第1~第4接続部材81~84として、複数本のワイヤー(アルミニウムワイヤ―など)を用いる場合であっても、それぞれ同じ長さのワイヤーを平面的に並列配置することができる。なお、実施形態に係る半導体モジュール1においては、
図1、
図2及び
図4に示すように、第1~第4接続部材81~84として2本のワイヤーを用いた場合が示されているが、第1~第4接続部材81~84として、より多くの接続部材(例えば4本)のワイヤーを用いる場合であっても、同じ長さの4本のワイヤーが平面的に並列配置することができる。これにより、接続部材の配線をシンプルなものとすることができ、配線工程を簡素化できる。
【0061】
すなわち、第1接続部材81は、第1半導体チップQ1の第1辺である第1短辺a1の側から当該第1半導体チップQ1の第1辺a1に直交するように延出して第3配線パターン30に接続され、第2接続部材82は、第2半導体チップQ2の第1辺である第1短辺a1の側から当該第2半導体チップQ2の第1辺a1に直交するように延出して第2配線パターン20に接続されている。また、第3接続部材83は、第3半導体チップQ3の第1辺である第1短辺a1の側から当該第3半導体チップQ3の第1辺1aに直交するように延出して第4配線パターン40に接続され、第4接続部材84は、第4半導体チップQ4の第1辺である第1短辺a1の側から当該第4半導体チップQ4の第1辺1aに直交するように延出して第2配線パターン20に接続されている。
【0062】
第1~第4接続部材81~84が半導体チップQ1~Q4に対してこのように接続されていることによって、例えば、第1~第4制御用接続部材131~134及び第1~第4検出用接続部材141~144などを各半導体チップQ1~Q4に接続する場合、これら第1~第4制御用接続部材131~134及び第1~第4検出用接続部材141~144などを半導体チップQ1~Q4の第1辺a1とは反対側の辺(第2短辺a2)から各半導体チップQ1~Q4の外方に延出するようにすれば、第1~第4接続部材81~84、第1~第4制御用接続部材131~134及び第1~第4検出用接続部材141~144を接続するためのスペースが確保し易いものとなる。これにより、第1~第4接続部材81~84を上述したように複数本を使用する際には、複数本の接続部材を平面的に並列配置できるため、接続部材の配線をシンプルなものとすることができ、配線工程を簡素化できるといった効果が得られる
【0063】
続いて、第1、第2電源端子51,52及び第1、第2中点端子61,62について説明する。第1電源端子51及び第2電源端子52は、ブリッジ回路への電力を供給する端子であり、電流の流れとしてみた場合、第1電源端子51が電流の入力側、第2電源端子52が電流の出力側であるとする。
【0064】
第1電源端子51は第1配線パターン10に接続されている。第2電源端子52は第1配線パターン10を非接触で跨いで第2配線パターン20に接続されている。これら第1電源端子51と第2電源端子52とは隣接して配置(「隣接配置」と表記する場合もある。)されている。そして、第1電源端子51のy軸に沿った延長上にはデカップリングコンデンサ90が配置され、当該デカップリングコンデンサ90の一端が第1配線パターン10に接続され、他端が第2配線パターン20に接続されている。デカップリングコンデンサ90は、電源電圧の変動を回避したり、各種ノイズを除去したりする機能を有している。
【0065】
一方、第1中点端子61及び第2中点端子62は、図示しない負荷が接続される端子である。第1中点端子61は第3配線パターン30に接続されており、第2中点端子62は第4配線パターン40に接続されている。これら第1中点端子61と第2中点端子62とは隣接配置されている。そして、第1半導体チップQ1及び第4半導体チップQ4がともにオンしたときと、第3半導体チップQ3及び第2半導体チップQ2がともにオンしたときとでは、第1中点端子61と第2中点端子62との間を流れる電流の向きが反転する。
【0066】
実施形態に係る半導体モジュール1においては、第1半導体チップQ1及び第4半導体チップQ4がともにオンしたときには、第1中点端子61から第2中点端子62へと電流が流れ、第3半導体チップQ3及び第2半導体チップQ2がともにオンしたときには、第2中点端子62から第1中点端子61へと電流が流れる。実施形態に係る半導体モジュール1における全体的な電流経路については後述する。
【0067】
また、第1、第2電源端子51,52と第1、第2中点端子61,62とは、第2配線パターン20を挟んで半導体モジュール1の反対側に配置されている。すなわち、
図1に示すように、第1電源端子51及び第2電源端子52、第1中点端子61及び第2中点端子62は、第1電源端子51のアウターリード部51b及び第2電源端子52のアウターリード部52bと、第1中点端子61のアウターリード部61b及び第2中点端子62のアウターリード部62bとが、第2配線パターン20を挟んで半導体モジュール1の反対側に位置するように配置されている。
【0068】
ここで、「半導体モジュール1の反対側」というのは、
図1の場合を例にとると、半導体モジュール1の図示の上側と図示の下側である。また、アウターリード部というのは、樹脂封止したときに樹脂の外側に存在する部分であるとし、インナーリード部というのは樹脂の内側に存在する部分のことをいう。なお、実施形態1に係る半導体モジュール1は樹脂封止されているが、
図1においては半導体モジュール1の内部構成を示すため、樹脂については符号Mで示す外縁のみを表示している。後述する
図4~
図6においても同様である。
【0069】
また、第1電源端子51、第2電源端子52、第1中点端子61及び第2中点端子62の少なくとも1つの端子のインナーリード部は、実施形態に係る半導体モジュール1に形成されている他の端子(例えば、第1~第4制御端子T11~T14、第1~第4検出端子T21~T24など)のインナーリード部に比べて幅広となっている。
【0070】
実施形態に係る半導体モジュール1においては、第2電源端子52のインナーリード部52a及び第1、第2中点端子61,62のインナーリード部61a,62aが幅広となっている。ここで、「幅」というのは、各端子の延出方向に直交する方向の長さを指している。例えば、第2電源端子52を例にとれば、当該第2電源端子52の延出方向は図示のy軸に沿った方向であるため、延出方向(y軸に沿った方向)に直交するx軸に沿った方向の長さであり、これを「幅」としている。
【0071】
第2電源端子52のインナーリード部52aの幅(幅W1とする。)は、第1電源端子51の幅、第1~第4制御端子T11~T14及び第1~第4検出端子T21~T24の幅のほぼ2倍~4倍としている。なお、第2電源端子52は、第2配線パターン20の下辺24に近い部分に接続されており、当該第2電源端子52のインナーリード部52aの幅W1は、第2配線パターン20の下辺24に沿った方向(x軸に沿った方向)の長さの1/2又は1/2よりも少し長い範囲を占有するものとなっている。この第2電源端子のインナーリード部52aの幅W1は、第1配線パターン10と第2配線パターン20との間に接続されるデカップリングコンデンサ90の配置スペースを確保できるように設定されている。なお、ここでは第2電源端子52のインナーリード部52aの幅W1が他の端子の幅に比べて幅広であるとしたが、スペースが許せば、第1電源端子51も幅広としてもよい。
【0072】
また、第1中点端子61及び第2中点端子62も、それぞれのインナーリード部61a,62aは、他の端子(例えば、第1~第4制御端子T11~T14、第1~第4検出端子T21~T24など)に比べて幅広となっている。実施形態に係る半導体モジュール1においては、第1中点端子61の幅W2(
図2参照。)及び第2中点端子62の幅W3(
図2参照。)は、第1~第4制御端子T11~T14及び第1~第4検出端子T21~T24の幅のほぼ2~3倍としているが、スペースが許せば、さらに広くしてもよい。
【0073】
図3は、
図1に示す半導体モジュール1のブリッジ回路を等価回路として示す図である。なお、
図3において、
図1と同一構成要素には同一符号が付されている。
図3に示すブリッジ回路100は、前述したように、第1半導体チップQ1及び第3半導体チップQ3をハイサイドとし、第2半導体チップQ2及び第4半導体チップQ4をローサイドとするブリッジ回路である。
【0074】
このようなブリッジ回路100において、第1半導体チップQ1及び第4半導体チップQ4の各ゲート電極Gに所定の電圧が印加されることにより、第1半導体チップQ1及び第4半導体チップQ4がともにオンする。また、第3半導体チップQ3及び第2半導体チップQ2の各ゲート電極Gに所定の電圧が印加されることにより、第3半導体チップQ3及び第2半導体チップQ2がともにオンする。
【0075】
ここで、第1半導体チップQ1及び第4半導体チップQ4がともにオンしたときの電流経路は、
図3の実線Aで示すように、第1電源端子51から第1半導体チップQ1を通り、第1中点端子61から図示しない負荷を通った後に、第2中点端子62から第4半導体チップQ4を通って第2電源端子52に至る経路である。
【0076】
一方、第3半導体チップQ3及び第2半導体チップQ2がともにオンしたときの電流経路は、
図3の破線Bで示すように、第1電源端子51から第3半導体チップQ3を通り、第2中点端子62から図示しない負荷を通った後に、第1中点端子61から第2半導体チップQ2を通って第2電源端子52に至る経路である。
【0077】
このような電流経路を
図4を参照して具体的に説明する。なお、
図4に示す半導体モジュール1は、
図1に示す半導体モジュール1に電流経路を加えた図であり、半導体モジュールとしての構成は
図1と同様である。但し、
図4においては、
図1及び
図2に示した各構成要素を示す符号は、一部が省略されており、主に、電流経路の説明に必要な構成要素の符号が記載されている。
【0078】
第1半導体チップQ1及び第4半導体チップQ4がともにオンしたときの電流経路は、
図4の実線Aで示す経路となる。具体的には、第1電源端子51から第1配線パターン10に入り、当該第1配線パターン10に搭載されている第1半導体チップQ1のドレイン電極D(図示せず。)からソース電極Sを経て、当該ソース電極Sと第3配線パターン30とを接続する第1接続部材81を介して第3配線パターン30を通って第1中点端子61へと流れる。その後、図示しない負荷を経て第2中点端子62から第4配線パターン40に入り、当該第4配線パターン40に搭載されている第4半導体チップQ4のドレイン電極D(図示せず。)からソース電極Sを経て、当該ソース電極Sと第2配線パターン20とを接続する第4接続部材84を介して第2配線パターン20を通って第2電源端子52へと流れる。
【0079】
一方、第3半導体チップQ3及び第2半導体チップQ2がともにオンしたときの電流経路は、
図4の破線Bで示す経路となる。具体的には、第1電源端子51から第1配線パターン10に入り、当該第1配線パターン10に搭載されている第3半導体チップQ3のドレイン電極D(図示せず。)からソース電極Sを経て、当該ソース電極Sと第4配線パターン40とを接続する第3接続部材83を介して第4配線パターン40を通って第2中点端子62へと流れる。その後、図示しない負荷を経て第1中点端子61から第3配線パターン30に入り、当該第3配線パターン30に搭載されている第2半導体チップQ2のドレイン電極D(図示せず。)からソース電極Sを経て、当該ソース電極Sと第2配線パターン20とを接続する第2接続部材82から第2配線パターン20を通って第2電源端子52へと流れる。
【0080】
このように、第1半導体チップQ1及び第4半導体チップQ4がともにオンしたときの電流経路並びに第3半導体チップQ3及び第2半導体チップQ2がともにオンしたときの電流経路は、
図4の実線A及び破線Bで示すように短いものとすることができる。これは、配線パターン10~40の配置、半導体チップQ1~Q4の配置、第1、第2電源端子51,52及び第1、第2中点端子61,62の配置によるものである。
【0081】
すなわち、第1配線パターン10に形成されている凹部12には、先細り形状の凸部23を有する第2配線パターン20が配置されており、当該第2配線パターン20は、第1中点端子61又は第2中点端子62から第2電源端子52への電流経路として機能する。また、前述したように、第1半導体チップQ1及び第3半導体チップQ3は、第1配線パターン10の凹部12を挟み、かつ、当該凹部12に隣接配置されている。また、第2半導体チップQ2は、第3配線パターン30の斜辺31に沿うよう斜め配置され、第4半導体チップQ4は、第4配線パターン40の斜辺41に沿うように斜め配置されている。
【0082】
このため、第1半導体チップQ1及び第4半導体チップQ4がともにオンしたときの第2中点端子62から第2電源端子52に至る電流経路、及び、第3半導体チップQ3及び第2半導体チップQ2がともにオンしたときの第1中点端子61から第2電源端子52に至る電流経路は、
図4における実線A及び実線Bに示すように、いずれも斜め配置されている第2半導体チップQ2又は第4半導体チップQ4を経て、第2配線パターン20を斜めに通過して、当該第2配線パターン20に接続されている第2電源端子52に至る経路となる。
【0083】
これにより、第1中点端子61から第2電源端子52に至る電流経路及び第2中点端子62から第2電源端子52に至る電流経路は、いずれの場合も電流が大きく屈曲することなく、より直線的に流れるような経路となることから電流経路を短くすることができ、それによって寄生インダクタンスの低減化が図れる。
【0084】
また、第1、第2電源端子51,52は互いに隣接配置されるとともに、第1、第2中点端子61,62も互いに隣接配置される。そして、第1、第2電源端子51,52と第1、第2中点端子61,62とは、第2配線パターン20を挟んで半導体モジュール1の反対側、すなわち、
図1におけるy軸に沿った上側と下側となるように配置されている。
【0085】
第1、第2電源端子51,52と、第1、第2中点端子61,62とがこのように配置されていることによって、実施形態に係る半導体モジュール1においては、第1半導体チップQ1及び第4半導体チップQ4がともにオンしたときの第1電源端子51から第2電源端子52に至るブリッジ回路全体の電流経路並びに第3半導体チップQ3及び第2半導体チップQ2がともにオンしたときの第1電源端子51から第2電源端子52に至るブリッジ回路全体の電流経路は、
図4における実線A及び破線Bで示すように、主に第2配線パターン20とその周辺に形成される。これにより、ブリッジ回路全体の電流経路を短くすることができ、それによって、寄生インダクタンスの低減化の効果はより一層高いものとなる。
【0086】
また、第1、第2電源端子51,52は互いに隣接配置されるとともに、第1、第2中点端子61,62も互いに隣接配置されることによって、第1半導体チップQ1及び第4半導体チップQ4がともにオンする動作を行ったときと、第3半導体チップQ3及び第2半導体チップQ2がともにオンする動作を行ったときのいずれにおいても、隣接配置されている第1中点端子61及び第2中点端子62を流れる電流の向きが、互いに反対方向となる。このため、第1中点端子61及び第2中点端子62に発生する磁界を相殺することができることから、これによっても寄生インダクタンスの低減化が図れる。
【0087】
例えば、第1半導体チップQ1及び第4半導体チップQ4がともにオンしたときにおける第1中点端子61及び第2中点端子62の電流経路(実線A)は、
図4に示すように、第1中点端子61においてはy軸に沿った上方向であり、第2中点端子62においてはy軸に沿った下方向である。このように、隣接配置されている第1中点端子61と第2中点端子62を流れる電流の向きが、互いに反対方向となるため、第1中点端子61及び第2中点端子62に発生する磁界を相殺することができることから、寄生インダクタンスの低減化が図れる。
【0088】
一方、第3半導体チップQ3及び第2半導体チップQ2がともにオンしたときにおける第1中点端子61及び第2中点端子62の電流経路(破線B)は、
図4に示すように、第1中点端子61おいては
図1におけるy軸に沿った下方向であり、第2中点端子62においては
図1におけるy軸に沿った上方向である。このように、隣接配置されている第1中点端子61と第2中点端子62を流れる電流の向きが、互いに反対方向となるため、この場合も第1中点端子61及び第2中点端子62に発生する磁界を相殺することができることから、寄生インダクタンスの低減化が図れる。
【0089】
なお、このように、流れる電流の向きが互いに反対方向となることによって、磁界を相殺することができ、それによって寄生インダクタンスの低減効果が期待できることは、隣接配置されている第1電源端子51と第2電源端子52との間においても同様である。
【0090】
このように、実施形態に係る半導体モジュール1においては、寄生インダクタンスの低減化が図れる効果が得られるが、寄生インダクタンスの低減化が図れる効果に加えて、半導体チップ間の熱の干渉を抑制することができる。
【0091】
すなわち、実施形態に係る半導体モジュール1においては、第1半導体チップQ1及び第3半導体チップQ3は、第1配線パターン10の凹部12を挟んで当該第1配線パターン10に搭載されている(
図1及び
図2参照。)。また、第2半導体チップQ2は、第3配線パターン30の斜辺31に沿うように配置され、第4半導体チップQ4は、第4配線パターン40の斜辺41に沿うように配置されている(
図1及び
図2参照。)。
【0092】
このため、半導体チップQ1~Q4はそれぞれが所定の間隔を保持して配置されており、半導体チップ間の熱の干渉を抑制することができる。特に、第2半導体チップQ2及び第4半導体チップQ4は、半導体チップQ2と第4半導体チップQ4とが斜め配置となっている。これにより、第2、第4半導体チップQ2,Q4が発する熱が放散し易くなり、第2、第4半導体チップQ2,Q4同士の熱の干渉を抑制することができる。
【0093】
これに対して、例えば、特許文献1に開示されている半導体装置900(
図10参照。)のように、第2半導体チップQ2と第4半導体チップQ4とが隣接して平行配置されていると、第2、第4半導体チップQ2,Q4が発する熱が放散しにくくなり、第2、第4半導体チップQ2,Q4同士の熱の干渉が問題となるが、実施形態に係る半導体モジュール1においては、このような問題を改善できる。
【0094】
以上説明したように、実施形態に係る半導体モジュール1によれば、寄生インダクタンスを低減化できる効果と、半導体素子間の熱の干渉を抑制できる効果とが得られるが、これらの効果を検証するために発明者がシミュレーションを行った。以下、発明者がシミュレーションを行った結果について説明する。
【0095】
図5は、実施形態に係る半導体モジュール1との比較を行うために準備した半導体モジュール1Aの構成を示す図である。なお、以下の説明においては、実施形態に係る半導体モジュール1との比較を行うために準備した半導体モジュール1Aは単に「半導体モジュール1A」と表記する場合もある。
【0096】
半導体モジュール1Aは、基本的には実施形態に係る半導体モジュール1と同様の構成要素を有している。なお、
図5においては、半導体モジュール1Aの構成要素を示す符号は、説明に必要な符号が示されている。ここで、半導体モジュール1Aにおいては、実施形態に係る半導体モジュール1における第1~第4配線パターン10~40を第1~第4配線パターン210~240とし、第1、第2電源端子51,52を第1、第2電源端子251,252、第1、第2中点端子61,62を第1、第2中点端子261,262とし、第1~第4接続部材81~84を第1~第4接続部材281~284とする。
【0097】
なお、実施形態に係る半導体モジュール1における第1~第4半導体チップQ1~Q4は、半導体モジュール1Aにおいても第1~第4半導体チップQ1~Q4とし、実施形態に係る半導体モジュール1における基板70は半導体モジュール1Aにおいても基板70とする。また、ここでも第1~第4半導体チップQ1~Q4をまとめて説明する場合には、半導体チップQ1~Q4と表記する場合もあり、第1~第4配線パターン210~240をまとめて説明する場合には、配線パターン210~240と表記する場合もある。
【0098】
半導体モジュール1Aのブリッジ回路の構成は、実施形態に係る半導体モジュール1と同様であり、第1半導体チップQ1及び第3半導体チップQ3をハイサイドとし、第2半導体チップQ2及び第4半導体チップQ4をローサイドとするブリッジ回路であり、第1半導体チップQ1及び第4半導体チップQ4がともにオンし、第3半導体チップQ3及び第2半導体チップQ2がともにオンする。
【0099】
また、半導体モジュール1Aにおいては、実施形態に係る半導体モジュール1と同様に、第1配線パターン210には凹部(凹部212とする。)が設けられており、第2配線パターン220が当該凹部212に三方が囲まれるように配置されている。但し、半導体モジュール1Aにおいては、第2配線パターン220は、
図1において示した先細り形状の凸部23を有するものではなく矩形状をなしている(
図5参照。)。このため、第3配線パターン230に搭載されている第2半導体チップQ2及び第4配線パターン240に搭載されている第4半導体チップQ4は、両者が平行かつ隣接配置されている。この点が実施形態に係る半導体モジュール1と大きく異なる。
【0100】
また、半導体モジュール1Aにおいては、実施形態に係る半導体モジュール1と同様に、第1電源端子251は第1配線パターン210に接続され、第2電源端子252は第1配線パターン210を非接触で跨いで第2配線パターン220に接続されている。また、第1中点端子261は第3配線パターン230に接続され、第2中点端子262は第4配線パターン240に接続されている。
【0101】
但し、半導体モジュール1Aにおいては、第1中点端子261及び第2中点端子262は隣接配置ではなく、基板70の両端部(左端部及び右端部)に離間して配置され、かつ、基板70において第1電源端子251及び第2電源端子252と同じ側に配置されている。また、第1、第2電源端子251,252の幅及び第1、第2中点端子261,262の幅は、他の端子に比べて特に幅広となっているものではない。これらの点も実施形態に係る半導体モジュール1と大きく異なる。
【0102】
また、半導体モジュール1Aにおいては、第1半導体チップQ1は第1接続部材281を介して第3配線パターン230に接続され、第2半導体チップQ2は第2接続部材282を介して第2配線パターン220に接続され、第3半導体チップQ3は、第3接続部材283を介して第4配線パターン240に接続され、第4半導体チップQ4は、第4接続部材284を介して第2配線パターン220に接続されている。
【0103】
図6は、比較を行うために準備した半導体モジュール1Aの電流経路を説明する図である。なお、
図6に示す半導体モジュール1Aは、
図5に示す半導体モジュール1Aに電流経路を加えた図であり、半導体モジュール1Aとしての構成は
図5に示した半導体モジュール1Aと同様である。半導体モジュール1Aの電流経路は、
図6に示すように、第1半導体チップQ1及び第4半導体チップQ4がともにオンしたときは、
図6において実線Aで示すような経路となる。また、第3半導体チップQ3及び第2半導体チップQ2がともにオンしたときは、
図6において破線Bで示すような経路となる。
【0104】
図6に示すように、半導体モジュール1Aにおいては、第1半導体チップQ1及び第4半導体チップQ4がともにオンしたときの電流経路(実線A)と、第3半導体チップQ3及び第2半導体チップQ2がともにオンしたときの電流帰路(破線B)は、いずれの場合も、実施形態に係る半導体モジュール1に比べて長いものとなり、寄生インダクタンスの問題が発生する。
【0105】
ここで、実施形態に係る半導体モジュール1において発生する寄生インダクタンスと半導体モジュール1Aにおいて発生する寄生インダクタンスとをシミュレーションによって比較した結果について説明する。ここでは、ブリッジ回路のオン・オフ動作の周波数を100kHzとして、第1半導体チップQ1及び第4半導体チップQ4がオンしたときの電流経路に発生する寄生インダクタンスと、第3半導体チップQ3及び第2半導体チップQ2がオンしたときの電流経路に発生する寄生インダクタンスとを測定した。
【0106】
図7は、実施形態に係る半導体モジュール1において発生する寄生インダクタンス及び半導体モジュール1Aにおいて発生する寄生インダクタンスの測定結果を示す図である。なお、
図7においては、実施形態に係る半導体モジュールを「半導体モジュール1」と表記している。また、
図4及び
図6の実線Aで示す電流経路を「電流経路A」と表記し、破線Bで示す電流経路を「電流経路B」と表記している。
【0107】
図7に示すように、半導体モジュール1Aにおいては、第1半導体チップQ1及び第4半導体チップQ4がともにオンしたときの電流経路A(
図6参照。)に発生する寄生インダクタンスは、48.4ナノヘンリー(48.4nH)であり、第3半導体チップQ3及び第2半導体チップQ2がともにオンしたときの電流経路B(
図6参照。)に発生する寄生インダクタンスは、36.3ナノヘンリー(36.3nH)であった。
【0108】
一方、実施形態に係る半導体モジュール1においては、第1半導体チップQ1及び第4半導体チップQ4がともにオンしたときの電流経路A(
図4参照。)に発生する寄生インダクタンスは、20.6ナノヘンリー(20.6nH)であり、第3半導体チップQ3及び第2半導体チップQ2がともにオンしたときの電流経路B(
図4参照。)に発生する寄生インダクタンスは、19.2ナノヘンリー(19.2nH)であった。
【0109】
この結果から、実施形態に係る半導体モジュール1は、第1半導体チップQ1及び第4半導体チップQ4がともにオンしたときと、第3半導体チップQ3及び第2半導体チップQ2がともにオンしたときのいずれの場合においても、半導体モジュール1Aに比べて、寄生インダクタンスを大幅に低減できることが確認された。
【0110】
また、半導体モジュール1Aにおいては、寄生インダクタンスの問題に加えて、半導体チップ同士の熱の干渉も問題となる。特に、半導体モジュール1Aにおいては、第2、第4半導体チップQ2,Q4同士の熱の干渉が問題となる。これは、半導体モジュール1Aにおいては、第2半導体チップQ2と第4半導体チップQ4とが平行かつ隣接配置となっているために、第2半導体チップQ2及び第4半導体チップQ4は、それぞれが発する熱が放散しにくくなり、第2、第4半導体チップQ2,Q4同士の熱の干渉が生じやすくなるからである。
【0111】
図8は、半導体モジュール1Aと実施形態に係る半導体モジュール1とに搭載されている半導体チップQ1~Q4が発する熱による温度の様子を示す図である。
図8(a)は半導体モジュール1Aの温度の様子を示しており、
図8(b)は実施形態に係る半導体モジュール1の温度の様子を示している。
【0112】
なお、
図8においては、
図1に示されている半導体モジュール1及び
図5に示されている半導体モジュール1Aにおいて、第1~第4半導体チップQ1~Q4とその周辺が拡大されて示されている。このため、
図8においては、第1~第4半導体チップQ1~Q4と第1~第4配線パターン10~40など要部のみが示されており、その他の構成部材の図示は省略されている。また、
図8においては、
図1、
図2及び
図5に記載されている各構成要素を示す符号のうちの要部のみが示されている。
【0113】
ところで、
図8はモノクロ図面であるため、半導体チップQ1~Q4が発する熱による温度を色別で示すことはできないが、
図8の元となるカラー図面上では、半導体チップQ1~Q4が発する熱による温度が色別で示されている。すなわち、温度の変化を寒色系の色及び暖色系の色のグラデーションで表されている。具体的には、温度が低いことを表す青系の色から順に温度が高くなるにつれて、緑系の色、黄系の色、茶系の色、赤系の色のグラデーションで表されている。
【0114】
図8の元となるカラー図面においては、実施形態に係る半導体モジュール1の方が半導体モジュール1Aに比べて、温度が高いことを表す赤系の色の領域が殆ど存在しないことが判る。特に、隣接配置されていることによって互いに熱の干渉を受けやすい第2半導体チップQ2と第4半導体チップQ4とに注目して、実施形態に係る半導体モジュール1と半導体モジュール1Aとを比較すると、第2半導体チップQ2自体の温度及び第4半導体チップQ4自体の温度は、半導体モジュール1Aにおいては赤色に近い色となっているが、実施形態に係る半導体モジュール1は赤に近い色の領域は存在しない。これは、実施形態に係る半導体モジュール1においては、第2半導体チップQ2と第4半導体チップQ4とが斜め配置となっているために、第2半導体チップQ2及び第4半導体チップQ4のそれぞれが発する熱が放散しやすいからであると考えられる。
【0115】
すなわち、第3配線パターン30と第4配線パターン40とが隣接する隣接辺のうち、第3配線パターン30側の隣接辺である第3配線パターン30の右辺33(
図2参照。)と当該第3配線パターン30に搭載されている第2半導体チップQ2の第1長辺b1(
図2参照。)との間隔は、第2半導体チップQ2が斜め配置となっていることによって広いものとなる。同様に、第4配線パターン40側の隣接辺である第4配線パターン40の左辺43(
図2参照。)と当該第4配線パターン40に搭載されている第4半導体チップQ4の第2長辺b2(
図2参照。)との間隔も、第4半導体チップQ4が斜め配置となっていることによって広いものとなる。
【0116】
具体的には、第3配線パターン30の右辺33(
図2参照。)は、y軸に沿った垂直方向であり、第2半導体チップQ2は第3配線パターン30の右辺33(
図2参照。)に対して反時計方向に所定角度(この場合45度)傾いた斜め配置となっている。これにより、第2半導体チップQ2の第1長辺b1(
図2参照。)と第3配線パターン30の右辺33との間隔は、第2半導体チップQ2の第2短辺a2(
図2参照。)側に向かうに従ってますます広がって行くこととなる。このため、第2半導体チップQ2と第3配線パターン30の右辺33との間隔は、例えば、
図5に示す半導体モジュール1Aのように第2半導体チップQ2が第3配線パターン230の右辺233に対して平行となっている場合に比べて広いものとなる。
【0117】
また、第4配線パターン40の左辺43(
図2参照。)もy軸に沿った垂直方向であり、第4半導体チップQ4は第4配線パターン40の左辺43(
図2参照。)に対して時計方向に所定角度(この場合45度)傾いた斜め配置となっている。これにより、第4半導体チップQ4の第1長辺b2(
図2参照。)と第4配線パターン40の左辺43との間隔は、第4半導体チップQ4の第2短辺a2(
図2参照。)側に向かうに従ってますます広がって行くこととなる。このため、第4半導体チップQ4と第4配線パターン40の左辺43との間隔は、例えば、
図5に示す半導体モジュール1Aのように第4半導体チップQ4が第4配線パターン240の左辺243に対して平行となっている場合に比べて広いものとなる。
【0118】
このように、第2半導体チップQ2は、当該第2半導体チップQ2が搭載されている第3配線パターンの右辺33に対して広い間隔を有しており、第4半導体チップQ4は、当該第4半導体チップQ4が搭載されている第4配線パターンの左辺43に対して広い間隔を有している。従って、第2半導体チップQ2と第4半導体チップQ4との間隔は、例えば、
図5に示す半導体モジュール1Aのように第2、第4半導体チップQ2,Q4が平行配置されている場合に比べて広いものとなる。これによって、第2、第4半導体チップQ2,Q4同士の熱の干渉を抑制することができ、第2半導体チップQ2及び第4半導体チップS4の温度上昇が抑えられる。
【0119】
また、第2配線パターン20は発熱源でもある半導体チップが搭載されていないため、第2半導体チップQ2が搭載されている第3配線パターン30及び第4半導体チップQ4が搭載されている第4配線パターン40よりも配線パターンの温度は低くなる。熱は温度が高い方から低い方へ伝わるため、発熱源でもある第2半導体チップQ2と発熱源でもある第4半導体チップQ4との間に温度の低い第2配線パターンが配置されていることにより、互いの熱の干渉を低減することができ、第2半導体チップQ2及び第4半導体チップQ4の温度上昇が抑えられる。
【0120】
また、半導体チップQ1~Q4の周辺及び半導体チップQ1~Q4から離れた広い範囲においても、実施形態に係る半導体モジュール1の方が半導体モジュール1Aに比べて温度が低い寒色系の色がやや多い。
【0121】
この理由としては、実施形態に係る半導体モジュール1においては、前述したように、第2電源端子52のインナーリード部52a(
図2参照。)及び第1、第2中点端子61,62のインナーリード部61a,62a(
図1参照。)が、半導体モジュール1Aに比べて幅広となっているために、これら各端子からの放熱効果が大きく、この点も半導体チップQ1~Q4から離れた広い範囲で温度を低く抑えることに寄与しているものと考えられる。
【0122】
実施形態に係る半導体モジュール1及び半導体モジュール1Aにおける半導体チップQ1~Q4の温度を測定した測定結果を
図9に示す。
図9に示されている温度(℃)は、半導体チップQ1~Q4の表面(ソース電極S側の面)の中心位置の温度(℃)である。
【0123】
図9に示すように、実施形態に係る半導体モジュール1と半導体モジュール1Aとを比較すると、実施形態に係る半導体モジュール1の方が半導体チップQ1~Q4のいずれも温度が低くなっている。特に、斜め配置されている半導体モジュール1の第2半導体チップQ2及び第4半導体チップQ4と、平行かつ隣接配置されている半導体モジュール1Aの第2半導体チップQ2及び第4半導体チップQ4とを比較すると、実施形態に係る半導体モジュール1の方が半導体モジュール1Aに比べて低い温度となっている。
【0124】
具体的には、半導体モジュール1Aにおいては、第2半導体チップQ2の温度は141.55℃であり、第4半導体チップQ4の温度は141.54℃であるのに対し、半導体モジュール1においては、第2半導体チップQ2の温度は134.56℃であり、第4半導体チップQ4の温度は134.45℃である。このように、実施形態に係る半導体モジュール1の方が半導体モジュール1Aに比べて、約7℃も低い温度となっている。
【0125】
なお、第1半導体チップQ1及び第3半導体チップQ3は、実施形態に係る半導体モジュール1と半導体モジュール1Aとでは、これら半導体チップQ1,Q3の配置はほぼ同じであるが、
図8に示すように、実施形態に係る半導体モジュール1の方が半導体モジュール1Aに比べて、わずかではあるものの温度が低くなっている。
【0126】
このように、実施形態に係る半導体モジュール1において、特に、第2半導体チップQ2及び第4半導体チップQ4の温度を低く抑えることができるのは、これら第2半導体チップQ2と第4半導体チップQ4とが
図1に示すように斜め配置されていることによるものといえる。
【0127】
すなわち、第2半導体チップQ2と第4半導体チップQ4とが斜め配置されていることにより、第2半導体チップQ2と第4半導体チップQ4との間隔がより広くなることから、第2半導体チップQ2及び第4半導体チップQ4が発する熱が放散されやすくなり、半導体チップQ2,Q4同士の熱の干渉を抑制することができる。これにより、第2半導体チップQ2及び第4半導体チップQ4の温度を半導体モジュール1Aに比べて低く抑えることができる。
【0128】
以上説明したように、実施形態に係る半導体モジュール1においては、第1半導体チップQ1及び第4半導体チップQ4がともにオンしたときの電流経路(実線A)及び第3半導体チップQ3及び第2半導体チップQ2がともにオンしたときの電流経路(破線B)をそれぞれ短くすることができ、それによって、ブリッジ回路の動作時における寄生インダクタンスの低減化が図れる。
【0129】
また、実施形態に係る半導体モジュール1においては、半導体チップQ1~Q4による熱の影響を抑制することができる。特に、第2半導体チップQ2と第4半導体チップQ4とが斜め配置とされていることによって、第2、第4半導体チップQ2,Q4同士の熱の干渉を抑制することができる。
【0130】
また、実施形態に係る半導体モジュール1においては、第2電源端子52及び第1、第2中点端子61,62が幅広となっている。このため、これらの各端子からの放熱効果が大きく、これによっても半導体チップQ1~Q4自体の温度のみならず、半導体チップQ1~Q4から離れた広い範囲の温度も低く抑えることができる。
【0131】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能となるものである。たとえば、下記に示すような変形実施も可能である。
【0132】
(1)前述の実施形態においては、第2配線パターン20に形成されている凸部23が有する第1斜辺21及び第2斜辺22は、必ずしも直線であることに限られるものではなく、例えば、緩やかにカーブする曲線であってもよく、階段状など多少の凹凸を有するものであってもよい。このようなものも本発明の特許請求の範囲に記載の第1斜辺及び第2斜辺に含まれ、更に凸部は前述の実施形態の説明に用いた
図1及び
図2においては、先端が尖っている場合を例示したが、先端が丸みを帯びていたり、平坦であったりする凸部も本発明の特許請求の範囲に記載の凸部に含まれるものである。
【0133】
(2)前述の実施形態においては、第2配線パターン20に形成されている凸部23が有する第1斜辺21と第2斜辺22とのなす角度は90度である場合を例示したが、必ずしも90度である必要はなく、第2半導体チップQ2及び第4半導体チップQ4から第2配線パターン20を通って第2電源端子52に至る電流経路をできるだけ短くでき、かつ、第2、第4半導体チップQ2,Q4同士の熱の干渉を少なくできるような角度を設定することができる。
【0134】
(3)前述の実施形態においては、寄生インダクタンスの低減化と半導体チップ同士の熱の干渉の抑制化とを実現することについて説明したが、半導体チップ同士の熱の干渉の抑制を主として考えると、必ずしも、
図1に示した実施形態に係る半導体モジュール1の構成に限られるものではない。
【0135】
例えば、実施形態に係る半導体モジュール1との比較を行うために準備した半導体モジュール1Aにおいて、第2配線パターン220を実施形態に係る半導体モジュール1と同様に、先細り形状の凸部23を有する配線パターンとして、第2半導体チップQ2と第4半導体チップQ4とを斜め配置とする。これにより、実施形態に係る半導体モジュール1と同様に、第2、第4半導体チップQ2,Q4同士の熱の干渉を抑制することができる。
【0136】
また、半導体モジュール1Aにおいても、第1、第2電源端子251,252、第1,第2中点端子261,262の少なくとも1つの端子のインナーリードを、半導体モジュール1Aに形成されている他の端子のインナーリードに比べて幅広としてもよい。これによって、半導体チップQ1~Q4から離れた広い範囲の温度も低く抑えることができる。
【0137】
(4)第1配線パターン10及び第3、第4配線パターン30,40の形状は、
図1に示した形状に限定されるものではなく、適宜、最適な形状とすることができる。また、前述の実施形態においては、半導体チップQ1~Q4は長方形としたが正方形であってもよい。また、前述の実施形態においては、基板70はDCB基板としたが、DCB基板であることに限られるものではない。
【0138】
(5)半導体チップQ1~Q4は、MOSFETに限らず、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)など他の半導体チップであってもよい。
【0139】
(6)半導体チップQ1~Q4をそれぞれ対応する配線パターン10,30,40に搭載する際の各半導体チップQ1~Q4の向きは、
図1,
図2に示すような向きに限られるものではない。半導体チップQ2及び半導体チップQ4について
図2を参照して説明すると、まず、半導体チップQ2を
図2の位置から反時計方向に90度回転させて、長辺b2が第3配線パターン30の斜辺31に沿うように配置し、第2接続部材82をソース電極Sから長辺b2を横切るように延出させて第2配線パターン20に接続するようにしてもよい。また、半導体チップQ2を
図2の位置から時計方向に90度回転させて、長辺b1が第3配線パターン30の斜辺31に沿うように配置し、第2接続部材82をソース電極Sから長辺b1を横切るように延出させて第2配線パターン20に接続するようにしてもよい。
【0140】
半導体チップQ4も同様であり、半導体チップQ4を
図2の位置から時計方向に90度回転させて、長辺b1が第4配線パターン40の斜辺41に沿うように配置し、第4接続部材84をソース電極Sから長辺b2を横切るように延出させて第2配線パターン20に接続するようにしてもよい。また、半導体チップQ4を
図2の位置から反時計方向に90度回転させて、長辺b2が第4配線パターン40の斜辺41に沿うように配置し、第4接続部材84をソース電極Sから長辺b2を横切るように延出させて第2配線パターン20に接続するようにしてもよい。
【0141】
また、第1半導体チップQ1及び第3半導体チップQ3においても、これら半導体チップQ1,Q3を回転させた状態として配線パターン10に配置することができる。例えば、半導体チップQ1,Q3をそれぞれ時計方向又は反時計方向に所定角度だけ回転させた状態で配線パターン10に配置させるようにしてもよい。
【0142】
(7)本発明に係る構成要素の形状、数、大きさ、位置等は、
図1及び
図2に示したものに限定されず、本発明の特徴を損ねない限りにおいて、適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0143】
1・・・半導体モジュール、1A・・・比較を行うために準備した半導体モジュール、10・・・第1配線パターン、11・・・第1配線パターンの第1辺、11a・・・第1配線パターン10の第1辺11における一方の端部(左端部)、11b・・・第1配線パターン10の第1辺11の他方の端部(右端部)、12・・・凹部、12a・・・凹部12の底辺、20・・・第2配線パターン、21・・・第1斜辺、22・・・第2斜辺、23・・・先細り形状の凸部、24・・・第2配線パターン20の下辺、30・・・第3配線パターン、30a・・・第3配線パターン30の水平部、30b・・・第3配線パターン30の垂直部、31・・・凸部23の第1斜辺21に沿った斜辺、32・・・第3配線パターンの下辺、33・・・第3配線パターン30の右辺、40・・・第4配線パターン、40a・・・第4配線パターン40の水平部、40b・・・第4配線パターン40の垂直部、41・・・第4配線パターン40における凸部23の第2斜辺22に沿った斜辺、42・・・第4配線パターン40の下辺、43・・・第4配線パターン40の左辺、51・・・第1電源端子、51a・・・第1電源端子51のインナーリード部、51b・・・第1電源端子52のアウターリード部、52・・・第2電源端子、52a・・・第2電源端子52のインナーリード部、52b・・・第2電源端子52のアウターリード部、61・・・第1中点端子、61a・・・第1中点端子61のインナーリード部、61b・・・第1中点端子61のアウターリード部、62・・・第2中点端子、62a・・・第2中点端子62のインナーリード部、62b・・・第2中点端子62のアウターリード部、70・・・基板、81~84・・・第1~第4接続部材、90・・・デカップリングコンデンサ、111~114・・・第1~第4制御配線パターン、121~124・・・第1~第4検出配線パターン、131~134・・・第1~第3制御用接続部材、141~144・・・第1~第3検出用接続部材、210・・・半導体モジュール1Aの第1配線パターン、220・・・半導体モジュール1Aの第2配線パターン、230・・・半導体モジュール1Aの第3配線パターン、240・・・半導体モジュール1Aの第4配線パターン、251・・・半導体モジュール1Aの第1電源端子、252・・・半導体モジュール1Aの第2電源端子、261・・・半導体モジュール1Aの第1中点端子、262・・・半導体モジュール1Aの第2中点端子、Q1・・・第1半導体チップ、Q2・・・第2半導体チップ、Q3・・・第3半導体チップ、Q4・・・第4半導体チップ、a1・・・半導体チップQ1~Q4の第1辺(第1短辺)、a2・・・半導体チップQ1~Q4の第2辺(第2短辺)、b1・・・半導体チップQ1~Q4の第3辺(第1長辺)、b2・・・半導体チップQ1~Q4の第4辺(第2長辺)、G・・・半導体チップQ1~Q4のゲート電極、S・・・半導体チップQ1~Q4のソース電極、T11~T14・・・第1~第3制御端子、T21~T24・・・第1~第3検出端子)、M・・・樹脂の外縁