(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131879
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】生体画像解析装置、生体画像解析方法、及び、生体画像解析プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20240920BHJP
A61B 5/1455 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A61B10/00 E
A61B5/1455
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042379
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】515108727
【氏名又は名称】あっと株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100158366
【弁理士】
【氏名又は名称】井戸 篤史
(72)【発明者】
【氏名】武野 團
(72)【発明者】
【氏名】中野 讓
(72)【発明者】
【氏名】前田 雄大
(72)【発明者】
【氏名】金子 俊和
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038KK00
4C038KL05
4C038KL07
4C038KX02
(57)【要約】
【課題】被検体の毛細血管が撮像された生体画像を用いて、被検体の健康状態を的確に評価可能な生体画像解析装置を提供する。
【解決手段】本発明の生体画像解析装置は、被検体の毛細血管が撮像された生体画像を受け付ける画像受付手段と、生体画像の1又は複数の波長の強度を検出する検出手段と、強度に基づいて被検体の健康状態を評価する評価手段と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の毛細血管が撮像された生体画像を受け付ける画像受付手段と、
前記生体画像の1又は複数の波長の強度を検出する検出手段と、
前記強度に基づいて被検体の健康状態を評価する評価手段と、を備える、
生体画像解析装置。
【請求項2】
前記評価手段が、前記強度から毛細血管内及び毛細血管外部の物質の存在を評価する評価手段である、
請求項1に記載の生体画像解析装置。
【請求項3】
前記評価手段が、前記物質の血管透過性亢進を評価する、請求項2に記載の生体画像解析装置。
【請求項4】
前記評価手段が、前記血管透過性亢進に基づいて前記被検体が未病状態にあるか否かを評価する、請求項3に記載の生体画像解析装置。
【請求項5】
前記評価手段が、前記強度から毛細血管から毛細血管外部への物質の漏出を評価する評価手段である、
請求項1に記載の生体画像解析装置。
【請求項6】
前記生体画像上の毛細血管の位置を特定する毛細血管位置特定手段と、
前記毛細血管の位置を基に、毛細血管外部を特定する毛細血管外部特定手段と、をさらに備える、
請求項1~5いずれか一項に記載の生体画像解析装置。
【請求項7】
前記物質がタンパク質、脂質、糖類、及び/又はそれらの複合体である、請求項6に記載の生体画像解析装置。
【請求項8】
前記波長が可視光領域及び/又は近赤外領域にある、請求項7に記載の生体画像解析装置。
【請求項9】
前記波長が可視光領域にある、請求項7に記載の生体画像解析装置。
【請求項10】
前記生体画像がカラー画像である、請求項9に記載の生体画像解析装置。
【請求項11】
前記波長が、前記カラー画像のHSV空間情報及び/又はHSL空間情報のH値から選択される、請求項10に記載の生体画像解析装置。
【請求項12】
前記生体画像が、撮像対象からの乱反射光を低減する偏光操作により撮像された生体画像である、請求項11に記載の生体画像解析装置。
【請求項13】
被検体の毛細血管が撮像された生体画像を受け付ける画像受付ステップと、
前記生体画像の1又は複数の波長の強度を検出する検出ステップと、
前記強度から、毛細血管内及び毛細血管外部の物質の存在を評価する評価ステップと、を含む、
非診断的な生体画像解析方法。
【請求項14】
被検体の毛細血管が撮像された生体画像を受け付ける画像受付ステップと、
前記生体画像の1又は複数の波長の強度を検出する検出ステップと、
前記強度から、毛細血管内及び毛細血管外部の物質の存在を評価する評価ステップと、を
コンピュータに実行させる生体画像解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体画像の1又は複数の波長の強度に基づいて被検体の健康状態を評価する生体画像解析装置、生体画像解析方法、及び、生体画像解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検体の血管の撮像画像から、被検体の健康状態を非侵襲的に評価する技術が知られている。例えば、複数の波長領域の光源を用いて評価する技術として、互いに異なるピーク波長を有する複数種の光を眼球に照射し、反射光の吸光度から血中酸素飽和度を算出する血中酸素飽和度測定装置(特許文献1参照)、波長範囲を調整した照射光の反射光強度から血液濁度を算出し、濁度変化量から被検者の脂質濃度絶対値推定量を算出する脂質濃度計測装置(特許文献2参照)、少なくとも第1波長領域の光と第2波長領域の光を発出する光照射器により光を当てて撮像した画像から各波長領域の輝度値等を解析する非接触血管解析方法(特許文献3参照)、複数の波長で照明された患者体液の光学特性を測定する、患者の感染状態を予測する方法(特許文献4参照)等が挙げられる。
【0003】
本願出願人は、血液の濁りから、被検者の新陳代謝の悪化等の健康状態が評価できることを見出した上で、指先の爪上皮の血管を拡大し撮影した毛細血管画像を用いて、血液の濁り度合いを判定できる観測方法等(特許文献5参照)、毛細血管画像の輝度分布から濁りを計測して数値化する毛細血管画像処理方法(特許文献6参照)等を開示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2023-009720号公報
【特許文献2】特開2022-100907号公報
【特許文献3】国際公開第2022/244367号
【特許文献4】特表2022-538264号公報
【特許文献5】特開2017-038889号公報
【特許文献6】特開2016-202442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする第一の課題は、被検体の毛細血管が撮像された生体画像を用いて、被検体の健康状態を的確に評価することにある。
【0006】
本発明が解決しようとする第二の課題は、特殊な光源を必要とせず、普通に入手可能な撮像装置により撮像された被検体の生体画像から、被検体の健康状態を的確に評価することにある。
【0007】
本願出願人は、特許文献6において、毛細血管の濁りを簡便に数値化する手法を開示したが、同手法は、毛細血管画像のグレースケール画像の二値化処理により生じたノイズに基づくものであって、特定の波長特性を有する物質の存在を評価できるものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、被検体の毛細血管内及び毛細血管外部のタンパク質及び/又は脂質等の物質の存在や、毛細血管から毛細血管外部へのこれらの物質の漏出を評価することで、被検体の健康状態を的確に評価できることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は、被検体の毛細血管が撮像された生体画像を受け付ける画像受付手段と、前記生体画像の1又は複数の波長の強度を検出する検出手段と、前記強度に基づいて被検体の健康状態を評価する評価手段と、を備える、生体画像解析である。
【0010】
また、別の本発明においては、前記評価手段は、前記強度から毛細血管内及び毛細血管外部の物質の存在を評価する評価手段であり、前記強度から毛細血管から毛細血管外部への物質漏出を評価する評価手段であり得る。
【0011】
また、別の本発明は、前記生体画像上の毛細血管の位置を特定する毛細血管位置特定手段と、前記毛細血管の位置を基に、毛細血管外部を特定する毛細血管外部特定手段と、をさらに備える、生体画像解析装置である。
【0012】
本発明においては、前記物質は、タンパク質、脂質、糖類、及び/又はそれらの複合体であり得る。また、評価手段は、前記物質の血管透過性の亢進を評価する評価手段であり得る。
【0013】
本発明の別の生体画像解析装置は、前記波長が近赤外領域及び/又は可視光領域にあり、前記生体画像がカラー画像であり、前記波長が、前記カラー画像のHSV空間情報及び/又はHSL空間情報のH値から選択される。
【0014】
また、本発明における生体画像は、撮像対象からの乱反射光を低減する偏光操作により撮像された生体画像であり得る。
【0015】
さらに、本発明は、被検体の毛細血管が撮像された生体画像を受け付ける画像受付ステップと、前記生体画像の1又は複数の波長の強度を検出する検出ステップと、前記強度から、毛細血管内及び毛細血管外部の物質の存在を評価する評価ステップと、を含む、生体画像解析方法である。本発明の方法は、非診断的及び/又は診断的な方法であり得る。
【0016】
さらに、本発明は、被検体の毛細血管が撮像された生体画像を受け付ける画像受付ステップと、前記生体画像の1又は複数の波長の強度を検出する検出ステップと、前記強度から、毛細血管内及び毛細血管外部の物質の存在を評価する評価ステップと、をコンピュータに実行させる生体画像解析プログラムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明者らは、毛細血管外部に特定の物質が多く存在する被検体、及び/又は毛細血管から毛細血管外部に特定の物質が多く漏出する被検体は、毛細血管外部に存在する物質が少ない被検体と比較して、健康状態が異なる傾向にあることを見出した。本願発明により、毛細血管及び毛細血管外部の物質の存在を評価することで、被検体の健康状態を、非侵襲的且つ的確に評価することが可能である。
【0018】
また、別の本発明においては、毛細血管を含むカラー画像から、毛細血管及び毛細血管外部における特定の波長特性を有する物質の存在を評価することが可能である。本発明を用いることで、特殊な光源を用いずとも、少なくとも可視領域の波長を含む光源で撮像された1のカラー画像から、被検体の健康状態が非侵襲的且つ的確に評価可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施態様を示す機能ブロック図である。
【
図2】本発明の一実施態様による画像解析のフローチャートである。
【
図3】本発明の別の実施態様による画像解析のフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施態様により得られた画像である。Aに示した画像は、受け付けられたカラー画像をグレースケールで表示したものであり、B、C、及びDに示した画像は、Aに示した画像から生成された画像である。Bの画像は、毛細血管の位置を特定可能な二値化画像であり、Cの画像は、赤色領域を二値化した二値化画像であり、Dの画像は青色領域を二値化した二値化画像である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の生体画像解析装置は、画像受付手段と、検出手段と、評価手段とを備える。また、別の発明は、毛細血管位置特定手段、及び/又は毛細血管外部特定手段をさらに備える生体画像解析装置である。本発明の生体画像解析装置を、実施形態に基づき詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0021】
本発明の一実施形態である生体画像解析装置10の機能ブロック図を
図1に示し、生体画像解析装置10による生体画像解析の一例のフロー図を
図2及び
図3に示す。
【0022】
生体画像解析装置10は、画像受付手段14、検出手段16、毛細血管位置特定手段18、毛細血管外部特定手段20、評価手段22、及び表示手段24を備え、さらに記憶手段12を備える。また、別の実施態様では、撮像手段を備えていてもよい。
【0023】
画像受付手段14、検出手段16、毛細血管位置特定手段18、毛細血管外部特定手段20、評価手段22、及び表示手段24における各処理は、コンピュータのCPUにおいて実行される。また、表示手段24は、ディスプレイ等の出力装置に、所定の情報を表示させる処理を実行する。
【0024】
本発明における生体画像は、被検体の毛細血管が撮像された生体画像である。毛細血管は、皮下血管の他、粘膜下血管等も含む。本発明では、指爪床部毛細血管の頭頂部を含む撮像画像が好ましく用いられる。
【0025】
本発明の生体画像解析装置は、生体画像から検出された、1又は複数の波長の強度から、被検体の健康状態を評価する。また、一実施態様では、検出された強度から、毛細血管内及び毛細血管外部の物質の存在を評価することで、被検体の健康状態を評価する。
【0026】
本発明の検出対象である、毛細血管外部に存在し得る物質とは、健康状態が良好な被検者では、毛細血管を通過しない(又は通過しにくい)が、健康状態が悪化した際に、毛細血管外部を通過して、毛細血管周囲の組織に漏出し得る物質である。具体的には、タンパク質、脂質、及び/又は糖類が挙げられ、より具体的には、血漿に溶解しない又は溶解しにくいタンパク質、脂質、及び/又は糖類(好ましくは多糖類)が挙げられる。健康状態が良好な状態でも周囲の組織に存在する物質は本発明の検出対象にならない。本発明の検出対象にならない物質とは、例えば、血漿、並びに、低分子化合物及び電解質その他の、血漿に溶解し得る又は溶解し易い物質が挙げられる。
【0027】
毛細血管外部とは、毛細血管周囲の組織をいい、より好ましくは毛細血管頭頂部の周囲の組織であり、さらに好ましくは、指爪床部毛細血管の周囲の組織である。
【0028】
本発明は、被検体の毛細血管における特定の物質の血管透過性の亢進を、より好ましくは亢進の程度を、より具体的には亢進状態にあるか否かを評価することができる。すなわち、本発明の別の実施態様では、評価手段により、赤外領域、近赤外領域及び/又は可視光領域において光学散乱を生じる物質が毛細血管外部に存在することが認められれば、被検体において、当該物質に対する血管透過性が亢進されていると判定する判定手段を備えても良い。
【0029】
本発明は、被検体において、特定の物質の血管透過性の亢進を、より好ましくは亢進の程度を、より具体的には亢進状態にあるか否かの評価結果に基づいて、被検体が疾病に罹患した状態にあるか、未病状態にあるか、健康状態にあるかを評価することができる。ここで、未病とは、健康ではないが特定の疾病に罹患したとは言えない状態、及び/又は、特定の疾病の罹患に向かっている状態を言う。
【0030】
撮像手段は、例えば、被検者の指の爪床部分を観察対象とし、可視光や赤外線等が照射された観察対象を、CCDやCMOS等の撮像素子を具備する撮像部が撮像することで、指爪床の毛細血管の撮像画像の画像情報が得られる。本発明において、画像は、二次元画像であり得る。また、本発明において、画像は、可視光画像及び/又は不可視光画像であり、好ましくは、赤外画像及び/又は近赤外画像である。画像が不可視光画像である場合には、不可視光の波長を可視光の波長に変換した画像であってもよい。また、別の本発明では、画像は、カラー画像であることが好ましく、少なくとも可視領域を含む光の照射下で撮像されたカラー画像であることがより好ましい。
【0031】
また、別の実施態様では、撮像手段は、観察対象からの乱反射光を低減する偏光操作を伴って生体画像を撮像する。乱反射光が低減されることで、毛細血管を明確に把握可能な画像を得ることができる。具体的には、撮像部において、撮像素子と観察対象との間に、観察対象からの乱反射光を低減可能な1又は複数の偏光子を備えればよい。
【0032】
本発明における生体画像は、毛細血管の頭頂部を含む画像であることが好ましい。毛細血管の頭頂部は、係蹄(キャピラリーループ)とも呼称され、皮下直下に形成される動脈から静脈への接続部位である。指爪床部毛細血管の場合は、毛細血管頭頂部は、指の長手方向に走る血管が屈曲して形成されたヘアピン状の先端部を指す。
【0033】
画像受付手段14は、被検体の毛細血管が撮像された生体画像を受け付け、検出手段16は、画像受付手段14が受け付けた生体画像の、1又は複数の波長の強度を検出する。本実施態様において検出される波長は、生体画像に含まれる波長から選択される。検出される波長としては、好ましくは、可視光領域及び/又は赤外領域にあり、より好ましくは、可視光領域及び/又は近赤外領域にある波長が選択される。
【0034】
検出手段16は、具体的には、選択された波長領域の強度について予め設定された閾値に基づき、閾値よりも高いか否かにより強度を検出する。より具体的には、特定の波長領域について、予め設定された閾値よりも高い強度の領域を暗部、前記閾値よりも低い強度の領域を明部で表示する二値化処理を行い、二値化画像を生成する。
【0035】
別の実施態様では、検出手段16が特定の波長の強度を検出する前に、画像受付手段14が受け付けた生体画像に、ホワイトバランス処理を行い、色調を補正する。異なる光源下で撮像された生体画像を評価に用いる場合には、ホワイトバランス等の色調補正を施して、光源が生体画像の色調に及ぼす影響を均一化することが好ましいためである。
【0036】
本発明において検出される特定の波長は、可視光領域及び/又は赤外領域にあることが好ましく、可視光領域及び/又は近赤外領域にあることがより好ましい。可視光領域とは約400nm~約800nmの波長域をいい、近赤外領域とは約800nm~約2500nmの波長域を言う。本実施態様では、可視光領域や近赤外領域のうち、好ましくは、約800nm~約1600nmの波長領域に含まれるいずれかの範囲の波長の強度を検出することで、毛細血管からの物質の漏出を評価することができる。
【0037】
本発明の一実施態様の、画像受付手段14、検出手段16、及び評価手段22のデータフロー図を
図2に示す。画像受付手段14は、毛細血管が撮像された生体画像を受け付ける(S101)。生体画像がカラー画像である場合には、画像情報がRGB値で記述されていてもよく、L*a*b*色空間、HSV色空間、HLS色空間、YIQ色空間、YUV色空間等の色空間の値で記述されていてもよい。
【0038】
生体画像の情報がHSV色空間及び/又はHLS色空間で記述されている場合、特定の波長の強度を検出するためには、HSV値及び/又はHLS値のうち、特定の色相値(H値)の範囲における明度及び/又は輝度を検出してもよい。
【0039】
ここで、
図4Aに示す画像は、画像受付手段14により受け付けられた指爪部毛細血管の画像であり、ホワイトバランス補正が施されたものである。
図4Aの画像は、グレースケールで示されているが、実際にはカラー画像を用いた。また、
図4Bに示す画像は、毛細血管の形状を可視化するために、特許文献6に示した従来法の二値化処理により得られた二値化画像である。
【0040】
図4Cに示す画像は、本実施態様の画像処理により得られた画像である。Aに示す画像から、赤色の波長領域の強度が、予め設定した閾値を越えたピクセルを暗部、閾値を越えないピクセルを明部とした二値化処理により得られた二値化画像である。また、
図4Dに示す画像は、同じく本実施態様の画像処理により得られた画像であり、Aに示す画像から、青色の波長領域の強度が、予め設定した閾値を越えたピクセルを暗部、閾値を越えないピクセルを明部とした二値化処理で得られた二値化画像である。
【0041】
評価手段22は、被検体の健康状態を評価する。具体的には、健康状態とは、被検体が健康か不健康か、将来的に特定の疾病に罹患するリスクが高いか否かであり、さらに具体的には、被検体が特定の疾病に罹患しているか否か、及び/又は特定の疾病に将来的に罹患する可能性が高いか否か、特定の疾病に罹患していなくても未病状態にあるか否か等である。特定の疾病とは、例えば、生活習慣病等であり得る。また、被検体は、ヒト(被検者)又は動物であり得る。
【0042】
一実施態様の評価手段22は、特定の波長領域の強度から、物質の存在を評価する(S105)。より具体的には、特定の波長領域の強度を検出するステップ(S103)で得られた画像である
図4C及びDに示す画像のピクセル数の総和や平均値を求めることで、ある波長特性を有する物質が、毛細血管及び毛細血管外部に存在しているか否か、及び/又は毛細血管から漏出しているか否かを評価することができる。
【0043】
本発明の別の実施態様のデータフローを
図3に示す。本実施態様では、画像受付手段14、検出手段16、評価手段22に加えて、毛細血管位置特定手段18及び毛細血管外部特定手段20を備える。
【0044】
毛細血管位置特定手段18は、受け付けられた画像から、毛細血管の位置を特定する。具体的には、毛細血管位置特定手段18は、受け付けられたカラー画像からグレースケール画像を生成し(S201)、特許文献6に開示した従来法により、グレースケール画像から二値化画像を生成し(S203)、二値化画像から毛細血管の位置を特定する(S205)。毛細血管位置特定手段18が毛細血管の位置を特定するために生成した二値化画像の一例が、
図4Bに示す画像である。
【0045】
毛細血管外部特定手段20は、毛細血管位置特定手段18により特定された毛細血管の位置から、毛細血管の外部を特定する(S207)。より具体的には、
図4Bの画像で、彩色されていないピクセルが、毛細血管の外部であると特定される。
【0046】
生体画像上で毛細血管外部の位置が特定されることで、評価手段22は、物質の存在を、毛細血管内部と毛細血管外部とに分けて評価することができる。評価手段22は、毛細血管外部の特定の波長の強度を算出し(S106)、算出された強度から毛細血管外部の物質の存在を評価することで(S107)、毛細血管から毛細血管外部への物質の漏出が評価される。
【0047】
具体的には、評価手段22は、
図4C及び/又はDに示す画像におけるピクセルのうち、Bに示す画像おいて彩色されていないピクセルに相当するピクセルを対象として、ピクセル数の総和や平均値を算出することで、毛細血管外部の物質の存在を評価することができる。
【0048】
さらに、評価手段22は、毛細血管外部の物質の存在や、毛細血管から毛細血管外部への物質の漏出から、被検体の健康状態を評価してもよい。具体的には、毛細血管外部の物質の存在や、毛細血管から毛細血管外部への物質の漏出、物質の血管透過性の亢進状態から、被検体が健康か不健康か、被検体が未病状態にあるか否か、将来的に特定の疾病に罹患するリスクが高いか否か等が、評価され得る。
【0049】
また、本発明の実施態様に備えられた記憶手段12は、少なくとも、各手段において得られた情報を記憶する。例えば、画像受付手段14において受け付けられた画像情報や、検出手段16において生成された画像や、毛細血管位置特定手段18及び毛細血管外部特定手段20において生成された画像や、評価手段22において得られた評価結果を記憶する。記憶手段12は、好ましくは、ストレージデバイスであり得る。
【0050】
表示手段24は、評価手段22において得られた評価結果を表示する。具体的には、評価結果を、ディスプレイ等の出力装置が表示するような処理が実行される。
【0051】
本発明は、さらに生体画像解析方法を提供する。本発明の生体画像解析方法は、パーソナルコンピュータで実現され、記憶部及び制御部を備えたコンピュータにおいて、これらのハードウェア資源と協働して実現される。
【0052】
本発明の生体画像解析方法は、被検体の毛細血管が撮像された生体画像を受け付ける画像受付ステップと、生体画像の1又は複数の波長の強度を検出する検出ステップと、強度から、毛細血管内及び毛細血管外部の物質の存在を評価する評価ステップと、を含む。
【0053】
評価ステップは、強度から毛細血管内及び毛細血管外部の物質の存在を評価する評価ステップであり得る。また、別の評価ステップは、強度から毛細血管から毛細血管外部への物質漏出を評価する評価ステップであり得る。物質がタンパク質及び/又は脂質であり得る。
【0054】
別の生体画像解析方法は、生体画像上の毛細血管の位置を特定する毛細血管位置特定ステップと、毛細血管の位置を基に、毛細血管外部を特定する毛細血管外部特定ステップと、をさらに備える。
【0055】
別の生体画像解析方法は、波長が近赤外領域及び/又は可視光領域にあり得、生体画像がカラー画像であり得、波長は、カラー画像のHSV空間情報及び/又はHSL空間情報のH値から選択され得る。
【0056】
別の生体画像解析方法は、生体画像の撮像ステップを含み、当該撮像ステップは、撮像対象からの乱反射光を低減する偏光操作を行って撮像する撮像ステップであり得る。
【0057】
本発明は、生体画像解析方法をコンピュータに実行させる生体画像解析プログラムをさらに提供する。本発明の別態様は、上述のプログラムを記憶した記憶媒体である。記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な有形記憶媒体であり得る。
【符号の説明】
【0058】
10 生体画像解析装置
12 記憶手段
14 画像受付手段
16 検出手段
18 毛細血管位置特定手段
20 毛細血管外部特定手段
22 評価手段
24 表示手段