(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131882
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H01L21/60 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042393
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星 貴也
(72)【発明者】
【氏名】英賀 文昭
【テーマコード(参考)】
5F044
【Fターム(参考)】
5F044AA02
5F044AA20
5F044EE02
5F044FF06
(57)【要約】
【課題】半導体装置の性能低下を向上させる。
【解決手段】半導体装置PKG1の複数のワイヤBWは、端部電極PDE1と、複数の端子2BPのうちの端子BP1のそれぞれに接合されているワイヤBW1を含んでいる。複数のワイヤBWは、非端部電極PDM1と、複数の端子2BPのうちの端子BP2のそれぞれに接合されているワイヤBW2を含んでいる。ワイヤBW1のループ高さRH1は、ワイヤBW2のループ高さRH2よりも高い。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面、および前記第1面に配列された複数の端子を備えている配線基板と、
前記第1面と対向する第2面、前記第2面の反対側に位置する第3面、および前記第3面に配列された複数の電極を備え、前記配線基板上に搭載された半導体チップと、
前記複数の電極と前記複数の端子とをそれぞれ互いに、かつ、電気的に接続する複数のワイヤと、
前記半導体チップ、前記複数のワイヤ、および前記配線基板の前記第1面を封止する封止体と、
を含み、
前記複数の電極は、前記半導体チップの前記第3面の第1辺に沿って配列され、かつ、前記複数のワイヤのいずれかが接続されている複数の第1列目電極を含み、
前記複数の第1列目電極は、配列の一方の端部に配置されている第1端部電極と、前記配列の他方の端部に配置されている第2端部電極と、前記第1端部電極と前記第2端部電極との間に配置されている第1非端部電極と、を有し、
前記複数の端子は、第1端子と、第2端子と、を含み、
前記複数のワイヤは、
前記第1端部電極と前記第1端子のそれぞれに接合されている第1ワイヤと、
前記第1非端部電極と前記第2端子のそれぞれに接合されている第2ワイヤと、
を含み、
前記第1ワイヤのループ高さは、前記第2ワイヤのループ高さよりも高い、半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記複数の端子は第3端子をさらに含み、
前記複数のワイヤは、前記第2端部電極と前記第3端子のそれぞれに接合されている第3ワイヤ、を更に有し、
前記第3ワイヤのループ高さは、前記第2ワイヤのループ高さよりも高い、半導体装置。
【請求項3】
請求項2において、
平面視において、前記半導体チップは、前記第1辺に交差する第2辺と、前記第1辺と交差し、かつ、前記第2辺の反対側に位置する第3辺を有し、
前記第1辺の長さの20パーセントの長さを第1長さとすると、
前記第1端部電極と前記第2辺との離間距離は、前記第1長さ未満であり、
前記第1非端部電極と前記第2辺との離間距離、および前記第1非端部電極と前記第3辺との離間距離のそれぞれは、前記第1長さより大きく、
前記第2端部電極と前記第3辺との離間距離は、前記第1長さ未満である、半導体装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記複数の電極は、前記複数の第1列目電極よりも前記第1辺から遠い位置に配列され、かつ、前記半導体チップの前記第1辺に沿って配列され、かつ、前記複数のワイヤのいずれかが接続されている複数の第2列目電極を含み、
前記複数のワイヤは、
前記複数の第1列目電極のいずれかと前記複数の端子のいずれかのそれぞれに接合されている複数の第1列目ワイヤと、
前記複数の第2列目電極のいずれかと前記複数の端子のいずれかのそれぞれに接合されている複数の第2列目ワイヤと、
を含み、
前記複数の第2列目ワイヤのそれぞれのループ高さは、前記第2ワイヤのループ高さよりも高い、半導体装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記複数の第2列目ワイヤのそれぞれのループ高さは、互いに等しい、半導体装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記複数の第2列目ワイヤのそれぞれのループ高さは、前記第1ワイヤのループ高さと等しい、半導体装置。
【請求項7】
請求項4において、
前記複数の端子は、
第1方向に沿って配列された複数の第1列目端子と、
前記複数の第1列目端子よりも前記半導体チップから遠い位置に、前記第1方向に沿って配列された複数の第2列目端子と、
を含み、
前記複数の第1列目ワイヤは前記複数の第1列目端子に接続され、
前記複数の第2列目ワイヤは前記複数の第2列目端子に接続されている、半導体装置。
【請求項8】
請求項4において、
前記複数の第1列目電極は、前記第1端部電極の隣に配置された第1角部電極、を更に有し、
前記複数のワイヤは、前記第1角部電極と前記複数の端子のうちの第4端子のそれぞれに接合されている第4ワイヤを更に有し、
前記第4ワイヤのループ高さは、前記第2ワイヤのループ高さより高い、半導体装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記第4ワイヤのループ高さは、前記複数の第2列目ワイヤのそれぞれのループ高さより低く、かつ、前記第2ワイヤのループ高さよりも高い、半導体装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記第4ワイヤは、前記複数の第2列目ワイヤのいずれかと交差している、半導体装置。
【請求項11】
請求項1において、
前記複数のワイヤのそれぞれは、
前記複数の電極のいずれかに接合されているボール部と、
前記ボール部に連なり、かつ、前記半導体チップの上方に向かって延びている起立部と、
を有し、
前記半導体チップの前記第3面のうち、前記ボール部と前記第1辺との間に位置する部分と、前記起立部とが成す角度をネック角度とすると、
前記第1ワイヤのネック角度は、前記第2ワイヤのネック角度よりも大きく、かつ、90度よりも大きい、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2006-319237号公報)配線基板上に配列された端子と、配線基板上に搭載された半導体チップの電極とがワイヤを介して電気的に接続された半導体装置が記載されている。
【0003】
特許文献2(特開2018-107296号公報)には、半導体チップの電極に接続されている複数のワイヤのうち、一部のワイヤのネック部の曲げ角度が大きくなっている半導体装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-319237号公報
【特許文献2】特開2018-107296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体装置の性能を向上させる観点から、例えば、半導体チップの電極とワイヤとの接合部分の接続信頼性が高い事が望ましい。本願発明者は、半導体チップに接続されている複数のワイヤのうち、特定の位置に配置されているワイヤにおいて、他のワイヤと比較してワイヤの接続信頼性が低下する場合があることを見出した。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態に係る半導体装置は、第1面、および上記第1面に配列された複数の端子を備えている配線基板と、上記第1面と対向する第2面、上記第2面の反対側に位置する第3面、および上記第3面に配列された複数の電極を備え、上記配線基板上に搭載された半導体チップと、上記複数の電極と上記複数の端子とをそれぞれ互いに、かつ、電気的に接続する複数のワイヤと、上記半導体チップ、上記複数のワイヤ、および上記配線基板の上記第1面を封止する封止体と、を含んでいる。上記複数の電極は、上記半導体チップの上記第3面の第1辺に沿って配列され、かつ、上記複数のワイヤのいずれかが接続されている複数の第1列目電極を含んでいる。上記複数の第1列目電極は、配列の一方の端部に配置されている第1端部電極と、上記配列の他方の端部に配置されている第2端部電極と、上記第1端部電極と上記第2端部電極との間に配置されている第1非端部電極と、を有している。上記複数の端子は、第1端子と、第2端子と、を含んでいる。上記複数のワイヤは、上記第1端部電極と上記第1端子のそれぞれに接合されている第1ワイヤと、上記第1非端部電極と上記第2端子のそれぞれに接合されている第2ワイヤと、を含んでいる。上記第1ワイヤのループ高さは、上記第2ワイヤのループ高さよりも高い。
【発明の効果】
【0008】
上記一実施の形態によれば、半導体装置の性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施の形態である半導体装置の上面図である。
【
図4】
図1に示す封止体を取り除いた状態を示す上面図である。
【
図10】
図7、
図8、および
図9のそれぞれに示すワイヤを重ね合わせた状態を示す拡大断面図である。
【
図11】
図5に示す角部電極に接続されているワイヤまたは
図6に示す角部電極に接続されているワイヤの延在方向に沿った拡大断面図である。
【
図12】
図4に対する変形例である半導体装置の一部分を示す拡大平面図である。
【
図13】
図5に示す端部電極に接続されているワイヤ、非端部電極に接続されているワイヤ、および第2列目ワイヤのそれぞれが重ねて示された拡大断面図である。
【
図14】
図12に対する変形例である半導体装置の一部分を示す拡大平面図である。
【
図15】
図14に示す端部電極に接続されているワイヤ、非端部電極に接続されているワイヤ、角部電極に接続されたワイヤ、および第2列目ワイヤのそれぞれが重ねて示された拡大断面図である。
【
図16】ワイヤのネック角度を定義するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本願における記載形式・基本的用語・用法の説明)
本願において、実施の態様の記載は、必要に応じて、便宜上複数のセクション等に分けて記載するが、特にそうでない旨明示した場合を除き、これらは相互に独立別個のものではなく、記載の前後を問わず、単一の例の各部分、一方が他方の一部詳細または一部または全部の変形例等である。また、原則として、同様の部分は繰り返しの説明を省略する。また、実施の態様における各構成要素は、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、必須のものではない。
【0011】
同様に実施の態様等の記載において、材料、組成等について、「AからなるX」等といっても、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、A以外の要素を含むものを排除するものではない。たとえば、成分についていえば、「Aを主要な成分として含むX」等の意味である。たとえば、「シリコン部材」等といっても、純粋なシリコンに限定されるものではなく、SiGe(シリコン・ゲルマニウム)合金やその他シリコンを主要な成分とする多元合金、その他の添加物等を含む部材も含むものであることはいうまでもない。また、金めっき、Cu層、ニッケル・めっき等といっても、そうでない旨、特に明示した場合を除き、純粋なものだけでなく、それぞれ金、Cu、ニッケル等を主要な成分とする部材を含むものとする。
【0012】
さらに、特定の数値、数量に言及したときも、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、その特定の数値を超える数値であってもよいし、その特定の数値未満の数値でもよい。
【0013】
以下で説明する実施の形態の各図中において、同一または同様の部分は同一または類似の記号または参照番号で示し、説明は原則として繰り返さない。
【0014】
添付図面においては、却って、煩雑になる場合または空隙との区別が明確である場合には、断面であってもハッチング等を省略する場合がある。これに関連して、説明等から明らかである場合等には、平面的に閉じた孔であっても、背景の輪郭線を省略する場合がある。更に、断面でなくとも、空隙でないことを明示するため、あるいは領域の境界を明示するために、ハッチングやドットパターンを付すことがある。
【0015】
以下の説明において、半導体チップの電極とは、半導体チップの外部端子として機能する部材のことを意味する。電極のうち、面積の小さい板状の部材であるパッドのことを「電極パッド」と呼ぶ。また、電極のうち、下地から局所的に突出するように成形されている部材のことを「バンプ電極」または「突起電極」と呼ぶ。また、「電極パッド」および「バンプ電極(または突起電極)」のいずれかのことを単に「電極」と呼ぶ場合がある。また、電極パッド上にバンプ電極(または突起電極)が形成されている構造体の事を「電極」と呼ぶ場合がある。
【0016】
以下の説明では、X方向、Y方向、およびZ方向という方向を用いる場合がある。例えば後述する
図1には、X方向およびY方向が示されている。X方向およびY方向は、互いに交差している。以下で説明する例においては、X方向はY方向に直交する。以下では、X方向およびY方向を含むX-Y平面を半導体装置の主面および実装基板の主面に対して平行な面として説明する。
【0017】
X-Y平面に対して交差する面(例えば、X方向およびZ方向を含むX-Z平面に平行な面、およびY方向およびZ方向を含むY-Z平面に平行な面)を側面と呼ぶ。以下の説明において、特に異なる意味で解釈すべきことを明示した場合を除き、「平面視」とは、X-Y平面に平行な面を視た場合を意味する。また、X-Y平面に対する法線方向のことを「Z方向」または厚さ方向として説明する。「厚さ」および「高さ」とは、特に別の意味で解釈すべきことを明示した場合を除き、「Z方向」の長さを意味する。X方向、Y方向およびZ方向は、互いに交差する方向であり、より特定的には互いに直交する方向である。
【0018】
<半導体装置>
まず、本実施の形態の半導体装置PKG1の構成の概要について、
図1から
図4を用いて説明する。
図1は本実施の形態の半導体装置の上面図である。
図2は、
図1に示す半導体装置の下面図である。また、
図3は、
図1のA-A線に沿った断面図である。また、
図4は、
図1に示す封止体を取り除いた状態を示す上面図である。
【0019】
図3に示す本実施の形態の半導体装置PKG1は、配線基板SUB1と、配線基板SUB1上に搭載された半導体チップCPと、配線基板SUB1および半導体チップCPのそれぞれに電気的に接続されたワイヤBWと、半導体チップCPおよびワイヤBWを封止する封止体MRと、を有している。
【0020】
配線基板SUB1は、半導体チップCPが搭載された上面(面、主面、チップ搭載面)2t、および上面2tとは反対側の下面(面、主面、実装面、第2主面)2bを有する。また、
図2および
図4に示すように、配線基板SUB1は、上面2tおよび下面2bのそれぞれの外縁に複数の辺2sを有している。本実施の形態の場合、配線基板SUB1の上面2t(
図3参照)および下面2b(
図2参照)はそれぞれ四角形である。上面2tおよび下面2bのそれぞれは、外縁に4つの辺2sを有している。
【0021】
配線基板SUB1は、チップ搭載面である上面2t側の端子(ボンディングパッド、内部インタフェース端子)2BPが形成されている配線層WL1と、実装面である下面2b側の端子(ランド、外部インタフェース端子)2LDが形成されている配線層WL2と、を有している。
【0022】
配線層WL1および配線層WL2のそれぞれは、端子2BPまたは端子2LDの他、電気信号や電力を供給する経路である配線などの導体パターンを有する。また配線層WL1と配線層WL2との間には、絶縁層2ILが配置されている。配線層WL1および配線層WL2は、絶縁層2ILを貫通する層間導電路であるスルーホール配線2THWを介して互いに電気的に接続されている。
【0023】
図3に示す例では、配線基板SUB1が備える配線層構造は、配線層WL1および配線層WL2の2層構造である。ただし、本実施の形態に対する変形例として、3層以上の配線層を有する配線基板を適用する場合がある。
【0024】
配線層WL1は、絶縁層2IL上に配置されている。配線層WL1には、複数のワイヤBWがそれぞれ接続された複数の端子2BPが形成されている。配線層WL2には、外部端子である複数の端子2LDが形成されている。絶縁層2ILは、配線層WL1と配線層WL2との間に配置されている。
【0025】
複数の端子2BPおよび複数の端子2LDは、配線パターン2WP、基準電位が供給されるグランドパターン2GP、あるいは電源電位が供給される電源パターン2VPなどの導体パターンと、スルーホール配線2THWと、を介して互いに電気的に接続されている。
【0026】
配線層WL1は、絶縁膜(ソルダレジスト膜)SR1に覆われる。絶縁膜SR1には開口部が形成され、複数の端子2BPのそれぞれは、開口部において、絶縁膜SR1から露出している。配線層WL2は、絶縁膜(ソルダレジスト膜)SR2に覆われる。絶縁膜SR2には開口部が形成され、複数の端子2LDのそれぞれは、開口部において、絶縁膜SR2から露出している。
【0027】
また、
図3に示す例では、複数の端子2LDのそれぞれには、半田ボール(半田材、外部端子、電極、外部電極)SBが接続されている。半田ボールSBは、半導体装置PKG1を図示しないに示す実装基板に実装する際に、実装基板側の複数の端子(図示は省略)と複数の端子2LDを電気的に接続する、導電性部材である。半田ボールSBは、例えば、鉛(Pb)入りのSn-Pb半田材、あるいは、Pbを実質的に含まない、所謂、鉛フリー半田からなる半田材である。鉛フリー半田の例としては、例えば錫(Sn)のみ、錫-ビスマス(Sn-Bi)、または錫-銅-銀(Sn-Cu-Ag)、錫-銅(Sn-Cu)などが挙げられる。ここで、鉛フリー半田とは、鉛(Pb)の含有量が0.1wtパーセント以下のものを意味し、この含有量は、RoHS(Restriction of Hazardous Substances)指令の基準として定められている。
【0028】
図2に示すように複数の半田ボールSBは、行列状(アレイ状、マトリクス状)に配置されている。また、
図2では図示を省略するが、複数の半田ボールSBが接合された複数の端子2LD(
図3参照)も行列状(マトリクス状)に配置されている。このように、配線基板SUB1の実装面側に、複数の外部端子(半田ボールSB、端子2LD)を行列状に配置する半導体装置を、エリアアレイ型の半導体装置と呼ぶ。エリアアレイ型の半導体装置は、配線基板SUB1の実装面(下面2b)側を、外部端子の配置スペースとして有効活用することができるので、外部端子数が増大しても半導体装置の実装面積の増大を抑制することが出来る点で好ましい。高機能化、高集積化に伴って、外部端子数が増大する半導体装置を省スペースで実装することができる。
【0029】
図3に示すように、半導体チップCPのそれぞれは、上面(主面、表面)3tと、上面3tとは反対側の下面(主面、裏面)3bと、を備えている。半導体チップCPは、
図1に示すように平面視において配線基板SUB1よりも平面積が小さい四角形を成す。
図4に示す例では、半導体チップCPは、配線基板SUB1の上面2tの中央領域(上面2tの中心を含む領域)に搭載されている。
【0030】
図4に示すように、平面視において、半導体チップCPは、Y方向に延びている辺3s1、辺3s1の反対側の辺3s2、Y方向に交差するX方向に延びている辺3s3、および辺3s3の反対側の辺3s4を有している。
図4に示す例では、各辺3sの長さは、例えば、5mmである。半導体チップCPの上面3tの周縁部には、複数の電極3PDが配列されている。
図4に示す例では、複数の電極3PDが上面3tの各辺3sに沿って1列で配列されている。ただし、変形例として後述するように、電極3PDが複数列で配列されている場合もある。
【0031】
図3に示すように、半導体チップCPは、下面3bが配線基板SUB1の上面2tと対向した状態で、配線基板SUB1上に搭載されている。詳しくは、配線基板SUB1の上面2tを持っている絶縁膜SR1と、半導体チップCPの下面3bとの間には、ダイボンド材DBMが配置されている。半導体チップCPは、ダイボンド材DBMを介して配線基板SUB1の絶縁膜SR1上に接着固定されている。このような搭載方式は、フェイスアップ実装方式と呼ばれる。フェイスアップ実装方式の場合、半導体チップの電極3PDと配線基板SUB1の端子2BPとを電気的に接続するための導電性部材として、ワイヤBWが利用される。
【0032】
また、図示は省略するが、半導体チップCPの主面(詳しくは、半導体チップCPの基材である半導体基板の素子形成面に設けられた半導体素子形成領域)には、複数の半導体素子(回路素子)が形成されている。複数の電極3PDは、半導体チップCPの内部(詳しくは、上面3tと図示しない半導体素子形成領域の間)に配置された配線層に形成された配線(図示は省略)を介して、この複数の半導体素子と、それぞれ電気的に接続されている。
【0033】
半導体チップCP(詳しくは、半導体チップCPの基材)は、例えばシリコン(Si)から成る。また、上面3tには、半導体チップCPの基材および配線を覆う無機絶縁膜が形成されており、複数の電極3PDのそれぞれの一部は、この無機絶縁膜に形成された開口部において、絶縁膜から露出している。また、複数の電極3PDは、それぞれ金属からなり、本実施の形態では、例えばアルミニウム(Al)からなる。
【0034】
図3に示すように、電極3PDにはワイヤBWの一方の端部が接合されている。ワイヤBWの他方の端部は、端子2BPに接合されている。ワイヤBWは、金や銅などの金属材料から成る金属線である。本実施の形態では、ワイヤBWは、例えば銅から成る。なお、
図3に示す例では、電極3PD側に接続された端部が第1ボンド側、端子2BPに接続された端部が第2ボンド側になっている。このような接続方式は、正ボンディング方式と呼ばれる。ただし、図示は省略するが、
図3に対する変形例として、電極3PD側に接続された端部が第2ボンド側、端子2BPに接続された端部が第1ボンド側になっている。この変形例のような接続方式は逆ボンディング方式と呼ばれる。
【0035】
また、配線基板SUB1の上面2t上には、封止体MRが形成されている。封止体MRは、例えばベースとなる熱硬化性樹脂に、無機フィラや黒色顔料などが混合された樹脂材料を熱硬化させた樹脂体である。半導体チップCP、複数のワイヤBW、複数の端子2BP、および配線基板SUB1の上面2tのそれぞれは、封止体MRにより封止されている。複数のワイヤBWを封止することにより、半導体装置PKG1において、隣り合うワイヤBW同士の変形や短絡を防止することができる。
【0036】
<ワイヤ周辺の詳細>
次に、
図4に示すワイヤBW周辺の詳細な構造について説明する。
図5は、
図4のA部の拡大平面図である。
図6は、
図4のB部の拡大平面図である。
図7は、
図5のB-B線に沿った拡大断面図である。
図8は、
図5のC-C線に沿った拡大断面図である。
図9は、
図6のD-D線に沿った拡大断面図である。
図10は、
図7、
図8、および
図9のそれぞれに示すワイヤを重ね合わせた状態を示す拡大断面図である。なお、
図7に示すワイヤBW1と、
図9に示すワイヤBW3は同じ形状なので、
図10では、2本のワイヤが図示され、2本のうちの1本に2つの符号「BW1,BW3」を付している。また、
図7から
図10のそれぞれにおいて、
図3に示す封止体MRは図示を省略している。
【0037】
以下の説明において、ワイヤの「ループ高さ」という用語を用いる場合がある。本明細書では、半導体チップCPの上面3tを基準面として、ワイヤBWの高さの最大値のことを「ループ高さ」として説明する。なお、以下では、複数のワイヤの「ループ高さ」を比較して、相対関係について説明する。
【0038】
本実施の形態の半導体装置PKG1のように、複数のワイヤBWを有する半導体装置の場合、複数のワイヤBWのそれぞれの接合部において、高い電気的接続信頼性を確保することが好ましい。
【0039】
ところが、本願発明者は、半導体チップCPに接続されている複数のワイヤBWのうち、特定の位置に配置されているワイヤBWにおいて、他のワイヤBWと比較してワイヤBWと電極3PDとの接続信頼性が低下する場合があることを見出した。詳しくは、半導体パッケージに温度サイクル負荷が印加されることにより、半導体パッケージ内に応力が発生する。複数のワイヤBWと複数の電極3PDとの接合部分のうち、特に応力が集中して印加される箇所において、接合部の損傷が生じる可能性があることが判った。
【0040】
図4に示すように、平面視において四角形を成す半導体チップCPを有する半導体装置PKG1の場合、半導体チップCPの4つの辺3sのそれぞれが交差する4つの角の近傍において、応力集中が生じやすい。また、応力集中に伴う接合部の破損は、アルミニウム製の電極3PDに、銅製のワイヤBWを接合する場合に、電極3PDとワイヤBWのボール部の接合界面において生じやすいことが判った。
【0041】
本願発明者は、応力に起因するワイヤBWと電極3PDとの接合部の損傷を植生する方法について検討を行い、ワイヤBWのループ高さRH(後述する
図7参照)を高くすることにより、接合部の損傷を抑制できることを見出した。ループ高さRHは、複数のワイヤBWのそれぞれのループ高さの総称であり、後述するループ高さRH1(
図7参照)、ループ高さRH2(
図8参照)、ループ高さRH3(
図9参照)、ループ高さRH4(
図11参照)、ループ高さRH5(
図11参照)、ループ高さRHL2(
図13参照)、ループ高さRH6(
図15参照)、およびループ高さRH7(
図15参照)を含む。
【0042】
一方、ワイヤBWのループ高さRHを高くする場合、ワイヤBWの長さが長くなる。ワイヤBWを経由する電流経路のインピーダンスは、ワイヤBWの長さに比例して大きくなる。したがって、電流経路にインピーダンスを低減させる観点からは、ワイヤBWの長さは短い方が好ましい。
【0043】
そこで、本実施の形態では、応力集中が生じやすい箇所に配置されている電極3PDに接続されているワイヤBWのループ高さを選択的に高くして、応力集中が生じにくい箇所に配置されている電極3PDに接続されているワイヤBWのループ高さは、低くしている。
【0044】
すなわち、
図5および
図6に示すように、複数の電極3PDは、半導体チップCPの辺3s1に沿って配列されている複数の第1列目電極PDL1を含んでいる。複数の第1列目電極PDL1は、配列の一方の端部に配置されている端部電極PDE1(
図5参照)と、配列の他方の端部に配置されている端部電極PDE2(
図6参照)と、端部電極PDE1と端部電極PDE2との間に配置されている非端部電極PDM1と、を有している。複数のワイヤBWは、端部電極PDE1と複数の端子2BPのうちの端子BP1のそれぞれに接合されているワイヤBW1を含んでいる。複数のワイヤBWは、非端部電極PDM1と複数の端子2BPのうちの端子BP2のそれぞれに接合されているワイヤBW2を含んでいる。
【0045】
図10に示すように、ワイヤBW1のループ高さRH1は、ワイヤBW2のループ高さRH2よりも高い。ワイヤBW1のループ高さRH1は、例えば200μmである。一方、ワイヤBW2のループ高さRH2は、例えば100μmである。
【0046】
本願発明者の検討によれば、半導体チップCPの角において上記した応力集中が生じやすいことが判っている。また、半導体チップCPの角からの距離が遠い位置では、応力集中は生じにくい。本願発明者の検討によれば、半導体チップCPの一辺の長さに対して20パーセントの長さを第1長さとすると、半導体チップCPの角からの距離が第1長さよりも小さい領域に配置されている電極3PDにおいては、応力集中による影響を考慮した構造とすることが好ましい。
【0047】
例えば、本実施の形態の場合、半導体チップCPが備えている4つの辺3sのそれぞれの長さは、5mmである。半導体チップCPの場合、半導体チップCPの角から1mm四方の範囲に配置されている電極3PDにおいて、上記した応力集中が生じやすいことが判っている。
図4から
図6のそれぞれでは、半導体チップCPの上面3tのうち、4つの角のいずれかを含む1mm四方の範囲を角部領域3CRとして示している。
【0048】
また、半導体チップCPの角に近い位置に配置されている電極3PD程、応力集中が生じやすい。
図5に示す例の場合、端部電極PDE1において最も応力集中が生じやすい。端部電極PDE1から辺3s1に交差する辺3s3までの離間距離GP1は、1mm未満(言い換えれば、上記した第1長さ未満)である。一方、端部電極PDE1から辺3s1に交差する辺3s3までの離間距離GP2は、1mm(言い換えれば、上記した第1長さ)よりも大きい。
【0049】
半導体装置PKG1に温度サイクル負荷が印加された場合、端部電極PDE1に応力集中が生じる。本実施の形態の場合、
図7に示す端部電極PDE1に接続されているワイヤBW1のループ高さRH1が
図8に示す非端部電極PDM1に接続されているワイヤBW2のループ高さRH2よりも高いので、応力集中が生じたとしても、ワイヤBW1と端部電極PDE1との接合部分の損傷を抑制できる。
【0050】
図8に示す非端部電極PDM1に接続されているワイヤBW2のループ高さRH2は、
図7に示す端部電極PDE1に接続されているワイヤBW1のループ高さRH1よりも低い。言い換えれば、応力集中が生じにくい箇所に接続されているワイヤBW2のループ高さRH2が低い。このため、ワイヤBW2を含む電流経路のインピーダンスを低減させることができる。
【0051】
上記の通り、端部電極PDE1は、非端部電極PDM1と比較して応力集中が生じやすい。同様に、複数の第1列目電極PDL1のうち、端部電極PDE1の反対側の端部に配置されている端部電極PDE2(
図6参照)においても、応力集中が生じやすい。このため、
図6に示す端部電極PDE2に接続されているワイヤBW3においても、
図5に示すワイヤBW1と同様の対策を施すことが好ましい。
【0052】
すなわち、
図6に示すように、複数のワイヤBWは、端部電極PDE2と複数の端子2BPのうちの端子BP3のそれぞれに接合されているワイヤBW3、を更に有している。
図9に示すワイヤBW3のループ高さRH3は、
図8に示すワイヤBW2のループ高さRH2よりも高い。ワイヤBW3のループ高さRH3は、
図7に示すワイヤBW1のループ高さRH1と等しく、例えば200μmである。また、端部電極PDE2から辺3s4に交差する辺3s4までの離間距離GP3、および端部電極PDE2から
図5に示す辺3s3までの離間距離のそれぞれは、1mm(言い換えれば、上記した第1長さ)よりも大きい。
【0053】
なお、
図4に示す例では、全ての電極3PDにワイヤBWが接合されている。ただし、変形例として、複数の電極3PDのうちの一部には、ワイヤBWが接続されていない場合がある。上記したように、応力集中により生じる課題は、電極3PDとのワイヤBWとの接合界面において生じる。このため、ワイヤBWが接続されていない電極3PDは、上記した複数の第1列目電極PDL1には含まれない。言い換えれば、複数の第1列目電極PDL1には、複数のワイヤBWのいずれかが接続されている。
【0054】
上記したように、応力集中の影響による接続信頼性の低下は、複数のワイヤBWのうち、半導体チップCPの角に最も近い端部電極PDE1に接続されているワイヤBW1と端部電極PDE1との接合界面において発生し易い。ただし、半導体チップCPの角に配置されている複数のワイヤBWのそれぞれにおいてワイヤBW1と同様の対策を施すことが好ましい。
【0055】
本実施の形態の場合、
図4から
図6に示す角部領域3CRに配置されている電極3PDに接続されている複数のワイヤBWのそれぞれのループ高さは、ワイヤBW1のループ高さと同様に、
図5、
図8、および
図10に示すワイヤBW2のループ高さRH2よりも高い。
【0056】
図11は、
図5に示す角部電極に接続されているワイヤまたは
図6に示す角部電極に接続されているワイヤの延在方向に沿った拡大断面図である。例えば、
図5に示すように、複数の第1列目電極PDL1は、端部電極PDE1の隣に配置されている角部電極PDC1、を更に有している。複数のワイヤBWは、角部電極PDC1と複数の端子2BPのうちの端子BP4のそれぞれに接合されているワイヤBW4を更に有している。
図11に示すワイヤBW4のループ高さRH4は、
図8に示すワイヤBW2のループ高さRH2より高い。本実施の形態の例では、ワイヤBW4のループ高さRH4は、
図7に示すワイヤBW1のループ高さRH1と等しい。
【0057】
また例えば、
図6に示すように、複数の第1列目電極PDL1は、端部電極PDE2の隣に配置されている角部電極PDC2、を更に有している。複数のワイヤBWは、角部電極PDC2と複数の端子2BPのうちの端子BP5のそれぞれに接合されているワイヤBW5を更に有している。
図11に示すワイヤBW5のループ高さRH5は、
図8に示すワイヤBW2のループ高さRH2より高い。本実施の形態の例では、ワイヤBW5のループ高さRH5は、
図7に示すワイヤBW1のループ高さRH1と等しい。
【0058】
なお、「ループ高さが等しい」とは、設計上ループ高さが同じ値であることを意味する。このため、機械的な精度等に起因して、ループ高さが僅かに異なっている場合も、設計上のループ高さが同じであれば、上記した「ループ高さが等しい」に含まれる。例えば、
図10に示す例では、ループ高さRH2の設計値は、100μmであるのに対し、ループ高さRH1およびループ高さRH3の設計値は、200μmである。この場合、機械的な精度等に起因して、ループ高さRH1とループ高さRH3との間に数μm程度の誤差が生じる場合があるが、この場合も、「ループ高さRH1とループ高さRH3とは互いに等しい」と言える。ループ高さRH1とループ高さRH3との差は、ループ高さRH1とループ高さRH2との差、と比較して無視できる程小さい。
【0059】
以下の説明において、「ループ高さ」が「等しい」という表現を用いる場合がある。この場合、上記と同様に、「設計値が等しい」という意味で用いられるので、特に異なる意味に解釈するように明示した場合を除き、ループ高さが僅かに異なっている場合も含まれる。
【0060】
また、
図5および
図6に示す複数の第1列目電極PDL1のうち、角部領域3CR内に配置されている電極3PDは、端部電極PDE1(
図5参照)、端部電極PDE2(
図6参照)、角部電極PDC1(
図5参照)、および角部電極PDC2(
図6参照)の4個のみである。このため、本実施の形態の場合、角部電極PDC1と角部電極PDC2との間に配列されている複数の電極3PDに接続されている複数のワイヤBWのそれぞれのループ高さは、
図8に示すワイヤBW2のループ高さRH2と等しく、例えば100μmである。
【0061】
図5および
図6では、
図8に示すワイヤBW2のループ高さRH2と等しいループ高さを有しているワイヤBWについて、ワイヤBW2Aの符号を付して示している。
【0062】
<電極が複数列で配列されている場合の変形例>
次に、半導体チップCPの一辺に沿って電極が複数列で配列されている場合の変形例について説明する。
図12は、
図4に対する変形例である半導体装置の一部分を示す拡大平面図である。
図12では、第1列目ワイヤBWL1と第2列目ワイヤBWL2との識別を容易にするため、複数の第2列目ワイヤBWL2のそれぞれを点線で図示している。
図13は、
図12に示す端部電極に接続されているワイヤ、非端部電極に接続されているワイヤ、および第2列目ワイヤのそれぞれが重ねて示された拡大断面図である。
【0063】
図12および
図13に示す半導体装置PKG2は、電極3PDおよび端子2BPのそれぞれが、複数列(
図12ではそれぞれ2列)で配列されている点で、
図4から
図11に示す半導体装置PKG1と相違する。
【0064】
半導体装置PKG2が有する複数の電極3PDは、複数の第1列目電極PDL1よりも辺3s1から遠い位置に配列され、かつ、半導体チップCPの辺3s1に沿って配列されている複数の第2列目電極PDL2を含んでいる。半導体装置PKG2が有する複数のワイヤBWは、複数の第1列目電極PDL1のいずれかと複数の端子2BPのいずれかのそれぞれに接合されている複数の第1列目ワイヤBWL1を含んでいる。また、複数のワイヤBWは、複数の第2列目電極PDL2のいずれかと複数の端子2BPのいずれかのそれぞれに接合されている複数の第2列目ワイヤBWL2を含んでいる。
図13に示すように、複数の第2列目ワイヤBWL2のそれぞれのループ高さRHL2は、ワイヤBW2のループ高さRH2よりも高い。第2列目ワイヤBWL2のループ高さRHL2は、例えば200μmである。
【0065】
複数の第2列目ワイヤBWL2のそれぞれのループ高さRHL2は、複数の第1列目ワイヤBWL1との接触を回避するため、複数の第2列目ワイヤBWL2のそれぞれのループ高さRHL2は、ワイヤBW2のループ高さRH2よりも高い。
【0066】
複数の第2列目電極PDL2のうちの一部(
図12に示す例では、配列の両端に位置する2個の第2列目電極PDL2)は、上記した応力集中による接合部分の損傷を考慮すべき領域、すなわち、角部領域3CRに配置されている。
【0067】
詳しくは、半導体装置PKG2の複数の第2列目電極PDL2は、配列の一方の端部に配置されている端部電極PDE3と、配列の他方の端部に配置されている端部電極PDE4と、を有している。複数のワイヤBWは、端部電極PDE3と複数の端子2BPのいずれか(
図12に示す端子BP6)のそれぞれに接合されているワイヤBW6を含んでいる。複数のワイヤBWは、端部電極PDE4と複数の端子2BPのいずれか(
図12に示す端子BP7)のそれぞれに接合されているワイヤBW7を含んでいる。端部電極PDE3から辺3s1に交差する辺3s3までの離間距離は、1mm未満(言い換えれば、辺3s1の長さの20パーセント未満)である。同様に、端部電極PDE4から辺3s1に交差する辺3s4までの離間距離は、1mm未満(言い換えれば、辺3s1の長さの20パーセント未満)である。
【0068】
しかし、上記したように、複数の第2列目ワイヤBWL2のそれぞれのループ高さRHL2は、第2列目ワイヤBWL2のループ高さRHL2よりも高く設定されている。このため、応力集中による接合部の損傷を抑制する観点からは、複数の第2列目ワイヤBWL2のうち、配列の端部に配置されているワイヤBW6およびワイヤBW7のループ高さを非端部に配置されているワイヤBWのループ高さと比較して、高くする必要はない。例えば、
図12に示す例では、複数の第2列目ワイヤBWL2のそれぞれのループ高さRHL2は、互いに等しく、例えば200μmである。
【0069】
一方、本変形例の場合でも、複数の第1列目電極PDL1に接合されている複数の第1列目ワイヤBWL1のそれぞれのループ高さは、
図4から
図11を用いて説明した半導体装置PKG1と同様である。
【0070】
すなわち、
図13に示すように、ワイヤBW1のループ高さRH1は、ワイヤBW2のループ高さRH2よりも高い。ワイヤBW1のループ高さRH1は、例えば200μmである。一方、ワイヤBW2のループ高さRH2は、例えば100μmである。この例では、複数の第2列目ワイヤBWL2のそれぞれのループ高さRHL2は、ワイヤBW1のループ高さと等しい。
【0071】
また、
図13に示すワイヤBW3のループ高さRH3は、ワイヤBW2のループ高さRH2よりも高い。ワイヤBW3のループ高さRH3は、複数の第2列目ワイヤBWL2のそれぞれのループ高さRHL2と等しく、例えば200μmである。
【0072】
また、複数の第1列目電極PDL1は、端部電極PDE1の隣に配置されている角部電極PDC1、を有している。複数のワイヤBWは、角部電極PDC1と複数の端子2BPのうちの端子BP4のそれぞれに接合されているワイヤBW4を更に有している。複数の第1列目電極PDL1は、端部電極PDE2の隣に配置されている角部電極PDC2、を更に有している。複数のワイヤBWは、角部電極PDC2と複数の端子2BPのうちの端子BP5のそれぞれに接合されているワイヤBW5を更に有している。
【0073】
本変形例の場合、ワイヤBW4のループ高さRH4(
図11参照)およびワイヤBW5のループ高さRH5(
図11参照)は、複数の第2列目ワイヤBWL2との干渉を考慮して設計される。例えば、
図12に示す例では、ワイヤBW4およびワイヤBW5のそれぞれは、第2列目ワイヤBWL2と交差せず、互いに干渉しない。このため、ワイヤBW4のループ高さRH4およびワイヤBW5のループ高さRH5のそれぞれは、
図13に示すワイヤBW1のループ高さRH1と等しい。
【0074】
一方、ワイヤBW4およびワイヤBW5が第2列目ワイヤBWL2と干渉する懸念がある場合には、変形例として後述するように、ワイヤBW4のループ高さRH4(
図11参照)およびワイヤBW5のループ高さRH5(
図11参照)が、干渉する可能性がある第2列目ワイヤBWL2のループ高さRHL2よりも低くなるように設計される場合がある。
【0075】
図12に示す例の場合、複数の端子2BPは、第1方向に沿って配列されている複数の第1列目端子BPL1と、複数の第1列目端子BPL1よりも半導体チップCPから遠い位置に、第1方向に沿って配列されている複数の第2列目端子BPL2と、を含んでいる。複数の第1列目ワイヤBWL1は複数の第1列目端子BPL1に接続されている。複数の第2列目ワイヤBWL2は複数の第2列目端子BPL2に接続されている。このように、複数の第1列目電極PDL1と複数の第1列目端子BPL1とが接続され、かつ、複数の第2列目電極PDL2と複数の第2列目端子BPL2とが接続されていることで、複数の第1列目ワイヤBWL1と、複数の第2列目ワイヤBWL2と、の干渉を回避し易い。
【0076】
ただし、図示は省略するが、複数の電極3PDと複数の端子2BPとの接続関係は、
図12に示す態様の他、種々の変形例がある。例えば、複数の第1列目電極PDL1のうちの一部が、複数の第2列目端子BPL2のいずれかに接続されている場合、あるいは、複数の第1列目電極PDL1のうちの一部が、複数の第2列目端子BPL2のいずれかに接続されている場合がある。また例えば、複数の電極3PDおよび複数の端子2BPのうちの一方または両方が、3列以上で配列されている場合がある。
【0077】
図12および
図13に示す半導体装置PKG2は、上記した相違点を除き、
図1から
図11を用いて説明した半導体装置PKG1と同様である。このため、重複する説明については省略する。
【0078】
<第1列目ワイヤのループ高さの変形例>
次に、
図12および
図13を用いて説明した半導体装置PKG2に対する変形例として、
図12に示すワイヤBW6およびワイヤBW7のループ高さの変形例について説明する。
図14は、
図12に対する変形例である半導体装置の一部分を示す拡大平面図である。
図14では、
図12と同様に複数の第2列目ワイヤBWL2のそれぞれを点線で図示している。
図15は、
図14に示す端部電極に接続されているワイヤ、非端部電極に接続されているワイヤ、角部電極に接続されたワイヤ、および第2列目ワイヤのそれぞれが重ねて示された拡大断面図である。
【0079】
図14および
図15に示す半導体装置PKG3は、角部電極PDC1に接続されているワイヤBW6のループ高さRH6(
図15参照)、および角部電極PDC2に接続されているワイヤBW7のループ高さRH7(
図15参照)のそれぞれが、ループ高さBW1よりも低くなっている点で
図12および
図13に示す半導体装置PKG2と相違する。
【0080】
図15に示すように、半導体装置PKG3が有しているワイヤBW6のループ高さRH6は、例えば150μmである。すなわち、ワイヤBW6のループ高さRH6は、複数の第2列目ワイヤBWL2のそれぞれのループ高さRHL2より低く、かつ、ワイヤBW2のループ高さRH2よりも高い。同様に、半導体装置PKG3が有しているワイヤBW7のループ高さRH7は、例えば150μmである。すなわち、ワイヤBW7のループ高さRH7は、複数の第2列目ワイヤBWL2のそれぞれのループ高さRHL2より低く、かつ、ワイヤBW2のループ高さRH2よりも高い。
【0081】
本変形例の場合、ワイヤBW6のループ高さRH6が複数の第2列目ワイヤBWL2のそれぞれのループ高さRHL2より低く、かつ、ワイヤBW2のループ高さよりも高くなっていることにより以下の効果が得られる。すなわち、応力集中に伴う角部電極PDC1とワイヤBW6との接合部の損傷を抑制し、かつ、ワイヤBW6と第2列目ワイヤBWL2との接触を回避することができる。
【0082】
同様に、本変形例の場合、応力集中に伴う角部電極PDC2とワイヤBW7との接合部の損傷を抑制し、かつ、ワイヤBW7と第2列目ワイヤBWL2との接触を回避することができる。
【0083】
第1列目ワイヤBWL1と第2列目ワイヤBWL2との接触するリスクは、例えば、第1列目ワイヤBWL1と第2列目ワイヤBWL2とが平面視において交差している時、あるいは、第1列目ワイヤBWL1と第2列目ワイヤBWL2との離間距離が小さい場合に増大する。
図15に示す例の場合、ワイヤBW6は、複数の第2列目ワイヤBWL2のいずれかと交差している。
【0084】
平面視において半導体チップCPと重なる位置、あるいはその近傍において第1列目ワイヤBWL1と第2列目ワイヤBWL2とが交差している時、第1列目ワイヤBWL1と第2列目ワイヤBWL2との接触するリスクは特に大きい。
【0085】
本変形例の場合、第1列目ワイヤBWL1と第2列目ワイヤBWL2との接触するリスクが低減できるので、複数の電極3PD、および複数の端子2BPのレイアウトに関する設計上の自由度が向上する。
【0086】
図14および
図15に示す半導体装置PKG3は、上記した相違点を除き、
図12および
図13を用いて説明した半導体装置PKG2と同様である。このため、重複する説明については省略する。
【0087】
<ワイヤループ形状の変形例>
次に、
図7から
図11を用いて説明したワイヤBWのループ形状の変形例について説明する。
図16は、ワイヤのネック角度を定義するための説明図である。
図17は、
図7および
図9に対する変形例を示す拡大断面図である。なお、
図17に示す半導体装置PKG4は、ワイヤBW1およびワイヤBW3のループ形状を除き、
図1から
図11を用いて説明した半導体装置PKG1、
図12および
図13に示す半導体装置PKG2、または
図14および
図15に示す半導体装置PKG3と同様である。このため、重複する説明は省略し、必要に応じて既に説明した図を用いて説明する。例えば、
図5、
図12、または
図14に示すワイヤBW2のループ形状は、
図8と同様なので、半導体装置PKG4の説明として
図8を流用する。
【0088】
まず、「ネック角度」の定義について説明する。
図4、
図12、または
図14に示す複数のワイヤBWのそれぞれは、
図16に示すように、複数の電極3PDのいずれかに接合されているボール部BWBと、ボール部BWBに連なり、かつ、半導体チップCPの上方に向かって延びている起立部BWSと、を有している。半導体チップCPの上面3tのうち、ボール部BWBと辺3s1との間に位置する部分と、起立部BWSとが成す角度をネック角度θとする。ネック角度θは、複数のワイヤBWのそれぞれが有しているネック角度の総称であって、
図17に示すネック角度θ1および
図8に示すネック角度θ2を含む。
【0089】
なお、上記した辺3s1は、平面視において、辺3s1を跨ぐように延びているワイヤBWのネック角度θを定義する際に利用される。例えば、
図4において、辺3s2を跨ぐように延びているワイヤBWのネック角度を定義する場合には、上記した辺3s1は、辺3s2に置き換えられる。
図4に示す辺3s3または辺3s4についても同様である。
【0090】
図17に示すワイヤBW1のネック角度θ1は、
図8に示すワイヤBW2のネック角度θ2よりも大きく、かつ、90度よりも大きい。同様に、
図17に示すワイヤBW3のネック角度θ1は、
図8に示すワイヤBW2のネック角度θ2よりも大きく、かつ、90度よりも大きい。
【0091】
図17に示すワイヤBW1およびワイヤBW3のようにネック角度θ1が90度よりも大きい場合、
図8に示すネック角度θ2が90度以下であるワイヤBW2と比較して、応力集中が発生した時にワイヤBWと電極3PDとの接合部においてクラックや剥離が生じ難い。
【0092】
このため、
図5から
図15の各図を用いて説明した対策に加えて、応力集中の影響が最も大きいワイヤBW1およびワイヤBW3に
図17に示す変形例の構造を適用することにより、半導体チップCPと複数のワイヤBWとの接続信頼性をさらに向上させることができる。
【0093】
なお、
図17では、
図5、
図6、
図12、または
図14に示すワイヤBW1およびワイヤBW3のネック角度θ1を90度よりも大きくした例を取り上げて説明した。変形例としては、例えば
図12または
図14に示すワイヤBW6およびワイヤBW7のそれぞれのネック角度が90度よりも大きい場合がある。
【0094】
以上、実施の形態および代表的な変形例について図面を用いて説明したが、上記した技術は、既に説明した変形例以外にも種々の変形例が適用可能である。例えば、上記実施の形態および変形例では、半導体チップCPの各辺に沿って配列されている複数の電極3PDのうち、辺3s1に沿って配列されている電極3PDに接続されているワイヤBWのループ高さやループ形状を取り上げて説明した。上記した技術は、
図4に示す辺3s2、辺3s3、および辺3s3のそれぞれに適用することができる。
【0095】
また、上記実施の形態および変形例では、各角部領域3CRに角部電極が1個ある例について説明したが、角部電極の数は1個には限定されず、2個以上の場合がある。また、この場合、複数の角部電極に接続されているワイヤのうち、一部がワイヤBW1と同じループ高さになっており、他の一部が
図15に示すワイヤBW6と同じループ高さになっている場合がある。
【0096】
さらに、上記した実施の形態および変形例のうち、一部または全部の構成を他の変形例と組み合わせて適用することができる。
【0097】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0098】
2b 下面(面、主面、実装面、第2主面)
2BP,BP1,BP2,BP3,BP4,BP5,BP6,BP7 端子(ボンディングパッド、内部インタフェース端子)
2GP グランドパターン
2IL 絶縁層
2LD 端子(ランド、外部インタフェース端子)
2s,3s,3s1,3s2,3s3,3s4 辺
2t 上面(面、主面、チップ搭載面)
2THW スルーホール配線
2VP 電源パターン
2WP 配線パターン
3b 下面(主面、裏面)
3CR 角部領域
3PD 電極(電極パッド)
3t 上面(主面、表面)
BPL1 第1列目端子
BPL2 第2列目端子
BW,BW1,BW2,BW2A,BW3,BW4,BW5,BW6,BW7 ワイヤ
BWB ボール部
BWL1 第1列目ワイヤ
BWL2 第2列目ワイヤ
BWS 起立部
CP 半導体チップ
DBM ダイボンド材
GP1,GP2,GP3 離間距離
MR 封止体
PDC1,PDC2 角部電極
PDE1,PDE2,PDE3,PDE4 端部電極
PDL1 第1列目電極
PDL2 第2列目電極
PDM1 非端部電極
PKG1,PKG2,PKG3,PKG4 半導体装置
SB 半田ボール(半田材、外部端子、電極、外部電極)
SR1,SR2 絶縁膜(ソルダレジスト膜)
SUB1 配線基板
WL1,WL2 配線層
θ,θ1,θ2 ネック角度