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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131902
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】光軸調節方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/61 20060101AFI20240920BHJP
   G01N 21/05 20060101ALI20240920BHJP
   G01N 21/39 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G01N21/61
G01N21/05
G01N21/39
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042460
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(74)【代理人】
【識別番号】100119297
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 正男
(72)【発明者】
【氏名】山田 義裕
(72)【発明者】
【氏名】戸村 啓二
【テーマコード(参考)】
2G057
2G059
【Fターム(参考)】
2G057AA01
2G057AA02
2G057AB02
2G057AB04
2G057AB06
2G057AB08
2G057AC03
2G057AD20
2G057BA05
2G057BB01
2G057BB06
2G057DC07
2G057EA01
2G057EA06
2G057EA08
2G057GA01
2G057GA05
2G057JA03
2G059AA01
2G059BB01
2G059DD16
2G059EE01
2G059EE02
2G059GG01
2G059GG02
2G059HH01
2G059KK01
2G059LL01
2G059MM01
2G059NN02
(57)【要約】
【課題】送信側から受信側に光を到達させることができる光軸調節方法を提供する。
【解決手段】計測場3を仕切る壁を貫通する筒部7の窓9の外側に計測装置4を設置し、筒部7内をエアパージする。筒部7内に温度を調節したパージエアを吹き込むことによって及び/又は筒部7の近傍に温度調節装置14を設置することによって、筒部7内に温度勾配を形成し、計測装置4が発光する光の屈折を制御する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測場を仕切る壁を貫通する筒部の窓の外側に計測装置を設置し、
前記筒部内をエアパージし、
前記筒部内に温度を調節したパージエアを吹き込むことによって及び/又は前記筒部の近傍に温度調節装置を設けることによって、前記筒部内に温度勾配を形成し、前記計測装置が発光する光及び/又は受光する光の屈折を制御する光軸調節方法。
【請求項2】
パージエアを噴き出す複数のノズルを備え、
各ノズルから噴き出すパージエアの温度を調節することを特徴とする請求項1に記載の光軸調節方法。
【請求項3】
前記温度調節装置を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の光軸調節方法。
【請求項4】
温度計測装置が測定した前記筒部内の温度勾配の情報及び/又は受信側の計測装置での光軸の到達位置の情報に基づいて、前記筒部内に吹き込むパージエアの温度を調節し及び/又は前記温度調節装置を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の光軸調節方法。
【請求項5】
計測場を仕切る壁を貫通する筒部の窓の外側に設置される計測装置と、
前記筒部内にパージエアを吹き込む少なくとも一つのノズルと、
前記少なくとも一つのノズルから噴き出すパージエアの温度を調節するパージエア温度調節装置及び/又は前記筒部の近傍に設けられる温度調節装置と、
前記パージエア温度調節装置及び/又は前記温度調節装置を制御することによって、前記筒部内に温度勾配を形成し、前記計測装置が発光する光及び/又は受光する光の屈折を制御する制御装置と、を備える光軸調節装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信側から受信側に光を到達させる光軸調節方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
計測場を流れるガスの濃度の計測方法として、計測場にレーザ光等の光を通過させ、送信側の光の強度と受信側の光の強度の比からガスの特定成分(例えば一酸化炭素、酸素等)の濃度を計測する方法が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
図4に示すように、灰、ダスト等の塵芥53が多い計測場50でレーザ光等の光を用いた計測を行うとき、計測場50を仕切る壁50aに筒部51を貫通させ、筒部51に光を透過する窓52を設置して外に塵芥53が漏れないようにし、窓52の外側に計測装置54を設置し、窓52に塵芥53が付着しないように筒部51内をエアパージするのが一般的である。符号54は、レーザ光等の光を発光する計測装置(送信機54)である。符号55は、筒部51内にパージエアを吹き込むノズルである。図4には、送信側の筒部51と計測装置54(送信機54)を示すが、計測場50を挟んだ反対側にも筒部と受信側の計測装置(受信機)が設置される。
【0004】
この場合、送信側と受信側の両方の狭い筒部51を光が貫通しないと、受信機に光が到達しない。従来の光軸調節装置では、送信機54の角度を機械的に調節することにより、送信機から受信機に光が到達するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-264814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、光軸が受信機から外れると、光軸がどの程度受信機からずれているかの情報が得られなくなり、光軸を受信機に合わせることが困難になる。筒部51の途中にミラーやプリズムを設ければ筒部51の中で光を屈折させることができるが、エアパージがさえぎられるのでミラーやプリズムにダストが付着するし、光軸が受信機から外れた場合には同様に光軸を受信機に合わせることが困難になる。
【0007】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、送信側から受信側に光を到達させることができる光軸調節方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、計測場を仕切る壁を貫通する筒部の窓の外側に計測装置を設置し、前記筒部内をエアパージし、前記筒部内に温度を調節したパージエアを吹き込むことによって及び/又は前記筒部の近傍に温度調節装置を設けることによって、前記筒部内に温度勾配を形成し、前記計測装置が発光する光及び/又は受光する光の屈折を制御する光軸調節方法である。
【0009】
本発明の他の態様は、計測場を仕切る壁を貫通する筒部の窓の外側に設置される計測装置と、前記筒部内にパージエアを吹き込む少なくとも一つのノズルと、前記少なくとも一つのノズルから噴き出すパージエアの温度を調節するパージエア温度調節装置及び/又は前記筒部の近傍に設けられる温度調節装置と、前記パージエア温度調節装置及び/又は前記温度調節装置を制御することによって、前記筒部内に温度勾配を形成し、前記計測装置が発光する光及び/又は受光する光の屈折を制御する制御装置と、を備える光軸調節装置である。
【発明の効果】
【0010】
光は進行方向に交わる方向に温度勾配があると屈折する。光の屈折率の大きさは温度勾配から理論的に予測することができる。本発明によれば、筒部内に温度を調節したパージエアを吹き込むことによって及び/又は筒部の近傍に温度調節装置を設けることによって、筒部内に温度勾配を形成し、計測装置が発光する光及び/又は受光する光の屈折を制御するので、送信側から受信側に光を到達させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態の光軸調節装置の構成を示す図(計測場の縦断面図)である。
図2】温度勾配に起因する光の屈折の原理を説明する図(筒部の縦断面図)である。
図3】送信側の筒部における光の屈折を説明する図(筒部の縦断面図)である。
図4】従来の筒部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態の光軸調節方法及び装置を説明する。ただし、本発明の光軸調節方法及び装置は、種々の形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態の光軸調節装置1,2(送信側の光軸調節装置1と受信側の光軸調節装置2)の構成を示す図である。符号3は計測場である。送信側の光軸調節装置1は、送信側の計測装置4(以下、送信機4という)を備える。受信側の光軸調節装置2は、受信側の計測装置5(以下、受信機5という)を備える。
【0014】
送信機4は、レーザ光等の光21を発光する。光21は計測場3を通過する。受信機5は、計測場3を通過(透過、反射又は散乱等)した光21を受光する。送信機4と受信機5は、通信線22を介して制御装置6に電気的に接続される。送信機4は、発光した光21の強度に関する情報を制御装置6に送信する。受信機5は、受光した光21の強度に関する情報を制御装置6に送信する。制御装置6は、送信機4が発光した光21の強度と受信機5が受光した光21の強度の比に基づいて、計測場3を流れるガスの特定成分(例えば一酸化炭素、酸素等)の濃度を計測する。計測場3は、壁3aによって仕切られる。壁3aは、例えば断熱壁である。
【0015】
計測場3は、例えば廃棄物焼却炉の排ガスが流れる煙道である。計測場3はこれに限定されるものではなく、エンジン、ガスタービン等の排ガスが流れる排気管でもよい。
【0016】
筒部7,8は、計測場3の壁3aを貫通する。筒部7,8には、光21を透過する窓9,10が設置される。窓9,10は、透明なガラス、樹脂等である。計測場3は、ダスト、灰等の塵芥を含む。窓9,10は、塵芥が外に漏れるのを防止する。送信機4と受信機5は、窓9,10の外側に設置される。窓9,10に塵芥が付着しないように、筒部7,8内はエアパージされる。符号11,12,13は、筒部7,8内にパージエアを吹き込むノズルである。
【0017】
送信側の光軸調節装置1は、送信機4、ノズル11,12、パージエア温度調節装置11b,12b、制御装置6を備える。送信機4は、上記のようにレーザ光等の光21を計測場3に照射する。送信機4は、例えばレーザ発振装置を備え、特定波長域のレーザ光を発光する。例えば測定対象が一酸化炭素の場合、送信機4は一酸化炭素を吸収する波長域のレーザ光を発光する。また、測定対象が酸素の場合、送信機4は酸素を吸収する波長域のレーザ光を発光する。送信機4として、レーザ発振装置の替わりに、発光ダイオード(LED)、重水素ランプ等の光源と光源が発光する光を平行光にするコリメートレンズを用いてもよい。
【0018】
ノズル11,12は、複数設けられる。ノズル11,12の数は、2以上であり、望ましくは4以上である。各ノズル11,12は、筒部7内に温度を調節したパージエアを噴き出す。ノズル11は、筒部7の上側に配置される。ノズル12は、筒部7の下側に配置される。ノズル11とノズル12は、筒部7の軸方向にずれて配置されてもよいし、筒部7の軸方向の同一位置に配置されてもよい。ノズル11,12の取付け位置を動かせるようにしてもよい。
【0019】
ノズル11には、ポンプ11a、パージエア温度調節装置11b、流量調節装置11cが接続される。ノズル12には、ポンプ12a、パージエア温度調節装置12b、流量調節装置12cが接続される。ポンプ11a,12aは、ノズル11,12にパージエアを供給する。パージエア温度調節装置11b,12bは、筒部7内にパージエアの温度勾配を形成するために設けられる。パージエア温度調節装置11b,12bは、例えばヒータであり、ノズル11,12が噴き出すパージエアの温度を調節する。パージエア温度調節装置11b,12bは、ノズル11が噴き出すパージエアの温度とノズル12が噴き出すパージエアの温度を互いに異ならせる。流量調節装置11c,12cは、パージエアの必要な流量を確保した上で、筒部7内にパージエアの温度勾配を形成するために設けられる。流量調節装置11c,12cは、例えば流量調節弁であり、ノズル11,12が噴き出すパージエアの流量を調節する。パージエア温度調節装置11b,12b、流量調節装置11c,12cは、制御装置6によって制御される。
【0020】
受信側の光軸調節装置2は、受信機5、ノズル13、パージエア温度調節装置13b、温度調節装置14、制御装置6を備える。制御装置6は、受信側の光軸調節装置2と送信側の光軸調節装置1とで共用される。受信機5は、計測場3を通過した光21を受光する。受信機5は、例えばフォトダイオード、フォトトランジスタ等の光検出器を備え、受光した光21の強度を検出する。
【0021】
ノズル13は、筒部8内に温度を調節したパージエアを吹き込む。ノズル13には、ポンプ13a、パージエア温度調節装置13bが接続される。ポンプ13aは、ノズル13にパージエアを供給する。パージエア温度調節装置13bは、例えばヒータであり、ノズル13が噴き出すパージエアの温度を調節する。なお、受信側には温度調節装置14が設けられているので、パージエア温度調節装置13bを省略することも可能である。
【0022】
温度調節装置14は、例えばヒータであり、筒部8内に温度勾配を形成するために筒部8の近傍に設けられる。温度調節装置14は、筒部8の上側又は下側に設けられて、筒部8の上側又は下側を加熱する。
【0023】
計測場3を流れるガスに特定成分(例えば一酸化炭素、酸素等)が含まれていると、計測場3を通過する光21が特定成分のガスによって吸収される。このため、受信機5に到達する光21の強度は、特定成分のガスの濃度によって変化する。制御装置6は、送信機4が発光した光21の強度と受信機5が受光した光21の強度の比を算出し、特定成分のガスの濃度を算出する。また、制御装置6は、パージエア温度調節装置11b,12b,13b、流量調節装置11c,12c、温度調節装置14を制御する。制御装置6は、CPU、メモリ、ユーザの操作を受け付けるインターフェース、表示装置等を備え、ユーザの操作及び記憶装置に記憶されたプログラムにしたがって特定成分のガスの濃度を算出し、これらの装置を制御する。
【0024】
なお、上記実施形態では、送信側に温度勾配を形成するためのノズル11,12を設け、筒部8内に温度勾配を形成するための温度調節装置14を受信側に設けているが、送信側に温度調節装置14を設け、受信側にノズル11,12を設けてもよい。また、上記実施形態では、送信側と受信側の両方に温度勾配を形成するための装置を設けているが、送信側のみに設けてもよいし、受信側のみに設けてもよい。また、送信側と受信側の少なくとも一方において、ノズル11,12と温度調節装置14を併用してもよい。
【0025】
以下に、筒部7,8内での温度勾配に起因する光21の屈折の原理を説明する。図2に示すように、筒部7,8内が高温と低温の二層になっていると仮定する。高温空気の屈折率をn1、低温空気の屈折率をn2とすると、二層の境界での屈折率n12は以下の数式で表される。
(数式)
n12=n2/n1=sin(i)/sin(r)
【0026】
入射角i=89°で高温が100℃、低温が50℃の二層の空気境界23に光21が入射したとすると、高温空気の屈折率n1が約1.000193、低温空気の屈折率n2が約1.000243となるので、出射角r=88.85°になる。図2の破線は温度勾配で屈折した光路(出射角r=88.85°)を示し、図2の実線は温度勾配がない時の光路(出射角r=89°)を示す。このとき、例えば4m先では光軸の到達位置を10mmずらすことができる。実際には温度はきれいな二層ではなく徐々に変化するため、計算はもっと複雑になるがホイヘンスの原理を利用することで屈折の大きさを理論的に予測できる。
【0027】
図3(a)に示すように、例えば筒部7の上側と下側にノズル11,12を設け、ノズル11,12から異なる温度のパージエアを噴き出せば、筒部7内に温度勾配を形成することができ、送信機4から発光する光21を屈折させることができる。符号24はダスト、灰等の塵芥である。また、図3(b)に示すように、上側のノズル11の位置と下側のノズル12の位置を筒部7の軸方向にずらせば、光21を多様に屈折させることができる。さらに、図3(c)に示すように、ノズル13と温度調節装置14を併用しても、光21を多様に屈折させることができる。受信側の筒部8でも同様である。
【0028】
制御装置6は、パージエア温度調節装置11b,12bと温度調節装置14を制御することによって、筒部7,8内に温度勾配を形成し、光21の屈折を制御する。制御装置6は、筒部7,8内に設けられた温度測定装置が測定した筒部7,8内の温度勾配の情報に基づいて、パージエア温度調節装置11b,12bと温度調節装置14を制御してもよい。また、制御装置6は、受信機5での光軸の到達位置の情報に基づいて、光軸が受信機5の受光面の中心にくるようにパージエア温度調節装置11b,12bと温度調節装置14を制御してもよい。受信機5での光軸の到達位置の情報に加えて到達位置での光軸の角度の情報を使用してもよい。
以下に、本実施形態の光軸調節装置1,2の効果を説明する。
【0029】
本実施形態の光軸調節装置1,2によれば、筒部7内に温度を調節したパージエアを吹き込むことによって及び/又は筒部8の近傍に温度調節装置14を設けることによって、筒部7,8内に温度勾配を形成し、光21の屈折を制御するので、送信機4から受信機5に光21を到達させることができる。
【0030】
送信側の光軸調節装置1がパージエアを噴き出す複数のノズル11,12を備え、各ノズル11,12から噴き出すパージエアの温度を調節するので、筒部7内にパージエアの温度勾配を容易に形成することができる。
【0031】
受信側の光軸調節装置2が温度調節装置14を備えるので、筒部8内にパージエアの温度勾配を容易に形成することができる。
【符号の説明】
【0032】
1…送信側の光軸調節装置
2…受信側の光軸調節装置
3…計測場
3a…壁
4…送信機(計測装置)
5…受信機(計測装置)
6…制御装置
7…筒部
8…筒部
9…窓
10…窓
11…ノズル
11b…パージエア温度調節装置
12…ノズル
12b…パージエア温度調節装置
13…ノズル
13b…パージエア温度調節装置
14…温度調節装置
21…光
図1
図2
図3
図4