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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131907
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/00 20060101AFI20240920BHJP
   H03K 17/08 20060101ALI20240920BHJP
   H03K 17/60 20060101ALI20240920BHJP
   H02M 1/08 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H03K17/00 B
H03K17/08 B
H03K17/60 Z
H02M1/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042470
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 佑貴
【テーマコード(参考)】
5H740
5J055
【Fターム(参考)】
5H740BA11
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5H740MM01
5H740MM08
5H740MM12
5J055AX32
5J055AX38
5J055BX16
5J055CX07
5J055CX23
5J055DX09
5J055DX61
5J055EX07
5J055EY01
5J055EY12
5J055EZ03
5J055EZ09
5J055EZ12
5J055EZ25
5J055FX04
5J055FX08
5J055FX32
5J055GX01
5J055GX02
5J055GX04
5J055GX05
(57)【要約】
【課題】短絡電流およびノイズの抑制を図る。
【解決手段】スイッチング素子1aは、入力信号Vinにもとづいてスイッチングして負荷を作動する。ラッチ回路1b1は、スイッチング素子1aに流れる電流の大きさに応じてスイッチング素子1aのゲート容量を充電する駆動電流の大きさを変化させるための切替信号a1をラッチし、スイッチング素子1aが所定状態の場合には解除信号a2にもとづいてラッチ状態を解除する。検出回路1cは、スイッチング素子1aの所定状態を検出して解除信号a2を出力する。駆動電流制御回路1bは、第1の駆動電流と、第1の駆動電流よりも大きな第2の駆動電流とを生成し、ラッチ回路1b1が解除信号a2によってラッチ状態が解除された場合には、ラッチ回路1b1の解除後の出力にもとづいて駆動電流の大きさを第1の駆動電流とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号にもとづいてスイッチングして負荷を作動するスイッチング素子と、
前記スイッチング素子に流れる電流の大きさに応じて前記スイッチング素子のゲート容量を充電する駆動電流の大きさを変化させるための切替信号をラッチし前記スイッチング素子が所定状態の場合には解除信号にもとづいてラッチ状態を解除するラッチ回路を含み、装置運用状態においてラッチされた前記切替信号にもとづいて前記駆動電流の大きさを制御する駆動電流制御回路と、
前記スイッチング素子の前記所定状態を検出して前記解除信号を出力する検出回路と、を備え、
前記駆動電流制御回路は、第1の駆動電流と、前記第1の駆動電流よりも大きな第2の駆動電流とを生成し、前記ラッチ回路が前記解除信号によって前記ラッチ状態が解除された場合には、前記ラッチ回路の解除後の出力にもとづいて前記駆動電流の大きさを前記第1の駆動電流とする、
半導体装置。
【請求項2】
前記所定状態は、前記スイッチング素子の過電流状態、前記スイッチング素子の過熱状態および装置電源電圧の低下状態のうちの少なくとも1つの状態を検出した状態であって、前記検出回路は前記所定状態において外部へのアラーム状態の通知および前記スイッチング素子の駆動を停止させるアラーム信号を出力し、
前記ラッチ回路に対して、前記アラーム信号が前記解除信号として入力される、
請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記所定状態は、前記スイッチング素子の過電流状態を検出した状態であって、前記検出回路は前記所定状態において前記スイッチング素子の駆動を停止させる過電流検出信号を出力し、
前記ラッチ回路に対して、前記過電流検出信号が前記解除信号として入力される、
請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記所定状態は、前記スイッチング素子に流れる前記電流が所定値以上の状態になったことを検出した状態であって、前記検出回路は前記所定状態において前記解除信号を出力する、
請求項1記載の半導体装置。
【請求項5】
前記所定状態として、前記スイッチング素子に流れる前記電流が所定電流値以上であり、かつ前記スイッチング素子に印加される駆動電圧が所定電圧以上の状態であることを検出した状態であって、前記検出回路は前記所定状態において前記解除信号を出力する、
請求項1記載の半導体装置。
【請求項6】
前記スイッチング素子に流れる前記電流が切替電流値を超えるか否かを検出し、前記電流が切替電流値を超えない場合には第1の切替信号を出力し、前記電流が切替電流値を超える場合には第2の切替信号を出力する切替電流値検出回路をさらに備え、
前記駆動電流制御回路は、前記ラッチ回路から出力されるラッチ信号にもとづいて、前記第1の駆動電流と、前記第2の駆動電流とのいずれかの選択を行うべき選択信号を出力する選択回路と、前記選択信号にもとづいて、前記第1の駆動電流と、前記第2の駆動電流とのいずれかを出力する駆動電流出力回路とをさらに備える、
請求項1記載の半導体装置。
【請求項7】
前記ラッチ回路は、前記第1の切替信号が入力すると前記入力信号にもとづいて前記第1の切替信号をラッチし、前記選択回路は、ラッチされた前記第1の切替信号にもとづいて、前記第1の駆動電流を選択する第1の選択信号を出力し、前記駆動電流出力回路は、前記第1の選択信号にもとづいて、前記第1の駆動電流を出力して前記スイッチング素子の前記ゲート容量を充電し、
前記ラッチ回路は、前記解除信号により前記ラッチ状態を解除するとラッチ解除出力信号を出力し、前記選択回路は、前記ラッチ解除出力信号にもとづいて、前記第1の駆動電流を選択する前記第1の選択信号を出力し、前記駆動電流出力回路は、前記第1の選択信号にもとづいて、前記第1の駆動電流を出力して前記スイッチング素子の前記ゲート容量を充電し、
前記ラッチ回路は、前記第2の切替信号が入力すると前記入力信号にもとづいて前記第2の切替信号をラッチし、前記選択回路は、ラッチされた前記第2の切替信号にもとづいて、前記第2の駆動電流を選択する第2の選択信号を出力し、前記駆動電流出力回路は、前記第2の選択信号にもとづいて、前記第2の駆動電流を出力して前記スイッチング素子の前記ゲート容量を充電する、
請求項6記載の半導体装置。
【請求項8】
前記スイッチング素子がターンオンしたときに対向アームのダイオードがリカバリ動作を行うときの電圧変化率の最大値が含まれる場合の前記スイッチング素子に流れる前記電流の第1の電流領域と、前記最大値が含まれない場合の前記スイッチング素子に流れる前記電流の第2の電流領域との境界値が前記切替電流値として設定される、
請求項6記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IPM(Intelligent Power Module)等の半導体装置には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの電力変換用のスイッチング素子が備えられている。また、近年では、IGBTに流れるコレクタ電流に応じて、IGBTを充電する駆動電流の大きさを制御する機能を有するIPMが開発されている。
【0003】
関連技術としては、例えば、半導体スイッチング素子をオフするタイミングで半導体スイッチング素子の2つの主電極間に流れる電流を検知してドライブ能力を調整する技術が提案されている(特許文献1)。また、パワー半導体スイッチング素子の動作温度を検出する温度検出手段の出力電圧と、それぞれ異なる基準電圧とを比較する複数のコンパレータを備え、複数のコンパレータの比較結果をラッチして比較結果を選択的に出力する技術が提案されている(特許文献2)。さらに、状態判別回路が電流と温度の状態をラッチしてリセット信号によりラッチが解除される技術が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/255640号
【特許文献2】特開2019-110677号公報
【特許文献3】特開2019-193410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、装置の再運転時における短絡発生時の短絡電流の抑制、およびノイズの抑制を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、半導体装置が提供される。半導体装置は、入力信号にもとづいてスイッチングして負荷を作動するスイッチング素子と、スイッチング素子に流れる電流の大きさに応じてスイッチング素子のゲート容量を充電する駆動電流の大きさを変化させるための切替信号をラッチしスイッチング素子が所定状態の場合には解除信号にもとづいてラッチ状態を解除するラッチ回路を含み、装置運用状態においてラッチされた切替信号にもとづいて駆動電流の大きさを制御する駆動電流制御回路と、スイッチング素子の所定状態を検出して解除信号を出力する検出回路と、を有する。また、駆動電流制御回路は、第1の駆動電流と、第1の駆動電流よりも大きな第2の駆動電流とを生成し、ラッチ回路が解除信号によってラッチ状態が解除された場合には、ラッチ回路の解除後の出力にもとづいて駆動電流の大きさを第1の駆動電流とする。
【発明の効果】
【0007】
1側面によれば、短絡電流およびノイズの抑制が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】半導体装置の一例を説明するための図である。
図2】ラッチ解除条件を有していない半導体装置の構成の一例を示す図である。
図3】駆動電流制御機能の動作を説明するためのタイムチャートである。
図4】IGBTの短絡波形の一例を示す図である。
図5】IGBTの短絡波形の一例を示す図である。
図6】IGBTの短絡波形の一例を示す図である。
図7】IGBTの短絡波形の一例を示す図である。
図8】半導体装置の構成の一例を示す図である。
図9】フィルタ回路の構成の一例を示す図である。
図10】ラッチ回路の構成の一例を示す図である。
図11】選択回路の構成の一例を示す図である。
図12】半導体装置の動作の一例を示すタイムチャートである。
図13】切替電流値を説明するための図である。
図14】半導体装置の変形例を示す図である。
図15】半導体装置の変形例を示す図である。
図16】半導体装置の変形例を示す図である。
図17】IGBTのスイッチング波形の模式図である。(a)は通常のスイッチング動作の波形を示し、(b)は短絡動作の波形を示す。
図18】電力変換装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において実質的に同一の機能を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する場合がある。
【0010】
図1は半導体装置の一例を説明するための図である。半導体装置1は、スイッチング素子1a、駆動電流制御回路1bおよび検出回路1cを有する。スイッチング素子1aは例えば、IGBTである。また、駆動電流制御回路1bは、ラッチ回路1b1を含む。
【0011】
スイッチング素子1aは、入力信号Vinにもとづいてスイッチングして負荷を作動する。ラッチ回路1b1は、スイッチング素子1aに流れる電流の大きさに応じてスイッチング素子1aのゲート容量(ゲート-エミッタ間容量)を充電する駆動電流(ゲート電流)の大きさを変化させるための切替信号a1をラッチし、スイッチング素子1aが所定状態の場合には解除信号a2にもとづいてラッチ状態を解除する。
【0012】
駆動電流制御回路1bは、装置運用状態においてラッチされた切替信号a1にもとづいて駆動電流の大きさを制御する。検出回路1cは、スイッチング素子1aの所定状態を検出して解除信号a2を出力する。
【0013】
ここで、駆動電流制御回路1bは、スイッチング素子1aのゲート容量を充電する場合、第1の駆動電流と、第1の駆動電流よりも大きな第2の駆動電流とを生成し、ラッチ回路1b1が解除信号a2によってラッチ状態が解除された場合には、ラッチ回路1b1の解除後の出力にもとづいて駆動電流の大きさを第1の駆動電流とする。
【0014】
このような半導体装置1の構成により、装置の再運転時には、制御可能な駆動電流のうちの小さい第1の駆動電流でスイッチング素子1aを充電して、大きい第2の駆動電流で充電されることを防ぐことができるので短絡発生時の短絡電流の抑制が可能になる。また、通常動作時のノイズの抑制が可能になる。
【0015】
次にラッチ回路に対してラッチ解除条件を有していない半導体装置について、図2から図8を用いて説明する。図2はラッチ解除条件を有していない半導体装置の構成の一例を示す図である。半導体装置2は、半導体デバイス部10および制御回路20を備える。半導体デバイス部10は、IGBT11、ダイオード12および温度検出用ダイオード13を含む。
【0016】
IGBT11は、制御回路20に入力される入力信号Vinにもとづいてターンオンし、コレクタからエミッタに向けてコレクタ電流Icを流して、図示しない負荷に一定の電力を供給する。ダイオード12は、IGBT11にコレクタ電流Icが流れる方向とは逆並列に接続されて、このときの負荷に流れる負荷電流を還流させる還流ダイオード(FWD:Free Wheel Diode)として機能する。
【0017】
IGBT11のエミッタは、基準電位(以下、GNDと呼ぶ)に接続される。また、IGBT11のセンスエミッタからは、コレクタ電流Icに応じて一定の比率でセンス電流Isが出力される。温度検出用ダイオード13は、複数のダイオードで構成されており、IGBT11の温度を検出するための温度検出素子となる。
【0018】
制御回路20は、IGBT11の駆動制御および保護制御を行う回路である。また、制御回路20は、IGBT11のセンスエミッタから出力されるセンス電流Isの大きさに応じてIGBT11を駆動するための駆動電流(ゲート電流)Igの大きさを制御する機能を有している。
【0019】
制御回路20は、駆動電流切替回路21、ゲート充放電回路22、アラーム出力回路23、駆動能力切替電流検出回路24、フィルタ回路25、過電流検出回路26、温度検出回路27、電源電圧検出回路28、ワンショット回路29a、29b、29c、3入力1出力の論理和素子IC1、センス抵抗Rsおよび定電流源IR1を備える。
【0020】
駆動電流切替回路21は、ラッチ回路21a、選択回路21b、抵抗R1、R2、R3およびスイッチsw1、sw2を含む。また、ゲート充放電回路22は、オペアンプop1、抵抗R4、R5、PMOSトランジスタmp1、mp2、NMOSトランジスタmn1、mn2、mn3、mn4およびバッファbf1、bf2、bf3を含む。さらに、アラーム出力回路23は、抵抗R6、NMOSトランジスタmn5および定電流源IR2を含む。
【0021】
各素子の接続関係において、IGBT11の入力信号Vinが入力される外部端子INは、ラッチ回路21aの一方の入力端およびバッファbf1、bf2の各入力端に接続される。ラッチ回路21aの出力端は、選択回路21bの入力端に接続される。選択回路21bから出力される選択信号VHは、スイッチsw1のスイッチ制御端子に入力され、選択回路21bから出力される選択信号VLは、スイッチsw2のスイッチ制御端子に入力される。
【0022】
抵抗R1の一端には、電源電圧Vccから生成された電圧Vrefが印加する。抵抗R1の他端は、抵抗R2の一端およびスイッチsw1の入力端に接続され、抵抗R2の他端は、抵抗R3の一端およびスイッチsw2の入力端に接続される。スイッチsw1の出力端は、スイッチsw2の出力端およびオペアンプop1の非反転入力端子(+)に接続される。
【0023】
PMOSトランジスタmp1のソースおよびPMOSトランジスタmp2のソースには、電源電圧Vccが印加される。PMOSトランジスタmp1のゲートは、PMOSトランジスタmp2のゲート、PMOSトランジスタmp1のドレインおよびNMOSトランジスタmn1のドレインに接続される。
【0024】
オペアンプop1の出力端は、抵抗R4の一端に接続され、オペアンプop1の反転入力端子(-)は、NMOSトランジスタmn1のソースおよび抵抗R5の一端に接続される。抵抗R4の他端は、NMOSトランジスタmn1のゲートおよびNMOSトランジスタmn2のドレインに接続される。NMOSトランジスタmn2のゲートは、バッファbf1の出力端に接続される。
【0025】
抵抗R3の他端は、NMOSトランジスタmn2のソース、抵抗R5の他端、NMOSトランジスタmn3のソース、NMOSトランジスタmn4のソース、IGBT11のエミッタおよびGNDに接続される。
【0026】
PMOSトランジスタmp2のドレインは、NMOSトランジスタmn3のドレイン、NMOSトランジスタmn4のドレインおよびIGBT11のゲートに接続される。NMOSトランジスタmn3のゲートは、バッファbf2の出力端に接続され、NMOSトランジスタmn4のゲートは、バッファbf3の出力端に接続される。
【0027】
駆動能力切替電流検出回路24に含まれるコンパレータcmp1の反転入力端子(-)は、閾値電圧Vthを出力する基準電源に接続され、コンパレータcmp1の出力端は、フィルタ回路25の入力端に接続される。コンパレータcmp1の非反転入力端子(+)は、過電流検出回路26の入力端、センス抵抗Rsの一端およびIGBT11のセンスエミッタに接続される。センス抵抗Rsの他端は、GNDに接続される。
【0028】
温度検出回路27の入力端は、定電流源IR1の出力端および温度検出用ダイオード13のアノード部に接続される。定電流源IR1の入力端には電源電圧Vccが印加され、温度検出用ダイオード13のカソード部はGNDに接続される。
【0029】
過電流検出回路26の出力端は、ワンショット回路29aの入力端に接続され、温度検出回路27の出力端は、ワンショット回路29bの入力端に接続され、電源電圧検出回路28の出力端は、ワンショット回路29cの入力端に接続される。
【0030】
ワンショット回路29a、29b、29cの各出力端は、論理和素子IC1の入力端に接続され、論理和素子IC1の出力端は、NMOSトランジスタmn5のゲートおよびバッファbf3の入力端に接続される。
【0031】
定電流源IR2の入力端には電源電圧Vccが印加され、定電流源IR2の出力端は、抵抗R6の一端に接続される。抵抗R6の他端は、アラーム出力端子OUTおよびNMOSトランジスタmn5のドレインに接続され、NMOSトランジスタmn5のソースは、GNDに接続される。
【0032】
<駆動電流とスイッチング速度-ノイズの関係>
IGBT11は、ゲート容量を充放電することでターンオン/ターンオフさせることのできるスイッチング素子である。制御回路20から供給される駆動電流Igが小さいと、充電に時間がかかるため、IGBT11のスイッチング速度(ターンオン速度)は遅くなる。この場合、コレクタ-エミッタ間電圧Vceの急峻な変化を抑制できるため、ノイズ(放射ノイズ)は小さくできるがスイッチング損失は大きくなる。
【0033】
一方、制御回路20から供給される駆動電流Igが大きいと、充電される速度が速いため、スイッチング速度は速くなる。この場合、コレクタ-エミッタ間電圧Vceが急峻に変化するため、ノイズは大きくなるがスイッチング損失は小さくなる。
【0034】
<駆動電流制御機能>
上記のように、ノイズとスイッチング損失には、トレードオフの関係があるが、半導体装置2ではIGBT11のコレクタ電流値に応じてIGBT11の駆動電流Igを制御する機能によって、このトレードオフの関係を最適化している。
【0035】
ここで、ノイズの指標となるリカバリdv/dtは、IGBT11に流れるコレクタ電流Icの大電流領域ではなく、小電流領域で最大値を取る傾向がある。そのため、半導体装置2の駆動電流制御機能では、小電流領域は駆動電流Igを小さくし、大電流領域では駆動電流Igを大きくしている。これにより、損失の増加を抑えながら、ノイズを小さくすることが可能となるため、ノイズとスイッチング損失のトレードオフの関係を最適化することができる。
【0036】
<駆動電流制御機能の動作>
図3は駆動電流制御機能の動作を説明するためのタイムチャートである。入力信号VinがHレベル(オフ)のときに、IGBT11のゲート電圧VgはLレベル(オフ)になって、IGBT11はターンオフする。また、入力信号VinがLレベル(オン)のときに、IGBT11のゲート電圧VgはHレベル(オン)になって、IGBT11はターンオンする。
【0037】
半導体装置2の駆動電流制御機能では、入力信号Vinがオフになるタイミングでコレクタ電流値を読み取り、次の入力信号Vinから駆動電流Igを大きくする。例えば、コレクタ電流Icが切替電流値(駆動電流の大小を切り替えるための閾値電流)を超えたときに入力信号Vinがオフで、そのタイミングでラッチ回路21aから出力されるラッチ信号LtがHレベルになり、その後、入力信号VinがHレベルからLレベルになるとIGBT11のゲートに大きな駆動電流Igが流れる。すなわち、IGBT11が前回ターンオフのときにラッチして次の入力信号Vinでターンオンされるときに駆動電流Igを大きくする。
【0038】
具体的には、駆動能力切替電流検出回路24は、IGBT11から出力されるセンス電流Isがセンス抵抗Rsを流れることで生じる電位であるセンス電圧Vsと、閾値電圧Vthとを比較する。
【0039】
そして、センス電圧Vsが閾値電圧Vth以上の場合(コレクタ電流Icが切替電流値以上の場合)、駆動能力切替電流検出回路24は、IGBT11の駆動能力を切替えるべきコレクタ電流IcがIGBT11に流れていることを検出して、Hレベルの切替信号s1をフィルタ回路25に向けて出力する。
【0040】
フィルタ回路25は、Hレベルの切替信号s1をフィルタリングしてフィルタ信号s2を出力する。ラッチ回路21aは、フィルタ信号s2をラッチしてラッチ信号Ltを出力する。選択回路21bは、ラッチ信号Ltにもとづいて、選択信号VHと選択信号VLを出力する。
【0041】
センス電圧Vsが閾値電圧Vth以上の場合では、選択回路21bは、選択信号VHをHレベルにしてスイッチsw1をオンし、選択信号VLをLレベルにしてスイッチsw2をオフする。これにより、オペアンプop1の非反転入力端子(+)への印加電圧を高くして、ゲート充放電回路22は、ターンオン時の駆動電流Igを大きくする。
【0042】
また、センス電圧Vsが閾値電圧Vth未満の場合では、選択回路21bは、選択信号VHをLレベルにしてスイッチsw1をオフし、選択信号VLをHレベルにしてスイッチsw2をオンする。これにより、オペアンプop1の非反転入力端子(+)への印加電圧を低くして、ゲート充放電回路22は、ターンオン時の駆動電流Igを小さくする。このような構成により、IGBT11のコレクタ電流値に応じてゲートを充電する駆動電流Igの大きさを制御することができる。
【0043】
<過電流・過熱・電圧の保護機能およびアラーム機能>
半導体装置2では、上記の駆動電流制御機能の他に、過電流・過熱・電圧の保護機能を有している。それらの機能について以下説明する。
【0044】
過電流検出回路26は、IGBT11から出力されるセンス電流Isがセンス抵抗Rsを流れることで生じる電位であるセンス電圧VsにもとづいてIGBT11の電流状態を検出し、電流状態が過電流状態であることを検出した場合に、過電流検出信号を出力する。
【0045】
温度検出回路27は、IGBT11の過熱状態の検出を行う。この場合、定電流源IR1から出力される定電流が温度検出用ダイオード13を流れることで生じる電位が温度検出電圧として温度検出回路27に入力される。温度検出回路27では、温度検出電圧にもとづいて、IGBT11の温度状態を検出し、IGBT11の温度状態が過熱状態であることを検出した場合に、過熱検出信号を出力する。
【0046】
電源電圧検出回路28は、外部端子から印加される電源電圧Vccが所定の電圧レベル以上あるか否かを検出し、所定電圧レベル未満になった場合に電圧レベル低下信号を出力する。
【0047】
ワンショット回路29aは、過電流検出信号を受信すると第1のHレベルパルス幅のワンパルス信号を出力し、ワンショット回路29bは、過熱検出信号を受信すると第2のHレベルパルス幅のワンパルス信号を出力し、ワンショット回路29cは、電圧レベル低下信号を受信すると第3のHレベルパルス幅のワンパルス信号を出力する。なお、第1のHレベルパルス幅よりも第2のHレベルパルス幅は長く、第2のHレベルパルス幅よりも第3のHレベルパルス幅は長く設定される。なお、Hレベルパルス幅の大小関係については上記以外の設定でもよい(順序が反対であってもバラバラであってもよい)。
【0048】
論理和素子IC1は、少なくとも1つのワンパルス信号が入力されるとHレベルのアラーム信号を出力する。論理和素子IC1から出力されたHレベルのアラーム信号がバッファbf3を介してNMOSトランジスタmn4のゲートに入力すると、NMOSトランジスタmn4はオンする。これにより、IGBT11のゲートからゲート電圧(駆動電圧)Vgが引き抜かれてIGBT11はターンオフして駆動を停止する。
【0049】
また、論理和素子IC1から出力されたHレベルのアラーム信号がNMOSトランジスタmn5のゲートに入力することで、NMOSトランジスタmn5がオンしてアラーム出力端子outからLレベルのアラーム通知信号ALMが出力される。
【0050】
<短絡電流の増加>
図4図5はIGBTの短絡波形の一例を示す図である。横軸は時間(1μs/div)であり、縦軸は電圧または電流である。図4図5には、入力信号Vin(5V/div)、センス電圧Vs(1V/div)およびコレクタ電流Ic(200A/div)が示されている。
【0051】
図4は、駆動電流Igが小さいときのIGBT11のアーム短絡波形を示しており、駆動電流Igが小さいときの短絡電流Iscは1244Aになっている。また、図5は、駆動電流が大きいときのIGBT11のアーム短絡波形を示しており、駆動電流Igが大きいときの短絡電流Iscは1563Aになっている。なお、アーム短絡波形は、コレクタ電流Icと同じ波形である。
【0052】
ここで、ラッチ解除条件を持たない場合、駆動電流Igが小さいときに短絡した後に、装置が出力を再開して、また短絡が起きると、大きい駆動電流Igでゲートを充電してしまうことがあるため、図5に示すように短絡電流値が大きくなることがある。
【0053】
図6図7はIGBTの短絡波形の一例を示す図である。横軸は時間(1μs/div)であり、縦軸は電圧または電流である。図6図7には、ゲート電圧Vg(5V/div)、センス電圧Vs(2V/div)およびコレクタ電流Ic(200A/div)が示されている。なお、図6図7は、図4図5に示した入力信号Vinをゲート電圧Vgに変更したものである。
【0054】
図6は、駆動電流Igが小さいときのIGBT11のアーム短絡波形を示しており、図7は、駆動電流Igが大きいときのIGBT11のアーム短絡波形を示している(アーム短絡波形は、コレクタ電流Icと同じ波形である)。
【0055】
ここで、駆動電流Igが大きいと、コレクタ電流Icのdi/dtが大きくなる。そのため、配線インダクタンスLとの積で決まるL×di/dtが大きくなり、短絡電流が大きくなる(ゲート電圧Vgと短絡電流Iscは比例関係にある)。
【0056】
また、駆動電流Igが大きいと、ゲート電圧Vgが急峻に立ち上がる。図6図7の例では、駆動電流Igが大きい場合のゲート電圧Vgは、駆動電流Igが小さい場合のゲート電圧Vgと比べて、急峻に立ち上がっており、約4V増加している。このように、L×di/dtの大きさで決まる起電力がゲート電圧Vgに重畳されるため短絡電流が増加することになる。
【0057】
<半導体装置の構成>
次にラッチ解除条件を有する本発明の半導体装置について以降説明する。図8は半導体装置の構成の一例を示す図である。半導体装置1-1は、半導体デバイス部10および制御回路20-1を備える。制御回路20-1において、論理和素子IC1の出力端は、バッファbf3の入力端、NMOSトランジスタmn5のゲートおよびラッチ回路21aのクリア端子に接続される。
【0058】
半導体装置1-1では、ラッチ解除条件として、論理和素子IC1から出力されるHレベルのアラーム信号がクリア信号CL(解除信号)としてラッチ回路21aのクリア端子に入力されている。その他の構成は図2と同じである。
【0059】
<フィルタ回路>
図9はフィルタ回路の構成の一例を示す図である。フィルタ回路25は、駆動能力切替電流検出回路24から出力される切替信号s1の波形整形を行う(例えば、切替信号s1の立ち上がりを所定時間遅延させる波形整形を行う)。
【0060】
フィルタ回路25は、電源電圧Vccに接続されカレントミラー回路を形成するPMOSトランジスタmp11、mp12と、PMOSトランジスタmp11のドレインとGNDとの間に介挿される定電流源IR3を備える。また、PMOSトランジスタmp12のドレインとGNDとの間に、PMOSトランジスタmp13とNMOSトランジスタmn11が直列に介挿される。
【0061】
PMOSトランジスタmp13とNMOSトランジスタmn11の接続点は、コンパレータcmp2の非反転入力端子(+)とコンデンサC1の一端に接続される。コンパレータcmp2の反転入力端子(-)は、基準電圧Vth1を出力する基準電源の一端が接続される。コンデンサC1の他端と基準電源の他端は、GNDに接続される。NOT素子IC2の入力端は、フィルタ回路25の入力端となり、切替信号s1が入力される。
【0062】
NOT素子IC2の出力端は、PMOSトランジスタmp13とNMOSトランジスタmn11のゲートに接続される。コンパレータcmp2の出力端は、フィルタ回路25の出力端となり、ラッチ回路21aの入力端に接続されて、フィルタ信号s2を出力する。
【0063】
このように構成されるフィルタ回路25において、フィルタ回路25に入力される切替信号s1がLレベルからHレベルになると、NOT素子IC2の出力がLレベルになる。すると、NMOSトランジスタmn11はオフ、PMOSトランジスタmp13がオンになり、コンデンサC1は定電流源IR3で規定される定電流で充電される。そして、コンデンサC1の充電電圧が基準電圧Vth1を超えると、コンパレータcmp2の出力はHレベルになる。
【0064】
また、フィルタ回路25に入力される切替信号s1がLレベルになると、NOT素子IC2の出力はHレベルになる。すると、NMOSトランジスタmn11はオン、PMOSトランジスタmp13がオフになり、コンデンサC1に充電された電荷は放電される。この結果、コンパレータcmp2の非反転入力端子(+)の電圧は基準電圧Vth1以下になり、コンパレータcmp2の出力はLレベルになる。
【0065】
したがって、フィルタ回路25は、切替信号s1がHレベルになったときのみ一定時間遅延させて出力する。なお、遅延時間は、定電流源IR3から出力される定電流の値と、カレントミラー回路のミラー比と、コンデンサC1の静電容量値によって定まるコンデンサC1の充電時間と、基準電圧Vth1によって調整することができる。
【0066】
<ラッチ回路>
図10はラッチ回路の構成の一例を示す図である。ラッチ回路21aはD型フリップフロップ21a1で構成することができる。D型フリップフロップ21a1のD端子(データ入力端)は、フィルタ回路25の出力端に接続されて、フィルタ信号s2が入力する。クロック端子には、入力信号Vinが入力される。また、D型フリップフロップ21a1のQ端子(出力端)は、選択回路21bの入力端に接続される。Q端子からは、ラッチ信号Ltが出力される。さらに、D型フリップフロップ21a1のクリア端子CLRには、クリア信号CLが入力される。
【0067】
このような構成のラッチ回路21aは、入力信号Vinの立ち上がりで、フィルタ回路25から出力されるフィルタ信号s2(LレベルまたはHレベル)をラッチし、その状態をQ端子に出力する。Q端子の出力状態は、入力信号Vinの次の立ち上がりタイミングまで維持される。また、Hレベルのクリア信号CLが入力することで、ラッチ状態が解除され、このときQ端子からはLレベルの信号が出力される。
【0068】
<選択回路>
図11は選択回路の構成の一例を示す図である。選択回路21bは、NOT素子IC3を有する。選択回路21bは、ラッチ回路21aからの出力信号をもとに生成した選択信号VH、VLをスイッチsw1、sw2へ出力する。
【0069】
NOT素子IC3の入力端は、ラッチ回路21aの出力端に接続されて、ラッチ信号Ltが入力される。NOT素子IC3の出力端は、選択回路21bの出力端となり、この出力端から選択信号VLが出力される。また、NOT素子IC3の入力端も選択回路21bの別の出力端となり、この出力端から選択信号VHが出力される。
【0070】
ここで、IGBT11のコレクタ電流Icが小さいときは、センス電流Isをもとに生成されたセンス電圧Vsは閾値電圧Vth未満になり、切替信号s1の出力はLレベルになる。その結果、入力信号Vinの立ち上がりでラッチされるラッチ回路21aの出力(ラッチ信号Lt)はLレベルになる。したがって、NOT素子IC3の入力はLレベル、出力はHレベルになるので、選択回路21bの選択信号VLはHレベル、選択信号VHはLレベルになる。
【0071】
また、IGBT11のコレクタ電流Icが大きいときは、センス電流Isをもとに生成されたセンス電圧Vsは閾値電圧Vth以上になり、切替信号s1の出力はHレベルになる。その結果、入力信号Vinの立ち上がりでラッチされるラッチ回路21aの出力はHレベルになる。したがって、NOT素子IC3の入力はHレベル、出力はLレベルになるので、選択回路21bの選択信号VLはLレベル、選択信号VHはHレベルになる。
【0072】
さらに、ラッチ回路21aのラッチ状態がクリア信号CLによって解除された場合、ラッチ回路21aの出力はLレベルになる。したがって、NOT素子IC3の入力はLレベル、出力はHレベルになるので、選択回路21bの選択信号VLはHレベル、選択信号VHはLレベルになる。
【0073】
<駆動電流の制御動作>
半導体装置1-1において、駆動電流切替回路21内の抵抗R1、R2、R3は、抵抗分圧回路を形成しており、一端(抵抗R1側)が電圧Vrefに接続され、他端(抵抗R3側)はGNDに接続されている。
【0074】
スイッチsw1、sw2は、例えば、NMOSトランジスタとPMOSトランジスタとを並列に接続したCMOSスイッチ(トランスファーゲート)で構成することができ、ゲート信号がHレベルのときに導通状態になる。
【0075】
選択回路21bからの出力に応じてスイッチsw1、sw2は選択的に導通する。具体的には、スイッチsw1のゲート(スイッチ制御端子)には選択信号VHが入力され、コンパレータcmp1の出力信号がHレベルのときに導通する。スイッチsw2のゲートには選択信号VLが入力され、コンパレータcmp1の出力信号がLレベルのときに導通する。
【0076】
そして、抵抗R1、R2、R3によって構成される抵抗分圧回路により、スイッチsw1が導通した場合、オペアンプop1の非反転入力端子(+)には相対的に高い電圧が印加され、スイッチsw2が導通した場合、オペアンプop1の非反転入力端子(+)には相対的に低い電圧が印加される。
【0077】
これらは、それぞれ、IGBT11のコレクタ電流Icが大きい場合と小さい場合に対応する。さらにオペアンプop1の非反転入力端子(+)に相対的に低い電圧が印加される場合は、ラッチ回路21aのラッチ解除状態に対応する。なお、抵抗R1、R2、R3のそれぞれの抵抗値は、所望の抵抗分圧効果が得られるように適宜設定される。ゲート充放電回路22は、オペアンプop1の出力電圧を抵抗R5に印加して得られる電流をIGBT11のゲートに供給する。
【0078】
<半導体装置の動作タイムチャート>
図12は半導体装置の動作の一例を示すタイムチャートである。入力信号VinがLレベル(オン)のときにIGBT11はターンオンする。IGBT11がターンオンすると、IGBT11にコレクタ電流Icが流れてコレクタ電流Icが増加していき、遮断遅れ時間t0の経過後に減少していく。なお、実線波形は半導体装置2のコレクタ電流Icを示し、点線波形は半導体装置1-1のコレクタ電流Icを示している。
【0079】
コレクタ電流Icが過電流保護電流値を超えた場合、アラーム出力期間において、Lレベルのアラーム信号が出力される。また、フィルタ回路25は、駆動能力切替電流検出回路24から出力される切替信号s1をフィルタリングしたフィルタ信号s2を出力する。
【0080】
以下、ラッチ信号Ltのレベルおよびスイッチsw1、sw2のオン/オフについて、ラッチ解除条件を有していない半導体装置2と、ラッチ解除条件を有している半導体装置1-1とに分けて説明する。
【0081】
半導体装置2において、ラッチ回路21aは、半導体装置2がアラーム状態のときにラッチ状態が解除されない構成になっている。このため、ラッチ回路21aは、Hレベルのフィルタ信号s2のラッチを継続して、Hレベルのラッチ信号Ltを出力し続ける(図の例では、IGBT11の次のターンオンの終了時点までHレベルのラッチ信号Ltを出力している)。すると、選択回路21bには、Hレベルのラッチ信号Ltが入力するため、選択信号VHはHレベルとなり、選択信号VLはLレベルとなる。
【0082】
この場合、スイッチsw1はHレベルの選択信号VHによりオンし、スイッチsw2はLレベルの選択信号VLによりオフするので、IGBT11のゲートには大きな駆動電流Igが入力されることになる。
【0083】
したがって、アラーム発生時に半導体装置2が停止し、その後に再運転した場合に再び短絡が発生したような場合、大きい駆動電流IgでIGBT11のゲートを充電することになるので、コレクタ電流Icは増加することになる(実線波形のコレクタ電流Ic)。
【0084】
一方、半導体装置1-1において、ラッチ回路21aは、半導体装置1-1がアラーム状態になると、ラッチ回路21aにクリア信号CL(アラーム信号と同じ)が入力されて、ラッチ状態が解除される構成になっている。
【0085】
このため、ラッチ回路21aは、クリア信号CLによってラッチが解除されるので、Lレベルのラッチ信号Lt(ラッチ解除出力信号)を出力することになる。すると、選択回路21bには、Lレベルのラッチ信号Ltが入力するため、選択信号VHはLレベルとなり、選択信号VLはHレベルとなる。
【0086】
この場合、スイッチsw1はLレベルの選択信号VHによりオフし、スイッチsw2はHレベルの選択信号VLによりオンするので、IGBT11のゲートには小さな駆動電流Igが入力されることになる。
【0087】
したがって、アラーム発生時に半導体装置1-1が停止し、その後に再運転した場合に再び短絡が発生したような場合、小さい駆動電流IgでIGBT11のゲートを充電することになるので、コレクタ電流Icの増加は抑制されることになる(点線波形のコレクタ電流Ic)。
【0088】
このように、半導体装置1-1では、アラーム発生時にラッチ回路21aのラッチ状態を解除して、装置が運転再開後の最初の入力信号Vinのターンオン指示があったときに、小さい駆動電流IgでIGBT11のゲートを充電するので、再び短絡動作が起きた場合の短絡電流の抑制や、通常動作時のノイズの抑制を行うことができる。
【0089】
<切替電流値>
図13は切替電流値を説明するための図である。横軸は還流ダイオードの順方向電流(A)または回生電流(A)、縦軸はリカバリdv/dt(kV/μs)である。リカバリdv/dtは、IGBT11がターンオンしたときに対向アームのダイオードがリカバリ動作を行うときの電圧変化率である。また、図13において、点線波形は、駆動電流制御機能がない場合のリカバリdv/dtを示し、実線波形はコレクタ電流Icの大きさにもとづいて駆動電流制御機能を有している場合のリカバリdv/dtを示している。
【0090】
ここで、リカバリdv/dtは、コレクタ電流Icの大電流領域r2(第2の電流領域)ではなく、小電流領域r1(第1の電流領域)で最大値を取る傾向がある。このため、半導体装置1-1では、コレクタ電流Icが切替電流値I0未満の小電流領域r1では、駆動電流Igを小さくし、コレクタ電流Icが切替電流値I0以上の大電流領域r2では、駆動電流Igを大きくする。これにより、損失の増加を抑えながら、ノイズを小さくすることができるので、ノイズとスイッチング損失のトレードオフの関係を最適化することができる。
【0091】
<半導体装置の変形例>
図14は半導体装置の変形例を示す図である。半導体装置1-2は、アラーム機能を有していない装置であり、半導体デバイス部10-2および制御回路20-2を備える。半導体デバイス部10-2は、IGBT11およびダイオード12を含む。制御回路20-2は、駆動電流切替回路21、ゲート充放電回路22、駆動能力切替電流検出回路24、フィルタ回路25、過電流検出回路26、ワンショット回路29aおよびセンス抵抗Rsを備える。
【0092】
ここで、過電流検出回路26の出力端は、ワンショット回路29aの入力端に接続され、ワンショット回路29aの出力端は、バッファbf3の入力端およびラッチ回路21aのクリア端子に接続される。
【0093】
したがって、半導体装置1-2では、ラッチ解除条件として、ワンショット回路29aを介して過電流検出回路26から出力される過電流検出信号がクリア信号CLとしてラッチ回路21aのクリア端子に入力されている。
【0094】
このように、半導体装置1-2では、アラーム信号ではなく、過電流検出回路26によって、ラッチ回路21aから出力されるラッチ信号LtをLレベルにしている。すなわち、過電流検出回路26が過電流を検出し、Hレベルの過電流検出信号を出力した場合、ラッチ回路21aの出力はLレベルになる。したがって、アラーム信号出力機能を有さない半導体装置1-2においてもラッチの解除が可能となる。
【0095】
図15は半導体装置の変形例を示す図である。半導体装置1-3は、アラーム機能を有していない装置であり、半導体デバイス部10-2および制御回路20-3を備える。制御回路20-3は、駆動電流切替回路21、ゲート充放電回路22、駆動能力切替電流検出回路24、フィルタ回路25、過電流検出回路26、電流検出回路31、ワンショット回路29a、29dおよびセンス抵抗Rsを備える。
【0096】
ここで、電流検出回路31の入力端は、IGBT11のセンスエミッタ、センス抵抗Rsの一端、駆動能力切替電流検出回路24の入力端および過電流検出回路26の入力端に接続される。電流検出回路31の出力端は、ワンショット回路29dの入力端に接続され、ワンショット回路29dの出力端は、ラッチ回路21aのクリア端子に接続される。
【0097】
電流検出回路31は、所定のコレクタ電流Icが流れたことを検出した場合に、Hレベルの電流検出信号を出力する回路である。なお、電流検出回路31の電流検出用閾値電圧は、過電流検出回路26の過電流検出用閾値電圧よりも高く設定され、遮断遅れ時間(不感時間)は短く設定される。
【0098】
半導体装置1-3では、ラッチ解除条件として、ワンショット回路29dを介して電流検出回路31から出力される電流検出信号がクリア信号CLとしてラッチ回路21aのクリア端子に入力されている。
【0099】
このように、半導体装置1-3では、過電流検出回路26とは別に、電流検出回路31によって、ラッチ回路21aから出力されるラッチ信号LtをLレベルにしている。すなわち、電流検出回路31が、コレクタ電流Icが所定値に達したことを検出し、Hレベルの電流検出信号を出力した場合、ラッチ回路21aの出力はLレベルになる。したがって、アラーム信号出力機能を有さない半導体装置1-3においてもラッチの解除が可能となる。
【0100】
図16は半導体装置の変形例を示す図である。半導体装置1-4は、アラーム機能を有していない装置であり、半導体デバイス部10-2および制御回路20-4を備える。制御回路20-4は、駆動電流切替回路21、ゲート充放電回路22、駆動能力切替電流検出回路24、フィルタ回路25、過電流検出回路26、電流検出回路31、ゲート電圧検出回路32、ワンショット回路29a、29e、2入力1出力の論理積素子IC4およびセンス抵抗Rsを備える。
【0101】
ここで、電流検出回路31の入力端は、IGBT11のセンスエミッタ、センス抵抗Rsの一端、駆動能力切替電流検出回路24の入力端および過電流検出回路26の入力端に接続される。ゲート電圧検出回路32の入力端は、IGBT11のゲート、PMOSトランジスタmp2のドレイン、NMOSトランジスタmn3のドレインおよびNMOSトランジスタmn4のドレインに接続される。
【0102】
電流検出回路31の出力端は、論理積素子IC4の一方の入力端に接続され、ゲート電圧検出回路32の出力端は、論理積素子IC4の他方の入力端に接続される。論理積素子IC4の出力端は、ワンショット回路29eの入力端に接続され、ワンショット回路29eの出力端は、ラッチ回路21aのクリア端子に接続される。
【0103】
電流検出回路31は、IGBT11に所定のコレクタ電流Icが流れたことを検出した場合にHレベルの電流検出信号を出力する。ゲート電圧検出回路32は、IGBT11のゲート電圧Vgが所定電圧以上になったことを検出した場合にHレベルのゲート電圧検出信号を出力する。論理積素子IC4は、Hレベルの電流検出信号とHレベルのゲート電圧検出信号との論理積をとったHレベル信号を出力する。
【0104】
半導体装置1-4では、ラッチ解除条件として、IGBT11に流れるコレクタ電流Icが所定電流値以上であり、かつIGBT11のゲート電圧Vgが所定電圧以上のときに、ワンショット回路29eを介して論理積素子IC4から出力されるHレベル検出信号がクリア信号CLとしてラッチ回路21aのクリア端子に入力されている。
【0105】
このように、半導体装置1-4では、電流検出回路31とゲート電圧検出回路32によって、ラッチ回路21aから出力されるラッチ信号LtをLレベルにしている。すなわち、電流検出回路31が、コレクタ電流Icが所定値に達したことを検出し、かつゲート電圧検出回路32が、ゲート電圧Vgが所定値に達したことを検出した場合、ラッチ回路21aの出力はLレベルになる。したがって、アラーム信号出力機能を有さない半導体装置1-4においてもラッチの解除が可能となる。
【0106】
図17はIGBTのスイッチング波形の模式図である。(a)は通常のスイッチング動作の波形を示し、(b)は短絡動作の波形を示す。横軸は時間であり、縦軸は電圧および電流である。図17に示すように、通常のスイッチング動作と比較して、短絡動作では、ミラー期間を経ずにゲート電圧が上昇していくため、ゲート電圧に対するコレクタ電流の上昇率が大きい。
【0107】
したがって、図16に示すような半導体装置1-4において、電流検出回路31およびゲート電圧検出回路32を設けて、コレクタ電流Icが所定電流以上であり、かつゲート電圧Vgが所定電圧以上になったことを検出した場合は、IGBT11が短絡している可能性が高い。したがって、半導体装置1-4ではIGBT11が短絡動作をしているか否かを判定することができ、短絡動作をしていると判定された場合に、ラッチ回路21aのラッチ状態が解除されることになる。
【0108】
<半導体装置の適用例>
次に本発明の半導体装置を適用した電力変換装置について説明する。図18は電力変換装置の構成の一例を示す図である。電力変換装置4は、上アーム側にU相、V相、W相のそれぞれに配置されたスイッチ素子sw41、sw42、sw43と、下アーム側にX相、Y相、Z相のそれぞれに配置されたスイッチ素子sw44、sw45、sw46とを備える。
【0109】
さらに、電力変換装置4は、交流電源VAC、整流装置47、平滑コンデンサC0、制御装置40および負荷Mを備える。整流装置47は、交流電源VACから出力された交流電圧を直流電圧VDCに変換する。
【0110】
一方、スイッチ素子sw41とスイッチ素子sw44との接続点であるノードn1に繋がる配線4aと、スイッチ素子sw42とスイッチ素子sw45との接続点であるノードn2に繋がる配線4bと、スイッチ素子sw43とスイッチ素子sw46との接続点であるノードn3に繋がる配線4cとから電力が負荷Mへ供給される。
【0111】
U相のスイッチ素子sw41は、IGBT4uとダイオードDuを含み、V相のスイッチ素子sw42は、IGBT4vとダイオードDvを含み、W相のスイッチ素子sw43は、IGBT4wとダイオードDwを含む。
【0112】
X相のスイッチ素子sw44は、IGBT4xとダイオードDxを含み、Y相のスイッチ素子sw45は、IGBT4yとダイオードDyを含み、Z相のスイッチ素子sw46は、IGBT4zとダイオードDzを含む。
【0113】
また、スイッチ素子sw41、sw42、sw43それぞれに対して、駆動制御等を行う制御回路41、42、43が配置され、スイッチ素子sw44、sw45、sw46のそれぞれに対して、駆動制御等を行う制御回路44、45、46が配置される。さらに、制御回路41~46を一括制御する制御装置40が配置される。なお、制御回路41~46は、例えば、図8および図14図16で上述した制御回路20-1、20-2、20-3、20-4のいずれかの機能を有する。
【0114】
各構成素子の接続関係において、整流装置47の正極側端子は、平滑コンデンサC0の一端、IGBT4uのコレクタ、ダイオードDuのカソード、IGBT4vのコレクタ、ダイオードDvのカソード、IGBT4wのコレクタおよびダイオードDwのカソードに接続される。
【0115】
整流装置47の負極側端子は、平滑コンデンサC0の他端、IGBT4xのエミッタ、ダイオードDxのアノード、IGBT4yのエミッタ、ダイオードDyのアノード、IGBT4zのエミッタおよびダイオードDzのアノードに接続される。
【0116】
IGBT4uのゲートは、制御回路41に接続され、ダイオードDuのアノードは、IGBT4uのエミッタ、制御回路41およびノードn1に接続される。ノードn1は、負荷M、IGBT4xのコレクタおよびダイオードDxのカソードに接続される。
【0117】
IGBT4vのゲートは、制御回路42に接続され、ダイオードDvのアノードは、IGBT4vのエミッタ、制御回路42およびノードn2に接続される。ノードn2は、負荷M、IGBT4yのコレクタおよびダイオードDyのカソードに接続される。
【0118】
IGBT4wのゲートは、制御回路43に接続され、ダイオードDwのアノードは、IGBT4wのエミッタ、制御回路43およびノードn3に接続される。ノードn3は、負荷M、IGBT4zのコレクタおよびダイオードDzのカソードに接続される。
【0119】
なお、制御装置40は、ゲート入力信号Vin-uを制御回路41に入力し、ゲート入力信号Vin-vを制御回路42に入力し、ゲート入力信号Vin-wを制御回路43に入力する。同様に、制御装置40は、ゲート入力信号Vin-xを制御回路44に入力し、ゲート入力信号Vin-yを制御回路45に入力し、ゲート入力信号Vin-zを制御回路46に入力する。
【0120】
以上説明したように、本発明によれば、装置の再運転時において、短絡電流およびノイズの抑制を図ることができる。例えば、半導体装置が短絡して停止したとする。半導体装置では、短絡時にはラッチ回路21aのラッチ状態が解除されるため、ラッチ回路21aの出力はLレベルとなる。
【0121】
その後、アラーム要因が解除されて、装置が運転を再開したとする。このときに、半導体装置に再び短絡が発生した場合であっても、ラッチ回路21aの出力がLレベルであるのでスイッチsw2がオンして、小さい駆動電流がIGBT11のゲートに流れることになる。このため、装置運転の再開時には、短絡電流の増加を抑制することが可能になる。さらに、通常動作時であっても、初期動作時には、小さい駆動電流でIGBT11を充電して駆動させるのでノイズを抑制することが可能になる。
【0122】
以上、実施の形態を例示したが、実施の形態で示した各部の構成は同様の機能を有する他のものに置換することができる。例えば、スイッチング素子としてSiC(シリコンカーバイド)などのワイドバンドギャップ半導体を用いてもよい。また、他の任意の構成物や工程が付加されてもよい。さらに、前述した実施の形態のうちの任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【符号の説明】
【0123】
1 半導体装置
1a スイッチング素子
1b 駆動電流制御回路
1b1 ラッチ回路
1c 検出回路
a1 切替信号
a2 解除信号
Vin 入力信号
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