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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131918
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/12 20200101AFI20240920BHJP
   B60W 40/02 20060101ALI20240920BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20240920BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B60W30/12
B60W40/02
B60W60/00
G08G1/16 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042492
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 昌也
(72)【発明者】
【氏名】中村 友則
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA13
3D241BA15
3D241BB31
3D241DC01Z
3D241DC35Z
3D241DC37Z
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181LL09
5H181LL15
(57)【要約】
【課題】走路形状をより正確に認識する技術を提供する。
【解決手段】運転支援装置200は、道路の区画線を示す区画線情報と、先行車の移動軌跡を示す先行車情報と、自車両の走行レーンが消失するエリアである走行レーン消失エリアとを認識する認識部210と、区画線情報と先行車情報のそれぞれについて、自車両の走路形状の算出に使用可能か否かを判定する使用可否判定部220と、使用可否判定部の判定結果を用いて走路形状を算出する走路形状算出部230と、を備える。使用可否判定部は、走行レーン消失エリア以外の走行レーンエリアと、走行レーン消失エリアとで、先行車情報の使用可否の判定方法を切り替える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の運転を支援する運転支援装置(200)であって、
道路の区画線を示す区画線情報と、先行車の移動軌跡を示す先行車情報と、前記自車両の走行レーンが消失するエリアである走行レーン消失エリアとを認識する認識部(210)と、
前記区画線情報と前記先行車情報のそれぞれについて、前記自車両の走路形状の算出に使用可能か否かを判定する使用可否判定部(220)と、
前記使用可否判定部の判定結果を用いて前記走路形状を算出する走路形状算出部(230)と、
を備え、
前記使用可否判定部は、前記走行レーン消失エリア以外の走行レーンエリアと、前記走行レーン消失エリアとで、前記先行車情報の使用可否の判定方法を切り替える、運転支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運転支援装置であって、
前記使用可否判定部は、
(i)前記先行車が前記走行レーンエリアに存在する場合には、前記先行車の前記移動軌跡と前記区間線との間の幅員方向の位置関係を用いて、前記先行車情報の使用可否を判定し、
(ii)前記先行車が前記走行レーン消失エリアに存在する場合には、前記先行車が前記走行レーン消失エリアに進入する前の前記走行レーンエリアに存在していた時における前記先行車情報の使用可否の判定結果を保持する、運転支援装置。
【請求項3】
請求項2に記載の運転支援装置であって、
前記使用可否判定部は、前記先行車情報を使用可能という判定結果を保持している場合において、予め定められた更新条件が成立する場合には、保持していた前記判定結果を破棄して前記先行車情報の使用可否の判定結果を更新する、運転支援装置。
【請求項4】
請求項3に記載の運転支援装置であって、
前記更新条件は、前記先行車が前記走行レーン消失エリアから脱出したことを含む、運転支援装置。
【請求項5】
請求項3に記載の運転支援装置であって、
前記更新条件は、前記先行車の前記移動軌跡が予め定められた変化率閾値よりも大きな変化率で変化したことを含む、運転支援装置。
【請求項6】
請求項3に記載の運転支援装置であって、
前記更新条件は、前記先行車のウィンカーの点滅が検知されたことを含む、運転支援装置。
【請求項7】
請求項3に記載の運転支援装置であって、
前記更新条件は、前記先行車が前記走行レーン消失エリアにある前記区画線を跨ぐように進行したことを含む、運転支援装置。
【請求項8】
請求項1に記載の運転支援装置であって、更に、
前記算出された走路形状に応じて、前記自車両を制御するための制御指令値を生成する制御指令作成部(240)を備え、
前記走路形状算出部が前記先行車情報を用いて前記走路形状を算出する場合において、前記先行車が前記走行レーン消失エリアに存在している場合には、前記先行車が前記走行レーンエリアに存在する場合に比べて、前記制御指令作成部が前記制御指令値の変化率を小さくする、運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自車両の運転を支援する運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、区画線の認識結果に基づいて自車両の車線維持を行う第1制御と、先行車の追従を行う第2制御と、を切り替えて実行する走行制御装置が開示されている。この走行制御装置では、交差点において、区画線の認識結果に基づく車線維持から、先行車の追従に切り替えることによって、自車両のふらつきを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7109496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、先行車が車線変更している場合などにおいて、先行車の移動軌跡に従って走路形状を算出すると走路形状を誤認識してしまう場合があった。このため、自車両の走路形状をより正確に認識できる技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、自車両の運転を支援する運転支援装置(200)が提供される。この運転支援装置は、道路の区画線を示す区画線情報と、先行車の移動軌跡を示す先行車情報と、前記自車両の走行レーンが消失するエリアである走行レーン消失エリアとを認識する認識部(210)と、前記区画線情報と前記先行車情報のそれぞれについて、前記自車両の走路形状の算出に使用可能か否かを判定する使用可否判定部(220)と、前記使用可否判定部の判定結果を用いて前記走路形状を算出する走路形状算出部(230)と、を備え、前記使用可否判定部は、前記走行レーン消失エリア以外の走行レーンエリアと、前記走行レーン消失エリアとで、前記先行車情報の使用可否の判定方法を切り替える。
【0006】
この運転支援装置によれば、交差点エリアや料金所エリア等の走行レーン消失エリアと、それ以外の走行レーンエリアとで、先行車情報の使用可否の判定方法を切り替えるので、シーンに応じて先行車情報の使用可否を適切に判定することができ、走路形状の認識率の向上と誤認識の抑制を両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態としての車両制御システムの構成を示すブロック図。
図2】走路形状の認識処理の手順を示すフローチャート。
図3】ステップS20の詳細手順を示すフローチャート。
図4】先行車情報の使用可否判定の第1実施例を示す説明図。
図5】先行車情報の使用可否判定の第2実施例を示す説明図。
図6】先行車情報の使用可否判定の第3実施例を示す説明図。
図7】先行車情報の使用可否判定の第4実施例を示す説明図。
図8】先行車情報の使用可否判定の第5実施例を示す説明図。
図9】先行車情報の使用可否判定の第6実施例を示す説明図。
図10】先行車情報の使用可否判定の第7実施例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に示すように、一実施形態の車両50は、車両制御システム100を備える。車両制御システム100は、運転支援ECU200と、車両制御部300と、前方検出装置410と、後方検出装置420と、支援情報取得部500と、を備える。本明細書において、車両50を「自車両50」とも呼ぶ。運転支援ECU200は、自動運転を行うための自動運転ECUとして構成されていてもよい。
【0009】
車両制御部300は、駆動部制御装置310と、ブレーキ制御装置320と、操舵角制御装置330と、一般センサ類340とを含む。駆動部制御装置310は、車両50の車輪を駆動する駆動部(図示せず)を制御する機能を有する。車輪の駆動部としては、内燃機関と電動モータのうちの1つ以上の原動機を使用可能である。ブレーキ制御装置320は、車両50のブレーキ制御を実行する。ブレーキ制御装置320は、例えば電子制御ブレーキシステム(ECB)として構成される。操舵角制御装置330は、車両50の車輪の操舵角を制御する。「操舵角」とは、車両50の2つの前輪の平均操舵角を意味する。操舵角制御装置330は、例えば電動パワーステアリングシステム(EPS)として構成される。一般センサ類340は、車速センサ342と操舵角センサ344とヨーレートセンサ346を含んでおり、車両50の運転に必要とされる一般的なセンサ類である。一般センサ類340は、自動運転と手動運転のいずれの場合にも利用されるセンサを含んでいる。
【0010】
前方検出装置410は、車載センサを使用して、自車両50の前方に存在する物体や道路設備(車線、交差点、信号機等)等の各種の対象物に関する情報を取得する。本実施形態において、前方検出装置410は、カメラ412と、レーダー414とを含んでいる。カメラ412としては、単眼カメラや、ステレオカメラを使用可能である。また、カメラ412は、対象物の色(例えば白線の走路区画線と黄線の走路区画線)を区別するために、カラーカメラであることが好ましい。レーダー414としては、光を放射するLIDAR(Light Detection and Ranging)や、電波を放射するレーダー(例えばミリ波レーダー)など、電磁波を放射する各種のレーダーを使用可能である。後方検出装置420は、自車両50の後方に存在する物体や道路設備等の各種の対象物に関する情報を取得する。後方検出装置420も、前方検出装置410と同様な車載センサを含むように構成可能である。
【0011】
支援情報取得部500は、自車両50の運転のための各種の支援情報を取得する。支援情報取得部500は、GNSS受信機510と、ナビゲーション装置520と、無線通信装置530とを含んでいる。GNSS受信機510は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を構成する人工衛星から受信した航法信号に基づいて、自車両50の現在位置(経度・緯度)を測位する。ナビゲーション装置520は、目的地とGNSS受信機510で検出される自車位置とに基づいて、自車両50の予定ルートを決定する機能を有する。予定ルートの決定や修正のために、GNSS受信機510に加えて、ジャイロ等の他のセンサを利用してもよい。無線通信装置530は、高度道路交通システム70(Intelligent Transport System)との無線通信によって自車両50の状況や周囲の状況に関する状況情報を交換することが可能であり、また、先行車60などの他車両との車車間通信や、道路設備に設置された路側無線機との路車間通信を行って状況情報を交換することも可能である。支援情報取得部500は、このような無線通信を介して得られる状況情報を利用して、自車両50の走行状況に関する情報の一部を取得するようにしてもよい。支援情報取得部500によって取得された各種の支援情報は、運転支援ECU200に送信される。
【0012】
運転支援ECU200は、プロセッサとメモリとを含むECU(Electronic Control Unit)である。運転支援ECU200は、不揮発性記憶媒体に格納されたコンピュータプログラムをプロセッサが実行することによって、認識部210と、使用可否判定部220と、走路形状算出部230と、制御指令作成部240の機能をそれぞれ実現する。なお、運転支援ECU200の機能の一部をハードウェア回路で実現するようにしてもよい。
【0013】
認識部210は、前方検出装置410の検出結果を利用して、道路の区画線を示す区画線情報と、先行車の移動軌跡を示す先行車情報と、自車両50の走行レーンが消失するエリアである走行レーン消失エリアと、を認識する。「走行レーン消失エリア」は、例えば、交差点エリアや、有料道路の料金所エリアである。認識部210は、支援情報取得部500から提供される各種の情報を使用して認識処理を実行してもよい。
【0014】
使用可否判定部220は、区画線情報と先行車情報のそれぞれについて、自車両50の走路形状の算出に使用可能か否かを判定する。この判定方法については後述する。
【0015】
走路形状算出部230は、使用可否判定部の判定結果を用いて、自車両50の走路形状を算出又は認識する。区画線情報と先行車情報を用いて走路形状を算出又は認識する方法は周知なので、詳細な説明は省略する。
【0016】
制御指令作成部240は、走路形状算出部230で算出された走路形状に応じて、車両50を制御するための制御指令値を作成する。制御指令作成部240で作成された制御指令値は、車両制御部300に供給される。具体的には、制御指令作成部240は、駆動部(エンジンやモータ)の駆動力を示す駆動力指令値を駆動部制御装置310に送信し、ブレーキ機構の動作状態を示すブレーキ指令値をブレーキ制御装置320に送信し、車輪の操舵角を示す操舵角指令値を操舵角制御装置330に送信する。各制御装置310,320,330は、与えられた指令値に従ってそれぞれの制御対象機構の制御を実行する。但し、制御指令作成部240は、駆動力指令値やブレーキ指令値を作成せず、操舵角指令値のみを作成してもよい。即ち、制御指令作成部240は、走路形状に応じて、少なくとも操舵角指令値を作成するように構成されていることが好ましい。
【0017】
図2に示す走路形状の認識処理は、自車両50の走行中に所定の時間間隔で繰り返し実行される。ステップS10では、認識部210が区画線情報を認識するとともに、使用可否判定部220が区画線情報の使用可否を判定する。「区画線情報」とは、区画線の形状を表す情報である。「区画線」は、典型的には、白色の実線又は破線、若しくは、黄色の実線又は破線で描かれる。区画線としては、「車道中央線」、「車線境界線」、「車道外側線」などがあるが、本開示ではこれらを区別することなく単に「区画線」と呼ぶ。認識部210は、前方検出装置410の検出結果を用いて区画線情報を認識することができる。区間線情報は、自車両50の前方に設定される認識範囲で認識される。この認識範囲は、自車両50の車速が早いほど長く設定されることが好ましい。
【0018】
区画線情報が使用可能か否かは、認識部210における認識結果の信頼度に応じて決定することができる。認識部210は、認識した区画線情報の信頼度を算出するように構成されていることが好ましい。区画線情報は、例えば、区画線が長いほど信頼度が高く、また、並走する区画線同士の角度が小さいほど信頼度が高くなるように決定することができる。
【0019】
ステップS20では、認識部210が先行車情報を認識するとともに、使用可否判定部220が先行車情報の使用可否を判定する。「先行車」とは、自車両50と同じ走行レーンを自車両50の直前に走行する車両を意味する。「先行車情報」とは、先行車の移動軌跡を表す情報である。ステップS20の処理の詳細は以下の通りである。
【0020】
図3に示すように、ステップS21では、認識部210が、前方検出装置410の検出結果を用いて先行車が存在するか否かを判定する。先行車が存在しない場合には、図3の処理を終了する。この場合には、先行車情報が使用不可と判定される。先行車が存在する場合には、ステップS22に進み、認識部210が先行車情報を認識する。先行車情報の認識範囲は、区画線情報の認識範囲と同じ範囲に設定することができる。
【0021】
ステップS23では、使用可否判定部220が、先行車が走行レーンエリア内に存在するか、走行レーン消失エリア内に存在するかを判定する。「走行レーンエリア」とは、区画線で走行レーンが区画されており、自車両50の走行レーンが存在するエリアを意味する。「走行レーン消失エリア」とは、区画線で走行レーンが区画されておらず、自車両50の走行レーンが消失するエリアを意味する。走行レーン消失エリアは、例えば、交差点エリアや、有料道路の料金所エリアである。
【0022】
先行車が走行レーンエリアに存在する場合には、ステップS24に進み、第1判定方法に従って先行車情報の使用可否を判定する。一方、先行車が走行レーンエリアに存在せず、走行レーン消失エリアに存在する場合には、ステップS25に進み、第2判定方法に従って先行車情報の使用可否を判定する。
【0023】
先行車情報の使用可否の第1判定方法としては、例えば、以下の複数の方法のうちの1つ以上の方法を使用可能である。
<判定方法M1a>
先行車の移動軌跡と、区間線との間の幅員方向の位置関係を用いて、先行車情報の使用可否を判定する。具体的には、例えば、先行車が区画線を跨いでおらず自車両50と同じ走行レーン内で走行を継続している場合には先行車情報を使用可能と判定し、先行車が区画線を跨いで走行している場合には先行車情報を使用不可と判定する。この判定方法M1aを使用する場合には、先行車の移動軌跡と区画線との間の平行度や、先行車の移動軌跡と他車両の移動軌跡との平行度も考慮して、先行車情報の使用可否を判定してもよい。
<判定方法M1b>
先行車のウィンカーの点滅が検知されたか否かに応じて、先行車情報の使用可否を判定する。具体的には、例えば、先行車のウィンカーの点滅が検知されていない場合には先行車情報を使用可能と判定し、ウィンカーの点滅が検知された場合には先行車情報を使用不可と判定する。ここで、「ウィンカーの点滅」とは、左右のウィンカーの一方のみが点滅することを意味する。
【0024】
本実施形態では、判定方法M1a,M1bの少なくとも一方において先行車情報が使用不可となる場合には先行車情報が使用不可と判定され、判定方法M1a,M1bの両方において先行車情報が使用可能となる場合には先行車情報が使用可能と判定される。これらの判定方法M1a,M1bは、いずれも、先行車に車線変更する兆候がないか否かに応じた判定方法であると考えることができる。但し、これら以外の判定方法を第1判定方法として使用してもよい。
【0025】
先行車情報の使用可否の第2判定方法としては、例えば、以下の複数の方法のうちの1つ以上の方法を使用可能である。
<判定方法M2a>
先行車が走行レーン消失エリアに進入する前の走行レーンエリアに存在していた時における先行車情報の使用可否の判定結果を保持する。具体的には、先行車が走行レーンエリアに存在していた時に先行車情報が使用可能と判定されていた場合には先行車情報を使用可能と判定し、先行車が走行レーンエリアに存在していた時に先行車情報が使用不可と判定されていた場合には先行車情報を使用不可と判定する。
<判定方法M2b>
先行車の移動軌跡の曲率を用いて、先行車情報の使用可否を判定する。具体的には、例えば、移動軌跡の曲率の最大値が予め定められた閾値以上の場合には先行車情報を使用不可と判定し、閾値未満の場合には先行車情報を使用可能と判定する。
【0026】
本実施形態では、主として判定方法M2aを使用する。但し、これら以外の判定方法を第2判定方法として使用してもよい。
【0027】
上記判定方法M2aを使用した場合には、図2のルーチンを次のタイミングで実行する時に、使用可否判定部220が「先行車情報を使用可能」という判定結果を保持している場合が存在する。この場合には、ステップS25において、使用可否判定部220は、所定の更新条件を満たす場合に、保持していた判定結果を破棄するとともに、先行車情報の使用可否の判定結果を更新するようにしてもよい。
【0028】
更新条件は、例えば、以下の複数の条件のうちの1つ以上の条件が成立したときに成立したものと見なすことができる。
<更新条件C1>
先行車が走行レーン消失エリアから脱出したこと。
この更新条件C1を使用すれば、例えば、先行車が交差点エリアなどの走行レーン消失エリアを脱出した場合に、先行車の車線変更の有無を早期に判定できる。
<更新条件C2>
先行車の移動軌跡が予め定められた変化率閾値よりも大きな変化率で変化したこと。ここで、「変化」とは先行車の幅員方向の移動量を意味し、「変化率」とは単位時間当たりの変化を意味する。
この更新条件C2を使用すれば、例えば、区画線が存在しない走行レーン消失エリアでも、先行車の移動軌跡の変化を適切に判定できる。なお、更新条件C2が成立した場合には、先行車の移動軌跡が大きく変化しているので、先行車情報を使用不可と判定してもよい。
<更新条件C3>
先行車のウィンカーの点滅が検知されたこと。ここで、「ウィンカーの点滅」とは、左右のウィンカーの一方のみが点滅することを意味する。
この更新条件C3を使用すれば、例えば、区画線が存在しない走行レーン消失エリアでも、先行車の移動軌跡の変化を適切に判定できる。
<更新条件C4>
先行車が走行レーン消失エリアにある補助線を跨ぐように進行したこと。
この更新条件C4を使用すれば、例えば、交差点エリアなどの走行レーン消失エリア内において先行車がショートカット走行した場合に、先行車情報の使用可否を正しく判定できる。
但し、これら以外の更新条件を使用してもよい。
【0029】
こうしてステップS20の処理が終了すると、図2のステップS30,S40において、区画線情報と先行車情報の使用可否に従って走路形状の算出方法が選択される。即ち、区画線情報が使用可能である場合には、ステップS50に進み、走路形状算出部230が、区画線情報を用いて自車両50の走路形状を算出する。この処理において、先行車情報が使用可能な場合には、区画線情報に加えて、先行車情報を使用してもよい。
【0030】
区画線情報が使用不可であり、先行車情報が使用可能である場合には、ステップS60に進み、走路形状算出部230が、先行車情報を用いて自車両50の走路形状を算出する。具体的には、先行車の移動軌跡に沿って自車両50の走路形状を算出する。
【0031】
区画線情報と先行車情報がいずれも使用不可である場合には、ステップS70に進み、走路形状算出部230が、過去の走路形状を外挿することによって、自車両50の走路形状を算出する。
【0032】
以上のように、走路形状算出部230は、使用可否判定部220の判定結果を用いて自車両50の走路形状を算出することが可能である。
【0033】
ステップS80では、制御指令作成部240は、走路形状算出部230で算出された走路形状に応じて、自車両50を制御するための制御指令値を作成する。以下では、図3の処理によって先行車情報の使用可否を判定する例を説明する。
【0034】
図4の例では、先行車60が、走行レーンエリアRAに存在する状態を想定している。走行レーンエリアRAは、区画線WL1,WL2で区画されている。第1の区画線WL1は白色の実線であり、第2の区画線WL2は白色の破線である。但し、以下の説明では、これらをまとめて「区画線WL」とも呼ぶ。先行車60の移動軌跡は、破線の矢印で描かれている。この状態では、上記判定方法M1aを用いて先行車情報の使用可否が判定されている。即ち、先行車60が区画線WLを跨いで走行しているので、先行車情報が使用不可と判定されている。
【0035】
図5の例では、先行車60が交差点エリアCA内に進入した状態を想定している。交差点エリアCAの境界は、停止線の位置や横断歩道の位置に設定してもよく、或いは、これらの位置から所定の距離離れた位置に設定してもよい。交差点エリアCAの手前の走行レーンエリアRAは、区画線WL1,WL2で区画されている。ここでは、上記判定方法M2aを用いて先行車情報の使用可否が判定されている。即ち、先行車60が交差点エリアCAに進入する前の走行レーンエリアRAに存在していた時における先行車情報の使用可否の判定結果が保持されている。この例では、先行車60が走行レーンエリアRAに存在していた時の判定結果は「先行車情報が使用可能」であり、先行車60が交差点エリアCAに進入した後も、この判定結果が保持されている。特に、この例では、先行車60が交差点エリアCAの区画線WL3を跨いで走行しているが、このことのみによっては以前の判定結果を破棄せずに保持しておくことが好ましい。但し、先行車60の移動軌跡を使用する際には、先行車60が跨いでいる区画線WL3から離れる方向のオフセットを加えた上で、自車両50の走路形状の認識に使用することが好ましい。なお、先行車60が区画線を跨いで走行していること、及び、先行車60のウィンカーの点滅が検出されたこと、等の複数の条件が同時に成立した場合は、以前の判定結果を破棄し、先行車情報の使用可否の判定を再度実行して判定結果を更新するようにしてもよい。
【0036】
図6の例では、先行車60が走行レーンエリアRAに存在し、先行車60の左側のウィンカーが点滅している状態を示している。ここでは、上記判定方法M1bに従って、先行車情報を使用不可と判定している。即ち、先行車60のウィンカーが点滅している場合には、先行車60が車線変更を行う可能性が高いので、自車両50の走路形状の計算に先行車60の移動軌跡を使用しない。なお、先行車60のウィンカーが点滅していることに加えて、先行車60のブレーキランプが点灯していること、及び、先行車60が減速していること、の少なくとも一方が成立しているときに、先行車情報を使用不可と判定してもよい。
【0037】
図7の左側の例では、先行車60が、走行レーン消失エリアとしての交差点エリアCAに進入する前の状態、即ち、走行レーンエリアRAに存在する状態を想定している。先行車60が交差点エリアCAに進入する前の時点において、使用可否判定部220は、先行車60に車線変更する兆候がないか否かを判定し、この判定結果に応じて、先行車情報が使用可能か否かを判定する。図7の左側の例では、上記判定方法M1aに従って先行車情報が使用可能か否かを判定している。即ち、先行車60が区画線WLを跨いでいないので、先行車情報が使用可能であるものと判定される。
【0038】
図7の右側の例では、先行車60が交差点エリアCA内に進入しており、この場合には、使用可否判定部220は、上記判定方法M2aに従って先行車情報の使用可否を判定している。即ち、先行車60が交差点エリアCAに進入する前の時点において、先行車情報が使用可能と判定されていたので、交差点エリアCA内においても先行車情報が使用可能であるという判定が保持される。交差点エリアCAでは、通常の走行路よりも先行車60が車線変更する可能性が下がるため、先行車情報の使用可否の判定結果を保持すれば、自車両50の走路形状の認識率を高めることができる。
【0039】
なお、図7の右側に示すように、交差点エリアCA内において先行車情報を用いて走路形状を算出する場合には、通常の走行レーンエリアRAにおいて先行車情報を用いて走路形状を算出する場合に比べて、制御指令作成部240が制御指令値の変化率を小さくすることが好ましい。「変化率」とは、単位時間当たりの変化量を意味する。変化率を小さくする制御指令値は、例えば、舵角の指令値を対象とすることができる。制御指令値の変化率を小さくすれば、区画線がなく先行車60の車線変更の判定ができない場合であっても、自車両50のふらつきを最小限に抑えることができる。但し、先行車60が車線変更する可能性がゼロでは無いため、運転者が余裕を持ってオーバーライドできるように、操舵角の制御指令値の変化率も小さくすることが好ましい。
【0040】
図8の左側の状態は、図7の左側の状態と似ているが、先行車60が区画線WL2を跨いでいる点が異なる。この場合には、上記判定方法M1aに従って、使用可否判定部220が、先行車情報が使用不可であるものと判定する。その後、図8の右側に示すように、先行車60が交差点エリアCA内に進入した場合には、使用可否判定部220は、上記判定方法M2aに従って、先行車60が交差点エリアCAに進入する前の状態における先行車情報の使用可否の判定結果、即ち、先行車情報が使用不可という判定結果を保持する。
【0041】
図7及び図8で説明したように、使用可否判定部220は、先行車60が走行レーン消失エリアに存在する場合には、先行車60が走行レーン消失エリアに進入する前の走行レーンエリアRAに存在していた時における先行車情報の使用可否の判定結果を保持することが好ましい。こうすれば、区画線WLが無くなる走行レーン消失エリアにおいても、区画線WLが無くなる前における先行車情報の使用可否を判定した結果を利用できるため、走路形状の誤認識を軽減できる。
【0042】
図9の左側の例では、図7の左側の例と同様に、先行車情報が使用可能と判定されている。その後、図9の中央に示すように、先行車が交差点エリアCA内に進入した状態では、先行車情報が使用可能という判定が保持されている。図9の右側に示すように、先行車が交差点エリアCAから脱出した状態では、更新条件C1が成立し、保持していた判定結果が破棄されて、先行車情報の使用可否が改めて判定されている。この例では、判定方法M1aに従い、先行車60が区間線WL2を跨ぐように走行しているので、先行車情報が使用不可と判定されている。
【0043】
図10の左側の例では、図9の左側の例と同様に、先行車情報が使用可能と判定されている。その後、図10の右側に示すように、先行車が交差点エリアCA内に進入した状態では、更新条件C2が成立して、保持していた判定結果が破棄されて、先行車情報が使用不可という判定結果に更新されている。
【0044】
上述した実施形態によれば、交差点エリアや料金所エリア等の走行レーン消失エリアと、それ以外の走行レーンエリアとで、先行車情報の使用可否の判定方法を切り替えるので、シーンに応じて先行車情報の使用可否を適切に判定することができる。この結果、走路形状の認識率の向上と誤認識の抑制を両立できる。
【0045】
本開示は上述した実施形態やその変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
50…自車両、60…先行車、70…高度道路交通システム、100…車両制御システム、200…運転支援ECU、210…認識部、220…使用可否判定部、230…走路形状算出部、240…制御指令作成部、300…車両制御部、310…駆動部制御装置、320…ブレーキ制御装置、330…操舵角制御装置、340…一般センサ類、342…車速センサ、344…操舵角センサ、346…ヨーレートセンサ、410…前方検出装置、412…カメラ、414…レーダー、420…後方検出装置、500…支援情報取得部、510…GNSS受信機、520…ナビゲーション装置、530…無線通信装置
図1
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図10