(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131922
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】橋梁の洪水対策構造
(51)【国際特許分類】
E01D 1/00 20060101AFI20240920BHJP
E01D 19/08 20060101ALI20240920BHJP
E01D 19/12 20060101ALI20240920BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
E01D1/00 Z
E01D19/08
E01D19/12
E01D22/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042497
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】509200613
【氏名又は名称】株式会社横河NSエンジニアリング
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】利根川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 聡
(72)【発明者】
【氏名】峯 滉典
(72)【発明者】
【氏名】野呂 直以
(72)【発明者】
【氏名】高野 奈津子
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA05
2D059AA13
2D059GG05
2D059GG43
2D059GG55
(57)【要約】 (修正有)
【課題】洪水や河川の氾濫時に橋梁上部工への作用力を低減させ、橋梁上部工の損傷を効果的に回避することができる橋梁の洪水対策構造を提供する。
【解決手段】本発明の橋梁の洪水対策構造は、並列する主桁2の上部に床版3が架設されてなる橋梁上部工について、床版3の張出部下部から主桁2の下部をつなぐ形で、橋梁上部工を側方から覆うフェアリング4を設け、隣接する主桁2の下部間に形状保持材5を設けることで、水流に起因する水平力に対し、主桁2間の変形を防止し、橋梁上部工の形状を保持する構造となっている。形状保持材5としてグレーティングを用いれば、下面から主桁2間に水が入り、上部工に対する浮力や静水圧を低減させ、上向きの揚力を抑えることができる。また、主桁2間の上部位置に床版3の上下間を連通させる空気流通部6を設けたり、主桁2に水平方向の貫通部7を設け、主桁2間における空気や水の流通を図ることもできる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列する複数本の主桁の上部に床版が架設されてなる橋梁上部工に対する水流に起因する作用力を低減させるための橋梁の洪水対策構造であって、前記床版の橋軸直角方向の張出部下部から前記主桁の下部をつなぐ形で、橋梁上部工を側方から覆うフェアリングと、隣接する前記主桁の下部どうしをつなぐことで、水流に起因する水平力に対し、前記主桁間の変位または変形を防止して前記橋梁上部工の形状を保持するための形状保持材とを備えていることを特徴とする橋梁の洪水対策構造。
【請求項2】
請求項1記載の橋梁の洪水対策構造において、前記フェアリングは、鋼板、強化プラスチック板、またはプレキャストコンクリート版からなることを特徴とする橋梁の洪水対策構造。
【請求項3】
請求項1記載の橋梁の洪水対策構造において、前記形状保持材の全体または一部が板状のグレーティングからなることを特徴とする橋梁の洪水対策構造。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の橋梁の洪水対策構造において、前記床版には、隣接する前記主桁間の上部位置に床版上下間を連通させる空気流通部が設けられていることを特徴とする橋梁の洪水対策構造。
【請求項5】
請求項4記載の橋梁の洪水対策構造において、前記空気流通部はスリットまたは空気孔であることを特徴とする橋梁の洪水対策構造。
【請求項6】
請求項4記載の橋梁の洪水対策構造において、前記空気流通部にはグレーティングが取り付けられていることを特徴とする橋梁の洪水対策構造。
【請求項7】
請求項1、2または3記載の橋梁の洪水対策構造において、前記主桁に水平方向に貫通する貫通部が設けられていることを特徴とする橋梁の洪水対策構造。
【請求項8】
請求項4記載の橋梁の洪水対策構造において、前記主桁に水平方向に貫通する貫通部が設けられていることを特徴とする橋梁の洪水対策構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洪水や河川の氾濫時に、橋梁の上部工に作用する水流等による流体力を低減させるための橋梁の洪水対策構造に関するものである。なお、本発明でいう洪水には、実際に洪水が生じている狭い意味での洪水状態に限定されず、集中豪雨などの大雨による洪水の他、津波による洪水、河川の氾濫などにおいて実際の洪水が生じる前の状態が含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
近年、大雨が引き起こす洪水や河川の氾濫の件数は増加傾向にあり、橋梁への被害も多数生じている。氾濫時には常時と比べ、流量および流速が急激に増加するが、橋梁においては河川氾濫による荷重を設計値として見込んでいないため、橋梁全体においては抵抗力を持たず、橋桁の流出や転倒といった事故が生じる恐れがある。
【0003】
図3は並列する複数本の主桁2の上部に床版3が架設されてなる橋梁上部工の一般的な橋梁の現状の構造を示したものであり、
図4はこのような現状の構造での洪水や河川氾濫時の作用力を示したものである。
【0004】
現状の橋梁上部工の構造は、洪水や河川氾濫時に橋梁上部工に向かう水流により、大きな水平力(抗力)や鉛直力(揚力)を受ける断面形状であり、水位の上昇により桁側面に静・動水圧が作用する。
【0005】
すなわち、
図4に示すように、水流W
F方向の水平力F
Hが作用し、張出部には上向きの力F
Vwが作用する。また、主桁2どうしの間には、空気溜まりA
pが生じることで、上向きの力F
Vaが作用する。
【0006】
主桁2の下フランジは水流WFに抵抗できる設計になっておらず、水流WFが主桁2に衝突し、水流WFの方向が分散する。また、主桁2のウェブの側方に漂流物が引っ掛かることもある。
【0007】
大きな流速が発生した際の水平力は、橋梁の設計に見込まれる最大の作用力である地震力をも超過し、例えば、
図5(損傷例1)、
図6(損傷例2)に示すような形態で、橋梁本体への損傷を生じさせる恐れがある。
【0008】
流体力を低減させるための構造としては、従来、耐風設計に用いられていたフェアリングパネルの設置が検討されている。このようなフェアリングを用いた橋梁に関する発明として、例えば特許文献1、非特許文献1~3記載の発明がある。
【0009】
特許文献1には、波の威力を低減するフェアリング部材を主桁または床版の橋軸方向に沿って備えた橋梁であって、フェアリング部材が波力の作用方向を変化させる外面を有し、人がフェアリング部材の内部を点検できるように開閉可能に構成されたフェアリング部材を備えた橋梁が開示されている。
【0010】
また、非特許文献1では、橋桁の主桁側面を断面が半円柱あるいは直方体で覆うフェアリングモデルを用いて、津波による抗力や揚力に対する検討が行われている。
【0011】
また、非特許文献2には、フェアリングが橋梁の支承反力や上部構造の挙動に与える影響と挙動メカニズムについて、大型の水路実験を行い、さらに数値解析の検証を行った知見が述べられている。
【0012】
また、非特許文献3では、橋梁に作用する流体力の減少を目的として、橋梁側面に可動式フェアリング、円形フェアリング、ひし形フェアリングを設置したモデルの検証が行われている。
【0013】
この他、特許文献2には、津波等による水流が橋梁の高さを超えて襲った際に、下向きの大きな揚力によって上部構造が押し潰されるように損壊する被害を軽減するための構造として、橋梁の上部構造に、上部構造を上下に貫通する鋼製筒材を配置することで複数の流体流通孔を形成し、津波等の水流が橋梁の上部構造を超える高さで襲った際に、上部構造の上にかかる水圧が流体流通孔を通して下側へ抜けるようにした構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2017-106193号公報
【特許文献2】特開2015-042836号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】片岡佑太、江頭慶三、四井早紀、伊津野和行、「鋼管の併設による鋼橋の津波対策に関する研究」、鋼構造論文集、2021年9月、第28巻第111号、p.39-49
【非特許文献2】中尾尚史、張広鋒、炭村透、星隈順一、「フェアリングを設置した橋梁上部構造の津波の作用によるメカニズム」、土木学会論文集A1(構造・地震工学)、Vol.70、No.4(地震工学論文集第33巻)、I_110-I_120、2014
【非特許文献3】橋梁の対津波・対洪水設計に関する研究小委員会報告書、公益社団法人土木学会 地震工学委員会 橋梁の対津波・対洪水設計に関する研究小委員会、2020年11月30日、pp.3-20-3-40
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
橋梁の上部工側面にフェアリングを設置すれば、抗力係数と揚力係数を小さくし、水平と鉛直の2方向の作用力が低減されると考えられ、実際、水流による流体力に対して、フェアリングが有用であるという研究報告もあり、一定の効果があることは認められている。しかしながら、実施工においては機構の整理が追いついていない。
【0017】
さらには、橋梁に漂流物が堆積し、水平力が増大することで、小さな流速においても被害を受けることも想定される。そのため、漂流物を上流から下流へ押し流すことも重要である。
【0018】
一方で、フェアリングを設置しても橋梁上部工には水平力が生じ、変形を引き起こす恐れがあり、河川氾濫後の橋梁の供用を考えると主桁などの上部工の損傷を回避する形状保持材が必要であると考えられる。
【0019】
特許文献1記載の橋梁は、人がフェアリング部材の内部を点検できるようにフェアリング部材が開閉できることを重視したものであり、フェアリング自体の作用効果と橋梁上部工に作用する流体力との関係については、十分な検討がなされていない。また、上部横材部分に洪水時に流木などが引っ掛かることによる課題が残されている。
【0020】
非特許文献1では断面が半円柱と直方体のフェアリングモデルの解析が行われ、また非特許文献2では、三角形および半円形のフェアリングの解析が行われているが、モデルが小さいため実施工に適用できるかどうか検討する必要がある。
【0021】
また、特許文献1や非特許文献1~3記載の橋梁では、非常に大きな流体力が作用したときの主桁等、上部工の形状の変形に関する検討が十分でなく、形状保持の対策は考慮されていない。
【0022】
本発明は、上述のような背景のもと、大雨が引き起こす洪水や河川の氾濫時に橋梁上部工への作用力を低減させ、橋梁上部工の損傷を効果的に回避することができる橋梁の洪水対策構造を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、並列する複数本の主桁の上部に床版が架設されてなる橋梁上部工に対する水流に起因する作用力を低減させるための橋梁の洪水対策構造であって、前記床版の橋軸直角方向の張出部下部から前記主桁の下部をつなぐ形で、橋梁上部工を側方から覆うフェアリングと、隣接する前記主桁の下部どうしをつなぐことで、水流に起因する水平力に対し、前記主桁間の変位または変形を防止して前記橋梁上部工の形状を保持するための形状保持材とを備えていることを特徴とするものである。
【0024】
主桁および床版は、鋼製、コンクリート製、鋼コンクリート複合構造など、特に限定されない。
【0025】
主桁を含む橋梁上部工を側方から覆うことができる形状のフェアリングを設置することによって、水流の方向を変更し、抗力係数を低減させることができる。また、床版の張出部にかかる作用力を低減させ、揚力も低減させることができる。
【0026】
また、フェアリングで床版の張出部下部から主桁の下部をつなぐ形で、橋梁上部工を側方から覆うことで、橋桁下面を急縮断面にすることになり、河床との間で橋桁下面の流速を上昇させて、漂流物や堆積物を押し流す効果がある。
【0027】
また、隣接する前記主桁の下部どうしを所定の剛性を備えた形状保持材でつなぐことで、橋桁の剛性を上昇させることができ、主桁間の間隔が維持されるため、作用力による橋桁の変形を防ぎ、橋桁の転倒や流出も防止することができる。また、主桁の下部どうしを形状保持材でつなぐことで、形状保持材の上面に点検経路を確保することができる。
【0028】
フェアリングを構成する材料は、鋼板、強化プラスチック板、プレキャストコンクリート版など、特に限定されないが、比較的軽量で、施工も容易で、耐久性が得られる薄肉の鋼板や強化プラスチック板などが適する。
【0029】
また、本発明に係る橋梁の洪水対策構造において、形状保持材の全体または一部として、板状のグレーティングを用いることができる。グレーティングであれば、耐久性に優れ、格子状であるため、橋桁の下面から主桁間に水が入り、上部工に対する浮力や静水圧を低減させ、上向きの揚力を抑えることができる。
【0030】
形状保持材としてのグレーティングの剛性は、格子の間隔、格子を形成する鋼材の材質、厚さ、グレーティング全体としての板厚などに応じて設計することができる。
【0031】
また、本発明の橋梁において、床版の、隣接する主桁間の上部位置に、床版上下間を連通させる空気流通部を設けることが好ましい。空気流通部を設けることで、橋桁下面からの主桁間への水の侵入に対し、空気溜まりが生じていた床版下の空気が抜け、浮力、静水圧を減少させ、従来、桁間に発生していた揚力を低減させることができる。
【0032】
この床版上下間を連通させる空気流通部の形態は特に限定されないが、床版に設けたスリットや空気孔を空気流通部とすることができる。床版に形成した空気流通部には、グレーティングを取り付けることもできる。また、例えば、床版に開口部を設け、その開口部位置にグレーティングを嵌め込んだ構造としてもよい。
【0033】
また、本発明の橋梁において、さらに浮力を低減させる目的で、主桁に水平方向に貫通する貫通部を設けてもよい。この貫通部は例えば主桁がI桁の場合には、主桁としての剛性が大きく損なわれない形でI桁のウェブ部分に間隔をおいて、例えば円形の貫通孔を設けることによって形成される。もちろん主桁がI桁以外の場合にも適宜間隔で貫通孔を設けることができる。
【0034】
貫通部を設けることで、主桁間での水や空気の移動が可能となり、その結果、洪水時などにおける浮力と静水圧を低減することができる。
【0035】
この主桁部分を水平方向に貫通する貫通部は、上述した床版上下間を連通させる空気流通部と併用することもでき、これらの併用により、より効果的に橋梁上部工に作用する浮力、静水圧、揚力を低減させることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の橋梁洪水対策構造は、以上に述べた構成からなり、次のような作用効果が得られる。
【0037】
(1) 床版の張出部下部から主桁の下部をつなぐ形で、橋梁上部工を側方から覆うフェアリングを設置することで、水流の方向を変更し、抗力係数を低減させることができ、それにより水流方向の水平力が減少する。また、床版張出部への揚力を低減される。さらに、橋桁下面の流速を上昇させ、水流がスムーズになり、桁下へ流れやすくなるため、漂流物を押し流すことができる。
【0038】
(2) 形状保持材を隣接する主桁間に設置することで、桁間を形状保持し、橋桁が転倒したり流出したりすることを防ぐことができる。
【0039】
(3) 形状保持材をグレーティングにすれば、桁内部に水が流入することで静水圧を低減することができる。また、平常時はグレーティングの上面に点検経路を確保することができる。
【0040】
(4) 隣接する主桁間の上部位置に床版上下間を連通させる空気流通部を設けることで、桁間の空気抜きが図れ、空気溜まり減により、床版下面における揚力を低減させることができる。
【0041】
(5) また、主桁に水平方向に貫通する貫通部を設けることによっても、主桁間での水や空気の移動が可能となり、その結果、洪水時などにおける浮力と静水圧を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明に係る橋梁の洪水対策構造の一実施形態を示す概略断面図である。
【
図2】
図1の実施形態における洪水時の作用力の説明図である。
【
図3】従来の一般的な橋梁の上部工の構造の概略断面図である。
【
図4】従来の橋梁の上部工における洪水時の作用力の説明図である。
【
図5】従来の橋梁の上部工における洪水時の損傷例1の説明図である。
【
図6】従来の橋梁の上部工における洪水時の損傷例2の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の一実施形態を
図1、
図2に基づいて説明する。なお、本発明は以下に述べる実施形態に限定されるものではない。
【0044】
図1は本発明に係る橋梁の洪水対策構造の一実施形態を概略的に示したものであり、並列する複数本の主桁2の上部に床版3が架設されてなる橋梁上部工について、床版3の橋軸直角方向の張出部下部から主桁2の下部をつなぐ形で、橋梁上部工を側方から覆うフェアリング4を設け、隣接する主桁2の下部どうしを形状保持材5でつなぐことで、水流に起因する水平力に対し、主桁2間の変形を防止して、主桁2間および橋梁上部工としての形状を保持する構造となっている。
【0045】
本実施形態は、主桁2がウェブ2a、上フランジ2b、下フランジ2cを備えたI桁の場合であり、鋼板などからなるフェアリング4が床版3の張出部下部と主桁2の下フランジ2cを直線的につなぐ形で設置されている。
【0046】
また、本実施形態では、形状保持材5としては、水平力に抵抗できる所定の剛性を備えたグレーティングを用いていることで、グレーティングの下面から主桁2間に水が流入できる構造となっており、それにより橋梁上部工に作用する静水圧を低減することができる。また、平常時は形状保持材5としてのグレーティングの上面を点検経路として利用することができる。
【0047】
さらに、本実施形態では、隣接する主桁2の上フランジ2b間において、床版3に床版3の上下間を連通させるスリットまたは空気孔からなる空気流通部6が設けられている。
【0048】
空気流通部6が設けられていることで、橋桁下面からの主桁間への水の侵入に対し、空気溜まりが生じていた床版下の空気が抜け、浮力・静水圧を減少させることができる。また、従来、桁間に発生していた揚力を低減させることができる。
【0049】
さらに本実施形態では、主桁2のウェブ2aに水平方向に貫通する貫通部7を設けている。この貫通部7は主桁2の剛性が大きく損なわれない形でウェブ2a部分に間隔をおいて形成されている。貫通部7によって、主桁2の剛性が大きく損なわれない形状としては貫通部7を円形の貫通孔とすることが望ましいが、貫通孔の形態は特に限定されない。
【0050】
貫通部7を設けることで、主桁2間での水や空気の移動が可能となり、その結果、洪水時などにおける浮力と静水圧を低減することができる。
【0051】
図2は上述の構造における洪水時の作用力の説明図である。
橋軸方法と直角な断面において、床版3の張出部下部から主桁2の下部をつなぐ形で、フェアリング4を両側に設けたことで、橋梁上部工の下部が台形に覆われた形となり、水流W
Fはフェアリング4に沿って、主桁2の下部に回り込む流れがスムーズとなる。
【0052】
そのため、前述した
図4の従来構造と比べ、主桁2部分が受ける水平力F
Hwが低減され、床版3の張出部に作用する鉛直力F
Vw(揚力)も小さくなる。
【0053】
また、主桁2間の下部をつなぐ形状保持材5としてのグレーティングから主桁2間に水が流入することで、橋梁上部工に作用する静水圧が低減される。また、橋桁内に生ずる空気溜まりAPについては、床版3に形成された空気流通部6から空気が抜けることでも、浮力・静水圧を減少させることができる。
【0054】
また、上述のように、主桁2に設けた貫通部7によっても主桁2間での水や空気の移動が可能となり、洪水時などにおける浮力と静水圧をさらに低減することができる。
【0055】
また、フェアリング4で上部工の下部が台形に覆われ、主桁2の下部に回り込む水流WFの流速が河床との間で増すことで、桁下へ流れやすくなるため、流木その他の漂流物を押し流し、漂流物による橋梁の損傷を防止することができる。
【符号の説明】
【0056】
FVw…鉛直力
FVa…鉛直力
FHw…水平力
WF…水流
AP…空気溜まり
1…橋脚
2…主桁、2a…ウェブ、2b…上フランジ、2c…下フランジ
3…床版
4…フェアリング
5…形状保持材(グレーティング)
6…空気流通部
7…貫通部