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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131934
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】建築用木質パネル及び建物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/76 20060101AFI20240920BHJP
   E04B 1/80 20060101ALI20240920BHJP
   E04B 1/10 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
E04B1/76 400C
E04B1/76 500F
E04B1/80 100Z
E04B1/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042512
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】青木 亮
(72)【発明者】
【氏名】飯田 和仁
(72)【発明者】
【氏名】片桐 徹
(72)【発明者】
【氏名】川上 隆士
(72)【発明者】
【氏名】竹迫 利喜也
(72)【発明者】
【氏名】土屋 奈美子
(72)【発明者】
【氏名】東山 純也
(72)【発明者】
【氏名】藤塚 亮太
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001DH07
2E001EA08
2E001EA10
2E001FA03
2E001FA04
2E001FA06
2E001GA12
2E001GA82
2E001HA32
2E001HA33
2E001HD01
(57)【要約】
【課題】建物を構成する建築用木質パネル単体の断熱性能を向上させつつ製造コストを極力低減し、その上で、電線等の配線や配線器具等の埋め込みに係る手間も軽減させる。
【解決手段】框材Fm及び補助桟材Cpによって構成された枠体Fと、枠体Fに貼り付けられた面材Bdと、枠体Fと面材Bdとに囲まれた内部中空部Sに装填された複数種類の断熱材In1,In2と、を備える建築用木質パネル1であって、複数種類の断熱材In1,In2は、建築用木質パネル1,2における厚さ方向の一方側に配置された軟質断熱材In1と、厚さ方向の他方側に配置された硬質断熱材In2と、を有し、軟質断熱材In1は、硬質断熱材In2よりも弾性が低く設定され、硬質断熱材In2は、軟質断熱材In1よりも断熱性が高く設定され、硬質断熱材In2の厚さ寸法は、軟質断熱材In1の厚さ寸法よりも大きく設定されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦横の框材が矩形状に組み立てられるとともに、前記縦横の框材からなる矩形枠の内部に補助桟材が縦横に組み付けられて構成された枠体と、
前記枠体の両面もしくは片面に貼り付けられた面材と、
前記枠体と前記面材とに囲まれた内部中空部に装填された複数種類の断熱材と、を備える建築用木質パネルであって、
前記複数種類の断熱材は、前記建築用木質パネルにおける厚さ方向の一方側に配置された軟質断熱材と、前記厚さ方向の他方側に配置された硬質断熱材と、を有し、
前記軟質断熱材は、前記硬質断熱材よりも弾性が低く設定され、
前記硬質断熱材は、前記軟質断熱材よりも断熱性が高く設定され、
前記硬質断熱材の厚さ寸法は、前記軟質断熱材の厚さ寸法よりも大きく設定されていることを特徴とする建築用木質パネル。
【請求項2】
請求項1に記載の建築用木質パネルにおいて、
前記框材又は/及び前記補助桟材の長さ方向に沿う一方又は他方の側縁部のうち、前記軟質断熱材が装填された側の側縁部に、電線等が通される配線溝が形成されていることを特徴とする建築用木質パネル。
【請求項3】
請求項1に記載の建築用木質パネルにおいて、
前記軟質断熱材が装填された側に位置する前記面材に、配線器具が埋め込まれる埋込穴が形成されていることを特徴とする建築用木質パネル。
【請求項4】
請求項1に記載の建築用木質パネルにおいて、
前記面材は、前記枠体の両面に貼り付けられており、
前記軟質断熱材は、前記両面に貼り付けられた前記面材のうち一方の前記面材に接し、前記硬質断熱材は、前記両面に貼り付けられた前記面材のうち他方の前記面材に接した状態となっており、
前記軟質断熱材と前記硬質断熱材は互いに接した状態となっていることを特徴とする建築用木質パネル。
【請求項5】
請求項1に記載の建築用木質パネルにおいて、
前記面材は、前記枠体の片面に貼り付けられており、
前記軟質断熱材は、前記面材に接した状態となっており、
前記軟質断熱材と前記硬質断熱材は互いに接した状態となっていることを特徴とする建築用木質パネル。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の建築用木質パネルにおいて、
前記軟質断熱材及び前記硬質断熱材における外周面は前記枠体に接した状態となっていることを特徴とする建築用木質パネル。
【請求項7】
請求項1に記載の建築用木質パネルにおいて、
前記軟質断熱材は、繊維の間に空気を閉じ込めることで断熱性能を発揮する繊維系断熱材であり、前記硬質断熱材は、製造時に形成される無数の微細な気泡の中に発泡ガスを閉じ込めて断熱性能を発揮する発泡系断熱材であることを特徴とする建築用木質パネル。
【請求項8】
請求項4に記載の建築用木質パネルを含んで構成された建物であって、
前記建築用木質パネルは、建物の壁用に設けられ、前記一方の面材が屋内側に位置し、前記他方の面材が屋外側に位置した状態に配置されていることを特徴とする建物。
【請求項9】
請求項5に記載の建築用木質パネルを含んで構成された建物であって、
前記建築用木質パネルは、建物の床又は屋根用に設けられ、前記面材が上側となるように配置されていることを特徴とする建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用木質パネルと、建築用木質パネルによって構築される住宅等の建物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅の施工についてはその工業化が進み、例えば壁や床、屋根といった構成要素を予め工場にてパネル化しておき、施工現場でこれらのパネルを組み立てることにより、住宅を構築するといったパネル工法が一部に採用されている。このようなパネル工法に用いられるパネルは、縦横の框材が矩形状に組み立てられるとともに、矩形枠の内部に補助桟材が縦横に組み付けられて枠体が構成され、この枠体の両面もしくは片面に、合板等の面材が貼設されたものであり、内部中空な構造となっている。枠体を構成する上記の各材は木製であり、パネルは、建築用木質パネルとも称呼される。また、パネルの内部中空な部分には、グラスウールやロックウール等の繊維系断熱材が装填されて、パネルごとの断熱性能を向上させている。
【0003】
例えば特許文献1には、建築用木質パネルによって構成された建物構造材を、厚さ方向に二重に並べて外壁用の壁体を形成する技術が開示されている。また、厚さ方向に二重に並べられた建築用木質パネル同士の間には断熱層が設けられて、壁体の断熱性能を更に向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7088996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のように建築用木質パネルを厚さ方向に二重に並べて外壁用の壁体を形成すると建物の建築費用が高くなる。そのため、高い断熱性能を極力維持しつつ、建物の建築費用を押さえたいという要望がある。また、建築用木質パネルを厚さ方向に二重に並べて外壁用の壁体を形成すると壁厚が大きくなってしまうため、高い断熱性能を維持しつつ、壁厚も小さくしたいという要望もある。
このような要望を叶える壁体の実現にあたっては、建築用木質パネルの内部中空部に装填される断熱材を、グラスウール等の繊維系断熱材に代えて、繊維系断熱材よりも断熱性能が高い発泡プラスチック断熱材(以下、発泡系断熱材)に変更することが考えられる。ところが、発泡系断熱材は、繊維系断熱材よりも硬質である場合が多く、建築用木質パネルの内部中空部に電線や通信線を配線したり、スイッチやコンセント等の配線器具を埋め込んだりする際に、溝や穴の加工が必要となる。そのため、配線や配線器具の埋め込みに係る手間を軽減することが求められている。さらに、発泡系断熱材は、繊維系断熱材よりも価格が高いため、建築用木質パネルに係る製造コストを極力低減させることも望まれている。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、建物を構成する建築用木質パネル単体の断熱性能を向上させつつ製造コストを極力低減し、その上で、電線等の配線や配線器具等の埋め込みに係る手間も軽減させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、例えば図1図5に示すように、縦横の框材Fmが矩形状に組み立てられるとともに、前記縦横の框材Fmからなる矩形枠の内部に補助桟材Cpが縦横に組み付けられて構成された枠体Fと、
前記枠体Fの両面もしくは片面に貼り付けられた面材Bdと、
前記枠体Fと前記面材Bdとに囲まれた内部中空部Sに装填された複数種類の断熱材In1,In2と、を備える建築用木質パネル1,2であって、
前記複数種類の断熱材In1,In2は、前記建築用木質パネル1,2における厚さ方向の一方側に配置された軟質断熱材In1と、前記厚さ方向の他方側に配置された硬質断熱材In2と、を有し、
前記軟質断熱材In1は、前記硬質断熱材In2よりも弾性が低く設定され、
前記硬質断熱材In2は、前記軟質断熱材In1よりも断熱性が高く設定され、
前記硬質断熱材In2の厚さ寸法は、前記軟質断熱材In1の厚さ寸法よりも大きく設定されていることを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、内部中空部Sに装填される硬質断熱材In2は、軟質断熱材In1よりも断熱性が高く設定され、その厚さ寸法は、軟質断熱材In1の厚さ寸法よりも大きく設定されているので、例えば内部中空部Sに装填される断熱性の全てを軟質断熱材In1とする場合に比して、建築用木質パネル1,2単体の断熱性能を向上させることができる。また、内部中空部Sには、断熱性の高い硬質断熱材In2だけでなく、硬質断熱材In2よりも断熱性を抑えた軟質断熱材In1が装填されるため、例えば内部中空部Sに装填される断熱性の全てを硬質断熱材In2とする場合に比して製造コストを極力低減することができる。
その上、建築用木質パネル1,2における厚さ方向の一方側に、硬質断熱材In2よりも弾性が低く設定された軟質断熱材In1が配置されているので、内部中空部Sのうち、建築用木質パネル1,2における厚さ方向の一方側に、電線や通信線を配線したり、スイッチやコンセント等の配線器具を埋め込んだりしやすくなる。そのため、建築用木質パネル1,2の内部中空部Sに、電線等を配線したり配線器具を埋め込んだりする場合の手間を軽減させることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、例えば図2図4に示すように、請求項1に記載の建築用木質パネル1,2において、
前記框材Fm又は/及び前記補助桟材Cpの長さ方向に沿う一方又は他方の側縁部のうち、前記軟質断熱材In1が装填された側の側縁部に、電線等が通される配線溝3が形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、框材Fm又は/及び補助桟材Cpの長さ方向に沿う一方又は他方の側縁部のうち、軟質断熱材In1が装填された側の側縁部に、電線等が通される配線溝3が形成されているので、建築用木質パネル1,2の内部中空部Sに電線等を配線しやすくなり、電線等の配線に係る手間を軽減させることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、例えば図2に示すように、請求項1に記載の建築用木質パネル1,2において、
前記軟質断熱材In1が装填された側に位置する前記面材Bdに、配線器具が埋め込まれる埋込穴4が形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、軟質断熱材In1が装填された側に位置する面材Bdに、配線器具が埋め込まれる埋込穴4が形成されているので、建築用木質パネル1,2の内部中空部Sに配線器具を埋め込みやすくなり、配線器具の埋め込みに係る手間を軽減させることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、例えば図1図4に示すように、請求項1に記載の建築用木質パネル1において、
前記面材Bdは、前記枠体Fの両面に貼り付けられており、
前記軟質断熱材In1は、前記両面に貼り付けられた前記面材Bdのうち一方の前記面材Bdに接し、前記硬質断熱材In2は、前記両面に貼り付けられた前記面材Bdのうち他方の前記面材Bdに接した状態となっており、
前記軟質断熱材In1と前記硬質断熱材In2は互いに接した状態となっていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、軟質断熱材In1は、両面に貼り付けられた面材Bdのうち一方の面材Bdに接し、硬質断熱材In2は、両面に貼り付けられた面材Bdのうち他方の面材Bdに接した状態となっており、軟質断熱材In1と硬質断熱材In2は互いに接した状態となっているので、軟質断熱材In1と硬質断熱材In2の双方を、建築用木質パネル1の内部中空部Sに対し、建築用木質パネル1における厚さ方向の一方側から他方側にかけて充填することができ、建築用木質パネル1の断熱性能を向上させることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、例えば図3に示すように、請求項1に記載の建築用木質パネル2において、
前記面材Bdは、前記枠体Fの片面に貼り付けられており、
前記軟質断熱材In1は、前記面材Bdに接した状態となっており、
前記軟質断熱材In1と前記硬質断熱材In2は互いに接した状態となっている。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、面材Bdは、枠体Fの片面に貼り付けられており、軟質断熱材In1は、面材Bdに接した状態となっており、軟質断熱材In1と硬質断熱材In2は互いに接した状態となっているので、面材Bdが両面に貼り付けられない分、建築用木質パネル2の製造コストを低減させることができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、例えば図1図4に示すように、請求項4又は5に記載の建築用木質パネル1,2において、
前記軟質断熱材In1及び前記硬質断熱材In2における外周面は前記枠体Fに接した状態となっていることを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、軟質断熱材In1及び硬質断熱材In2における外周面は枠体Fに接した状態となっているので、軟質断熱材In1及び硬質断熱材In2の双方を、内部中空部Sの縦横に充填することができ、建築用木質パネル1の断熱性能を向上させることができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、例えば図1図5に示すように、請求項1に記載の建築用木質パネル1,2において、
前記軟質断熱材In1は、繊維の間に空気を閉じ込めることで断熱性能を発揮する繊維系断熱材In1であり、前記硬質断熱材In2は、製造時に形成される無数の微細な気泡の中に発泡ガスを閉じ込めて断熱性能を発揮する発泡系断熱材In2であることを特徴とする。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、軟質断熱材In1は、繊維の間に空気を閉じ込めることで断熱性能を発揮する繊維系断熱材In1であるため、硬質の発泡系断熱材In2に比して弾性が低く設定される。そのため、手指や道具によって押し込んだり掻き分けたりするだけで容易に変形させることができるので、内部中空部Sに電線等を配線したり配線器具を埋め込んだりする場合に好適となる。しかも、比較的安価であり、建築用木質パネル1,2の製造コストを極力低減できる。
さらに、硬質断熱材In2は、製造時に形成される無数の微細な気泡の中に発泡ガスを閉じ込めて断熱性能を発揮する発泡系断熱材In2であるため、繊維系断熱材In1に比して断熱性が高く設定される。そのため、内部中空部Sに装填される発泡系断熱材In2の厚みを大きくすればするほど建築用木質パネル1,2単体の断熱性能を向上させることができる。
【0021】
請求項8に記載の発明は、例えば図1図4に示すように、請求項4に記載の建築用木質パネル1を含んで構成された建物であって、
前記建築用木質パネル1は、建物の壁用に設けられ、前記一方の面材Bdが屋内側に位置し、前記他方の面材Bdが屋外側に位置した状態に配置されていることを特徴とする。
【0022】
請求項8に記載の発明によれば、建築用木質パネル1は、建物の壁用に設けられ、一方の面材Bdが屋内側に位置し、他方の面材Bdが屋外側に位置した状態に配置されているので、屋内側に軟質断熱材In1が位置することとなる。電線等や配線器具は、建物の屋外側よりも屋内側に配置されることが多いため、屋内側に軟質断熱材In1が位置していれば、電線や通信線を配線したり、スイッチやコンセント等の配線器具を埋め込んだりしやすくなる。そのため、建築用木質パネル1の内部中空部Sに、電線等を配線したり配線器具を埋め込んだりする場合の手間を軽減させることができる。
【0023】
請求項9に記載の発明は、例えば図3に示すように、請求項5に記載の建築用木質パネル2を含んで構成された建物であって、
前記建築用木質パネル2は、建物の床又は屋根用に設けられ、前記面材Bdが上側となるように配置されていることを特徴とする。
【0024】
請求項9に記載の発明によれば、建築用木質パネル2は、建物の床又は屋根用に設けられ、面材Bdが上側となるように配置されているので、屋内側に軟質断熱材In1が位置することとなる。電線等や配線器具は、建物の屋外側よりも屋内側に配置されることが多いため、屋内側に軟質断熱材In1が位置していれば、電線や通信線を配線したり、スイッチやコンセント等の配線器具を埋め込んだりしやすくなる。そのため、建築用木質パネル2の内部中空部Sに、電線等を配線したり配線器具を埋め込んだりする場合の手間を軽減させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、建物を構成する建築用木質パネル単体の断熱性能を向上させつつ製造コストを極力低減し、その上で、電線等の配線や配線器具等の埋め込みに係る手間も軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】建築用木質パネルの基本構造を示す斜視図である。
図2】壁用の建築用木質パネルを示し、(a)は断熱材が装填されていない状態の平断面図であり、(b)は断熱材が装填された状態の平断面図であり、(c)は断熱材が装填された状態の側断面図である。
図3】床用の建築用木質パネルを示す側断面図である。
図4】断熱材の種類が異なる複数の壁用の建築用木質パネルによって形成された建物の壁を示す平断面図である。
図5】繊維系断熱材と発泡系断熱材の配置例のバリエーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。なお、以下の実施形態及び図示例における方向は、あくまでも説明の便宜上設定したものである。
【0028】
図1図4において符号1,2は、住宅等の建物をパネル工法で構築する場合に、建物における壁や床、屋根といった構成要素を形成するための建築用木質パネルを示す。
この建築用木質パネル1,2は、縦横の框材Fmが矩形状に組み立てられるとともに、矩形枠の内部に補助桟材Cpが縦横に組み付けられて枠体Fが構成され、この枠体Fの両面もしくは片面に、合板等の面材Bdが貼り付けられたものであり、内部中空な構造となっている。さらに、その内部中空な部分(以下、内部中空部S)には、複数種類の断熱材In1,In2が装填される。
なお、内部中空部Sは、縦横の補助桟材Cpによって複数に区切られた状態となる。つまり、複数種類の断熱材In1,In2は、複数に区切られた内部中空部Sのそれぞれに装填されている。
【0029】
建築用木質パネル1は、壁用の建築用木質パネルであり、枠体Fの両面に面材Bdが貼り付けられている。以下、第一建築用木質パネル1と称呼する。
建築用木質パネル2は、床用又は屋根用の建築用木質パネルであり、枠体Fの上面にのみ面材Bdが貼り付けられている。以下、第二建築用木質パネル2と称呼する。
【0030】
なお、第一及び第二建築用木質パネル1,2を構成する框材Fm等の各部材同士は接着剤によって接合されている。また、ステープルやビス等の固定具を補助的に用いて接合してもよい。
【0031】
内部中空部Sに装填される複数種類の断熱材In1,In2は、グラスウールやロックウール、セルロースファイバー等の繊維系断熱材In1と、いわゆる発泡プラスチック断熱材(以下、発泡系断熱材In2)である。
【0032】
繊維系断熱材In1は、発泡系断熱材In2に比して軟質であるため軟質断熱材とも称呼される。軟質断熱材である繊維系断熱材In1は、発泡系断熱材In2より低弾性とされており、手指や道具によって押し込んだり掻き分けたりするだけで容易に変形させることができる。したがって、内部中空部Sに電線や通信線を配線したり、スイッチやコンセント等の配線器具を埋め込んだりする際は、この繊維系断熱材In1が設けられている位置に電線等を配線したり配線器具を埋め込むようにする。
なお、繊維系断熱材In1は、繊維の間に空気を閉じ込めることで断熱性能を発揮している。また、繊維系断熱材In1は、専用の袋に入れられたり、気密シートによって被覆されたりすることで気密性を確保してもよい。繊維系断熱材In1が専用の袋(フィルム)に包まれているのは主に結露防止が目的とされている。建築用木質パネル1,2の内部であれば繊維の中に気流は生じないので専用の袋等は不要だが、結露防止の目的で建築用木質パネル1,2の室内側に気密シートを施工するか断熱材に専用フィルム(内は防湿、外は透湿又はなし)を貼る必要がある。
【0033】
発泡系断熱材In2は、繊維系断熱材In1に比して硬質であるため硬質断熱材とも称呼される。
さらに、発泡系断熱材In2は、製造時に形成される無数の微細な気泡の中に発泡ガスを閉じ込めて、繊維系断熱材In1よりも高い断熱性能を発揮している。なお、発泡系断熱材In2に形成される無数の微細な気泡は、独立気泡でもよいし、連続気泡でもよい。
なお、発泡系断熱材In2としては、例えば硬質ウレタンフォームやフェノールフォーム、ポリスチレンフォーム等が好適に使用されるが、現場でスプレーすると同時に発泡させる現場発泡式のものでもよい。
【0034】
本実施形態において、繊維系断熱材In1は、建築用木質パネル1,2における厚さ方向の一方側に配置されている。発泡系断熱材In2は、建築用木質パネル1,2における厚さ方向の他方側に配置されている。つまり、繊維系断熱材In1と発泡系断熱材In2は、建築用木質パネル1,2の厚さ方向に並んだ状態で内部中空部Sに装填されている。さらに、これら繊維系断熱材In1と発泡系断熱材In2は、互いに接した状態で並べられている。
【0035】
また、発泡系断熱材In2の厚さ寸法は、繊維系断熱材In1の厚さ寸法よりも大きく設定されている。本実施形態においては、発泡系断熱材In2の厚さ寸法は、繊維系断熱材In1の厚さ寸法の2倍から3倍に設定されている。
建築用木質パネル1,2自体の厚さを増す場合には、繊維系断熱材In1の厚さ寸法は変更せずに、発泡系断熱材In2の厚さ寸法を大きくすることが断熱性能を向上させる上で好ましい。
建築用木質パネル1,2の製造コストを極力低減させたい場合には、繊維系断熱材In1の厚さ寸法を大きくして、発泡系断熱材In2の厚さ寸法を小さくする。ただし、その場合も、発泡系断熱材In2の厚さ寸法を、繊維系断熱材In1の厚さ寸法よりも大きくし、断熱性能を極力維持できるようにする。
【0036】
なお、電線や配線器具等は建物の屋内側に配置されることが多いため、繊維系断熱材In1は屋内側に配置されることが好ましい。つまり、本実施形態の第一建築用木質パネル1によって建物の外壁を形成する場合は、屋内側に繊維系断熱材In1が位置し、屋外側に発泡系断熱材In2が位置するように配置される。
【0037】
図2に示すように、第一建築用木質パネル1の框材Fm及び補助桟材Cpには、図示しない電線等を通すための凹型の配線溝3が形成されている。配線溝3は、框材Fm及び補助桟材Cpにおける一方の面材Bd側の縁部に形成されている。
ここで、一方の面材Bdとは、繊維系断熱材In1が隣接して設けられる面材である。つまり、建物の外壁を形成する場合に屋内側に配置される面材Bdとも言える。なお、他方の面材Bdは、建物の外壁を形成する場合に屋外側に配置される、発泡系断熱材In2が隣接して設けられる面材である。
なお、本実施形態の配線溝3は、横方向の框材Fm及び補助桟材Cpのうち、第一建築用木質パネル1の幅方向両端部に位置する部位に形成されているが、これに限られるものではなく、第一建築用木質パネル1の幅方向中央部に位置する部位に形成されてもよい。さらに、配線溝3は、縦方向の框材Fm及び補助桟材Cpに形成されてもよい。つまり、配線溝3は、框材Fm及び補助桟材Cpのうち、繊維系断熱材In1が配置される側に形成されていればよく、それ以外は、配線計画に合わせて任意の位置に形成されるものとする。
【0038】
また、図2(c)に示すように、第一建築用木質パネル1の一方の面材Bdには、図示しないスイッチコンセント等の配線器具を埋め込むための埋込穴4が形成されている。換言すれば、第一建築用木質パネル1を構成する一方の面材Bdのうち、配線器具が設置される箇所に開口部(貫通孔)が形成されており、当該開口部が埋込穴4とされている。
【0039】
図3に示すように、第二建築用木質パネル2の框材Fm及び補助桟材Cpにも、図示しない電線等を通すための凹型の配線溝3が形成されている。配線溝3は、框材Fm及び補助桟材Cpにおける上縁部に形成されている。なお、第二建築用木質パネル2における配線溝3も、第一建築用木質パネル1における配線溝3と同様に、框材Fm及び補助桟材Cpのうち、繊維系断熱材In1が配置される側に形成されていればよく、それ以外は、配線計画に合わせて任意の位置に形成されるものとする。
【0040】
また、第一建築用木質パネル1から第二建築用木質パネル2にかけて電線等が通される場合がある。その場合は、図3に示すように、第二建築用木質パネル2の面材Bdのうち、第一建築用木質パネル1側の配線溝3と第二建築用木質パネル2側の配線溝3との間に位置する部位に、これら配線溝3同士を連通する開口部5を形成する。これによって、第一建築用木質パネル1側の配線溝3と、第二建築用木質パネル2側の配線溝3が、開口部5を通じて空間的に連続するので、電線等を、第一建築用木質パネル1から第二建築用木質パネル2にかけて通すことができる。
なお、図3において符号6は、半土台6(胴差でもよい)であり、第一建築用木質パネル1を含む建物の外壁は、第二建築用木質パネル2における屋外側の端部と当該半土台6の上に立設されている。また、半土台6は、第二建築用木質パネル2における屋外側の端部と共に、換気台輪を介して基礎の上に載せられるものである。
【0041】
なお、配線溝3が横方向の框材Fm及び補助桟材Cpに形成されることで、配線溝3に通される電線等は、建築用木質パネル1,2の長さ方向一端部から他端部にかけて、建築用木質パネル1,2を通り抜けるようにして配線することが可能となる。また、配線溝3が縦方向の框材Fm及び補助桟材Cpに形成されることで、電線等は、建築用木質パネル1,2の幅方向一端部から他端部にかけて、建築用木質パネル1,2を通り抜けるようにして配線することが可能となる。
また、電線等を、建築用木質パネル1,2の長さ方向中央部や幅方向中央部などの途中部分から外部に出して配線する場合は、一方の面材Bdに開口部を形成する。
さらに、電線等を通さない位置に配置された框材Fm及び補助桟材Cpには、配線溝3は形成されなくてもよい。
また、電線等を、屋外側に向かって配線したい場合は、発泡系断熱材In2に貫通孔を形成し、当該貫通孔に電線等を通すようにしてもよい。
【0042】
図4は、断熱材の種類が異なる複数の壁用の建築用木質パネル1,13,14によって形成された建物の壁を示す平断面図である。なお、図4に示す壁は、ここでは外壁とするが、建物内に設けられる内壁でもよいものとする。
中央に位置する壁用の建築用木質パネルは、上記の第一建築用木質パネル1である。左側に位置する壁用の建築用木質パネルは、第三建築用木質パネル13であり、右側に位置する壁用の建築用木質パネルは、第四建築用木質パネル14である。
第三建築用木質パネル13は、装填される断熱材が繊維系断熱材In1のみであり、第四建築用木質パネル14は、装填される断熱材が発泡系断熱材In2のみである。
【0043】
なお、本実施形態においては、説明の便宜上、図4に示すような並びとしたが、これに限れられるものではない。すなわち、建物の壁は、繊維系断熱材In1及び発泡系断熱材In2の双方が装填された第一建築用木質パネル1と、それ以外の第三建築用木質パネル13又は/及び第四建築用木質パネル14とが並設されて構成されている。換言すれば、本実施形態における建物の壁は、第一建築用木質パネル1と、第三建築用木質パネル13と第四建築用木質パネル14のうち少なくとも一方と、を含んで構成されている。
また、図示はしないが、複数の第一建築用木質パネル1同士が並設されて建物の壁を構成してもよい。
【0044】
また、図示はしないが、建物の床又は屋根も、断熱材の種類が異なる複数の床・屋根用の建築用木質パネルによって形成されてもよい。その場合、建物の床又は屋根が、第二建築用木質パネル2と、装填される断熱材が繊維系断熱材In1のみとされた建築用木質パネル、及び/又は、装填される断熱材が発泡系断熱材In2のみとされた建築用木質パネルによって形成される。
【0045】
本実施形態によれば、以下のような優れた効果を奏する。
すなわち、内部中空部Sに装填される硬質断熱材In2(発泡系断熱材In2)は、軟質断熱材In1(繊維系断熱材In1)よりも断熱性が高く設定され、その厚さ寸法は、軟質断熱材In1の厚さ寸法よりも大きく設定されているので、例えば内部中空部Sに装填される断熱性の全てを軟質断熱材In1とする場合に比して、建築用木質パネル1,2単体の断熱性能を向上させることができる。また、内部中空部Sには、断熱性の高い硬質断熱材In2だけでなく、硬質断熱材In2よりも断熱性を抑えた軟質断熱材In1が装填されるため、例えば内部中空部Sに装填される断熱性の全てを硬質断熱材In2とする場合に比して製造コストを極力低減することができる。
その上、建築用木質パネル1,2における厚さ方向の一方側に、硬質断熱材In2よりも弾性が低く設定された軟質断熱材In1が配置されているので、内部中空部Sのうち、建築用木質パネル1,2における厚さ方向の一方側に、電線や通信線を配線したり、スイッチやコンセント等の配線器具を埋め込んだりしやすくなる。そのため、建築用木質パネル1,2の内部中空部Sに、電線等を配線したり配線器具を埋め込んだりする場合の手間を軽減させることができる。
【0046】
また、框材Fm又は/及び補助桟材Cpの長さ方向に沿う一方又は他方の側縁部のうち、軟質断熱材In1が装填された側の側縁部に、電線等が通される配線溝3が形成されているので、建築用木質パネル1,2の内部中空部Sに電線等を配線しやすくなり、電線等の配線に係る手間を軽減させることができる。
【0047】
また、軟質断熱材In1が装填された側に位置する面材Bdに、配線器具が埋め込まれる埋込穴4が形成されているので、建築用木質パネル1,2の内部中空部Sに配線器具を埋め込みやすくなり、配線器具の埋め込みに係る手間を軽減させることができる。
【0048】
また、軟質断熱材In1は、両面に貼り付けられた面材Bdのうち一方の面材Bdに接し、硬質断熱材In2は、両面に貼り付けられた面材Bdのうち他方の面材Bdに接した状態となっており、軟質断熱材In1と硬質断熱材In2は互いに接した状態となっているので、軟質断熱材In1と硬質断熱材In2の双方を、建築用木質パネル1の内部中空部Sに対し、建築用木質パネル1における厚さ方向の一方側から他方側にかけて充填することができ、建築用木質パネル1の断熱性能を向上させることができる。
【0049】
また、面材Bdは、枠体Fの片面に貼り付けられており、軟質断熱材In1は、面材Bdに接した状態となっており、軟質断熱材In1と硬質断熱材In2は互いに接した状態となっているので、面材Bdが両面に貼り付けられない分、建築用木質パネル2の製造コストを低減させることができる。
【0050】
また、軟質断熱材In1及び硬質断熱材In2における外周面は枠体Fに接した状態となっているので、軟質断熱材In1及び硬質断熱材In2の双方を、内部中空部Sの縦横に充填することができ、建築用木質パネル1の断熱性能を向上させることができる。
【0051】
また、軟質断熱材In1は、繊維の間に空気を閉じ込めることで断熱性能を発揮する繊維系断熱材In1であるため、硬質の発泡系断熱材In2に比して弾性が低く設定される。そのため、手指や道具によって押し込んだり掻き分けたりするだけで容易に変形させることができるので、内部中空部Sに電線等を配線したり配線器具を埋め込んだりする場合に好適となる。しかも、比較的安価であり、建築用木質パネル1,2の製造コストを極力低減できる。
さらに、硬質断熱材In2は、製造時に形成される無数の独立した微細な気泡の中に発泡ガスを閉じ込めて断熱性能を発揮する発泡系断熱材In2であるため、繊維系断熱材In1に比して断熱性が高く設定される。そのため、内部中空部Sに装填される発泡系断熱材In2の厚みを大きくすればするほど建築用木質パネル1,2単体の断熱性能を向上させることができる。
【0052】
また、建築用木質パネル1は、建物の壁用に設けられ、一方の面材Bdが屋内側に位置し、他方の面材Bdが屋外側に位置した状態に配置されているので、屋内側に軟質断熱材In1が位置することとなる。電線等や配線器具は、建物の屋外側よりも屋内側に配置されることが多いため、屋内側に軟質断熱材In1が位置していれば、電線や通信線を配線したり、スイッチやコンセント等の配線器具を埋め込んだりしやすくなる。そのため、建築用木質パネル1の内部中空部Sに、電線等を配線したり配線器具を埋め込んだりする場合の手間を軽減させることができる。
【0053】
また、建築用木質パネル2は、建物の床又は屋根用に設けられ、面材Bdが上側となるように配置されているので、屋内側に軟質断熱材In1が位置することとなる。電線等や配線器具は、建物の屋外側よりも屋内側に配置されることが多いため、屋内側に軟質断熱材In1が位置していれば、電線や通信線を配線したり、スイッチやコンセント等の配線器具を埋め込んだりしやすくなる。そのため、建築用木質パネル2の内部中空部Sに、電線等を配線したり配線器具を埋め込んだりする場合の手間を軽減させることができる。
【0054】
また、近年、二酸化炭素の排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルの推進による脱炭素社会の実現や、SDGs(Sustainable Development Goals)の目標達成が求められており、建築業界においても、建物を二酸化炭素排出量の少ない木造とする取り組みが進められている。本実施形態の建築用木質パネル1,2は、断熱材In1,In2以外が木製であるため、カーボンニュートラルの推進による脱炭素社会の実現や、SDGsの目標達成に貢献できる。
【0055】
〔変形例〕
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、変形例について説明する。以下に挙げる変形例は可能な限り組み合わせてもよい。また、以下の各変形例において、上述の実施形態と共通する要素については、共通の符号を付し、説明を省略又は簡略する。
【0056】
〔変形例1〕
上記の実施形態においては、第一建築用木質パネル1及び第二建築用木質パネル2の内部中空部Sに装填される断熱材として、軟質断熱材である繊維系断熱材In1と、硬質断熱材である発泡系断熱材In2が採用されている。
本実施例においては、天然素材系の断熱材が採用されてもよい。天然素材系の断熱材としては、例えば羊毛による断熱材(以下、羊毛断熱材)や、炭化コルクによる断熱材(以下、炭化コルク断熱材)などがあり、羊毛断熱材は軟質断熱材であり、炭化コルク断熱材は硬質断熱材である。したがって、上記の繊維系断熱材In1に代えて羊毛断熱材を採用し、発泡系断熱材In2に代えて炭化コルク断熱材を採用してもよい。
【0057】
羊毛断熱材は、湿度を一定に保つ調湿性に優れていて、羊毛特有の高い断熱性や耐久性もメリットとして挙げられる。また、防虫処理が施されており、その防虫効果は半永久的に続くとも言われる。
炭化コルク断熱材は、材料であるコルクの中に空気を多く含んでいるため、断熱性能や調湿性、吸音性が高い。さらに、原料のコルク樫が持つ防虫効果によってダニ等を寄せ付けない性質があることもメリットとして挙げられる。
【0058】
本変形例によれば、建築用木質パネル1,2に装填される断熱材の種類を、繊維系断熱材In1、発泡系断熱材In2、天然素材系の断熱材の中から適宜選択することで、様々な特徴を併せ持つ建築用木質パネルを形成することができる。選択する断熱材の種類によって建築用木質パネルの機能を変更したり調整したりすることができ、結果的に、建築用木質パネルによって構築された建物の機能も変更したり調整したりすることができる。
【0059】
〔変形例2〕
図5(a)は、第一建築用木質パネル1に装填される繊維系断熱材In1及び発泡系断熱材In2の一側方に、繊維系断熱材In1が更に装填された状態を示している。
図5(b)は、第一建築用木質パネル1に装填される繊維系断熱材In1及び発泡系断熱材In2の上方に、繊維系断熱材In1が更に装填された状態を示している。
図5(c)は、第一建築用木質パネル1に装填される繊維系断熱材In1及び発泡系断熱材In2の両側方に、発泡系断熱材In2が更に装填された状態を示している。
【0060】
すなわち、本実施例の第一建築用木質パネル1及び第二建築用木質パネル2は、内部中空部Sに、繊維系断熱材In1及び発泡系断熱材In2の双方が、パネル厚さ方向に並べられた状態となっている箇所(二重の断熱材が装填された箇所)を備えている。その上で、当該箇所の周囲(上下左右)に、その他の断熱材が装填された状態となっている。
なお、本実施例においては、周囲に装填されるその他の断熱材は、繊維系断熱材In1又は発泡系断熱材In2が採用されているが、上記の天然素材系の断熱材が装填されてもよい。
【0061】
〔変形例3〕
内部中空部Sには、各種断熱材の他に、例えば吸音や遮音の機能を有するボードやシート等を装填してもよい。その場合は、一方の面材Bdと繊維系断熱材In1との間、他方の面材Bdと発泡系断熱材In2との間、繊維系断熱材In1と発泡系断熱材In2との間のいずれかに設けられるものとする。
ただし、吸音材や遮音材の多くは、繊維系断熱材In1と発泡系断熱材In2と同様の素材によって構成される場合が多く、同時に断熱効果も発揮する場合がある。
【0062】
〔変形例4〕
建築用木質パネル1,2の内部中空部Sは、上記のように、縦横の補助桟材Cpによって複数に区切られた状態となっている。つまり、内部中空部Sには複数の区画がある。
本実施例においては、当該複数の区画ごとに、二重に並べられて装填される断熱材の種類が異なる。すなわち、一つの建築用木質パネルに、繊維系断熱材In1と発泡系断熱材In2とが厚さ方向に並んだ状態で装填される区画や、繊維系断熱材In1と天然素材系の断熱材とが厚さ方向に並んだ状態で装填される区画、発泡系断熱材In2と天然素材系の断熱材とが厚さ方向に並んだ状態で装填される区画、羊毛断熱材と炭化コルク断熱材とが厚さ方向に並んだ状態で装填される区画などが含まれることになる。
【符号の説明】
【0063】
1 第一建築用木質パネル
2 第二建築用木質パネル
3 配線溝
4 埋込穴
5 開口部
6 半土台
13 第三建築用木質パネル
14 第四建築用木質パネル
F 枠体
Fm 框材
Cp 補助桟材
Bd 面材
S 内部中空部
In1 繊維系断熱材
In2 発泡系断熱材
図1
図2
図3
図4
図5