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特開2024-131936配線用ふかしユニット、配線構造及び建物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131936
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】配線用ふかしユニット、配線構造及び建物
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/74 20060101AFI20240920BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20240920BHJP
   E04B 1/348 20060101ALI20240920BHJP
   H02G 3/38 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
E04B2/74 541G
E04B2/56 641G
E04B1/348 V
H02G3/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042514
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】青木 亮
(72)【発明者】
【氏名】飯田 和仁
(72)【発明者】
【氏名】片桐 徹
(72)【発明者】
【氏名】川上 隆士
(72)【発明者】
【氏名】竹迫 利喜也
(72)【発明者】
【氏名】土屋 奈美子
(72)【発明者】
【氏名】東山 純也
(72)【発明者】
【氏名】藤塚 亮太
【テーマコード(参考)】
2E002
5G363
【Fターム(参考)】
2E002FB16
2E002FB23
2E002MA47
5G363AA16
5G363BA01
5G363DB06
5G363DB08
(57)【要約】
【課題】ケーブル類の配線を行うにあたって、建物の構造体に対して不必要な加工を施すことを抑制するとともに、ケーブル類が表面に露出しないようにして見栄えを向上させながら、ケーブル類の配線を簡易に行えるようにする。
【解決手段】壁の表面に取り付けられて面材20で覆われる配線用ふかしユニット10が、ユニット本体と、ケーブル類5等が収容される収容部15と、ケーブル類5が通過する開放部16を備え、ユニット本体は、下枠11と、下端部が、下枠11の長さ方向両端部のそれぞれに設けられた側枠12と、双方の側枠12間に位置するとともに当該双方の側枠12と平行し、下端部が、下枠11に設けられた中間枠13と、からなり、収容部15は、下枠11、双方の側枠12、中間枠13で囲まれた空間であり、開放部16は、双方の側枠12の上端部と中間枠13の上端部との間である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の壁の表面に取り付けられて面材によって覆われる配線用ふかしユニットであって、
複数の枠材によって構成されたユニット本体と、
前記ユニット本体を構成する前記複数の枠材によって囲まれて、ケーブル類や配線器具等が収容される収容部と、
前記ユニット本体の上端部に形成されて前記ケーブル類が通過する開放部と、を備えており、
前記ユニット本体は、
下枠と、
下端部が、前記下枠の長さ方向両端部のそれぞれに設けられた側枠と、
双方の前記側枠間に位置するとともに当該双方の側枠と平行し、下端部が、前記下枠に設けられた中間枠と、からなり、
前記収容部は、前記下枠、前記双方の側枠、前記中間枠によって囲まれた空間であり、
前記開放部は、前記双方の側枠の上端部と前記中間枠の上端部との間であることを特徴とする配線用ふかしユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の配線用ふかしユニットにおいて、
前記ユニット本体に対して着脱自在に仮留めされる複数の仮留め材を備え、
前記複数の仮留め材は、前記双方の側枠と前記中間枠との間に設けられていることを特徴とする配線用ふかしユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の配線用ふかしユニットが、前記建物の壁の表面に取り付けられており、
前記ケーブル類が、前記収容部に収容されるとともに前記開放部を通過した状態で配線されていることを特徴とする配線構造。
【請求項4】
請求項3に記載の配線構造において、
前記配線用ふかしユニットの表面には前記面材が取り付けられて、前記収容部が閉塞された状態となっていることを特徴とする配線構造。
【請求項5】
請求項3に記載の配線構造において、
前記配線用ふかしユニットの上端部は、前記建物における部屋の天井よりも上方に位置し、前記ケーブル類は、前記開放部を通じて前記収容部と前記部屋の天井裏との間に配線されていることを特徴とする配線構造。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の配線用ふかしユニットと、前記配線用ふかしユニットと等しい厚さ寸法に設定された第一付加断熱パネルが、互いに並べられた状態で前記壁の表面に取り付けられていることを特徴とする建物。
【請求項7】
請求項6に記載の建物において、
前記収容部に、前記配線用ふかしユニットと等しい厚さ寸法に設定された第二付加断熱パネルが充填されていることを特徴とする建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線用ふかしユニット、配線構造及び建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電線や通信線等のケーブル類を、表面に露出しないように隠しながら、下階と上階との間に亘って配線する技術が知られている。例えば特許文献1には、いわゆるパネル工法で構築された建物において、下階の壁パネル上端と上階の壁パネル下端間に、床パネルを通過するパイプ体を架け渡すとともに、当該パイプ体内に下階及び上階壁パネル間に亘るケーブル類を通過させて配線する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-144448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の配線構造は、上下階の壁パネルや床パネルに対し、配線のための孔加工や溝加工が不必要に行われることを抑制できる。さらに、下階の壁から、そのすぐ上方に位置する上階の壁との間に亘ってケーブル類を通す場合には好適である。
ところが、このような配線構造は、下階の壁から、そのすぐ上方に位置する上階の壁にはケーブル類を通さずに、かつ、上階における他の位置の壁や上階の床、あるいは下階における他の位置の壁に向かってケーブル類を通す場合には採用しづらい。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、ケーブル類の配線を行うにあたって、建物の構造体に対して不必要な加工を施すことを抑制するとともに、ケーブル類が表面に露出しないようにして見栄えを向上させながら、ケーブル類の配線を簡易に行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、例えば図1図5に示すように、建物の壁の表面に取り付けられて面材20によって覆われる配線用ふかしユニット10であって、
複数の枠材11,12,13によって構成されたユニット本体と、
前記ユニット本体を構成する前記複数の枠材11,12,13によって囲まれて、ケーブル類5や配線器具4等が収容される収容部15と、
前記ユニット本体の上端部に形成されて前記ケーブル類5が通過する開放部16と、を備えており、
前記ユニット本体は、
下枠11と、
下端部が、前記下枠11の長さ方向両端部のそれぞれに設けられた側枠12と、
双方の前記側枠12間に位置するとともに当該双方の側枠12と平行し、下端部が、前記下枠11に設けられた中間枠13と、からなり、
前記収容部15は、前記下枠11、前記双方の側枠12、前記中間枠13によって囲まれた空間であり、
前記開放部16は、前記双方の側枠12の上端部と前記中間枠13の上端部との間であることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、ユニット本体における下枠11、双方の側枠12、中間枠13によって囲まれた空間が、ケーブル類5や配線器具4等が収容される収容部15となっているので、ケーブル類5や配線器具4を収容部15内に納めるだけで、ケーブル類5の配線や配線器具4の設置を簡易に行うことができる。
また、ユニット本体における双方の側枠12の上端部と中間枠13の上端部との間が、ケーブル類5が通過する開放部16となっているので、ケーブル類5を、開放部16に通すだけで、配線用ふかしユニット10の収容部15内と収容部15外との間の配線を簡易に行うことができる。
さらに、配線用ふかしユニット10は、建物の壁の表面に取り付けられるものであるため、ケーブル類5の配線や配線器具4の設置のために、建物の構造体に対して不必要な加工を施すことを抑制できる。
しかも、配線用ふかしユニット10は、面材20によって覆われるため、収容部15内に収容されたケーブル類5や配線器具4が表面に露出しないようにすることができ、見栄えを向上させることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、例えば図4に示すように、請求項1に記載の配線用ふかしユニット10において、
前記ユニット本体に対して着脱自在に仮留めされる複数の仮留め材14を備え、
前記複数の仮留め材14は、前記双方の側枠12と前記中間枠13との間に設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、ユニット本体に対して着脱自在に仮留めされる複数の仮留め材14は、双方の側枠12と中間枠13との間に設けられているので、双方の側枠12と中間枠13が揺動しにくくなる。これにより、輸送時や取付作業時において配線用ふかしユニット10の取り扱いがしやすくなり、ケーブル類5の配線や配線器具4の設置を簡易に行うことに貢献できる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、配線構造であって、例えば図2図3図5に示すように、請求項1又は2に記載の配線用ふかしユニット10が、前記建物の壁の表面に取り付けられており、
前記ケーブル類5が、前記収容部15に収容されるとともに前記開放部16を通過した状態で配線されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、ケーブル類5が、収容部15に収容されるとともに開放部16を通過した状態で配線されているので、ケーブル類5や配線器具4を収容部15内に納めるだけで、ケーブル類5の配線や配線器具4の設置を簡易に行うことができる。しかも、ケーブル類5を、開放部16に通すだけで、配線用ふかしユニット10の収容部15内と収容部15外との間の配線を簡易に行うことができる。さらに、配線用ふかしユニット10が、建物の壁の表面に取り付けられているので、ケーブル類5の配線や配線器具4の設置のために、建物の構造体に対して不必要な加工を施すことを抑制できる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、例えば図3に示すように、請求項3に記載の配線構造において、
前記配線用ふかしユニット10の表面には面材20が取り付けられて、前記収容部15が閉塞された状態となっていることを特徴と前記する。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、配線用ふかしユニット10の表面には面材20が取り付けられて、収容部15が閉塞された状態となっているので、収容部15内に収容されたケーブル類5や配線器具4が表面に露出しないようにすることができ、見栄えを向上させることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、例えば図2図3図5に示すように、請求項3に記載の配線構造において、
前記配線用ふかしユニット10の上端部は、前記建物における部屋の天井21よりも上方に位置し、前記ケーブル類5は、前記開放部16を通じて前記収容部15と前記部屋の天井裏との間に配線されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、配線用ふかしユニット10の上端部は、建物における部屋の天井21よりも上方に位置し、ケーブル類5は、開放部16を通じて収容部15と部屋の天井裏との間に配線されているので、ケーブル類5を天井裏と収容部15との間に配線してケーブル類5が表面に露出しないようにして見栄えを向上できる。さらに、天井裏を通じてケーブル類5を所望の位置まで配線できるので、ケーブル類5の配線を簡易に行うことができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、建物であって、例えば図2図5に示すように、請求項1又は2に記載の配線用ふかしユニット10と、前記配線用ふかしユニット10と等しい厚さ寸法に設定された第一付加断熱パネル22が、互いに並べられた状態で前記壁の表面に取り付けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、配線用ふかしユニット10と、配線用ふかしユニット10と等しい厚さ寸法に設定された第一付加断熱パネル22が、互いに並べられた状態で壁の表面に取り付けられているので、建物の壁の厚みを揃えることができる。これにより、配線用ふかしユニット10によって壁の表面に生じる段差を解消できるとともに見栄えが良くなる。しかも、第一付加断熱パネル22によって、建物の壁における断熱性を向上させることができる。その上で、配線用ふかしユニット10の収容部15にケーブル類5や配線器具4を収容して、ケーブル類5の配線や配線器具4の設置を簡易に行うことができる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、例えば図2図5に示すように、請求項6に記載の建物において、
前記収容部15に、前記配線用ふかしユニット10と等しい厚さ寸法に設定された第二付加断熱パネル17が充填されていることを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、収容部15に、配線用ふかしユニット10と等しい厚さ寸法に設定された第二付加断熱パネル17が充填されているので、建物の壁のうち、配線用ふかしユニット10が取り付けられた部分の断熱性も向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ケーブル類の配線を行うにあたって、建物の構造体に対して不必要な加工を施すことを抑制するとともに、ケーブル類が表面に露出しないようにして見栄えを向上させながら、ケーブル類の配線を簡易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】建築用木質パネルの基本構造を示す斜視図である。
図2】配線用ふかしユニットが建物の壁に設けられた状態を示す斜視図である。
図3】配線用ふかしユニットが建物の壁に設けられた状態を示す側断面図である。
図4】配線用ふかしユニットを示す斜視図である。
図5】配線用ふかしユニットが建物の壁に設けられた状態の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。なお、以下の実施形態及び図示例における方向は、あくまでも説明の便宜上設定したものである。
【0023】
図1等において符号1は、住宅等の建物をパネル工法で構築する場合に、建物における壁や床、屋根といった構成要素を形成するための建築用木質パネルを示す。
なお、本実施形態において説明する建物は、上記のようにパネル工法で構築される。パネル工法とは、壁や床、屋根といった建物の構成要素を予め工場にてパネル化(建築用木質パネル1)しておき、施工現場でこれらのパネルを組み立てて構築する工法である。ただし、これに限られるものではなく、本実施形態の建物は、従来の軸組工法や壁式工法の木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造等によって構築されてもよい。
【0024】
本実施形態の建築用木質パネル1は、縦横の框材Fmが矩形状に組み立てられるとともに、矩形枠の内部に補助桟材Cpが縦横に組み付けられて枠体Fが構成され、この枠体Fの両面もしくは片面に、合板等の面材Bdが貼り付けられたものであり、内部中空な構造となっている。さらに、その内部中空な部分には、例えばグラスウールやロックウール等の断熱材In1が装填される。
なお、図1に示す建築用木質パネル1は、枠体Fの両面に面材Bdが貼り付けられており、建物の構成要素のうち壁を構成している。床や屋根を構成する建築用木質パネル2の場合は、面材Bdは枠体Fの上面にのみ貼り付けられる(図3参照)。
【0025】
建物の壁は、例えば図2に示すように、複数の建築用木質パネル1が隣接して並べられることで形成される。建築用木質パネル1同士は、接着剤やビス等の固定具によって接合されている。また、このような建物の壁は、床用の建築用木質パネル2に立設される。
【0026】
建物が複数階建てである場合は、図3に示すように、建物の壁における上端面に、上階床を構成する建築用木質パネル2が載せられる。なお、図3において符号3は半胴差(1階の場合は半土台)であり、上階床用の建築用木質パネル2における側端部と半胴差3とが、建物における下階の壁を構成する建築用木質パネル1の上端面に載せられている。
建物における下階の壁を構成する建築用木質パネル1の上方には、上階の壁を構成する建築用木質パネル1があり、当該上階の壁用の建築用木質パネル1は、上階床用の建築用木質パネル2における側端部と半胴差3に跨って配置されている。
なお、図3に示す建物の上下階の壁は、屋外に面する外壁であるが、これに限られるものではなく、内壁でもよい。
【0027】
建物の壁には、スイッチやコンセント等の器具4(配線器具4)が設けられるため、建物内の様々な場所で、電線や通信線等のケーブル類5の配線を行う必要が生じる。また、その際はケーブル類5を、壁の表面に露出しないように隠しながら配線しなければならない。
そこで、本実施形態においては建物の壁の表面に、配線用ふかしユニット10が取り付けられている。
【0028】
配線用ふかしユニット10は、複数の枠材11,12,13によって構成された木製のユニット本体と、ユニット本体を構成する複数の枠材11,12,13によって囲まれて、ケーブル類5や配線器具4等が収容される収容部15と、ユニット本体の上端部に形成されてケーブル類5が通過する開放部16と、を備えている。
【0029】
ユニット本体は、略山型あるいは略E字型に形成された枠状体であり、横枠である下枠11と、縦枠である左右の側枠12と、縦枠である中間枠13と、を備える。すなわち、一本の横枠である下枠11と、三本の縦枠12,13と、からなる。
これら複数の枠材11,12,13からなるユニット本体は、建築用木質パネル1の面材Bdに接着固定されている。また、接着剤に代えてビス等の固定具が用いられてもよいし、接着剤と固定具を併用してもよい。
【0030】
下枠11は、壁用の建築用木質パネル1と同様に、床用の建築用木質パネル2の上面に載せられている。また、下枠11は、床用の建築用木質パネル2の面材Bdに接着固定されている。また、接着剤に代えてビス等の固定具が用いられてもよいし、接着剤と固定具を併用してもよい。
【0031】
左右の側枠12は、下枠11における長さ方向の両端部にそれぞれ一体的に設けられている。本実施形態においては、左右の側枠12が、下枠11の上面に載せられた状態となっているが、これに限られるものではなく、左右の側枠12における下端部間に、下枠11が架け渡されて設けられていてもよい。
【0032】
中間枠13は、下枠11の上面に載せられて下枠11の長さ方向中央部に一体的に設けられている。本実施形態における中間枠13は、左右の側枠12同士の中間に位置している。換言すれば、中間枠13は、配線用ふかしユニット10全体の中央に位置している。そして、中間枠13から左側枠12までの間隔と、中間枠13から右側枠12までの間隔は略等しい。ただし、これに限られるものではなく、中間枠13が、左右の側枠12のどちらかに寄せて配置されてもよい。
【0033】
左右の側枠12及び中間枠13は、上端部の高さ位置が等しく設定されている。これら縦枠12,13の上端部は、本実施形態においては、建築用木質パネル1の上端部と略等しい高さ位置に設けられており、上階床用の建築用木質パネル2における下面に接した状態となっている。
【0034】
ユニット本体(すなわち、配線用ふかしユニット10)の厚さ寸法は、建築用木質パネル1の厚さ寸法よりも小さく設定されていて薄い。つまり、必要以上に厚さ寸法を大きくすると、建物の壁の厚みが増して部屋が狭くなってしまう。そのため、ユニット本体の厚さ寸法は、ケーブル類5が配線できるとともに配線器具4を埋め込むことができる程度に設定されているものとする。
【0035】
ユニット本体は、横枠である上枠を備えていないため、上端部が開放された状態となっている。つまり、左右の側枠12の上端部と、中間枠13の上端部との間が、上記の開放部16とされている。
【0036】
また、ユニット本体は、上下方向の途中部分にも横桟材が設けられない。そのため、ユニット本体は、下枠11の位置から上端部に亘ってケーブル類5の配線又は配線器具4の設置が可能な領域(空間)となっている。つまり、当該領域が、ケーブル類5や配線器具4等が収容される収容部15とされている。
【0037】
なお、配線用ふかしユニット10は、上記のようにユニット本体の上端部が開放された状態となっているため、左右の側枠12及び中間枠13の上端部は、下端部に比して揺動しやすい状態となっている。そして、揺動しやすい状態であると、当然輸送がしにくいため、輸送時には、図4に示すように仮留め材14が、左右の側枠12と中間枠13との間に架け渡されて仮留めされる。
すなわち、配線用ふかしユニット10は、左右の側枠12及び中間枠13に対して着脱可能な複数の仮留め材14を備えている。そして、複数の仮留め材14は、左右の側枠12及び中間枠13の上端部間に少なくとも架け渡されて設けられている。すなわち、開放部16の位置に仮留め材14が設けられている。
また、上端部間に設けられる仮留め材14とは別に、補助的に、左右の側枠12及び中間枠13の長さ方向中央部間に架け渡されてもよい。すなわち、収容部15の位置に仮留め材14が設けられている。
要するに、輸送時における配線用ふかしユニット10は、ユニット本体に対して着脱自在に仮留めされる複数の仮留め材14も備えていて、全体として、略日の字型あるいは略田の字型に形成されている。
【0038】
複数の仮留め材14は、配線用ふかしユニット10の施工時に取り外されるが、そのタイミングは、配線用ふかしユニット10を建築用木質パネル1に固定する前でもよいし、配線用ふかしユニット10を建築用木質パネル1に固定した後でもよい。
なお、配線用ふかしユニット10を建築用木質パネル1に固定した後に複数の仮留め材14を取り外すということは、配線用ふかしユニット10の固定作業時には、複数の仮留め材14によって、左右の側枠12及び中間枠13の上端部が揺動しにくい状態となっているので、配線用ふかしユニット10の固定作業がしやすいというメリットがある。したがって、複数の仮留め材14は、配線用ふかしユニット10を建築用木質パネル1に固定した後でも取り外せるような状態で、左右の側枠12及び中間枠13に対して取り付けられているものとする。具体的には、前側(壁の反対側)からステープル留めされている状態や、上または下から叩いて落とせるような状態で仮留めされているものとする。
【0039】
建築用木質パネル1の表面に固定されて複数の仮留め材14が取り外された後の配線用ふかしユニット10の枠内である収容部15には、ケーブル類5が配線される。また、配線器具4は、配線用ふかしユニット10に取り付けられてもよいし、建築用木質パネル1の面材Bdに取り付けられてもよい。
なお、ケーブル類5の配線位置や配線器具4の設置位置が、左右の側枠12及び中間枠13の長さ方向中央部間に架け渡されて設けられた複数の仮留め材14よりも上方である場合は、当該長さ方向中央部の複数の仮留め材14をあえて取り外さずに本固定し、配線用ふかしユニット10の剛性を向上させてもよい。
【0040】
配線用ふかしユニット10の収容部15内へのケーブル類5の配線や配線器具4の設置が完了した後は、配線用ふかしユニット10の表面に、例えば壁紙等の内装仕上げ材の取付下地となる内装面材20が取り付けられて収容部15が覆われる。なお、内装面材20は、例えば石膏ボードやその他の不燃性ボードが好適に採用される。
【0041】
内装面材20の上下寸法(高さ寸法)は、配線用ふかしユニット10の上下寸法よりも短く設定されている。内装面材20が配線用ふかしユニット10の表面に取り付けられる場合、内装面材20の下端部は、配線用ふかしユニット10の下端部と同じ位置に揃えられる。そのため、配線用ふかしユニット10における上端部の高さ位置は、内装面材20における上端部の高さ位置よりも上方に位置することとなる。これによって、開放部16は内装面材20によって覆われない状態となる。内装面材20の上端部は、部屋の天井の高さと等しいか、天井よりも高い場合が多いため、内装面材20の上端部が、配線用ふかしユニット10の上端部の高さ位置に達していなくても、開放部16が部屋内に露出することはない。さらに、内装面材20の幅寸法は、配線用ふかしユニット10の幅寸法と略等しく設定されている。
【0042】
なお、内装面材20は、複数に分割されていてもよい。すなわち、複数の内装面材20によって配線用ふかしユニット10の収容部15を覆うようにしてもよい。
【0043】
また、内装面材20には、配線器具4を部屋内から使用できるようにするための開口部が形成されてもよい。すなわち、スイッチやコンセント等の配線器具4は、表面プレートやスイッチ部など有しているため、一部は、開口部から露出させる必要がある。スイッチやコンセントのように表面に露出させない器具の場合は、内装面材20に開口部を形成する必要はない。
【0044】
さらに、建物内の部屋を形成する場合、部屋には天井(天井面材21)が設けられる。本実施形態においては、図3に示すように、下階における壁用の建築用木質パネル1の上に、上階における床又は屋根用の建築用木質パネル2が設置され、その下方に、部屋の天井を構成する天井面材21が設けられている。なお、天井面材21は、例えば石膏ボードやその他の不燃性ボードが好適に採用される。
このような天井面材21は、野縁21aの下面に固定されるが、野縁21aは、上階における床用の建築用木質パネル2から吊木等によって吊り下げられてもよいし、壁に近い野縁21aは、図3に示すように、配線用ふかしユニット10に固定されてもよい。
【0045】
ケーブル類5は、配線用ふかしユニット10の収容部15から、上端部の開放部16を通じて、天井面材21の上方の天井裏に取り回すことができる。換言すれば、天井裏に配線されたケーブル類5は、配線用ふかしユニット10における上端部の開放部16を通じて配線用ふかしユニット10の収容部15に取り回すことができる。つまり、ケーブル類5は、天井裏を伝って所望の位置まで配線することができる。
また、ケーブル類5を上下階間に亘って配線する場合は、上階の床用の建築用木質パネル2における面材Bdと、上階の壁用の建築用木質パネル1の表面に取り付けられた配線用ふかしユニット10における下枠11と、を貫通する貫通孔Thを形成し、当該貫通孔Thにケーブル類5を通すようにする。床用の建築用木質パネル2における内部中空部に装填された断熱材In1は、グラスウールやロックウール等の繊維系断熱材であるため、手指や道具によって押し込んだり掻き分けたりするだけで容易に変形させることができる。そのため、ケーブル類5を、上下階間に亘って容易に配線することができる。
【0046】
また、以上のように、建物の壁における一部の表面にのみ配線用ふかしユニット10が設けられると、当該壁の一部だけが部屋の中央側に迫り出した状態となる。そこで、図2に示すように、建物の壁のうち配線用ふかしユニット10が設けられていない箇所の表面に、第一付加断熱パネル22が取り付けられている。すなわち、建物の壁の表面(ここでは屋内側面)には、第一付加断熱パネル22が付加されて、付加断熱構造部が形成された状態となっている。
第一付加断熱パネル22を含む付加断熱構造部は、その厚さ寸法が、配線用ふかしユニット10の厚さ寸法と略等しく設定されている。そして、配線用ふかしユニット10の表面と第一付加断熱パネル22の表面には、内装面材20が取り付けられる。この内装面材20は、配線用ふかしユニット10と第一付加断熱パネル22に跨って取り付けられてもよい。
これにより、建物の壁の厚みを揃えることができるので、配線用ふかしユニット10によって壁の表面に生じる段差(出っ張りや凹凸などと称してもよい。)を解消できるとともに見栄えが良くなる。しかも、建物の壁における断熱性を向上させることができる。
【0047】
本実施形態の第一付加断熱パネル22は、発泡プラスチック断熱材によって構成されている。発泡プラスチック断熱材は、製造時に形成される無数の微細な気泡の中に発泡ガスを閉じ込めて高い断熱性能を発揮している。なお、発泡系断熱材In2に形成される無数の微細な気泡は、独立気泡でもよいし、連続気泡でもよい。
なお、発泡プラスチック断熱材としては、例えば硬質ウレタンフォームやフェノールフォーム、ポリスチレンフォーム等が好適に使用されるが、現場でスプレーすると同時に発泡させる現場発泡式のものでもよい。
【0048】
また、建物の壁に付加断熱構造部が形成されると、その部分は断熱性が向上するが、この部分に比して、配線用ふかしユニット10の部分は断熱性が低い状態となる。そこで、配線用ふかしユニット10における左右の枠内に第二付加断熱パネル17を充填してもよい。第二付加断熱パネル17は、その厚さ寸法が、配線用ふかしユニット10の厚さ寸法と略等しく設定されている。
本実施形態の第二付加断熱パネル17は、グラスウールやロックウール等の繊維系断熱材によって構成されてもよいし、硬質ウレタンフォーム等の発泡プラスチック断熱材によって構成されてもよい。例えば、左右の枠のうちケーブル類5が設けられている側の枠には、変形しやすい軟質の繊維系断熱材を充填し、ケーブル類5が設けられていない側の枠には、繊維系断熱材よりも変形しにくい硬質の発泡プラスチック断熱材を充填するようにしてもよい。
【0049】
本実施形態によれば、以下のような優れた効果を奏する。
すなわち、ユニット本体における下枠11、双方の側枠12、中間枠13によって囲まれた空間が、ケーブル類5や配線器具4等が収容される収容部15となっているので、ケーブル類5や配線器具4を収容部15内に納めるだけで、ケーブル類5の配線や配線器具4の設置を簡易に行うことができる。
また、ユニット本体における双方の側枠12の上端部と中間枠13の上端部との間が、ケーブル類5が通過する開放部16となっているので、ケーブル類5を、開放部16に通すだけで、配線用ふかしユニット10の収容部15内と収容部15外との間の配線を簡易に行うことができる。
さらに、配線用ふかしユニット10は、建物の壁の表面に取り付けられるものであるため、ケーブル類5の配線や配線器具4の設置のために、建物の構造体に対して不必要な加工を施すことを抑制できる。
しかも、配線用ふかしユニット10は、面材20によって覆われるため、収容部15内に収容されたケーブル類5や配線器具4が表面に露出しないようにすることができ、見栄えを向上させることができる。
【0050】
また、ユニット本体に対して着脱自在に仮留めされる複数の仮留め材14は、双方の側枠12と中間枠13との間に設けられているので、双方の側枠12と中間枠13が揺動しにくくなる。これにより、輸送時や取付作業時において配線用ふかしユニット10の取り扱いがしやすくなり、ケーブル類5の配線や配線器具4の設置を簡易に行うことに貢献できる。
【0051】
また、ケーブル類5が、収容部15に収容されるとともに開放部16を通過した状態で配線されているので、ケーブル類5や配線器具4を収容部15内に納めるだけで、ケーブル類5の配線や配線器具4の設置を簡易に行うことができる。しかも、ケーブル類5を、開放部16に通すだけで、配線用ふかしユニット10の収容部15内と収容部15外との間の配線を簡易に行うことができる。さらに、配線用ふかしユニット10が、建物の壁の表面に取り付けられているので、ケーブル類5の配線や配線器具4の設置のために、建物の構造体に対して不必要な加工を施すことを抑制できる。
【0052】
また、配線用ふかしユニット10の表面には面材20が取り付けられて、収容部15が閉塞された状態となっているので、収容部15内に収容されたケーブル類5や配線器具4が表面に露出しないようにすることができ、見栄えを向上させることができる。
【0053】
また、配線用ふかしユニット10の上端部は、建物における部屋の天井21よりも上方に位置し、ケーブル類5は、開放部16を通じて収容部15と部屋の天井裏との間に配線されているので、ケーブル類5を天井裏と収容部15との間に配線してケーブル類5が表面に露出しないようにして見栄えを向上できる。さらに、天井裏を通じてケーブル類5を所望の位置まで配線できるので、ケーブル類5の配線を簡易に行うことができる。
【0054】
また、配線用ふかしユニット10と、配線用ふかしユニット10と等しい厚さ寸法に設定された第一付加断熱パネル22が、互いに並べられた状態で壁の表面に取り付けられているので、建物の壁の厚みを揃えることができる。これにより、配線用ふかしユニット10によって壁の表面に生じる段差を解消できるとともに見栄えが良くなる。しかも、第一付加断熱パネル22によって、建物の壁における断熱性を向上させることができる。その上で、配線用ふかしユニット10の収容部15にケーブル類5や配線器具4を収容して、ケーブル類5の配線や配線器具4の設置を簡易に行うことができる。
【0055】
また、収容部15に、配線用ふかしユニット10と等しい厚さ寸法に設定された第二付加断熱パネル17が充填されているので、建物の壁のうち、配線用ふかしユニット10が取り付けられた部分の断熱性も向上させることができる。
【0056】
また、近年、二酸化炭素の排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルの推進による脱炭素社会の実現や、SDGs(Sustainable Development Goals)の目標達成が求められており、建築業界においても、建物を二酸化炭素排出量の少ない木造とする取り組みが進められている。本実施形態の建築用木質パネル1,2及び配線用ふかしユニット10は木製であるため、カーボンニュートラルの推進による脱炭素社会の実現や、SDGsの目標達成に貢献できる。
【0057】
〔変形例〕
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、変形例について説明する。以下に挙げる変形例は可能な限り組み合わせてもよい。また、以下の各変形例において、上述の実施形態と共通する要素については、共通の符号を付し、説明を省略又は簡略する。
【0058】
〔変形例1〕
上記の実施形態においては、建物の壁が、複数の建築用木質パネル1が並べられて形成されていたが、本実施例においては、建物の壁が、複数の建築用木質パネル1と、これら複数の建築用木質パネル1の上端部間に架け渡された梁6と、を含んで構成されている。
【0059】
梁6が設けられた場合の壁であっても、建築用木質パネル1の表面と梁6の側面とが面一の状態になっていれば、配線用ふかしユニット10を、建築用木質パネル1と梁6に跨って取り付けることができる。
換言すれば、配線用ふかしユニット10は、この配線用ふかしユニット10が取り付けられる面が平らに形成されていれば、壁の上下に亘って確実に取り付けることができる。
【0060】
なお、配線用ふかしユニット10は、上端部が、梁6の上端部よりも下方に位置していてもよい。すなわち、配線用ふかしユニット10は、上端部が天井裏に配置されている状態となっていればよいものとする。
【0061】
〔変形例2〕
上記の実施形態において、配線用ふかしユニット10は、建物の壁における一方の面に取り付けられているが、本変形例においては、図示はしないが、建物の壁における両方の面に、配線用ふかしユニット10が取り付けられている。
また、配線用ふかしユニット10は、建物の壁が内壁であるか外壁であるかにかかわらず、建物の壁における両方の面に取り付けられてもよい。
【0062】
〔変形例3〕
上記の実施形態において、配線用ふかしユニット10は、床用の建築用木質パネル2の上に設けられているが、当該面材Bdから間隔を空けて配置されてもよい。すなわち、配線用ふかしユニット10は、建物の壁に取り付けられて、上端部が、天井裏に引き込まれた状態で配置されていればよく、配線用ふかしユニット10の下端部は、床に接していなくてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 建築用木質パネル
2 建築用木質パネル
3 半胴差
4 器具
5 ケーブル類
10 配線用ふかしユニット
11 下枠
12 側枠
13 中間枠
14 仮留め材
15 収容部
16 開放部
17 第二付加断熱パネル
20 内壁面材
21 天井面材
21a 野縁
22 第一付加断熱パネル
図1
図2
図3
図4
図5