(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131944
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】リード端子およびコネクタ
(51)【国際特許分類】
H05K 1/18 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H05K1/18 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042524
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】弁理士法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若林 正樹
(72)【発明者】
【氏名】荻原 茂
【テーマコード(参考)】
5E336
【Fターム(参考)】
5E336AA04
5E336CC02
5E336CC10
5E336DD12
5E336DD16
5E336EE03
5E336GG05
(57)【要約】
【課題】はんだやリフロー炉の特別な性能によらず、リード端子をはんだ付けした際にはんだ内に残留するボイドの量を減らす。
【解決手段】表面実装部品のリード端子であって、基板上のパッドにはんだ付けされる接合部を有し、前記接合部のその延出方向側の端部を先端、その反対側の端部を後端というときに、前記接合部は、その先端および後端が前記パッドから離れるように屈曲または湾曲しているリード端子、及び、表面実装用のコネクタであって、コネクタハウジングと、コネクタハウジングの外面に配列された前記リード端子と、を備えるコネクタ。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面実装部品のリード端子であって、
基板上のパッドにはんだ付けされる接合部を有し、
前記接合部の延出方向側の端部を先端、前記延出方向とは反対側の端部を後端というときに、前記接合部は、前記先端および前記後端の双方が前記パッドから離れるように屈曲または湾曲している、
リード端子。
【請求項2】
前記接合部は、前記先端と前記後端との間の一部である中間部を有し、
前記接合部は、前記中間部よりも前記先端側の部分、及び、前記中間部よりも前記後端側の部分が、それぞれの端部に向かうにつれて次第に前記パッドから離れるように、傾斜または湾曲している、
請求項1に記載のリード端子。
【請求項3】
前記接合部は、前記先端と前記後端との間に屈曲部を有し、
前記接合部は、前記屈曲部よりも前記先端側の部分、及び、前記屈曲部よりも前記後端側の部分が、それぞれの端部に向かうにつれて次第に前記パッドから離れるように傾斜している、
請求項1に記載のリード端子。
【請求項4】
前記接合部の、前記屈曲部よりも前記先端側の部分、及び、前記屈曲部よりも前記後端側の部分は、前記パッドとの対向面が、それぞれ同じ勾配をもって傾斜している、
請求項3に記載のリード端子。
【請求項5】
前記屈曲部は、前記接合部の前記先端と前記後端との間の中心またはその近傍に設けられる、
請求項3に記載のリード端子。
【請求項6】
L字型(ガルウィング)の端子である、
請求項1に記載のリード端子。
【請求項7】
表面実装用のコネクタであって、
コネクタハウジングと、
前記コネクタハウジングの外面に配列された請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のリード端子と、を備える、
コネクタ。
【請求項8】
一方向に向けられた前記リード端子の列を一列のみ有する、
請求項7に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リード端子およびコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、はんだからボイドを排出するための傾斜面が設けられたリード端子が開示されている。文献1のリード部材(40)は、はんだ付けされる部分の下面である接合面(44)が、中央部位(43c)から外縁部(43a)及び外縁部(43b)に向かって傾斜した面(44a及び44b)を有している。
【0003】
プリント回路基板に表面実装部品をはんだ付けする際には、一般に「リフローはんだ付け法」が用いられる。リフローはんだ付け法では、まず、はんだペーストを基板上のパッド(ランド)に転写し、その上に電子部品のリード端子を置く。そして、基板をリフロー炉に通して加熱し、はんだペーストを溶融させる。これによりリード端子がパッドにはんだ付けされる。
【0004】
はんだペーストは、リフロー炉で加熱されることにより、その内部に気泡(ボイド)が生じる。ボイドの発生原因としては、例えば、はんだペーストのフラックスに含まれる溶剤の揮発によるものや、フラックスがリード端子やパッド表面の酸化物を除去した際に発生する水分によるものなどがある。ボイドは、はんだの接合強度や耐クラック性等を低下させるため、少ない方が好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
はんだのリフロー条件(温度と時間)を調整することによりボイドの発生を抑えることができる。しかし、基板上には多種多様な電子部品が実装されており、例えば、熱に弱い部品が混載されている場合には、リフローの温度や時間を変更することができないこともある。また、真空チャンバーを備え、発生したボイドを強制的に排出するリフロー炉もあるが、同様に、減圧に弱い部品が混載されている場合には適用が難しい。また、溶融時のはんだの流動性に優れるはんだペーストを用いるという方法もあるが、材料コストの増加に繋がる。
【0007】
また、上記特許文献1の発明は、リード端子の断面形状を工夫するものであり、その変形可能な範囲はリード端子の断面積の範囲に制限される。
【0008】
このような問題に鑑み、本開示が解決しようとする課題は、はんだやリフロー炉の特別な性能によらず、リード端子をはんだ付けした際にはんだ内に残留するボイドの量を減らすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本開示のリード端子は、表面実装部品のリード端子であって、基板上のパッドにはんだ付けされる接合部を有し、前記接合部のその延出方向側の端部を先端、その反対側の端部を後端というときに、前記接合部は、その先端および後端が前記パッドから離れるように屈曲または湾曲していることを要旨とする。
【0010】
また、上記課題を解決するため、本開示のコネクタは、表面実装用のコネクタであって、コネクタハウジングと、前記コネクタハウジングの外面に配列された本開示のリード端子と、を備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本開示のリード端子およびコネクタによれば、はんだやリフロー炉の特別な性能によらず、リード端子をはんだ付けした際にはんだ内に残留するボイドの量を減らすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1Aは本開示に係るコネクタの外観斜視図、
図1Bはその部分拡大図である。
【
図3】
図3A,Bはそれぞれ、従来のリード端子におけるリフロー炉内でのボイドの挙動を示す模式図である。
【
図4】
図4A,B,Cは、それぞれ、本開示に係るリード端子のボイド排出構造を説明する模式図である。
【
図5】
図5A,B,Cは、それぞれ、本開示に係る接合部のボイド排出構造についての変形例を示す模式図である。
【
図6】
図6Aは、従来のリード端子におけるはんだフィレットの形成位置を示す模式図である。
図6Bは、はんだフィレットの外観検査の方法を示す模式図である。
【
図7】
図7Aは、本開示に係る接合部におけるはんだフィレットの形成位置を示す模式図である。
図7Bは、はんだフィレットの外観検査の方法を示す模式図である。
【
図8】
図8A,B,Cは、それぞれ、本開示に係る接合部のフィレット形成構造についての変形例を示す模式図である。
【
図9】
図9Aは、リフロー工程における、従来のリード端子の接合部の様子を示す模式図である。
図9Bは、リフロー工程における、本開示に係るリード端子の接合部の様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本開示の実施態様の説明]
最初に、本開示の実施態様を説明する。本開示のリード端子およびコネクタは、下記の構成を有している。
【0014】
[1]本開示に係るリード端子は、表面実装部品のリード端子であって、基板上のパッドにはんだ付けされる接合部を有し、前記接合部の延出方向側の端部を先端、前記延出方向とは反対側の端部を後端というときに、前記接合部は、前記先端および前記後端の双方が前記パッドから離れるように屈曲または湾曲している。
【0015】
リード端子の水平面下に生じたボイドは、その位置が安定しやすく、はんだから排出されにくい。リード端子の接合部を、先端および後端がパッドから離れるようにあえて屈曲または湾曲させた形状とすることにより、リフロー中に発生したボイドを、傾斜面や曲面に沿ってはんだの外に誘導することができる。これにより、はんだやリフロー炉の特別な性能によらず、リード端子をはんだ付けした際にはんだ内に残留するボイドの量を抑えることができる。
【0016】
[2]上記[1]の態様において、前記接合部は、前記先端と前記後端との間の一部である中間部を有し、前記接合部は、前記中間部よりも前記先端側の部分、及び、前記中間部よりも前記後端側の部分が、それぞれの端部に向かうにつれて次第に前記パッドから離れるように、傾斜または湾曲していることが好ましい。これにより中間部を基準としてボイドの誘導方向を定めることができる。
【0017】
[3]上記[1]又は[2]の態様において、前記接合部は、前記先端と前記後端との間に屈曲部を有し、前記接合部は、前記屈曲部よりも前記先端側の部分、及び、前記屈曲部よりも前記後端側の部分が、それぞれの端部に向かうにつれて次第に前記パッドから離れるように傾斜していることが好ましい。接合部の先端と後端との間に設けられた屈曲部を境に先端側と後端側とを傾斜させることにより、発生したボイドをいずれかの傾斜面に沿ってはんだ外に誘導することができる。また、接合部の傾斜面をある程度長く設けることにより、誘導されたボイド同士の結合が生じやすくなり、ボイドがより効果的に排出される。
【0018】
[4]上記[3]の態様において、前記接合部の、前記屈曲部よりも前記先端側の部分、及び、前記屈曲部よりも前記後端側の部分は、前記パッドとの対向面が、それぞれ同じ勾配をもって傾斜していることが好ましい。これにより、屈曲部の先端側および後端側におけるはんだの接合品質(ボイドの残留量)を近いものとすることができる。
【0019】
[5]上記[3]又は[4]の態様において、前記屈曲部は、前記接合部の前記先端と前記後端との間の中心またはその近傍に設けられていることが好ましい。その効果は上記[4]と同様である。
【0020】
[6]上記[1]から[5]のいずれか一つの態様において、前記リード端子は、L字型の端子であることが好ましい。L字型のリード端子は広く一般に流通しており、また接合部を屈曲または湾曲させることに好適だからである。
【0021】
[7]また、本開示に係るコネクタは、表面実装用のコネクタであって、コネクタハウジングと、前記コネクタハウジングの外面に配列された上記[1]から[6]のいずれか一つの態様に係るリード端子と、を備える。本開示に係るリード端子を用いることにより、はんだ内に残留するボイドの量が抑えられ、コネクタのはんだ接続品質が安定する。
【0022】
[8]上記[7]の態様において、前記コネクタは、一方向に向けられた前記リード端子の列を一列のみ有していてもよい。本開示のリード端子は、表面実装部品に一般に採用される2方向・4方向の端子だけでなく、本開示のコネクタのような一方向にのみ端子が向けられる部品にも採用することができる。
【0023】
[構成概要]
以下、本開示のリード端子およびコネクタの実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明するコネクタはプリント回路基板(以下、単に「基板」ともいう。)に表面実装される汎用的なコネクタ部品である。
【0024】
本形態のコネクタが備えるリード端子は、はんだ付けされる部分を平面視谷折りとなる形状に形成することで、その先端側と根元側の端部をパッドから浮かせている。リフロー工程で生じたボイドは、屈曲した端子の勾配に誘導され、はんだの外に速やかに排出される。これにより本形態のリード端子は、はんだやリフロー炉の特別な性能・機能に頼らず、はんだ内に残留するボイドの量を減らしている。また、このリード端子がはんだ付けされると、その浮き上がった先端部分の下面とパッドとの間にはんだフィレットが形成される。これにより、はんだ接合の良否とその外観検査の合否との不一致を改善している。以下、これらの特徴とその付随的な特徴について説明する。
【0025】
図1は、本形態に係るコネクタ80の外観斜視図(1A)と、その部分拡大図(1B)である。以下の説明における「上下」とは、
図1に描かれた座標軸のZ軸に平行な方向を意味しており、Z1側を「上」、Z2側を「下」とする。「前後」とは、同座標軸のX軸に平行な方向であり、X1側を「前」、X2側を「後ろ」とする。同様に、「左右」とは、同座標軸のY軸に平行な方向であり、Y1側を「右」、Y2側を「左」とする。また、「水平」とは、同座標軸に示されるXY平面方向を意味している。
【0026】
本形態のコネクタ80は、直方体形状の薄型のコネクタハウジング81を備えている。コネクタハウジング81は、その対となるコネクタが差し込まれる開口82がその前面に設けられている。コネクタハウジング81の後ろ側の面である端子面83には、多数のリード端子10が配列された端子列84が設けられている。コネクタハウジング81の内部にはリード端子10の他端が収容されている。コネクタハウジング81の左右の面には、これを基板90に固定する固定部89(いわゆるペグ)が取り付けられている。つまり本形態のコネクタ80は、一方向(本形態では後方)に向けられた端子列84を一列のみ備えている。
【0027】
本形態のコネクタハウジング81は、液晶ポリマー(LCP:Liqud Crystal Polymer)や、シンジオタクチックポリスチレン(SPS:syndiotactic polystyrene)等のエンジニアリングプラスチックからなる樹脂部品である。コネクタハウジング81の材料は、リフロー炉の熱に耐えうる耐熱性を備える材料であれば、その用途に応じて適宜変更してよい。また、本形態のリード端子10は、真鍮(黄銅)等の銅合金を錫メッキした端子部品である。リード端子10もその材料自体は一般的なものである。
【0028】
コネクタ80は、一般的なリフロー炉およびリフロー手法により基板90上にはんだ付けされる。すなわち、まず、基板上90のパッドにはんだペーストが転写され、その上にコネクタ80のリード端子10と固定部89が置かれる。そして、基板90をリフロー炉に通して加熱し、はんだペーストを溶融させる。これによりコネクタ80が基板90上に固定されるとともに、リード端子10が基板90に電気的に接続される。
【0029】
図2はリード端子10の側面図である。本形態のリード端子10はL字型(ガルウイング型)の端子である。リード端子10は、その延出方向側の端部にあたる部分、つまりL字の横棒部分が基板90のパッド91にはんだ付けされる。以下の説明では、パッド91にはんだ付けされ、はんだ30が付着する(付着しうる)部分を、リード端子10の接合部20といい、接合部20のその延出方向側(X2側)の端部を先端21a、その反対側の端部を後端22aという。
【0030】
リード端子10の接合部20は、その先端21aと後端22aとの間に、接合部20を折り曲げる中間部である屈曲部23を有している。屈曲部23よりも先端21a側の部分21(以下、「先端側部分21」ともいう。)、及び、屈曲部23よりも後端22a側の部分22(以下、「後端側部分22」ともいう。)は、それぞれの端部21a,22aに向かうにつれて、パッド91から次第に上方に離れるように傾斜している。接合部20の先端21aは、リード端子10自体の先端でもある。また、リード端子10のはんだフィレット31(以下、単に「フィレット31」ともいう。)は、接合部20の先端面21cとパッド91との間ではなく、接合部先端21aの下面21bとパッド91と間に形成されている。尚、リード端子10は、市販のL字型端子の横棒部分を折り曲げたものでもよく、あらかじめその接合部20が屈曲した形状として製造されたものでもよい。
【0031】
[リード端子のボイド排出構造]
図3は、従来のリード端子(T)におけるリフロー炉内でのボイド(V)の挙動を示す模式図である。はんだ(はんだペースト)(S)はリフロー炉で加熱されると、はんだに含まれるフラックスの作用でボイドが生じる。ボイドは、リード端子の下面に沿って移動するが、リード端子の下面が水平面またはその勾配が緩やかだったり、ボイドが排出されるまでの移動距離(L)が長かったりすると、ボイドが内部に留まったままはんだが固化し、はんだ内に空洞が生じる。空洞となったボイドは、はんだの接合強度や耐クラック性等を低下させる要因となる。
【0032】
図4は、リード端子10のボイド排出構造を説明する模式図である。
図4の各図(4A)~(4C)は時系列に並べられており、それぞれ、リフロー工程におけるボイド39の位置と形を示す側面透視図と、その平面透視図とからなる。
図4に示すように、リード端子10の接合部20は、その先端21aと後端22aとの間に屈曲部23を有しており、屈曲部23は、接合部20をその全体として谷折り状(
図4視V字型)に折り曲げている。上でも述べたように、折り曲げられた接合部20は、屈曲部23を境に、その先端側部分21及び後端側部分22が、それぞれの端部21a,22aに向かうにつれて、パッド91から次第に上方に離れるように傾斜している。
【0033】
基板90がリフロー炉に投入されると、
図4Aに示すように、はんだ30内にボイド39が発生する。発生したボイド39は、
図4B,Cに示すように、接合部20の傾斜した下面21b,22bに沿ってボイドの気泡同士が結合を繰り返しながら、どちらか近い方の端部21a,22aに誘導されていく。本形態の屈曲部23は、接合部20の長手方向におけるほぼ中心に設けられており、これによりボイド39が移動すべき距離が短く抑えられている。
【0034】
図9は、リフロー工程における、従来のリード端子(T)の接合部の様子を示す模式図(
図9A)と、本形態に係るリード端子10の接合部20の様子を示す模式図である(
図9B)。
図9は、
図4の各図(4A)~(4C)に示した平面透視図と同じアングルのX線写真を図化したものである。
図9Aに示すように、従来のリード端子の接合部では、リフロー工程中に発生したボイド(白く見える丸い部分)(V)があまり動かず、その場に滞留していることが分かる。一方、
図9Bに示すように、本形態の接合部20では、発生したボイド39が端部に向かって移動し、はんだ外に排出されていることが分かる。
【0035】
図5は、接合部20のボイド排出構造についての変形例を示す模式図である。本形態の接合部20は、屈曲部23がその長手方向におけるほぼ中心に設けられているが、屈曲部23の位置は適宜変更可能である。例えば
図5Aの接合部20aのように、屈曲部23が接合部20の中心よりも先端21a寄りにあったとしても、本形態の接合部20と同種の効果は認められる。また、接合部20の曲げ方も、直線的な曲げ方だけには限られない。例えば
図5Bの接合部20bのように、その先端21aから後端22aにかけて弧を描くように湾曲していてもよい。この場合、接合部20bの先端側部分21と後端側部分22とを分ける中間部は、その曲面の接線の傾きが逆転する位置Cである。さらに、接合部20は常にその全長を傾斜・湾曲させなくてもよい。例えば
図5Cの接合部20cのように、屈曲部23で折り曲げられた先端側部分21と後端側部分22との間に、水平に配置された中間部である水平部29が設けられてもよい。この場合も、少なくともその先端側部分21及び後端側部分22では本形態の接合部20と同種の効果が認められる。
【0036】
図2に戻って、接合部20のボイド排出構造に関するその他の特徴について説明する。接合部20は、屈曲部23を境にその先端側部分21と後端側部分22とが、それぞれの端部21a,22aに向かうにつれて次第にパッド91から離れるように傾斜している。つまり、接合部20の下面21b,22bには水平な部分がない。そのため、接合部20の下に発生したボイドは、少なくともいずれかの傾斜面(下面21b,22b)に沿ってはんだの外に誘導されることとなる。傾斜面(又は曲面)によるボイドの誘導作用は、主に、傾斜面の勾配(又は曲面の曲率)と、その長さによって定まる。具体的には、4~30[°]程度の傾斜角、0.16~1.0「1/mm」程度の曲率であることが望ましい。ボイドの移動距離が長すぎることは問題であるが、はんだが固化する前にはんだ外に到達可能であれば、傾斜面(又は曲面)にはそれなりの長さがあってもよい。なぜなら、同方向に進むボイド同士が多数結合することで、自力での移動が困難な泡沫(極小の)ボイドを取り込みながら、はんだ外へのボイドの移動が促されることが期待できるからである。
【0037】
また、上でも述べたように、本形態の接合部20は、屈曲部23がその長手方向におけるほぼ中心に設けられている。そして、先端側部分21及び後端側部分22は、その下面21b,22bがほぼ同じ勾配をもって傾斜している。これにより、先端側部分21及び後端側部分22におけるボイドの残留量の均一化、つまりはんだの接合強度や耐クラック性の均一化が図られている。
【0038】
このように、本形態のリード端子10は、その接合部20の先端21aと後端22aがパッド91から離れるように折り曲がった形状となっていることで、リフロー工程で発生したボイドがはんだの外に排出されやすくなっている。そしてコネクタ80にこのリード端子10が採用されることで、コネクタ80の接続品質や信頼性が高められている。
【0039】
さらに、リード端子10のボイド排出構造は、リード端子10の形状を工夫することのみによって実現されている。つまり、基板90上の他の電子部品には何ら影響を及ぼさない。よって、基板90上に多種多様な電子部品が実装され、例えば、熱に弱い部品や減圧に弱い部品が混載されている場合でも採用することができる。
【0040】
[はんだフィレットの形成構造]
図6は、従来のリード端子(T)におけるはんだフィレット(F)の検査方法を示す模式図である。
図6Aに示すように、表面実装部品のフィレットは、通常、リード端子の先端面とパッド(P)との間に形成される。そしてリフロー工程後にはフィレットの形状が外観検査される。フィレットの外観検査は、
図6Bに示すように、3CCD(3 charge coupled device)カメラを用いたカラーハイライト方式による検査が一般的である。検査では、フィレットの形状が良好(裾広がりの滑らかな凹面)であることをもって、はんだによる接合精度も良好であると間接的に判断する。フィレットの形状に難があると、外観検査によって自動的に接合不良と判断される。リード端子の表面状態によっては、はんだがリード端子の先端面にうまく濡れ広がらない(濡れ上がらない)ことがある。この場合、フィレットの形状は理想形とはならないが、これが常に接合不良、つまりはんだ接合の精度や強度が不足しているということにはならない。例えば、リード端子の下面とパッドとの接合状態さえ良好であれば、仮にフィレットの形状に難があっても、接合精度や接合強度自体は十分であることも多い。
【0041】
図7は、接合部20におけるはんだフィレット31の形成位置を示す模式図である。以下、
図7を参照して、本形態の接合部20が備えるはんだフィレットの形成構造について説明する。
【0042】
上でも述べたように、本形態の接合部20は、中間部である屈曲部23よりも先端21a側の部分21が、先端21aに向かうにつれて次第にパッド91から離れるように折り曲がった形状となっている。そのため、フィレット31は、パッド91と接合部20の先端面21cとの間にではなく、主に、パッド91と、パッド91との対向面である接合部下面21bとの間で形成される。
【0043】
はんだ接合の精度・強度は、接合部20の先端面21cの接合状態よりも、より面積の広い下面21b,22bの接合状態に左右される。本形態のリード端子10では、その下面21b,22bの接合状態を従来のフィレット検査(
図7B)を通して確認することができる。つまり、はんだペーストの質や量、加熱温度・加熱時間に加え、リード端子10の下面21b,22bの表面状態が適切であれば、通常は良好なフィレット31が形成される。これにより、はんだ接合の良否とその外観検査の合否との不一致が改善されている。
【0044】
また、接合部20の先端21aはパッド91から離れているため、はんだ付け後にその先端面21cの一部がはんだから露出していることがある。先端面21cの表面状態(例えばメッキ状態)が粗悪な場合にも先端面21cははんだから露出する。本形態ではそもそも、フィレット31が接合部先端21aの下面21bとパッド91との間で形成されるため、先端面21cが露出していてもフィレット検査の合否に影響はない。つまり、先端面21cには、はんだの濡れ性を高めるメッキ加工を施さなくてよいともいえる。このことを応用すれば、例えば先メッキ加工の金属板を打ち抜いてリード端子10を製造することも可能と考えられる。
【0045】
図8は、接合部20のフィレット形成構造についての変形例を示す模式図である。本形態の接合部20は、その先端側部分21と後端側部分22の両方が、それぞれの端部21a,22aに向かってパッド91から離れるように傾斜している。一方、接合部20のフィレット形成構造は、主にその先端側部分21の特徴によるものである。つまり、フィレット31の形成に必要となる範囲だけがパッド91から離れていれば足りる。よって、このフィレット形成構造による利点のみを得たい場合には、
図8の各変形例に示すように、後端側部分22は例えば水平に配置されてもよい。
【0046】
以下、個々の変形例について説明する。本形態の接合部20は、その長手方向におけるほぼ中心に屈曲部23設けられているが、その先端側部分21がパッド91から離れるように傾斜してさえいれば、例えば
図8Aの接合部20dのように、屈曲部23は接合部20の中心よりも先端21a寄りにあってもよい。これに加え、接合部20dの先端21aの位置(高さ)が、良好なフィレット31の形成に好適な位置となるように先端側部分21の勾配を調節することで、はんだ接合の良否とその外観検査の合否との不一致がより改善される。具体的には、接合部先端21aの下面21bとパッド91との間に0.2~0.5[mm]程度の間隔があることが望ましい。また、上述のボイド排出構造と同様に、接合部20の先端側部分21の曲げ方は直線的な曲げ方だけには限られない。例えば
図8Bの接合部20eのように、接合部20eの任意の中間部である位置Cから先端21aにかけて、弧を描くように先端側部分21を湾曲させてもよい。そして、この構造はさらに、例えば
図8Cの接合部20fのように、フラットリードタイプのリード端子にも適用することができる。
【0047】
このように、本形態のリード端子10は、その接合部20の先端21aがパッド91から離れるように折り曲がった形状となっていることで、接合部20の下面21bとパッド91との間にフィレット31が形成される。これにより、接合部20の先端面21cの表面状態に左右されることなく、より合理的な検査を行うことができる。そしてコネクタ80にこのリード端子10が採用されることで、コネクタ80の歩留まりが本来値に近づけられている。尚、接合部20の折り曲げられた先端側部分21には、フィレット形成効果だけでなく、上述のボイド排出効果も認められる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0049】
10:リード端子
20:接合部
21:先端側部分
21a:先端
21b:下面(対向面)
21c:先端面
22:後端側部分
22a:後端
22b:下面
23:屈曲部(中間部)
29:水平部(中間部)
30:はんだ・はんだペースト
31:フィレット
39:ボイド
80:コネクタ(表面実装部品)
81:コネクタハウジング
82:開口
83:端子面
84:端子列
89:固定部
90:プリント回路基板(基板)
91:パッド
【手続補正書】
【提出日】2024-01-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
本形態のコネクタハウジング81は、液晶ポリマー(LCP:Liquid Crystal Polymer)や、シンジオタクチックポリスチレン(SPS:syndiotactic polystyrene)等のエンジニアリングプラスチックからなる樹脂部品である。コネクタハウジング81の材料は、リフロー炉の熱に耐えうる耐熱性を備える材料であれば、その用途に応じて適宜変更してよい。また、本形態のリード端子10は、真鍮(黄銅)等の銅合金を錫メッキした端子部品である。リード端子10もその材料自体は一般的なものである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0034】
図9は、リフロー工程における、従来のリード端子(T)の接合部の様子を示す模式図(
図9A)と、本形態に係るリード端子10の接合部20の様子を示す模式図である(
図9B)。
図9は、
図4の各図(4A)~(4C)に示した平面透視図と同じアングルのX線写真を図化したものである。
図9Aに示すように、従来のリード端子の接合部では、リフロー工程中に発生したボイド(
黒く見える丸い部分)(V)があまり動かず、その場に滞留していることが分かる。一方、
図9Bに示すように、本形態の接合部20では、発生したボイド39が端部に向かって移動し、はんだ外に排出されていることが分かる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】