(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013195
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】排ガス浄化触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 23/648 20060101AFI20240124BHJP
B01J 23/46 20060101ALI20240124BHJP
B01J 32/00 20060101ALI20240124BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20240124BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
B01J23/648 A ZAB
B01J23/46 311A
B01J32/00
B01D53/86 222
B01D53/86 245
B01D53/86 280
F01N3/10 A
F01N3/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055201
(22)【出願日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2022114885
(32)【優先日】2022-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】原 淳雅
(72)【発明者】
【氏名】加渡 幹尚
(72)【発明者】
【氏名】吉永 泰三
(72)【発明者】
【氏名】平田 裕人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴博
(72)【発明者】
【氏名】大石 隼輔
(72)【発明者】
【氏名】塚本 和芳
(72)【発明者】
【氏名】大場 史康
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AB03
3G091BA01
3G091GB05W
3G091GB10X
4D148AA06
4D148AA13
4D148AA18
4D148AB01
4D148AB02
4D148BA03X
4D148BA07X
4D148BA08X
4D148BA15X
4D148BA24X
4D148BA33X
4D148BA41X
4D148BA42X
4D148BB02
4G169AA01
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4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA05A
4G169BA05B
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC12A
4G169BC12B
4G169BC44A
4G169BC44B
4G169BC50A
4G169BC50B
4G169BC51A
4G169BC51B
4G169BC71A
4G169BC71B
4G169CA09
4G169DA06
4G169EC02Y
4G169EC25
4G169FA02
4G169FB13
4G169FC08
(57)【要約】
【課題】本開示は、触媒活性を向上させた排ガス浄化触媒を提供する。
【解決手段】本開示の排ガス浄化触媒は、金属酸化物担体、及び前記金属酸化物担体に担持されているRh粒子を含有しており、前記金属酸化物担体は、前記金属酸化物担体を構成するカチオンよりも高い酸化数を有するカチオンでドープされている排ガス浄化触媒である。前記金属酸化物担体は、0mol%超8mol%以下のNbでドープされているSrTiO
3担体、5mol%以上20mol%以下のNbでドープされているZrO
2担体、又は0mol%超7mol%以下のTiでドープされているAl
2O
3担体であってよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物担体、及び前記金属酸化物担体に担持されているRh粒子を含有しており、
前記金属酸化物担体は、前記金属酸化物担体を構成するカチオンよりも高い酸化数を有するカチオンでドープされている、排ガス浄化触媒。
【請求項2】
前記金属酸化物担体は、0mol%超8mol%以下のNbでドープされているSrTiO3担体、5mol%以上20mol%以下のNbでドープされているZrO2担体、又は0mol%超7mol%以下のTiでドープされているAl2O3担体である、請求項1に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項3】
前記金属酸化物担体は、0mol%超8mol%以下のNbでドープされているSrTiO3担体であって、CuKα線を用いたX線結晶回折測定によるX線回折スペクトルにおいて、32.20°<2θ<32.38の範囲において、前記SrTiO3担体のSrTiO3由来のピークを有している、請求項1に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項4】
前記金属酸化物担体は、0mol%超8mol%以下のNbでドープされているSrTiO3担体であって、前記SrTiO3担体の波長900nm以上における近赤外拡散反射スペクトルが、NbがドープされていないSrTiO3担体の波長900nm以上における近赤外拡散反射スペクトルよりも大きい、請求項1に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項5】
前記金属酸化物担体は、0mol%超8mol%以下のNbでドープされているSrTiO3担体であって、1%H2/N2の雰囲気、加熱温度400℃、かつ加熱時間1時間の水素還元処理後における、Rhの3d軌道の結合エネルギーピークが、306~307eVの範囲内に存在する、請求項1に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項6】
三元触媒である、請求項1~5のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒に対して排ガスを接触させることを含む、排ガス浄化方法。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒を製造する方法であって、
前記金属酸化物担体を提供すること、及び
前記金属酸化物担体にRh粒子を担持させること、
を含んでいる、排ガス浄化触媒の製造方法。
【請求項9】
前記金属酸化物担体は、0mol%超8mol%以下のNbでドープされているSrTiO3担体である、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記金属酸化物担体は、5mol%以上20mol%以下のNbでドープされているZrO2担体である、請求項8に記載の製造方法。
【請求項11】
前記金属酸化物担体は、0mol%超7mol%以下のTiでドープされているAl2O3担体である、請求項8に記載の製造方法。
【請求項12】
前記SrTiO3担体を提供することが、前記SrTiO3担体をゾル-ゲル法によって合成することを含んでいる、請求項9に記載の製造方法。
【請求項13】
前記ZrO2担体を提供することが、前記ZrO2担体をクエン酸法によって合成することを含んでいる、請求項10に記載の製造方法。
【請求項14】
前記Al2O3担体を提供することが、前記Al2O3担体を錯体重合法によって合成することを含んでいる、請求項11に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排ガス浄化触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、貴金属;アルミナ支持体粒子;及び前記アルミナ支持体粒子の表面上に担持されたZrO2半導体粒子;とを含む排ガス浄化用触媒を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排ガス浄化触媒、特に三元触媒の触媒活性を向上させることが求められている。
【0005】
本開示は、触媒活性を向上させた排ガス浄化触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示者は、以下の手段により上記課題を達成することができることを見出した:
《態様1》
金属酸化物担体、及び前記金属酸化物担体に担持されているRh粒子を含有しており、
前記金属酸化物担体は、前記金属酸化物担体を構成するカチオンよりも高い酸化数を有するカチオンでドープされている、排ガス浄化触媒。
《態様2》
前記金属酸化物担体は、0mol%超8mol%以下のNbでドープされているSrTiO3担体、5mol%以上20mol%以下のNbでドープされているZrO2担体、又は0mol%超7mol%以下のTiでドープされているAl2O3担体である、態様1に記載の排ガス浄化触媒。
《態様3》
前記金属酸化物担体は、0mol%超8mol%以下のNbでドープされているSrTiO3担体であって、CuKα線を用いたX線結晶回折測定によるX線回折スペクトルにおいて、32.20°<2θ<32.38の範囲において、前記SrTiO3担体のSrTiO3由来のピークを有している、態様1に記載の排ガス浄化触媒。
《態様4》
前記金属酸化物担体は、0mol%超8mol%以下のNbでドープされているSrTiO3担体であって、前記SrTiO3担体の波長900nm以上における近赤外拡散反射スペクトルが、NbがドープされていないSrTiO3担体の波長900nm以上における近赤外拡散反射スペクトルよりも大きい、態様1に記載の排ガス浄化触媒。
《態様5》
前記金属酸化物担体は、0mol%超8mol%以下のNbでドープされているSrTiO3担体であって、1%H2/N2の雰囲気、加熱温度400℃、かつ加熱時間1時間の水素還元処理後における、Rhの3d軌道の結合エネルギーピークが、306~307eVの範囲内に存在する、態様1に記載の排ガス浄化触媒。
《態様6》
三元触媒である、態様1~5のいずれか一つに記載の排ガス浄化触媒。
《態様7》
態様1~5のいずれか一つに記載の排ガス浄化触媒に対して排ガスを接触させることを含む、排ガス浄化方法。
《態様8》
態様1~5のいずれか一つに記載の排ガス浄化触媒を製造する方法であって、
前記金属酸化物担体を提供すること、及び
前記金属酸化物担体にRh粒子を担持させること、
を含んでいる、排ガス浄化触媒の製造方法。
《態様9》
前記金属酸化物担体は、0mol%超8mol%以下のNbでドープされているSrTiO3担体である、態様8に記載の製造方法。
《態様10》
前記金属酸化物担体は、5mol%以上20mol%以下のNbでドープされているZrO2担体である、態様8に記載の製造方法。
《態様11》
前記金属酸化物担体は、0mol%超7mol%以下のTiでドープされているAl2O3担体である、態様8に記載の製造方法。
《態様12》
前記SrTiO3担体を提供することが、前記SrTiO3担体をゾル-ゲル法によって合成することを含んでいる、態様9に記載の製造方法。
《態様13》
前記ZrO2担体を提供することが、前記ZrO2担体をクエン酸法によって合成することを含んでいる、態様10に記載の製造方法。
《態様14》
前記Al2O3担体を提供することが、前記Al2O3担体を錯体重合法によって合成することを含んでいる、態様11に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、触媒活性を向上させた排ガス浄化触媒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の排ガス浄化触媒1が排ガスを浄化している状態を示す模式図である。
【
図2】
図2は、Rh-O結合時の電子軌道イメージを示すグラフである。
【
図3】
図3は、Rhを電子リッチ化した状態におけるRh-O結合時の電子軌道イメージを示すグラフである。
【
図4】
図4は、金属とn型半導体との接合がない状態でのエネルギー状態を示す図である。
【
図5】
図5は、金属とn型半導体とのショットキー接合がある状態でのエネルギー状態を示す図である。
【
図6】
図6は、各例のサンプルに関するX線回折スペクトルを示すグラフである。
【
図7】
図7は、各例のサンプルに関するX線回折スペクトルを示すグラフである。
【
図8】
図8は、各例のサンプルに関するUV-vis-NIR拡散反射スペクトルを示すグラフである。
【
図9】
図9は、実施例1-1、並びに比較例1-1及び1-2のサンプルに関するX線光電子分光法測定結果を示すグラフである。
【
図10】
図10は、各例のサンプルに対する触媒活性評価の条件に関して、時間と温度の関係を示す図である。
【
図11】
図11は、実施例1-1及び1-2、並びに比較例1-1のサンプルに関する触媒活性評価結果を示すグラフである。
【
図12】
図12は、実施例1-1及び1-2、並びに比較例1-1及び1-2のサンプルに関する触媒活性評価結果を示すグラフである。
【
図13】
図13は、比較例2-1のサンプルに関するX線回折スペクトルを示すグラフである。
【
図14】
図14は、実施例2-1~2-4、並びに比較例2-2及び2-3のサンプルに関するX線回折スペクトルを示すグラフである。
【
図15】
図15は、実施例2-2~2-4のサンプルに関するX線回折スペクトルの、2θ=29.8~30.6の領域の拡大図である。
【
図16】
図16は、実施例2-1~2-3、及び比較例2-1のサンプルに関するX線光電子分光法測定結果を示すグラフである。
【
図17】
図17は、実施例2-1、2-3,及び2-4、並びに比較例2-1及び2-3のサンプルに関する触媒活性評価結果を示すグラフである。
【
図18】
図18は、実施例2-1、2-3,及び2-4、並びに比較例2-1及び2-3のサンプルに関する触媒活性評価結果を示すグラフである。
【
図19】
図19は、実施例3-1~3-4、並びに比較例3-1及び3-2のサンプルに関するX線回折スペクトルを示すグラフである。
【
図20】
図20は、実施例3-1~3-4、並びに比較例3-1及び3-2のサンプルに関するX線回折スペクトルにおけるメインピーク位置を比較したグラフである。
【
図21】
図21は、実施例3-3、並びに比較例3-1及び3-2のサンプルに関するX線光電子分光法測定結果を示すグラフである。
【
図22】
図22は、実施例3-1~3-4、並びに比較例3-1及び3-2のサンプルに関する触媒活性評価結果を示すグラフである。
【
図23】
図23は、実施例3-1~3-4、並びに比較例3-1及び3-2のサンプルに関する触媒活性評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について詳述する。なお、本開示は、以下の実施の形態に限定されるのではなく、開示の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0010】
《排ガス浄化触媒》
本開示の排ガス浄化触媒は、金属酸化物担体、及び金属酸化物担体に担持されているRh粒子を含有しており、金属酸化物担体は、金属酸化物担体を構成するカチオンよりも高い酸化数を有するカチオンでドープされている、排ガス浄化触媒である。
【0011】
金属酸化物担体は、0mol%超8mol%以下のNbでドープされているSrTiO3担体、5mol%以上20mol%以下のNbでドープされているZrO2担体、又は0mol%超7mol%以下のTiでドープされているAl2O3担体であることができる。
【0012】
概して、触媒金属としてのRhは、PdやPtと比較して特にNOx還元に関して高い触媒活性を示す。Rhの触媒活性を向上させることにより、Rhの使用量を低減することができる。
【0013】
この点に関して、排ガス中のNOxの還元の律速段階は、CO2の生成経路である。すなわち、Rhに吸着したO原子とCOとの反応が律速である。そのため、Rhに吸着したO原子の吸着エネルギーを低下させることができれば、排ガス浄化触媒のNOxの還元性能を向上させることができる。
【0014】
本開示の排ガス浄化触媒は、金属酸化物担体上にRh粒子が担持されている排ガス浄化触媒において、金属酸化物担体に、金属酸化物担体を構成するカチオンよりも高い酸化数を有するカチオンをドープすることによって、金属酸化物担体を電子リッチにしている。この電子がRhに流れ込んで、O原子の吸着エネルギーを低下させる。
【0015】
金属酸化物担体としてSrTiO
3担体を用いた場合を例に、
図1~3を用いてより具体的に説明する。
【0016】
図1は、本開示の排ガス浄化触媒1が排ガスを浄化している状態を示す模式図である。また、
図2は、Rh-O結合時の電子軌道イメージを示すグラフであり、
図3は、Rhを電子リッチ化した状態におけるRh-O結合時の電子軌道イメージを示すグラフである。
【0017】
図1に示すように、本開示の排ガス浄化触媒1は、Nbが0mol%超8mol%以下でドープされているSrTiO
3担体2、及びSrTiO
3担体に担持されているRh粒子3を含有している。本開示の排ガス浄化触媒1では、Nbでドープされているため、SrTiO
3担体2は、Nbを含まないSrTiO
3担体と比較して、多く自由電子を有している。NbをドープしたSrTiO
3担体2のこの電子は、Rh粒子3に流れ込む。
【0018】
電子がRh粒子に流れ込んでいない状態では、O
2p軌道、O
2p/Rh
4d軌道、及びRh
4d軌道のエネルギーは、
図2に示すようである。この状態では、O
2p/Rh
4d軌道における反結合性軌道(Anti-bonding state)を満たす電子の割合は低い。他方、
図3に示すように、Rhを電子リッチ化した状態、即ちRh粒子に電子が流れ込んだ状態では、O結合時の反結合性軌道(Anti-bonding state)を満たす電子の割合が増加する。これにより、Rh-Oの結合力が低下し、O原子の吸着エネルギーが低下する。
【0019】
なお、
図4及び5に示すように、金属(例えばRh)とn型半導体(酸化物担体)を接触させると、お互いのフェルミ準位が同じになるまでn型半導体から金属へと電子が流れ込み、金属が電子リッチ化する。
【0020】
本開示の排ガス浄化触媒は、三元触媒であってよい。
【0021】
本開示の排ガス浄化触媒は、例えば基材、より具体的にはハニカム基材上等に配置して使用してよい。
【0022】
〈金属酸化物担体〉
本開示の排ガス浄化触媒が有している金属酸化物担体は、金属酸化物担体を構成するカチオンよりも高い酸化数を有するカチオンでドープされている。このようなカチオンでドープされている金属酸化物担体は、例えば、NbでドープされているSrTiO3担体、NbでドープされているZrO2担体、又はTiでドープされているAl2O3担体を挙げることができる。
【0023】
金属酸化物担体としてNbでドープされているSrTiO3担体を用いる場合、SrTiO3担体は、Nbが0mol%超8mol%以下でドープされていることができる。
【0024】
SrTiO3担体は、Nbが0mol%超、1mol%以上、2mol%以上、又は3mol%以上でドープされていてよく、8mol%以下、7mol%以下、6mol%以下、又は5mol%以下でドープされていてよい。
【0025】
ここで、SrTiO3担体に「Nbが0mol%超8mol%以下でドープされている」とは、SrTiO3担体中において、Ti原子とNb原子の合計を100mol%としたときに、Nb原子が0mol%超8mol%以下で存在することをいう。
【0026】
NbでドープされているSrTiO3担体は、CuKα線を用いたX線結晶回折測定によるX線回折スペクトルにおいて、32.20°<2θ<32.38°の範囲にSrTiO3担体のSrTiO3由来のピークを有していることができる。
【0027】
本開示の排ガス浄化触媒において、SrTiO3担体は、TiサイトがNbによって置換されているため、結晶格子の膨張によってX線結晶回折スペクトルにおける回折ピークは低角度側にシフトし得る。
【0028】
また、NbでドープされているSrTiO3担体が有しているSrTiO3担体の波長900nm以上における近赤外拡散反射スペクトルは、NbでドープされていないSrTiO3担体の波長900nm以上における近赤外拡散反射スペクトルよりも大きくてよい。NbのドープによりSrTiO3の自由電子(キャリア)密度が増大すると、表面プラズモン共鳴による吸収が増大する。ここで、近赤外拡散反射スペクトルとは、近赤外線領域(800~2500nmの波長を有する電磁放射線の領域)における拡散反射スペクトルである。
金属酸化物担体としてNbでドープされているZrO2担体を用いる場合、ZrO2担体は、Nbが5mol%以上20mol%以下でドープされていることができる。
【0029】
ZrO2担体は、Nbが5mol%以上、7mol%以上、10mol%以上、又は15mol%以上でドープされていてよく、20mol%以下、18mol%以下、15mol%以下、又は10mol%以下でドープされていてよい。
【0030】
ここで、ZrO2担体に「Nbが5mol%以上20mol%以下でドープされている」とは、ZrO2担体中において、Zr原子とNb原子の合計を100mol%としたときに、Nb原子が5mol%以上20mol%以下で存在することをいう。
【0031】
NbでドープされているZrO2担体は、CuKα線を用いたX線結晶回折測定によるX線回折スペクトルにおいて、29.80°<2θ<30.60°の範囲にZrO2担体のZrO2由来のピークを有していることができる。
【0032】
本開示の排ガス浄化触媒において、SrTiO3担体は、TiサイトがNbによって置換されているため、結晶格子の膨張によってX線結晶回折スペクトルにおける回折ピークは低角度側にシフトし得る。
NbでドープされているZrO2担体は、正方晶であってよい。
金属酸化物担体としてTiでドープされているAl2O3担体を用いる場合、Al2O3担体は、Tiが0mol%超7mol%以下でドープされていることができる。
【0033】
Al2O3担体は、Tiが0mol%超、1mol%以上、3mol%以上、又は5mol%以上でドープされていてよく、7mol%以下、6mol%以下、5mol%以下、又は4mol%以下でドープされていてよい。
【0034】
ここで、Al2O3担体に「Tiが0mol%超7mol%以下でドープされている」とは、Al2O3担体中において、Al原子とTi原子の合計を100mol%としたときに、Ti原子が0mol%超7mol%以下で存在することをいう。
【0035】
TiでドープされているAl2O3担体は、CuKα線を用いたX線結晶回折測定によるX線回折スペクトルにおいて、Al2O3由来のピークが67.10°<2θ<66.85°の範囲に存在していることができる。
【0036】
本開示の排ガス浄化触媒において、SrTiO3担体は、TiサイトがNbによって置換されているため、結晶格子の膨張によってX線結晶回折スペクトルにおける回折ピークは低角度側にシフトし得る。
NbでドープされているZrO2担体は、正方晶であってよい。
【0037】
〈Rh粒子〉
本開示の排ガス浄化触媒では、Rh粒子が金属酸化物担体に担持されている。
【0038】
Rh粒子の大きさ及び形状は、排ガス浄化触媒の触媒金属として使用される任意の大きさ及び形状であってよい。
【0039】
より具体的には、Rh粒子は、メジアン径(D50)が0.1~10.0nmであってよい。Rh粒子のメジアン径(D50)は、0.1nm以上、1.0nm以上、2.0nm以上、又は2.5nm以上であってよく、10.0nm以下、5.0nm以下、3.0nm以下、又は2.5nm以下であってよい。
【0040】
なお、メジアン径(D50)は、例えば株式会社島津製作所製のレーザー回折式粒子径分布測定装置(SALD-2300)を用いて粒度分布測定を行い、50%累積頻度のときの粒子径として測定することができる。
【0041】
Rh粒子の金属酸化物担体への担持量は、例えば排ガス浄化触媒全体に対して0.1~5.0質量%であってよい。Rh粒子の金属酸化物担体への担持量は、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、又は0.4質量%以上であってよく、5.0質量%以下、2.5質量%以下、1.0質量%以下、又は0.5質量%以下であってよい。
【0042】
金属酸化物担体がNbでドープされているSrTiO3担体である場合、Rh粒子に関して、1%H2/N2の雰囲気、加熱温度400℃、かつ加熱時間1時間の水素還元処理後における、Rhの3d軌道の結合エネルギーピークが、306~307eVの範囲内に存在していてよい。このような結合エネルギーピークは、通常の、即ちNbでドープされていないSrTiO3担体に担持されているRhの3d軌道の結合エネルギーピークよりも低エネルギー側にシフトしている。このことは、NbでドープされているSrTiO3担体からRh粒子へと電子が移動していることを示す。なお、結合エネルギーピークは、X線光電子分光法試験により測定することができる。
【0043】
《排ガス浄化方法》
本開示の排ガス浄化方法は、本開示の排ガス浄化触媒に対して排ガスを接触させることを含む。排ガスを排ガス浄化触媒に接触させる方法は特に限定されない。
【0044】
ここで、排ガスは、例えばNOx、CO、及びHCを含有していることができる。
【0045】
《排ガス浄化触媒の製造方法》
本開示の製造方法は、上記の本開示の排ガス浄化触媒を製造する方法である。本開示の製造方法は、金属酸化物担体を提供すること、及び金属酸化物担体にRh粒子を担持させること、を含んでいる。ここで、金属酸化物担体は、金属酸化物担体を構成するカチオンよりも高い酸化数を有するカチオンでドープされている。
金属酸化物担体は、0mol%超8mol%以下のNbでドープされているSrTiO3担体、5mol%以上20mol%以下のNbでドープされているZrO2担体、または0mol%超7mol%以下のTiでドープされているAl2O3担体であってよい。
【0046】
ここで、金属酸化物担体を提供することは、例えば金属酸化物担体の結晶格子を構成するカチオンの一部を、該カチオンよりも高い酸化数を有するカチオンに置換することができる任意の方法を含んでいることができる。
【0047】
金属酸化物担体にNbでドープされているSrTiO3担体を用いる場合、本開示の方法は、SrTiO3担体をゾル-ゲル法によって合成することを含んでいることができる。金属酸化物担体にNbでドープされているZrO2担体を用いる場合、本開示の方法は、ZrO2担体をクエン酸法によって合成することを含んでいることができる。金属酸化物担体にTiでドープされているAl2O3担体を用いる場合、本開示の方法は、Al2O3担体を錯体重合法によって合成することを含んでいることができる。
【0048】
SrTiO3担体にRh粒子を担持させる方法は、触媒担体に触媒金属を担持させることができる任意の方法を採用することができる。
【実施例0049】
《実施例1-1及び1-2、並びに比較例1-1~1-3》
〈実施例1-1〉
(Rhナノ粒子の合成)
フラスコ中に塩化ロジウム溶液0.972mmolを加え、水分を蒸発乾固したのちに、ポリビニルピロリドン(PVP)1.29g、エチレングリコール(EG)270gを加え、室温で撹拌することにより、EGに塩化ロジウムとPVPを溶解した。これらの溶液に濃度15.6mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を200μL加え、窒素雰囲気下、120℃で24時間攪拌した。溶液を室温まで放冷後、アセトンとヘキサンの混合溶媒を加えて遠心分離を行い、沈殿物をエタノールに再分散させRhナノ粒子を得た。
【0050】
(NbドープSrTiO3の合成)
NbドープSrTiO3の合成は、ゾル-ゲル法によって実施した。具体的には、ビーカー中に蒸留水、クエン酸、硝酸ストロンチウム、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクタト)チタン(IV)溶液、シュウ酸ニオブアンモニウム水和物を混合し、加熱撹拌して蒸発乾固させた。これを120℃の恒温炉でさらに一晩乾燥させた。乾燥物を850℃で3時間大気焼成したのちに3%水素雰囲気下800℃で2時間還元処理を実施し、粉末を得た。Tiに対してNbを置換することで、Nbドープ量(モル量)を調節した。なお、実施例1-1では、Nbのドープ量は2mol%であった。
【0051】
(NbドープSrTiO3へのRhナノ粒子の担持)
合成したRhナノ粒子溶液とNbドープSrTiO3粉末を混合し、24時間攪拌したのちに溶媒をエバポレーターで除去した。得られた乾燥粉末を500℃で3時間大気焼成し、Rhナノ粒子に付着したPVPなどの有機物を除去してRhナノ粒子をNbドープSrTiO3へ担持した。このとき、NbドープSrTiO3に対するRhの担持量は、0.5wt%となるよう量を調整した。焼成物を取り出してCIP(冷間等方圧加工法)用の袋に入れ、真空パックした。これを1トン/cm2でプレスし、ふるいにかけ、かつ乳棒で叩いてペレット化した。このペレットを実施例1の排ガス浄化触媒のサンプルとした。
【0052】
〈実施例1-2〉
SrTiO3に対するNbのドープ量を5mol%としたことを除いて実施例1-1と同様にして、実施例1-2の排ガス浄化触媒のサンプルとした。
【0053】
〈比較例1-1〉
SrTiO3に対してNbをドープしなかったことを除いて実施例1-1と同様にして、比較例1-1の排ガス浄化触媒のサンプルとした。
【0054】
〈比較例1-2及び1-3〉
SrTiO3に対するNbのドープ量をそれぞれ順に10mol%及び30mol%としたことを除いて実施例1-1と同様にして、比較例1-2及び1-3の排ガス浄化触媒のサンプルとした。
【0055】
〈X線結晶回折スペクトル測定〉
各例のサンプルに用いたNbドープSrTiO3について、水素雰囲気下での還元処理直後、すなわち上記の「NbドープSrTiO3の合成」による合成直後に、X線結晶回折スペクトル測定を行った。具体的には、CuKα線を用いたX線結晶回折測定を、全自動多目的水平型X線回折装置SmartLab(9kw)を用いて、集中法光学系、D/teX Ultraを使用し、管球をCu-Kα、出力を45kV-200mAとし、走査モードを連続、サンプリング間隔を0.01°、走査速度を1°/min、かつ走査角度を10.0~90.0°として実施した。
【0056】
各例のサンプルに用いたNbドープSrTiO
3のX線結晶回折スペクトルを、
図6及び
図7に示す。
図6は、X線結晶回折スペクトルにおける2θ=10.0~90.0°の範囲を示している。
図7は、X線結晶回折スペクトルにおける2θ=32~32.6°の範囲を示している。
【0057】
図6から、各例のサンプルに用いたNbドープSrTiO
3は、Nbドープ量に関わらずメインピークはSrTiO
3由来のものであり、ほぼ単相であることがわかった。
図7から、Nbドープ量増加に伴い回折ピークの低角度シフトが見られ、TiサイトのNb置換による格子の膨張が確認でき、NbがSrTiO
3へ固溶していることがわかった。
【0058】
〈比表面積測定〉
各例のサンプルに用いたNbドープSrTiO3の比表面積は、JIS K6217-2に従って、島津製作所社製Tri-Star3000を用いてBET法により測定した。
【0059】
各例のサンプルに用いたNbドープSrTiO3の比表面積(m2/g)を、以下の表1に示す。
【0060】
【0061】
表1に示すように、実施例1-1及び1-2のサンプルに用いたNbのドープ量が2mol%及び5mol%であったSrTiO3では、比表面積がそれぞれ10m2/g及び9m2/gであり、比較例1-1のサンプルに用いたNbをドープしなかったSrTiO3と同程度の比表面積を有していた。
【0062】
これに対して、比較例1-2及び1-3のサンプルに用いたNbのドープ量が10mol%及び30mol%であったSrTiO3では、比表面積がそれぞれ14m2/g及び30m2/gであり、比較例1-1のサンプルに用いたNbをドープしなかったSrTiO3と比較して、比表面積が大きかった。
【0063】
〈UV-vis-NIR拡散反射スペクトル測定〉
各例のサンプルに用いたNbドープSrTiO3に対して、UV-Vis-NIR拡散反射(紫外・可視・近赤外拡散反射)および吸収スペクトル測定を、日立社製のHITACHI/U-4100形分光光度計を用いて行った。
【0064】
【0065】
図8に示すように、実施例1-1及び1-2、並びに比較例1-2及び1-3のサンプルに用いたNbドープSrTiO
3では、可視-近赤外領域において、Nbドープ量増加に伴い吸収の増大が確認された。これは、NbドープによりNbドープSrTiO
3の自由電子(キャリア)密度が増大し、表面プラズモン共鳴による吸収が増大したことによると考えられる。この吸収が大きいほどキャリア密度が高いことが示唆される。
【0066】
〈X線光電子分光法測定〉
実施例1-1、並びに比較例1-1及び1-2のサンプルに対して、X線光電子分光法によってRh3d軌道の結合エネルギーのピークを測定した。
【0067】
【0068】
図9に示すように、Nbのドープ量に応じてRh
3d軌道の結合エネルギーピークが低エネルギー側にシフトしており、Rhの電子リッチ化が示唆された。これはすなわち、NbドープSrTiO
3担体からRhへ電子が移動していることを示す。
【0069】
〈触媒活性評価〉
図10に示す温度条件及び表2に示す混合ガスを用いて、各例のサンプルの触媒活性を評価した。
【0070】
なお混合ガスの処理に当たっては、各サンプルのペレットを固定床流通式の試験装置に装填し、混合ガスを空間速度200,000h-1で流通した。NOxが50%浄化される温度をT50と定義し、この温度を比較することにより評価を行った。
【0071】
【0072】
図11に実施例1-1及び1-2のサンプルにおけるNOからN
2への転化率を示す。また、
図12に各例のT50/℃を示す。
【0073】
図11に示すように、SrTiO
3担体に対してNbを2mol%及び5mol%ドープした実施例1-1及び1-2のサンプルは、SrTiO
3担体に対してNbをドープしなかった比較例1-1と比較して、低温におけるNOx浄化率が向上した。
【0074】
また、
図12に示すように、NOxの50%浄化温度T50は、SrTiO
3担体に対してNbを2mol%及び5mol%ドープした実施例1-1及び1-2のサンプルにおいて特に低温、即ち共に275℃付近となり、Nbをドープしなかった比較例1-1のNOxの50%浄化温度T50である約280℃よりも低温であった。また、SrTiO
3担体に対してNbを10mol%ドープした比較例1-2では、SrTiO
3担体に対してNbをドープしなかった比較例1-1よりもNOxの50%浄化温度T50が高温、即ち約282℃となった。
【0075】
《実施例2-1~2-4、及び比較例2-1~2-3》
〈実施例2-1〉
(Rhナノ粒子の合成)
実施例1-1と同様にして、Rhナノ粒子を得た。
【0076】
(NbドープZrO2の合成)
NbドープZrO2の合成は、クエン酸法によって実施した。具体的には、次のようにしてNbドープZrO2を合成した。ビーカー中に蒸留水、クエン酸、オキシ硝酸ジルコニウム、及びシュウ酸ニオブアンモニウム・10水和物を混合し、加熱撹拌して蒸発乾固させた。これを120℃の恒温炉でさらに一晩乾燥させた。乾燥物を800℃で3時間大気焼成したのちに3%水素雰囲気下800℃で2時間還元処理を実施し、粉末を得た。Zrに対してNbを置換することで、Nbドープ量(モル量)を調節した。ZrO2に対するNbのドープ量は、5mol%であった。
【0077】
(NbドープZrO2へのRhナノ粒子の担持)
Rhナノ粒子溶液(SCH)とNbドープZrO2粉末を混合し、加熱撹拌して蒸発乾固させた。これを120℃の恒温炉でさらに一晩乾燥させた。得られた乾燥粉末を500℃で3時間大気焼成し、Rhナノ粒子に付着したPVPなどの有機物を除去してRhナノ粒子をNbドープZrO2へ担持した。このとき、NbドープZrO2に対するRhの担持量は、0.5wt%となるよう量を調整した。焼成物を取り出してCIP(冷間等方圧加工法)用の袋に入れ、真空パックした。これを1トン/cm2でプレスし、ふるいにかけ、かつ乳棒で叩いてペレット化した。このペレットを排ガス浄化触媒の試料とした。
【0078】
〈実施例2-2~2-4、並びに比較例2-2及び2-3〉
ZrO2に対するNbのドープ量を10mol%(実施例2-2)、15mol%(実施例2-3)、20mol%(実施例2-4)、2mol%(比較例2-2)、30mol%(比較例2-2)としたことを除いて実施例2-1と同様にして、実施例2-2~2-4、並びに比較例2-2及び2-3の排ガス浄化触媒のサンプルを得た。
【0079】
〈比較例2-1〉
ZrO2に対してNbをドープしなかったことを除いて実施例2-1と同様にして、比較例2-1の排ガス浄化触媒のサンプルとした。
【0080】
〈X線結晶回折スペクトル測定〉
実施例1-1と同様の方法により、各例のサンプルに用いたNbドープZrO2のX線結晶回折スペクトル測定を行った。なお、NbドープZrO2は、上記「NbドープZrO2の合成」による合成直後のものを用いた。
【0081】
各例のサンプルに用いたNbドープZrO
2のX線結晶回折スペクトルを、
図13~15に示す。
図13及び14は、X線結晶回折スペクトルにおける2θ=20.0~70.0°の範囲を示している。
図15は、X線結晶回折スペクトルにおける2θ=29.8~30.6°の範囲を示している。
【0082】
図13は、比較例2-1のサンプルに用いたZrO
2のX線結晶回折スペクトルを示している。NbをドープしないZrO
2の主相は単斜晶である。
図14に示すように、ZrO
2にNbを少量(2%)でもドープすれば正方晶が主相になり、30°辺りにメインピークが出現することがわかる。また、
図15に示すように、実施例2-2~2-4のサンプルの用いたNbドープZrO
2に関して、Nbドープ量増加に伴い回折ピークの高角度シフトが見られ、ZrサイトのNb置換による格子の収縮が確認でき、NbがZrO
2へ固溶していることがわかった。
【0083】
〈X線光電子分光法測定〉
実施例2-1~2-3、及び比較例2-1のサンプルに対して、X線光電子分光法によってRh3d軌道の結合エネルギーのピークを測定した。
【0084】
【0085】
図16に示すように、Nbのドープ量に応じてRh
3d軌道の結合エネルギーピークが低エネルギー側にシフトしており、Rhの電子リッチ化が示唆された。これはすなわち、NbドープZrO
2担体からRhへ電子が移動していることを示す。
【0086】
〈触媒活性評価〉
図10に示す温度条件及び表2に示す混合ガスを用いて、実施例1-1におけるのと同様にして各例のサンプルの触媒活性を評価した。
【0087】
図17に実施例2-1、2-3、及び2-4、並びに比較例2-1及び2-3のサンプルにおけるNOからN
2への転化率を示す。また、
図18に各例のT50/℃を示す。
【0088】
図16に示すように、ZrO
2担体に対してNbを5~20mol%ドープした実施例2-1、2-3、及び2-4のサンプルは、ZrO
2担体に対してNbをドープしなかった比較例1-1及びZrO
2担体に対してNbを2mol%ドープした比較例2-3と比較して、低温におけるNOx浄化率が向上した。
【0089】
また、
図17に示すように、NOxの50%浄化温度T50は、ZrO
2担体に対してNbを5~20mol%ドープした実施例2-1、2-3、及び2-4のサンプルにおいて特に低温、即ち250℃~272℃付近となり、Nbを2mol%ドープした比較例2-3のNOxの50%浄化温度T50である約276℃よりも低温であった。特に、実施例2-1の試料におけるT50は、比較例2-3の試料におけるT50と比較して25℃以上も低かった。
【0090】
《実施例3-1~3-4、並びに比較例3-1及び3-2》
〈実施例3-1〉
(Rhナノ粒子の合成)
実施例1-1と同様にして、Rhナノ粒子を得た。
【0091】
(TiドープAl2O3の合成)
TiドープAl2O3の合成は、錯体重合法によって実施した。具体的には、次のようにして実施した。ビーカーに蒸留水、硝酸アルミニウム・9水和物、硝酸ランタン(III)・6水和物、Dihydroxy bis(ammoniumlactate)Ti(IV)40.4wt%を混合し、クエン酸とエチレングリコールを加え、加熱撹拌して蒸発乾固させた。これを120℃の恒温炉でさらに一晩乾燥させた。乾燥物を900℃で3時間大気焼成したのちに3%水素雰囲気下800℃で2時間還元処理を実施し、粉末を得た。Alに対してTiを置換することで、Tiドープ量(モル量)を調節した。Al2O3に対するTiのドープ量は、1mol%であった。
【0092】
(TiドープAl2O3へのRhナノ粒子の担持)
合成したRhナノ粒子溶液とTiドープAl2O3粉末を混合し、24時間攪拌したのちに溶媒をエバポレーターで除去した。得られた乾燥粉末を500℃で3時間大気焼成し、Rhナノ粒子に付着したPVPなどの有機物を除去してRhナノ粒子をTiドープAl2O3へ担持した。このとき、TiドープAl2O3に対するRhの担持量は、0.5wt%となるよう量を調整した。焼成物を取り出してCIP(冷間等方圧加工法)用の袋に入れ、真空パックした。これを1トン/cm2でプレスし、ふるいにかけ、かつ乳棒で叩いてペレット化した。このペレットを排ガス浄化触媒のサンプルとした。
【0093】
〈実施例3-2~3-4、及び比較例3-2〉
Al2O3に対するTiのドープ量を3mol%(実施例3-2)、5mol%(実施例3-3)、7mol%(実施例3-4)、及び10mol%(比較例3-2)としたことを除いて実施例3-1と同様にして、実施例3-2~3-4、及び比較例3-2の排ガス浄化触媒のサンプルを得た。
【0094】
〈比較例3-1〉
Al2O3に対してTiをドープしなかったことを除いて実施例3-1と同様にして、比較例3-1の排ガス浄化触媒のサンプルとした。
【0095】
〈X線結晶回折スペクトル測定〉
実施例1-1と同様の方法により、各例のサンプルに用いたTiドープAl2O3のX線結晶回折スペクトル測定を行った。なお、TiドープAl2O3は、上記「TiドープAl2O3の合成」による合成直後のものを用いた。
【0096】
各例のサンプルに用いたTiドープAl
2O
3のX線結晶回折スペクトルを、
図19に示す。
図19は、X線結晶回折スペクトルにおける2θ=10.0~90.0°の範囲を示している。また、
図20は、実施例3-1~3-4、並びに比較例3-1及び3-2のサンプルに関するX線回折スペクトルにおけるメインピーク位置を比較したグラフである。
【0097】
図19から、合成したTiドープAl
2O
3は、Tiドープ量に関わらずメインピークはγ-Al
2O
3であり、ほぼ単相であることがわかった。また、
図20右から、Tiドープ量増加に伴い回折ピークの低角度シフトが見られ、AlサイトのTi置換による格子の膨張が確認でき、TiがAl
2O
3へ固溶していることがわかった。
【0098】
〈X線光電子分光法測定〉
実施例3-3、並びに比較例3-1および3-2のサンプルに対して、X線光電子分光法によってRh3d軌道の結合エネルギーのピークを測定した。
【0099】
【0100】
図21に示すように、Tiドープに応じてRh
3dのBiding Energyピークが低エネルギー側にシフトしており、Rhの電子リッチ化が示唆されている。これはすなわち、TiドープAl
2O
3担体からRhへ電子が移動していることを示す。
【0101】
〈触媒活性評価〉
図10に示す温度条件及び表2に示す混合ガスを用いて、実施例1-1におけるのと同様にして各例のサンプルの触媒活性を評価した。
【0102】
図22に各例のサンプルにおけるNOからN
2への転化率を示す。また、
図23に各例のT50/℃を示す。
【0103】
図22に示すように、Al
2O
3担体に対してTiを1~7mol%ドープした実施例3-1、3-2、3-3、及び3-4のサンプルは、Al
2O
3担体に対してTiをドープしなかった比較例3-1及びAl
2O
3担体に対してTiを10mol%ドープした比較例3-2と比較して、低温におけるNOx浄化率が向上した。
【0104】
また、
図23に示すように、NOxの50%浄化温度T50は、Al
2O
3担体に対してTiを1~7mol%ドープした実施例3-1、3-2、3-3、及び3-4のサンプルにおいて特に低温、即ち267℃~280℃付近となり、Tiドープしなかった比較例3-1のNOxの50%浄化温度T50である約281℃、およびTiを10mol%ドープした比較例3-2よりも低温であった。特に、実施例3-1の試料におけるT50は、比較例3-1の試料におけるT50と比較して12℃以上も低かった。