IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 能美防災株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-泡ヘッド 図1
  • 特開-泡ヘッド 図2
  • 特開-泡ヘッド 図3
  • 特開-泡ヘッド 図4
  • 特開-泡ヘッド 図5
  • 特開-泡ヘッド 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131962
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】泡ヘッド
(51)【国際特許分類】
   A62C 31/12 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
A62C31/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042559
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 恵理子
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189KA02
(57)【要約】
【課題】発泡倍率を変更することができる泡ヘッドを得る。
【解決手段】空気吸引孔を有し、一次側から供給される水と泡消火薬剤を一定比率で混合した泡水溶液と、空気吸引孔を介して吸い込んだ空気とを混合する本体部と、本体部で混合された泡水溶液と空気を通過させる金網部とを備え、金網部を通過することで放射された泡により消火を行う泡ヘッドであって、金網部は、泡を通過させる方向において、第1の金網部と第2の金網部とが積層された二層構造を有しており、第1の金網部と第2の金網部との積層面における相対位置を変更可能な金網移動機構を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気吸引孔を有し、一次側から供給される水と泡消火薬剤を一定比率で混合した泡水溶液と、前記空気吸引孔を介して吸い込んだ空気とを混合する本体部と、
前記本体部で混合された前記泡水溶液と前記空気を通過させる金網部と
を備え、前記金網部を通過することで放射された泡により消火を行う泡ヘッドであって、
前記金網部は、
前記泡を通過させる方向において、第1の金網部と第2の金網部とが積層された二層構造を有しており、
前記第1の金網部と前記第2の金網部との積層面における相対位置を変更可能な金網移動機構を有する
泡ヘッド。
【請求項2】
前記第1の金網部の網目形状と、前記第2の金網部の網目形状とは、同一形状である
請求項1に記載の泡ヘッド。
【請求項3】
前記第1の金網部の網目形状と、前記第2の金網部の網目形状とは、異なる形状である
請求項1に記載の泡ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、泡を放射して消火を行う泡ヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
泡ヘッド、泡ノズルなどから空気泡を放射し、燃焼表面を泡で被覆することにより窒息作用と、泡に含まれる水分による冷却作用により火災を消火する種々の泡消火設備がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
非特許文献1に開示された種々の泡消火設備は、放射した泡により防火対象物を被覆することで、以下のような効果を発揮する。
・燃焼面の被覆による窒息効果
・可燃性蒸気の蒸発抑制効果
・燃料表面と炎との遮断効果
・焼物自体と防火対象物の冷却効果
【0004】
泡消火設備を用いるに当たっては、防火対象物の特性に応じて、適切な発泡器、泡消火薬剤の種類、混合比率、発泡倍率、発泡器などを選定することとなる。ここで、発泡倍率とは、泡水溶液と、生成された泡との体積比を意味しており、大別すると、以下のような発泡倍率がある。
・低発泡(倍率20以下)
・中発泡(倍率20を越え80未満)
・高発泡(倍率80以上1000未満)
【0005】
低発泡の泡は、流動性に優れ、主として可燃性液体の流出火災やタンク火災に用いられる。一方、中発泡および高発泡の泡は、防火対象の表面を一気に被覆したり、防火対象の空間を埋め尽くしたりして、火災を抑制するために用いられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】能美防災 ホームページ 、泡系消火設備(https://www.nohmi.co.jp/product/fef/006.html )
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
泡ヘッドは、一次側から供給される水と泡消火薬剤を一定比率で混合した泡水溶液と空気を混合する本体部と、本体部で混合された泡水溶液と空気を通過させて、発泡させるための金網を有している。
【0008】
通常、泡消火設備の発泡倍率は、防火対象物の特性に応じて選定され、泡消火薬剤の種類、混合比率などを考慮して設計される値である。従来、これらの条件に応じて泡ヘッドも選定されており、防火対象物や泡消火薬剤等が変わった場合には、泡ヘッドを交換する必要があった。ここで、泡ヘッド側で発泡倍率を変更することができれば、防火対象物に応じて、あるいは使用する泡消火薬剤が変更になった場合などにも、泡ヘッドを交換せずに対応できる。
【0009】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、発泡倍率を変更することができる泡ヘッドを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る泡ヘッドは、空気吸引孔を有し、一次側から供給される水と泡消火薬剤を一定比率で混合した泡水溶液と、空気吸引孔を介して吸い込んだ空気とを混合する本体部と、本体部で混合された泡水溶液と空気を通過させる金網部とを備え、金網部を通過することで放射された泡により消火を行う泡ヘッドであって、金網部は、泡を通過させる方向において、第1の金網部と第2の金網部とが積層された二層構造を有しており、第1の金網部と第2の金網部との積層面における相対位置を変更可能な金網移動機構を有するものである。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、発泡倍率を変更することができる泡ヘッドを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の実施の形態1に係る泡ヘッドの詳細構成図である。
図2】本開示の実施の形態1に係る泡ヘッドの金網部で使用される第1の金網部と第2の金網部を示した第1の説明図である。
図3】本開示の実施の形態1において、第1の金網部に対して第2の金網部を積層面において回転させて互いの相対位置を変更することで、泡が通過する網目形状が変わる状態を示した説明図である。
図4】本開示の実施の形態1において、パターンP1を有する第1の金網部に対して、同じパターンP1を有する第2の金網部を積層面において上下左右にシフトさせて互いの相対位置を変更することで、泡が通過する網目形状が変わる状態を示した説明図である。
図5】本開示の実施の形態1に係る泡ヘッドの金網部で使用される第1の金網部と第2の金網部を示した第2の説明図である。
図6】本開示の実施の形態1において、パターンP1を有する第1の金網部に対して、P1とは異なるパターンP2を有する第2の金網部を積層面において回転させて互いの相対位置を変更することで、泡が通過する網目形状が変わる状態を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の泡ヘッドの好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
本開示に係る泡ヘッドは、金網部を、泡を通過させる方向において第1の金網部と第2の金網部とが積層された二層構造にするとともに、第1の金網部と第2の金網部との積層面における相対位置を変更可能な金網移動機構を有することを技術的特徴とするものである。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1に係る泡ヘッドの詳細構成図である。泡ヘッド10は、一次側より供給される泡水溶液を発泡させて防火対象物に向けて放出する。本実施の形態1に係る泡ヘッド10は、本体部11および金網部12で構成されている。
【0015】
本体部11は、空気を吸い込むための空気吸引孔11aを有している。本体部11の一次側には、水と泡消火薬剤を一定比率で混合した泡水溶液が供給される。そして、本体部11は、一次側に供給された泡水溶液と、空気吸引孔11aを介して吸い込んだ空気とを混合させる。
【0016】
金網部12は、本体部11で混合された泡水溶液と空気を通過させ、発泡させて防火対象物に向けて放射する。この結果、金網部12を通過することで放射された泡による消火が行われる。
【0017】
泡消火薬剤としては、たん泊泡消火薬剤、合成界面活性剤泡消火薬剤、水成膜泡消火薬剤などが用いられる。泡ヘッド10は、それぞれの泡消火薬剤に適合するように個別の泡ヘッド10が選定されるのが一般的である。
【0018】
通常、発泡倍率は、防火対象物の特性に応じて選定され、泡消火薬剤の種類、混合比率などを考慮して設計される値である。ここで、本実施の形態1に係る泡ヘッド10は、発泡倍率を容易に変更することができる構成を備えている。
【0019】
具体的には、本実施の形態1に係る泡ヘッド10では、金網部12を、泡を通過させる方向において第1の金網部121と第2の金網部122とが積層された二層構造にするとともに、第1の金網部121と第2の金網部122との積層面における相対位置を変更可能な金網移動機構を有することを技術的特徴としている。そこで、この技術的特徴について、図2図6を用いて詳細に説明する。
【0020】
図2は、本開示の実施の形態1に係る金網部12で使用される第1の金網部121と第2の金網部122を示した第1の説明図である。図2(A)は、第1の金網部121が網目形状としてパターンP1を有している場合を例示している。
【0021】
また、図2(B)は、第2の金網部122が網目形状としてパターンP1を有している場合を例示している。すなわち、図2では、第1の金網部121と第2の金網部122の網目形状が、ともにパターンP1で同一形状となっている
【0022】
次に、図2に示した第1の金網部121と第2の金網部122に関して、積層面における相対位置をずらすことで、網目形状を変化させることができることを図3および図4を用いて説明する。
【0023】
図3は、本開示の実施の形態1において、第1の金網部121に対して第2の金網部122を積層面において回転させて互いの相対位置を変更することで、泡が通過する網目形状が変わる状態を示した説明図である。
【0024】
具体的には、図3では、第1の金網部121と第2の金網部122に共通の中心を回転中心として、第1の金網部121に対して第2の金網部122を時計方向に5°、10°、15°、30°、45°の5通りで回転させた状態を、図3(A)~図3(E)として表している。
【0025】
金網移動機構として、第2の金網部122を積層面において回転方向にスライド移動させることができる機構を用いることで、図3(A)~図3(E)に示したような第1の金網部121と第2の金網部122の相対位置関係を実現できる。このように相対位置を変更することで、個々の網目形状は同一ではないが、泡が通過する網目形状を、回転させる前の状態よりも小さくする方向に変更することができる。
【0026】
また、図4は、本開示の実施の形態1において、パターンP1を有する第1の金網部121に対して、同じパターンP1を有する第2の金網部122を積層面において上下左右にシフトさせて互いの相対位置を変更することで、泡が通過する網目形状が変わる状態を示した説明図である。
【0027】
具体的には、図4では、第1の金網部121に対して第2の金網部122を積層面において、上下左右方向にシフトさせた状態を図4(A)として表し、左右方向にのみシフトさせた状態を図4(B)として表している。
【0028】
金網移動機構として、第2の金網部122を積層面において上下左右方向にスライド移動させることができる機構を用いることで、図4(A)、図4(B)に示したような第1の金網部121と第2の金網部122の相対位置関係を実現できる。
【0029】
例えば、第1の金網部121および第2の金網部122がともに一辺がaの正方形であるとすると、第1の金網部121に対して第2の金網部122を、積層面において、a/2だけ左右方向にシフトさせ、a/2だけ上下方向にシフトさせれば、図4(A)に示したように、網目形状を一辺がa/2の正方形に変更することができ、泡が通過する面積を1/4にすることができる。
【0030】
また、第1の金網部121に対して第2の金網部122を、積層面において、a/2だけ左右方向にシフトさせれば、図4(B)に示したように、網目形状をa×a/2の長方形に変更することができ、泡が通過する面積を1/2にすることができる。
【0031】
次に、図5は、本開示の実施の形態1に係る金網部12で使用される第1の金網部121と第2の金網部122を示した第2の説明図である。図5(A)は、第1の金網部121が網目形状としてパターンP1を有している場合を例示しており、先の図2(A)と同じである。
【0032】
一方、図5(B)は、第2の金網部122が網目形状として、パターンP1とは異なるパターンP2を有している場合を例示している。すなわち、図5では、第1の金網部121と第2の金網部122の網目形状が異なる形状となっている
【0033】
次に、図5に示した第1の金網部121と第2の金網部122に関して、積層面における相対位置をずらすことで、網目形状を変化させることができることを、図6を用いて説明する。
【0034】
図6は、本開示の実施の形態1において、パターンP1を有する第1の金網部121に対して、P1とは異なるパターンP2を有する第2の金網部122を積層面において回転させて互いの相対位置を変更することで、泡が通過する網目形状が変わる状態を示した説明図である。
【0035】
具体的には、図6では、第1の金網部121と第2の金網部122に共通の中心を回転中心として、第1の金網部121に対して第2の金網部122を時計方向に5°、10°、15°、30°、45°の5通りで回転させた状態を、図6(A)~図6(E)として表している。
【0036】
金網移動機構として、第2の金網部122を積層面において回転方向にスライド移動させることができる機構を用いることで、図6(A)~図6(E)に示したような第1の金網部121と第2の金網部122の相対位置関係を実現できる。このように相対位置を変更することで、個々の網目形状は同一ではないが、泡が通過する網目形状を、回転させる前の状態よりも小さくする方向に変更することができる。
【0037】
なお、図示は省略するが、パターンP1を有する第1の金網部121に対して、パターンP2を有する第2の金網部122を、積層面において、a/2だけ左右方向にシフトさせれば、先の図4(B)に示したように、網目形状をa×a/2の長方形に変更することができ、泡が通過する面積を1/2にすることができる。
【0038】
また、先の図1に示した金網部12は、下に凸となる立体形状を有している。このような形状においては、スライド移動させる第2の金網部122を、下に凸となる立体形状の底面部分とするように形成することも可能である。
【0039】
すなわち、第2の金網部122は、第1の金網部121の一部に対して部分的にラップし、かつスライド移動できるような機構を備えることで、部分的にラップした領域における網目形状を、スライド移動させる前の状態よりも小さくする方向に変更することができる。
【0040】
以上のように、実施の形態1によれば、金網部を、泡を通過させる方向において第1の金網部と第2の金網部とが積層された二層構造にするとともに、第1の金網部と第2の金網部との積層面における相対位置を変更可能な金網移動機構を持たせている。
【0041】
この結果、2枚の金網部の相対位置を変更することで、泡が金網部を通過する際の網目形状を容易に変更することができる。従って、発泡倍率を容易に変更することができる泡ヘッドを実現できる。
【0042】
このような構成を備えることで、防火対象物に応じて、あるいは使用する泡消火薬剤が変更になった場合などにも、泡ヘッドを交換せずに網目形状を変更して、消火作業を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0043】
10 泡ヘッド、11 本体部、11a 空気吸引孔、12 金網部、121 第1の金網部、122 第2の金網部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6