(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131963
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/24 20060101AFI20240920BHJP
E02F 9/16 20060101ALI20240920BHJP
B60R 3/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
E02F9/24 A
E02F9/16 G
B60R3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042561
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶本 健
【テーマコード(参考)】
2D015
3D022
【Fターム(参考)】
2D015EA02
2D015GA01
2D015GB06
3D022AA01
3D022AB10
3D022AC07
3D022AD01
(57)【要約】
【課題】安全性を高めつつ、軽量化及び小型化を実現するとともに、緊急脱出時に発生するロスタイムを削減可能な緊急脱出装置を備えた作業機械を提供する。
【解決手段】作業機械の緊急脱出装置(1)は、プラットホーム(14)から下方に延設されるラダー(20)と、ラダー(20)に沿ったオペレータの脱出路(26)を囲うようにプラットホーム(14)に設けられたケージ(22)と、プラットホーム(14)に設けられ、オペレータのプラットホーム(14)からの脱出路(26)への侵入口(27)を閉鎖する閉位置と、閉位置からプラットホーム(14)の外側に向けて回動して進入口(27)を開放する開位置と、に移行可能な構成を有するゲート(24)とを備え、ゲート(24)は、開位置においてケージ(22)の一部を構成する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、前記機体に設置されオペレータが歩行する通路をなすプラットホームと、前記プラットホームに設置され前記機体から地上にオペレータが脱出するための脱出路を形成する緊急脱出装置と、を備えた作業機械であって、
前記緊急脱出装置は、
前記プラットホームから下方に延設されるラダーと、
前記ラダーに沿った前記オペレータの前記脱出路を囲うように前記プラットホームに設けられたケージと、
前記プラットホームに設けられ、前記オペレータの前記プラットホームから前記脱出路への進入口を閉鎖する閉位置と、前記閉位置から前記プラットホームの外側に向けて回動して前記進入口を開放する開位置と、に移行可能な構成を有するゲートと、
を備え、
前記ゲートは、前記開位置において前記ケージの一部を構成する、ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
前記プラットホームと地上との間の前記脱出路に設けられた中間ステップを備え、
前記ラダーは、
前記プラットホームと前記中間ステップとの間に設けられ、前記脱出路のうち前記プラットホームから前記中間ステップまでの上側脱出路を構成する上側ラダーと、
一端が前記中間ステップに支持されるとともに、他端が前記プラットホームに支持される格納位置と、前記他端が地上に向けて展開される展開位置と、に移行可能な構成を有し、前記展開位置において前記脱出路のうち前記中間ステップから地上までの下側脱出路を構成する下側ラダーと、
から構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記プラットホームに設けられ、前記格納位置で前記下側ラダーを係止するラダー係止機構を備える、ことを特徴とする請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記ケージに設けられ、前記閉位置で前記ゲートを係止するゲート係止機構を備える、ことを特徴とする請求項3に記載の作業機械。
【請求項5】
前記ラダー係止機構は、前記ゲート係止機構と連動し、前記下側ラダーの係止が解除されて前記下側ラダーが展開されたとき、前記ゲートの係止も解除されて前記ゲートの開放が可能となる、ことを特徴とする請求項4に記載の作業機械。
【請求項6】
前記格納位置において前記ラダー係止機構によって係止された前記ラダーは、前記閉位置の前記ゲートの開放動作を規制することで、前記ゲート係止機構を構成する、ことを特徴とする請求項4に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関し、特に、非常時にオペレータがキャブから脱出するための緊急脱出装置を備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、火災等の非常時にオペレータがキャブから脱出するための緊急脱出装置を備えた作業機械が開示されている。キャブの下部には側方に張り出すようにフェンダが設けられ、フェンダの縁部には手摺りが設けられる。この緊急脱出装置は、フェンダに連結される固定部と、一端が固定部に回動可能に連結される回動部とを有する。回動部の他端は、手摺りに着脱可能に連結される。回動部は、通常状態において手摺りの一部として機能する。緊急状態において回動部と手摺りとの連結を回動動作により解除することにより、回動部は、オペレータがフェンダから地上に降りるためのラダーとして機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、より一層安全性を高めた緊急脱出装置が開発されている。例えば、手摺りで囲われたプラットホームにキャブを設置し、プラットホームの側方に張り出した上側ステップを形成し、上側ステップから下方にラダーが延設される。また、ラダーの周囲をケージで囲い、さらに、上側ステップにはゲートが設けられる。このような構造により、機体からのオペレータの落下をより一層効果的に防止することができる。
【0005】
しかしながら、安全性を高めた前述したような緊急脱出装置は、構造が複雑になるとともに重量が嵩み、さらに大型になるため、作業機械の稼働時において周辺の土砂に接触するリスクが増大する。従って、緊急脱出装置の軽量化及び小型化を図ることが求められている。また、緊急脱出時に発生するロスタイム削減についても配慮が必要である。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、安全性を高めつつ、軽量化及び小型化を実現するとともに、緊急脱出時に発生するロスタイムを削減可能な緊急脱出装置を備えた作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するべく、本発明の作業機械は、機体と、機体に設置されオペレータが歩行する通路をなすプラットホームと、プラットホームに設置され機体から地上にオペレータが脱出するための脱出路を形成する緊急脱出装置と、を備えた作業機械であって、緊急脱出装置は、プラットホームから下方に延設されるラダーと、ラダーに沿ったオペレータの脱出路を囲うようにプラットホームに設けられたケージと、プラットホームに設けられ、オペレータのプラットホームから脱出路への進入口を閉鎖する閉位置と、閉位置からプラットホームの外側に向けて回動して進入口を開放する開位置と、に移行可能な構成を有するゲートと、を備え、ゲートは、開位置においてケージの一部を構成する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、安全性を高めつつ、軽量化及び小型化を実現するとともに、緊急脱出時に発生するロスタイムを削減可能な緊急脱出装置を備えた作業機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】下側ラダーを展開位置としたときの緊急脱出装置の斜視図である。
【
図6】下側ラダーを展開位置としたときの緊急脱出装置の側面図である。
【
図7】下側ラダーを展開位置としたときの緊急脱出装置の上面図である。
【
図8】緊急脱出装置において閉位置のゲートの近傍を拡大した斜視図である。
【
図9】緊急脱出装置において開位置のゲートの近傍を拡大した斜視図である。
【
図10】従来の緊急脱出装置においてゲートの近傍を拡大した斜視図である。
【
図11】従来の緊急脱出装置におけるオペレータの動きを示した上面図である。
【
図12】本実施形態の緊急脱出装置におけるオペレータの動きを示した上面図である。
【
図13】
図8において係止機構が下側ラダー及びゲートを係止している状態を示す斜視図である。
【
図14】
図9において係止機構による下側ラダー及びゲートの係止を解除した状態を示す斜視図である。
【
図15】変形例に係る緊急脱出装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係る作業機械について図面を参照して説明する。
図1は、作業機械の概略的な側面図を示す。
図1は、作業機械の一例として、緊急脱出装置1を備えた大型の油圧ショベルを簡易的に示している。油圧ショベルの機体2は、自走可能なクローラ式の下部走行体4と、下部走行体4の上に旋回可能に搭載される上部旋回体6とから構成されている。上部旋回体6の前部には、土砂の掘削作業等を行うための作業装置8が取付けられている。
【0011】
作業装置8は、上部旋回体6の旋回によって左右に揺動し、上下方向に俯仰動可能に構成されている。上部旋回体6は、下部走行体4に対して旋回可能に構成され、上部旋回体6の前側の上部には、オペレータが搭乗するキャブ(運転室)10が設置されている。キャブ10は、地上から高低差のある高さ位置に設けられている。オペレータは、通常は例えば格納式の階段(図示せず)を経て地上とキャブ10との間を移動する。一方、火災等の非常時には、オペレータは、緊急脱出装置1を通過して機体2(例えばキャブ10)から地上に脱出する。
【0012】
なお、オペレータが通常使用する当該格納階段は、地面に対する移動経路(通路)の傾斜角度が45°以下になるように構成されている。また、当該格納階段は、地上から展開操作を行うことが可能であり、機体2(後述するプラットホーム14)側から展開操作及び格納操作を行うことが可能なように構成されている。
【0013】
一方、本実施形態においては、緊急脱出装置1は、地面に対する角度が45°よりも大きい角度(45°~90°)で傾斜した脱出路(通路)26を有するように形成されている。また、本実施形態においては、緊急脱出装置1は、機体2(後述するプラットホーム14)からの展開操作が可能な構成を有しており、地上からは展開操作が可能な構成を有していない。
【0014】
図2は緊急脱出装置1の斜視図、
図3は緊急脱出装置1の側面図、
図4は緊急脱出装置1の上面図をそれぞれ示す。キャブ10は、手摺り12で囲われたプラットホーム14に設置されている。プラットホーム14は、機体2に設置され、オペレータが歩行する通路が形成される。
図2から
図4はプラットホーム14にオペレータが立った状態におけるキャブ10の周辺を示している。緊急脱出装置1は、キャブ10の近傍に設けられ、キャブ10に搭乗しているオペレータが短時間で地上まで移動する(機体2から脱出する)ための緊急用の脱出路を形成する。本実施形態においては、緊急脱出装置1は、上側ステップ16、下側ステップ(中間ステップ)18、ラダー20、ケージ22、及びゲート24を備えている。
【0015】
上側ステップ16は、プラットホーム14と同一高さに連なって形成され、プラットホーム14の一部を構成する。具体的には、上側ステップ16は、
図4に示すように上面視L字状に形成され、プラットホーム14から機体2の側方に張り出した張り出し部16aを有する。下側ステップ18は、上側ステップ16と地上との間の脱出路26に設けられ、機体2の上部旋回体6の側面から張り出して形成される。
【0016】
詳しくは、ラダー20は、プラットホーム14から、より具体的には上側ステップ16から下方に延設され、上側ラダー20aと下側ラダー20bとから構成されている。上側ラダー20aは、プラットホーム14と下側ステップ18との間に設けられ、脱出路26のうちプラットホーム14から下側ステップ18までの上側脱出路26a(
図5,
図6参照)を構成する。下側ラダー20bは、
図2から
図4に示す格納位置と、後述の
図5から
図7に示す展開位置とに移行可能な構成を有する。
【0017】
図2から
図4に示すように、下側ラダー20bは、格納位置において、一端が下側ステップ18に支持されるとともに、他端がプラットホーム14に支持される。具体的には、下側ラダー20bは、格納位置において折り畳まれ、上端が張り出し部16aに後述するラダー係止機構34を介して係止される。また、下側ラダー20bは、展開位置において、他端が地上に向けて展開され、脱出路26のうち下側ステップ18から地上までの下側脱出路26b(
図5,
図6参照)を構成する。
【0018】
ケージ22は、ラダー20に沿ったオペレータの脱出路26を囲うようにプラットホーム14に設けられている。具体的には、ケージ22は、上側ラダー20aの上側及び周囲に形成される脱出路26を囲う位置に配置され、風に煽られる等して体勢を崩したオペレータが上側ラダー20aから落下することを防止する。
【0019】
ゲート24は、プラットホーム14に設けられ、オペレータのプラットホーム14から脱出路26への進入口27を閉鎖する
図2から
図4に示す閉位置と、閉位置からプラットホーム14の外側に向けて回動して進入口27を開放する後述の
図5から
図7に示す開位置と、に移行可能な構成を有する。具体的には、ゲート24は、閉位置において、ケージ22に後述するケージ係止機構44を介して係止される。
【0020】
上側ステップ16には手摺り28が設置され、手摺り28は、閉位置のゲート24と、プラットホーム14の手摺り12との間に位置している。手摺り12、28及び閉位置のゲート24は、プラットホーム14及び上側ステップ16からオペレータが落下することを防止し、ゲート24は、オペレータが上側ステップ16から脱出路26に移動する際に開位置に開放される。
【0021】
図5は下側ラダー20bを展開位置としたときの緊急脱出装置1の斜視図、
図6は下側ラダー20bを展開位置としたときの緊急脱出装置1の側面図、
図7は下側ラダー20bを展開位置としたときの緊急脱出装置1の上面図をそれぞれ示す。オペレータは、キャブ10から脱出する際、上側ステップ16に立って張り出し部16aに対する下側ラダー20bの係止をラダー係止機構34において解除し、下側ラダー20bを
図5に示す矢印方向に展開する。
【0022】
加えて、オペレータは、ケージ22に対するゲート24の係止をゲート係止機構44において解除し、ゲート24を開放して脱出路26に移動する。そして、オペレータは、上側ラダー20aを下降した後、下側ステップ18に降り立ち、さらに、下側ラダー20bを下降して地上に脱出する。
【0023】
図8は緊急脱出装置1において閉位置のゲート24の近傍を拡大した斜視図を示し、
図9は緊急脱出装置1において開位置のゲート24の近傍を拡大した斜視図を示す。
図8及び
図9に示すように、ゲート24は、脱出路26に向けて開く外開き式であり、開位置においてケージ22の一部を構成する。詳しくは、ケージ22は、複数の小幅の長板を格子状に交差させて接合することにより形成され、湾曲部22aと平坦部22bとにより脱出路26の一部を区画する。
【0024】
湾曲部22aは、閉位置のゲート24と対向して位置付けられ、平坦部22bは、湾曲部22aに連なるとともに、開閉されるゲート24に近接して位置付けられる。ゲート24は、手摺り28の近傍において上側ステップ16に開閉可能に支持される。
図9に矢印で示すように、ゲート24を上側ステップ16の張り出し部16aに近づける方向に開放することにより、開位置のゲート24が平坦部22bと対向して位置付けられる。これにより、ゲート24と湾曲部22a及び平坦部22bとによって、上側ラダー20aの上側及び周囲において脱出路26が区画される。
【0025】
図10は、従来の緊急脱出装置30においてゲート32の近傍を拡大した斜視図を示す。従来のゲート32は、
図10に実線で示す閉位置から、上側ステップ16のキャブ10側に向けて矢印方向に手摺り28に重ねるようにして開くことにより、破線で示す開位置となる。すなわち、従来のゲート32は、本実施形態のゲート24と異なり内開き式である。また、ケージ22は、平坦部22bと対向する平坦部22cを有し、湾曲部22aと各平坦部22b、22cとにより、ゲート32の開閉に拘わらず脱出路26が区画される。すなわち、ゲート32は、開位置においてケージ22の一部を構成しない。
【0026】
図11は、従来の緊急脱出装置30におけるオペレータの動きを上面図で示す。従来のゲート32は、内開き式であるため、
図11に実線で示す矢印方向に開放される。従って、ゲート32の回動軌跡を考慮すると、ケージ22とキャブ10との間の機体2の車幅方向における上側ステップ16の通路の幅Wは、ゲート32がキャブ10に接触しないで開放可能な寸法を確保する必要がある。
【0027】
また、緊急脱出装置30の機体2の前後方向における幅W1は、ゲート32がプラットホーム14の手摺り12に接触しないで開放可能な寸法を確保する必要がある。従って、幅W、W1を確保するために、上側ステップ16の面積が大きくならざるを得ない。また、ケージ22は、平坦部22bと対向する平坦部22cを有し、ゲート32は、開位置においてケージ22の一部を構成しない。さらに、オペレータは、ゲート32を開放する際、上側ステップ16から
図11に破線で示す矢印方向に移動してプラットホーム14に一旦退避する必要がある。従って、従来の場合は緊急脱出時にロスタイムが発生する。
【0028】
図12は、本実施形態の緊急脱出装置1におけるオペレータの動きを上面図で示す。本実施形態のゲート24は、外開き式であるため、
図12に実線で示す矢印方向に開放される。従って、前述した幅W、W1は、
図11の場合に比して小さくて済むため、上側ステップ16の面積を低減することができる。また、ゲート32は、開位置において
図11に示した平坦部22cに位置付けられてケージ22の一部を構成し、ケージ22は平坦部22cが不要となる分だけ
図11の場合に比して軽量となる。
【0029】
また、本実施形態のゲート24は外開き式であるため、オペレータは、
図12に示すように、上側ステップ16に立ったままでゲート24を開放可能である。これにより、ゲート32を開放する際、オペレータは、上側ステップ16からプラットホーム14に退避する必要はない。従って、オペレータは、緊急脱出時にロスタイムなく迅速にキャブ10から地上に脱出することができる。
【0030】
図13は、
図8において、下側ラダー20b及びゲート24が係止された状態の斜視図を示す。プラットホーム14の上側ステップ16の張り出し部16aには、格納位置の下側ラダー20bを展開可能に係止するラダー係止機構34が設置されている。ラダー係止機構34は、例えば、揺動板36と、揺動板36の長手方向中央を支持する支持部38とから構成される。支持部38は張り出し部16aに固定され、揺動板36の長手方向における両端は、支持部38を中心として上下に揺動可能である。
【0031】
揺動板36のキャブ10側の一端にはペダル部40が形成され、揺動板36の他端には格納位置の下側ラダー20bに係止される鉤状のロック部42が形成されている。また、ケージ22には、閉位置のゲート24を開放可能に係止するゲート係止機構44が設置されている。ゲート係止機構44は、例えば、ケージ22に取り付けられ、自動車のドアロックに用いられるような折曲可能なラッチ46から構成される。
【0032】
図13に示す状態においては、支持部38を支点として、ペダル部40が上側に移動するとともに、ロック部42が下側に移動する方向に揺動板36が傾斜している。これにより、ロック部42が下側ラダー20bに引っ掛かって係止され、下側ラダー20bが格納位置で保持される。また、ラッチ46がゲート24に接触することにより、ゲート24が閉位置で保持される。
【0033】
図14は、
図13において、下側ラダー20b及びゲート24の係止が解除された状態を示す。オペレータがペダル部40を踏み込むことにより、ロック部42が上側に移動する方向に揺動板36が傾斜し、ロック部42に対する下側ラダー20bの係止が解除され、下側ラダー20bが展開される。また、オペレータがラッチ46を折り曲げることにより、ラッチ46に保持されていたゲート24の係止が解除され、ゲート24が開放される。
【0034】
以上のように本実施形態の作業機械は、前述したラダー20、ケージ22、及びゲート24を有する緊急脱出装置1を備え、ゲート24は開位置においてケージ22の一部を構成する。これにより、ゲート24が外開き式となり、プラットホーム14の脱出路26に連なるスペース、すなわち上側ステップ16の面積を低減することができるとともに、ケージ22を軽量化することができる。従って、緊急脱出装置1の安全性を高めつつ、緊急脱出装置1の軽量化及び小型化を実現することができる。
【0035】
また、ゲート24は開位置においてケージ22の一部を構成することにより、オペレータは、上側ステップ16に立ったままでゲート24を開放可能であり、ゲート24を開放する際、上側ステップ16からプラットホーム14に退避する必要はない。従って、緊急脱出時に発生するロスタイムを削減することができる。
【0036】
より詳しくは、緊急脱出装置1は、上側ステップ16と地上との間の脱出路26に下側ステップ18を備えている。また、ラダー20は、上側脱出路26aを構成する上側ラダー20aと、格納位置と展開位置とに移行可能であって下側脱出路26bを構成する下側ラダー20bとから構成される。さらに、緊急脱出装置1は、格納位置の下側ラダー20bを係止するラダー係止機構34を備える。
【0037】
これにより、格納位置の下側ラダー20bが不用意に展開しないように安全に保持することができるとともに、緊急脱出時に下側ラダー20bを迅速且つ容易に展開することができる。また、緊急脱出装置1は、閉位置のゲート24を開放可能に係止するゲート係止機構44を備える。これにより、閉位置のゲート24が不用意に開放しないように安全に保持することができるとともに、緊急脱出時にゲート24を迅速且つ容易に開放することができる。
【0038】
以上で本発明の一実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。例えば、緊急脱出装置1は前述した形態に限定されるものではなく、上側ラダー20aは、オペレータが下降可能な範囲で、上側ステップ16側から下方に延設されていれば良い。
【0039】
具体的には、上記実施形態のように上側ステップ16から下側ステップ18に直接掛け渡されない場合もあり得る。例えば、
図15に示すように、上側ラダー20aは、上側ステップ16と離間するとともに、オペレータが機体2の後方を向いて下降する向きに設置されていても良い。また、キャブ10から地上までの高低差が比較的小さい作業機械の場合、下側ステップ18を設けず、上側ラダー20aのみで構成されたラダー20で地上に脱出する構造の緊急脱出装置1であっても良い。
【0040】
また、ラダー係止機構34及びゲート係止機構44は、前述した形態に限定されない。例えば、ラダー係止機構34とゲート係止機構44とをリンク部材やワイヤなどで接続し、ラダー係止機構34がゲート係止機構44と連動するようにしても良い。この場合、下側ラダー20bの係止が解除されて下側ラダー20bが展開されたとき、ゲート24の係止も解除されてゲート24を開放することができる。
【0041】
また、ラダー係止機構34をゲート係止機構44として作動させても良く、ラダー係止機構34をゲート係止機構44として併用する機構を実現することもできる。例えば、格納位置においてラダー係止機構34によって係止された下側ラダー20bは、閉位置のゲート24を押さえ付けてその開放動作を規制することもできる。このようなラダー係止機構34及びゲート係止機構44の連動や併用を行うことにより、緊急脱出装置1の軽量化及び小型化をさらに促進することができる。
【0042】
また、ラダー係止機構34及びゲート係止機構44に、スプリング、ガスシリンダ、或いは電動シリンダなどを用いて、下側ラダー20bの格納位置及び展開位置や、ゲート24の開位置及び閉位置を強制的に保持しても良い。さらに、本発明は、キャブ10から地上までの高低差が大きな大型の作業機械であれば、前述した油圧ショベルに限らず、鉱山等で使用されるローブショベル、ドラッグライン、ダンプトラック、ホイールローダ等の種々の作業機械に適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 緊急脱出装置
2 機体
14 プラットホーム
18 下側ステップ(中間ステップ)
20 ラダー
20a 上側ラダー
20b 下側ラダー
22 ケージ
24 ゲート
26 脱出路
26a 上側脱出路
26b 下側脱出路
27 進入口
34 ラダー係止機構
44 ゲート係止機構