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  • 特開-泡原液槽 図1
  • 特開-泡原液槽 図2
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  • 特開-泡原液槽 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131965
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】泡原液槽
(51)【国際特許分類】
   A62C 5/02 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
A62C5/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042567
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 恵理子
(57)【要約】
【課題】巨大な円筒形状を有するダイヤフラムの代替品として、内部の泡消火薬剤を均一に加圧することが可能な収納容器を使用した泡原液槽を得る。
【解決手段】泡消火薬剤が貯蔵された収納容器が収納されており、収納容器の周囲を覆うように加圧水が導入される泡原液槽であって、収納容器は、チューブから形成された第1形状、または、パック状の袋を並列接続あるいは直並列接続して形成された第2形状を有するように形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
泡消火薬剤が貯蔵された収納容器が収納されており、前記収納容器の周囲を覆うように加圧水が導入される泡原液槽であって、
前記収納容器は、チューブから形成された第1形状、または、パック状の袋を並列接続あるいは直並列接続して形成された第2形状を有するように形成されている
泡原液槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、泡を放射して消火を行う泡消火設備で使用され、泡消火薬剤を貯蔵するための泡原液槽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
泡ヘッド、泡ノズルなどから泡を放射し、燃焼表面を泡で被覆することによる窒息作用と、泡に含まれる水分による冷却作用等により火災を消火する種々の泡消火設備がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
非特許文献1に開示された種々の泡消火設備では、水と泡消火薬剤を一定比率で混合した水溶液と空気を混合して泡を生成している。プレッシャー・プロポーショナー方式を用いる泡消火設備では、泡を生成する泡消火薬剤をダイヤフラム内に貯蔵して収納する泡原液槽が用いられている(例えば、非特許文献2参照)。
【0004】
ダイヤフラムを用いることで、保管時に泡消火薬剤を水と空気から遮断することができる。この結果、泡消火薬剤の劣化を防止し、泡消火薬剤の長期保存を可能としている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】能美防災 ホームページ、泡系消火設備(https://www.nohmi.co.jp/product/fef/006.html )
【非特許文献2】能美防災 ホームページ、MTD034A~094A型泡原液槽ガイドブック(https://www.nohmi.co.jp/shoka01/010/rqim340000000yqq-att/TN20319R0.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
泡消火設備に用いられるダイヤフラムは、巨大な円筒形状のゴム製の袋として成形されている。ダイヤフラムを円筒形状としている1つの理由としては、泡原液槽とダイヤフラムとの間を満たす水でダイヤフラムを均一に加圧することが挙げられる。
【0007】
しかしながら、巨大な円筒形状を有するダイヤフラムは、特殊な技術によって製造されており、製造コストがかかってしまうのが現状である。
【0008】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、巨大な円筒形状を有するダイヤフラムの代替品として、内部の泡消火薬剤を均一に加圧することが可能な収納容器を使用した泡原液槽を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る泡原液槽は、泡消火薬剤が貯蔵された収納容器が収納されており、収納容器の周囲を覆うように加圧水が導入される泡原液槽であって、収納容器は、チューブから形成された第1形状、または、パック状の袋を並列接続あるいは直並列接続して形成された第2形状を有するように形成されているものである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、巨大な円筒形状を有するダイヤフラムの代替品として、内部の泡消火薬剤を均一に加圧することが可能な収納容器を使用した泡原液槽を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施の形態1に係る泡原液槽で使用される収納容器を、第1形状を有する収納容器として形成した状態を示した説明図である。
図2】本開示の実施の形態1に係る泡原液槽で使用される収納容器を、第2形状を有する収納容器として形成した状態を示した説明図である。
図3】泡を生成する泡消火薬剤をダイヤフラム内に貯蔵して収納する泡原液槽を含む、一般的なプレッシャー・プロポーショナー方式を用いた泡消火設備の全体構成を示した説明図である。
図4図3に示した泡消火設備を火災時に動作させる際の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の泡原液槽の好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
本開示に係る泡原液槽は、同一径を有するチューブから形成された第1形状、または、パック状の袋を並列接続あるいは直並列接続して形成された第2形状を有する収納容器を、従来のダイヤフラムの代替品として使用することで、泡消火薬剤を水と空気から遮断することができるとともに、内部の泡消火薬剤を均一に加圧することができる構成を、汎用性のある素材により実現した点に技術的特徴を有するものである。
【0013】
実施の形態1.
まず初めに、ダイヤフラムを用いた泡原液槽について、図3および図4を用いて説明する。図3は、泡を生成する泡消火薬剤をダイヤフラム内に貯蔵して収納する泡原液槽を含む、一般的なプレッシャー・プロポーショナー方式を用いた泡消火設備の全体構成を示した説明図である。
【0014】
常時、泡原液槽10に収納されたダイヤフラム20内には、泡消火薬剤21が貯蔵されている。ダイヤフラム20内の泡消火薬剤21の貯蔵圧力P2は、逃がし弁により給水系統圧力P1より低い圧力に維持されている。ここで、泡消火薬剤21の貯蔵圧力P2は、下式(1)の関係を有するように調整されている。
給水系統P1>貯蔵圧力P2 (1)
【0015】
図4は、図3に示した泡消火設備を火災時に動作させる際の説明図である。火災時、加圧送水装置が起動すると、水が混合器(プロポーショナー)および給水弁V1に加圧給水される。
【0016】
給水弁V1に給水された加圧水は、泡原液槽10内に入り、ダイヤフラム20の外側と泡原液槽10の内側との隙間に充水される。充水された加圧水の水圧により、ダイヤフラム20が押し縮められ、ダイヤフラム20内の泡消火薬剤21が、混合器(プロポーショナー)に加圧送液される。
【0017】
混合器は、水および泡消火薬剤を規定の混合比で混合するものである。混合器により混合された泡消火薬剤21の水溶液は、加圧送水装置の送水圧力により、泡放出口などへ送液され、泡が放射され、防護対象物が泡により被覆されることで、消火が行われる。
【0018】
図3および図4に示したダイヤフラム20は、巨大な円筒形状のゴム製の袋として成形され、泡原液槽10とダイヤフラム20との間を満たす加圧水により、均一に加圧される。本実施の形態1では、このようなダイヤフラム20と同等の機能を発揮する収納容器を、ダイヤフラム20の代替品として使用している。そこで、本実施の形態1に係る収納容器の具体的な構成について、図1および図2を用いて詳細に説明する。
【0019】
図1は、本開示の実施の形態1に係る泡原液槽で使用される収納容器を、第1形状を有する収納容器31として形成した状態を示した説明図である。図1に示した収納容器31は、同一径を有するチューブがとぐろ状に巻かれて形成された第1形状を有している。
【0020】
泡原液槽10には、泡消火薬剤21が貯蔵された収納容器31と、収納容器31の周囲を覆うように満たされた加圧水とが収納されている。
【0021】
チューブ自体は、均一の径を有する形状として容易に形成でき、巨大な円筒形状のゴム製の袋としてのダイヤフラム20よりも容易に製造することができる。さらに、均一の径を有するこのような第1形状であれば、チューブの硬さが適切となる素材、径を選定することで、チューブに対して加圧水により均一に圧力を加えることも可能である。
【0022】
なお、チューブは、均一の径を有する形状とすることが必須の条件ではない。均一の径を有していない形状のチューブを使用した場合であっても、泡原液槽10に収納された状態で、チューブの周囲を覆うように泡原液槽10内に導入された加圧水の加圧により泡消火薬剤21を放出できれば、ダイヤフラムの代替品として十分に機能する。
【0023】
従って、図1に示した第1形状を有する収納容器31を、巨大な円筒形状を有するダイヤフラムの代替品として使用することが可能となる。特に、チューブを採用することで、泡原液槽10の形状に合わせて第1形状を容易に形成することができる。
【0024】
なお、図示は省略するが、第1形状は、同一径を有する一本のチューブをとぐろ状として形成する代わりに、複数のチューブを並列に接続するように形成することも可能である。
【0025】
図2は、本開示の実施の形態1に係る泡原液槽で使用される収納容器を、第2形状を有する収納容器32として形成した状態を示した説明図である。図2に示した収納容器32は、パック状の袋を並列接続あるいは直並列接続して形成された第2形状を有している。
【0026】
泡原液槽10には、泡消火薬剤21が貯蔵された収納容器32と、収納容器32の周囲を覆うように満たされた加圧水とが収納されている。
【0027】
具体的には、図2(A)では、5個のパック状の袋32(1)~32(5)を並列接続することで、第2形状を有する収納容器32が形成された状態を示している。パック状の袋自体は、例えば、点滴、血液などの収納容器と同等の形状として容易に形成でき、巨大な円筒形状のゴム製の袋としてのダイヤフラム20よりも容易に製造することができる。
【0028】
さらに、パック状を有するこのような第2形状であれば、パックの硬さが適切となる素材、サイズを選定することで、パックに対して加圧水により均一に圧力を加えることも可能である。
【0029】
図2(B)に示すように、並列接続されるそれぞれのパック状の袋32(n)を、複数のパック状の袋を直列に接続することで形成することも可能である。なお、図2(B)では、並列接続されるパック状の袋32(n)を、直列接続された3つのパック状の袋32(n、1)~32(n、3)で形成する状態を例示している。
【0030】
従って、図2(A)および図2(B)に示した第2形状を有する収納容器32を、巨大な円筒形状を有するダイヤフラムの代替品として使用することが可能となる。
【0031】
以上のように、実施の形態1によれば、泡消火薬剤が貯蔵される収納容器として、同一径を有するチューブから形成された第1形状、または、パック状の袋を並列接続あるいは直並列接続して形成された第2形状を有するものを使用している。このような本実施の形態1に係る収納容器は、以下のような特徴を有する。
【0032】
特徴1:製造の容易化
第1形状あるいは第2形状を有する収納容器は、従来から使用している巨大な円筒形状を有するゴム製のダイヤフラムと比較して、容易に製造することが可能となる。
【0033】
特徴2:泡消火薬剤の貯蔵機能の実現
第1形状あるいは第2形状を有する収納容器によっても、泡消火薬剤を水と空気から遮断することができ、泡消火薬剤の劣化を防止し、泡消火薬剤の長期保存を可能とすることができる。さらに、泡原液槽内において、加圧水によって収納容器に貯蔵された泡消火薬剤を均一に加圧することが可能となる。
【0034】
このような特徴1、特徴2を兼ね備えることで、ダイヤフラムと同等の機能を発揮する収納容器を、より安価に容易に製造することが可能となる。特に、製造に特殊技術を要したダイヤフラムの代替品として、汎用性のある素材で容易に形成できる本実施の形態1に係る収納容器を有効活用することができる。
【0035】
なお、上述した実施の形態1では、同一径を有するチューブから形成された第1形状、または、パック状の袋を並列接続あるいは直並列接続して形成された第2形状を有するように収納容器を形成する場合について説明した。しかしながら、本開示に係る収納容器としては、特徴1および特徴2を兼ね備え、成型しやすく均一に加圧しやすい形状が実現できれば、第1形状、第2形状以外の構成を採用することも可能である。
【0036】
さらに、本開示に係る収納容器を適合することができれば、泡原液槽も、設置環境あるいは用途に合わせて、所望の大きさ、所望の形状とすることが可能となる。従って、泡消火薬剤の貯蔵方法、泡原液槽の設置スペースなどに関して選択肢を増やすことができ、新たな泡消火設備の開発において設計自由度を増やすことができる。
【符号の説明】
【0037】
10 泡原液槽、20 ダイヤフラム、21 泡消火薬剤、31、32 収納容器、32(1)~32(5)、32(1、1)~32(1、3) パック状の袋。
図1
図2
図3
図4