(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131970
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】誘導案内システム及び方法
(51)【国際特許分類】
B66B 3/00 20060101AFI20240920BHJP
B66B 13/14 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B66B3/00 L
B66B3/00 G
B66B3/00 F
B66B13/14 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042579
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホウ イコウ
(72)【発明者】
【氏名】吉村 卓馬
【テーマコード(参考)】
3F303
3F307
【Fターム(参考)】
3F303CB24
3F303CB31
3F303DB11
3F303DB26
3F303DC23
3F303DC25
3F307EA28
(57)【要約】 (修正有)
【課題】車椅子利用者がエレベータを利用する際のストレスを軽減し、エレベータのユーザビリティを向上させ得る誘導案内システム及び方法を提案する。
【解決手段】乗りかご内を撮影するカメラの撮影映像に基づいて、乗りかご内の各利用者が車椅子利用者及び一般利用者のいずれであるかをそれぞれ判定し、利用者が車椅子利用者である場合における当該車椅子利用者の当該乗りかごの内壁面からの距離を計測すると共に、当該車椅子利用者の向きを判定し、撮影映像の解析結果に基づいて、乗りかご内に車椅子利用者が存在するか否か、及び、車椅子利用者が存在する場合における当該車椅子利用者の乗りかご内の位置及び向きを判断し、車椅子利用者の位置及び向きの判断結果に基づいて、当該車椅子利用者を含む乗りかご内のイメージ映像31を生成し、生成したイメージ映像31を乗りかご内の表示装置5に表示させる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの乗りかご内において車椅子利用者を誘導案内する誘導案内装置であって、
前記乗りかご内に設置されたカメラの撮影映像を解析し、前記乗りかご内の各利用者が車椅子利用者及び一般利用者のいずれであるかをそれぞれ判定し、前記利用者が車椅子利用者である場合における当該車椅子利用者の当該乗りかごの内壁面からの距離を計測すると共に、当該車椅子利用者の向きを判定する映像解析部と、
前記映像解析部の解析結果に基づいて、前記乗りかご内に車椅子利用者が存在するか否か、及び、車椅子利用者が存在する場合における当該車椅子利用者の前記乗りかご内の位置及び向きを判断する判断部と、
前記判断部により判断された当該車椅子利用者の位置及び向きに基づいて、当該車椅子利用者の状態を含む前記乗りかご内のイメージ映像を生成する映像加工部と、
前記映像加工部により生成された前記イメージ映像を前記乗りかご内の表示装置に表示させる表示モジュール部と、
前記イメージ映像を前記表示装置に表示するよう前記表示モジュール部を制御する誘導制御部と
を備えることを特徴とする誘導案内システム。
【請求項2】
前記判断部は、
前記映像解析部により計測された車椅子利用者の前記乗りかごの内壁面からの距離が予め設定された閾値未満であるか否かを判断し、
前記誘導制御部は、
車椅子利用者の前記乗りかごの内壁面からの距離が予め設定された閾値未満であると前記判断部により判断された場合に、前記イメージ映像と共に所定の警告を前記表示装置に表示させるよう前記表示モジュール部を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の誘導案内システム。
【請求項3】
車椅子利用者の誘導案内を行うための所定の音声メッセージを、前記乗りかご内に設けられたスピーカから出力させる音声モジュール部をさらに備え、
前記誘導制御部は、
前記判断部が、前記乗りかご内に車椅子利用者が存在し、一般利用者が存在しないと判断した場合には、当該車椅子利用者に対する前記音声メッセージによる誘導案内を行うように前記音声モジュール部を制御し、
前記判断部が、前記乗りかご内に車椅子利用者及び一般利用者の双方が存在すると判断した場合には、当該車椅子利用者に対する前記音声メッセージによる誘導案内を行わない
ことを特徴とする請求項1に記載の誘導案内システム。
【請求項4】
前記乗りかごのドアの開閉を制御するエレベータ制御装置をさらに備え、
前記エレベータ制御装置は、
前記乗りかごに乗車し又は前記乗りかごから降車する利用者がいると前記判断部が判断した場合に、前記乗りかごのドアの戸開時間が通常の戸開時間よりも長くなるように当該ドアの開閉を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の誘導案内システム。
【請求項5】
前記乗りかごのドアの開閉を制御するエレベータ制御装置をさらに備え、
前記エレベータ制御装置は、
車椅子利用者が後ろ向きで前記乗りかごに乗降中であると前記判断部が判断した場合に、車椅子利用者が前向きで前記乗りかごに乗降するときよりも前記乗りかごのドアの戸開時間が長くなるように当該ドアの開閉を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の誘導案内システム。
【請求項6】
前記表示装置は、
情報を前記乗りかごの内壁面に投影するようにして表示するプロジェクタ装置であり、
前記プロジェクタ装置の投影方向を制御するプロジェクタ制御部を備え、
前記判断部は、
前記乗りかご内における車椅子利用者の向きを前記プロジェクタ制御部に通知し、
前記プロジェクタ制御部は、
前記判断部から通知された車椅子利用者の向きに応じて前記プロジェクタ装置が前記イメージ映像を投影すべき前記乗りかごの内壁面を決定し、決定した前記内壁面に前記イメージ映像を投影できるように前記プロジェクタ装置の向きを制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の誘導案内システム。
【請求項7】
エレベータの乗りかご内において車椅子利用者を誘導案内する誘導案内システムより実行される誘導案内方法であって、
前記乗りかご内を撮影するカメラの撮影映像に基づいて、前記乗りかご内の各利用者が車椅子利用者及び一般利用者のいずれであるかをそれぞれ判定し、前記利用者が車椅子利用者である場合における当該車椅子利用者の当該乗りかごの内壁面からの距離を計測すると共に、当該車椅子利用者の向きを判定する第1のステップと、
前記撮影映像の解析結果に基づいて、前記乗りかご内に車椅子利用者が存在するか否か、及び、車椅子利用者が存在する場合における当該車椅子利用者の前記乗りかご内の位置及び向きを判断する第2のステップと、
車椅子利用者の位置及び向きの判断結果に基づいて、当該車椅子利用者の状態を含む前記乗りかご内のイメージ映像を生成する第3のステップと、
生成した前記イメージ映像を前記乗りかご内の表示装置に表示させる第4のステップと
を備えることを特徴とする誘導案内方法。
【請求項8】
前記第2のステップにおいて、前記誘導案内システムは、
計測した車椅子利用者の前記乗りかごの内壁面からの距離が予め設定された閾値未満であるか否かを判断し、
前記第4のステップにおいて、前記誘導案内システムは、
車椅子利用者の前記乗りかごの内壁面からの距離が予め設定された閾値未満であると判断した場合に、前記イメージ映像と共に所定の警告を前記表示装置に表示させる
ことを特徴とする請求項7に記載の誘導案内方法。
【請求項9】
前記第4のステップにおいて、前記誘導案内システムは、
前記乗りかご内に車椅子利用者が存在し、一般利用者が存在しないと判断した場合には、当該車椅子利用者の誘導案内を行うための所定の音声メッセージを、前記乗りかご内に設けられたスピーカから出力させ、
前記乗りかご内に車椅子利用者及び一般利用者の双方が存在すると判断した場合には、当該車椅子利用者に対する前記音声メッセージによる誘導案内を行わない
ことを特徴とする請求項7に記載の誘導案内方法。
【請求項10】
前記第2のステップ乃至第4のステップのいずれかのステップにおいて、前記誘導案内システムは、
前記乗りかごに乗車し又は前記乗りかごから降車する利用者がいると判断した場合に、前記乗りかごのドアの戸開時間が通常の戸開時間よりも長くなるように当該ドアの開閉を制御する
ことを特徴とする請求項7に記載の誘導案内方法。
【請求項11】
前記第2のステップ乃至前記第4のステップのいずれかにおいて、前記誘導案内システムは、
車椅子利用者が後ろ向きで前記乗りかごに乗降中であると判断した場合に、車椅子利用者が前向きで前記乗りかごに乗降するときよりも前記乗りかごのドアの戸開時間が長くなるように当該ドアの開閉を制御する
ことを特徴とする請求項7に記載の誘導案内方法。
【請求項12】
前記表示装置は、
情報を前記乗りかごの内壁面に投影するようにして表示するプロジェクタ装置であり、
前記第3のステップ又は前記第4のステップのいずれかにおいて、前記誘導案内システムは、
前記乗りかご内における車椅子利用者の向きに応じて前記プロジェクタ装置が前記イメージ映像を投影すべき前記乗りかごの内壁面を決定し、決定した前記内壁面に前記イメージ映像を投影できるように前記プロジェクタ装置の向きを制御する
ことを特徴とする請求項7に記載の誘導案内方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は誘導案内システム及び方法に関し、特に、エレベータの乗りかご内への車椅子利用者の誘導案内を行う車椅子誘導案内システムに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車椅子利用者の社会参加の機会の増加及び高齢者社会の到来に伴い、車椅子利用者によるエレベータの利用機会が増加しつつある。このため車椅子利用者がエレベータを利用するにあたっての利便性の向上が求められている。
【0003】
一方で、近年、防犯目的で防犯カメラが設置されたエレベータが増加しており、この防犯カメラを利用して、エレベータ内の車椅子利用者を誘導する車椅子利用者案内システムが提案されている。例えば、特許文献1には、エレベータの乗りかご内に設けられた専用カメラによる車椅子とドアとの距離関係から適切な降車案内を報知することで、車椅子利用者に対するユーザビリティを向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、2台の専用カメラを用いて車椅子の位置を計測する必要があり、乗りかご内に設置されているカメラが防犯カメラ(通常1台)のみである既存のエレベータに対しては不足分の新たなカメラを設置する必要があった。
【0006】
また特許文献1に記載の発明では、案内が警報音及び表示で行われるものの、その内容が「注意してください」や「あと数センチでぶつかります」といったものであるため、車椅子利用者にとっては車椅子とドアとの距離関係を直感的に把握し難いという問題があった。また、かかる案内内容によると、車椅子のどの部分がドアにぶつかる可能性があるのかということを認識し難いために、車椅子利用者が車椅子の全体に渡って注意を払う必要があり、車椅子利用者にストレスを感じさせるという問題もあった。
【0007】
さらに特許文献1に記載の発明では、車椅子及びドア間の距離のみを計測するものであり、車椅子利用者が乗りかご内で回転して向きを変えようとする際の車椅子と乗りかごの内壁面との衝突には対応していない問題もあった。
【0008】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、車椅子利用者がエレベータを利用する際のストレスを軽減し、エレベータのユーザビリティを向上させ得る誘導案内システム及び方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため本発明においては、エレベータの乗りかご内において車椅子利用者を誘導案内する誘導案内装置であって、前記乗りかご内に設置されたカメラの撮影映像を解析し、前記乗りかご内の各利用者が車椅子利用者及び一般利用者のいずれであるかをそれぞれ判定し、前記利用者が車椅子利用者である場合における当該車椅子利用者の当該乗りかごの内壁面からの距離を計測すると共に、当該車椅子利用者の向きを判定する映像解析部と、前記映像解析部の解析結果に基づいて、前記乗りかご内に車椅子利用者が存在するか否か、及び、車椅子利用者が存在する場合における当該車椅子利用者の前記乗りかご内の位置及び向きを判断する判断部と、前記判断部により判断された当該車椅子利用者の位置及び向きに基づいて、当該車椅子利用者の状態を含む前記乗りかご内のイメージ映像を生成する映像加工部と、前記映像加工部により生成された前記イメージ映像を前記乗りかご内の表示装置に表示させる表示モジュール部と、前記イメージ映像を前記表示装置に表示するよう前記表示モジュールを制御する誘導制御部とを設けるようにした。
【0010】
また本発明においては、エレベータの乗りかご内において車椅子利用者を誘導案内する誘導案内システムより実行される誘導案内方法であって、前記乗りかご内を撮影するカメラの撮影映像に基づいて、前記乗りかご内の各利用者が車椅子利用者及び一般利用者のいずれであるかをそれぞれ判定し、前記利用者が車椅子利用者である場合における当該車椅子利用者の当該乗りかごの内壁面からの距離を計測すると共に、当該車椅子利用者の向きを判定する第1のステップと、前記撮影映像の解析結果に基づいて、前記乗りかご内に車椅子利用者が存在するか否か、及び、車椅子利用者が存在する場合における当該車椅子利用者の前記乗りかご内の位置及び向きを判断する第2のステップと、車椅子利用者の位置及び向きの判断結果に基づいて、当該車椅子利用者の状態を含む前記乗りかご内のイメージ映像を生成する第3のステップと、生成した前記イメージ映像を前記乗りかご内の表示装置に表示させる第4のステップとを設けるようにした。
【0011】
本発明の誘導案内システム及び方法によれば、表示装置に表示されたイメージ映像に基づいて車椅子利用者が直感的に乗りかごの内壁面との相対関係を把握することができ、その分、車椅子利用者のストレスを軽減させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車椅子利用者がエレベータを利用する際のストレスを軽減し、エレベータのユーザビリティを向上させ得る誘導案内システム及び方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施の形態による車椅子利用者誘導案内システムの構成を示す概略図である。
【
図2】第1の実施の形態によるかご端末の構成を示すブロック図である。
【
図3】乗りかごに対する車椅子利用者の乗降の仕方を示す概念図である。
【
図4】乗りかごに対する車椅子利用者の乗降の仕方を示す概念図である。
【
図5】乗りかごに対する車椅子利用者の乗降の仕方を示す概念図である。
【
図6】情報表示装置に表示されるイメージ映像及び誘導案内メッセージの一例を示す図である。
【
図7】情報表示装置に表示される警告の一例を示す図である。
【
図8A】車椅子利用者誘導案内処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図8B】車椅子利用者誘導案内処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】第2の実施の形態による車椅子利用者誘導案内システムの構成を示す概略図である。
【
図10】第2の実施の形態によるかご端末の構成を示すブロック図である。
【
図11】投影方向管理テーブルの構成例を示す図表である。
【
図12】車椅子利用者の回転に伴うプロジェクタ装置の投影方向の切り替えの説明に供する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
(1)第1の実施の形態
(1-1)本実施の形態による車椅子利用者誘導案内システムの構成
図1において、1は全体として本発明を適用した車椅子利用者誘導案内システムを示す。この車椅子利用者誘導案内システム1は、エレベータの乗りかご2内に設置された防犯カメラ3、スピーカ4、情報表示装置5及び操作盤6と、乗りかご2上に設置されたかご端末8と、機械室やピットなどの昇降路内のいずれかの場所に設置されたエレベータ制御装置9とを備えて構成される。
【0015】
防犯カメラ3は、乗りかご2内に設置された汎用の撮像装置である。防犯カメラ3は、乗りかご2内の様子を撮影し、撮影により得られた映像データをかご端末8に送信する。なお、防犯カメラ3の設置場所は、乗りかご2内の車椅子利用者10や、乗りかご2に乗降する車椅子利用者10の位置や挙動を撮影できる場所であれば、
図1に示す場所に限らない。他の図面においても同様である。
【0016】
スピーカ4は、乗りかご2に乗車してきた車椅子利用者10をその乗りかご2内の適切な位置に誘導案内する際における音声ガイダンスを発したり、車椅子利用者10の車椅子10Aと、乗りかご2の内壁面との間の距離が適切な距離を保てていない場合に警告音(ビープ音)を発する音響装置である。
【0017】
また情報表示装置5は、例えば液晶パネルや有機EL(Electro-Luminescence)パネルなどから構成される。情報表示装置5は、乗りかご2に乗車してきた車椅子利用者10のイメージ映像や、その車椅子利用者10を乗りかご2内の適切な位置に誘導案内する際における誘導案内用のメッセージ(以下、これを誘導案内メッセージと呼ぶ)を表示したり、車椅子利用者10の車椅子10Aと、乗りかご2の内壁面との間の距離が適切な距離が保てていない場合に警告メッセージを表示するために利用される。
【0018】
操作盤6は、エレベータの行先ボタンやドアの開閉ボタンなどが配置されたパネルであり、乗りかご2内の利用者が行先階を登録したり、ドア7の開閉を手動で行う際に利用される。
【0019】
かご端末8は、防犯カメラ3により撮影された乗りかご2の内部映像に基づいて、乗りかご2に乗車する車椅子利用者10に対して必要な誘導案内を行う機能を有するコンピュータ装置であり、
図2に示すように、映像解析部20、判断部21、映像加工部22、誘導制御部23、表示モジュール部24及び音声モジュール部25を備えて構成される。
【0020】
なお、これら映像解析部20、判断部21、映像加工部22、誘導制御部23、表示モジュール部24及び音声モジュール部25は、かご端末8が備える図示しないCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが、かご端末8が備える図示しないROM(Read Only Memory)などの記憶媒体に格納されたプログラムを実行することにより具現化される機能部である。
【0021】
映像解析部20は、防犯カメラ3から与えられる映像データに基づく撮影映像を解析することにより、撮影映像内の各利用者(乗客)がそれぞれ車椅子利用者10及び一般利用者のいずれであるかと、各車椅子利用者10の向きとなどを検出して判断部21に通知する機能を有する。
【0022】
実際上、映像解析部20は、例えば機械学習などにより生成した車椅子利用者10及び一般利用者の有無並びに各利用者の向きなどを判定するための学習モデルを備えており、当該学習モデルを用いて乗りかご2内における車椅子利用者10及び一般利用者の有無や、各車椅子利用者の向きなどを判定する。
【0023】
また映像解析部20は、車椅子利用者10の車椅子10Aと、乗りかご2内の各内壁面2A~2Dとの間の距離(ドア7が設置された内側面2Cについては、ドア7との間の距離。以下、同じ。)をそれぞれ映像解析処理により計測する機能も備える。映像解析部20は、計測した車椅子利用者10の車椅子10Aと、乗りかご2の各内壁面2A~2Dとの間の距離を判断部21に通知する。
【0024】
判断部21は、映像解析部20からの通知に基づいて、車椅子利用者10に関する各種の判断を行う機能を有する機能部である。例えば、判断部21は、映像解析部20から通知された各利用者がそれぞれ車椅子利用者10及び一般利用者のいずれであるかの解析結果に基づいて、乗りかご2内に車椅子利用者10のみが乗車(乗降中も含む)しているのか、若しくは、車椅子利用者10及び一般利用者の双方が乗車しているのか、又は、一般利用者のみが乗車しているのかを判断する。
【0025】
また判断部21は、映像解析部20の解析結果に基づき乗りかご2に車椅子利用者10が乗車していると認識した場合には、その車椅子利用者10の乗りかご2内における位置及び向き、並びに、乗りかご2内における車椅子利用者10の挙動を判断し、判断結果を映像加工部22及び誘導制御部23にそれぞれ通知する。
【0026】
なお、この場合における「挙動」としては、車椅子利用者10の乗りかご2への乗降や、乗りかご2内における車椅子利用者10の移動及び回転(回転方向も含む)を含む。また「向き」としては、車椅子利用者10が乗りかご2内で静止している際の向きに加えて、車椅子利用者10が乗りかご2内で回転している際の向きや、車椅子利用者10が乗りかご2に乗降する際の向きを含む。
【0027】
例えば、車椅子利用者10が乗りかご2に乗降する場合、
図3のように、前向きで乗車し、そのまま後ろ向きで降車する場合する場合や、
図4のように、後ろ向きで乗車し、そのまま前向きで降車する場合、及び、前向きで乗車した後に
図5のように乗りかご2内で向きを変えて前向きで降車する場合などがあるが、判断部21は、このような車椅子利用者10が乗りかご2に乗降する際の向きを判断する。なお、ここでの「前向き」とは、車椅子利用者10が進行方向を向いている状態を指し、「後ろ向き」とは、車椅子利用者10が進行方向とは逆方向を向いている状態を指す。
【0028】
さらに判断部21は、映像解析部20により計測された車椅子利用者10の車椅子10Aと、乗りかご2内の各内壁面2A~2Dとの間の距離が、予め定められた所定の閾値(例えば5cmであり、以下、これを安全距離と呼ぶ)未満であるか否かを判断する。そして判断部21は、車椅子利用者10の車椅子10Aと、乗りかご2内のいずれかの内壁面2A~2Dとの間の距離が安全距離未満であると判断した場合には、その旨を誘導制御部23に通知する。
【0029】
映像加工部22は、判断部21から車椅子利用者10の位置及び向きが通知された場合に、
図6に示すような、その車椅子利用者10の状態(位置及び向き)を含む乗りかご2内のイメージを表す模式的な映像であるイメージ映像31をリアルタイムで作成する機能を有する機能部である。映像加工部22は、作成したイメージ映像31の映像データを表示モジュール部24に出力する。
【0030】
また誘導制御部23は、判断部21により判断された乗りかご2内における車椅子利用者10の位置、向き及び乗りかご2の各内壁面2A~2Dからの距離などに基づいて、乗りかご2に乗車してきた車椅子利用者10を乗りかご2内の適切な位置に誘導案内するために表示モジュール部24及び音声モジュール部25を制御する機能を有する機能部である。
【0031】
実際上、誘導制御部23は、乗りかご2内に車椅子利用者10が乗車してくると、例えば
図6に示すように、「奥にお進みください」といった、その車椅子利用者10をその乗りかご2内の適切な位置に誘導案内するための誘導案内メッセージ32を上述のイメージ映像31と共に情報表示装置5に表示するよう表示モジュール部24を制御する。
【0032】
また誘導制御部23は、これと併せて「エレベータの中央にお進みください。衝突しないように壁からは一定の距離を保つようにしてください。ご自身の位置は画面で確認できます。」といった、その車椅子利用者10をその乗りかご2内の適切な位置に誘導案内するための音声メッセージをスピーカ4から出力させるよう音声モジュール部25を制御する。
【0033】
ただし、乗りかご2に車椅子利用者10だけでなく一般利用者も乗車している場合には、車椅子利用者10の気持ちを考慮して、誘導制御部23が、かかる誘導案内メッセージ32を情報表示装置5に表示するよう表示モジュール部24を制御するだけで、かかる音声メッセージをスピーカ4から出力させないようにしてもよい。また、乗りかご2に車椅子利用者10だけでなく一般利用者も乗車している場合に、車椅子利用者10に対する上述のような映像や音声による誘導案内を一切行わないようにしてもよい。
【0034】
また誘導制御部23は、車椅子利用者10の車椅子10Aと、乗りかご2内のいずれかの内壁面2A~2Dとの間の距離が上述の安全距離未満であることが判断部21から通知された場合には、情報表示装置5に警告を表示するよう表示モジュール部24を制御すると共に、警告音をスピーカ4から出力させるよう音声モジュール部25を制御する。
【0035】
具体的に、誘導制御部23は、
図7に示すように、上述のイメージ映像31におけるその車椅子利用者10の車椅子10Aとの距離が安全距離未満の内壁面2A~2D(ドア7が設置された内壁面2Cの場合にはドア7の内壁面)の位置に所定色(例えば赤色)の警告用の線(以下、これを警告線と呼ぶ)33を表示するよう表示モジュール部24に指示を与える。また誘導制御部23は、車椅子10A及び乗りかご2内のその内壁面2A~2D(ドア7が設置された内壁面2Cの場合にはドア7)との衝突に注意すべき旨の警告メッセージ34(
図7では「後ろの壁に衝突注意!」)をイメージ映像31と共に表示するよう表示モジュール部24を制御する。
【0036】
表示モジュール部24は、誘導制御部23の指示に従って、映像加工部22が生成した上述のイメージ映像31を情報表示装置5に表示させる機能を有する機能部である。さらに表示モジュール部24は、誘導制御部23からの指示に従って、指示された内容の誘導案内メッセージ32(
図6)や、警告線33及び警告メッセージ34などをイメージ映像31と共に情報表示装置5に表示させる。
【0037】
また音声モジュール部25は、誘導制御部23の指示に従って、誘導制御部23から指定された音声メッセージや警告音をスピーカ4から出力させる機能を有する機能部である。
【0038】
エレベータ制御装置9は、乗りかご2のドア7の開閉制御を含むエレベータ全体の運転制御を行う制御装置である。本実施の形態の場合、このエレベータ制御装置9は、判断部21による車椅子利用者10の乗車の有無の判断結果に基づいて、乗りかご2のドア7の開閉時間を制御する。
【0039】
具体的に、エレベータ制御装置9は、乗りかご2に乗車し又は乗りかごから降車する車椅子利用者10がいないと判断部21が判断した場合には、ドア7が開放している戸開時間を一般利用者向けの戸開時間に設定する運転モード(以下、これを通常運転モードと呼ぶ)に設定する。またエレベータ制御装置9は、乗りかご2に乗車し又は乗りかごから降車する車椅子利用者10がいると判断部21が判断した場合には、ドア7の戸開時間が通常運転モード時よりも長い運転モード(以下、これを車椅子誘導運転モードと呼ぶ)に設定する。そしてエレベータ制御装置9は、設定した運転モードに従って図示しないドアの開閉機構(以下、これをドア開閉機構と呼ぶ)を制御することにより、乗りかご2のドア7の戸開時間を制御する。
【0040】
この際、エレベータ制御装置9は、車椅子利用者10が後ろ向きで乗りかご2に乗降中であると判断部21が判断した場合には、車椅子利用者10が前向きで乗りかご2に乗降する場合よりもドア7の戸開時間を長くするようにドア開閉機構を制御する。これは車椅子利用者10が後ろ向きで乗りかご2に乗降する場合、車椅子利用者10が前向きで乗りかご2に乗降する場合と比べて乗降により長い時間を要するため、安全性に配慮してドア7の戸開時間を延長させたものである。
【0041】
またエレベータ制御装置9は、乗りかご2に乗降中の車椅子利用者10がいると判断部21が判断した場合、車椅子誘導運転モード時の戸開時間が経過した後でも、車椅子利用者10の乗降が完了していない場合には、安全性に配慮して、その乗降が完全に完了したと判断部21が判断するまでドア7が開いた状態を維持するようにドア開閉機構を制御する。
【0042】
(1-2)車椅子利用者誘導案内処理
図8A及び
図8Bは、車椅子利用者10に対する乗りかご2内での誘導案内に関連して本実施の形態による車椅子利用者誘導案内システム1において実行される一連の処理(以下、これを車椅子利用者誘導案内処理と呼ぶ)の流れを示す。
【0043】
この車椅子利用者誘導案内処理は、かご端末8の起動後、乗りかご2がいずれかの階層に最初に停止し、そのドア7がオープン(開放)されると開始される。そして、まず、かご端末8の映像解析部20が防犯カメラ3からの映像データに基づいて防犯カメラ3の撮影映像を解析し、その解析結果に基づいて、乗りかご2に乗降する利用者の中に車椅子利用者10がいるか否かを判断部が判定する(S1)。
【0044】
なお、このように判断部21が乗りかご2のドア7がオープンしたことを認識できるようにするための手段として、本実施の形態においては、エレベータ制御装置9がドア開閉機構を制御して乗りかご2のドアを開動作させ始めたタイミングでエレベータ制御装置9がその旨をかご端末8に通知するものとする。
【0045】
そして判断部21は、この判定で否定結果を得ると、その旨をエレベータ制御装置9に通知する。この結果、エレベータ制御装置9は、ドア7の開閉に関する運転モードを上述の通常運転モードに設定する(S2)。
【0046】
また判断部21は、この後、乗りかご2が次の停止階に停止してドア7が開動作を開始したことをエレベータ制御装置9から通知されるのを待ち受ける(S3)。そして判断部21は、やがて乗りかご2が次の停止階に停止してドア7の開動作が開始されたことをエレベータ制御装置9から通知されると、ステップS1に戻ってステップS1以降の処理を実行する。
【0047】
これに対して判断部21は、ステップS1の判断で肯定結果を得ると、その旨をエレベータ制御装置9に通知する。この結果、エレベータ制御装置9は、ドア7の開閉に関する運転モードを上述の車椅子誘導案内運転モードに設定する(S4)。
【0048】
また判断部21は、この後、映像解析部20の解析結果に基づいて、現在の乗りかご2に乗車している利用者や、現在の停止階で乗りかご2に乗車しようとしている利用者の中に一般利用者がいるか否かを判断する(S5)。そして判断部21は、この判断で否定結果を得ると、映像解析部20の解析結果に基づいて、ステップS1で検知した車椅子利用者10が乗りかご2に乗車し終えるのを待ち受ける(S6)。
【0049】
そして判断部21は、やがてその車椅子利用者10が完全に乗りかご2に乗車し終えたことを確認すると、映像及び音声によるその車椅子利用者10に対する誘導案内を開始するよう誘導制御部23に指示(以下、この指示を誘導案内開始指示と呼ぶ)を与える(S7)。
【0050】
この結果、誘導制御部23は、かかる誘導案内開始指示を受けて、
図6について上述したイメージ映像31と、必要な誘導案内メッセージ32とを情報表示装置5に表示させるよう表示モジュール部24を制御すると共に、上述のような車椅子利用者10を誘導案内するための音声メッセージをスピーカ4から出力させるよう音声モジュール部25を制御する。
【0051】
続いて、判断部21は、乗りかご2の各内壁面2A~2Dと、車椅子利用者10の車椅子10Aとの間の距離をそれぞれ計測するよう映像解析部20に指示を与える(S8)。この結果、映像解析部20は、乗りかご2の各内壁面2A~2Dと、その車椅子利用者10の車椅子10Aとの間の距離をそれぞれ計測し、計測結果を判断部21に通知する。
【0052】
そして判断部21は、乗りかご2の各内壁面2A~2Dと、かかる車椅子利用者10の車椅子10Aとの間の距離が映像解析部20から通知されると、乗りかご2の各内壁面2A~2Dと、車椅子利用者10の車椅子10Aとの間の距離がすべて上述の安全距離以上であるか否かを判断する(S9)。そして判断部21は、この判断で肯定結果を得るとステップS13に進む。
【0053】
これに対して判断部21は、ステップS9の判断で否定結果を得ると、どの内壁面2A~2Dと、車椅子利用者10の車椅子10Aとの距離が安全距離未満であるかを誘導制御部23に通知する。この結果、誘導制御部23は、そのとき情報表示装置5に表示されているイメージ映像31と共に
図7について上述した警告線33や警告メッセージ34を情報表示装置5に表示するよう表示モジュール部24を制御する。また誘導制御部23は、警告音をスピーカ4から出力させるよう音声モジュール部25を制御する(S10)。
【0054】
そして判断部21は、上述のようにしてステップS10で車椅子利用者10に警告(警告線33や警告メッセージ34の表示)を行ってから一定時間が経過すると、乗りかご2のかかる内壁面2A~2Dと、車椅子利用者10の車椅子10Aとの間の距離が安全距離以上となったか否かを判断する(S11)。そして判断部21は、この判断で否定結果を得るとステップS10に戻り、この後、ステップS11で肯定結果を得るまでステップS10-ステップS11-ステップS10のループを繰り返す。
【0055】
そして判断部21は、やがて車椅子利用者10が車椅子10Aを移動させた結果、乗りかご2のかかる内壁面2A~2Dと、車椅子利用者10の車椅子10Aとの間の距離が安全距離以上となることによりステップS11で肯定結果を得ると、かかる警告を停止するよう誘導制御部23に指示を与える(S12)。この結果、誘導制御部23は、情報表示装置5に表示された上述の警告線33及び警告メッセージ34の表示を停止させるよう表示モジュール部24を制御すると共に、スピーカ4からの警告音の出力を停止させるよう音声モジュール部25を制御する。
【0056】
次いで、判断部21は、乗りかご2のドア7がクローズして乗りかご2が次の停止階まで移動し、ドア7が開動作を開始し始めた旨の通知がエレベータ制御装置9から与えられたか否かを判断する(S13)。そして判断部21は、この判断で否定結果を得るとステップS8に戻り、この後、ステップS8~ステップS13の処理を繰り返す。
【0057】
そして判断部21は、やがて乗りかご2のドア7がクローズして乗りかごが次の停止階まで移動し、乗りかご2のドア7が再び開動作を開始し始めた旨の通知をエレベータ制御装置9から与えられることによりステップS13で肯定結果を得ると、ステップS1に戻ってステップS1以降の処理を実行する。
【0058】
一方、判断部21は、ステップS5の判断で肯定結果を得ると、映像解析部20の解析結果に基づいて、車椅子利用者10が乗りかご2に乗車し終えるのを待ち受ける(S14)。
【0059】
そして判断部21は、やがてその車椅子利用者10が乗りかご2に乗車し終えたことを確認すると、映像のみによるその車椅子利用者10に対する誘導案内を開始するよう誘導制御部23に指示を与える(S15)。かくして誘導制御部23は、表示モジュール部24を制御することにより、情報表示装置5に表示された
図6のイメージ映像31と共に「奥へお進みください」といった車椅子利用者10を誘導案内するための誘導案内メッセージ32を情報表示装置5に表示させる。
【0060】
この後、判断部21は、ステップS16~ステップS21をステップS8~ステップS13と同様に実行する。ただし、判断部21は、ステップS17の判断で否定結果を得た場合には、その旨と、このとき車椅子利用者10の車椅子10Aとの距離が安全距離未満の内壁面2A~2Dとを誘導制御部23に通知する。この結果、誘導制御部23は、そのとき情報表示装置5に表示されているイメージ映像31と併せて
図7について上述した警告線33を重畳表示すると共に、警告メッセージ34を情報表示装置5に表示させるよう表示モジュール部24のみを制御する(S18)。
【0061】
そして判断部21は、やがてステップS21で肯定結果を得るとステップS1に戻ってステップS1以降を上述と同様に実行する。
【0062】
(1-3)本実施の形態の効果
以上の構成を有する本実施の形態の車椅子利用者誘導案内システム1によれば、情報表示装置5に表示されたイメージ映像31に基づいて車椅子利用者10が車椅子10Aと乗りかご2の内壁面2A~2Dとの相対関係を直感的に把握することができ、その分、車椅子利用者10のストレスを軽減させることができる。よって、本車椅子利用者誘導案内システム1によれば、車椅子利用者10がエレベータを利用する際のストレスを軽減し、エレベータのユーザビリティを向上させることができる。
【0063】
(2)第2の実施の形態
図1との対応部分に同一符号を付して示す
図9は、第2の実施の形態による車椅子利用者誘導案内システム40を示す。この車椅子利用者誘導案内システム40は、車椅子利用者10に対する誘導案内等のための各種情報(
図6について上述したイメージ映像31を含む)を、情報表示装置5に表示することに加えて、プロジェクタ装置41により乗りかご2の内壁面2A~2D(ドア7が設置された内壁面2Cについてはドア7の内壁面。以下、同じ。)に投影するようになされた点を除いて第1の実施の形態による車椅子利用者誘導案内システム1と同様に構成されている。
【0064】
この場合、プロジェクタ装置41は、軸体42を介して乗りかご2の天井面に固定されている。またプロジェクタ装置41は、モータ等のアクチュエータを内蔵しており、このアクチュエータを駆動することによって、装置全体を軸体42を中心として水平方向に自由に回転させることができるようになされている。これにより、プロジェクタ装置41によって乗りかご2の所望する内壁面2A~2Dやドア7に情報を投影することができるようになされている。
【0065】
一方、
図2との対応部分に同一符号を付して示す
図10は、本実施の形態によるかご端末43の論理構成を示す。この
図10に示すように、本実施の形態のかご端末43は、映像解析部20、判断部50、映像加工部22、誘導制御部51、表示モジュール部52及び音声モジュール部25に加えて、プロジェクタ制御部53を備えて構成される。
【0066】
プロジェクタ制御部53は、誘導制御部51からの指示に応じてプロジェクタ装置41のアクチュエータを駆動することにより、プロジェクタ装置41の投影方向を乗りかご2内の誘導制御部51により指定された内壁面2A~2Dに向ける機能を有する機能部である。
【0067】
そして本実施の形態の場合、かご端末43の判断部50は、乗りかご2に車椅子利用者10が乗車してきたと判断した場合、その車椅子利用者10に対する誘導案内を開始するよう誘導制御部51に誘導案内指示を与えると共に、その後、その車椅子利用者10の向きをリアルタイムで誘導制御部51に通知する。
【0068】
また誘導制御部51は、かかる誘導案内開始指示が判断部50から与えられると、プロジェクタ制御部53に対して、乗りかご2の内壁面2A~2Dのうちの判断部50から通知された車椅子利用者10の向きに応じた内壁面2A~2Dに情報を投影できるように、プロジェクタ装置41の向き(情報の投影方向)を調整するよう指示を与える。
【0069】
この結果、プロジェクタ制御部53は、判断部50から通知された車椅子利用者10の向きに応じて情報を投影する内壁面2A~2Dを決定し、決定した内壁面2A~2Dにプロジェクタ装置41が情報を投影できるようにプロジェクタ装置41のアクチュエータを駆動制御する。
【0070】
このように判断部50から通知された車椅子利用者10の向きに応じて情報を投影する内壁面2A~2Dを決定する方法として、プロジェクタ制御部53は、例えば、
図11に示すような車椅子利用者10の向きに対してプロジェクタ装置41が情報を投影すべき乗りかご2の内壁面2A~2Dが規定されたテーブル(以下、これを投影方向管理テーブルと呼ぶ)55を予め保持している。そしてプロジェクタ制御部53は、判断部50から通知される車椅子利用者10の向きに基づき、この投影方向管理テーブル55を参照して、プロジェクタ装置41が情報を投影すべき乗りかご2の内壁面2A~2Dを決定する。
【0071】
なお、
図11において「車椅子利用者の向き」は、ある方向(ここでは乗りかご2のドア7と対向する奥の内壁面2Aと垂直な方向)を基準とした車椅子利用者10の反時計回りの向きの角度を表す。また「情報投影面」は、プロジェクタ装置41が情報を投影すべき乗りかご2の内壁面2A~2Dを表し、「奥」は、ドア7と対向する内壁面2A、「左側」は、ドア7側から奥の内壁面2Aに向かって左側の内壁面2B、「正面」はドア7の内壁面、「右側」は、ドア7側から奥の内壁面2Aに向かって右側の内壁面2Dを表す。
【0072】
また誘導制御部51は、かかる誘導案内開始指示が与えられると、上述のようなプロジェクタ制御部53を介したプロジェクタ装置41の向き(映像の投影方向)の調整に加えて、そのとき情報表示装置5に表示させているイメージ映像31や、誘導案内メッセージ32又は警告などの情報と同じ情報をプロジェクタ装置41に投影させるよう表示モジュール部52に指示を与える。
【0073】
そして、この指示を受領した表示モジュール部52は、そのとき情報表示装置5に表示させているイメージ映像31や各種メッセージなどのデータをプロジェクタ装置41にも送信することにより、かかるイメージ映像31や各種メッセージ(警告線33を含む)をプロジェクタ装置41に投影させる。この結果、車椅子利用者10の向きに応じた乗りかご2の内壁面2A~2Dにかかるイメージ映像31や各種メッセージが表示される。
【0074】
なお本実施の形態における車椅子利用者誘導案内処理の内容は、
図8A及び
図8Bについて上述した第1の実施の形態の車椅子利用者誘導案内処理と同様である。ただし、第1の実施の形態では、ステップS7において判断部21が、誘導案内開始指示のみを誘導制御部23に送信していたが、本実施の形態の場合、ステップS7において判断部50は、誘導案内開始指示と併せて映像解析部20により検出された車椅子利用者10の向きを誘導制御部51に通知する。
【0075】
また判断部50は、この後も映像解析部20により検出された車椅子利用者10の向きを誘導制御部51に通知し続ける。かくして、誘導制御部51は、車椅子利用者10の向きに応じた情報の投影先の内壁面2A~2Dを逐次判断及び決定し、決定した内壁面2A~2Dにイメージ映像31等の情報を表示できるようにプロジェクタ装置41の向きを調整する。
【0076】
この結果、例えば
図11の例によれば、
図12に示すように、車椅子利用者10が前向きで乗りかご2に乗車した後、乗りかご2内でドア7の方向を向くように反時計回りに回転した場合、当初は乗りかご2の奥の内壁面2Aにイメージ映像31等が表示される。また、その後、車椅子利用者10が奥の内壁面2Aの垂直方向から45°以上回転した段階でイメージ映像31等の投影面が、ドア7側から奥の内壁面2Aに向かって左側の内壁面2Bに切り替えられる。さらに、この後、車椅子利用者10がさらに90°以上回転した場合、イメージ映像31等の投影面がドア7に切り替えられる。
【0077】
以上の構成を有する本実施の形態の車椅子利用者誘導案内システム40によれば、乗りかご2に乗車した車椅子利用者10の向きの変化に応じて誘導案内のためのイメージ映像31が常にその車椅子利用者10が見易い内壁面2A~2Dに投影される。よって、本車椅子利用者誘導案内システムによれば、第1の実施の形態の車椅子利用者誘導案内システム1と比べて、より一層と車椅子利用者10がエレベータを利用する際のストレスを軽減し、エレベータのユーザビリティを向上させることができる。
【0078】
(3)他の実施の形態
なお上述の第1及び第2の実施の形態においては、映像加工部22がイメージ映像31を作成をすべて作成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば、防犯カメラ3の撮影映像内の一部を利用してイメージ映像31を作成するようにしてもよい。例えば、防犯カメラ3の撮影映像の乗りかご2の部分をそのまま利用し、かかる撮影映像内の車椅子利用者10の部分に映像加工部22が生成したキャラクタ30を重畳表示するようにしてもよい。
【0079】
また上述の第1及び第2の実施の形態においては、かご端末8,43の映像解析部20、判断部21,50、映像加工部22、誘導制御部23,51、表示モジュール部24,52及び音声モジュール部25並びにプロジェクタ制御部53をソフトウェア構成とするようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、これらをハードウェア構成とするようにしてもよい。
【0080】
さらに上述の第1及び第2の実施の形態においては、車椅子利用者10が乗りかご2に乗車した際の誘導案内を行うようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、車椅子利用者10が乗りかごから降車する際にもその車椅子利用者10に対する進行方向等の誘導案内を乗りかご2に乗車するときと同様に行うようにしてもよい。
【0081】
さらに上述の第2の実施の形態においては、車椅子利用者10の向きに応じてイメージ映像31等を投影する乗りかご2の内壁面2A~2Dを順次切り替えるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば、情報表示装置5が設置された内壁面2Dやドア7にはイメージ映像31等を表示しないようにしてもよい。
【0082】
さらに上述の第2の実施の形態においては、プロジェクタ装置41及び情報表示装置5が同じ情報を表示又は投影するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、車椅子利用者10の誘導案内に関する映像情報はプロジェクタ装置41のみが表示するものとし、情報表示装置5はこれ以外の情報を表示するようにしてもよい。さらには情報表示装置5を省略するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、種々の構成のエレベータに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0084】
1,40……車椅子利用者誘導案内システム、2……乗りかご、2A~2D……内壁面、3……防犯カメラ、4……スピーカ、5……情報表示装置、7……ドア、8,43……かご端末、9……エレベータ制御装置、10……車椅子利用者、10A……車椅子、20……映像解析部、21,50……判断部、22……映像加工部、23,51……誘導制御部、24,52……表示モジュール部、25……音声モジュール部、30……キャラクタ、31……イメージ映像、32……誘導案内メッセージ、33……警告用線、34……警告メッセージ、41……プロジェクタ装置、53……プロジェクタ制御部。