(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131986
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】反応装置および反応生成物製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 19/18 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B01J19/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042603
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】平松 靖也
(72)【発明者】
【氏名】中村 諭
(72)【発明者】
【氏名】植田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】古木 賢一
【テーマコード(参考)】
4G075
【Fターム(参考)】
4G075AA22
4G075AA63
4G075BA10
4G075CA02
4G075CA45
4G075DA02
4G075EA03
4G075EB01
4G075EC09
4G075ED04
4G075ED09
4G075FA05
(57)【要約】
【課題】物質の付着を抑制しつつ効率良く反応生成物を生成する反応装置等を提供する。
【解決手段】反応装置10において、キルン部100は、原料を受け入れる供給口101と、中心軸に沿って回転可能に延伸しており供給口101から受け入れた原料を内壁の転動面に転動させつつ上流側から下流側へ搬送する筒部103と、下流側において原料から生成された反応生成物を送出する送出口102と、を有する。加熱部110は、筒部103を転動する原料の反応を促進させる温度にキルン部100を加熱する。またキルン部100は、中心軸を通過する断面において、上流側から下流側に沿って、中心軸と転動面との距離の変化率が異なる複数の領域を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を受け入れる供給口と、中心軸に沿って回転可能に延伸しており前記供給口から受け入れた前記原料を内壁の転動面に転動させつつ上流側から下流側へ搬送する筒部と、前記下流側において前記原料から生成された反応生成物を送出する送出口と、を有するキルン部と、
前記筒部を転動する前記原料の反応を促進させる温度に前記キルン部を加熱する加熱部と、を備え、
前記キルン部は、前記中心軸を通過する断面において、前記上流側から前記下流側に沿って、前記中心軸と前記転動面との距離の変化率が異なる複数の領域を有する、
反応装置。
【請求項2】
前記キルン部は、前記中心軸と前記転動面との距離の変化率に応じて前記内壁の表面粗さが設定されている、
請求項1に記載の反応装置。
【請求項3】
前記加熱部は、前記複数の領域に対応して加熱温度を設定可能であり、
前記キルン部における前記中心軸と前記転動面との距離の変化率に応じて前記加熱温度が設定されている、
請求項1に記載の反応装置。
【請求項4】
前記キルン部は、前記上流側における前記中心軸と前記転動面との距離の変化率が前記下流側における前記中心軸と前記転動面との距離の変化率より大きく設定されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項5】
前記キルン部は、前記中心軸と前記転動面との距離の変化率が互いに異なることにより前記転動面が水平面に対して第1傾斜角を有する第1領域と、前記水平面に対して前記第1傾斜角より小さい第2傾斜角を有する第2領域とを有し、
前記第1領域は第1速度により前記原料を搬送し、前記第2領域は前記第1速度より遅い第2速度により前記原料を搬送する、
請求項1に記載の反応装置。
【請求項6】
前記キルン部は、前記第1領域における前記内壁の表面粗さを示す第1面粗度が、前記第2領域における前記表面粗さを示す第2面粗度より大きい、
請求項5に記載の反応装置。
【請求項7】
前記加熱部は、前記第1領域を加熱する第1設定温度よりも前記第2領域を加熱する第2設定温度の方が高い、
請求項5に記載の反応装置。
【請求項8】
前記キルン部は、前記第2領域において前記原料を案内する螺旋状の溝を有する、
請求項5に記載の反応装置。
【請求項9】
前記キルン部は、前記第1領域において第1距離をピッチとして前記原料を案内する螺旋状の溝を有し、前記第2領域において前記第1距離より小さい第2距離をピッチとして前記原料を案内する螺旋状の溝を有する、
請求項5に記載の反応装置。
【請求項10】
前記キルン部は、前記第1領域を前記第2領域より前記上流側に有する、
請求項5~9のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項11】
前記キルン部は、前記第1領域を前記第2領域より前記下流側に有する、
請求項5~9のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項12】
前記キルン部は、前記内壁における前記中心軸との距離が徐々に変化する斜面を挟んで、前記中心軸と前記転動面との距離が段階的に変化するように形成されており、
前記中心軸に沿って延びる軸部と、前記軸部に設けられており前記斜面に当接可能な当接部を含む邪魔板と、を有する搬送制御部材をさらに備え、
前記搬送制御部材は、前記中心軸の延伸方向に沿って変位可能に設定され、且つ、前記中心軸を中心として前記筒部と同期して回転可能に設定されている、
請求項1に記載の反応装置。
【請求項13】
原料を受け入れる供給口と、中心軸に沿って回転可能に延伸し、前記供給口から受け入れた前記原料を内壁に転動させつつ上流側から下流側へ搬送する筒部と、前記下流側において前記原料から生成された反応生成物を送出する送出口と、を有するキルン部と、前記筒部を加熱する加熱部と、を備える反応装置が、
前記筒部を加熱するとともに前記筒部を回転させ、
前記供給口から前記原料を前記筒部に受け入れ、
前記中心軸を通過する断面において、前記中心軸と第1傾斜角を成す第1転動面を有する第1領域において第1速度により前記原料を下流へ搬送し、
前記中心軸と第1傾斜角と異なる第2傾斜角を成す第2転動面を有する第2領域において第2速度により前記原料を下流へ搬送し、
前記反応生成物を前記筒部の外へ送出する、
反応生成物製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反応装置および反応生成物製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原料に対して所定の雰囲気を与えることにより所望の反応生成物を連続的に生成する反応装置が存在する。
【0003】
例えば一般的にロータリキルンと称される反応装置は、中心軸周りに回転する中空のキルン部を加熱し、このキルン部に材料を転動させながら通過させることにより所望の反応生成物を生成する。
【0004】
また例えば特許文献1は、以下の反応装置について開示している。反応装置は、圧力反応容器となるスクリュフィーダ本体と、スクリュフィーダ本体内に触媒を導入する触媒供給部と、スクリュフィーダ本体内に低級炭化水素を導入する低級炭化水素供給部と、を有する。またこの反応装置は、生成したナノ炭素を移送するスクリュと、スクリュによって移送される触媒とナノ炭素を送出する固体送出部と、生成した水素をフィーダ本体外に送出する気体送出部と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
所で、上述のような反応生成物を製造する工程において、生産性を高めるため、横臥するキルン部の傾斜を大きくして、物質の転動搬送速度を相対的に速めるという構成を採用することができる。しかし、この場合には、物質がキルン部に存在する時間が相対的に短くなり、物質が十分に反応するための滞留時間を長くすることができない。そのため、キルン部を長くしなければならなくなる。しかしキルン部を大きくすることは、設備の長大化に繋がり、好ましくない。
【0007】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、キルン部での物質の滞留時間を好適に制御しつつ効率良く反応生成物を生成する反応装置等を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示にかかる反応装置は、キルン部および加熱部を有する。キルン部は、原料を受け入れる供給口と、中心軸に沿って回転可能に延伸しており供給口から受け入れた原料を内壁の転動面に転動させつつ上流側から下流側へ搬送する筒部と、下流側において原料から生成された反応生成物を送出する送出口と、を有する。加熱部は、筒部を転動する原料の反応を促進させる温度にキルン部を加熱する。またキルン部は、中心軸を通過する断面において、上流側から下流側に沿って、中心軸と転動面との距離の変化率が異なる複数の領域を有する。
【0009】
本開示にかかる反応生成物製造方法は、キルン部と加熱部とを有する反応装置が実行するものである。キルン部は、原料を受け入れる供給口と、中心軸に沿って回転可能に延伸し、供給口から受け入れた原料を内壁面に転動させつつ上流側から下流側へ搬送する筒部と、下流側において原料から生成された反応生成物を送出する送出口と、を有する。加熱部は、筒部を転動する原料の反応を促進させる温度にキルン部を加熱する。反応装置は、筒部を加熱するとともに筒部を回転させる。反応装置は、供給口から原料を筒部に受け入れる。反応装置は、中心軸を通過する断面において、中心軸と第1角度を成す第1内壁面を有する第1領域において第1速度により原料を下流へ搬送する。反応装置は、中心軸との間に第1角度と異なる第2角度を成す第2内壁面を有する第2領域において第2速度により原料を下流へ搬送する。反応装置は、反応生成物を筒部の外へ送出する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、キルン部での物質の滞留時間を好適に制御しつつ効率良く反応生成物を生成する反応装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1にかかる反応装置の構成を示す側面図である。
【
図2】実施の形態1にかかる反応生成物製造方法を示すフローチャートである。
【
図3】実施の形態2にかかるキルン部の構成を示す断面図である。
【
図4】実施の形態3にかかるキルン部の構成を示す断面図である。
【
図5】実施の形態4にかかるキルン部の構成を示す第1の断面図である。
【
図6】実施の形態4にかかるキルン部の構成を示す第2の断面図である。
【
図7】実施の形態5にかかる反応装置の構成を示す側面図である。
【
図8】実施の形態6にかかる反応装置の構成を示す側面図である。
【
図9】実施の形態7にかかる反応装置の構成を示す側面図である。
【
図10】実施の形態7にかかる反応装置の動作を示す第1の側面図である。
【
図11】実施の形態7にかかる反応装置の動作を示す第2の側面図である。
【
図12】実施の形態7にかかる反応装置の動作を示す第3の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲にかかる発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載および図面は、適宜、省略、および簡略化がなされている。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0013】
<実施の形態1>
図1を参照しながら、実施の形態1にかかる反応装置の主な構成について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる反応装置10の構成を示す側面図である。なお
図1は、理解容易のために反応装置10の構造の一部を断面により示している。
【0014】
また、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものとして、
図1は、横方向がX軸であり縦方向がY軸の直交座標系が付されている。X軸は右から左に向かう方向がプラス方向である。Y軸は下から上に向かう方向がプラス方向である。
図2以降において、直交座標系が付されている場合、
図1のX軸およびY軸と、これらの直交座標系のX軸およびY軸の方向はそれぞれ一致している。
【0015】
図1に示される反応装置10は、ロータリキルンと称される装置であって、本実施の形態の一実施態様である。反応装置10は、受け入れた原料R10を転動搬送させつつ加熱することにより反応生成物R11を生成し、生成した反応生成物R11を送出する。原料R10や反応生成物R11の種類や状態は特に制限されないが、リチウムを成分の一つに含む金属酸化物や金属硫化物のような無機物であってもよいし、炭化水素やナノ炭素のような有機物であってもよい。反応生成物R11は例えば二次電池を製造するための電池部材として供され得る。また、原料R11や反応生成物R10の形状や大きさは特に制限されないが、形状が塊状の場合の対角長さは、好ましくは0.1mm~50mmであり、さらに好ましくは1~20mmである。さらに、原料や反応生成物の形状が塊状の場合、対角長さの比率(アスペクト比)は、好ましくは1~10であり、さらに好ましくは1.3~1.8である。
【0016】
反応装置10は主な構成として、キルン部100および加熱部110を有している。また反応装置10は上述の構成に加えて、駆動部(モータ120および駆動力伝達部121)、フード130、フィーダ140、キルンフット150およびキルン部100を支持する支持台160を有している。
図1の反応装置10は右側(すなわちX軸マイナス側)が上流側であり、左側(すなわちX軸プラス側)が下流側である。なお、以降の説明において、キルン部100の内部に供給された物質は、原料R10も反応生成物R11もその中間体も含めて、原料R10と称する。
【0017】
反応装置10は、受け入れる原料R10に対して室温から摂氏1500度の範囲における所定の温度を付与する。そのため、キルン部100の主たる構成はこの温度に耐えうる部材により形成されている。すなわちキルン部100を構成する部材は、例えば、アルミナやジルコニアなどの酸化物、炭化ケイ素や炭化チタンなどの炭化物、窒化ケイ素や窒化チタンなどの窒化物のようなセラミックス、または、結晶質グラファイトや繊維強化グラファイトのようなカーボンである。あるいはキルン部100を構成する部材は、ニッケル、コバルト、クロム、モリブデン、タングステン、タンタル、チタン、鉄、銅、アルミニウム、ケイ素、ホウ素、炭素などの合金元素のうち少なくとも一つを成分に含む耐熱合金が採用され得る。
【0018】
キルン部100は主な構成として、供給口101、送出口102および筒部103を含む。キルン部100は円筒状の反応炉であって、上流側に原料R10を受け入れ、受け入れた原料R10を転動搬送させつつ反応生成物R11を生成し、下流側において反応生成物R11を送出する。
【0019】
供給口101は、原料R10を受け入れる。送出口102は、下流側において原料R10から生成された反応生成物R11を送出する。筒部103は、中心軸C10に沿って回転可能に延伸しており供給口101から受け入れた原料R10を内壁の転動面において転動させつつ、上流側から下流側へ搬送する。ここで筒部103の内壁の転動面とは、
図1に示す筒部103の内面のうち、原料R10が接する面である。なお、筒部103は回転するため、内面の全周が転動面に成り得る。原料R10が接する領域は明確に設定されるものではないが、例えば筒部103における中心軸C10より下方の領域である。
【0020】
原料R10を効率よく下流へ搬送するため、キルン部100は水平面に対して上流側よりも下流側が低くなるように支持されることが望ましい。
図1において、中心軸C10は水平面に対して傾斜角A10の傾きを有している。
【0021】
キルン部100は、上流側において、供給口101にフード130が係合する。フード130は、キルン部100における供給口101の側を回転可能に支持するとともに、フィーダ140を支持する。フィーダ140は上方に設けられた開口部である原料投入口141から原料R10を受け入れて、受け入れた原料R10を供給口101に案内する。
【0022】
またキルン部100は、下流側において、送出口102にキルンフット150が係合する。キルンフット150は、送出口102の側を回転可能に支持するとともに、送出口102から送出される反応生成物R11を反応生成物出口151から送出する。
【0023】
加熱部110は、筒部103を転動する原料R10の反応を促進させる温度に筒部103を加熱する。反応装置10において、加熱部110は、例えば送出口102から筒部103の内部を加熱するガスバーナである。加熱部110は、炎を噴射するノズルがキルンフット150に固定されている。なお、ここでの反応とは、電子やラジカルの授受を伴う化学反応と解釈してもよいし、固体の物質から気体が発生するような物理的変化を反応と解釈してもよい。
【0024】
駆動部は、モータ120と、このモータ120から突出する駆動軸に嵌合する駆動力伝達部121とを有する。モータ120は、駆動力伝達部121を介して従動部122を駆動して筒部103を回転させる。駆動力伝達部121および従動部122は例えば互いに噛み合うように構成された歯車である。駆動部はこのような構成により中心軸C10を回転中心として筒部103を回転させる。これにより、キルン部100は、供給口101から受け入れた原料R10を転動させながら送出口102に搬送する。従動部122は筒部103の外周に固定された歯車であって、駆動力伝達部121に従って中心軸C10を中心に回転運動をする。反応装置10は上述の構成により、筒部103を加熱するとともに、筒部103を回転させる。
【0025】
また筒部103は、中心軸C10を通過する断面(すなわちXY断面)において、上流側から下流側に沿って、中心軸C10と転動面との距離の変化率が異なる複数の領域を有する。
図1に示す筒部103は、中心軸C10に沿って上流側に第1領域E11を有し、下流側に第2領域E12を有している。
【0026】
第1領域E11の第1転動面104は水平面に対して第1傾斜角A11を有している。第1傾斜角A11は傾斜角A10より大きい。すなわち第1領域E11における中心軸C10と第1転動面104との距離D11は、上流側から下流側へ進むにつれて大きくなる。つまり第1領域E11における中心軸C10と第1転動面104との距離D11の変化率は所定の正の値となっている。
【0027】
第2領域E12の第2転動面105は水平面に対して第2傾斜角A12を有している。第2傾斜角A12は傾斜角A10と等しい。すなわち第2領域E12における中心軸C10と第2転動面105との距離D12は、一定である。つまり第2領域E12における中心軸C10と第2転動面105との距離D12の変化率はゼロである。
【0028】
このように、筒部103は、第1領域E11における第1転動面104の傾斜と第2領域E12における第2転動面105の傾斜とが異なる。これにより、第1領域E11において転動搬送する原料R10の第1転動面104に対する移動速度V11と、第2領域E12において転動搬送する原料R10の第2転動面105に対する移動速度V12とは異なる。
【0029】
より具体的には、筒部103は、中心軸C10と転動面との距離の変化率が互いに異なることにより転動面が水平面に対して第1傾斜角A11を有する第1領域E11と、水平面に対して第1傾斜角A11より小さい第2傾斜角A12を有する第2領域E12とを有する。第1領域E11は、第2領域E12より上流側に位置する。そのため、筒部103は、上流側における中心軸C10と転動面との距離の変化率が下流側における中心軸C10と転動面との距離の変化率より大きく設定されている。そのため、第1領域E11は第1速度V11により原料R10を搬送し、第2領域E12は第1速度V11より遅い第2速度V12により原料を搬送する。すなわち、上流側の第1領域E11において転動搬送する原料R10の第1転動面104に対する移動速度V11は、下流側の第2領域E12において転動搬送する原料R10の第2転動面105に対する移動速度V12より速い。
【0030】
上記構成により、反応装置10は、上流側の第1領域E11において原料R10の搬送速度を相対的に速くする。これにより、反応装置10は、第1転動面104で原料R10を加熱しつつ、原料R10を第2領域E12に速やかに搬送する。一方、反応装置10は、第2領域E12において相対的に原料R10の搬送速度を遅くする。これにより反応装置10は、第2領域E12において原料R10の滞留時間を長くすることで反応を促進させ反応生成物R11を効率良く生成する。
【0031】
次に、
図2を参照して、反応装置10が実行する方法について説明する。
図2は、実施の形態1にかかる反応生成物製造方法を示すフローチャートである。
図2に示すフローチャートは、例えば反応装置10を使用する使用者が反応装置10を操作することにより、開始される。
【0032】
まず、反応装置10は、キルン部100を加熱する(ステップS11)。より具体的には、反応装置10の加熱部110が筒部103の内部の加熱を開始する。
【0033】
次に、反応装置10は、キルン部100を回転させる(ステップS12)。より具体的には、駆動部のモータ120が駆動を開始し、筒部103を回転させる。
【0034】
次に、反応装置10は、キルン部100に原料R10を受け入れる。より具体的には、反応装置10は、供給口101から原料R10を筒部103に受け入れる(ステップS13)。
【0035】
次に、反応装置10は、中心軸C10を通過するXY断面において、中心軸C10と第1傾斜角A11を成す第1転動面104を有する第1領域E11において、第1速度V11により原料R10を下流へ搬送する(ステップS14)。
【0036】
次に、反応装置10は、中心軸C10との間に第1傾斜角A11と異なる第2傾斜角A12を成す第2転動面105を有する第2領域E12において第2速度V12により原料R10を下流へ搬送する(ステップS15)。
【0037】
次に、反応装置10は、反応生成物R11をキルン部100の外へ送出する(ステップS16)。
【0038】
以上、反応装置10が実行する反応生成物製造方法について説明した。上述の方法は、反応装置10が原料R10から反応生成物R11を製造し、製造した反応生成物R11を送出するまでの流れに沿って示されている。しかし、反応装置10は、例えばステップS11を、ステップS12の後に実行していてもよい。ステップS11とステップS12とは、同時に、あるいは並行して実行されてもよい。
【0039】
以上、実施の形態1について説明した。上述の反応装置は、キルン部での物質の滞留時間を長くしつつ、効率良く反応生成物を生成する。なお、実施の形態1にかかる反応装置10は、上述の構成に限られない。例えばキルン部100の内壁は、原料R10や反応生成物R11の付着のし易さを制御するために、表面粗さが設定されていてもよい。例えば、キルン部100は、中心軸C10と転動面との距離の変化率に応じて内壁の表面粗さが異なるように設定されているものであってもよい。より具体的には、キルン部100は、第1領域E11における内壁の表面粗さを示す第1面粗度が、第2領域E12における表面粗さを示す第2面粗度より大きいものであってもよい。あるいは、原料R10や反応生成物R11の特性に応じて、第2面粗度が第1面粗度より大きいものであってもよい。これにより、反応装置10は、より好適に物質を転動搬送できる。
【0040】
以上、本実施の形態によれば、キルン部での物質の滞留時間を好適に制御しつつ効率良く反応生成物を生成する反応装置等を提供することができる。
【0041】
<実施の形態2>
次に、
図3を参照して実施の形態2について説明する。
図3は、実施の形態2にかかるキルン部200の構成を示す断面図である。
図3に示すキルン部200は、
図1のキルン部100と交換可能な態様により示されている。すなわち実施の形態2にかかる反応装置10は、キルン部の構成が実施の形態1と異なるものであって、
図3は、
図1と共通する構成が適宜省略されたものである。
【0042】
本実施形態にかかるキルン部200は、
図1に示したキルン部100と同様に、水平面に対して第1傾斜角A11を有する第1領域E11と、水平面に対して第1傾斜角A11より小さい第2傾斜角A12を有する第2領域E12とを有する。またキルン部200は、筒部103の第2領域E12において原料R10を案内する螺旋状の溝を有する点が、実施の形態1にかかるキルン部100と異なる。すなわち第2領域E12において、筒部103は第2転動面205を有している。第2転動面205は螺旋状に設けられた溝部であり、原料R10はこの溝部を転動しながら下流へ移動する。
【0043】
この構成により、第2領域E12における原料R10の移動速度V22は、螺旋のピッチに律速される。したがって、キルン部200の第2領域E12における原料R10の移動速度V22は、実施の形態1にかかるキルン部100の第2領域E12における移動速度V12より遅い。そのため、第2領域E12における原料R10の滞留時間は相対的に長くなる。したがって、本実施形態におけるキルン部200は、第2領域E12を第1の実施形態におけるキルン部100より短くできる。
【0044】
以上、本実施の形態によれば、キルン部での物質の滞留時間を好適に制御しつつキルン部を小型化し、効率良く反応生成物を生成する反応装置等を提供することができる。
【0045】
<実施の形態3>
次に、
図4を参照して実施の形態3について説明する。
図4は、実施の形態3にかかるキルン部300の構成を示す断面図である。
図4に示すキルン部300は、
図1のキルン部100と交換可能な態様により示されている。すなわち実施の形態3にかかる反応装置10は、キルン部の構成が実施の形態1と異なるものであって、
図3は、
図1と共通する構成が適宜省略されたものである。
【0046】
本実施形態にかかるキルン部300は、
図1に示したキルン部100と同様に、水平面に対して第1傾斜角A11を有する第1領域E11と、水平面に対して第1傾斜角A11より小さい第2傾斜角A12を有する第2領域E12とを有する。またキルン部300は、第2領域E12に設けられた螺旋状の溝に加えて、第1領域E11において原料R10を案内する螺旋状の溝を有する点が、実施の形態2にかかるキルン部200と異なる。またキルン部300は、第1領域E11において第1距離P11をピッチとして原料R10を案内する螺旋状の溝を有し、第2領域E12において第1距離P11より小さい第2距離P12をピッチとして原料R10を案内する螺旋状の溝を有する。
【0047】
このような構成により、キルン部300を有する反応装置10は、第1領域E11において第1転動面304に対して移動速度V31により原料R10を搬送する。またキルン部300を有する反応装置10は、第2領域E12において第2転動面305に対して移動速度V32により原料R10を搬送する。このとき移動速度V31は移動速度V32より速い。またこのとき、原料R10の移動速度を螺旋の溝に沿って比較した場合に、第1領域E11における螺旋方向の移動速度V33は、第2領域E12における螺旋方向の移動速度V34より速い。すなわちキルン部300を有する反応装置10は、相対的に第2領域E12の滞留時間を長くする構造となっている。
【0048】
以上、実施の形態3について説明したが、実施の形態2および実施の形態3にかかる螺旋の溝部の形状は、図に示した台形状に限られない。螺旋の溝部および凸部は、上流から下流に沿って曲線波状や三角波状またはこれらの組み合わせにより形成されていてもよい。台形状または曲線により形成されることにより、キルン部の溝部は筒部103における空気の移動の偏りあるいは原料R10の移動の淀みを抑制し、原料R10の反応を好適に進めることができる。よって、本実施の形態によれば、キルン部での物質の滞留時間を好適に制御しつつキルン部を小型化し、効率良く反応生成物を生成する反応装置等を提供することができる。
【0049】
<実施の形態4>
次に、
図5を参照して実施の形態4について説明する。
図5は、実施の形態4にかかるキルン部400の構成を示す第1の断面図である。
図5に示すキルン部400は、
図1のキルン部100と交換可能な態様により示されている。すなわち実施の形態4にかかる反応装置10は、キルン部の構成が実施の形態1と異なるものであって、
図4は、
図1と共通する構成が適宜省略されたものである。
【0050】
本実施形態にかかるキルン部400は、第1領域E11の構造が実施の形態1にかかるキルン部100と異なる。キルン部400は、第1領域E11における筒部103の少なくとも一部が第2領域E12の転動面における傾斜より大きい傾斜を有する。
図5に示すキルン部400は、第1転動面404と第2転動面405とを有する。第1転動面404は水平面に対して第1傾斜角A11を有している。また第2転動面405は水平面に対して第2傾斜角A12を有している。第1転動面404は、筒部103の上流側の端部である供給口101から下流側に沿って第1領域E11の範囲内の一部に設けられている。第2転動面405は、第1転動面404以外の部分に設けられている。
【0051】
図6は、実施の形態4にかかるキルン部の構成を示す第2の断面図である。
図6に示す断面VI-VIおよび断面VII-VIIは、中心軸C10に直交する断面である。
図5に示したように、断面VI-VIは第1領域E11における相対的に上流側の断面であり、断面VII-VIIは第1領域E11における相対的に下流側の断面である。図に示すように、第1領域E11における筒部103の内壁は、第1転動面404と第2転動面405が交互に3か所ずつ存在している。また、上流側の断面VI-VIにおける第1転動面404と中心軸C10との距離D11は、下流側の断面VII-VIIにおける第1転動面404と中心軸C10との距離D11より小さい。一方、第2転動面405と中心軸C10との距離D12はどちらの断面においても変わらない。
【0052】
以上、実施の形態4について説明した。本実施形態にかかるキルン部400は、第1領域において相対的に傾斜角が大きい第1転動面404を有している。そのため、キルン部400を有する反応装置10は、第1領域における原料R10の搬送速度が第2領域における原料R10の搬送速度より速い。よって本実施の形態によれば、キルン部での物質の滞留時間を好適に制御しつつ効率良く反応生成物を生成する反応装置等を提供することができる。なお、キルン部400の第1転動面404の配置は、上述の態様に限定されない。第1領域E11における第1転動面404の配置は種々の形態が選択され得る。例えば第1転動面404は3か所ではなく2か所に配置されていてもよいし、4か所以上に配置されていてもよい。
【0053】
<実施の形態5>
次に、
図7を参照して実施の形態5について説明する。
図7は、実施の形態5にかかる反応装置20の構成を示す側面図である。反応装置20は、キルン部500を有している。キルン部500が受け入れる原料R20は、比較的低温での滞留時間を長くすることで、比較的高温での反応が進みやすくなるという性質を有しているものとする。これに対応して、本実施形態にかかるキルン部500は、第1領域E21を第2領域E22より下流側に有する点が、上述の実施の形態と異なる。
【0054】
キルン部500は、上流側の第2領域E22における中心軸C10と第2転動面502との距離の変化率が、下流側の第1領域E21における中心軸C10と第1転動面501との距離の変化率より小さく設定されている。
【0055】
第1領域E21の第1転動面501は水平面に対して第1傾斜角A21を有している。第1傾斜角A21は傾斜角A10と等しい。すなわち第1領域E21における中心軸C10と第1転動面501との距離D21は、一定である。つまり第1領域E21における中心軸C10と第1転動面501との距離D21の変化率はゼロである。
【0056】
第2領域E22の第2転動面502は水平面に対して第2傾斜角A22を有している。第2傾斜角A22は傾斜角A10より小さい。すなわち第2領域E22における中心軸C10と第2転動面502との距離D22は、下流に沿って小さくなる。つまり第2領域E22における中心軸C10と第2転動面502との距離D22の変化率は所定の負の値である。
【0057】
このように、キルン部100は、第1領域E21における第1転動面501の傾斜と第2領域E22における第2転動面502の傾斜とが異なる。これにより、第1領域E21において転動搬送する原料R20の第1転動面501に対する移動速度V51は、第2領域E22において転動搬送する原料R20の第2転動面502に対する移動速度V52より速くなる。
【0058】
なお、キルン部500は第1領域E21と第2領域E22との間に、第3傾斜角A23を有する第3領域E23を有している。第3領域における第3傾斜角A23は第1傾斜角A21より大きい。そのため、反応装置20は第2領域E22から第3領域E23に搬送されてきた原料R20を、第3領域において下流側へ加速させることができる。
【0059】
以上、実施の形態5について説明したが、実施の形態5にかかる反応装置20は、上述の構成に限られない。例えばキルン部500の内壁は、中心軸C10と転動面との距離の変化率に応じて内壁の表面粗さが設定されているものであってもよい。例えばキルン部500は、第1領域E21における内壁の表面粗さを示す第1面粗度が、第2領域E22における表面粗さを示す第2面粗度より大きいものであってもよい。これにより、反応装置20は、より好適に物質の付着を抑制できる。なお、表面粗さの具体的な大きさや形状は、原料R20ないし反応生成物R21の粒形や粒径に応じて設定されることが好ましい。
【0060】
以上、本実施の形態によれば、キルン部での物質の滞留時間を好適に制御しつつ効率良く反応生成物を生成する反応装置等を提供することができる。
【0061】
<実施の形態6>
次に、
図8を参照して実施の形態6について説明する。
図8は、実施の形態6にかかる反応装置30の構成を示す側面図である。
図8に示す反応装置30は、加熱部の態様が、
図1に示した実施の形態1と異なる。
【0062】
加熱部210は、キルン部100の外周部を加熱する。加熱部210は例えば室温から摂氏1500度程度の範囲の加熱を行う。加熱部210は、例えば筒状のキルン部100の周囲を囲むように加熱装置を有している。加熱装置は例えばシースヒータ、コイルヒータまたはセラミックヒータなどの温度制御可能な任意のヒータを含む。あるいは加熱装置は、ガスを燃焼して加熱した流体を循環させるものであってもよい。加熱部210は、キルン部100の温度を制御するための制御装置を含みうる。例えば加熱部210は、キルン部100の所定の位置に温度を監視するための温度計を有していてもよい。
【0063】
また加熱部210はキルン部100の延伸方向に沿って複数設置されていてもよい。反応装置30は例えば、供給口101に比較的に近い側(上流側)であって、供給口101から離間した位置に第1加熱部210Aを有し、第1加熱部210Aよりも送出口102に比較的に近い側(下流側)に第2加熱部210Bを有し得る。この場合例えば、供給口101における内部温度は供給口101の領域では室温となる。また第1加熱部210Aはキルン部100の内部温度を例えば摂氏500度になるように制御する。さらに第2加熱部210Bはキルン部100の内部温度を例えば摂氏1500度になるように制御する。この場合、反応装置30は、第1制御装置により設定された温度(摂氏500度)の領域において原料R10を脱脂し、第2制御装置により設定された温度(摂氏1500度)の領域において原料R10を焼結し得る。上述のように、反応装置30はキルン部100の延伸方向に沿って複数の加熱部210を有することによりキルン部100の延伸方向に沿って複数の温度プロファイルを設定できる。
【0064】
また加熱部210は筒部103の外周(円周)に沿って複数設置されていてもよい。この場合、反応装置30は例えば、筒部103の頂部に比較的に近い側(上部側)と、筒部103の底部に比較的に近い側(下部側)とで、別個に温度を設定できる。例えば、原料R10は、内部温度が室温の供給口101より供給される。そこで、反応装置30は筒部103の上部側の温度を例えば摂氏550度になるように制御する。また、反応装置30は筒部103の下部側の温度を例えば500度になるように制御する。このとき、室温で供給された原料R10は、予め550度の温度で加熱されたキルン部100の内壁から熱を奪いながら転動搬送され、実質的に500度の温度で脱脂される。このようにすることで、反応装置30は、原料R10の温度を効率よく制御することができる。上述のように、反応装置30はキルン部100の外周に沿って複数の加熱部210を有することによりキルン部100の外周に沿って複数の温度プロファイルを設定できる。
【0065】
上述の通り、加熱部210は、複数の領域に対応して加熱温度を設定可能である。よって例えば加熱部210は、第1領域E11を加熱する第1設定温度よりも第2領域E12を加熱する第2設定温度の方が高く設定され得る。またこの場合、加熱部210は、キルン部100における中心軸C10と転動面との距離の変化率に応じて加熱温度が設定されていてもよい。換言すると、加熱部210は、キルン部100における転動面の傾斜角に応じて加熱温度が設定されていてもよい。以上、本実施の形態によれば、キルン部での物質の滞留時間を好適に制御しつつ効率良く反応生成物を生成する反応装置等を提供することができる。
【0066】
<実施の形態7>
次に、実施の形態7について説明する。
図9は、実施の形態7にかかる反応装置40の構成を示す側面図である。反応装置40は、搬送制御部材700を有する点およびこれに伴う構成が上述の実施の形態と異なる。
【0067】
反応装置40のキルン部100は、内部が中心軸C10に沿った円筒状に形成されている。またこの内壁は、中心軸C10と転動面との距離が段階的に変化するように形成されている。さらにこの内壁における中心軸C10との距離が変化する部分は、中心軸C10との距離が徐々に変化する斜面となっている。すなわちキルン部100は、内壁における中心軸C10との距離が徐々に変化する斜面を挟んで、中心軸C10と転動面との距離が段階的に変化するように形成されている。
【0068】
より具体的には、
図9に示すキルン部100は、上流側から下流側へ向かって順に、第1領域E41、第2領域E42、第3領域E43および第4領域E44を有している。ここで、第1領域E41は、第1転動面611を有している。第2領域E41は、第2転動面621を有している。このとき中心軸C10と転動面との距離を距離DXとすると、第2領域E42における中心軸C10と第2転動面621との距離DXは、第1領域E41における中心軸C10と第1転動面611との距離DXより大きい。また第1転動面611と第2転動面621との間には、第1斜面612と第2転動面621とを接続する第1斜面612が設けられている。第1斜面612は、中心軸C10と転動面との距離が、第1転動面611と第2転動面621とを繋ぐように変化している。
【0069】
上述の構成と同様に、第2領域E42の下流側に設けられた第3領域E43においては、中心軸C10と第3転動面631との距離DXが、第2領域E42における距離DXよりも大きい。また第2転動面621と第3転動面631との間には第2斜面622が設けられている。さらに同様に、第3領域E43の下流側に設けられた第4領域E44においては、中心軸C10と第4転動面641との距離DXが、第3領域E43における距離DXよりも大きい。また第3転動面631と第4転動面641との間には第3斜面632が設けられている。
【0070】
搬送制御部材700は、中心軸C10に沿って延びる軸部と、この軸部に設けられた複数の邪魔板と、を有している。邪魔板は、キルン部100の斜面に当接可能な当接部を含む。搬送制御部材700は邪魔板として、第1邪魔板711、第2邪魔板721および第3邪魔板731を有している。第1邪魔板711は、第1斜面612に当接する第1当接部712を含む。第2邪魔板721は、第2斜面622に当接する第2当接部722を含む。第3邪魔板731は、第3斜面632に当接する第3当接部732を含む。
【0071】
ここで、第1当接部712と第2当接部722と第3当接部732とのそれぞれの相対的な距離は、第1斜面612と第2斜面622と第3斜面632とのそれぞれの相対的な距離に対応している。また搬送制御部材700は中心軸C10の延伸方向に沿って変位可能に設定されており、且つ、中心軸C10を中心として筒部103と同期して回転するように設定されている。
【0072】
上述の構成により、搬送制御部材700は、邪魔板により第1斜面612、第2斜面622および第3斜面632を同時に閉塞したり開放したりできる。なお、搬送制御部材700の邪魔板の当接面がそれぞれの斜面に当接している状態を、キルン部100が閉じた状態、とも称する。一方、邪魔板の当接面がそれぞれの斜面から離間した状態を、キルン部100が開いた状態、とも称する。キルン部100が閉じた状態では、搬送制御部材700は、原料R10の下流への移動を制限する。一方、キルン部100が開いた状態では、搬送制御部材700は、原料R10の下流への移動を制限しない。
【0073】
また本実施の形態にかかる加熱部210は、第1加熱部210Cと第2加熱部210Dとを有している。第1加熱部210Cは、第2領域E42の周囲に設けられており、第2領域E42における筒部103の内部を加熱する。第2加熱部210Dは、第3領域E43の周囲に設けられており、第3領域E43における筒部103の内部を加熱する。このような構成により、反応装置40はそれぞれの領域に対応した温度設定が可能となっている。
【0074】
次に、
図10を参照して、反応装置40の動作原理について説明する。
図10は、反応装置40の動作を示す第1の側面図である。
図10に示す反応装置40は、フィーダ140から断続的に原料R10を受け入れた状態である。また
図10に示す反応装置40は搬送制御部材700が閉じられた状態である。
【0075】
反応装置40は断続的に原料R10を受け入れつつ、搬送制御部材700により原料R10の移動を制御する。これにより搬送制御部材700は第1邪魔板711が第1斜面612に当接し、原料R10を第1領域E41に滞留させている。同様に、搬送制御部材700は第3邪魔板731が第3斜面632に当接し、原料R10を第3領域E43に滞留させている。この状態で、例えば第1領域E41に滞留する原料R10は予熱される。あるいは第3領域E43に滞留する原料R10は、第2加熱部210Dにより加熱された雰囲気において反応が進む。
【0076】
図11を参照して、反応装置40の動作について引き続き説明する。
図11は、反応装置40の動作を示す第2の側面図である。
図11は、
図10に示した反応装置40の後の時刻における状態を示したものである。反応装置40において、搬送制御部材700は下流側へ移動しており、キルン部100は開いた状態となっている。そのため、第1領域E41に存在していた原料R10は、邪魔板と内壁との隙間を通過し、第2領域E42へ転動搬送される。また第3領域E43に存在していた原料R10は第4領域E44へ転動搬送され、さらに反応生成物出口151から反応生成物R11として送出される。
【0077】
図12を参照して反応装置40の動作についてさらに説明する。
図12は、反応装置40の動作を示す第3の側面図である。
図11の状態の後に、搬送制御部材700の邪魔板は上流側へ移動し、第1斜面612、第2斜面622および第3斜面632に当接する。これにより原料R10は第2邪魔板721により堰き止められて、第2領域E42に滞留する。この状態で、例えば第2領域E42に滞留する原料R10は、第1加熱部210Cにより加熱された雰囲気において反応が進む。
【0078】
反応装置40は、上述のように、搬送制御部材700が筒部103に同期して回転しつつ、中心軸C10に沿って下流側と上流側とを移動する。これにより、キルン部100は閉じた状態になったり、開いた状態になったりする。そしてこれによりキルン部100は、原料R10の搬送状態を制御する。搬送制御部材700の開閉のタイミングは、所定の時間のインターバルによるものとしてもよい。
【0079】
以上、反応装置40の動作について説明した。上述の構成により、反応装置40は、キルン部100を閉じた状態にすることにより、所定の領域に原料R10を予め設定された時間滞留させて、反応を進めることができる。また反応装置40は、キルン部100を開いた状態にすることにより、原料R10を下流側へ転動搬送させることができる。
【0080】
これにより例えば、原料R10が、比較的低温から比較的高温にかけて、段階的に滞留時間を長くすることで、反応が進みやすくなる性質を有している場合に、反応装置40は滞留時間と反応温度をそれぞれ好適に制御できる。またこの構造により、反応装置40は、滞留時間を精度良く設定できる。さらに反応装置40は、滞留時間の制御ができるため、キルン部100の長大化を回避できる。すなわち、本実施の形態によれば、キルン部での物質の滞留時間を好適に制御しつつ効率良く反応生成物を生成する反応装置等を提供することができる。
【0081】
なお、本実施の形態にかかる反応装置40は、第1領域E41から第4領域E44を有していたが、反応領域の数は、上述の構成に限られない。また加熱部210も、上述の構成に限られない。
【0082】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0083】
10 反応装置
20 反応装置
30 反応装置
40 反応装置
100 キルン部
101 供給口
102 送出口
103 筒部
104 第1転動面
105 第2転動面
106 凹部
110 加熱部
120 モータ
121 駆動力伝達部
122 従動部
130 フード
140 フィーダ
141 原料投入口
150 キルンフット
151 反応生成物出口
200 キルン部
204 第1転動面
205 第2転動面
210 加熱部
300 キルン部
304 第1転動面
305 第2転動面
400 キルン部
404 第1転動面
405 第2転動面
500 キルン部
501 第1転動面
502 第2転動面
611 第1転動面
612 第1斜面
621 第2転動面
622 第2斜面
631 第3転動面
632 第3斜面
641 第4転動面
700 搬送制御部材
711 第1邪魔板
712 第1当接部
721 第2邪魔板
722 第2当接部
731 第3邪魔板
732 第3当接部
A10 筒部傾斜角
A11 第1傾斜角
A12 第2傾斜角
A13 第3傾斜角
A14 第4傾斜角
A21 第1傾斜角
A22 第2傾斜角
A23 第3傾斜角
C10 中心軸
E11 第1領域
E12 第2領域
E21 第1領域
E22 第2領域
E23 第3領域
R10 原料
R11 反応生成物
R20 原料
R21 反応生成物