(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131997
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】情報表示システム、画像の表示方法、コンピュータプログラムおよび作業車両
(51)【国際特許分類】
B60K 35/00 20240101AFI20240920BHJP
【FI】
B60K35/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042615
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮司
(74)【代理人】
【識別番号】100188813
【弁理士】
【氏名又は名称】川喜田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100202142
【弁理士】
【氏名又は名称】北 倫子
(72)【発明者】
【氏名】和田 夏未
(72)【発明者】
【氏名】寳来 昂平
(72)【発明者】
【氏名】後野 剛志
(72)【発明者】
【氏名】大原 慎司
【テーマコード(参考)】
3D344
【Fターム(参考)】
3D344AA19
3D344AB03
3D344AD01
(57)【要約】
【課題】農作業時に必要な多様な情報を視認性良く表示する。
【解決手段】作業車両用の情報表示システムは、ディスプレイ素子を有するメータパネルユニットと、メータパネルユニットを制御する制御装置と、を備える。ディスプレイ素子は、ユーザによる特定の操作が可能な項目を示す項目画像が表示される表示領域を有し、制御装置は、操作の種類を示す種別アイコンを含む項目画像を表示領域に表示させる。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両用の情報表示システムであって、
ディスプレイ素子を有するメータパネルユニットと、
前記メータパネルユニットを制御する制御装置と、
を備え、
前記ディスプレイ素子は、ユーザによる特定の操作が可能な項目を示す項目画像が表示される表示領域を有し、
前記制御装置は、前記操作の種類を示す種別アイコンを含む前記項目画像を前記表示領域に表示させる、情報表示システム。
【請求項2】
前記操作の種類は、設定操作、計測操作およびリセット操作を含む、請求項1に記載の情報表示システム。
【請求項3】
前記計測操作は、計測開始および計測停止の操作を含み、
計測に関する項目が前記ユーザによって選択されると、前記制御装置が、前記計測開始、前記計測停止または前記計測リセットを確認するためのダイアログを前記表示領域に表示させる、請求項2に記載の情報表示システム。
【請求項4】
前記計測は走行距離の計測であり、
前記制御装置は、前記走行距離の計測中、前記走行距離の計測を示す計測アイコン、計測動作中であることを示す動作マーク、および計測された距離を更に含む前記項目画像を前記表示領域に表示させる、請求項3に記載の情報表示システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記走行距離の計測中、前記動作マークを点滅させて表示し、かつ、前記計測アイコンおよび前記計測された距離を色付けして表示させる、請求項4に記載の情報表示システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記計測アイコンおよび前記計測された距離を同じ色で表示させる、請求項5に記載の情報表示システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記走行距離の計測中、前記項目画像に含まれる前記計測された距離の表示の色と同じ色で、前記計測された距離を前記ダイアログにも表示させる、請求項5または6に記載の情報表示システム。
【請求項8】
前記メータパネルユニットは、指示針を有する第1および第2のアナログメータを有し、
前記ディスプレイ素子は、前記第1および第2のアナログメータの間に設けられている、請求項1から6のいずれか1項に記載の情報表示システム。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか1項に記載の情報表示システムを備える作業車両。
【請求項10】
作業車両用のメータパネルユニットが有するディスプレイ素子に画像を表示する、コンピュータに実装される表示方法であって、
ユーザによる特定の操作が可能な項目を示す項目画像であって、前記操作の種類を示す種別アイコンを含む項目画像を前記ディスプレイ素子の表示領域に表示することを含む、表示方法。
【請求項11】
作業車両用のメータパネルユニットが有するディスプレイ素子に画像を表示させるコンピュータによって実行されるコンピュータプログラムであって、
ユーザによる特定の操作が可能な項目を示す項目画像であって、前記操作の種類を示す種別アイコンを含む項目画像を前記ディスプレイ素子の表示領域に表示させることを、前記コンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報表示システム、画像の表示方法、コンピュータプログラムおよび作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代農業として、ICT(Information and Communication Technology)およびIoT(Internet of Things)を活用したスマート農業の研究開発が進められている。圃場で使用されるトラクタなどの作業車両の自動化および無人化に向けた研究開発も進められている。例えば、精密な測位が可能なGNSS(Global Navigation Satellite System)などの測位システムを利用して自動操舵で走行する作業車両が実用化されてきた。
【0003】
トラクタなどの農業用作業車両の運転席の正面には、走行速度、エンジンの負荷状態、作業車両の各部の状態を表示して運転者(オペレータ)に通知するメータパネルユニットが設けられている。
【0004】
特許文献1は、一般的な乗用車用のメータユニットを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
トラクタなどの農業機械に備え付けられるメータパネルには、走行または作業中の車両に関する種々の情報をオペレータに的確に通知することが求められる。また、このような農業機械は、屋外で様々な作業を実行するため、一般の乗用車に比べて、より多くの情報を表示する必要がある。農業機械がスマート農業に用いられる場合は、更に多くの情報を表示することが必要になる。しかし、メータパネルに表示される情報の量が増大するほど、視認性が低下し、運転者が必要な情報を取得することが難しくなる。
【0007】
また、このようなメータパネルに求められる要求の高まりは、農業機械だけでなく、建設現場での作業に用いられる建設機械についても同様である。以下、移動型の農業機械および建設機械を総称して「作業車両」と称することとする。
【0008】
本開示では、このような課題を解決することが可能な情報表示システム、当該情報表示システムを備える作業車両、および画像を表示するための表示方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、以下の項目に記載の解決手段を提供する。
【0010】
[項目1]
作業車両用の情報表示システムであって、
ディスプレイ素子を有するメータパネルユニットと、
前記メータパネルユニットを制御する制御装置と、
を備え、
前記ディスプレイ素子は、ユーザによる特定の操作が可能な項目を示す項目画像が表示される表示領域を有し、
前記制御装置は、前記操作の種類を示す種別アイコンを含む前記項目画像を前記表示領域に表示させる、情報表示システム。
【0011】
[項目2]
前記操作の種類は、設定操作、計測操作およびリセット操作を含む、項目1に記載の情報表示システム。
【0012】
[項目3]
前記計測操作は、計測開始および計測停止の操作を含み、
計測に関する項目が前記ユーザによって選択されると、前記制御装置が、前記計測開始、前記計測停止または前記計測リセットを確認するためのダイアログを前記表示領域に表示させる、項目2に記載の情報表示システム。
【0013】
[項目4]
前記計測は走行距離の計測であり、
前記制御装置は、前記走行距離の計測中、前記走行距離の計測を示す計測アイコン、計測動作中であることを示す動作マーク、および計測された距離を更に含む前記項目画像を前記表示領域に表示させる、項目3に記載の情報表示システム。
【0014】
[項目5]
前記制御装置は、前記走行距離の計測中、前記動作マークを点滅させて表示し、かつ、前記計測アイコンおよび前記計測された距離を色付けして表示させる、項目4に記載の情報表示システム。
【0015】
[項目6]
前記制御装置は、前記計測アイコンおよび前記計測された距離を同じ色で表示させる、項目5に記載の情報表示システム。
【0016】
[項目7]
前記制御装置は、前記走行距離の計測中、前記項目画像に含まれる前記計測された距離の表示の色と同じ色で、前記計測された距離を前記ダイアログにも表示させる、項目5または6に記載の情報表示システム。
【0017】
[項目8]
前記メータパネルユニットは、指示針を有する第1および第2のアナログメータを有し、
前記ディスプレイ素子は、前記第1および第2のアナログメータの間に設けられている、項目1から7のいずれか1項に記載の情報表示システム。
【0018】
[項目9]
項目1から8のいずれか1項に記載の情報表示システムを備える作業車両。
【0019】
[項目10]
作業車両用のメータパネルユニットが有するディスプレイ素子に画像を表示する、コンピュータに実装される表示方法であって、
ユーザによる特定の操作が可能な項目を示す項目画像であって、前記操作の種類を示す種別アイコンを含む項目画像を前記ディスプレイ素子の表示領域に表示することを含む、表示方法。
【0020】
[項目11]
作業車両用のメータパネルユニットが有するディスプレイ素子に画像を表示させるコンピュータによって実行されるコンピュータプログラムであって、
ユーザによる特定の操作が可能な項目を示す項目画像であって、前記操作の種類を示す種別アイコンを含む項目画像を前記ディスプレイ素子の表示領域に表示させることを、前記コンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【0021】
本開示の包括的または具体的な態様は、装置、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム、もしくはコンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体、またはこれらの任意の組み合わせによって実現され得る。コンピュータが読み取り可能な記憶媒体は、揮発性の記憶媒体を含んでいてもよいし、不揮発性の記憶媒体を含んでいてもよい。装置は、複数の装置で構成されていてもよい。装置が2つ以上の装置で構成される場合、当該2つ以上の装置は、1つの機器内に配置されてもよいし、分離した2つ以上の機器内に分かれて配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本開示の実施形態によれば、農作業時に必要な多様な情報を視認性良く表示することができる情報表示システム、当該情報表示システムを備える作業車両、および画像を表示するための表示方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A】本開示の実施形態における作業車両の例を模式的に示す側面図である。
【
図1B】本開示の実施形態において、作業車両の運転席の正面に位置するステアリングホイールの背後に取り付けられた状態のメータパネルユニットを模式的に示す正面図である。
【
図2】本実施形態によるメータパネルユニットの主な構成要素の配置の例を示す正面図である。
【
図3】本実施形態によるメータパネルユニットの壁面部の構成例を示す斜視図である。
【
図4】本実施形態によるメータパネルユニットの透明カバーの構成例を示す斜視図である。
【
図5】本実施形態によるメータパネルユニットのインジケータの配置の例を示す正面図である。
【
図6】本実施形態によるメータパネルユニットのディスプレイ素子に各種情報が表示されている状態の例を示す正面図である。
【
図7】本実施形態によるメータパネルユニットにおけるアナログメータの斜視図である。
【
図8】第1のアナログメータ、円弧型インジケータ、および見返し板の配置関係を示す正面図である。
【
図9】円弧型インジケータの構成例を示す正面図である。
【
図10】第2のアナログメータおよび第2の円弧型インジケータを示す正面図である。
【
図11】本実施形態における情報表示システムの構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図12】制御装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図13】円弧型インジケータの発光領域から放射される光の色と同一の色の円弧が表示されている例を模式的に示す正面図である。
【
図14】円弧型インジケータの発光領域から放射される光の色と同一の色の円弧と、同一の色の円弧を含む他の形状物が表示されている例を模式的に示す正面図である。
【
図16】表示領域のセグメンテーションの例を模式的に示す図である。
【
図17】パフォーマンスモニタ領域に表示される項目画像の例を模式的に示す図である。
【
図18A】距離計測の開始から終了までに表示される一連の画面表示の例を説明するための模式図である。
【
図18B】距離計測の開始から終了までに表示される一連の画面表示の例を説明するための模式図である。
【
図18C】距離計測の開始から終了までに表示される一連の画面表示の例を説明するための模式図である。
【
図18D】距離計測の開始から終了までに表示される一連の画面表示の例を説明するための模式図である。
【
図18E】距離計測の開始から終了までに表示される一連の画面表示の例を説明するための模式図である。
【
図18F】距離計測の開始から終了までに表示される一連の画面表示の例を説明するための模式図である。
【
図18G】距離計測の開始から終了までに表示される一連の画面表示の例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態によるメータパネルユニットを説明する。なお、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一または同等の部分を示す。
【0025】
以下の実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明を以下の実施形態に限定しない。構成要素のサイズ、材料、形状、相対的配置などの記載は、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図している。各図面が示す部材の大きさおよび位置関係は、理解を容易にするために誇張している場合がある。
【0026】
本開示において「平行」とは、特に他の言及がない限り、2つの直線、辺、面等がなす角度が0°以上5°以下の範囲にある場合を含む。また、本開示において「垂直」または「直交」とは、特に他の言及がない限り、2つの直線、辺、面等がなす角度が90°から±5°の範囲にある場合を含む。2つの直線、辺、面等がなす角度は、特に他の言及がない限り、正の値を有し、負の値を有しない。
【0027】
<作業車両の概略構成>
図1Aは、本実施形態における作業車両200の例を模式的に示す側面図である。図示される作業車両200は、インプルメント(交換可能な作業装置)300を牽引するトラクタである。
【0028】
図1Aに示される作業車両200は、車体201と、原動機(エンジン)202と、変速装置(トランスミッション)203とを備える。車体201には、タイヤ付き車輪204を含む走行装置と、キャビン205とが設けられている。走行装置は、4つの車輪204と、4つの車輪を回転させる車軸、および各車軸の制動を行う制動装置(ブレーキ)を含む。この例における車輪204は、一対の前輪204Fと一対の後輪204Rとを含む。前輪204Fおよび後輪204Rの一方または両方は、タイヤ付き車輪ではなく無限軌道(track)を装着した複数の車輪(クローラ)に置き換えられてもよい。
【0029】
キャビン205の内部には、本開示の実施形態に係るメータパネルユニット100、運転席207、ステアリングホイール220、および操作のためのスイッチ群が設けられている。
【0030】
図1Aの作業車両200は、作業車両200の周囲をセンシングする複数の外界センサを備える。外界センサは、複数のカメラ270、複数の障害物センサ295、および複数のLiDARセンサ290などの各種のセンサを含み得る。カメラ270は、例えば作業車両200の前後左右に設けられ得る。カメラ270は、作業車両200の周囲の環境を撮影し、画像データを生成する。カメラ270が取得した画像は、例えば遠隔監視を行うための端末装置に送信され得る。カメラ270は必要に応じて設けられ、その個数は任意である。LiDARセンサ290は、作業車両200の周辺環境に位置する物体の分布を示すセンサデータを出力する外界センサの一例である。
図1Aの例では、2つのLiDARセンサ290が、キャビン205上の前部および後部に配置されている。LiDARセンサ290は、他の位置(例えば、車体201の前面下部など)に設けられていてもよい。各LiDARセンサ290は、作業車両200が走行している間、周囲の環境に存在する物体の各計測点までの距離および方向、または各計測点の3次元の座標値を示すセンサデータを繰り返し出力する。LiDARセンサ290の個数は2個に限らず、1個または3個以上でもよい。
図1Aの例において、複数の障害物センサ295は、キャビン205の前部および後部に設けられている。障害物センサ295は、他の部位にも配置され得る。障害物センサ295は、例えばレーザスキャナまたは超音波ソナーを含み得る。
【0031】
作業車両200は、さらに、GNSSユニット260を備える。GNSSは、GPS(Global Positioning System)、QZSS(Quasi-Zenith Satellite System、例えばみちびき)、GLONASS、Galileo、およびBeiDouなどの衛星測位システムの総称である。GNSSユニット110は、複数のGNSS衛星から送信される衛星信号(GNSS信号とも称する。)を受信し、衛星信号に基づいて測位を行う。GNSSユニット260は、キャビン205の上部に設けられているが、他の位置に設けられていてもよい。
【0032】
原動機202は、例えばディーゼルエンジンであり得る。ディーゼルエンジンに代えて電動モータが使用されてもよい。変速装置203は、変速によって作業車両200の推進力および移動速度を変化させることができる。変速装置203は、作業車両200の前進と後進とを切り換えることもできる。
【0033】
車体201の後部には、連結装置208が設けられている。連結装置208は、例えば3点支持装置(「3点リンク」または「3点ヒッチ」とも呼ばれる。)、PTO(Power Take Off)軸、ユニバーサルジョイント、および通信ケーブルを含む。連結装置208によってインプルメント300を作業車両200に着脱することができる。連結装置208は、例えば油圧装置によって3点リンクを昇降させ、インプルメント300の位置または姿勢を変化させることができる。また、ユニバーサルジョイントを介して作業車両200からインプルメント300に動力を送ることができる。作業車両200は、インプルメント300を引きながら、インプルメント300に所定の作業を実行させることができる。連結装置は、車体201の前方に設けられていてもよい。その場合、作業車両200の前方にインプルメントを接続することができる。
【0034】
図1Aに示されるインプルメント300は、例えば作物に薬剤を噴霧するスプレイヤであるが、インプルメント300はスプレイヤに限定されない。例えば、モーア(草刈機)、シーダ(播種機)、スプレッダ(施肥機)、レーキ、ベーラ(集草機)、ハーベスタ(収穫機)、プラウ、ハロー、またはロータリなどの、任意のインプルメント300を作業車両200に接続して使用することができる。
【0035】
このように、スマート農業に用いられる作業車両200は、種々のセンサを搭載しており、各種のインプルメント300とともに様々な作業を実行する。そのような作業の過程においては、運転者(ユーザまたはオペレータ)に対して走行状態および作業状態に関する様々な情報を与える必要がある。このため、メータパネルユニット100に表示されるべき情報は、作業の内容および段階に応じて多様に変化し得る。
【0036】
なお、トラクタなどの作業車両200は、手動運転、自動操舵、または自動運転で走行するように構成されていてもよい。
【0037】
<メータパネルユニットの概略構成>
図1Bは、本開示の実施形態において、作業車両のひとつであるトラクタに取り付けられたメータパネルユニット100を模式的に示す正面図である。図示される例において、メータパネルユニット100は、トラクタの運転席の正面側に配置される。具体的には、メータパネルユニット100は、ステアリングホイール(ハンドル)220を回転可能に支持するハンドルステー230の上方において、メータカバー240の開口部に嵌め込まれている。この例におけるステアリングホイール220は、中央のハブ(ホーンカバー)221と、ホーンカバー221から径方向に延びる3本のスポーク222A、222B、222Cと、スポーク222A、222B、222Cによって支持されるリム223とを有している。メータパネルユニット100は、運転席に着座する運転者から視認できる位置に設けられる。
図1Bの例では、スポーク222Aとスポーク222Bとの間にある開口部からメータパネルユニット100に表示される様々な情報が視認可能である。
【0038】
メータパネルユニット100は、視認性に優れることが求められる。特に自動操舵または自動運転が可能な移動型の作業車両では、様々な農作業を実行する過程で、一般の乗用車では表示されない様々な情報を表示することが求められる。このようなメータパネルユニット100にとって、その視認性は、様々な情報の中でも特に重要度の高い情報が見落とされないように高められることが望ましい。また、メータパネルユニット100を様々な種類の作業車両に搭載する場合、取り付けが容易に行える構造を有していることが望ましい。以下に説明するように、本実施形態におけるメータパネルユニット100は、視認性に優れ、取り付けも容易である。
【0039】
以下、
図2、
図3、および
図4を参照しながらメータパネルユニット100の概略構成を説明する。
図2は、本実施形態によるメータパネルユニット100の主な構成要素の配置の例を示す正面図である。
図3は、メータパネルユニット100の後述する壁面部の構成例を示す斜視図である。
図4は、メータパネルユニット100の後述する透明カバーの構成例を示す斜視図である。これらの図には、参考のため、互いに直交するX軸、Y軸、およびZ軸が示されている(右手座標系)。本明細書では、Y軸の正方向を上方、負方向を下方と呼ぶことがあり、X軸の正方向を右方向、負方向を左方向と呼ぶことがある。また、Z軸の正方向を正面の方向、負方向を背面の方向と呼ぶことがある。
【0040】
図2に示されるメータパネルユニット100は、第1のアナログメータ11と、第2のアナログメータ12と、第1および第2のアナログメータ11、12の間に設けられたディスプレイ素子13と、を有するメータ部10を備える。本明細書では、
図2に示されるメータ部10の表示をする部分を、メータ部10の表示面側と呼ぶこともある。
【0041】
第1のアナログメータ11は、指示針2Aを有し、第2のアナログメータ12は、指示針2B、2Cを有している。指示針2Aは、第1のアナログメータ11の中央付近に位置する回転軸の周りに回転可能に支持されている。指示針2Aは、指示針2Aの先が向く方向によって例えばエンジン回転数を示す。ここで「エンジン回転数」とは、単位時間(例えば1分)あたりのエンジンの回転数を意味する。指示針2B、2Cは、それぞれ、第2のアナログメータ12の異なる場所に位置する2つの回転軸の周りに回転可能に支持されている。指示針2Bは、指示針2Bの先が向く方向によって例えば燃料残量を示す。また、指示針2Cは、指示針2Cの先が向く方向によって例えばエンジン冷却水の温度(水温)を示す。指示針2A、2B、2Cは、メータ部10が備える駆動部(ムーブメント)によって駆動される。駆動部は、エンジン回転数、燃料残量、または水温などのセンサ出力を示す電気信号を受けとり、指示針2A、2B、2Cの向きを変える機械的運動に変換することができる。指示針2A、2B、2Cのそれぞれの駆動部は、ステッピングモータなどのアクチュエータを有している。
【0042】
ディスプレイ素子13は、アナログメータではなくデジタルメータである。ディスプレイ素子13は、例えば、液晶表示パネル、OLED(Organic Light Emitting Diode)などのアクティブマトリックスディスプレイである。以下の説明では、一例として、ディスプレイ素子13が液晶ディスプレイ(LCD)であるものとする。ディスプレイ素子13は、表示領域に二次元的に配列された多数の画素を有しており、多数の画素から発せられる光によって人の目に視認可能な表示が実現される。本実施形態におけるディスプレイ素子13では、各画素がRGBのサブ画素を含み、カラーの画像を表示することができる。ディスプレイ素子13は、アナログメータとは異なり、表示領域内の任意の位置に、任意の大きさの数字、文字、図形、アイコン、記号、静止画像、または動画像を表示することが可能である。厳密には、数字、文字、図形、アイコン、記号も、ディスプレイ素子13が表示領域に表示する画像(静止画像または動画像)の一部である。ディスプレイ素子13は、例えば、見かけ上、指示針を有するアナログメータの全体または一部に似た画像を表示することも可能である。ディスプレイ素子13が「アナログメータ」の画像を表示する場合、画像をフレーム単位で変化させることにより、画像内の「指示針」を動画の一部として任意の向きに回転させることも可能である。なお、作業車両がバッテリで駆動する電動車である場合、エンジン回転数、燃料残量、および水温の表示は、それぞれ、例えばモータ出力、バッテリ残量、およびバッテリ温度などの表示に置き換わり得る。
【0043】
ディスプレイ素子13のような表示装置が表示する「アナログメータ」の画像と、第1のアナログメータ11および第2のアナログメータ12との相違点は、前者は平面的であるのに対して、後者は立体的であることにある。また、前者は、アナログメータの指示針およびメモリの形、色、大きさも変化させることができるが、後者では、それらを変化させることは難しい。更に、前者では、視認性が画像のコントラストに左右されるため、日中の外光が強いとき、視認性の低下が生じる可能性があるのに対して、後者では、そのような可能性が相対的に小さい。これらのことを考慮して、本実施形態では、メータ部10に表示する情報の一部、特に重要性が高く視認性が強く求められる情報については、立体的な構造をもつアナログメータによって表示する。
【0044】
メータ部10を表示面側の正面からみたときのメータ部10の外形は、楕円に似た閉曲線であるが、メータ部10の外形は、このような例に限定されない。メータ部10を正面からみたときのメータ部10の外形は、概略的に、長方形であってもよいし、直線と曲線とが組み合わせられた図形であってもよい。
【0045】
メータパネルユニット100は、更に、メータ部10の表示面側に固定された壁面部20と、メータ部10の表示面に対向する透明カバー30とを備えている。以下、壁面部20および透明カバー30の構成例を説明する。
【0046】
壁面部20は、メータ部10の周縁に沿って、第1のアナログメータ11、ディスプレイ素子13、および第2のアナログメータ12の全体を囲んでいる。壁面部20は、例えばプラスチック(合成樹脂)から形成され得る。壁面部20は、メータ部10の表示面から、垂直方向(Z軸の正方向)に突出している。壁面部20は、メータ部10の表示面に対して垂直である必要はなく、Z軸から傾斜していてもよい。本開示において、メータ部10の表示面から壁面部20の正面側の端までの距離を壁面部20の「高さ」と呼ぶことにする。本実施形態における壁面部20の高さは、メータ部10の周縁に沿って一定ではなく、周縁における位置に応じて変化し得る。
【0047】
本実施形態における壁面部20をメータ部10の正面から見たとき、壁面部20の概略形状は、楕円のような閉曲線を形成している。このような壁面部20に囲まれる領域、すなわち、壁面部20の内側には、壁面部20の内壁面に囲まれた1個の連続した3次元空間が形成される。
【0048】
壁面部20は、
図3に示されるように、高さが相対的に大きな部分と相対的に小さな部分とを有している。壁面部20の高さが相対的に大きな部分は、バイザー領域20Aを含んでいる。壁面部20のうちの少なくともバイザー領域20Aは、遮光性を有する。バイザー領域20Aは、メータパネルユニット100が作業車両に取り付けられた状態において、ディスプレイ素子13の上方に位置するように配置されている。壁面部20のバイザー領域20Aは、庇としての機能を発揮し、日光などの外光がディスプレイ素子13などを照射してメータ部10における表示の視認が低下することを抑制する。バイザー領域20Aの高さ(最大高さ)Haは、20mm以上、好ましくは35mm以上、更に好ましくは40mm以上である。メータ部10の法線方向から壁面部20を見たとき、バイザー領域20Aは、ディスプレイ素子13よりも広い範囲で左右に延び、第1のアナログメータ11および第2のアナログメータ12のそれぞれの上半分を囲んでいる。バイザー領域20Aの高さは、ディスプレイ素子13の上方で最も高く、左右の端に向かって小さなくなっている。
【0049】
壁面部20の高さが相対的に小さな部分は、メータ部10の下端に近い位置にある。壁面部20の高さが最も小さな部分の高さは、例えば5mm以下であり、0mmであってもよい。
【0050】
図3には、壁面部20と一体的に形成された、壁面部20以外の構造物も示されている。前述したように、壁面部20はプラスチックから形成され得るため、樹脂成型技術により、壁面部20および他の構造物を同時に作製することが可能である。
図3に示される壁面部20以外の構造物については、後述する。
【0051】
透明カバー30は、
図4に示されるように、凹面32を含む正面部30Aと、正面部30Aの周縁から壁面部20の外側に沿って延びる側面部30Bと、を有している。透明カバー30の側面部30Bは、壁面部20の外側を全周にわたって覆うことができる。透明カバー30は、例えば無色透明のプラスチック(例えばアクリル)、またはガラスから形成され得る。本実施形態における透明カバー30の正面部30Aと側面部30Bとは、一体部品である。
【0052】
メータパネルユニット100が作業車両に取り付けられた状態において、メータ部10の法線方向から透明カバー30を見たとき、透明カバー30の正面部30Aは、手前に前傾していることが好ましい。このような正面部30Aの前傾があると、オペレータが透明カバー30越しにメータ部10を見るとき、オペレータの顔、およびオペレータの背景が透明カバー30に写り込みにくくなる。
【0053】
透明カバー30の正面部30Aが凹面32を有することにより、オペレータが透明カバー30越しにメータ部10を見るとき、透明カバー30に移り込む運転者および背景の画像が運転者には大きく拡大して視認される。これは、透明カバー30の正面部30Aによって凹面反射が生じるからである。メータ部10によって表示される情報が、比較的小さな数字、文字、図形などによって表現されているとき、透明カバー30に写り込む像の空間周波数が小さくなる程、表示情報の視認性が低下する。本実施形態によれば、そのような視認性の低下を抑制することができる。
【0054】
透明カバー30の凹面32における曲率ρは、水平横方向(X軸方向または左右方向)および垂直縦方向(Y軸方向または上下方向)において、それぞれ、一定であることが好ましい。曲率ρは、視認される像の拡大率を規定する。曲率ρが方向によらず一様であるほど、凹面32は球面の一部に近くなり、自然な比率の拡大像が視認される。なお、正面部30Aは、必ずしも凹面を有する必要はない。例えば、反射防止膜で透明カバー30の正面部30Aを覆う場合、映り込みを気にする必要がなくなるため、正面部30Aは平面または凸面であってもよい。
【0055】
透明カバー30の側面部30Bは、壁面部20の外側に沿って延びているため、側面部30Bは、壁面部20の高さに応じた高さを有している。例えば、透明カバー30の側面部30Bのうち、壁面部20のバイザー領域20Aを覆う部分の高さは、他の部分の高さよりも大きい。透明カバー30の正面部30Aと側面部30Bとによって規定される空間を透明カバー30の「内部空間」と呼ぶことにする。透明カバー30の内部空間は、壁面部20の略全体を収容する形状およびサイズを有している。前述したように、壁面部20の内側には、壁面部20の内壁面に囲まれた1個の連続した3次元空間が形成されるが、この3次元空間の正面側は透明カバー30によって規定され、塞がれている。壁面部20の外側と透明カバー30の側面部30Bの内側とは接触していてもよいし、両者の間に隙間が形成されていてもよい。
【0056】
なお、上記の「内部空間」に存在する水蒸気が結露して透明カバー30が曇る可能性がある。このような曇りを防止するため、透明カバー30の表面に防曇剤のコーティングが行われてもよい。また、メータ部10の一部に小さな開口部を設けて内部空間と外部とを流体接続することにより、防曇効果を得ることもできる。なお、透明カバー30の全体は透明である必要はない。例えば、側面部30Bは透明である必要はない。
【0057】
次に
図5を参照して、メータ部10のインジケータ領域を説明する。
図5の例において、メータ部10は、ディスプレイ素子13の上部に設けられたインジケータ領域14Tと、ディスプレイ素子13の下部に設けられたインジケータ領域14L、14Rとを有している。インジケータ領域14T、14L、14Rのそれぞれには、各種のインジケータが設けられている。それぞれのインジケータは、背後にあるLED(Light Emitting Diode)などの発光素子が点灯しているとき、警告などの所定の情報を提示する。
【0058】
なお、本実施形態では、ディスプレイ素子13の下部には、左右に分割された2つのインジケータ領域14L、14Rが配置されているが、2つのインジケータ領域を統合した1つのインジケータ領域が配置されていてもよい。
【0059】
ディスプレイ素子13の上方に位置するインジケータ領域14Tは、他のインジケータ領域14L、14Rに比べて、ステアリングホイール220のスポーク222A、222B、222Cによって視認が邪魔されにくい。このため、インジケータ領域14Tには、多数のインジケータの中から、特に重要な情報(警告レベルが高い情報)を示すインジケータ(例えば、照明装置の点灯状態、方向指示、運転者への警報などを示すインジケータ)が選択されて配置されることが好ましい。インジケータが表示する情報の「警告レベル」は、例えば、作業車両の取扱説明書において規定され得る。例えば、エンジンの異常または故障、前照灯の点灯の有無などの情報は高い警告レベルを有する。
【0060】
本実施形態では、インジケータ領域に配置される個々のインジケータは、特徴的な図形(アイコンおよび/または文字を含む)を規定する形状の透光領域と、背後に配置される発光素子によって構成されている。インジケータの点灯/消灯は、背後の発光素子の点灯/消灯によって実行され得る。個々のインジケータの背後には、例えば1個または2個の発光素子が配置される。
【0061】
次に
図6を参照して、ディスプレイ素子13の表示例を説明する。
図6の例において、ディスプレイ素子13の表示領域は、後述するように、幾つかの領域に区分されている。各領域に変速段階、車両速度、各種機能パフォーマンス表示、アワーメータなどの情報を示す「画像」が表示されている。この画像には、文字、数字、図形、アイコン、記号などによって表される各種の情報が含まれる。多様なデジタル画像は、視認性を高めるため、それぞれが異なる色によって示され得る。また、特にオペレータの注目を引くべきときには、文字、数字、図形、アイコン、記号の位置、大きさ、または色の少なくとも1つが変更されて強調した表示が行われ得る。このような強調した表示が行われるとき、スピーカなどの音響装置から音響または音声が発せられてもよい。
【0062】
<コミュニケーションリングおよび見返し板>
次に、
図7から
図9を参照して、円弧型インジケータ(C字型のコミュニケーションリング)および見返し板について説明する。
【0063】
本実施形態のメータパネルユニット100は、指示針2Aの可動領域11Xの周囲に配置された第1の円弧型インジケータ(コミュニケーションリング)40Aと、指示針2B、2Cの可動領域の周囲に配置された第2の円弧型インジケータ40B(
図10を参照)と、を備える。本開示における「円弧」とは、円(円周)の一部を意味するが、この円は「真円」に限定されず、楕円の一部のように曲率が緩やかに、または局所的に変化する部分を含んでいてもよい。
【0064】
第1の円弧型インジケータ40Aと第2の円弧型インジケータ40Bとは、左右対称の構造を有しているため、これらを総称して円弧型インジケータ40と称する。以下、簡単のため、第1の円弧型インジケータ(コミュニケーションリング)40Aを例にとり、円弧型インジケータ40の説明を行う。
【0065】
図7に示されるように、本実施形態のメータパネルユニット100は、円弧型インジケータ40の外側に位置する見返し板50を備えている。見返し板50は、壁面部20の材料と同一の材料(プラスチック)から形成されており、
図3に示されるように、壁面部20と一体化された部品である。見返し板50は、正面から見たとき、概略的に円弧型の形状を有している。見返し板50の上端50Tの高さは、上側の端50Aから下側の端50Bまでの間で連続的に変化しており、中間の位置で最大である。見返し板50は、メータ部10から立ち上がる湾曲した壁である。壁面部20のバイザー領域20Aのメータ部10からの高さは、見返し板50のメータ部10からの高さよりも大きい。言い換えると、バイザー領域20Aのメータ部10からの高さの最高値が、見返し板50のメータ部10からの高さの最高値よりも大きい。
【0066】
図8は、第1のアナログメータ11、円弧型インジケータ40、および見返し板50の配置関係を示す正面図である。
図9は、主として円弧型インジケータ40の構成例を示す正面図である。第1のアナログメータ11、円弧型インジケータ40、および見返し板50は、いずれも、
図8に示されるE-E破線よりも右(X軸の正方向)に延びていない。E-E破線よりも右(X軸の正方向)には、ディスプレイ素子13が配置される。
【0067】
このような構成を採用することにより、指示針2Aの長さ、すなわち第1のアナログメータ11の半径を大きくしながら、第1のアナログメータ11の横方向(X軸方向)サイズの拡大を抑制することが可能になる。このことは、第2のアナログメータ12についても同様である。なお、メータ部10の横方向サイズを拡大することは、
図1Bに示されるように、ステアリングホイール220のスポーク222A、222Bが第1および第2のアナログメータ11、12の視認を妨げる可能性を大きくする。このため、メータ部10の横方向サイズを拡大することは好ましくない。本実施形態では、円形ではなく、E-E破線と円弧によって囲まれる形状の内側にアナログメータを収めることにより、限られた横方向サイズを有するメータ部10においても、第1および第2のアナログメータ11、12の視認性を高めつつ、ディスプレイ素子13の横方向(X軸方向)サイズの拡大を可能にする。また、第1および第2のアナログメータ11、12と、ディスプレイ素子13との境界を直線によって区切ることにより、アナログ情報とデジタル情報との表示エリアを明確に分けることができ、アナログ情報およびデジタル情報の両方の情報の視認性が高められる。
【0068】
上記の効果を得るためには、第1のアナログメータ11を囲むように配置される円弧型インジケータ40(40A)の「円弧」の中心角が180°よりも大きく、かつ、270°よりも小さいことが好ましい。「円弧」の中心角が180°以下であれば、第1のアナログメータ11の視認性が低下し、「円弧」の中心角が270°以上であれば、第1のアナログメータ11の横方向(X軸方向)の縮小効果が不十分になる。このことは、第2のアナログメータ12を囲む円弧型インジケータ40(40B)についても同様である。意匠性の観点から、左右の円弧型インジケータ40A、40Bは、ディスプレイ素子13の中心を通る垂直線に関して対称に配置されることが好ましい。
【0069】
円弧型インジケータ40は、指示針2Aの可動領域11Xと見返し板50との間に配置された少なくとも1つの発光領域42を有する。
図9に示される例では、複数の発光領域42が設けられている。この例において、個々の発光領域42は、細くて円弧状に延びる湾曲した形状を有している。そして、複数の発光領域42は、1列の円弧を形成するように配列されて円弧型インジケータ40を形成している。発光領域42の個数が1つである場合、1個の発光領域42が円弧の形状を有している。
【0070】
図に示される例において、第1のアナログメータ11は、円弧型インジケータ40と指示針2Aの可動領域11Xとの間に円弧型の目盛り17を有している。この目盛り17は、表示面から突出した立体形状を有するメモリ(立体目盛り)であり、壁面部20および見返し板50とともにプラスチックから一体的に形成されている。なお、目盛り17は、必ずしも立体形状を有している必要はないが、見やすさを高め観点からは、立体目盛りであることが望ましい。
【0071】
円弧型インジケータ40が有する複数の発光領域42は、それぞれが、光を発する素子(例えばLEDまたはOLED)から形成されていてもよいが、本実施形態では、メータ部10の表示面(すなわちメータ部10の筐体の正面側にある表面)に設けられた複数の透光領域、および、その背後に配置された1または複数の発光素子によって構成される。
【0072】
複数の発光素子は、異なる色の光を発する複数のLEDを含んでいてもよい。本実施形態において、複数の発光素子は、赤色光を放射するLED、緑色光を放射するLED、青色光を放射するLEDを含む。これらのLEDを選択的に発光させることにより、円弧型インジケータ40は、様々な色の光によって情報をオペレータに通知する機能を発揮できる。例えば、
図9に示される複数の発光領域42の全てから赤色光、緑色光、青色光を選択的に発することができる。また、複数の発光領域42のそれぞれに発光素子を割り当て、複数の発光素子から独立して光を放射させることにより、複数の発光領域42から順番(シーケンシャル)に光を発することも可能である。
【0073】
<立体目盛り>
次に、立体目盛り17について説明する。
図7および
図8に示されるように、立体目盛り17は、概略的にC文字を形成するように、円弧型インジケータ40の内側で円弧状に延びる。また、立体目盛り17は、
図3および
図7に示されるように、所定間隔で並んだ複数の切り欠き部17Aを有している。この切り欠き部17Aは、立体目盛り17の幅が局所的に小さくなった部分である。切り欠き部17Aの位置は、第1のアナログメータ11において指示針2Aの先が示す目盛りの位置と整合している。このような立体的な切り欠き部17Aが存在することにより、オペレータによる目盛りの読み取りが容易になる。
【0074】
図7に示されるように、見返し板50は、指示針2Aの可動領域11Xに向かって突出する複数の突出部52を有している。複数の突出部52は、立体目盛り17の切り欠きの位置、言い換えると、目盛りに整合する位置に設けられている。このため、立体目盛り17の切り欠き部17Aが突出部52と一体的な図形として認識され、目盛りの視認性が向上する。複数の突出部52は、それぞれ、円弧型インジケータ40における複数の発光領域42の間を跨いでいる。従って、複数の発光領域42の配列も目盛りの配列と整合している。
【0075】
図3からわかるように、複数の突出部52は、立体目盛り17と見返し板50とをブリッジとして連結している。また、見返し板50は壁面部20に連結されている。本実施形態では、壁面部20、見返し板50、および立体目盛り17は、樹脂から一体的に形成されている。そして、見返し板50から延びる複数の突出部52が円弧型インジケータ40における複数の発光領域42の境界部を規定している。
【0076】
次に
図10を参照して、第2のアナログメータ12および第2の円弧型インジケータ40Bについて説明する。第2の円弧型インジケータ40Bは、第1の円弧型インジケータ40Aと左右対称の関係にあり、その基本的な構成は同一である。第2の円弧型インジケータ40Bの外側には見返し板(右側見返し板)50が設けられている。左側見返し板50は、先に説明した見返し板(左側見返し板)50と左右対称の関係にある。
【0077】
第2の円弧型インジケータ40Bの内側には、立体目盛り17に相当する円弧型凸部17Xが設けられているが、この円弧型凸部17Xには切り欠き部は存在しない。円弧型凸部17Xと右側見返し板50との間には、第2の円弧型インジケータ40Bが有する複数の発光領域42を規定するように突出部(ブリッジ)52が等間隔で配列されている。
【0078】
第2の円弧型インジケータ40Bに囲まれる範囲に、第2の指示針2Bおよび第3の指示針2Cの可動領域13Xが配置されている。第2の指示針2Bの回転角度範囲2BMと第3の指示針2Cの回転角度範囲2CMは、互いに相似または合同の形状を外形として有している。
図13の例において、第2の指示針2Bの回転角度範囲2BMと第3の指示針2Cの回転角度範囲2CMは、上下対称であるが、このような例に限定されない。回転角度範囲2BMおよび回転角度範囲2CMは、例えば、一方を上下方向に平行移動したとき、互いに重なりあうような形状および大きさを有していてもよい。
【0079】
このような構成を採用することにより、第2の指示針2Bと第3の指示針2Cとの動きから目盛りを読みとることが直感的に可能であり、読み誤りが起きにくくなる。
【0080】
<情報表示システム>
以下、
図11から
図14を参照して、本開示の実施形態における情報表示システム500を説明する。
図11は、本開示の実施形態における情報表示システム500の構成例を模式的に示すブロック図である。情報表示システム500は、前述したメータパネルユニット100と、メータパネルユニット100を制御する制御装置400とを備える。制御装置400は、作業車両内に配置される電子制御ユニット(ECU)を含んでいてもよい。情報表示システム500は、ブザー、スピーカなどの音響装置を更に備え得る。
【0081】
情報表示システム500は、作業車両が備えるECU群610およびセンサ群620にバスBを介して通信可能に接続される。ECU群610を総称して「車両制御装置」と呼んでもよい。本明細書では、作業車両が備える各種のECUを「車両ECU」、情報表示システム500が備える制御装置400におけるECUを「メータECU」と呼んで両者を区別する。各種の車両ECUとメータECUとが、例えばCAN(Controller Area Network)などのビークルバス規格に従って、相互に通信することができる。例えば、作業車両が備えるECU群610のうちの1つの車両ECUが、他の車両ECUからの信号、およびセンサ群620に含まれる各センサから出力されるセンサデータを受け取り、作業車両の状態に応じて、後述するような警告メッセージの表示、または、インジケータの点灯・消灯・点滅をメータECUに指示する。メータECUは、車両ECUからの指示を受け、表示領域に警告メッセージを表示させたり、インジケータを点灯、消灯または点滅させたりする。
【0082】
図11では、バスBの配線以外の配線の図示が簡略化されている。ただし、例えば、作業車両が備えるセンサ群620に含まれる1以上のセンサから制御装置400に信号を直接送信するための配線、または、後述する入力装置と制御装置400とを接続する配線が存在し得る。また、バッテリから、メータパネルユニット100、制御装置400、作業車両のECU群610およびセンサ群620のそれぞれに電力を供給するための電源配線が存在する。
【0083】
図12は、制御装置400のハードウェア構成例を示すブロック図である。制御装置400は、処理装置434、ROM(Read Only Memory)435、RAM(Random Access Memory)436、外部I/F437、および通信I/F438を備える。これらの構成要素は、バス439を介して相互に接続される。
【0084】
処理装置434は、1または複数の半導体集積回路(例えばプロセッサ)を備える装置である。プロセッサは、中央演算処理装置(CPU)またはマイクロプロセッサとも称される。プロセッサは、ROM435に格納された、コンピュータプログラムを逐次実行し、画像表示に必要な様々な処理を実現する。プロセッサは、CPUを搭載したFPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphic Processer Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはASSP(Application Specific Standard Product)を含む用語として広く解釈される。
【0085】
ROM435は、例えば、書き込み可能なメモリ(例えばPROM)、書き換え可能なメモリ(例えばフラッシュメモリ)、または読み出し専用のメモリである。ROM435は、プロセッサの動作を制御するプログラムを記憶している。ROM435は、単一の記録媒体である必要はなく、複数の記録媒体の集合であり得る。複数の集合体の一部は取り外し可能なメモリであってもよい。
【0086】
RAM436は、ROM435に格納されたプログラムをブート時に一旦展開するための作業領域を提供する。RAM36は、単一の記録媒体である必要はなく、複数の記録媒体の集合であり得る。
【0087】
外部I/F437は、メータパネルユニット100を外部機器に接続するためのインタフェースである。外部I/F437の例は、USB(Universal Serial Bus)インタフェース、および、デジタルまたはアナログ方式のビデオインタフェースを含む。
【0088】
通信I/F438は、制御装置400と他の電子部品またはECUとの間で通信を行うためのインタフェースである。例えば、通信I/F438は、種々のプロトコルに準拠した有線通信を行うことができる。通信I/F438は、Bluetooth(登録商標)規格および/またはWi-Fi(登録商標)規格に準拠した無線通信を行ってもよい。いずれの規格も、2.4GHz帯の周波数を利用した無線通信規格を含む。
【0089】
制御装置400は記憶装置を更に備え得る。記憶装置は、例えば、半導体メモリ、磁気記憶装置、または光学記憶装置、またはそれらの組合せであり得る。
【0090】
作業車両が備えるECU群610は、例えば、速度制御用のECU、ステアリング制御用のECUおよびインプルメント制御用のECUを含む。作業車両(例えばトラクタ)が自動運転で走行するように構成されている場合、ECU群610は、自動運転制御用のECUを更に含み得る。自動運転制御用のECUは、車両本体に搭載された各種のセンサから出力されたデータに基づいて、自動運転を実現するための演算および制御を行う。
【0091】
センサ群620は、例えば、温度センサ、照度センサ、燃料センサ、水温センサ、オイル残量計、エンジン回転センサ、車速センサ、バッテリ電圧センサ、シャトルセンサ、ハンドアクセルセンサ、アクセルペダルセンサ、主変速レバーセンサ、副変速レバーセンサ、シートベルトセンサ、PMセンサ、加速度センサ、角速度センサ、IMU(Inertial Measurement Unit)、地磁気センサ、撮像装置、LiDARセンサ、超音波センサ、障害物接触センサ、GNSS(Global Navigation Satellite System)レシーバを含み得る。
【0092】
情報表示システム500の制御装置400は、メータパネルユニット100内部の基板に実装される集積回路装置であってもよいし、メータパネルユニット100に外付けされる外部の集積回路装置であってもよい。また、制御装置400の機能の一部または全部が、1以上の車両ECUによって実現され得る。あるいは、制御装置400の機能の一部または全部が、通信ネットワークによって通信I/F438を介して接続される1または複数のサーバー(コンピュータ)によって実現され得る。このように、1以上の車両ECUおよび/または1以上のサーバーが制御装置400と協働して、情報表示システム500に求められる各種機能を実現し得る。この場合、車両ECUおよび/またはサーバーは、情報表示システム500の一部として機能する。
【0093】
本実施形態における情報表示システム500において、制御装置400は、作業車両の起動時、各種の情報をディスプレイ素子13に表示させる前に、円弧型インジケータ40によって情報を表示するように構成されている。このことは、起動時にオペレータが最初に知っておくべき情報を優先的に伝えることを可能にする。このような情報は、作業車両の状態(走行または作業にとって異常と分類される状態)を示す内容を有している。また、制御装置400は、発する光の色を情報の内容に応じて変化させるように動作する。例えば、起動時に異常が無い場合、制御装置400は、円弧型インジケータ40から青色の光を発し、例えば走行に問題が生じるような場合には、起動直後に異常を示す赤色の光を発するように動作し得る。走行に問題が生じるような場合の例は、バッテリの電圧異常、エンジンオイルの圧力異常、エンジンの異常加熱、ブレーキ系統の異常などを含む。なお、発光色は、青および赤に限定されず、緑であってもよい。
【0094】
更に、本実施形態において、制御装置400は、円弧の延長線上に位置する曲線状の画像をディスプレイ素子13に表示させるように構成されている。
図13は、円弧型インジケータ40の発光領域42から放射される光の色と同一の色の円弧13Aが表示されている例を模式的に示す正面図である。
図13には、一例として、円弧型インジケータ40の円弧と同心の円弧13Aが表示されている。
図14は、円弧型インジケータ40の発光領域42から放射される光の色と同一の色の円弧13Bと、同一の色の円弧を含む他の形状物13Cが表示されている例を模式的に示す正面図である。
図14に示される例における他の形状物13Cは直線部分である。制御装置400は、発光領域42の円弧と同心の円弧13Bと、円弧13Bに連結する直線部分をディスプレイ素子13に表示させる。当該直線部分は、第1のアナログメータ11とディスプレイ素子14との境界を規定する直線(
図14に示すE-E破線に相当)に平行に延びている。このような表示を行うことにより、第1のアナログメータ11を囲む円のうち、E-E破線によって切り取られた部分が第1のアナログメータ11の一部としてオペレータによって視認されるため、第1のアナログメータ11を大きく感じることができる。また、第1アナログメータ11の一部であるかのように表示される画像(以下、「リング補完画像」と呼ぶ。)は、ディスプレイ素子13に表示される数値または文字などの情報によって部分的に見えなくなってもよい。形状物13Cと同様に円弧13Bの部分が直線形状を含んでいてもよい。ディスプレイ素子13に表示する部分が直線形状を含むことにより、シャープなデザインにすることができる。
【0095】
制御装置400は、
図13および
図14の例に限定されない様々な画像を円弧型インジケータ40の発光領域42から放射される光に合わせてディスプレイ素子13に表示させることができる。また、制御装置400は、円弧型インジケータ40の発光領域42の点滅に同期させて種々の画像をディスプレイ素子13に表示させることができる。このような円弧型インジケータ40の表示とディスプレイ素子13の表示とを強調または連動させることにより、円弧型インジケータ40の表示がオペレータに伝わり易くなる。
【0096】
メータパネルユニット100の起動後、ディスプレイ素子13の表示領域にホーム画面が表示される。
図15は、ホーム画面の例を示す図である。ホーム画面を起点に、ユーザが、後述する入力装置を利用して、表示領域上のコンテンツの表示を変更したり、各種の設定項目を選択したりする操作を行うことができる。
【0097】
図15に示される例において、ユーザによるインタラクティブな操作を可能とする入力装置170が、通信ケーブルを介してメータパネルユニット100に接続される。入力装置170は、例えばジョグダイヤルなどのセレクタスイッチ171および操作スイッチ172を有する。入力装置170は、メータパネルユニット100に無線または有線で接続され得る。入力装置170として、ユーザの操作を受け付ける任意の装置を用いることができる。入力装置170は、例えば、ロータリスイッチ、スライドスイッチ、押しボタンスイッチ、タッチスクリーン、ジョイスティック、またはそれらの二つ以上の組合せであってもよい。
【0098】
ディスプレイ素子13は、作業車両に関する情報を示す種々の画像が表示される表示領域を有する。作業車両に関する情報は、例えば、内燃機関(エンジン)、車両本体、PTO軸、油圧/3点ヒッチ、および、車両本体が備える電装品に関連する情報を含む。これらの情報は、車両システムの内部状態を示す情報である。車両本体に関連する情報は、例えば、車両の進行方向、クラッチ、変速、ブレーキ、枕地制御、およびクルーズ制御に関する情報を含む。更に、ディスプレイ素子13の表示領域には、例えばカメラ画像、ラジオ設定画面およびオーディオ設定画面を含む種々のコンテンツが表示され得る。
【0099】
<表示領域のセグメンテーション>
次に
図16を参照して、表示領域のセグメンテーションについて説明する。
図16は、表示領域のセグメンテーションの例を模式的に示す図である。ディスプレイ素子13の表示領域は複数のブロックに区分けされる。言い換えると、ディスプレイ素子13の表示領域は複数の領域を有する。
図16に示される例における複数の領域は、プライマリ領域131、サブ領域132およびLCDインジケータ領域133を含む。
図16におけるプライマリ領域131は、ディスプレイ素子13の表示領域のうちの点線で囲んだ領域である。サブ領域132は、ディスプレイ素子13の表示領域のうちの破線で囲んだ領域である。LCDインジケータ領域133は、ディスプレイ素子13の表示領域のうちの一点鎖線で囲んだ領域である。これらの3つの領域は互いに重ならない。なお、
図16における破線、点線、および一点鎖線は、わかり易さのために、一部が重なって記載されている。
【0100】
プライマリ領域131は、画像を最前面(または手前)に表示するための領域である。
図16に示される例におけるプライマリ領域131は矩形領域(またはパネル状の領域)である。ただし、プライマリ領域131の外形は、例えば、楕円、または直線と曲線とが組み合わせられた図形であってもよい。作業車両に関する情報のうちのより重要な情報(以下、「主要情報」と呼ぶ。)を示すプライマリ画像がプライマリ領域131に表示される。主要情報は、ユーザが優先的に知っておくべき情報であり、例えば、作業車両の進行方向、トランスミッション状態および車両速度(以下、「車速」と呼ぶ。)を示す情報を含む。
【0101】
このようにしてプライマリ領域131に表示されるプライマリ画像が示す主要情報は、表示領域の最前面に表示される。
図15に示されるように、プライマリ画像はリング補完画像よりも手前に表示される。このように、プライマリ画像は、他の画像またはコンテンツによって隠されることなく、ユーザに主要情報を適切に伝達することが可能である。従って、様々な情報の中でも特に重要度の高い主要情報の視認性が向上し、かつ、主要情報の見落としが低減される。
【0102】
図16に示される例では、プライマリ領域131は、横方向に延びる帯状の形状を有する。プライマリ領域131には、作業車両の走行状態に関する複数種類の情報が表示される。プライマリ領域131は、複数の領域に区分けされている。
図16の例では、プライマリ領域131は、横方向に並ぶ第1領域131A、第2領域131B、第3領域131C、および第4領域131Dに区分けされている。
【0103】
左端に位置する第1領域131Aは、作業車両のシャトルレバーの状態、すなわち進行方向を表示する。第1領域131Aは、例えば、シャトルレバーが前進(F)、中立(N)、後進(R)のいずれの状態にあるかを示す情報を表示する。
【0104】
左から2番目に位置する第2領域131Bは、トランスミッション状態、例えば作業車両の変速段の設定に関する情報を表示する。
図16の例では、第2領域131Bには、現在の主変速および副変速のそれぞれの設定が「B3」の記号で表示されている。「B」は副変速の設定段階を示し、「3」は主変速の設定段階を示す。第2領域131Bは、
図16に示すように、自動変速モードにあることを示すアイコン131B1、および自動変速モードにおける変速段階の範囲131B2を表示してもよい。
【0105】
第3領域131Cは、車速の情報を表示する。制御装置400は、例えば車両ECUからの指令に従い、車速の情報をキロメートル単位表示またはマイル単位表示に切り替えて表示する。
【0106】
右端の第4領域131Dは、進行方向、トランスミッション状態、車速以外の情報を表示する。
図16の例では、第4領域131Dには、アワーメータの計測値、すなわち作業車両のこれまでの稼働時間が表示されている。第4領域131Dには、アワーメータの計測値に限らず、他の情報が表示されることもある。例えば、エンジン回転数の上限設定値、またはメモリに記録されたエンジン回転数の目標値などの種々の情報が第4領域131Dに表示され得る。制御装置400は、例えば車両ECUからの指令に従い、第4領域131Dの表示を動的に変化させるように構成され得る。第4領域131Dは、後述する領域132Bとともに、作業車両の走行および作業のパフォーマンスを動的に表示する。このため、第4領域131Dを「ダイナミックパフォーマンスモニタ領域」と呼ぶことがある。
【0107】
サブ領域132はプライマリ領域131の下方に位置する。種々のコンテンツがサブ領域132に表示される。
図16に示される例におけるサブ領域132は、矩形領域であり、3種類の領域にさらに区分けされている。サブ領域132は、パフォーマンスモニタ領域132A、ダイナミックパフォーマンスモニタ領域132B、および2つのゲージ領域132Cを含む。
【0108】
パフォーマンスモニタ領域132Aは、サブ領域132に含まれる3つの領域の中でサイズが最も大きな領域であり、サブ領域132の中で上寄りに位置する。パフォーマンスモニタ領域132Aを、サブ領域132における「上側領域」と称することがある。パフォーマンスモニタ領域132Aは、主に、各種の機能パフォーマンス情報を示す様々な項目の中から、ユーザが選択した1以上の項目(以下、「選択項目」と呼ぶ。)を表示する。ユーザが選択することが可能な項目の例は、エンジン回転数、エンジン回転上限設定値、エンジン回転メモリの値、燃料消費量、燃費、移動距離、負荷率、PTO軸の回転数、スリップ率、ディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)再生、および、作業面積に関する情報を含む。
【0109】
選択項目の画面は、ユーザが入力装置を操作することによって頁送りまたは頁戻しが可能な複数の頁から構成され得る。
図16には、複数の頁のうちの1つの頁に表示される複数の選択項目の例が示されている。
図16に示される例では、4個の選択項目が1つの頁に表示される。ただし、1つの頁に表示される選択項目の数は4個に限定されず、例えば2個、3個または5個以上であってもよい。
【0110】
ダイナミックパフォーマンスモニタ領域132Bは、サブ領域132の中で下寄りに位置する。ダイナミックパフォーマンスモニタ領域132Bを、サブ領域132における「下側領域」と称することがある。ダイナミックパフォーマンスモニタ領域132Bには、前述した各種の機能パフォーマンス情報を示す様々な項目が表示され得る。ダイナミックパフォーマンスモニタ領域132Bに表示される情報の表示は、例えば車両ECUからの指令を受けた制御装置400(例えばメータECU)によって制御され得る。制御装置400は、車両ECUからの指令に応じて、ダイナミックパフォーマンスモニタ領域132Bの表示を変更するように構成され得る。
図16に示すように、ダイナミックパフォーマンスモニタ領域132Bには、例えば2個の項目が表示され得る。ただし、項目の個数は2個に限定されない。ダイナミックパフォーマンスモニタ領域132Bには、
図15に示すように何も表示されないこともある。
【0111】
ゲージ領域132Cは、サブ領域132における右側および左側に位置する。左右の2つのゲージ領域132Cの間に、パフォーマンスモニタ領域132Aおよびダイナミックパフォーマンスモニタ領域132Bが位置する。右側および左側のそれぞれのゲージ領域132Cには、アイコンおよび目盛りを含むゲージ画像が表示され得る。ゲージ画像の例は、ディーゼルエキゾーストフルード(DEF)の残量、粒子物質(PM)堆積量およびタイヤの空気圧の残量に関する情報を含む。
【0112】
パフォーマンスモニタ領域132Aおよびダイナミックパフォーマンスモニタ領域132Bに表示される画像は、入力装置を用いたユーザの操作に応じて変更され得る。例えば、パフォーマンスモニタ領域132Aおよびダイナミックパフォーマンスモニタ領域132Bの全体に相当する領域に、カメラ画像、ラジオ設定もしくはオーディオ設定を行うための画像、フロントローダー制御を行うための画像、シリンダ流量制御を行うための画像、操作部材の設定を行うための画像、操舵アシスト制御を行うための画像、自動操舵制御を行うための画像、アタッチメント作業機制御を行うための画像、または、機能項目の一覧を表示するランチャー画像などが表示され得る。このように2以上の領域を統合して1つの領域として利用することによって、画像、コンテンツを比較的大きく表示することができる。
【0113】
LCDインジケータ領域133は、プライマリ領域131の上部に位置する。
図16に示される例におけるLCDインジケータ領域133は、プライマリ領域131およびサブ領域132と同様に矩形領域である。LCDインジケータ領域133は、作業車両の状態を示す情報、警告情報、メンテナンス関連情報などを表示するための領域として機能する。例えば、ブレーキ警告、燃料の残量警告などの警告を発すべき状態になれば点灯し、その状態が解消されれば消灯するインジケータがLCDインジケータ領域133に表示され得る。他の例として、DPF再生、エンジンオイル交換などのメンテナンスをユーザに促すために定期的に点灯するインジケータがLCDインジケータ領域133に表示され得る。更なる例として、エンジン回転数の上げ下げを要求するためのインジケータがLCDインジケータ領域133に表示され得る。LCDインジケータ領域133には、通常時にはいずれのインジケータも表示されず、黒い背景が表示される。警告またはメンテナンス情報を表示すべき状態になると、その警告またはメンテナンス情報に対応するインジケータが点灯する。LCDインジケータ領域133には、最大で例えば10個程度のインジケータが表示され得る。黒い背景にインジケータを強調して表示することができるため、オペレータまたはユーザがLCDインジケータの発生に気づきやすくすることができる。
【0114】
LCDインジケータ領域133は、
図5に示すインジケータ領域14Tの下方に位置する。インジケータ領域14Tに配置されるインジケータは、LEDなどの発光素子によって点灯するハードウェアインジケータである。これに対し、LCDインジケータ領域133に表示されるインジケータは、LCDへの描画処理によって点灯する。本明細書において、LEDによるハードウェアインジケータを「LEDインジケータ」、LCDインジケータ領域133に表示されるインジケータを「LCDインジケータ」と呼び、両者を区別する場合がある。
【0115】
図16に示すサブ領域132には、例えばエンジンまたは電装品の異常または故障が検出されたときに、異常または故障の内容をユーザに通知するためのメッセージ、または、車両システムの内部状態を警告するためのメッセージを含む画像(以下、「ポップアップ画像」と呼ぶ場合がある。)も表示され得る。また、サブ領域132には、メンテナンス情報を示すメッセージを含むポップアップ画像も表示され得る。
【0116】
本実施形態における情報表示システム500は作業車両用のシステムである。情報表示システム500は、ディスプレイ素子13を有するメータパネルユニット100と、メータパネルユニット100を制御する制御装置400とを備える。ディスプレイ素子13は、作業車両に関する情報を示す種々の画像が表示される表示領域を有する。表示領域には、ユーザによる特定の操作が可能な項目を示す項目画像が更に表示される。項目画像が表示される表示領域は、
図16に示されるパフォーマンスモニタ領域132Aである。制御装置400は、操作の種類を示す種別アイコンを含む項目画像を表示領域(すなわち、パフォーマンスモニタ領域132A)に表示させる。言い換えると、制御装置400は、表示領域上にパフォーマンスモニタ領域132Aを生成し、パフォーマンスモニタ領域132Aに項目画像を生成または描画する。このように、表示領域において区分けされる複数の領域のそれぞれは、表示領域上の特定のフィールドに描画するための描画領域である。
【0117】
本実施形態における項目画像は、複数のパフォーマンス項目を含む。各パフォーマンス項目の画像は、操作の種別を示す種別アイコンを含み得る。操作の種類は、例えば、設定操作、計測操作(または測定操作)およびリセット操作を含む。計測操作は、計測開始および計測停止の操作を含む。
【0118】
<距離計測時における画面表示の例>
図17は、パフォーマンスモニタ領域132Aに表示される項目画像の例を模式的に示す図である。
図17に例示される項目画像は、4個のパフォーマンス項目141~144を含む。パフォーマンス項目141は平均負荷率を示す。パフォーマンス項目142は距離計測を示す。パフォーマンス項目143は平均作業面積効率を示す。パフォーマンス項目144は累積走行距離を示す。図示される例では、各パフォーマンス項目の領域の左寄りにパフォーマンス項目に対応したアイコンが表示され、各パフォーマンス項目の領域の右寄りにパフォーマンス値が表示されている。なお、添付の図面に記載された様々なアイコンの形状は例示に過ぎない。表示領域に表示される各アイコンは任意の形状を有し得る。
【0119】
パフォーマンス項目142の画像は、走行距離の計測を示す計測アイコン154を含む。パフォーマンス項目142の領域の右上寄りに、計測操作が可能であることを示す種別アイコン151が更に表示されている。種別アイコン151は、計測操作が可能な機能パフォーマンスを示す。パフォーマンス項目143の領域の右上寄りに、リセット操作が可能であることを示す種別アイコン152が表示されている。種別アイコン152は、リセット操作が可能な機能パフォーマンスを示す。種別アイコン151および152のそれぞれは、パフォーマンス項目の領域に常時表示され得る。一方、パフォーマンス項目141およびパフォーマンス項目144のそれぞれの領域には、種別アイコンが表示されていない。
【0120】
このように、設定操作、計測操作またはリセット操作などの特定の操作が可能である項目については、種別アイコンと共にパフォーマンス項目が表示され、特定の操作が不可能である項目については、種別アイコンを伴わずパフォーマンス項目が表示される。その結果、パフォーマンス項目ごとに操作の種類、つまり可能な操作が一目瞭然になり、操作の種類の情報の視認性を高めることができるだけでなく、選択対象のパフォーマンス項目が見つかり易くなる。
【0121】
次に
図18Aから
図18Gを参照して、距離計測を例にとり、計測操作の開始から終了までに至る過程において表示される一連の画面表示の例を説明する。距離計測は、走行しながら距離を計測することが可能な機能パフォーマンスである。
【0122】
図18Aから
図18Gのそれぞれは、距離計測の開始から終了までに表示される一連の画面表示の例を説明するための模式図である。
【0123】
図18Aに例示される項目画像は、4個のパフォーマンス項目141~144を示す。この例において、パフォーマンス項目141はエンジン回転数を示す。パフォーマンス項目142は距離計測を示す。パフォーマンス項目143はトランスミッションオイル油温を示す。パフォーマンス項目144はヒッチの高さを示す。前述したようにパフォーマンス項目142の画像は、計測操作が可能な機能パフォーマンスを示す種別アイコン151を含む。パフォーマンス項目144の画像は、設定操作が可能な機能パフォーマンスを示す種別アイコン153を含む。
【0124】
図18Aに例示される画面は、距離計測がまだ開始していない状態を示しており、パフォーマンス項目142の領域に表示される計測された距離(以下、「計測距離」と記載する。)の表示156は0mを示す。パフォーマンス項目142の画像が種別アイコン151を含んでいるために、ユーザは、パフォーマンス項目142が、計測操作が可能である機能パフォーマンスであることを容易に認識できる。
【0125】
計測に関する項目がユーザによって選択されると、制御装置400が、計測開始、計測停止または計測リセットを確認するためのダイアログ145を表示領域に表示させ得る。例えば、ユーザが入力装置を操作することによって、パフォーマンス項目142にカーソルを合わせて選択すると、制御装置400は、
図18Bに示されるように、計測開始および計測リセットを確認するためのダイアログ145のポップアップ画像をサブ領域132に表示させる。これにより、ダイアログ145のポップアップ画像が項目画像よりも手前に表示される。
【0126】
図18Bに例示されるダイアログ145は、計測開始を選択するための「Start」ボタン、およびリセットを選択するための「Reset」ボタンを含み、さらに、計測距離の表示156を含む。これにより、ダイアログ145でもユーザは計測距離を確認することが可能となる。また、ダイアログ145における計測距離の表示156を、パフォーマンス項目142の領域に表示される計測距離の表示156(
図18A参照)よりも大きく表示させることで、計測距離の視認性を高めることも可能である。
【0127】
距離計測の開始前であるために、
図18Bに示される例では計測距離の表示156が0mを示し、0mの表示は計測停止中であることを示している。次に、ユーザが入力装置を操作することによって、ダイアログ145における「Start」ボタンにカーソルを合わせて選択すると、距離計測が開始される。
【0128】
距離計測が開始されると、制御装置400は、走行距離の計測中、
図18Cに示されるように、計測アイコン154、計測動作中であることを示す動作マーク155、および計計測距離の表示156を含む項目画像を表示領域に表示させる。動作マーク155の形状は図示される円形に限定されず、例えば、楕円、矩形、菱形などであり得る。
【0129】
制御装置400は、走行距離の計測中、動作マーク155を点滅させて表示し、かつ、計測アイコン154および計測距離の表示156を色付けして表示させ得る。本実施形態における画像の「色」は、明度、色相および彩度のうちの少なくとも1つの属性によって表現される。例えば、制御装置400は、オン時間700ミリ秒(msec)およびオフ時間300ミリ秒のような点滅間隔で動作マーク155を点滅させ得る。制御装置400は、計測アイコン154および計測距離の表示156を同じ色で表示させてもよい。このようにして、走行距離の計測中、計測アイコン154および計測距離の表示156は、同じ色で表示され得る。言い換えると、計測アイコン154および計測距離の表示156の色が、走行距離の計測中と、走行距離の停止中との間で変化し得る。このような表示方法によれば、走行距離の計測が継続しているかどうかが明確になり、計測中か否かの情報をユーザに適切に伝達できる。
【0130】
走行距離の計測中、ユーザが入力装置を操作することによって、パフォーマンス項目142にカーソルを合わせて選択すると、
図18Dに示されるように、制御装置400は、計測停止および計測リセットを確認するためのダイアログ145のポップアップ画像を表示領域のサブ領域132に表示させる。
図18Dに例示されるダイアログ145は、計測停止を選択するための「Stop」ボタン、リセットを選択するための「Reset」ボタンを含み、さらに、計測距離の表示156を含む。
【0131】
制御装置400は、走行距離の計測中、項目画像に含まれる計測距離の表示156(
図18C参照)の色と同じ色で、計測距離をダイアログ145にも表示させてもよい。これにより、走行距離の計測中、項目画像の計測距離の表示156、および、ダイアログ145の計測距離の表示156が同じ色で表示される。このような表示方法によれば、走行距離の計測中であることをユーザに視認性良く伝えつつ、ユーザによる計測距離の把握を容易にし得る。
【0132】
ユーザが入力装置を操作することによって、ダイアログ145における「Stop」ボタンにカーソルを合わせて選択すると、距離計測が停止する。距離計測の停止に合わせて計測距離の増加も停止する。その後、
図18Eに示されるによう、パフォーマンス項目142の領域において、動作マーク155(
図18C参照)が消灯する。計測距離の表示156は20mのままである。次に、ユーザが入力装置を操作することによって、パフォーマンス項目142にカーソルを合わせて選択すると、制御装置400は、
図18Fに示されるように、計測開始および計測リセットを確認するためのダイアログ145のポップアップ画像をサブ領域132に表示させる。
図18Fに例示されるダイアログ145は、「Start」ボタンおよび「Reset」ボタンを含み、さらに、計測距離の表示156を含む。
図18Fに示されるダイアログ145における計測距離の表示156の色は、
図18Dに示されるダイアログ145における計測距離の表示156の色と異なる。このため、
図18Fに例示されるダイアログ145の計測距離の表示156から、ユーザは計測停止中であることを容易に認識できる。
【0133】
次に、ユーザが入力装置を操作することによって、ダイアログ145における「Reset」ボタンにカーソルを合わせて選択すると、ダイアログ145のポップアップ画像が消失し、かつ、パフォーマンス項目142の領域における計測距離の表示156がリセットされ0mになる。
【0134】
本実施形態における表示方法によれば、複数のパフォーマンス項目のそれぞれに対応する種別アイコンを、パフォーマンス項目と併せて表示することにより、各々のパフォーマンス項目において可能な操作の種別が見て分かるようになる。
【0135】
また、本実施形態における表示方法によれば、計測操作のためのユーザによる入力装置の操作が容易になり、ユーザの操作ミスまたは誤操作が低減され得る。更には、計測距離をユーザに視認性良く提示することができるために、距離計測をより正確に行うことが可能となる。
【0136】
以上の実施形態における情報表示システムを、それらの機能を有しない作業車両に後から取り付けることもできる。そのようなシステムは、作業車両とは独立して製造および販売され得る。そのようなシステムで使用されるコンピュータプログラムも、作業車両とは独立して製造および販売され得る。コンピュータプログラムは、例えばコンピュータが読み取り可能な非一時的な記憶媒体に格納されて提供され得る。コンピュータプログラムは、電気通信回線(例えばインターネット)を介したダウンロードによっても提供され得る。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本開示の技術は、スマート農業に利用される様々な種類の作業車両に広く適用される。
【符号の説明】
【0138】
10・・・メータ部、11・・・第1のアナログメータ、12・・・第2のアナログメータ、13・・・ディスプレイ素子、14T・・・インジケータ領域、14L・・・インジケータ領域、14R・・・インジケータ領域、17・・・立体目盛り、20・・・壁面部、30・・・透明カバー、30A・・・透明カバーの正面部、30B・・・透明カバーの側面部、40・・・円弧型インジケータ、50・・・見返し板、100・・・メータパネルユニット、400・・・制御装置、500・・・情報表示システム