IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤマハ株式会社の特許一覧

特開2024-132情報処理システム、情報処理方法およびプログラム
<>
  • 特開-情報処理システム、情報処理方法およびプログラム 図1
  • 特開-情報処理システム、情報処理方法およびプログラム 図2
  • 特開-情報処理システム、情報処理方法およびプログラム 図3
  • 特開-情報処理システム、情報処理方法およびプログラム 図4
  • 特開-情報処理システム、情報処理方法およびプログラム 図5
  • 特開-情報処理システム、情報処理方法およびプログラム 図6
  • 特開-情報処理システム、情報処理方法およびプログラム 図7
  • 特開-情報処理システム、情報処理方法およびプログラム 図8
  • 特開-情報処理システム、情報処理方法およびプログラム 図9
  • 特開-情報処理システム、情報処理方法およびプログラム 図10
  • 特開-情報処理システム、情報処理方法およびプログラム 図11
  • 特開-情報処理システム、情報処理方法およびプログラム 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000132
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G10G 3/04 20060101AFI20231225BHJP
   G10G 1/00 20060101ALI20231225BHJP
   G10H 1/00 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
G10G3/04
G10G1/00
G10H1/00 102
G10H1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098711
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 和彦
【テーマコード(参考)】
5D182
5D478
【Fターム(参考)】
5D182AA13
5D182AA18
5D182AB03
5D182AD01
5D478EB06
5D478EB26
5D478HH02
5D478HH14
5D478KK02
5D478KK12
(57)【要約】
【課題】各音の発音期間と制御値の時間的な変化との関係を、発音期間の移動の前後にわたり適切に維持する。
【解決手段】情報処理システム100Aは、複数の音にそれぞれ対応する複数の発音期間を時系列に指定する演奏データX1と、複数の音に関する制御値の時間的な変化である制御値遷移を表す制御データY1とを取得する取得部31と、複数の発音期間の各々を時間軸上で移動する第1調整部321と、制御値遷移における対象点を、第1調整部321による移動前の複数の発音期間の各々における端点のうち、当該対象点に最も近い端点の移動に応じて、時間軸上で移動する第2調整部322とを具備する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の音にそれぞれ対応する複数の発音期間を時系列に指定する演奏データと、前記複数の音に関する制御値の時間的な変化である制御値遷移を表す制御データとを取得する取得部と、
前記複数の発音期間の各々を時間軸上で移動する第1調整部と、
前記制御値遷移における対象点を、前記第1調整部による移動前の複数の発音期間の各々における端点のうち、当該対象点に最も近い端点の移動に応じて、時間軸上で移動する第2調整部と
を具備する情報処理システム。
【請求項2】
前記第1調整部は、時間軸上に離散的に設定された複数の基準点の何れかに前記各発音期間の始点が一致するように、前記複数の発音期間の各々を時間軸上で移動する
請求項1の情報処理システム。
【請求項3】
前記第2調整部は、前記制御値遷移における前記対象点を、当該対象点に最も近い端点の移動の方向に、当該端点の移動量だけ移動する
請求項1または請求項2の情報処理システム。
【請求項4】
前記複数の発音期間のうち第1発音期間の終点を含む部分と、前記制御値遷移において前記制御値が有効な数値である第1制御期間の始点を含む部分とが、第1時間にわたり相互に重複する状態から、前記第1発音期間が前記第1時間を上回る第2時間だけ時間軸上で前方に移動する場合に、前記第2調整部は、前記第1制御期間の始点を時間軸上で前方に前記第2時間だけ移動する
請求項1または請求項2の情報処理システム。
【請求項5】
前記制御値遷移において前記制御値が有効な数値である第1制御期間が、前記複数の発音期間のうち第1発音期間の後方に第1時間をあけて位置する状態から、前記第1発音期間が前記第1時間を上回る第2時間だけ時間軸上で後方に移動する場合に、前記第2調整部は、前記第1制御期間の始点を時間軸上で後方に前記第2時間だけ移動する
請求項1または請求項2の情報処理システム。
【請求項6】
前記複数の発音期間のうち第1発音期間の始点を含む部分と、前記制御値遷移において前記制御値が有効な数値である第1制御期間の終点を含む部分とが、第1時間にわたり相互に重複する状態から、前記第1発音期間が前記第1時間を上回る第2時間だけ時間軸上で後方に移動する場合に、前記第2調整部は、前記第1制御期間の終点を時間軸上で後方に前記第2時間だけ移動する
請求項1または請求項2の情報処理システム。
【請求項7】
前記制御値遷移において前記制御値が有効な数値である第1制御期間が、前記複数の発音期間のうち第1発音期間の前方に第1時間をあけて位置する状態から、前記第1発音期間が前記第1時間を上回る第2時間だけ時間軸上で前方に移動する場合に、前記第2調整部は、前記第1制御期間の終点を時間軸上で前方に前記第2時間だけ移動する
請求項1または請求項2の情報処理システム。
【請求項8】
前記取得部は、
電子楽器に対する演奏を表す演奏信号を当該電子楽器から受信し、
前記演奏信号から前記演奏データを取得する
請求項1の情報処理システム。
【請求項9】
前記取得部は、
操作ペダルに対する操作を表す制御信号を受信し、
前記制御信号から前記制御データを取得する
請求項1の情報処理システム。
【請求項10】
複数の音にそれぞれ対応する複数の発音期間を時系列に指定する演奏データと、前記複数の音に関する制御値の時間的な変化である制御値遷移を表す制御データとを取得し、
前記複数の発音期間の各々を時間軸上で移動し、
前記制御値遷移における対象点を、前記移動前の複数の発音期間の各々における端点のうち、当該対象点に最も近い端点の移動に応じて、時間軸上で移動する
コンピュータシステムにより実現される情報処理方法。
【請求項11】
前記各発音期間の移動においては、時間軸上に離散的に設定された複数の基準点の何れかに前記各発音期間の始点が一致するように、前記複数の発音期間の各々を時間軸上で移動する
請求項10の情報処理方法。
【請求項12】
前記対象点の移動においては、前記制御値遷移における前記対象点を、当該対象点に最も近い端点の移動の方向に、当該端点の移動量だけ移動する
請求項10または請求項11の情報処理方法。
【請求項13】
前記複数の発音期間のうち第1発音期間の終点を含む部分と、前記制御値遷移において前記制御値が有効な数値である第1制御期間の始点を含む部分とが、第1時間にわたり相互に重複する状態から、前記第1発音期間が前記第1時間を上回る第2時間だけ時間軸上で前方に移動する場合に、前記対象点の移動においては、前記第1制御期間の始点を時間軸上で前方に前記第2時間だけ移動する
請求項10または請求項11の情報処理方法。
【請求項14】
前記制御値遷移において前記制御値が有効な数値である第1制御期間が、前記複数の発音期間のうち第1発音期間の後方に第1時間をあけて位置する状態から、前記第1発音期間が前記第1時間を上回る第2時間だけ時間軸上で後方に移動する場合に、前記対象点の移動においては、前記第1制御期間の始点を時間軸上で後方に前記第2時間だけ移動する
請求項10または請求項11の情報処理方法。
【請求項15】
前記複数の発音期間のうち第1発音期間の始点を含む部分と、前記制御値遷移において前記制御値が有効な数値である第1制御期間の終点を含む部分とが、第1時間にわたり相互に重複する状態から、前記第1発音期間が前記第1時間を上回る第2時間だけ時間軸上で後方に移動する場合に、前記対象点の移動においては、前記第1制御期間の終点を時間軸上で後方に前記第2時間だけ移動する
請求項10または請求項11の情報処理方法。
【請求項16】
前記制御値遷移において前記制御値が有効な数値である第1制御期間が、前記複数の発音期間のうち第1発音期間の前方に第1時間をあけて位置する状態から、前記第1発音期間が前記第1時間を上回る第2時間だけ時間軸上で前方に移動する場合に、前記対象点の移動においては、前記第1制御期間の終点を時間軸上で前方に前記第2時間だけ移動する
請求項10または請求項11の情報処理方法。
【請求項17】
前記演奏データの取得においては、
電子楽器に対する演奏を表す演奏信号を当該電子楽器から受信し、
前記演奏信号から前記演奏データを取得する
請求項10の情報処理方法。
【請求項18】
前記制御データの取得においては、
操作ペダルに対する操作を表す制御信号を受信し、
前記制御信号から前記制御データを取得する
請求項1の情報処理システム。
【請求項19】
複数の音にそれぞれ対応する複数の発音期間を時系列に指定する演奏データと、前記複数の音に関する制御値の時間的な変化である制御値遷移を表す制御データとを取得する取得部、
前記複数の発音期間の各々を時間軸上で移動する第1調整部、および、
前記制御値遷移における対象点を、前記第1調整部による移動前の複数の発音期間の各々における端点のうち、当該対象点に最も近い端点の移動に応じて、時間軸上で移動する第2調整部、
としてコンピュータシステムを機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報を処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の音について制御値の時系列を指定する技術が従来から提案されている。例えば特許文献1には、連続可変操作子の操作量をリニア値に変換し、当該リニア値をベンダーMIDI値に変換する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-44150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数の楽音の各々の発音期間が時間軸上で移動する場合がある。例えば、DTM(Desk Top Music)の場面においては、時間軸上に離散的に設定された地点に各発音期間の始点を一致させるクオンタイズ機能が提供される。しかし、各発音期間が移動した場合に制御値の時系列が維持されるとすれば、各楽音の発音期間と制御値の時系列との関係が、発音期間の移動の前後で相違する結果となる。以上の事情を考慮して、本開示のひとつの態様は、各音の発音期間と制御値の時間的な変化との関係を、発音期間の移動の前後にわたり適切に維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本開示のひとつの態様に係る情報処理システムは、複数の音にそれぞれ対応する複数の発音期間を時系列に指定する演奏データと、前記複数の音に関する制御値の時間的な変化である制御値遷移を表す制御データとを取得する取得部と、前記複数の発音期間の各々を時間軸上で移動する第1調整部と、前記制御値遷移における対象点を、前記第1調整部による移動前の複数の発音期間の各々における端点のうち、当該対象点に最も近い端点の移動に応じて、時間軸上で移動する第2調整部とを具備する。
【0006】
本開示のひとつの態様に係る情報処理方法は、複数の音にそれぞれ対応する複数の発音期間を時系列に指定する演奏データと、前記複数の音に関する制御値の時間的な変化である制御値遷移を表す制御データとを取得し、前記複数の発音期間の各々を時間軸上で移動し、前記制御値遷移における対象点を、前記第1調整部による移動前の複数の発音期間の各々における端点のうち、当該対象点に最も近い端点の移動に応じて、時間軸上で移動する。
【0007】
本開示のひとつの態様に係るプログラムは、複数の音にそれぞれ対応する複数の発音期間を時系列に指定する演奏データと、前記複数の音に関する制御値の時間的な変化である制御値遷移を表す制御データとを取得する取得部、前記複数の発音期間の各々を時間軸上で移動する第1調整部、および、前記制御値遷移における対象点を、前記第1調整部による移動前の複数の発音期間の各々における端点のうち、当該対象点に最も近い端点の移動に応じて、時間軸上で移動する第2調整部、としてコンピュータシステムを機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態における情報処理システムの構成を例示するブロック図である。
図2】楽曲データの模式図である。
図3】楽曲データの説明図である。
図4】情報処理システムの機能的な構成を例示するブロック図である。
図5】変換部による処理の説明図である。
図6】ケース1における発音期間および制御期間の移動の説明図である。
図7】ケース2における発音期間および制御期間の移動の説明図である。
図8】ケース3における発音期間および制御期間の移動の説明図である。
図9】ケース4における発音期間および制御期間の移動の説明図である。
図10】変換処理のフローチャートである。
図11】対比例2における問題点の説明図である。
図12】第2実施形態における情報処理システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A:第1実施形態
図1は、第1実施形態における情報処理システム100Aのブロック図である。情報処理システム100Aには、電子楽器200が有線または無線により接続される。電子楽器200は、鍵盤ユニット21と操作ペダル22とを含む電子鍵盤楽器である。鍵盤ユニット21は、相異なる音高に対応する複数の鍵で構成される。複数の鍵の各々は利用者Uにより操作される。操作ペダル22は、鍵盤ユニット21の操作に対応する楽音の音響特性を制御するための操作子であり、例えば利用者Uの踏込により操作される。利用者Uは、鍵盤ユニット21の各鍵を順次に操作しながら操作ペダル22を適宜に操作することで、所望の楽曲を演奏する。電子楽器200は、鍵盤ユニット21に対する操作を表す演奏信号xと、操作ペダル22に対する操作を表す制御信号yとを、情報処理システム100Aに送信する。演奏信号xおよび制御信号yは、電子楽器200に対する演奏を表す信号である。
【0010】
情報処理システム100Aは、電子楽器200に対する利用者Uの演奏を記録するコンピュータシステムである。情報処理システム100Aは、例えばスマートフォン、タブレット端末またはパーソナルコンピュータ等の情報装置で実現される。情報処理システム100Aは、制御装置11と記憶装置12と通信装置13と操作装置14と表示装置15と音源装置16と放音装置17とを具備する。なお、情報処理システム100Aは、単体の装置として実現されるほか、相互に別体で構成された複数の装置でも実現される。情報処理システム100Aは、電子楽器200に搭載されてもよい。
【0011】
制御装置11は、情報処理システム100Aの各要素を制御する単数または複数のプロセッサである。具体的には、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、SPU(Sound Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の1種類以上のプロセッサにより、制御装置11が構成される。
【0012】
通信装置13は、電子楽器200等の外部装置と通信する。例えば、通信装置13は、演奏信号xおよび制御信号yを電子楽器200から受信する。なお、通信装置13と電子楽器200との間の通信は有線通信および無線通信の何れでもよい。
【0013】
記憶装置12は、制御装置11が実行するプログラムと、制御装置11が使用する各種のデータとを記憶する単数または複数のメモリである。例えば半導体記録媒体および磁気記録媒体等の公知の記録媒体、または複数種の記録媒体の組合せが、記憶装置12として利用される。なお、例えば、情報処理システム100Aに対して着脱される可搬型の記録媒体、または、制御装置11が通信網を介してアクセス可能な記録媒体(例えばクラウドストレージ)が、記憶装置12として利用されてもよい。
【0014】
図2は、記憶装置12が記憶するデータの説明図である。記憶装置12は、楽曲データM1を記憶する。楽曲データM1は、利用者Uが電子楽器200により演奏した楽曲を表すデータである。具体的には、楽曲データM1は、演奏データX1と制御データY1とを含む。演奏データX1は、鍵盤ユニット21に対する利用者Uの操作を表すデータであり、演奏信号xから生成される。制御データY1は、操作ペダル22に対する利用者Uの操作を表すデータであり、制御信号yから生成される。楽曲データM1は、例えばMIDI規格に準拠したファイルとして記憶装置12に記憶される。
【0015】
図3は、楽曲データM1の説明図である。演奏データX1は、利用者Uが演奏した楽曲を構成する複数の楽音を時系列に指定する。すなわち、演奏データX1は、利用者Uが演奏した楽曲の楽譜を表す楽譜データである。具体的には、演奏データX1は、楽曲を構成する複数の楽音の各々について音高と発音期間P(P1,P2)とを指定する。各発音期間Pは、始点pSと終点pEとにより指定される。具体的には、1個の発音期間Pは、始点pSの時刻と発音期間Pの時間長との組合せ、または、始点pSの時刻と終点pEの時刻との組合せにより指定される。以下の説明では、始点pSと終点pEとを発音期間Pの端点pと総称する。なお、演奏データX1は、複数の楽音で構成される和音も表現する。例えば、相異なる音高に対応する複数の発音期間Pは、時間軸上で相互に重複してもよい。
【0016】
制御データY1は、演奏データX1が指定する複数の楽音に関する制御値Cの時間的な変化(以下「制御値遷移」という)Vを表すデータである。制御値Cは、楽音の音響特性を制御するためのパラメータである。第1実施形態の制御値Cは、楽音の伸長を意味するサステインである。すなわち、操作ペダル22は、楽音の伸長を指示するためのダンパーペダルである。制御値Cは、操作ペダル22の操作量(すなわち踏込量)に応じた非負値に設定される。操作ペダル22に対する利用者Uからの操作に応じて制御値Cは時間的に変化する。
【0017】
制御値遷移Vは、複数の折曲点(以下「対象点」という)qを含む折線で表現される。第1実施形態の制御データY1は、複数の対象点qの各々を指定するデータである。各対象点qは、時間軸上の時刻と制御値Cとの組合せにより指定される。図2の制御期間Qは、制御値遷移Vにおいて制御値Cが有効な数値である期間である。具体的には、制御値Cがゼロ以外の正数(すなわち有効な数値)である期間が制御期間Qである。図3の始点qSは、複数の対象点qのうち制御期間Qの始点に相当する対象点qであり、図2の終点qEは、複数の対象点qのうち制御期間Qの終点に相当する対象点qである。
【0018】
図2に例示される通り、制御装置11は、楽曲データM1から楽曲データM2を生成する。楽曲データM2は、演奏データX2と制御データY2とを含む。演奏データX2は演奏データX1から生成され、制御データY2は制御データY1から生成される。具体的には、演奏データX1の調整により演奏データX2が生成され、制御データY1の調整により制御データY2が生成される。演奏データX2および制御データY2については後述する。
【0019】
図1の操作装置14は、利用者Uによる指示を受付ける入力機器である。例えば、利用者Uが操作する操作子、または、利用者Uによる接触を検知するタッチパネルが、操作装置14として利用される。なお、情報処理システム100Aとは別体の操作装置14が、情報処理システム100Aに対して有線または無線により接続されてもよい。
【0020】
表示装置15は、制御装置11による制御のもとで画像を表示する。例えば、液晶表示パネルまたは有機EL(Electroluminescence)パネル等の各種の表示パネルが、表示装置15として利用される。なお、情報処理システム100Aとは別体の表示装置15が、情報処理システム100Aに対して有線または無線により接続されてもよい。
【0021】
音源装置16は、楽曲データM2に対応する音響信号Aを生成する。具体的には、音源装置16は、楽曲データM2が表す楽音の波形を表す音響信号Aを生成する。すなわち、演奏データX2が指定する楽音の音響特性を、制御データY2が指定する制御値Cに応じて制御した波形を表す音響信号Aが生成される。楽曲データM1に対応する音響信号Aが生成されてもよい。
【0022】
なお、制御装置11がプログラムを実行することで音源装置16の機能が実現されてもよい。すなわち、音響信号Aを生成する要素(音源部)は、制御装置11により実現されるソフトウェア音源、および音響信号Aの生成に専用されるハードウェア音源(音源装置16)の何れにより実現されてもよい。
【0023】
放音装置17は、音響信号Aが表す楽音を放射する。例えばスピーカ又はヘッドホンが放音装置17として利用される。なお、情報処理システム100Aとは別体の放音装置17が、情報処理システム100Aに対して有線または無線により接続されてもよい。
【0024】
図4は、情報処理システム100Aの機能的な構成を例示するブロック図である。制御装置11は、記憶装置12に記憶されたプログラムを実行することで、楽曲データM1を処理するための複数の機能(取得部31,変換部32,表示制御部33)を実現する。なお、相互に別体で構成された複数の装置により制御装置11の機能が実現されもよい。制御装置11の機能の一部または全部が専用の電子回路で実現されてもよい。
【0025】
取得部31は、演奏データX1と制御データY1とを含む楽曲データM1を取得する。第1実施形態の取得部31は、通信装置13が受信する演奏信号xから演奏データX1を生成する。また、取得部31は、通信装置13が受信する制御信号yから制御データY1を生成する。取得部31は、演奏データX1と制御データY1とを含む楽曲データM1を記憶装置12に保存する。
【0026】
変換部32は、楽曲データM1を処理することで楽曲データM2を生成する。すなわち、変換部32は、楽曲データM1を楽曲データM2に変換する。変換部32は、第1調整部321と第2調整部322とを含む。第1調整部321は、演奏データX1を処理することで演奏データX2を生成する。第2調整部322は、制御データY1を処理することで制御データY2を生成する。演奏データX2と制御データY2とを含む演奏データX2が記憶装置12に保存される。表示制御部33は、楽曲データM(M1,M2)の内容を表示装置15に表示する。
【0027】
図5は、第1調整部321および第2調整部322による処理の説明図である。表示制御部33が表示装置15に表示する画像G(G1,G2)が、図5には例示されている。画像G1は、楽曲データM1の内容を表す画像である。画像G2は、楽曲データM2の内容を表す画像である。変換部32による処理の実行前の段階では画像G1が表示装置15に表示され、変換部32による処理が実行されると、表示装置15による表示が画像G1から画像G2に更新される。
【0028】
時間軸上には複数の基準点Rが離散的に設定される。具体的には、複数の基準点Rは、所定の間隔で時間軸上に離散的に設定される。第1調整部321は、演奏データX1に対するクオンタイズにより演奏データX2を生成する。クオンタイズは、演奏データX1が指定する各発音期間Pの始点pSが複数の基準点Rの何れかに一致するように、複数の発音期間P(P1,P2)の各々を時間軸上で移動する処理である。
【0029】
具体的には、第1調整部321は、各発音期間Pの始点pSを、複数の基準点Rのうち当該始点pSに最も近い1個の基準点Rに移動する。したがって、各発音期間Pは時間軸に沿って前方または後方に移動する。例えば、図5の発音期間P1は前方に移動し、発音期間P2は後方に移動する。第1調整部321によるクオンタイズの結果、受聴者が明確なリズムを知覚できる楽音を再生できる。第1調整部321は、クオンタイズによる移動後の発音期間Pを表す演奏データX2を、記憶装置12に保存する。なお、各基準点Rの間隔は一定でなくてもよい。
【0030】
第2調整部322は、制御データY1が指定する制御値遷移Vにおける各対象点qを時間軸上で移動する。具体的には、第2調整部322は、制御値遷移Vにおける各対象点qを、第1調整部321による移動前の複数の発音期間Pにおいて時間軸上で当該対象点qに最も近い端点p(以下「最近点p」という)の移動に応じて時間軸上で移動する。第2調整部322は、移動後の対象点qに対応する制御値遷移Vを表す制御データY2を、記憶装置12に保存する。
【0031】
具体的には、第2調整部322は、制御値遷移Vにおける対象点qを、当該対象点qに対応する最近点pの移動の方向に、当該最近点pの移動量だけ移動する。例えば、図5の例示において、制御期間Q1内の対象点q11およびq12の最近点pは、発音期間P1の始点qSである。発音期間P1の始点qSは、前述のクオンタイズにより時間軸上で前方に時間δ1だけ移動する。したがって、第2調整部322は、対象点q11および対象点q12を、時間軸上で前方にδ1だけ移動する。
【0032】
また、制御期間Q1内の対象点q13の最近点pは、発音期間P1の終点pEである。発音期間P1の終点pEは、当該発音期間P1の始点pSと同様、クオンタイズにより時間軸上で前方に時間δ1だけ移動する。したがって、第2調整部322は、対象点q13を、時間軸上で前方にδ1だけ移動する。
【0033】
制御期間Q1の対象点q14の最近点pは、直後の発音期間P2の始点pSである。発音期間P2の始点qSは、クオンタイズにより時間軸上で後方に時間δ2だけ移動する。したがって、第2調整部322は、対象点q14を、時間軸上で後方に時間δ2だけ移動する。以上の通り、制御期間Q1内の対象点q11~q13の最近点pと、制御期間Q1内の対象点q14の最近点pとは、相異なる発音期間P(P1,P2)の端点pである。したがって、対象点q11~q13と対象点q14とは、時間軸上で相異なる方向に移動する。すなわち、制御値遷移V1の形状が、第2調整部322による調整の前後で変化する。
【0034】
制御期間Q2の全部の対象点q21~q23の最近点pは、発音期間P2の終点pEである。発音期間P2の終点pEは、クオンタイズにより時間軸上で後方に時間δ2だけ移動する。したがって、第2調整部322は、対象点q21~q23を、時間軸上で後方に時間δ2だけ移動する。すなわち、制御値遷移V2は、形状を維持したまま時間軸上で後方に時間δ2だけ平行移動する。
【0035】
第1調整部321および第2調整部322が以上のように動作する結果、発音期間Pと制御期間Qとが、以下に例示するケース1~4のように時間軸上で移動する場合が想定される。なお、以下の説明においては、制御期間Qが時間軸上で移動しない形態(以下「対比例1」という)を、第1実施形態との対比のために想定する。対比例1は、第1実施形態から第2調整部322を省略した形態である。対比例1において、第1調整部321によるクオンタイズは第1実施形態と同様に実行される。
【0036】
[ケース1]
図6に例示される通り、第1調整部321によるクオンタイズの実行前において、発音期間Pの終点pEを含む部分と制御期間Qの始点qSを含む部分とが時間T1にわたり相互に重複する状態を想定する。ケース1は、以上の状態から、発音期間Pがクオンタイズにより時間軸上で前方に時間T2だけ移動する場合である。時間T2は、時間T1を上回る時間長である。
【0037】
制御期間Qが移動しない対比例1においては、クオンタイズによる移動後の発音期間Pと制御期間Qとが時間軸上で相互に重複しない状態となる。すなわち、変換部32による処理の実行前には発音期間Pの楽音に制御期間Q内の制御値Cが適用される状態であったのに、変換部32による処理の結果、発音期間Pの楽音に対して制御期間Q内の制御値Cが適用されない状態に変化する。
【0038】
対比例1とは対照的に、第1実施形態の第2調整部322は、制御期間Qの始点qSを時間軸上で前方に時間T2だけ移動する。したがって、発音期間Pと制御期間Qとが時間T1にわたり相互に重複する関係は、移動前と同様の関係に維持される。すなわち、変換部32による処理の実行後も、発音期間Pの楽音に制御期間Q内の制御値Cが適用される状態が維持される。
【0039】
[ケース2]
図7に例示される通り、第1調整部321によるクオンタイズの実行前において、制御期間Qが発音期間Pの後方に時間T1をあけて位置する状態を想定する。すなわち、発音期間Pの終点pEよりも時間T1だけ後方に制御期間Qの始点qSが位置する状態である。ケース2は、以上の状態から、発音期間Pが時間軸上で後方に時間T2(T2>T1)だけ移動する場合である。
【0040】
制御期間Qが移動しない対比例1においては、クオンタイズによる移動後の発音期間Pと制御期間Qとが時間軸上で相互に重複する状態となる。すなわち、変換部32による処理の実行前には発音期間Pの楽音に制御期間Q内の制御値Cが適用されない状態であったのに、変換部32による処理の結果、発音期間Pの楽音に対して制御期間Q内の制御値Cが適用される状態に変化する。
【0041】
対比例1とは対照的に、第1実施形態の第2調整部322は、制御期間Qの始点qSを時間軸上で後方に時間T2だけ移動する。したがって、発音期間Pと制御期間Qとが時間T1をあけて相互に離間する関係は、移動前と同様の関係に維持される。すなわち、変換部32による処理の実行後も、発音期間Pの楽音に制御期間Q内の制御値Cが適用されない状態が維持される。
【0042】
[ケース3]
図8に例示される通り、第1調整部321によるクオンタイズの実行前において、発音期間Pの始点pSを含む部分と制御期間Qの終点qEを含む部分とが時間T1にわたり相互に重複する状態を想定する。ケース3は、以上の状態から、発音期間Pがクオンタイズにより時間軸上で後方に時間T2(T2>T1)だけ移動する場合である。
【0043】
制御期間Qが移動しない対比例1においては、クオンタイズによる移動後の発音期間Pと制御期間Qとが時間軸上で相互に重複しない状態となる。すなわち、変換部32による処理の実行前には発音期間Pの楽音に制御期間Q内の制御値Cが適用される状態であったのに、変換部32による処理の結果、発音期間Pの楽音に対して制御期間Q内の制御値Cが適用されない状態に変化する。
【0044】
対比例1とは対照的に、第1実施形態の第2調整部322は、制御期間Qの終点qEを時間軸上で後方に時間T2だけ移動する。したがって、発音期間Pと制御期間Qとが時間T1にわたり相互に重複する関係は、移動前と同様の関係に維持される。すなわち、変換部32による処理の実行後も、発音期間Pの楽音に制御期間Q内の制御値Cが適用される状態が維持される。
【0045】
[ケース4]
図9に例示される通り、第1調整部321によるクオンタイズの実行前において、制御期間Qが発音期間Pの前方に時間T1をあけて位置する状態を想定する。すなわち、発音期間Pの始点pSよりも時間T1だけ前方に制御期間Qの終点qEが位置する状態である。ケース4は、以上の状態から、発音期間Pが時間軸上で前方に時間T2(T2>T1)だけ移動する場合である。
【0046】
制御期間Qが移動しない対比例1においては、クオンタイズによる移動後の発音期間Pと制御期間Qとが時間軸上で相互に重複する状態となる。すなわち、変換部32による処理の実行前には発音期間Pの楽音に制御期間Q内の制御値Cが適用されない状態であったのに、変換部32による処理の結果、発音期間Pの楽音に対して制御期間Q内の制御値Cが適用される状態に変化する。
【0047】
対比例1とは対照的に、第1実施形態の第2調整部322は、制御期間Qの終点qEを時間軸上で前方に時間T2だけ移動する。したがって、発音期間Pと制御期間Qとが時間T1をあけて相互に離間する関係は、移動前と同様の関係に維持される。すなわち、変換部32による処理の実行後も、発音期間Pの楽音に制御期間Q内の制御値Cが適用されない状態が維持される。
【0048】
図6から図9における発音期間Pは「第1発音期間」の一例であり、制御期間Qは「第1制御期間」の一例である。また、時間T1は「第1時間」の一例であり、時間T2は「第2時間」の一例である。
【0049】
図10は、制御装置11が楽曲データM2を生成する処理(以下「変換処理」という)のフローチャートである。例えば操作装置14に対する利用者Uからの指示を契機として変換処理が開始される。
【0050】
変換処理が開始されると、制御装置11(取得部31)は、楽曲データM1を取得する(S1)。具体的には、制御装置11は、演奏信号xから演奏データX1を生成し、制御信号yから制御データY1を生成する。制御装置11(取得部31)は、楽曲データM1を記憶装置12に保存する(S2)。また、制御装置11(表示制御部33)は、楽曲データM1を表す画像G1を表示装置15に表示する(S3)。
【0051】
利用者Uは、操作装置14を操作することで楽曲データM2の生成を指示できる。制御装置11(第1調整部321)は、利用者Uからの指示を待機する(S4:NO)。楽曲データM2の生成の指示を利用者Uから受付けると(S4:YES)、制御装置11は、楽曲データM1を楽曲データM2に変換するための以下の処理を実行する(S5~S8)。
【0052】
制御装置11(第1調整部321)は、演奏データX1に対するクオンタイズにより演奏データX2を生成する(S5)。具体的には、制御装置11は、各発音期間Pの始点pSを複数の基準点Rの何れかに一致させる。制御装置11(第1調整部321)は、演奏データX2を記憶装置12に保存する(S6)。
【0053】
また、制御装置11(第2調整部322)は、制御データY1が指定する制御値遷移Vにおける各対象点qを時間軸上で移動することで制御データY2を生成する(S7)。具体的には、制御装置11は、制御値遷移Vの各対象点qを最近点pの移動に応じて時間軸上で移動する。制御装置11(第2調整部322)は、制御データY2を記憶装置12に保存する(S8)。
【0054】
以上の処理により、演奏データX2と制御データY2とを含む楽曲データM2が記憶装置12に保存される。制御装置11(表示制御部33)は、楽曲データM2を表す画像G2を表示装置15に表示する(S9)。制御装置11は、操作装置14に対する利用者Uからの指示を契機として、楽曲データM2に対応する音響信号Aを音源装置16に生成させる(S10)。音響信号Aが放音装置17に供給されることで、楽曲データM2が表す楽音が放射される。
【0055】
以上の説明から理解される通り、第1実施形態においては、各発音期間Pが時間軸上で移動した場合に、制御値遷移Vにおける対象点qが、当該対象点qに最も近い発音期間Pの端点p(pS,pE)の移動に応じて時間軸上で移動する。したがって、各楽音の発音期間Pと制御値遷移V(制御期間Q)との関係を、変換処理の前後にわたり適切に維持できる。第1実施形態においては特に、制御値遷移Vにおける対象点qが発音期間Pの端点p(pS,pE)の移動の方向に当該端点pの移動量だけ移動する。したがって、発音期間Pの端点pと制御値遷移Vとの時間的な関係を適切に維持できる。利用者は、発音期間Pの端点pと制御値遷移Vとの時間的な関係を維持しながら各発音期間Pの時間軸上の位置を変更するという顧客体験を享受できる。
【0056】
ところで、第1実施形態においては、複数の対象点qを含む折線として制御値遷移Vを例示したが、第1調整部321による各発音期間Pのクオンタイズに加えて、基準点Rを利用したクオンタイズを制御値遷移Vについても実行する形態(以下「対比例2」という)が想定される。対比例2においては、例えば図11に例示される通り、制御値遷移Vのうち時間軸上の各基準点Rにおける制御値Cのみが抽出される。しかし、対比例2においては、制御値遷移Vの形状が変換処理の前後で過剰に変化するという問題がある。また、制御値遷移Vから抽出される制御値Cがゼロに到達せず、制御値Cに対応する効果が制御期間Qの経過後も継続される場合がある。対比例2とは対照的に、第1実施形態においては、制御値遷移Vの連続性がクオンタイズの実行後にも維持される。したがって、第1実施形態によれば、対比例2と比較して、制御値遷移Vに応じて各楽音を適切に制御できるという利点がある。
【0057】
B:第2実施形態
第2実施形態を説明する。なお、以下に例示する各態様において機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明と同様の符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0058】
図12は、第2実施形態における情報処理システム100Bのブロック図である。情報処理システム100Bは、例えばインターネット等の通信網300を介して電子楽器200と通信するサーバ装置である。情報処理システム100Bは、制御装置11と記憶装置12と通信装置13とを具備する。
【0059】
電子楽器200は、鍵盤ユニット21に対する操作を表す演奏信号xと、操作ペダル22に対する操作を表す制御信号yとを、情報処理システム100Bに送信する。通信装置13は、通信網300を介して演奏信号xおよび制御信号yを受信する。
【0060】
制御装置11は、取得部31および変換部32として機能する。取得部31は、第1実施形態と同様に、演奏データX1と制御データY1とを含む楽曲データM1を取得する。具体的には、取得部31は、通信装置13が受信する演奏信号xから演奏データX1を生成し、通信装置13が受信する制御信号yから制御データY1を生成する。変換部32は、第1実施形態と同様に、楽曲データM1を処理することで楽曲データM2を生成する。変換部32の構成および動作は第1実施形態と同様である。通信装置13は、変換部32が生成した楽曲データM2を電子楽器200に送信する。
【0061】
記憶装置12は、第1実施形態と同様に、制御装置11が実行するプログラムと、制御装置11が使用する各種のデータとを記憶する。例えば、記憶装置12は、第1実施形態と同様に、取得部31が生成した楽曲データM1と、変換部32が生成した楽曲データM2とを記憶する。
【0062】
電子楽器200は、第1実施形態と同様の鍵盤ユニット21および操作ペダル22のほか、音源装置23と放音装置24とを具備する。音源装置23は、情報処理システム100Bから受信した楽曲データM2に対応する音響信号Aを生成する。放音装置24は、音響信号Aが表す楽音を放射する。第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。
【0063】
なお、第2実施形態においては、情報処理システム100Bの取得部31が演奏信号xおよび制御信号yから楽曲データM1を生成したが、電子楽器200により生成された楽曲データM1を、情報処理システム100Bの取得部31が通信装置13により受信してもよい。以上の説明から理解される通り、取得部31は、自身が楽曲データM1を生成する要素と、他装置から楽曲データM1を受信する要素との何れでもよい。すなわち、本開示における「取得」は、生成および受信の双方を含む。
【0064】
C:変形例
以上に例示した各態様に付加される具体的な変形の態様を以下に例示する。前述の実施形態および以下に例示する変形例から任意に選択された複数の態様を、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。
【0065】
(1)前述の各形態においては、時間軸上の複数の基準点Rの何れかに各発音期間Pの始点pSを一致させるクオンタイズを例示したが、各発音期間Pを時間軸上で移動する処理はクオンタイズに限定されない。例えば、第1調整部321は、操作装置14に対する利用者Uからの指示に応じて各発音期間Pを時間軸上で移動させてもよい。また、第1調整部321は、各発音期間Pの始点pSを基準点Rに一致させる規則以外の規則に沿って、各発音期間Pを時間軸上で移動させてもよい。第1調整部321による調整の具体的な方法に限定されず、第2調整部322は、前述の各形態と同様に、制御値遷移Vの各対象点qを時間軸上で移動する。以上の例示から理解される通り、第1調整部321は、演奏データX1が指定する複数の発音期間Pの各々を時間軸上で移動する要素として包括的に表現される。
【0066】
(2)前述の各形態においては、演奏データX1が指定する全部の発音期間Pについてクオンタイズを実行する場合を想定したが、演奏データX1が指定する複数の発音期間Pの一部についてのみクオンタイズを実行してもよい。例えば、演奏データX1が指定する複数の発音期間Pのうち特定の条件を充足する1以上の発音期間Pのみを時間軸上で移動する形態が想定される。例えば、第1調整部321は、演奏データX1が指定する複数の発音期間Pのうち特定の音高範囲内の楽音に対応する発音期間Pのみを時間軸上で移動する。以上の説明から理解される通り、第1調整部321が時間軸上で移動する発音期間Pは、演奏データX1が指定する全部または一部の発音期間Pである。
【0067】
(3)前述の各形態においては、楽音の伸長を意味するサステイン(ダンパーペダル)を制御値Cとして例示したが、制御値Cの内容は以上の例示に限定されない。例えば、サステインのほか、ピッチベンド、エクスプレッション、エフェクト(フィルタ)等のコントロールチェンジの数値が制御値Cとして例示される。
【0068】
(4)前述の各形態においては、制御値遷移Vを折線として例示したが、制御値遷移Vは、時間的に連続な曲線でもよい。制御値遷移Vが折線である前述の各形態では、折線上の折曲点を対象点qとして指定する制御データY(Y1,Y2)を例示したが、制御値遷移Vが曲線である形態では、当該曲線上の制御値Cを時系列に指定する制御データY(Y1,Y2)が利用される。
【0069】
(5)前述の各形態においては制御値Cが多値的に変化する形態を例示したが、制御値Cが2値的に変化する形態も想定される。例えば、制御値Cは、利用者Uが操作ペダル22を操作した状態を表す第1値と、操作ペダル22が解放された非操作状態を表す第2値との何れかに設定される。
【0070】
(6)前述の各形態においては、電子鍵盤楽器を電子楽器200として例示したが、演奏データX1の生成に利用される電子楽器の種類は、以上の例示に限定されない。例えば、弦楽器、管楽器または打楽器等の任意の種類の電子楽器が、演奏データX1の生成に利用される。各発音期間Pに対応する音は、音楽的な音(例えば調波的な楽音)に限定されない。例えば噪音等の非調波的な音を生成する場合にも、前述の各形態は同様に適用される。
【0071】
(7)前述の各形態においては、利用者Uが踏込により操作する操作ペダル22を例示したが、制御データY1の生成に利用される操作機器は、以上の例示に限定されない。利用者Uによる操作を受付ける任意の構成の操作機器が、制御データY1の生成に利用される。
【0072】
(8)前述の各形態に係る情報処理システム100(100A,100B)の機能は、前述の通り、制御装置11を構成する単数または複数のプロセッサと、記憶装置12に記憶されたプログラムとの協働により実現される。以上に例示したプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に格納された形態で提供されてコンピュータにインストールされ得る。記録媒体は、例えば非一過性(non-transitory)の記録媒体であり、CD-ROM等の光学式記録媒体(光ディスク)が好例であるが、半導体記録媒体または磁気記録媒体等の公知の任意の形式の記録媒体も包含される。なお、非一過性の記録媒体とは、一過性の伝搬信号(transitory, propagating signal)を除く任意の記録媒体を含み、揮発性の記録媒体も除外されない。また、配信装置が通信網を介してプログラムを配信する構成では、当該配信装置においてプログラムを記憶する記録媒体が、前述の非一過性の記録媒体に相当する。
【0073】
(9)本開示における「第n」(nは自然数)という記載は、各要素を表記上において区別するための形式的または便宜的な標識(ラベル)としてのみ使用され、如何なる実質的な意味も持たない。したがって、「第n」という表記を根拠として、各要素の位置または処理の順序等が限定的に解釈される余地はない。
【0074】
D:付記
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0075】
本開示のひとつの態様(態様1)に係る情報処理システムは、複数の楽音にそれぞれ対応する複数の発音期間を時系列に指定する演奏データと、前記複数の楽音に関する制御値の時間的な変化である制御値遷移を表す制御データとを取得する取得部と、前記複数の発音期間の各々を時間軸上で移動する第1調整部と、前記制御値遷移における対象点を、前記第1調整部による移動前の複数の発音期間の各々における端点のうち、当該対象点に最も近い端点の移動に応じて、時間軸上で移動する第2調整部とを具備する。以上の態様においては、各発音期間が時間軸上で移動した場合に、制御値遷移における対象点が、当該対象点に最も近い発音期間の端点の移動に応じて時間軸上で移動する。したがって、各楽音の発音期間と制御値遷移との関係を、発音期間の移動の前後にわたり適切に維持できる。
【0076】
「制御値」は、複数の楽音に関する制御に適用される数値である。具体的には、楽音の音響特性(例えば音楽的な表情または音色)の制御に適用される数値が「制御値」として想定される。例えば、MIDIにおけるサステイン(ダンパーペダル)、ピッチベンド、エクスプレッション、エフェクト(フィルタ)等のコントロールチェンジの数値が「制御値」として例示される。
【0077】
「制御値遷移」は、時間軸上における制御値の時系列であり、例えば折線または曲線で表現される。「対象点」は、制御値遷移において時間軸上の位置と制御値の数値とで規定される点である。
【0078】
「発音期間の端点」は、発音期間の始点または終点である。相異なる発音期間の始点および終点を含む複数の端点のうち、制御値遷移における対象点に最も近い端点の移動に応じて、第2調整部は当該対象点を移動する。なお、時間軸上において複数の発音期間が相互に重複する場合がある。
【0079】
態様1の具体例(態様2)において、前記第1調整部は、時間軸上に離散的に設定された複数の基準点の何れかに前記各発音期間の始点が一致するように、前記複数の発音期間の各々を時間軸上で移動する。以上の態様においては、各楽音の発音期間の始点が時間軸上の基準点に移動する(クオンタイズ)。したがって、明確なリズムが知覚されるように各楽音の時点を調整できる。なお、「基準点」は、時間軸上に離散的に設定された時点である。例えば所定の間隔で複数の基準点が離散的に設定される。
【0080】
態様1または態様2の具体例(態様3)において、前記第2調整部は、前記制御値遷移における前記対象点を、当該対象点に最も近い端点の移動の方向に、当該端点の移動量だけ移動する。以上の態様においては、制御値遷移における対象点が発音期間の端点の移動の方向に当該端点の移動量だけ移動する。したがって、発音期間の端点と制御値遷移との時間的な関係を適切に維持できる。
【0081】
態様1から態様3の何れかの具体例(態様4)において、前記複数の発音期間のうち第1発音期間の終点を含む部分と、前記制御値遷移において前記制御値が有効な数値である第1制御期間の始点を含む部分とが、第1時間にわたり相互に重複する状態から、前記第1発音期間が前記第1時間を上回る第2時間だけ時間軸上で前方に移動する場合に、前記第2調整部は、前記第1制御期間の始点を時間軸上で前方に前記第2時間だけ移動する。
【0082】
第1発音期間の終点を含む部分と第1制御期間の始点を含む部分とが第1時間にわたり相互に重複する状態(前提)から第1発音期間が時間軸上で前方に第2時間だけ移動する場合、第1制御期間が時間軸上で移動しない形態では、移動後の第1発音期間と第1制御期間とが時間軸上で重複しない状態となる。すなわち、第1発音期間の楽音に対して第1制御期間内の制御値が適用されない状態となる。本開示のひとつの態様において、第2調整部は、第1制御期間の始点を時間軸上で前方に第2時間だけ移動する。したがって、第1発音期間と第1制御期間とが第1時間にわたり相互に重複する関係は維持される。
【0083】
態様1から態様4の何れかの具体例(態様5)において、前記制御値遷移において前記制御値が有効な数値である第1制御期間が、前記複数の発音期間のうち第1発音期間の後方に第1時間をあけて位置する状態から、前記第1発音期間が前記第1時間を上回る第2時間だけ時間軸上で後方に移動する場合に、前記第2調整部は、前記第1制御期間の始点を時間軸上で後方に前記第2時間だけ移動する。
【0084】
第1制御期間が第1発音期間の後方に第1時間をあけて位置する状態から第1発音期間が第2時間だけ時間軸上で後方に移動する場合、第1制御期間が時間軸上で移動しない形態では、移動後の第1発音期間と第1制御期間とが時間軸上で相互に重複する状態となる。すなわち、第1発音期間の楽音に対して第1制御期間内の制御値が適用される状態となる。本開示のひとつの態様において、第2調整部は、第1制御期間の始点を時間軸上で後方に第2時間だけ移動する。したがって、第1発音期間と第1制御期間とが第1時間をあけて相互に離間する関係は維持される。
【0085】
態様1から態様5の何れかの具体例(態様6)において、前記複数の発音期間のうち第1発音期間の始点を含む部分と、前記制御値遷移において前記制御値が有効な数値である第1制御期間の終点を含む部分とが、第1時間にわたり相互に重複する状態から、前記第1発音期間が前記第1時間を上回る第2時間だけ時間軸上で後方に移動する場合に、前記第2調整部は、前記第1制御期間の終点を時間軸上で後方に前記第2時間だけ移動する。
【0086】
第1発音期間の始点を含む部分と第1制御期間の終点を含む部分とが第1時間にわたり相互に重複する状態から第1発音期間が第2時間だけ時間軸上で後方に移動する場合、第1制御期間が時間軸上で移動しない形態では、移動後の第1発音期間と第1制御期間とが時間軸上で重複しない状態となる。すなわち、第1発音期間に対して第1制御期間内の制御値が適用されない状態となる。本開示のひとつの態様において、第2調整部は、第1制御期間の終点を時間軸上で後方に第2時間だけ移動する。したがって、第1発音期間と第1制御期間とが第1時間にわたり相互に重複する関係は維持される。
【0087】
態様1から態様6の何れかの具体例(態様7)において、前記制御値遷移において前記制御値が有効な数値である第1制御期間が、前記複数の発音期間のうち第1発音期間の前方に第1時間をあけて位置する状態から、前記第1発音期間が前記第1時間を上回る第2時間だけ時間軸上で前方に移動する場合に、前記第2調整部は、前記第1制御期間の終点を時間軸上で前方に前記第2時間だけ移動する。
【0088】
第1制御期間が第1発音期間の前方に第1時間をあけて位置する状態から第1発音期間が第2時間だけ時間軸上で前方に移動する場合、第1制御期間が時間軸上で移動しない形態では、移動後の第1発音期間と第1制御期間とが時間軸上で相互に重複する状態となる。すなわち、第1発音期間に対して第1制御期間内の制御値が適用される状態となる。本開示のひとつの態様において、第2調整部は、第1制御期間の終点を時間軸上で前方に第2時間だけ移動する。したがって、第1発音期間と第1制御期間とが第1時間をあけて相互に離間する関係は維持される。
【0089】
態様1から態様7の何れかの具体例(態様8)において、前記取得部は、電子楽器に対する演奏を表す演奏信号を当該電子楽器から受信し、前記演奏信号から前記演奏データを取得する。また、態様1から態様8の何れかの具体例(態様9)において、前記取得部は、操作ペダルに対する操作を表す制御信号を受信し、前記制御信号から前記制御データを取得する。
【0090】
本開示のひとつの態様に係る情報処理方法は、複数の楽音にそれぞれ対応する複数の発音期間を時系列に指定する演奏データと、前記複数の楽音に関する制御値の時間的な変化である制御値遷移を表す制御データとを取得し、前記複数の発音期間の各々を時間軸上で移動し、前記制御値遷移における対象点を、前記第1調整部による移動前の複数の発音期間の各々における端点のうち、当該対象点に最も近い端点の移動に応じて、時間軸上で移動する。情報処理システムについて例示した各態様は、情報処理方法にも同様に適用される。
【0091】
本開示のひとつの態様に係るプログラムは、複数の楽音にそれぞれ対応する複数の発音期間を時系列に指定する演奏データと、前記複数の楽音に関する制御値の時間的な変化である制御値遷移を表す制御データとを取得する取得部、前記複数の発音期間の各々を時間軸上で移動する第1調整部、および、前記制御値遷移における対象点を、前記第1調整部による移動前の複数の発音期間の各々における端点のうち、当該対象点に最も近い端点の移動に応じて、時間軸上で移動する第2調整部、としてコンピュータシステムを機能させる。
【符号の説明】
【0092】
100A,100B…情報処理システム、11…制御装置、12…記憶装置、13…通信装置、14…操作装置、15…表示装置、16…音源装置、17…放音装置、200…電子楽器、21…鍵盤ユニット、22…操作ペダル、31…取得部、32…変換部、321…第1調整部、322…第2調整部、33…表示制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12