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特開2024-13200相変化参照に基づく石炭低温酸化微量熱量測定法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013200
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】相変化参照に基づく石炭低温酸化微量熱量測定法
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/26 20060101AFI20240124BHJP
【FI】
G01N25/26
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077697
(22)【出願日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】202210844975.7
(32)【優先日】2022-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】520442807
【氏名又は名称】中国鉱業大学
(71)【出願人】
【識別番号】523172981
【氏名又は名称】徐州鉱務集団有限公司
【氏名又は名称原語表記】Xuzhou Mining Group Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】7 Qiantang Road, Yunlong District, Xuzhou City, Jiangsu Province 221000, China
(71)【出願人】
【識別番号】523172992
【氏名又は名称】崇信県百貫溝煤業有限公司
【氏名又は名称原語表記】Chongxin County Baiguangou Coal Industry Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】Baiguan Gou Baiguan community,Huanghua village, Chongxin County, Pingliang City, Gansu Province 744200, China
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】辛 海会
(72)【発明者】
【氏名】張 鵬程
(72)【発明者】
【氏名】竹 永健
(72)【発明者】
【氏名】陳 清華
(72)【発明者】
【氏名】劉 金虎
(72)【発明者】
【氏名】石 長坤
(72)【発明者】
【氏名】李 剣鋒
(72)【発明者】
【氏名】舒 通
【テーマコード(参考)】
2G040
【Fターム(参考)】
2G040AB08
2G040AB15
2G040BA05
2G040BA25
2G040CA02
2G040DA02
2G040DA13
2G040EA01
2G040EC09
2G040GA04
2G040HA16
(57)【要約】      (修正有)
【課題】相変化参照に基づく石炭低温酸化微量熱量測定法を提供する。
【解決手段】まずある特定相転移温度の有機相変化材料の昇温プロセスにおける熱流変化を測定してから、測定方式が恒温熱効果又は昇温熱効果であることに応じて昇温プログラムを設定し、この有機相変化材料を参照として石炭試料をサンプルとしてテストを行い、これによって恒温又は昇温プロセス中の石炭低温酸化の完全な熱量測定ピーク及びその相変化参照放熱量を取得し、相変化材料の完全な熱量測定ピークの値を差し引くと、設定された恒温又は昇温プロセス中の石炭低温酸化の放熱量を精確に取得できる。この方法により測定された石炭低温酸化の発熱量は、ベースラインの誤差による影響を効果的に回避し、石炭試料の低温酸化放熱のフルプロセス及び段階分けの精確な測定を実現する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相変化参照に基づく石炭低温酸化微量熱量測定法であって、具体的なステップとしては、
まず、原炭石炭試料を選択し、その後、原炭石炭試料の温度変化区間を設定し、後にこの温度変化区間でその低温酸化発熱量を測定し、設定した温度変化区間に応じて、相転移温度がこの温度区間に適する有機相変化材料を選択し、次に後の石炭試料測定試験時の恒温熱効果又は昇温熱効果である加熱条件を特定し、加熱条件に基づいてマイクロカロリメーターにおいて対応する昇温プログラムを選定するステップ1と、
試料セルに物質を加入せず純酸素を継続的に注入し、参照セルにステップ1で選定された有機相変化材料を加入し純窒素を注入し、ステップ1で特定された加熱条件に基づいて、マイクロカロリメーターにより設定された昇温プログラムを用いて有機相変化材料の熱流の温度による変化カーブを測定し取得するステップ2と、
試料セルをステップ1で選定された原炭石炭試料に加入し純酸素を継続的に注入し、参照セルに有機相変化材料を加入し純窒素を注入し、ステップ2と同じ加熱条件を選択し、マイクロカロリメーターにより設定された昇温プログラムを用いて有機相変化材料を参照とする原炭熱流の温度による変化カーブを測定し取得するステップ3と、
試料セルに測定対象の原炭石炭試料を加入し純酸素を継続的に注入し、参照セルに物質を加入せず純窒素を注入し、ステップ2と同じ加熱条件を選択し、マイクロカロリメーターにより設定された昇温プログラムを用いて原炭の熱流の温度による変化カーブを測定し取得するステップ4と、
ステップ2で取得された有機相変化材料の熱流変化カーブ、ステップ3で取得された有機相変化材料を参照とする原炭熱流変化カーブ、ステップ4で取得された原炭の熱流変化カーブを、ステップ1で選定された温度変化区間に従って、この温度変化区間での三者の熱量変化の具体的な数値をそれぞれ算出してQ、Q及びQJ/gとしてそれぞれ取得するステップであって、ここでQが、従来の測定方法で得られた、所定温度範囲での原炭の酸化放熱量であり、Q値とQ値との差を取り、即ち所定温度変化区間での原炭の実際酸化放熱量を精確に測定するステップ5とである
ことを特徴とする相変化参照に基づく石炭低温酸化微量熱量測定法。
【請求項2】
前記有機相変化材料の相転移温度は30℃~200℃であり、有機相変化材料は、相転移温度が165℃であるマンニトール、相転移温度が116℃であるエリスリトール、相転移温度が30℃~200℃である様々な相変化パラフィンを含み、温度変化区間に応じて選定された有機相変化材料は、上記単一物質又は相転移温度が異なる様々な物質が調合して形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の相変化参照に基づく石炭低温酸化微量熱量測定法。
【請求項3】
前記恒温熱効果の昇温プログラムとしては、まず、30℃で1時間恒温維持し、その後30℃から所定有機相変化材料の相転移温度まで昇温し、昇温レートが0.1℃/min、0.2℃/min、0.5℃/min、1℃/minのうちの1つであり、その後、この温度で2時間恒温維持する
ことを特徴とする請求項1に記載の相変化参照に基づく石炭低温酸化微量熱量測定法。
【請求項4】
前記昇温熱効果の昇温プログラムとしては、n種類の有機相変化材料が調合する相変化参照について、まず、室温が5℃/minの昇温レートで(T-x)℃まで急速昇温し、その後、(T-x)℃から(T+x)℃まで昇温し、昇温レートは0.1℃/min、0.2℃/min、0.5℃/min、1℃/minのうちの1つであり、前記Tはn種類の有機相変化材料のうち相転移温度が最小である有機相変化材料の対応する相転移温度値であり、Tはn種類の有機相変化材料のうち相転移温度が最大である有機相変化材料の対応する相転移温度値であり、x及びxは、それぞれ相転移温度が最小である有機相変化材料、相転移温度が最大である有機相変化材料のそれぞれの相変化ピークの半値幅の温度変化数値である
ことを特徴とする請求項1に記載の相変化参照に基づく石炭低温酸化微量熱量測定法。
【請求項5】
前記原炭石炭試料の使用量は1~2gであり、前記有機相変化材料の使用量は1~8gであり、原炭石炭試料と有機相変化材料とは使用量比が1:1、1:2、1:4のうちの1つであり、前記使用量比の選択方法としては、測定対象である温度区間の最大値が85℃よりも小さい時に、原炭石炭試料と有機相変化材料との使用量比は1:1であり、測定対象である温度区間の最大値が(85,Tcpt]℃にある時に、原炭石炭試料と有機相変化材料との使用量比は1:2であり、測定対象である温度区間の最大値がTcpt℃よりも大きい時に、原炭石炭試料と有機相変化材料との使用量比は1:4であり、前記Tcptは、原炭石炭試料の交差点における温度数値である
ことを特徴とする請求項1に記載の相変化参照に基づく石炭低温酸化微量熱量測定法。
【請求項6】
前記窒素と酸素のガス流量は一致維持し、いずれも50~100mL/minのうちのいずれかの1つ数値であり、ガス流量はマスフローメーターによって制御される
ことを特徴とする請求項1に記載の相変化参照に基づく石炭低温酸化微量熱量測定法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭低温酸化発熱を測定する方法に関し、具体的には、相変化参照に基づく石炭低温酸化微量熱量測定法であり、石炭低温酸化発熱測定の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
石炭の自然発火は、鉱山の採掘プロセスに存在する主要な災害の1つであり、大量の石炭資源を焼失させ、莫大な経済損失を引き起こすだけでなく、多量の有毒及び有害ガスを生成し、鉱夫の生命安全に極大な脅威をもたらす。放棄坑道は石炭の自然発火に最も起こりやすい危険エリアであり、多数の亀裂や漏れ通路が存在し、石炭は特定の条件下で徐々に低温酸化熱を発生させるが、放棄坑道の3つのエリアのうち自然発火エリアは、酸化によって発生する熱が時間内に散逸することができないため、石炭の自然発火の可能性が大幅に高まる。
【0003】
石炭の低温酸化について、多くの科学者は研究したが、ほとんどの研究は、石炭ガスの生成特性、官能基の変化、動力学的パラメーターの測定、熱分解生成物の分析などに焦点を当て、石炭の低温酸化の熱発生特性についての研究が少なく、既知の測定方法は主にTG-DSC法、すなわち熱重量測定-示差走査熱量測定であるが、この方法は走査精度が不十分で、昇温レートが速く、石炭試料の使用量が少なく(一般的には10mg程度)、鉱山の下で大量に壊れて積み重ねられた状態における石炭試料の酸化発熱特性を反映させることは困難である。なお、従来のマイクロカロリメーターは同様に示差熱補償の原理により、石炭の低温酸化時の発熱特性を精確に測定することができ、高感度であり、昇温レートが0.001℃/minに達することができ、信号の安定性がよく、試料セルの体積が大く、多くの石炭試料を収容することができ、鉱山の下での石炭低温酸化のプロセスと比較的に一致する。しかし、参照がない場合には、既存のこの機器を使用して測定した石炭低温酸化熱流変化カーブのベースラインは精確ではなく、このベースラインを使用して、石炭試料熱量変化を算出して解決すると、、一定の偏差が存在し、特に、石炭試料が低い温度で酸化放熱する時に、石炭試料の完全な熱量測定ピークを表示することができなく、連続して放熱する場合に、より測定しにくく、現在、試料セルに石炭試料を入れて酸素を注入し、且つ同一品質の石炭試料を採用して窒素を注入するを参照として研究するが、参照である石炭試料は不活性ガス雰囲気下で昇温し化学変化し、相変わらず熱効果が発生し、この部分の熱効果は、テスト結果にも影響し、そして、現在の熱測定方法は、設定されたある温度変化範囲での石炭試料の低温酸化の発熱量を効果的に測定することができなく、更に、特定温度変化区間での石炭試料の低温酸化発熱の情况に対してフォローアップ分析を行うことができないため、マイクロカロリメーターにより測定される場合に、石炭試料の低温酸化発熱特性を精確に測定することを実現できるだけではなく、設定された温度変化範囲での測定対象の石炭試料の完全な放熱ピークに対して低温酸化発熱量を測定することができ、よって、後に石炭試料の分析へ精確なデータを提供する方法を如何に提供するかについては、業界の研究方向の1つとなる。
【発明の概要】
【0004】
上記した従来技術に存在する問題に対して、本発明は、石炭試料低温酸化発熱特性を精確に測定することを実現できるだけではなく、測定される石炭試料の設定温度変化範囲での完全な発熱ピークに対して低温酸化発熱量を測定することができるため、後の石炭試料の分析へ精確なデータを提供する、相変化参照に基づく石炭低温酸化微量熱量測定法を提供する。
【0005】
上記目的を実現するために、本発明で採用される技術的解決策は、相変化参照に基づく石炭低温酸化微量熱量測定法であり、具体的なステップとしては、
【0006】
まず、原炭石炭試料を選択し、その後、原炭石炭試料の温度変化区間を設定し、後にこの温度変化区間でその低温酸化発熱量を測定し、設定した温度変化区間に応じて、相転移温度がこの温度区間に適する有機相変化材料を選択し、次に後の石炭試料測定試験時の恒温熱効果又は昇温熱効果である加熱条件を特定し、加熱条件に基づいてマイクロカロリメーターにおいて対応する昇温プログラムを選定するステップ1と、
【0007】
試料セルに物質を加入せず純酸素を継続的に注入し、参照セルにステップ1で選定された有機相変化材料を加入し純窒素を注入し、ステップ1で特定された加熱条件に基づいて、マイクロカロリメーターにより設定された昇温プログラムを用いて有機相変化材料の熱流の温度による変化カーブを測定し取得するステップ2と、
【0008】
試料セルをステップ1で選定された原炭石炭試料に加入し純酸素を継続的に注入し、参照セルに有機相変化材料を加入し純窒素を注入し、ステップ2と同じ加熱条件を選択し、マイクロカロリメーターにより設定された昇温プログラムを用いて有機相変化材料を参照とする原炭熱流の温度による変化カーブを測定し取得するステップ3と、
【0009】
試料セルに測定対象の原炭石炭試料を加入し純酸素を継続的に注入し、参照セルに物質を加入せず純窒素を注入し、ステップ2と同じ加熱条件を選択し、マイクロカロリメーターにより設定された昇温プログラムを用いて原炭の熱流の温度による変化カーブを測定し取得するステップ4と、
【0010】
ステップ2で取得された有機相変化材料の熱流変化カーブ、ステップ3で取得された有機相変化材料を参照とする原炭熱流変化カーブ、ステップ4で取得された原炭の熱流変化カーブを、ステップ1で選定された温度変化区間に従って、この温度変化区間での三者の熱量変化の具体的な数値をそれぞれ算出してQ、Q及びQJ/gとしてそれぞれ取得するステップであって、ここでQが、従来の測定方法で得られた、所定温度範囲での原炭の酸化放熱量であり、Q値とQ値との差を取り、即ち所定温度変化区間での原炭の実際酸化放熱量を精確に測定するステップ5とである。
【0011】
さらには、前記有機相変化材料の相転移温度は30℃~200℃であり、有機相変化材料は、相転移温度が165℃であるマンニトール、相転移温度が116℃であるエリスリトール、相転移温度が30℃~200℃である様々な相変化パラフィンを含み、温度変化区間に応じて選定された有機相変化材料は、上記単一物質又は相転移温度が異なる様々な物質が調合して形成され、単一相変化材料は、石炭低温酸化の段階分けの熱量測定を実現でき、様々な有機相変化材料は調合して石炭低温酸化のプロセス全体の熱量測定を実現できる。
【0012】
さらには、前記恒温熱効果の昇温プログラムとしては、まず、30℃で1時間恒温維持し、その後30℃から所定有機相変化材料の相転移温度まで昇温し、昇温レートが0.1℃/min、0.2℃/min、0.5℃/min、1℃/minのうちの1つであり、その後、この温度で2時間恒温維持する。このようなパラメータを採用すると、恒温熱効果が安定して発揮されることを保証し、さらに後の試験で測定するデータの精度を保証することができる。
【0013】
さらには、前記昇温熱効果の昇温プログラムとしては、n種類の有機相変化材料が調合する相変化参照について、まず、室温が5℃/minの昇温レートで(T-x)℃まで急速昇温し、その後、(T-x)℃から(T+x)℃まで昇温し、昇温レートは0.1℃/min、0.2℃/min、0.5℃/min、1℃/minのうちの1つであり、前記Tはn種類の有機相変化材料のうち相転移温度が最小である有機相変化材料の対応する相転移温度値であり、Tはn種類の有機相変化材料のうち相転移温度が最大である有機相変化材料の対応する相転移温度値であり、x及びxは、それぞれ相転移温度が最小である有機相変化材料、相転移温度が最大である有機相変化材料のそれぞれの相変化ピークの半値幅の温度変化数値である。このようなパラメータを採用すると、昇温熱効果が発揮される温度変化区間は、調合相変化材料のすべての相変化ピークをカバーし、後の試験の測定するデータの精度をさらに保証することができる。
【0014】
さらには、前記原炭石炭試料の使用量は1~2gであり、前記有機相変化材料の使用量は1~8gであり、原炭石炭試料と有機相変化材料とは使用量比が1:1、1:2、1:4のうちの1つであり、前記使用量比の選択方法としては、測定対象である温度区間の最大値が85℃よりも小さい時に、原炭石炭試料と有機相変化材料との使用量比は1:1であり、測定対象である温度区間の最大値が(85,Tcpt]℃にある時に、原炭石炭試料と有機相変化材料との使用量比は1:2であり、測定対象である温度区間の最大値がTcpt℃よりも大きい時に、原炭石炭試料と有機相変化材料との使用量比は1:4であり、前記Tcptは、原炭石炭試料の交差点における温度数値である。このような使用量比を採用すると、石炭試料の熱量測定ピークは、できるだけ相変化材料の熱量測定ピークによってカバーされることを保証し、さらに後の試験で測定するデータの精度を保証することができる。
【0015】
さらには、前記窒素と酸素のガス流量は一致維持し、いずれも50~100mL/minのうちのいずれかの1つ数値であり、ガス流量はマスフローメーターによって制御される。
【0016】
従来技術に比べると、本発明の相変化参照に基づく石炭低温酸化微量熱量測定法は、当分野で石炭試料低温酸化プロセスにおいて設定されたある温度変化範囲の石炭試料の発熱情況を精確に測定することができ、マイクロカロリメーターの測定ベースラインが変化して完全な放熱ピークを表示することができないため、その発熱の測定に偏差が生じるという欠陥に対して、相変化参照に基づく石炭低温酸化微量熱量測定法を提供し、即ち、まず、ある相転移温度の有機相変化材料又は複合有機相変化材料の昇温プロセスにおける熱流変化を測定してから、測定方式に応じて恒温熱効果又は昇温熱効果に対して昇温プログラムを設定し、この有機相変化材料を参照として石炭試料をサンプルとしてテストを行い、2本のカーブについて算出し減算して、石炭試料の低温酸化プロセス中のある温度範囲での発熱総量を精確に取得する。この方法によって測定された石炭低温酸化の発熱量は、単一の相変化材料を参照ベースラインとし、マイクロカロリメーターを用いて石炭低温酸化放熱量を直接的に測定する時に完全な放熱ピークを取得することができないという制限を打ち破って、石炭試料酸化の完全な放熱ピークを表示することができ、マイクロカロリメーターを用いて実際に測定する時に非完全な放熱ピークのヒートフローカーブベースラインの誤差による影響を効果的に回避し、且つ異なる温度範囲での石炭試料の発熱量に応じてこの相転移温度内の単一有機相変化材料又は複合有機相変化材料を選択し、石炭試料低温酸化放熱のフルプロセス及び段階分けの測定を実現すると同時に、石炭試料の恒温酸化の放熱レベルを精確に評価することができ、石炭試料の酸化能力の評価、石炭の自然発火特徴の予測にとっては重要な理論的価値があり、この方法は操作が簡単、測定が精確で偏差が極小であり、後に石炭低温酸化発熱及び石炭の自然発火の研究、特に石炭試料の低温酸化発熱の連続特性についての研究へデータサポートを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の全体実施フローチャートである。
図2】本発明の昇温熱効果に対応するプログラムの温度区間選択概略図である。
図3】実施例1で相転移温度が80℃である相変化パラフィンのヒートフローカーブ及び算出範囲である。
図4】実施例1で相転移温度が80℃である相変化パラフィンを参照とする硫黄溝長炎石炭のヒートフローカーブ及び算出範囲である。
図5】実施例1で硫黄溝長炎石炭のヒートフローカーブ及び算出範囲である。
図6】実施例2で相転移温度が120℃である相変化パラフィンのヒートフローカーブ及び算出範囲である。
図7】実施例2で相転移温度が120℃である相変化パラフィンを参照とする東露天気石炭のヒートフローカーブ及び算出範囲である。
図8】実施例2で東露天気石炭のヒートフローカーブ及び算出範囲である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を説明する。
実施例1:具体的なステップとして、
まず硫黄溝長炎石炭を原炭石炭試料として選択し、その後、原炭石炭試料の温度変化区間を48℃から83℃までとして選定し、後に、この温度変化区間においてその低温酸化発熱量を測定し、設定された温度変化区間に応じて相転移温度が80℃である相変化パラフィン2gを選択して待機し、硫黄溝長炎石炭石炭試料2gを取って待機し、次に後の石炭試料測定試験時の加熱条件を昇温熱効果として特定し、その対応する昇温プログラムとしては、まず5℃/minの昇温レートで室温から48℃まで急速に昇温し、その後、0.1℃/minのレートで48℃から115℃まで昇温するステップ1と、
【0019】
試料セルに物質を加入せず純酸素を継続的に注入し、参照セルにステップ1における相転移温度が80℃である相変化パラフィン1gを加入し純窒素を注入し、両者のレートがいずれも50mL/minであり、ステップ1で特定された加熱条件に基づいて、マイクロカロリメーターにより対応する昇温プログラムを用いて、図3に示すように、この相変化パラフィンの熱流の温度による変化カーブを測定し取得するステップ2と、
【0020】
試料セルにステップ1で選定された硫黄溝長炎石炭の石炭試料1gを加入し純酸素を継続的に注入し、参照セルにステップ1における相転移温度が80℃である相変化パラフィン1gを加入し純窒素を注入し、両者のレートがいずれも50mL/minであり、ステップ2と同じ加熱条件を選択し、マイクロカロリメーターにより設定された昇温プログラムを用いて、図4に示すように、この相変化パラフィンを参照とする硫黄溝長炎石炭の熱流の温度による変化カーブを測定し取得するステップ3と、
【0021】
試料セルに測定対象の硫黄溝長炎石炭の石炭試料1gを加入し純酸素を継続的に注入し、参照セルに物質を加入せず純窒素を注入し、両者のレートがいずれも50mL/minであり、ステップ2と同じ加熱条件を選択し、マイクロカロリメーターにより対応する昇温プログラムを用いて、図5に示すように、硫黄溝長炎石炭の熱流の温度による変化カーブを測定し取得するステップ4と、
【0022】
ステップ2で取得された相変化パラフィン熱流変化カーブ、ステップ3で取得された相変化パラフィンを参照とする硫黄溝長炎石炭の熱流変化カーブ、ステップ4で取得された硫黄溝長炎石炭の熱流変化カーブを、按照ステップ1で選定された48℃から83℃までの温度変化区間に従ってそれぞれ算出して、この温度変化区間での三者の熱量変化の具体的な数値を取得するステップであって、ここで図5の算出された熱効果変化数値が、従来の測定方法による所定温度範囲での原炭の酸化放熱量(即ち昇温熱効果)であり、図4の算出された熱効果変化数値から図3の熱効果変化数値を差し引くと、本発明で所定温度変化区間での原炭の実際酸化放熱量(即ち昇温熱効果)を精確に測定するステップ5と、である。
【0023】
実施例2:具体的なステップとしては、
まず、東露天気石炭を原炭石炭試料として選択し、その後、原炭石炭試料の温度変化区間を90℃から128℃として選定し、後に、この温度変化区間においてその低温酸化発熱量を測定し、設定された温度変化区間に応じて相転移温度が120℃である相変化パラフィン4gを選択して待機し、東露天気石炭の石炭試料2gを取って待機し、次に後の石炭試料測定試験時の加熱条件を昇温熱効果として特定し、その対応する昇温プログラムとしては、まず5℃/minの昇温レートで室温から90℃まで急速に昇温し、その後、0.2℃/minのレートで90℃から150℃まで昇温するステップ1と、
【0024】
試料セルに物質を加入せず純酸素を継続的に注入し、参照セルにステップ1における相転移温度が120℃である相変化パラフィン2gを加入し純窒素を注入し、両者のレートがいずれも80mL/minであり、ステップ1で特定された加熱条件に基づいて、マイクロカロリメーターにより対応する昇温プログラムを用いて、図6に示すように、この相変化パラフィンの熱流の温度による変化カーブを測定し取得するステップ2と、
【0025】
試料セルにステップ1で選定された東露天気石炭の石炭試料1gを加入し純酸素を継続的に注入し、参照セルにステップ1における相転移温度が120℃である相変化パラフィン2gを加入し純窒素を注入し、両者のレートがいずれも80mL/minであり、ステップ2と同じ加熱条件を選択し、マイクロカロリメーターにより設定された昇温プログラムを用いて、図7に示すように、この相変化パラフィンを参照とする東露天気石炭の熱流の温度による変化カーブを測定し取得するステップ3と、
【0026】
試料セルに測定対象の東露天気石炭の石炭試料1gを加入し純酸素を継続的に注入し、参照セルに物質を加入せず純窒素を注入し、両者のレートがいずれも80mL/minであり、ステップ2と同じ加熱条件を選択し、マイクロカロリメーターにより対応する昇温プログラムを用いて、図8に示すように、東露天気石炭の熱流の温度による変化カーブを測定し取得するステップ4と、
【0027】
ステップ2で取得された相変化パラフィン熱流変化カーブ、ステップ3で取得された相変化パラフィンを参照とする東露天気石炭の熱流変化カーブ、ステップ4で取得された東露天気石炭の熱流変化カーブを、ステップ1で選定された90℃から128℃までの温度変化区間に従ってそれぞれ算出して、この温度変化区間での三者の熱量変化の具体的な数値を取得するステップであって、ここで、図8の算出された熱効果変化数値が、従来の測定方法による所定温度範囲での原炭の酸化放熱量(即ち昇温熱効果)であり、図7の算出された熱効果変化数値から図6の熱効果変化数値を差し引くと、本発明で所定温度変化区間での原炭の実際酸化放熱量(即ち昇温熱効果)を精確に測定するステップ5と、である。
【0028】
実施例3:具体的なステップとしては、
まず、勝利褐炭を原炭石炭試料として選択し、その後、原炭石炭試料の温度変化区間を75℃から85℃までとして選定し、後に、この温度変化区間においてその低温酸化発熱量を測定し、設定された温度変化区間に応じて相転移温度が80℃である相変化パラフィン2gを選択して待機し、勝利褐炭の石炭試料2gを取って待機し、次に後の石炭試料測定試験時の加熱条件を恒温熱効果として特定し、その対応する昇温プログラムとしては、まず30℃で1時間恒温維持し、その後、0.5℃/minのレートで30℃から80℃まで昇温し、その後、この温度で2時間恒温維持するステップ1と、
【0029】
試料セルに物質を加入せず純酸素を継続的に注入し、参照セルにステップ1における相転移温度が80℃である相変化パラフィン1gを加入し純窒素を注入し、両者のレートがいずれも50mL/minであり、ステップ1で特定された加熱条件に基づいて、マイクロカロリメーターにより対応する昇温プログラムを用いて、この相変化パラフィンの熱流の温度による変化カーブを測定し取得するステップ2と、
【0030】
試料セルにステップ1で選定された勝利褐炭の石炭試料1gを加入し純酸素を継続的に注入し、参照セルにステップ1における相転移温度が80℃である相変化パラフィン1gを加入し純窒素を注入し、両者のレートがいずれも50mL/minであり、ステップ2と同じ加熱条件を選択し、マイクロカロリメーターにより設定された昇温プログラムを用いて、この相変化パラフィンを参照とする勝利褐炭の熱流の温度による変化カーブを測定し取得するステップ3と、
【0031】
試料セルに測定対象の勝利褐炭の石炭試料1gを加入し純酸素を継続的に注入し、参照セルに物質を加入せず純窒素を注入し、両者のレートがいずれも50mL/minであり、ステップ2と同じ加熱条件を選択し、マイクロカロリメーターにより対応する昇温プログラムを用いて、勝利褐炭の熱流の温度による変化カーブを測定し取得するステップ4と、
【0032】
ステップ2で取得された相変化パラフィン熱流変化カーブ、ステップ3で取得された相変化パラフィンを参照とする勝利褐炭の熱流変化カーブ、ステップ4で取得された勝利褐炭の熱流変化カーブを、ステップ1で選定された75℃から85℃までの温度変化区間に応じてそれぞれ算出して、この温度変化区間での三者の熱量変化の具体的な数値を取得するステップであって、ここで、勝利褐炭の熱流変化カーブから算出された熱効果変化数値が、従来の測定方法による所定温度範囲での原炭の酸化放熱量(即ち昇温熱効果)であり、相変化パラフィンを参照とする勝利褐炭の熱流変化カーブから算出された熱効果変化数値から、相変化パラフィン熱流変化カーブから算出された熱効果変化数値を差し引くと、本発明で所定温度変化区間での原炭の実際酸化放熱量(即ち恒温熱効果)を精確に測定するステップ5と、である。
【0033】
実施例4:新橋無煙炭を原炭石炭試料として選択し、75℃から175℃までの温度変化区間での低温酸化昇温熱効果の規則性を測定し、原炭石炭試料の使用量は2gであり、選択した有機相変化材料は、相転移温度が165℃であるマンニトール、相転移温度が116℃であるエリスリトールと、相転移温度が95℃である相変化パラフィンとが質量比1:1:1で形成した混合物であり、使用量が8gであり、本実施例では、Tが95℃、xが20℃、Tが165℃、xが15℃であり、図2によると、下記のように昇温プログラムを設定し、即ち、まず5℃/minの昇温レートで室温から75℃まで急速に昇温し、その後、0.2℃/minのレートで75℃から180℃まで昇温し、後の測定プロセスが実施例1と同じであり(測定プロセスにおいて原炭石炭試料を毎回1g使用し、有機相変化材料を毎回4g使用する)、よって、75℃から175℃までの温度変化区間での新橋無煙炭の実際酸化放熱量(即ち昇温熱効果)を精確に測定する。
【0034】
実施例5:東露天気石炭を原炭石炭試料として選択し、110℃から120℃までの温度変化区間での低温酸化恒温熱効果の規則性を測定し、原炭石炭試料の使用量は3gであり、選択した有機相変化材料は、相転移温度が116℃であるエリスリトールで、使用量が6gであり、下記のように昇温プログラムを設定し、即ち、まず、30℃で1時間恒温維持し、その後、1℃/minのレートで30℃から116℃まで昇温し、その後、この温度で2時間恒温維持し、後の測定実施プロセスが実施例3と同じであり(測定プロセスにおいて原炭石炭試料を毎回1.5g使用し、有機相変化材料を毎回3g使用する)、よって、110℃から120℃までの温度変化区間での東露天気石炭の実際酸化放熱量(即ち恒温熱効果)を精確に測定する。
【0035】
上記5つの実施例の測定した結果を表1に示す。
表1 5つの実施例の石炭試料低温酸化発熱熱効果の具体的なパラメータ
【0036】
上記試験のデータ及び図3から8により分かるように、従来の熱量測定方法の熱量測定値は、低温条件で測定精度が低いため、石炭試料酸化プロセスにおける熱量測定ピークを表示できなく、具体的な数値を実際に測定することが困難であり、本発明の方法では、適当な相転移温度の有機相変化材料を選定した後、低温酸化プロセスにおける石炭試料の実際熱効果を精確に測定することができ、このプロセス中の石炭試料の熱効果変化を拡大すると、完全な放熱ピークを表示し、熱効果の方式に対して昇温熱効果又は恒温熱効果を測定することができ、石炭試料熱効果変化の段階分け又はフルプロセスの精確な測定を実現する。
【0037】
上記は本発明の好ましい実施形態に過ぎず、指摘すべきこととして、当業者にとって、本発明の原理から逸脱することなく、多数の改良および修正を行うことができ、これらの改良および修正も本発明の保護範囲内にあると見なすべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8