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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132011
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】断熱仕様決定装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/08 20120101AFI20240920BHJP
【FI】
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042629
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】竹迫 利喜也
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】建物に対してさらに最適な断熱仕様を決定できるようにする。
【解決手段】地域情報及び等級情報に基づいてU値及びηAC値の少なくともいずれかである断熱性能値の基準値を取得する第一取得部(制御部11)と、設計計画情報及び所定の断熱仕様に基づいて、断熱性能値を算出する算出部(制御部11)と、仕様変更条件情報を取得する第二取得部(制御部11)と、断熱性能値が基準値を満たさない場合、仕様変更条件情報に基づいて、且つ仕様変更後の断熱性能値が基準値を満たすように、または断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内でない場合において、仕様変更条件情報に基づいて、且つ仕様変更後の断熱性能値と基準値との差が閾値以内になるように、断熱仕様を変更する変更部(制御部11)と、を備え、仕様変更条件は、近隣状況に応じた条件及び顧客の要望に応じた条件の少なくともいずれかを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物が建設される地域の地域情報、及び前記建物の断熱性能の等級を示す等級情報に基づいて、外皮平均熱貫流率及び冷房期の外皮平均日射熱取得率の少なくともいずれかである前記建物における断熱性能を示す断熱性能値の基準値を取得する第一取得部と、
前記建物の設計計画情報、及び所定の断熱仕様に基づいて、前記断熱性能値を算出する算出部と、
前記断熱仕様を変更する際の仕様変更条件を示す仕様変更条件情報を取得する第二取得部と、
前記算出部により算出された前記断熱性能値が、前記第一取得部により取得された前記基準値を満たさない場合、前記第二取得部により取得された前記仕様変更条件情報に基づいて、且つ仕様変更後の断熱性能値が前記基準値を満たすように、前記断熱仕様を変更し、または前記断熱性能値と前記基準値との差が所定の閾値以内でない場合において、前記仕様変更条件情報に基づいて、且つ仕様変更後の断熱性能値と前記基準値との差が前記閾値以内になるように、前記断熱仕様を変更する変更部と、
を備え、
前記仕様変更条件は、前記建物の近隣状況に応じた条件、及び顧客の要望に応じた条件の少なくともいずれかを含む断熱仕様決定装置。
【請求項2】
前記変更部は、前記仕様変更条件情報が複数の仕様変更条件、及び当該複数の仕様変更条件における優先順位を含む場合、当該優先順位の高い順で前記仕様変更条件を満たすように、前記断熱仕様を変更する請求項1に記載の断熱仕様決定装置。
【請求項3】
前記変更部は、前記仕様変更条件情報が複数の仕様変更条件を含む場合、より多くの前記仕様変更条件を満たすように、前記断熱仕様を変更する請求項1に記載の断熱仕様決定装置。
【請求項4】
前記変更部は、前記仕様変更条件情報が複数の仕様変更条件を含む場合、所定数以上の前記仕様変更条件を満たすように、前記断熱仕様を変更する請求項1に記載の断熱仕様決定装置。
【請求項5】
前記建物の近隣状況に応じた条件は、前記建物と前記建物の隣の建物との距離が仕様変更により短くならないことを含む請求項1に記載の断熱仕様決定装置。
【請求項6】
前記仕様変更条件は、仕様変更できない方角がある場合、当該方角以外の方角において仕様変更することを含む請求項1に記載の断熱仕様決定装置。
【請求項7】
前記仕様変更条件は、仕様変更後の断熱仕様の価格が、仕様変更前の断熱仕様の価格よりも上がらないことを含む請求項1に記載の断熱仕様決定装置。
【請求項8】
前記仕様変更条件は、顧客が仕様変更を希望しない前記建物の部位以外の部位において仕様変更することを含む請求項1に記載の断熱仕様決定装置。
【請求項9】
前記変更部により前記優先順位の高い順で前記仕様変更条件を満たすように前記断熱仕様を変更できない場合、前記建物の設計計画の変更を提案する提案部を備える請求項2に記載の断熱仕様決定装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の断熱仕様決定装置と、
前記所定の断熱仕様を記憶するデータベースと、
前記地域情報、前記等級情報、前記設計計画情報、及び前記仕様変更条件情報の入力を受け付ける端末装置と、
を備える断熱仕様決定システム。
【請求項11】
断熱仕様決定装置のコンピュータを、
建物が建設される地域の地域情報、及び前記建物の断熱性能の等級を示す等級情報に基づいて、外皮平均熱貫流率及び冷房期の外皮平均日射熱取得率の少なくともいずれかである前記建物における断熱性能を示す断熱性能値の基準値を取得する第一取得部、
前記建物の設計計画情報、及び所定の断熱仕様に基づいて、前記断熱性能値を算出する算出部、
前記断熱仕様を変更する際の仕様変更条件を示す仕様変更条件情報を取得する第二取得部、
前記算出部により算出された前記断熱性能値が、前記第一取得部により取得された前記基準値を満たさない場合、前記第二取得部により取得された前記仕様変更条件情報に基づいて、且つ仕様変更後の断熱性能値が前記基準値を満たすように、前記断熱仕様を変更し、または前記断熱性能値と前記基準値との差が所定の閾値以内でない場合において、前記仕様変更条件情報に基づいて、且つ仕様変更後の断熱性能値と前記基準値との差が前記閾値以内になるように、前記断熱仕様を変更する変更部、
として機能させ、
前記仕様変更条件は、前記建物の近隣状況に応じた条件、及び顧客の要望に応じた条件の少なくともいずれかを含むプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱仕様決定装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、新築する建物の断熱仕様を決定する際、設計者は、断熱仕様の基準値に適合するように自身の経験値に基づいて断熱仕様を決定していた。
しかし、設計者の経験値に基づいて決定された断熱仕様は必ずしも当該建物に対して最適な断熱仕様ではない可能性があった。
【0003】
これに関して、特許文献1には、次の技術が開示されている。具体的には、オーバースペックにならないように決定された標準断熱仕様のU値が、要求される基準値を満たすか否かを判断する。そして、標準断熱仕様のU値が基準値を満たす場合、標準断熱仕様を最終的な断熱仕様として決定する。一方、標準断熱仕様のU値が基準値を満たさない場合、建物を構成する建物要素ごとに仕様を変更した場合のコストアップ量を算出する。そして、建物要素の一部の断熱仕様を変更して、基準値を満たす断熱仕様変更パターンを算出する。そして、断熱仕様変更パターンのうちコストアップ量が最も低い断熱仕様変更パターンにより、最終的な断熱仕様を決定する。
このような技術によれば、要求される基準値を満足させながらも、コストの上昇を抑制することができる。
また、断熱仕様変更パターンでは、複数の建物要素のうち、一部の建物要素を除く建物要素の断熱仕様を変更する。そのため、一部の建物要素を所望の断熱仕様としながらも、要求される基準値を満足させるように、一部の建物要素を除く建物要素の断熱仕様を変更することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-166457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コストの上昇抑制、及び特定の建物要素以外における断熱仕様の変更以外の顧客の要望や建物の近隣状況等に応じた断熱仕様に変更することで、建物に対してさらに最適な断熱仕様とすることが求められている。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、建物に対してさらに最適な断熱仕様を決定する断熱仕様決定装置及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の断熱仕様決定装置10は、例えば図1図9に示すように、
建物が建設される地域の地域情報、及び前記建物の断熱性能の等級を示す等級情報に基づいて、外皮平均熱貫流率(U値)及び冷房期の外皮平均日射熱取得率(ηAC値)の少なくともいずれかである前記建物における断熱性能を示す断熱性能値の基準値を取得する第一取得部(制御部11)と、
前記建物の設計計画情報、及び所定の断熱仕様に基づいて、前記断熱性能値を算出する算出部(制御部11)と、
前記断熱仕様を変更する際の仕様変更条件を示す仕様変更条件情報を取得する第二取得部(制御部11)と、
前記算出部により算出された前記断熱性能値が、前記第一取得部により取得された前記基準値を満たさない場合、前記第二取得部により取得された前記仕様変更条件情報に基づいて、且つ仕様変更後の断熱性能値が前記基準値を満たすように、前記断熱仕様を変更し、または前記断熱性能値と前記基準値との差が所定の閾値以内でない場合において、前記仕様変更条件情報に基づいて、且つ仕様変更後の断熱性能値と前記基準値との差が前記閾値以内になるように、前記断熱仕様を変更する変更部(制御部11)と、
を備え、
前記仕様変更条件は、前記建物の近隣状況に応じた条件、及び顧客の要望に応じた条件の少なくともいずれかを含む。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、建物における断熱性能値が要求される基準値を満たさない場合において、建物の断熱性能値が要求される基準値を満たしつつ、または断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内でない場合において、建物の断熱性能値と基準値との差が閾値以内になるようにしつつ、建物の近隣状況に応じた条件、及び顧客の要望に応じた条件の少なくともいずれかを含む仕様変更条件を満たすように断熱仕様を変更することができる。したがって、建物に対してさらに最適な断熱仕様を決定することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、例えば図1図9に示すように、請求項1に記載の断熱仕様決定装置10において、
前記変更部(制御部11)は、前記仕様変更条件情報が複数の仕様変更条件、及び当該複数の仕様変更条件における優先順位を含む場合、当該優先順位の高い順で前記仕様変更条件を満たすように、前記断熱仕様を変更する。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、建物における断熱性能値が要求される基準値を満たさない場合において、建物の断熱性能値が要求される基準値を満たしつつ、または断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内でない場合において、建物の断熱性能値と基準値との差が閾値以内になるようにしつつ、優先順位の高い順で仕様変更条件を満たすように断熱仕様を変更することができる。したがって、建物に対してさらに最適な断熱仕様を決定することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、例えば図1図9に示すように、請求項1に記載の断熱仕様決定装置10において、
前記変更部(制御部11)は、前記仕様変更条件情報が複数の仕様変更条件を含む場合、より多くの前記仕様変更条件を満たすように、前記断熱仕様を変更する。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、建物における断熱性能値が要求される基準値を満たさない場合において、建物の断熱性能値が要求される基準値を満たしつつ、または断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内でない場合において、建物の断熱性能値と基準値との差が閾値以内になるようにしつつ、より多くの仕様変更条件を満たすように断熱仕様を変更することができる。したがって、建物に対してさらに最適な断熱仕様を決定することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、例えば図1図9に示すように、請求項1に記載の断熱仕様決定装置10において、
前記変更部(制御部11)は、前記仕様変更条件情報が複数の仕様変更条件を含む場合、所定数以上の前記仕様変更条件を満たすように、前記断熱仕様を変更する。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、建物における断熱性能値が要求される基準値を満たさない場合において、建物の断熱性能値が要求される基準値を満たしつつ、または断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内でない場合において、建物の断熱性能値と基準値との差が閾値以内になるようにしつつ、例えば、顧客に要望された最低限満たすべき個数の仕様変更条件を満たすように断熱仕様を変更することができる。したがって、建物に対してさらに最適な断熱仕様を決定することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、例えば図1図9に示すように、請求項1に記載の断熱仕様決定装置10において、
前記建物の近隣状況に応じた条件は、前記建物と前記建物の隣の建物との距離が仕様変更により短くならないことを含む。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、建物における断熱性能値が要求される基準値を満たさない場合において、建物の断熱性能値が要求される基準値を満たしつつ、または断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内でない場合において、建物の断熱性能値と基準値との差が閾値以内になるようにしつつ、建物と当該建物の隣の建物との距離が仕様変更により短くならないことである仕様変更条件を満たすように断熱仕様を変更することができる。したがって、建物に対してさらに最適な断熱仕様を決定することができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、例えば図1図9に示すように、請求項1に記載の断熱仕様決定装置10において、
前記仕様変更条件は、仕様変更できない方角がある場合、当該方角以外の方角において仕様変更することを含む。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、建物における断熱性能値が要求される基準値を満たさない場合において、建物の断熱性能値が要求される基準値を満たしつつ、または断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内でない場合において、建物の断熱性能値と基準値との差が閾値以内になるようにしつつ、仕様変更できない方角がある場合、当該方角以外の方角において仕様変更することである仕様変更条件を満たすように断熱仕様を変更することができる。したがって、建物に対してさらに最適な断熱仕様を決定することができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、例えば図1図9に示すように、請求項1に記載の断熱仕様決定装置10において、
前記仕様変更条件は、仕様変更後の断熱仕様の価格が、仕様変更前の断熱仕様の価格よりも上がらないことを含む。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、建物における断熱性能値が要求される基準値を満たさない場合において、建物の断熱性能値が要求される基準値を満たしつつ、または断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内でない場合において、建物の断熱性能値と基準値との差が閾値以内になるようにしつつ、仕様変更後の断熱仕様の価格が、仕様変更前の断熱仕様の価格よりも上がらないことである仕様変更条件を満たすように断熱仕様を変更することができる。したがって、建物に対してさらに最適な断熱仕様を決定することができる。
【0021】
請求項8に記載の発明は、例えば図1図9に示すように、請求項1に記載の断熱仕様決定装置10において、
前記仕様変更条件は、顧客が仕様変更を希望しない前記建物の部位以外の部位において仕様変更することを含む。
【0022】
請求項8に記載の発明によれば、建物における断熱性能値が要求される基準値を満たさない場合において、建物の断熱性能値が要求される基準値を満たしつつ、または断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内でない場合において、建物の断熱性能値と基準値との差が閾値以内になるようにしつつ、顧客が仕様変更を希望しない前記建物の部位以外の部位において仕様変更することである仕様変更条件を満たすように断熱仕様を変更することができる。したがって、建物に対してさらに最適な断熱仕様を決定することができる。
【0023】
請求項9に記載の発明は、例えば図5に示すように、請求項2に記載の断熱仕様決定装置10において、
前記変更部(制御部11)により前記優先順位の高い順で前記仕様変更条件を満たすように前記断熱仕様を変更できない場合、前記建物の設計計画の変更を提案する提案部(制御部11)を備える。
【0024】
請求項9に記載の発明によれば、建物の設計計画を変更することで、建物の断熱性能値が基準値を満たし得る、または建物の断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内になり得る。したがって、建物に対してさらに最適な断熱仕様を決定することができる。
【0025】
請求項10に記載の断熱仕様決定システム100は、例えば図1図10に示すように、
請求項1から9のいずれか一項に記載の断熱仕様決定装置10と、
前記所定の断熱仕様を記憶するデータベース(断熱仕様データベース20)と、
前記地域情報、前記等級情報、前記設計計画情報、及び前記仕様変更条件情報の入力を受け付ける端末装置30と、
を備える。
【0026】
請求項10に記載の発明によれば、建物における断熱性能値が要求される基準値を満たさない場合において、建物の断熱性能値が要求される基準値を満たしつつ、または断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内でない場合において、建物の断熱性能値と基準値との差が閾値以内になるようにしつつ、建物の近隣状況に応じた条件、及び顧客の要望に応じた条件の少なくともいずれかを含む仕様変更条件を満たすように断熱仕様を変更することができる。したがって、建物に対してさらに最適な断熱仕様を決定することができる。
【0027】
請求項11に記載のプログラムは、例えば図1図9に示すように、
断熱仕様決定装置10のコンピュータを、
建物が建設される地域の地域情報、及び前記建物の断熱性能の等級を示す等級情報に基づいて、外皮平均熱貫流率(U値)及び冷房期の外皮平均日射熱取得率(ηAC値)の少なくともいずれかである前記建物における断熱性能を示す断熱性能値の基準値を取得する第一取得部(制御部11)、
前記建物の設計計画情報、及び所定の断熱仕様に基づいて、前記断熱性能値を算出する算出部(制御部11)、
前記断熱仕様を変更する際の仕様変更条件を示す仕様変更条件情報を取得する第二取得部(制御部11)、
前記算出部により算出された前記断熱性能値が、前記第一取得部により取得された前記基準値を満たさない場合、前記第二取得部により取得された前記仕様変更条件情報に基づいて、且つ仕様変更後の断熱性能値が前記基準値を満たすように、前記断熱仕様を変更し、または前記断熱性能値と前記基準値との差が所定の閾値以内でない場合において、前記仕様変更条件情報に基づいて、且つ仕様変更後の断熱性能値と前記基準値との差が前記閾値以内になるように、前記断熱仕様を変更する変更部(制御部11)、
として機能させ、
前記仕様変更条件は、前記建物の近隣状況に応じた条件、及び顧客の要望に応じた条件の少なくともいずれかを含む。
【0028】
請求項11に記載の発明によれば、建物における断熱性能値が要求される基準値を満たさない場合において、建物の断熱性能値が要求される基準値を満たしつつ、または断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内でない場合において、建物の断熱性能値と基準値との差が閾値以内になるようにしつつ、建物の近隣状況に応じた条件、及び顧客の要望に応じた条件の少なくともいずれかを含む仕様変更条件を満たすように断熱仕様を変更することができる。したがって、建物に対してさらに最適な断熱仕様を決定することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、建物に対してさらに最適な断熱仕様を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】断熱仕様決定システムの構成を説明する図である。
図2】断熱仕様決定装置の構成を説明する図である。
図3A】U値基準値テーブルの例を示す図である。
図3B】ηAC値基準値テーブルの例を示す図である。
図3C】地域区分テーブルの例を示す図である。
図4】断熱仕様テーブルの例を示す図である。
図5】断熱仕様決定処理の流れを示すフローチャートである。
図6】基準値取得処理の流れを示すフローチャートである。
図7】建物別断熱性能値算出処理の流れを示すフローチャートである。
図8】仕様変更の例を示す図である。
図9】仕様変更の例を示す図である。
図10】変形例の断熱仕様決定システムの構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0032】
〔1.断熱仕様決定システムの構成〕
本実施形態の断熱仕様決定システム100は、住宅などの建物の新築時やリフォーム時に断熱仕様を決定するシステムである。
図1は、断熱仕様決定システム100の構成を説明する図である。
断熱仕様決定システム100は、断熱仕様決定装置10と、断熱仕様データベース20(データベース)と、を備える。
断熱仕様決定装置10、及び断熱仕様データベース20は、通信ネットワークNに接続されている。通信ネットワークNは、インターネットにより構成されているものとするが、移動体通信網、公衆回線、Wi-Fi(Wireless Fidelity)等を含むこととしてもよい。
【0033】
断熱仕様決定装置10は、例えばPC、専用の装置・端末等で構成され、建物の最適な断熱仕様を決定する装置である。
断熱仕様決定装置10は、図2に示すように、制御部11と、記憶部12と、通信部13と、表示部14と、操作部15と、を備える。断熱仕様決定装置10が備える各部は、バス等で電気的に接続されている。
【0034】
制御部11は、CPU、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等により構成される。
ROMは、CPUが実行する各種プログラム等を記憶する。
そして、制御部11のCPUは、記憶部12に記憶されている各種プログラムを読出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行し、本システムにおける各部の動作を集中制御する。
【0035】
記憶部12は、不揮発性のメモリーやハードディスク等により構成される。
記憶部12には、制御部11が実行する各種プログラムや、プログラムの実行に必要な各種データ等が記憶されている。各種プログラムには、例えば、断熱仕様決定プログラムが含まれる。
【0036】
また、記憶部12は、外皮平均熱貫流率(U値)基準値テーブル121と、冷房期の外皮平均日射熱取得率(ηAC値)基準値テーブル122と、地域区分テーブル123とを記憶している。
値及びηAC値は、建物における断熱性能を示す断熱性能値である。
【0037】
図3Aに、U値基準値テーブル121の例を示す。
図3Aに示すように、U値基準値テーブル121では、等級1~7に対して、地域区分1~8ごとにU値の基準値が対応付けられている。U値は、値が低くなるほど断熱性能が高くなる。
【0038】
図3Bに、ηAC値基準値テーブル122の例を示す。
図3Bに示すように、ηAC値基準値テーブル122では、等級1~7に対して、地域区分1~8ごとにηAC値の基準値が対応付けられている。ηAC値は、値が低くなるほど断熱性能が高くなる。
【0039】
図3Cに、地域区分テーブル123の例を示す。
図3Cに示すように、地域区分テーブル123では、気象条件の違いに応じて分類された8つの地域と地域区分とが対応付けられている。
なお、図3Cに示す地域区分テーブル123では上記地域と地域区分とが対応付けられているがこれに限らない。地域区分テーブル123において、郵便番号と地域区分が対応付けられていてもよい。
【0040】
通信部13は、通信モジュール等で構成される。
そして、通信部13は、通信ネットワークNを介して有線又は無線で接続された他の装置(断熱仕様データベース20等)との間で各種信号や各種データを送受信する。
【0041】
表示部14は、LCD(Liquid Crystal Display)、EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等で構成される。表示部14は、CPU11から指示された表示情報に従い各種表示を行う。
【0042】
操作部15は、キーボード等のキー入力部と、マウス等のポインティングデバイスとを有する。操作部15は、ユーザからのキー操作入力及び位置操作入力を受け付け、その操作情報を、CPU11に出力する。CPU11は、操作部15から送信された情報に基づいて、ユーザの入力操作を受け付ける。
【0043】
断熱仕様データベース20は、断熱仕様テーブル21を記憶している。
断熱仕様テーブル21では、建物の部位ごとに複数の断熱仕様が設定されている。そして、各断熱仕様の仕様名称に対して、仕様別断熱性能値、仕様別属性情報等が対応付けている。
建物の部位とは、例えば、天井、外壁、窓、玄関ドア、外気に接する床、その他の床、ユニットバス、土間床等である。
仕様別断熱性能値とは、断熱仕様ごと(仕様名称ごと)の断熱性能を示す断熱性能値である仕様別U値及び仕様別ηAC値を含む。
仕様別属性情報とは、断熱仕様ごと(仕様名称ごと)の価格、資材メーカー、内観への影響があるか否か、外観への影響があるか否か、建物の近隣環境への影響があるか否か等の情報である。
【0044】
図4に、断熱仕様テーブル21の例を示す。
図4に示す例においては、建物の部位ごとに、仕様別断熱性能値が高レベル、中レベル、低レベルである、3つの断熱仕様が設定されている。
【0045】
〔2.断熱仕様決定システムの動作〕
次に、断熱仕様決定システム100における動作について説明する。
断熱仕様決定装置10の制御部11は、図5に示す断熱仕様決定処理を実行することにより、建物の最適な断熱仕様を決定する。
【0046】
(断熱仕様決定処理)
まず、制御部11は、図6に示す基準値取得処理を実行する(ステップS1)。
【0047】
(基準値取得処理)
制御部11は、操作部15を介したユーザによる、建物が建設される地域の地域情報の入力操作を受け付ける。つまり、制御部11は、当該地域情報を取得する(ステップS11)。
次に、制御部11は、操作部15を介したユーザによる、建物において要求される断熱性能の等級を示す等級情報の入力操作を受け付ける。つまり、制御部11は、当該等級情報を取得する(ステップS12)。
【0048】
次に、制御部11は、ステップS11で取得した地域情報、及びステップS12で取得した等級情報に基づいて、断熱性能値であるU値及びηAC値の基準値を取得し(ステップS13)、本処理を終了する。
つまり、制御部11は、建物が建設される地域の地域情報、及び建物の断熱性能の等級を示す等級情報に基づいて、U値(外皮平均熱貫流率)及びηAC値(冷房期の外皮平均日射熱取得率)の少なくともいずれかである建物における断熱性能を示す断熱性能値の基準値を取得する。ここで、制御部11は第一取得部として機能する。
【0049】
例えば、制御部11がステップS1で地域情報として「南九州」を取得し、ステップS2で等級情報として「等級6」を取得した場合を説明する。
この場合、ステップS3において、制御部11は、地域区分テーブル123を参照し、地域情報の「南九州」は、地域区分「7」と判定する。次に、制御部11は、U値基準値テーブル121を参照し、地域区分「7」における、「等級6」の値である「0.46[W/(m・K)]」をU値の基準値として取得する。また、制御部11は、ηAC値基準値テーブル122を参照し、地域区分「7」における、「等級6」の値である「2.7」をηAC値の基準値として取得する。
【0050】
図5に戻り、制御部11は、図7に示す建物別断熱性能値算出処理を実行する(ステップS2)。
【0051】
(建物別断熱性能値算出処理)
制御部11は、操作部15を介したユーザによる、建物の設計計画情報の入力操作を受け付ける。つまり、制御部11は、当該建物の設計計画情報を取得する(ステップS21)。
建物の設計計画情報とは、建物の設計計画を示す情報であり、建物が有する各部位の外皮面積情報を含む。当該建物の設計計画情報は、例えば、建物の図面や建物が有する各部位の外皮面積が記載された一覧表等である。
次に、制御部11は、初期設定の断熱仕様における仕様別断熱性能値(仕様別U値及び仕様別ηAC値)を取得する(ステップS22)。
本実施形態において、初期設定の断熱仕様は、断熱仕様テーブル21における仕様別U値が中レベル、及び仕様別ηAC値が中レベルである断熱仕様である。つまり、図4に示す例において、初期設定の断熱仕様は、「天井B」、「外壁B」、「窓B」、「玄関ドアB」、「外床B」、「他床B」、「ユニットバスB」及び「土間床B」である。
【0052】
次に、制御部11は、ステップS21で取得した建物の設計計画情報、及びステップS22で取得した初期設定の断熱仕様の仕様別U値及び仕様別ηAC値に基づいて、建物における断熱性能を示す建物別断熱性能値(建物別U値及び建物別ηAC値)を算出し(ステップS23)、本処理を終了する。
つまり、制御部11は、建物の設計計画情報、及び所定の断熱仕様に基づいて、建物における断熱性能を示す断熱性能値を算出する。ここで、制御部11は算出部として機能する。
【0053】
図5に戻り、制御部11は、操作部15を介したユーザによる、断熱仕様を変更する際の仕様変更条件を示す仕様変更条件情報の入力操作を受け付ける。つまり、制御部11は、当該仕様変更条件情報を取得する(ステップS3)。ここで、制御部11は第二取得部として機能する。
【0054】
仕様変更条件情報は、一つ以上の仕様変更条件を含む。
仕様変更条件は、建物の近隣状況に応じた条件、及び顧客の要望に応じた条件の少なくともいずれかを含む。
当該建物の近隣状況に応じた条件とは、例えば、建物と当該建物の隣の建物との距離が仕様変更により短くならないことを含む。
また、仕様変更条件は、例えば、仕様変更できない方角がある場合、当該方角以外の方角において仕様変更することを含む。当該仕様変更できない方角がある場合当該方角以外の方角において仕様変更することは、建物の近隣状況に応じた条件、または顧客の要望に応じた条件である。
また、仕様変更条件は、例えば、仕様変更後の断熱仕様の価格が、仕様変更前の断熱仕様の価格よりも上がらないことを含む。当該仕様変更後の断熱仕様の価格が仕様変更前の断熱仕様の価格よりも上がらないことは、顧客の要望に応じた条件であってもよい。
また、仕様変更条件は、例えば、顧客の要望に応じた条件として、顧客が仕様変更を希望しない建物の部位以外の部位において仕様変更することを含む。これは、顧客が建物の内装や外観意匠を重視しており、重視している部位の資材メーカーを指定している場合等である。
また、仕様変更条件情報が複数の仕様変更条件を含む場合、仕様変更条件情報は、複数の仕様変更条件における優先順位を示す情報を含む。当該優先順位は、例えば、顧客が要望する優先順位である。
【0055】
次に、制御部11は、ステップS2で算出した建物別断熱性能値は、ステップS1で取得した基準値を満たしているか否かを判断する(ステップS4)。
建物別断熱性能値が基準値を満たしている場合(ステップS4;YES)、制御部11は、建物別断熱性能値と基準値との差は所定の閾値以内か否かを判断する(ステップS5)。つまり、制御部11は、建物別断熱性能値がオーバースペックになっていないかを判断する。当該閾値は予め設定されている。
【0056】
建物別断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内である場合(ステップS5;YES)、つまり、建物別断熱性能値がオーバースペックでない場合である。この場合、制御部11は、当該建物別断熱性能値を算出するために用いた断熱仕様を、最終的な建物の断熱仕様として決定し(ステップS6)、本処理を終了する。
【0057】
一方、建物別断熱性能値が基準値を満たしていない場合(ステップS4;NO)、制御部11は、ステップS3で取得した仕様変更条件情報が含む全ての仕様変更条件を満たしつつ、且つ仕様変更後の建物別断熱性能値が基準値を満たすように仕様変更できるか否かを判断する(ステップS7)。
全ての仕様変更条件を満たしつつ、且つ仕様変更後の建物別断熱性能値が基準値を満たすように仕様変更できる場合(ステップS7;YES)、制御部11は、本処理をステップS6に移行する。この場合、制御部11は、変更した仕様を最終的な建物の断熱仕様として決定する。
【0058】
図8に仕様変更の例を示す。
図8に示す例において、外壁全面の断熱仕様を初期設定の「外壁B」から「外壁A」に変更すると、仕様変更後の建物別断熱性能値が基準値を満たすとする。
しかし、図8に示すように、「外壁A」は、近隣環境への影響が「有り」である。且つ、仕様変更条件には、外壁の東面及び西面において、近隣環境への影響が「有り」の場合、仕様が変更できないことが含まれている。
この場合、制御部11は、外壁の北面及び南面の断熱仕様を「外壁B」から「外壁A」に変更する。そして、制御部11は、外壁の東面及び西面の断熱仕様を初期設定の「外壁B」のままとする。そして、制御部11は、外壁の東面及び西面において仕様変更できないため、窓の断熱仕様を初期設定の「窓B」から「窓A」に変更し、玄関ドアの断熱仕様を初期設定の「玄関ドアB」から「玄関ドアA」に変更することで、仕様変更後の建物別断熱性能値が基準値を満たすようにする。
【0059】
一方、全ての仕様変更条件を満たしつつ、且つ仕様変更後の建物別断熱性能値が基準値を満たすように仕様変更できない場合(ステップS7;NO)を説明する。この場合、制御部11は、ステップS3で取得した仕様変更条件情報が含む仕様変更条件における優先順位に基づいて、仕様変更後の建物別断熱性能値が基準値を満たすように仕様変更できるか否かを判断する(ステップS8)。具体的には、制御部11は、優先順位の高い順で仕様変更条件を満たすように、且つ仕様変更後の建物別断熱性能値が基準値を満たすように仕様変更できるか否かを判断する。
優先順位に基づいて、仕様変更後の建物別断熱性能値が基準値を満たすように仕様変更できる場合(ステップS8;YES)、制御部11は、本処理をステップS6に移行する。この場合、制御部11は、変更した仕様を最終的な建物の断熱仕様として決定する。
【0060】
また、建物別断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内でない場合(ステップS5;NO)、つまり、建物別断熱性能値がオーバースペックである場合である。この場合、制御部11は、全ての仕様変更条件を満たしつつ、且つ仕様変更後の建物別断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内になるように、断熱仕様をスペックダウンできるか否かを判断する(ステップS9)。当該スペックダウンとは、断熱仕様のスペックを適正化することであって、当該スペックダウンを行うことにより、断熱仕様の価格上昇抑制に寄与することができる。当該スペックダウンは、仕様変更に含まれる。
全ての仕様変更条件を満たしつつ、且つ仕様変更後の建物別断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内になるように、断熱仕様をスペックダウンできる場合(ステップS9;YES)、制御部11は、本処理をステップS6に移行する。この場合、制御部11は、スペックダウンした断熱仕様を最終的な建物の断熱仕様として決定する。
つまり、制御部11は、算出部として算出した建物別断熱性能値が、第一取得部として取得した基準値を満たさない場合、第二取得部として取得した仕様変更条件情報に基づいて、且つ仕様変更後の建物別断熱性能値が基準値を満たすように、断熱仕様を変更し、または建物別断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内でない場合において、仕様変更条件情報に基づいて、且つ仕様変更後の建物別断熱性能値と基準値との差が当該閾値以内になるように、断熱仕様を変更する。ここで、制御部11は変更部として機能する。
【0061】
図9に仕様変更であるスペックダウンの例を示す。
図9に示す例において、外壁全面の断熱仕様を初期設定の「外壁B」から「外壁C」に変更すると、仕様変更後の建物別断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内になるとする。また、仕様変更条件は、仕様変更後の断熱仕様の価格が、仕様変更前の断熱仕様の価格よりも上がらないことを含むとする。
しかし、図9に示すように、「外壁C」は、近隣環境への影響が「有り」である。且つ、仕様変更条件には、外壁の東面及び西面において、近隣環境への影響が「有り」の場合、仕様が変更できないことが含まれている。
この場合、制御部11は、外壁の北面及び南面の断熱仕様を「外壁B」から「外壁C」に変更する。そして、制御部11は、外壁の東面及び西面の断熱仕様を初期設定の「外壁B」のままとする。そして、制御部11は、外壁の東面及び西面において仕様変更できないため、土間床の断熱仕様を初期設定の「土間床B」から「土間床C」に変更することで、仕様変更後の建物別断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内になるようにする。
この場合、外壁の北面及び南面の断熱仕様の価格は「中レベル」から「低レベル」に下がっており、土間床の断熱仕様の価格は「中レベル」から「低レベル」に下がっている。そのため、仕様変更後の断熱仕様の価格が、仕様変更前の断熱仕様の価格よりも上がらないことを満たしている。
【0062】
一方、全ての仕様変更条件を満たしつつ、且つ仕様変更後の建物別断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内になるように、断熱仕様をスペックダウンできない場合(ステップS9;NO)を説明する。この場合、制御部11は、仕様変更条件情報が含む仕様変更条件における優先順位に基づいて、仕様変更後の建物別断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内になるように、断熱仕様をスペックダウンできるか否かを判断する(ステップS10)。具体的には、制御部11は、優先順位の高い順で仕様変更条件を満たすように、且つ仕様変更後の建物別断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内になるようにスペックダウンできるか否かを判断する。
優先順位に基づいて、仕様変更後の建物別断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内になるように、断熱仕様をスペックダウンできる場合(ステップS10;YES)、制御部11は、本処理をステップS6に移行する。この場合、制御部11は、スペックダウンした断熱仕様を最終的な建物の断熱仕様として決定する。
【0063】
また、優先順位に基づいて、仕様変更後の建物別断熱性能値が基準値を満たすように仕様変更でない場合(ステップS8;NO)、または優先順位に基づいて、仕様変更後の建物別断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内になるように、断熱仕様をスペックダウンでない場合(ステップS10;NO)を説明する。
この場合、制御部11は、建物の設計計画の変更を提案し(ステップS11)、本処理を終了する。例えば、制御部11は、ステップS11において、建物の設計計画の変更を提案する旨を表示部14に表示する。
当該建物の設計計画の変更とは、建物の開口部を小さくすること、建物の開口部を設ける方角を変更すること、建物の開口部の数を減らすこと等である。
つまり、制御部11は、変更部として優先順位の高い順で仕様変更条件を満たすように断熱仕様を変更できない場合、建物の設計計画の変更を提案する。ここで、制御部11提案部として機能する。
【0064】
なお、上記断熱仕様決定処理ステップS8において、制御部11は、ステップS3で取得した仕様変更条件情報が含む複数の仕様変更条件において、より多くの仕様変更条件を満たすように、且つ仕様変更後の建物別断熱性能値が基準値を満たすように仕様変更できるか否かを判断してもよい。
また、上記断熱仕様決定処理ステップS10において、制御部11は、ステップS3で取得した仕様変更条件情報が含む複数の仕様変更条件において、より多くの仕様変更条件を満たすように、且つ仕様変更後の建物別断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内になるように、断熱仕様をスペックダウンできるか否かを判断してもよい。
【0065】
また、ステップS3で取得した仕様変更条件情報が複数の仕様変更条件、及び当該複数の仕様変更条件において最低限満たすべき仕様変更条件の個数の情報を含む場合を説明する。この場合、上記断熱仕様決定処理ステップS8において、制御部11は、当該個数の仕様変更条件を満たすように、且つ仕様変更後の建物別断熱性能値が基準値を満たすように仕様変更できるか否かを判断してもよい。また、上記断熱仕様決定処理ステップS10において、制御部11は、当該個数の仕様変更条件を満たすように、且つ仕様変更後の建物別断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内になるように、断熱仕様をスペックダウンできるか否かを判断してもよい。
【0066】
また、上記断熱仕様決定処理において、断熱性能値はU値及びηAC値であるとしたがこれに限らない。断熱性能値は、U値及びηAC値の少なくともいずれかとしてもよい。
【0067】
〔変形例〕
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、変形例について説明する。
また、以下の各変形例において、上記の実施形態と共通する要素については、共通の符号を付し、説明を省略又は簡略する。
【0068】
図10は、本変形例の断熱仕様決定システム100の構成を説明する図である。
本変形例において、断熱仕様決定システム100は、断熱仕様決定装置10と、断熱仕様データベース20(データベース)と、端末装置30とを備える。
本変形例の断熱仕様決定装置10は、表示部14及び操作部15を備えないとしてもよい。
端末装置30は、通信ネットワークNに接続されている。
【0069】
端末装置30は、例えば、スマートフォン、タブレット端末等の汎用の携帯端末である。
端末装置30は、図示しない制御部、記憶部、通信部、表示部、操作部等を備える。
【0070】
本変形例の基準値取得処理ステップS11において、端末装置30は、端末装置30を操作するユーザによる地域情報の入力操作を受け付ける。そして、端末装置30は、通信ネットワークNを介して、受け付けた地域情報を断熱仕様決定装置10に送信する。つまり、断熱仕様決定装置10の制御部11は、端末装置30から当該地域情報を取得する。
【0071】
また、本変形例の基準値取得処理ステップS12において、端末装置30は、端末装置30を操作するユーザによる等級情報の入力操作を受け付ける。そして、端末装置30は、通信ネットワークNを介して、受け付けた等級情報を断熱仕様決定装置10に送信する。つまり、断熱仕様決定装置10の制御部11は、端末装置30から当該等級情報を取得する。
【0072】
また、本変形例の建物別断熱性能値算出処理ステップS21において、端末装置30は、端末装置30を操作するユーザによる建物の設計計画情報の入力操作を受け付ける。そして、端末装置30は、通信ネットワークNを介して、受け付けた建物の設計計画情報を断熱仕様決定装置10に送信する。つまり、断熱仕様決定装置10の制御部11は、端末装置30から当該建物の設計計画情報を取得する。
【0073】
また、本変形例の断熱仕様決定処理ステップS3において、端末装置30は、端末装置30を操作するユーザによる仕様変更条件情報の入力操作を受け付ける。そして、端末装置30は、通信ネットワークNを介して、受け付けた仕様変更条件情報を断熱仕様決定装置10に送信する。つまり、断熱仕様決定装置10の制御部11は、端末装置30から当該仕様変更条件情報を取得する。
【0074】
〔3.効果〕
以上、本実施形態の断熱仕様決定装置10は、建物が建設される地域の地域情報、及び前記建物の断熱性能の等級を示す等級情報に基づいて、外皮平均熱貫流率(U値)及び冷房期の外皮平均日射熱取得率(ηAC値)の少なくともいずれかである前記建物における断熱性能を示す断熱性能値の基準値を取得する第一取得部(制御部11)と、前記建物の設計計画情報、及び所定の断熱仕様に基づいて、前記断熱性能値を算出する算出部(制御部11)と、前記断熱仕様を変更する際の仕様変更条件を示す仕様変更条件情報を取得する第二取得部(制御部11)と、前記算出部により算出された前記断熱性能値が、前記第一取得部により取得された前記基準値を満たさない場合、前記第二取得部により取得された前記仕様変更条件情報に基づいて、且つ仕様変更後の断熱性能値が前記基準値を満たすように、前記断熱仕様を変更し、または前記断熱性能値と前記基準値との差が所定の閾値以内でない場合において、前記仕様変更条件情報に基づいて、且つ仕様変更後の断熱性能値と前記基準値との差が前記閾値以内になるように、前記断熱仕様を変更する変更部(制御部11)と、を備え、前記仕様変更条件は、前記建物の近隣状況に応じた条件、及び顧客の要望に応じた条件の少なくともいずれかを含む。
これによれば、建物における断熱性能値が要求される基準値を満たさない場合において、建物の断熱性能値が要求される基準値を満たしつつ、または断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内でない場合において、建物の断熱性能値と基準値との差が閾値以内になるようにしつつ、建物の近隣状況に応じた条件、及び顧客の要望に応じた条件の少なくともいずれかを含む仕様変更条件を満たすように断熱仕様を変更することができる。したがって、建物に対してさらに最適な断熱仕様を決定することができる。
【0075】
また、本実施形態の断熱仕様決定装置10において、前記変更部(制御部11)は、前記仕様変更条件情報が複数の仕様変更条件、及び当該複数の仕様変更条件における優先順位を含む場合、当該優先順位の高い順で前記仕様変更条件を満たすように、前記断熱仕様を変更する。
これによれば、建物における断熱性能値が要求される基準値を満たさない場合において、建物の断熱性能値が要求される基準値を満たしつつ、または断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内でない場合において、建物の断熱性能値と基準値との差が閾値以内になるようにしつつ、優先順位の高い順で仕様変更条件を満たすように断熱仕様を変更することができる。したがって、建物に対してさらに最適な断熱仕様を決定することができる。
【0076】
また、本実施形態の断熱仕様決定装置10において、前記変更部(制御部11)は、前記仕様変更条件情報が複数の仕様変更条件を含む場合、より多くの前記仕様変更条件を満たすように、前記断熱仕様を変更する。
これによれば、建物における断熱性能値が要求される基準値を満たさない場合において、建物の断熱性能値が要求される基準値を満たしつつ、または断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内でない場合において、建物の断熱性能値と基準値との差が閾値以内になるようにしつつ、より多くの仕様変更条件を満たすように断熱仕様を変更することができる。したがって、建物に対してさらに最適な断熱仕様を決定することができる。
【0077】
また、本実施形態の断熱仕様決定装置10において、前記変更部(制御部11)は、前記仕様変更条件情報が複数の仕様変更条件を含む場合、所定数以上の前記仕様変更条件を満たすように、前記断熱仕様を変更する。
これによれば、建物における断熱性能値が要求される基準値を満たさない場合において、建物の断熱性能値が要求される基準値を満たしつつ、または断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内でない場合において、建物の断熱性能値と基準値との差が閾値以内になるようにしつつ、例えば、顧客に要望された最低限満たすべき個数の仕様変更条件を満たすように断熱仕様を変更することができる。したがって、建物に対してさらに最適な断熱仕様を決定することができる。
【0078】
また、本実施形態の断熱仕様決定装置10において、前記建物の近隣状況に応じた条件は、前記建物と前記建物の隣の建物との距離が仕様変更により短くならないことを含む。
これによれば、建物における断熱性能値が要求される基準値を満たさない場合において、建物の断熱性能値が要求される基準値を満たしつつ、または断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内でない場合において、建物の断熱性能値と基準値との差が閾値以内になるようにしつつ、建物と当該建物の隣の建物との距離が仕様変更により短くならないことである仕様変更条件を満たすように断熱仕様を変更することができる。したがって、建物に対してさらに最適な断熱仕様を決定することができる。
【0079】
また、本実施形態の断熱仕様決定装置10において、前記仕様変更条件は、仕様変更できない方角がある場合、当該方角以外の方角において仕様変更することを含む。
これによれば、建物における断熱性能値が要求される基準値を満たさない場合において、建物の断熱性能値が要求される基準値を満たしつつ、または断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内でない場合において、建物の断熱性能値と基準値との差が閾値以内になるようにしつつ、仕様変更できない方角がある場合、当該方角以外の方角において仕様変更することである仕様変更条件を満たすように断熱仕様を変更することができる。したがって、建物に対してさらに最適な断熱仕様を決定することができる。
【0080】
また、本実施形態の断熱仕様決定装置10において、前記仕様変更条件は、仕様変更後の断熱仕様の価格が、仕様変更前の断熱仕様の価格よりも上がらないことを含む。
これによれば、建物における断熱性能値が要求される基準値を満たさない場合において、建物の断熱性能値が要求される基準値を満たしつつ、または断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内でない場合において、建物の断熱性能値と基準値との差が閾値以内になるようにしつつ、仕様変更後の断熱仕様の価格が、仕様変更前の断熱仕様の価格よりも上がらないことである仕様変更条件を満たすように断熱仕様を変更することができる。したがって、建物に対してさらに最適な断熱仕様を決定することができる。
【0081】
また、本実施形態の断熱仕様決定装置10において、前記仕様変更条件は、顧客が仕様変更を希望しない前記建物の部位以外の部位において仕様変更することを含む。
これによれば、建物における断熱性能値が要求される基準値を満たさない場合において、建物の断熱性能値が要求される基準値を満たしつつ、または断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内でない場合において、建物の断熱性能値と基準値との差が閾値以内になるようにしつつ、顧客が仕様変更を希望しない前記建物の部位以外の部位において仕様変更することである仕様変更条件を満たすように断熱仕様を変更することができる。したがって、建物に対してさらに最適な断熱仕様を決定することができる。
【0082】
また、本実施形態の断熱仕様決定装置10は、前記変更部(制御部11)により前記優先順位の高い順で前記仕様変更条件を満たすように前記断熱仕様を変更できない場合、前記建物の設計計画の変更を提案する提案部(制御部11)を備える。
これによれば、建物の設計計画を変更することで、建物の断熱性能値が基準値を満たし得る、または建物の断熱性能値と基準値との差が所定の閾値以内になり得る。したがって、建物に対してさらに最適な断熱仕様を決定することができる。
【0083】
以上、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上記実施形態では、断熱仕様決定装置10と断熱仕様データベース20は別装置であるとしたが、断熱仕様決定装置10が断熱仕様データベース20を備える構成であってもよい。
【0084】
また、本実施形態の建物は、壁や床、屋根といった建物の構成要素を予め工場でパネル化しておき、施工現場でこれらのパネル(建築用木質パネル)を組み立てて構築するパネル工法で構築されるが、これに限られるものではなく、従来の軸組工法、壁式工法、ツーバイフォー工法等で構築されるものとしてもよい。
【0085】
また、このパネルとは、縦横の框材が矩形状に組み立てられるとともに、矩形枠の内部に補助桟材が縦横に組み付けられて枠体が構成され、この枠体の両面もしくは片面に面材(例えば合板)が貼設されたものであり、内部中空な構造となっている。さらに、その内部中空な部分には、通常、グラスウールやロックウール等の断熱材が装填される。
【0086】
また、近年、二酸化炭素の排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルの推進による脱炭素社会の実現や、SDGs(Sustainable Development Goals)の目標達成が求められており、建築業界においても、建物を二酸化炭素排出量の少ない木造とする取り組みが進められている。本実施形態の建物は、一部を木材によって構成される。そのため、カーボンニュートラルの推進による脱炭素社会の実現や、SDGsの目標達成に貢献できる。
【符号の説明】
【0087】
100 断熱仕様決定システム
10 断熱仕様決定装置
11 制御部(第一取得部、第二取得部、算出部、変更部、提案部)
12 記憶部
13 通信部
20 断熱仕様データベース
30 端末装置
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10