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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132012
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】軸受装置及びモータ
(51)【国際特許分類】
   F16C 25/08 20060101AFI20240920BHJP
   F16C 19/16 20060101ALI20240920BHJP
   H02K 5/173 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F16C25/08 Z
F16C25/08 A
F16C19/16
H02K5/173 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042630
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100120846
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 雅也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】癸生川 幸嗣
【テーマコード(参考)】
3J012
3J701
5H605
【Fターム(参考)】
3J012AB04
3J012BB03
3J012BB05
3J012CB03
3J012CB10
3J012DB07
3J012FB10
3J012HB02
3J701AA03
3J701AA42
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA77
3J701FA06
3J701FA60
5H605BB05
5H605CC04
5H605EB10
5H605EB16
5H605EB39
(57)【要約】
【課題】軸受の寿命低下を抑制することができる軸受装置及びモータを提供する。
【解決手段】軸受装置1、1A、1Bは、第1端部11及び第2端部12を有するシャフト10と、シャフト10の外周面13に対向する内周面23から突出する突出部22を有するスリーブ20と、内輪31、外輪32及び転動体33を有する第1端部11側の第1軸受30と、内輪41、外輪42及び転動体43を有する第2端部12側の第2軸受40と、を備える。軸線x方向において、第1軸受30と第2軸受40との間に突出部22が配置され、第1軸受30及び第2軸受40の一方の外輪32、42が突出部22に接触し、第1軸受30及び第2軸受40の他方の外輪42、32が突出部22から離間して配置される。軸線x方向において、第1軸受30の内輪31は外輪32よりも第1端部11側に配置され、第2軸受40の内輪41は外輪42よりも第2端部12側に配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端部及び第2端部を有するシャフトと、
前記シャフトの外周面に対向する内周面から突出する突出部を有するスリーブと、
前記第1端部側で前記シャフトの外周面と前記スリーブの内周面との間に支持された、内輪、外輪及び転動体を有する第1軸受と、
前記第2端部側で前記シャフトの外周面と前記スリーブの内周面との間に支持された、内輪、外輪及び転動体を有する第2軸受と、を備え、
前記シャフトの軸線方向において、前記第1軸受と前記第2軸受との間に前記突出部が配置され、
前記軸線方向において、前記第1軸受及び前記第2軸受の一方の前記外輪が前記突出部に接触し、前記第1軸受及び前記第2軸受の他方の前記外輪が前記突出部から離間して配置され、
前記軸線方向において、前記第1軸受の前記内輪は前記第1軸受の前記外輪よりも前記第1端部側に配置され、
前記軸線方向において、前記第2軸受の前記内輪は前記第2軸受の前記外輪よりも前記第2端部側に配置される、軸受装置。
【請求項2】
前記第1軸受及び前記第2軸受の前記内輪は前記シャフトの外周面に圧入され、前記第1軸受及び前記第2軸受の前記外輪は前記スリーブの内周面にすきまばめされる、請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
前記第1軸受及び前記第2軸受の少なくとも一方の前記外輪は前記スリーブの内周面に接着剤で固定される、請求項2に記載の軸受装置。
【請求項4】
前記シャフトの線膨張係数は前記スリーブの線膨張係数と異なる、請求項1に記載の軸受装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の軸受装置と、
前記第1軸受よりも前記第1端部側で前記シャフトに固定されたインペラと、を備えるモータ。
【請求項6】
前記第2軸受よりも前記第2端部側で前記シャフトに固定されたロータを備える、請求項5に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受装置及び当該軸受装置を備えるモータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、シャフトと、シャフトの軸線周りに円筒状のスリーブと、スリーブの内周面に固定されてシャフトを回転可能に支持する1対の軸受と、軸受の各々に予圧を付与するばねと、を備える送風機が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/111430号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした送風機では、シャフトが高速で回転すると、軸受内での摩擦熱によってスリーブが熱膨張する。熱膨張によってスリーブが軸線に沿って伸びると、軸受に付与された予圧が変動し得る。例えば予圧が過度に増大すると、軸受の寿命を縮める。
【0005】
そこで、本発明は、軸受の寿命低下を抑制することができる軸受装置及びモータを提供することを課題の一例とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る軸受装置は、第1端部及び第2端部を有するシャフトと、前記シャフトの外周面に対向する内周面から突出する突出部を有するスリーブと、前記第1端部側で前記シャフトの外周面と前記スリーブの内周面との間に支持された、内輪、外輪及び転動体を有する第1軸受と、前記第2端部側で前記シャフトの外周面と前記スリーブの内周面との間に支持された、内輪、外輪及び転動体を有する第2軸受と、を備え、前記シャフトの軸線方向において、前記第1軸受と前記第2軸受との間に前記突出部が配置され、前記軸線方向において、前記第1軸受及び前記第2軸受の一方の前記外輪が前記突出部に接触し、前記第1軸受及び前記第2軸受の他方の前記外輪が前記突出部から離間して配置され、前記軸線方向において、前記第1軸受の前記内輪は前記第1軸受の前記外輪よりも前記第1端部側に配置され、前記軸線方向において、前記第2軸受の前記内輪は前記第2軸受の前記外輪よりも前記第2端部側に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1実施形態に係る軸受装置1の構造を概略的に示す端面図である。
図2】一具体例に係るモータ100の構造を概略的に示す端面図である。
図3】一具体例に係るモータ100における熱膨張の様子を概略的に示す端面図である。
図4】本発明の第1実施形態の一変形例に係る軸受装置1Aの構造を概略的に示す端面図である。
図5】他の具体例に係るモータ100Aにおける熱膨張の様子を概略的に示す端面図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る軸受装置1Bの構造を概略的に示す端面図である。
図7】他の具体例に係るモータ100Bにおける熱膨張の様子を概略的に示す端面図である。
図8】本発明の第3実施形態に係る軸受装置1Cを含む、他の具体例に係るモータ100Cの構造を概略的に示す端面図である。
図9】他の具体例に係るモータ100Cにおける熱膨張の様子を概略的に示す端面図である。
図10】他の具体例に係るモータ100Dの構造を概略的に示す端面図である。
図11】他の具体例に係るモータ100Eの構造を概略的に示す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施形態]
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る軸受装置1の構造を概略的に示す端面図である。この端面図は、軸受装置1のシャフト10の軸線xを含む仮想平面に沿った端面図である。軸受装置1は、シャフト10と、スリーブ20と、1対の第1軸受30及び第2軸受40と、を備えている。シャフト10は例えば円筒状の回転軸である。シャフト10の少なくとも一部はスリーブ20内に収容される。第1軸受30及び第2軸受40はシャフト10とスリーブ20との間に支持される。
【0009】
シャフト10は、軸線x方向において一方の端部である第1端部11と、軸線x方向において第1端部11とは反対側の他方の端部である第2端部12と、を規定する。軸受装置1では、軸線x方向において、第2端部12から第1端部11に向かう方向を第1方向FDと規定する一方で、第1端部11から第2端部12に向かう方向を第2方向SDと規定する。また、軸線xに直交する径方向において、軸線xに向かう方向を内周側と規定し、軸線xから遠ざかる方向を外周側と規定する。
【0010】
第1端部11及び第2端部12の間でシャフト10には外周面13が形成される。外周面13は軸線xを中心軸とする円筒状に広がる。シャフト10は例えば金属材料から形成される。シャフト10の線膨張係数は、例えば、10~13×10-6/℃の範囲である。本実施形態では、シャフト10は、第1端部11と第2端部12との間で同じ径を有している。ただし、シャフト10は、第1端部11と第2端部12との間で一部異なる径を有してもよい。
【0011】
スリーブ20は筒部としての円筒部21と突出部22とを備える。円筒部21は、軸線xを中心軸とする円筒状に広がる内周面23を規定する。内周面23は、径方向にシャフト10の外周面13に対向している。突出部22は、軸線x方向における円筒部21の両端部の間で、円筒部21の内周面23から径方向に内周側に突出する。突出部22は、軸線x周りに全周にわたって環状に形成される。突出部22の内周面24はシャフト10の外周面13に対向している。なお、突出部22は、軸線x周りの周方向に互いに離間された複数の部分から形成されてもよい。本実施形態では、軸線x方向における円筒部21の両端部は開放されている。
【0012】
円筒部21及び突出部22は例えば金属材料から一体的に形成される。本実施形態では、スリーブ20の線膨張係数はシャフト10並びに後述の第1軸受30及び第2軸受40の線膨張係数と異なる。具体的には、スリーブ20の線膨張係数は、例えば、15~25×10-6/℃の範囲であり、好ましくは16~20×10-6/℃の範囲であり、より好ましくは17~18×10-6/℃の範囲である。すなわち、スリーブ20の線膨張係数はシャフト10並びに第1軸受30及び第2軸受40の線膨張係数よりも大きく設定される。
【0013】
1対の第1軸受30及び第2軸受40はシャフト10の外周面13とスリーブ20の内周面23との間に支持される。軸線x方向において、第1軸受30は突出部22よりも第1端部11側に配置される一方で、第2軸受40は突出部22よりも第2端部12側に配置される。すなわち、軸線x方向において、第1軸受30と第2軸受40との間に突出部22が配置される。
【0014】
第1軸受30は、内輪31、内輪31の外周側に配置された外輪32、及び、内輪31と外輪32との間に配置された複数の転動体33を備える。内輪31及び外輪32は、軸線xを中心軸とする環状の部材である。すなわち、軸線xは第1軸受30の軸線でもある。内輪31の外周面には内輪軌道34が形成される一方で、外輪32の内周面には外輪軌道35が形成される。これら内輪軌道34及び外輪軌道35の間に複数の転動体33が軸線x周りに周方向に配列される。転動体33は球体であり、したがって、第1軸受30は転がり玉軸受である。なお、複数の転動体33は例えば環状の保持器(図示せず)に保持される。
【0015】
内輪31はその内周面でシャフト10の外周面13に支持される。外輪32はその外周面でスリーブ20の内周面23に支持される。本実施形態では、内輪31は圧入によりシャフト10に固定される。一方で、外輪32はスリーブ20にすきまばめされて接着剤によってスリーブ20に固定される。また、後述するように、軸線x方向において、内輪31が外輪32に対して第1端部11側すなわち第1方向FDにオフセットして配置されることによって、第1軸受30には与圧が付与されている。なお、図面において、内輪31及び外輪32の軸線x方向におけるオフセット配置は誇張して示されている。
【0016】
一方で、第2軸受40は、第1軸受30と同様に、内輪41、内輪41の外周側に配置された外輪42、及び、内輪41と外輪42との間に配置された複数の転動体43を備える。内輪41及び外輪42は、軸線xを中心軸とする環状の部材である。すなわち、軸線xは第2軸受40の軸線でもある。内輪41の外周面には内輪軌道44が形成される一方で、外輪42の内周面には外輪軌道45が形成される。これら内輪軌道44及び外輪軌道45の間に複数の転動体43が軸線x周りに周方向に配列される。転動体43は球体であり、したがって、第2軸受40は転がり玉軸受である。なお、複数の転動体43は例えば環状の保持器(図示せず)に保持される。
【0017】
内輪41はその内周面でシャフト10の外周面13に支持される。外輪42はその外周面でスリーブ20の内周面23に支持される。本実施形態では、内輪41は圧入によりシャフト10に固定される。一方で、外輪42はスリーブ20にすきまばめされて接着剤によってスリーブ20に固定される。また、後述するように、軸線x方向において、内輪41が外輪42に対して第2端部12側すなわち第2方向SDにオフセットして配置されることによって、第2軸受40には与圧が付与されている。なお、図面において、内輪41及び外輪42の軸線x方向におけるオフセット配置は誇張して示されている。
【0018】
図1から明らかなように、第1軸受30の外輪32の第2方向SDに面する端面32aは、第1方向FDに面する突出部22の端面22aに対して離間して配置されている。一方で、軸線x方向において、第2軸受40の外輪42の第1方向FDに面する端面42aは、第2方向SDに面する突出部22の端面22bに接触して配置されている。また、内輪31、41及び外輪32、42の軸線x方向におけるオフセット配置によって、軸線x方向における、第1軸受30の内輪31及び第2軸受40の内輪41の間の間隔S1は、第1軸受30の外輪32及び第2軸受40の外輪42の間の間隔S2よりも大きい。
【0019】
第1軸受30の内輪31、外輪32及び転動体33並びに第2軸受40の内輪41、外輪42及び転動体43は金属材料から形成される。第1軸受30の内輪31及び外輪41並びに第2軸受40の内輪41及び外輪42の線膨張係数は、例えば、10~13×10-6/℃の範囲である。すなわち、第1軸受30及び第2軸受40の線膨張係数はスリーブ20の線膨張係数と異なる。具体的には、第1軸受30の内輪31及び外輪41並びに第2軸受40の内輪41及び外輪42の線膨張係数はスリーブ20の線膨張係数より小さく設定される。
【0020】
次に、本実施形態に係る軸受装置1の組立方法について以下に説明する。まず、シャフト10及びスリーブ20に第2軸受40が取り付けられる。具体的には、第2端部12側からシャフト10の所定の位置まで第2軸受40の内輪41が圧入される。一方で、第2軸受40の外輪42はスリーブ20にすきまばめにより嵌め合わせられる。外輪42の端面42aは突出部22の端面22bに接触する。この状態で、外輪42の外周面がスリーブ20の内周面23に接着剤によって固定される。
【0021】
その後、シャフト10及びスリーブ20に第1軸受30が取り付けられる。具体的には、第1端部11側からシャフト10の所定の位置まで第1軸受30の内輪31が圧入される。所定の位置は、軸線x方向における内輪31と内輪41との間の間隔が前述の間隔S1になる位置である。同時に、第1軸受30の外輪32がスリーブ20にすきまばめにより嵌め合わせられる。外輪32の第2方向SDに面する端面32aは軸線x方向において突出部22の端面22aから離間して配置される。
【0022】
このとき、スリーブ20が固定された状態で、例えば予圧ばね(図示せず)によって、第1軸受30の外輪32に第2方向SDに荷重が付与される。外輪32は第2方向SDに移動する。その結果、外輪32が第2方向SDに内輪31に対して相対的にオフセットして配置される。こうして第1軸受30には、軸線x方向における内輪31及び外輪32の間のオフセット配置によって予圧が付与される。
【0023】
内輪31はシャフト10に圧入されているので、第2方向SDへの外輪32の移動時、第2方向SDへの内輪31の移動も引き起こす。その結果、第2方向SDにシャフト10が移動する。シャフト10には第2軸受40の内輪41が圧入されているので、第2方向SDへのシャフト10の移動により、第2方向SDに外輪42に対して内輪41がオフセットして配置される。その結果、第2軸受40には予圧が付与される。
【0024】
このとき、第1軸受30の外輪32と第2軸受40の外輪42との間の間隔は間隔S2に設定される。第1軸受30の外輪32の端面32aと突出部22の端面22aとの間は互いに離間される。この状態で、第1軸受30の外輪32の外周面がスリーブ20の内周面23に接着剤によって固定される。与圧ばねはスリーブ20に対する外輪32の固定後に取り外される。こうして軸受装置1が組み立てられる。
【0025】
次に、本実施形態に係る軸受装置1の使用態様の一例について以下に説明する。図2は、一具体例に係るモータ100の構造を概略的に示す端面図である。この具体例に係るモータ100は、前述の軸受装置1と、部材101と、マグネット102と、ステータコア103と、コイル104と、を備える。このモータ100は、例えば30000rpm以上で軸線x回りに部材101を高速回転させることができるモータである。
【0026】
部材101は、第1軸受30よりも第1端部11側でシャフト10に固定される。この例では、部材101は第1端部11に固定される。一方で、マグネット102は、第2軸受40よりも第2端部12側でシャフト10に固定される。この例では、マグネット102は第2端部12に固定される。マグネット102は例えば円筒状の永久磁石である。このマグネット102はモータ100のロータを構成する。こうしてシャフト10において、第2端部12側よりも第1端部11側に、重量×直径を有する比較的大きな部材101が配置され、ロータに負荷を作用させる。例えば、部材101が軸線x周りに振れた場合には、負荷(荷重)として回転方向の成分と回転軸線方向の成分とが生じる。ここで、部材101としては、例えば、ベルトや歯車などが挙げられる。
【0027】
マグネット102の外周面には円筒状のステータコア103の内周面が対向している。ステータコア103の各ティースには複数のコイル104が巻き付けられている。ステータコア103は、例えば磁性材料の積層体から形成される。ステータコア103及びコイル104はモータ100のステータを構成する。周知のとおり、ステータコア103で生じた磁界とマグネット102の磁界との磁気的相互作用により、シャフト10すなわち部材101が軸線x回りに回転する。
【0028】
シャフト10すなわち部材101が例えば30000rpm以上で高速回転すると、第1軸受30及び第2軸受40において、内輪31、41及び外輪32、42と転動体33、43との間で摩擦熱が発生する。この摩擦熱はスリーブ20に伝導される。その結果、スリーブ20は熱膨張する。図3は、一具体例に係るモータ100における熱膨張の様子を概略的に示す端面図である。ここでは、特に軸線x方向におけるスリーブ20の熱膨張に着目する。
【0029】
図3に示すように、スリーブ20が軸線x方向に熱膨張すると、軸線x方向に突出部22の端面22bに接触する第2軸受40の外輪42は、突出部22の軸線x方向の熱膨張により第2方向SDに向かって移動する(矢印a)。一方で、第1軸受30の外輪32は、軸線x方向に突出部22の端面22aに接触していないので、突出部22の軸線x方向の熱膨張の影響を受けない。また、外輪32、42は円筒部21の内周面23に接着剤によって固定されているので、円筒部21の熱膨張は接着剤によって吸収される。
【0030】
以上のように、第2軸受40では、突出部22の軸線x方向の熱膨張の影響を受けて、外輪42が第2方向SDに向かって移動する。すなわち、内輪41及び外輪42のオフセット配置を解消する方向に外輪42が移動する。その結果、第2軸受40において予圧は減少する。一方で、第1軸受30では、突出部22の熱膨張の影響を受けないので、内輪31及び外輪32ともその位置を変化させない。その結果、第1軸受30において予圧は維持される。
【0031】
以上のような軸受装置1及びモータ100によれば、第1軸受30及び第2軸受40において、内輪31及び内輪41の間の間隔S1は外輪32及び外輪42の間の間隔S2よりも大きく設定され、かつ、第2軸受40の外輪42が軸線x方向において突出部22に接触している。こうした構成によれば、シャフト10が例えば高速回転した場合に、第1軸受30では予圧が維持される一方で、第2軸受40では予圧が減少する。第1軸受30及び第2軸受40の両方において予圧の増大を回避することができる。第1軸受30及び第2軸受40の寿命低下を抑制することができる。
【0032】
図4は、一変形例に係る軸受装置1Aの構造を概略的に示す端面図である。以下、前述の軸受装置1と相違する構成について説明する。なお、前述の軸受装置1の構成と同様の構成には同一の参照符号を付して、重複した説明を省略する。図4に示すように、この軸受装置1Aでは、第1軸受30の外輪32はスリーブ20の内周面23にすきまばめされている。外輪32の外周面とスリーブ20の内周面23との間には接着剤が塗布されていない。すなわち、外輪32はスリーブ20に対して軸線x方向に相対移動することができる。
【0033】
軸受装置1Aは弾性部材50と保持部材51とを備える。保持部材51は、スリーブ20の円筒部21の第1方向FD側の端部に取り付けられる。保持部材51は軸線xを中心軸とする環状の部材である。第2方向SDに面する保持部材51の内面に弾性部材50が保持される。弾性部材50は軸線xを中心軸とする環状の部材である。弾性部材50には例えばコイルばねや板ばねが含まれる。弾性部材50は、第1軸受30の外輪32と保持部材51との間に配置されて、外輪32に対して第2方向SDに荷重を付与する。
【0034】
図5に示すように、軸受装置1Aはモータ100Aに組み込まれる。モータ100Aの構成は、軸受装置1に代えて軸受装置1Aが組み込まれた点を除いてモータ100の構成と同一である。シャフト10すなわち部材101が例えば30000rpm以上で高速回転すると、スリーブ20は熱膨張する。第2軸受40の挙動は前述と同様である。一方で、第1軸受30では、外輪32は円筒部21に固定されておらず、また、外輪32には弾性部材50から荷重が付与されているので、円筒部21の熱膨張は弾性部材50によって吸収される。
【0035】
以上のような場合、前述のモータ100の場合と同様に、第2軸受40では、突出部22の熱膨張の影響を受けて、内輪41及び外輪42のオフセットを解消する方向に外輪42が移動するので、第2軸受40において予圧は減少する。また、第1軸受30では、突出部22の熱膨張の影響を受けないので、内輪31及び外輪32ともその位置を変化させない。その結果、第1軸受30において予圧は維持される。
【0036】
[第2実施形態]
図6は、本発明の第2実施形態に係る軸受装置1Bの構造を概略的に示す端面図である。以下、前述の軸受装置1と相違する構成について説明する。なお、前述の軸受装置1の構成と同様の構成には同一の参照符号を付して、重複した説明を省略する。この軸受装置1Bは、突出部22の端面22aが、軸線x方向において、第1軸受30の外輪32の端面32aに接触している。一方で、第2軸受40の外輪42の端面42aは、軸線x方向において、突出部22の端面22bから離間して配置されている。なお、軸受装置1と同様に、内輪31、41はシャフト10の外周面13に圧入される一方で、外輪32、42はスリーブ20の内周面23にすきまばめされて接着剤で固定される。
【0037】
図7に示すように、軸受装置1Bはモータ100Bに組み込まれる。この例では、部材101はインペラであり、すなわち、モータ100Bはファンモータである。シャフト10すなわち部材101が例えば30000rpm以上で高速回転すると、スリーブ20は熱膨張する。軸線x方向に突出部22に接触する第1軸受30の外輪32は、突出部22の熱膨張により第1方向FDに向かって移動する(矢印a)。一方で、軸線x方向に突出部22に接触しない第2軸受40の外輪42は突出部22の熱膨張の影響を受けない。また、外輪32、42は円筒部21の内周面23に接着剤によって固定されているので、円筒部21の熱膨張は接着剤によって吸収される。
【0038】
また、図7に示すように、モータ100Bでは、部材101すなわちインペラの高速回転によって第1方向FDに向かう推力が生成される。このインペラによる推力が、ステータコア103とマグネット102との間の磁気吸引力を上回ると、シャフト10は第1方向FDに引き寄せられる。この第1方向FDに向かうシャフト10の移動に応じて、シャフト10に固定された第1軸受30の内輪31及び第2軸受40の内輪41は第1方向FDに移動する(矢印b及び矢印c)。
【0039】
以上のような場合、第1軸受30では、内輪31及び外輪32はいずれも第1方向FDに向かって移動するので、第1軸受30において予圧は維持される。また、第2軸受40では、内輪41及び外輪42のオフセットを解消する方向に内輪41が移動するので、第2軸受40において予圧は減少する。したがって、第1軸受30及び第2軸受40において予圧の増大を回避することができる。第1軸受30及び第2軸受40の寿命低下を抑制することができる。
【0040】
[第3実施形態]
図8は、本発明の第3実施形態に係る軸受装置1Cを組み込んだモータ100Cの構造を概略的に示す端面図である。以下、軸受装置1と相違する構成について以下に説明する。なお、前述の構成と同様の構成には同一の参照符号を付して、重複した説明を省略する。軸受装置1Cでは、第1軸受30の外輪32が、第2方向SDに面する端面32aで突出部22の端面22aに接触している。また、内輪31が外輪32に対して第2方向SDにオフセットして配置されることによって、第1軸受30には予圧が付与されている。なお、内輪31はシャフト10に圧入により支持され、外輪32はスリーブ20の内周面23にすきまばめで支持される。
【0041】
一方で、第2軸受40の外輪42が、第1方向FDに面する端面42aで突出部22の端面22bに接触している。また、内輪41が外輪42に対して第2方向SDにオフセットして配置されることによって、第2軸受40には予圧が付与されている。なお、内輪41はシャフト10に圧入により支持され、外輪42はスリーブ20の内周面23にすきまばめで支持される。また、本例では、第1軸受30における外輪32に対する内輪31のオフセットの量は、第2軸受40における外輪42に対する内輪41のオフセットの量と等しく設定される。
【0042】
モータ100Cにおいて、シャフト10に固定されたマグネット102の軸線x方向における位置が調整される。具体的には、シャフト10の静止時、軸線x方向に規定されるマグネット102の中心位置C1が、同様に軸線x方向に規定されるステータコア103の中心位置C2に対して第1方向FD側に偏倚して配置されている。この偏倚量は、シャフト10の高速回転時にシャフト10が第1方向FDに向かって最大限移動したときに、マグネット102の第1方向FD側の端面102aの位置が、ステータコア103の中心位置C2からステータコア103の第1方向FD側の端面103aまでの長さLの1.1倍の最大距離MD内に収まるように設定される。
【0043】
次に、シャフト10すなわち部材101が例えば30000rpm以上で高速回転する場面を想定する。なお、この例では、部材101はインペラであり、すなわち、モータ100Cはファンモータである。部材101の高速回転による推力が、ステータコア103とマグネット102との間の磁気吸引力を上回ると、シャフト10は第1方向FDに引き寄せられる。この第1方向FDに向かうシャフト10の移動に応じて第2軸受40の内輪41及び第1軸受30の内輪31は第1方向FDに移動する(矢印a及び矢印b)。こうして内輪41及び内輪31がそれぞれ外輪42及び外輪32に対して移動することによって、第2軸受40及び第1軸受30において予圧は減少する。
【0044】
図9は、部材101が最大回転数で高速回転する場合のモータ100Cの構造を概略的に示す端面図である。図9に示すように、部材101が例えば30000rpm以上の最大回転数で高速回転すると、部材101すなわちシャフト10は、ステータコア103とマグネット102との間の磁気吸引力に抗して、第1方向FDに移動する。このとき、マグネット102の第1方向FD側の端面102aの位置が、ステータコア103の中心位置C2からステータコア103の第1方向FD側の端面103aまでの長さLの1.1倍の最大距離MD内に収まる。このとき、第1軸受30及び第2軸受40では予圧は減少したままである。
【0045】
以上のような軸受装置1C及びモータ100Cによれば、部材101の低速回転時、マグネット102は、軸線x方向において、ステータコア103に十分に対向する。したがって、部材101の推力はステータコア103とマグネット102との間の磁気吸引力を下回る。その結果、シャフト10は第1方向FDに向かって移動しない。すなわち、マグネット102はステータコア103に十分に対向し続けることができるので、トルク定数は最大となる。
【0046】
一方で、部材101の高速回転時、部材101の推力がステータコア103とマグネット102との間の磁気吸引力を上回ると、シャフト10は第1方向FDに向かって移動する。ステータコア103に対するマグネット102の対向領域は減少する。その結果、トルク定数が低下するので、シャフト10の高速回転が容易となる。また、第1軸受30及び第2軸受40において予圧が発生しない状態となれば、シャフト1が最も安定して回転することができる。その結果、消費電力の低下を実現することができる。
【0047】
図10は、他の具体例に係るモータ100Dの構造を概略的に示す端面図である。図10に示すように、このモータ100Dは、モータ100Cと同様に軸受装置1Cを組み込んでいる。モータ100Cと相違する点は、マグネット102が、第1方向FD側に配置された第1部分102aと、第1部分102aよりも第2方向SD側に配置された第2部分102bと、を備える点である。この例では、軸線x方向に規定される第1部分102a及び第2部分102bの長さは、第1部分102aよりも第2部分102bで大きく設定される。
【0048】
図11は、他の具体例に係るモータ100Eの構造を概略的に示す端面図である。図11に示すように、このモータ100Eは、モータ100C及び100Dと同様に軸受装置1Cを組み込んでいる。モータ100Cと相違する点は、モータ100Cが、部材101すなわちインペラに取り付けられた第1マグネット105と、軸線x方向に第1マグネット105に対向する第2マグネット106と、ハウジング107と、を備える点である。ハウジング107は、例えば、モータ100Eのロータ及びステータを収容する。なお、図11では、高速回転時にシャフト10が最大限に第1方向FDに移動した状態を示している。
【0049】
第2マグネット106は、例えばモータ100Eのハウジング107に固定される。互いに対向する第1マグネット105及び第2マグネット106は、互いに反発する斥力が発生するように同一の磁極が対向する。具体的には、斥力は、部材101の推力がグネット102及びステータコア103の間の磁気吸引力を上回って、図11に示すように、第1方向FDにシャフト10が移動したときに発生するように設定される。なお、前述の構成と同様の構成には同一の参照符号を付して、重複した説明を省略する。
【0050】
以上のようなモータ100Eでは、第1マグネット105及び第2マグネット106の間の斥力が、シャフト10が第1方向FDに移動したときに生じるので、第1方向FDへのシャフト10のそれ以上の移動は規制される。その結果、第1軸受30及び第2軸受40において、初期の設定と逆方向への予圧が作用することを防止することができる。したがって、第1軸受30及び第2軸受40におけるいわゆる肩乗り上げによる破損を確実に阻止することができる。
【0051】
以上、上記実施形態を通じて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に様々な変更又は改良を加えることができることが当業者には明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0052】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。上記実施形態が備える各構成要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。また、技術的に矛盾しない範囲において、異なる実施形態で示した構成要素同士を部分的に置換し又は組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0053】
1、1A、1B、1C 軸受装置、10 シャフト、11 第1端部、12 第2端部、13 外周面、20 スリーブ、21 円筒部、22 突出部、23 内周面、24 内周面、30 第1軸受、31 内輪、32 外輪、32a 端面、33 転動体、34 内輪軌道、35 外輪軌道、40 第2軸受、41 内輪、42 外輪、42a 端面、43 転動体、44 内輪軌道、45 外輪軌道、100、100A、100B、100C、100D、100E モータ、101 部材(インペラ)、102 マグネット、102a 第1部分、102b 第2部分、103 ステータコア、104 コイル、107 ハウジング、C1 中心位置、C2 中心位置、FD 第1方向、L 長さ、MD 最大距離、SD 第2方向、S1 間隔、S2 間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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