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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132016
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】放熱部材、および半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/473 20060101AFI20240920BHJP
   F28F 1/10 20060101ALI20240920BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
F28F1/10 Z
H05K7/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042635
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 和宏
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA05
5E322AA11
5E322FA01
5F136BA03
5F136BA13
5F136BA24
5F136BA37
5F136CB07
5F136FA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】半導体素子の冷却性能を向上させることが可能となる放熱部材を提供する。
【解決手段】放熱部材1は、冷媒Wが流れる方向に沿う第1方向、かつ、第1方向に直交する第2方向に広がり、第1方向X及び第2方向Yに直交する第3方向に厚みを有する板形状のベース部2と、ベース部2から前記第3方向一方側に突出して第1方向に延びるフィンが第2方向に複数積層されて構成される放熱フィン部3と、を有し、放熱フィン部3において、フィンが第2方向に隣接することで形成される流路チャンネルが第2方向に複数形成され、ベース部2の第3方向他方側に配置される半導体素子51A等と第3方向に対向する領域を冷媒Wが通過する前記流路チャンネルを第1流路チャンネル31、前記領域を冷媒Wが通過しない前記流路チャンネルを第2流路チャンネル32として、第1流路チャンネル31の平均流路抵抗が、第2流路チャンネル32の平均流路抵抗よりも低い。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が流れる方向に沿う第1方向、かつ第1方向に直交する第2方向に広がり、第1方向および第2方向に直交する第3方向に厚みを有する板形状のベース部と、
前記ベース部から前記第3方向一方側に突出して第1方向に延びるフィンが第2方向に複数積層されて構成される放熱フィン部と、
を有し、
前記放熱フィン部において、前記フィンが第2方向に隣接することで形成される流路チャンネルが第2方向に複数形成され、
前記ベース部の第3方向他方側に配置される半導体素子と第3方向に対向する領域を前記冷媒が通過する前記流路チャンネルを第1流路チャンネル、
前記領域を前記冷媒が通過しない前記流路チャンネルを第2流路チャンネルとして、
前記第1流路チャンネルの平均流路抵抗が、前記第2流路チャンネルの平均流路抵抗よりも低い、放熱部材。
【請求項2】
前記フィンは、第1方向に延びる側板部を有し、
前記側板部に第2方向に貫通する開口部を設けることで前記流路チャンネルの流路抵抗を調整している、請求項1に記載の放熱部材。
【請求項3】
前記フィンは、前記開口部の周縁部の一部から第2方向に突出する突出部を有する、請求項2に記載の放熱部材。
【請求項4】
前記フィンは、第1方向に延びる側板部を有し、
前記側板部の第3方向一方側端部に第3方向他方側に凹む切欠き部が形成されることで、前記流路チャンネルの流路抵抗を調整している、請求項1に記載の放熱部材。
【請求項5】
前記フィンは、第1方向に延びる側板部と、前記側板部の第3方向一方側端部において第2方向に延びる天板部と、を有し、
前記天板部にスリットが形成されることで、前記流路チャンネルの流路抵抗を調整している、請求項1に記載の放熱部材。
【請求項6】
前記流路チャンネルの流路幅が、第2方向に隣接する前記フィンの間の第2方向幅であるとして、
前記第1流路チャンネルの平均流路幅が、前記第2流路チャンネルの平均流路幅よりも広い、請求項1に記載の放熱部材。
【請求項7】
前記第1流路チャンネルにおいて、第1方向に複数配置される前記半導体素子と第3方向に対向する領域の平均流路抵抗は、上流側の領域よりも下流側の領域の方が高い、請求項1に記載の放熱部材。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の放熱部材と、前記半導体素子と、を備える、半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放熱部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発熱体の冷却に放熱部材が用いられる。放熱部材は、ベース部と、複数のフィンと、を有する。複数のフィンは、ベース部から突出する。複数のフィンにおける隣接するフィン同士の間を水などの冷媒が流れることにより、発熱体の熱は冷媒に移動する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2013/157467号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、車載用途などにおいて、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの半導体素子を放熱部材により冷却する技術が重要となっている。
【0005】
上記状況に鑑み、本開示は、半導体素子の冷却性能を向上させることが可能となる放熱部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の例示的な放熱部材は、冷媒が流れる方向に沿う第1方向、かつ第1方向に直交する第2方向に広がり、第1方向および第2方向に直交する第3方向に厚みを有する板形状のベース部と、
前記ベース部から前記第3方向一方側に突出して第1方向に延びるフィンが第2方向に複数積層されて構成される放熱フィン部と、
を有し、
前記放熱フィン部において、前記フィンが第2方向に隣接することで形成される流路チャンネルが第2方向に複数形成され、
前記ベース部の第3方向他方側に配置される半導体素子と第3方向に対向する領域を前記冷媒が通過する前記流路チャンネルを第1流路チャンネル、
前記領域を前記冷媒が通過しない前記流路チャンネルを第2流路チャンネルとして、
前記第1流路チャンネルの平均流路抵抗が、前記第2流路チャンネルの平均流路抵抗よりも低い。
【発明の効果】
【0007】
本開示の例示的な放熱部材によれば、半導体素子の冷却性能を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の例示的な実施形態に係る放熱部材の斜視図である。
図2図2は、本開示の例示的な実施形態に係る放熱部材の概略的な平面図である。
図3図3は、放熱フィン部における流路チャンネルのレイアウトを示す平面図である。
図4図4は、各種フィンの斜視図である。
図5図5は、開口部の一例を示す斜視図である。
図6図6は、切欠き部の一例を示す斜視図である。
図7図7は、スリットの一例を示す斜視図である。
図8図8は、シングルスポイラーの一例を示す斜視図である。
図9図9は、ダブルスポイラーの一例を示す斜視図である。
図10図10は、突出部の第1変形例を示す斜視図である。
図11図11は、突出部の第2変形例を示す斜視図である。
図12図12は、変形例に係る放熱フィン部の一部構成を示す斜視図である。
図13図13は、図2と同様の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示の例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
なお、図面においては、第1方向をX方向として、X1を第1方向一方側、X2を第1方向他方側として示す。第1方向は、冷媒Wが流れる方向Fに沿い、下流側をF1、上流側をF2として示す。第1方向に直交する第2方向をY方向として、Y1を第2方向一方側、Y2を第2方向他方側として示す。第1方向および第2方向に直交する第3方向をZ方向として、Z1を第3方向一方側、Z2を第3方向他方側として示す。なお、上記直交とは、90度から若干ずれた角度での交差も含む。上記の各方向は、放熱部材を各種機器に組み込んだときの方向を限定しない。
【0011】
<1.放熱部材>
図1は、本開示の例示的な実施形態に係る放熱部材1の斜視図である。図2は、本開示の例示的な実施形態に係る放熱部材1を第3方向一方側から第3方向他方側へ視た場合の概略的な平面図である。なお、図2においては、放熱部材1の第3方向他方側に配置される絶縁回路基板41~43、および半導体素子51A~51D,52A~52D,53A~53D(以下、51A等)も図示している。半導体モジュール100は、放熱部材1と、絶縁回路基板41~43と、半導体素子51A等と、を備える。
【0012】
放熱部材1は、図示しない液冷ジャケットに設置可能であり、ベース部2と、放熱フィン部3と、を有する。
【0013】
ベース部2は、第1方向かつ第2方向に広がり、第3方向に厚みを有する板形状である。ベース部2は、熱伝導性の高い金属から構成され、例えば銅合金から構成される。
【0014】
放熱フィン部3は、フィン(フィンプレート)6を第2方向に複数配置することで、いわゆるスタックドフィンとして構成される。フィン6は、第1方向に延びる金属板から構成され、例えば、銅板により構成される。放熱フィン部3は、ベース部2の第3方向一方側面21に例えばろう付けにより固定される。すなわち、放熱部材1は、ベース部2から第3方向一方側に突出して第1方向に延びるフィン6が第2方向に複数積層されて構成される放熱フィン部3を有する。
【0015】
なお、複数のフィン6には、後述するようなフィン61,62、およびフィン63が含まれる。フィン63は、第2方向他方側端に位置するフィンプレートであり、フィン61,62と異なり、平板状である。フィン61,62の詳細な構成については、後述する。
【0016】
冷媒Wは、第1方向他方側(上流側)から放熱フィン部3内部へ流れ込み、第2方向に隣接するフィン6間に形成される流路チャンネルを第1方向一方側(下流側)に流れ、放熱フィン部3から第1方向一方側へ排出される。
【0017】
<2.半導体素子>
半導体素子51A等は、放熱部材1により冷却される対象である発熱体である。半導体素子51A等は、例えば、車両の車輪を駆動するためのトラクションモータに備えられるインバータに設けられる。半導体素子51A,51D,52A,52D,53A,53Dは、トランジスタであり、例えばIGBTである。半導体素子51B,51C,52B,52C,53B,53Cは、ダイオードである。
【0018】
ベース部2の第3方向他方側に絶縁回路基板41~43が配置される。絶縁回路基板41,42,43は、この順に第1方向他方側から第1方向一方側にかけて並べられる。
【0019】
半導体素子51A~51Dは、絶縁回路基板41の第3方向他方側に配置される。半導体素子51Aは、半導体素子51Bの第2方向一方側に配置される。半導体素子51Dは、半導体素子51Cの第2方向他方側に配置される。半導体素子51C,51Dの組は、半導体素子51A,51Bの組の第1方向一方側に配置される。半導体素子51A,51Bの組と、半導体素子51D,51Cの組は、互いに第2方向にずらして配置される。
【0020】
半導体素子52A~52Dは、絶縁回路基板42の第3方向他方側に配置される。半導体素子52Aは、半導体素子52Bの第2方向一方側に配置される。半導体素子52Dは、半導体素子52Cの第2方向他方側に配置される。半導体素子52C,52Dの組は、半導体素子52A,52Bの組の第1方向一方側に配置される。半導体素子52A,52Bの組と、半導体素子52D,52Cの組は、互いに第2方向にずらして配置される。
【0021】
半導体素子53A~53Dは、絶縁回路基板43の第3方向他方側に配置される。半導体素子53Aは、半導体素子53Bの第2方向一方側に配置される。半導体素子53Dは、半導体素子53Cの第2方向他方側に配置される。半導体素子53C,53Dの組は、半導体素子53A,53Bの組の第1方向一方側に配置される。半導体素子53A,53Bの組と、半導体素子53D,53Cの組は、互いに第2方向にずらして配置される。
【0022】
これにより、半導体素子51A,51Bの組、半導体素子51D,51Cの組、半導体素子52A,52Bの組、半導体素子52D,52Cの組、半導体素子53A,53Bの組、半導体素子53D,53Cの組の順に第1方向他方側から第1方向一方側にかけて並べられる。
【0023】
すなわち、半導体素子51A等は、ベース部2の第3方向他方側に配置される。
【0024】
なお、絶縁回路基板および半導体素子のレイアウトは、上記に限らない。絶縁回路基板の個数は、上記のような複数に限らず、単数であってもよい。半導体素子の個数は、上記のような複数に限らず、単数であってもよい。半導体素子の種類は、上記のように2種類に限らず、1種類または3種類以上であってもよい。
【0025】
半導体素子51A等から発生した熱が絶縁回路基板41~43およびベース部2を介してフィン6に伝えられ、冷媒Wへ移動することで、半導体素子51A等の冷却が行われる。
【0026】
<3.流路チャンネル>
放熱フィン部3において、フィン6が第2方向に隣接することで形成される流路チャンネルが第2方向に複数形成される。図3は、放熱フィン部3における流路チャンネルのレイアウトを示す平面図である。なお、図3は、図2における平面図に基づく。
【0027】
第1流路チャンネル31は、半導体素子51A等と第3方向に対向する領域を冷媒Wが通過する流路チャンネルである。図3において、第1流路チャンネル31は、半導体素子51B,52B,53Bの第2方向他方側端と半導体素子51C,52C,53Cの第2方向一方側端との間の領域である第1領域R1に配置される。
【0028】
図3において、第1流路チャンネル31は、第2方向他方側から順に、下記7つのサブチャンネルに分かれる。第1サブチャンネルは、半導体素子51B,52B,53Bと第3方向に対向する領域を冷媒Wが通過する流路チャンネルである。第2サブチャンネルは、半導体素子51B,51D,52B,52D,53B,53Dと第3方向に対向する領域を冷媒Wが通過する流路チャンネルである。第3サブチャンネルは、半導体素子51D,52D,53Dと第3方向に対向する領域を冷媒Wが通過する流路チャンネルである。第4サブチャンネルは、半導体素子51A,51D,52A,52D,53A,53Dと第3方向に対向する領域を冷媒Wが通過する流路チャンネルである。第5サブチャンネルは、半導体素子51A,52A,53Aと第3方向に対向する領域を冷媒Wが通過する流路チャンネルである。第6サブチャンネルは、半導体素子51A,51C,52A,52C,53A,53Cと第3方向に対向する領域を冷媒Wが通過する流路チャンネルである。第7サブチャンネルは、半導体素子51C,52C,53Cと第3方向に対向する領域を冷媒Wが通過する流路チャンネルである。図3で第1領域R1において例として1つだけ図示している第1流路チャンネル31は、第2サブチャンネルである。
【0029】
第2流路チャンネル32は、半導体素子51A等と第3方向に対向する領域を冷媒Wが通過しない流路チャンネルである。図3において、第2流路チャンネル32は、半導体素子51B,52B,53Bの第2方向他方側端より第2方向他方側、半導体素子51C,52C,53Cの第2方向一方側端より第2方向一方側の各領域である第2領域R2に配置される。図3において例として、各第2領域R2のそれぞれについて1つのみ第2流路チャンネル32を図示している。
【0030】
<4.流路抵抗の設定>
本実施形態では、第1領域R1における複数の第1流路チャンネル31の平均流路抵抗を第2領域R2における複数の第2流路チャンネル32の平均流路抵抗よりも低くしている。第1流路チャンネル31の平均流路抵抗は、第1領域R1における複数の第1流路チャンネル31のそれぞれの流路抵抗の合計を複数の第1流路チャンネル31の個数で除算して得られる値である。第2流路チャンネル32の平均流路抵抗は、第2領域R2における複数の第2流路チャンネル32のそれぞれの流路抵抗の合計を複数の第2流路チャンネル32の個数で除算して得られる値である。
【0031】
このように、第1流路チャンネル31の平均流路抵抗が第2流路チャンネル32の平均流路抵抗よりも低い。これにより、第1流路チャンネル31に流れる冷媒量が第2流路チャンネル32に流れる冷媒量よりも平均的に多くなり、第1流路チャンネル31と第3方向に対向する半導体素子51A等の冷却性能を向上させることが可能となる。
【0032】
冷却性能を向上させるためには、流路内に乱流を起こすような構造体を設けることが考えられるが、本願発明者が検討した結果、第1流路チャネルと、第2流路チャネルとが平行配置される場合においては、第1流路チャネルに乱流を起こす構造体を多数設けると流路抵抗が上昇するため、冷媒が流れにくくなり冷却性能向上の効果が認められなかった。そして、平行配置される第1流路チャネルと第2流路チャネルにおいて、第1流路チャネルの平均流路抵抗よりも第2流路チャネルの平均流路抵抗を高くすれば、第1流路チャネルに流れる冷媒量が増え、冷却性能が向上されることを見出した。
【0033】
<5.流路抵抗の調整>
流路抵抗は、フィン6における構造によって調整可能である。図4は、フィン61,62の斜視図である。フィン61は、第1領域R1に含まれる複数のフィン6のうちの1つのフィン6である。第1領域R1において、フィン61は第2方向に複数配置される。フィン62は、第2領域R2に含まれる複数のフィン6のうちの1つのフィン6である。第2領域R2において、フィン62は第2方向に複数配置される。
【0034】
図4に示すように、フィン61,62は、いずれも第1方向に延びる側板部6Aと、側板部6Aの第3方向他方側端部において第2方向他方側に延びる底板部6Bと、側板部6Aの第3方向一方側端部において第2方向他方側に延びる天板部6Cと、を有する。なお、天板部6Cは、側板部6Aの先端を折り曲げることで設けられる。ただし、これに限らず、天板部6Cは、側板部6Aの先端に板状の部材を取り付けることで設けられてもよい。
【0035】
図4に示すように、フィン61には、開口部7と、切欠き部8と、シングルスポイラー91が設けられる。フィン62には、開口部7と、ダブルスポイラー92が設けられる。開口部7、切欠き部8、シングルスポイラー91、およびダブルスポイラー92によって、流路抵抗を調整できる。
【0036】
特に図4に示すように、フィン62では、フィン61に比べて、開口部7の数を多くしている。また、フィン62でのダブルスポイラー92による突出部の数を、フィン61でのシングルスポイラー91による突出部の数よりも多くしている。なお、シングルスポイラー91では突出部の数は1個であり、ダブルスポイラー92では突出部の数は2個である。このような構成により、フィン62による流路抵抗をフィン61による流路抵抗よりも大きくしている。
【0037】
なお、図4に示すように、フィン61,62において、天板部6CにスリットSが形成されることで、流路抵抗が調整される。
【0038】
なお、第1領域R1と第2領域R2の少なくとも一方において、フィン61,62が混在していてもよい。このような場合でも、第1流路チャンネル31の平均流路抵抗が第2流路チャンネル32の平均流路抵抗よりも低ければよい。
【0039】
以下、フィン6における流路抵抗を調整可能な各構成要素について、具体的に説明する。
【0040】
<5-1.開口部>
図5は、開口部7の一例を示す斜視図である。フィン6は、第1方向に延びる側板部6Aを有する。側板部6Aに第2方向に貫通する開口部7を設けることで流路チャンネルの流路抵抗を調整している。開口部7により、側板部6Aで発達する流れの境界層を破壊し、かつ、乱流を促進する。開口部7により、流路抵抗を調整する構成を容易に製作できる。
【0041】
<5-2.切欠き部>
図6は、切欠き部8の一例を示す斜視図である。側板部6Aの第3方向一方側端部に第3方向他方側に凹む切欠き部8が形成されることで、流路チャンネルの流路抵抗を調整している。切欠き部8により、側板部6Aで発達する流れの境界層を破壊し、かつ、乱流を促進する。切欠き部8により、流路抵抗を調整する構成を容易に製作できる。
【0042】
<5-3.スリット>
図7は、スリットSの一例を示す斜視図である。フィン6は、第1方向に延びる側板部6Aと、側板部6Aの第3方向一方側端部において第2方向に延びる天板部6Cを有する。天板部6CにスリットSが形成されることで、流路チャンネルの流路抵抗を調整している。スリットSにより、天板部6Cで発達する流れの境界層を破壊し、かつ、乱流を促進する。スリットSにより、流路抵抗を調整する構成を容易に製作できる。
【0043】
<5-4.スリット>
図8は、シングルスポイラー91の一例を示す斜視図である。シングルスポイラー91は、開口部91Aと、突出部91Bと、を有する。突出部91Bは、四角状の開口部91Aの1つの辺において第2方向に突出する。すなわち、シングルスポイラー91は、突出部91Bを1つのみ有する。突出部91Bは、第3方向他方側かつ第1方向一方側に傾斜する。突出部91Bは、開口部91Aにおける第3方向一方側または第3方向他方側の辺に設けられる。
【0044】
図9は、ダブルスポイラー92の一例を示す斜視図である。ダブルスポイラー92は、開口部92Aと、突出部92Bと、を有する。突出部92Bは、四角状の開口部91Aの2つの辺においてそれぞれ第2方向に突出する。すなわち、ダブルスポイラー92は、突出部92Bを2つ有する。突出部92Bは、第3方向他方側かつ第1方向一方側に傾斜する。
【0045】
このように、フィン6は、開口部91A,92Aの周縁部の一部から第2方向に突出する突出部91B,92Bを有する。これにより、突出部91B,92Bが冷媒Wが流れる方向に対向するので乱流が発生しやすくなり、流路抵抗を大きく設定しやすく、冷却性能が向上する。
【0046】
<5-5.突出部>
図10は、突出部の第1変形例を示す斜視図である。図10では、フィン6は、開口部101Aと、突出部101Bを有する。開口部101Aは、フィン6の側板部6Aを第2方向に貫通する。四角状の開口部101Aは、第3方向に平行に延びる2つの対向する辺を有する。突出部101Bは、上記2つの辺のうち第1方向一方側の辺において第2方向に突出する。突出部101Bは、第3方向に平行に延び、側板部6Aに対して90度の角度をなして突出する。
【0047】
図11は、突出部の第2変形例を示す斜視図である。図11では、フィン6は、開口部101Aと、突出部101Cを有する。先述した図10との違いとして、突出部101Cは、側板部6Aに対して45度の角度をなして突出している。
【0048】
このような突出部101B,101Cによっても流路抵抗を大きく調整しやすい。
【0049】
<5-6.流路幅>
図12は、変形例に係る放熱フィン部3の一部構成を示す斜視図である。流路チャンネルの流路幅は、第2方向に隣接するフィン6の間の第2方向幅である。図12に示す構成では、第1流路チャンネル31の平均流路幅が、第2流路チャンネル32の平均流路幅よりも広い。第1流路チャンネル31の平均流路幅は、第1領域R1に配置される複数の第1流路チャンネル31の各流路幅W1の平均値である。第2流路チャンネル32の平均流路幅は、第2領域R2に配置される複数の第2流路チャンネル32の各流路幅W2の平均値である。
【0050】
このように、流路幅を変えることで流路抵抗の調整が可能である。特に、先述した流路抵抗を調整できる各構成要素とともに調整すれば、調整設計が容易である。
【0051】
<6.流路抵抗の上下流の関係>
図13は、先述した図2と同様の平面図である。ただし、図13では、半導体素子51A等と第3方向に対向する各領域をハッチングで示す。第1領域R1において、半導体素子51A~51DのグループAにおける上記領域の平均流路抵抗をFRA、半導体素子52A~52DのグループBにおける上記領域の平均流路抵抗をFRB、半導体素子53A~53DのグループCにおける上記領域の平均流路抵抗をFRCとすると、FRA<FRB<FRCとなっている。すなわち、第1流路チャンネル31において、第1方向に複数配置される半導体素子(グループA~C)と第3方向に対向する領域の平均流路抵抗は、上流側の領域よりも下流側の領域の方が高い。
【0052】
流路抵抗が高いほど冷却性能が向上するため、温度が上昇した下流側の冷媒であっても、冷却性能の低下を抑制できる。
【0053】
なお、例えばグループA,B,Cそれぞれにおいて、下流側に配置される半導体素子51C,51Dの組、52C,52Dの組、53C,53Dの組それぞれに対応する上記領域の平均流路抵抗を、上流側に配置される半導体素子51A,51Bの組、52A,52Bの組、53A,53Bの組それぞれに対応する上記領域の平均流路抵抗をよりも高くしてもよい。
【0054】
<7.その他>
以上、本開示の実施形態を説明した。なお、本開示の範囲は上述の実施形態に限定されない。本開示は、発明の主旨を逸脱しない範囲で上述の実施形態に種々の変更を加えて実施することができる。また、上述の実施形態で説明した事項は、矛盾を生じない範囲で適宜任意に組み合わせることができる。
【0055】
<8.付記>
以上のように、本開示の一態様に係る放熱部材は、
冷媒が流れる方向に沿う第1方向、かつ第1方向に直交する第2方向に広がり、第1方向および第2方向に直交する第3方向に厚みを有する板形状のベース部と、
前記ベース部から前記第3方向一方側に突出して第1方向に延びるフィンが第2方向に複数積層されて構成される放熱フィン部と、
を有し、
前記放熱フィン部において、前記フィンが第2方向に隣接することで形成される流路チャンネルが第2方向に複数形成され、
前記ベース部の第3方向他方側に配置される半導体素子と第3方向に対向する領域を前記冷媒が通過する前記流路チャンネルを第1流路チャンネル、
前記領域を前記冷媒が通過しない前記流路チャンネルを第2流路チャンネルとして、
前記第1流路チャンネルの平均流路抵抗が、前記第2流路チャンネルの平均流路抵抗よりも低い構成としている(第1の構成)。
【0056】
また、上記第1の構成において、前記フィンは、第1方向に延びる側板部を有し、
前記側板部に第2方向に貫通する開口部を設けることで前記流路チャンネルの流路抵抗を調整している構成としてもよい(第2の構成)。
【0057】
また、上記第2の構成において、前記フィンは、前記開口部の周縁部の一部から第2方向に突出する突出部を有する構成としてもよい(第3の構成)。
【0058】
上記第1から第3のいずれかの構成において、前記フィンは、第1方向に延びる側板部を有し、
前記側板部の第3方向一方側端部に第3方向他方側に凹む切欠き部が形成されることで、前記流路チャンネルの流路抵抗を調整している構成としてもよい(第4の構成)。
【0059】
また、上記第1から第4のいずれかの構成において、前記フィンは、第1方向に延びる側板部と、前記側板部の第3方向一方側端部において第2方向に延びる天板部と、を有し、
前記天板部にスリットが形成されることで、前記流路チャンネルの流路抵抗を調整している構成としてもよい(第5の構成)。
【0060】
また、上記第1から第5のいずれかの構成において、前記流路チャンネルの流路幅が、第2方向に隣接する前記フィンの間の第2方向幅であるとして、
前記第1流路チャンネルの平均流路幅が、前記第2流路チャンネルの平均流路幅よりも広い構成としてもよい(第6の構成)。
【0061】
また、上記第1から第6のいずれかの構成において、前記第1流路チャンネルにおいて、第1方向に複数配置される前記半導体素子と第3方向に対向する領域の平均流路抵抗は、上流側の領域よりも下流側の領域の方が高い構成としてもよい(第7の構成)。
【0062】
また、本開示の一態様に係る半導体モジュールは、上記第1から第7のいずれかの構成の放熱部材と、前記半導体素子と、を備える(第8の構成)。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本開示は、各種用途の半導体素子の冷却に利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 放熱部材
2 ベース部
3 放熱フィン部
6 フィン
6A 側板部
6B 底板部
6C 天板部
7 開口部
8 切欠き部
21 第3方向一方側面
31 第1流路チャンネル
32 第2流路チャンネル
41,42,43 絶縁回路基板
51A~51D,52A~52D,53A~53D 半導体素子
61,62,63 フィン
91 シングルスポイラー
91A 開口部
91B 突出部
92 ダブルスポイラー
92A 開口部
92B 突出部
100 半導体モジュール
101A 開口部
101B,101C 突出部
S スリット
W 冷媒
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13