(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132021
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】放熱部材、および半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20240920BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H05K7/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042640
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 和宏
(72)【発明者】
【氏名】堀 裕多
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA06
5E322AA10
5E322AA11
5E322DA04
5E322DB06
5E322FA01
5F136BA03
5F136BA13
5F136BA37
5F136CB07
5F136FA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】半導体素子の冷却性能の均等化が容易となる放熱部材を提供する。
【解決手段】半導体モジュール100において、少なくとも1つのフィン6は、第1方向Xに複数配置される半導体素子5A~5Fと第3方向Zに対向するフィン領域部RA~RFを第1方向に複数有し、複数のフィン領域部RA~RFのうち2以上のフィン領域部RC~RFのそれぞれにおいて、側壁部にスポイラー9が形成され、前記2以上のフィン領域部RC~RFの間で、スポイラー9の数は等しく、冷媒Wが流れる上流側X2のフィン領域部RCから下流側のフィン領域部RFに向かうに従って、フィン領域部RC~RFにおけるスポイラー9の構造による流路抵抗が大きくなる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を搭載する絶縁回路基板を冷却するための放熱部材であって、
冷媒が流れる方向に沿う第1方向、かつ第1方向に直交する第2方向に広がり、第1方向および第2方向に直交する第3方向に厚みを有し、第3方向一方側に前記絶縁回路基板が配置される板形状のベース部と、
前記ベース部から前記第3方向他方側に突出し、第1方向かつ第3方向に広がって第2方向を厚み方向とする平板状の側壁部を有し、第2方向に複数配置されるフィンと、
を有し、
少なくとも1つの前記フィンは、第1方向に複数配置される前記半導体素子と第3方向に対向するフィン領域部を第1方向に複数有し、
前記複数の前記フィン領域部のうち2以上の前記フィン領域部のそれぞれにおいて、前記側壁部にスポイラーが形成され、
前記2以上の前記フィン領域部の間で、前記スポイラーの数は等しく、
前記冷媒が流れる上流側の前記フィン領域部から下流側の前記フィン領域部に向かうに従って、前記フィン領域部における前記スポイラーの構造による流路抵抗が大きくなる、放熱部材。
【請求項2】
第1方向に隣接する前記フィン領域部のすべての組において、上流側の前記フィン領域部よりも下流側の前記フィン領域部のほうが前記流路抵抗が大きい、請求項1に記載の放熱部材。
【請求項3】
第1方向に隣接する前記フィン領域部の組の少なくともいずれかにおいて、前記フィン領域部の間の前記流路抵抗は等しい、請求項1に記載の放熱部材。
【請求項4】
前記スポイラーが第1方向および第3方向に延びる長さによって、前記流路抵抗が調整される、請求項1に記載の放熱部材。
【請求項5】
前記スポイラーが前記側壁部から第2方向に突出する突出量によって、前記流路抵抗が調整される、請求項1に記載の放熱部材。
【請求項6】
第2方向に視て前記スポイラーが第1方向から傾く角度によって、前記流路抵抗が調整される、請求項1に記載の放熱部材。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の放熱部材と、前記絶縁回路基板と、前記半導体素子と、を備える、半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放熱部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発熱体の冷却に放熱部材が用いられる。放熱部材は、ベース部と、複数のフィンと、を有する。複数のフィンは、ベース部から突出する。複数のフィンにおける隣接するフィン同士の間を水などの冷媒が流れることにより、発熱体の熱は冷媒に移動する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国特許出願公開第106546116号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、車載用途などにおいて、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの半導体素子を放熱部材により冷却する技術が重要となっている。従来の放熱部材では、冷媒が流れる方向に複数の半導体素子を配置させる場合、下流側に向かうほど熱移動により冷媒の温度が高くなるため、半導体素子間に生じる温度差が課題となっていた。
【0005】
上記状況に鑑み、本開示は、半導体素子の冷却性能の均等化が容易となる放熱部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の例示的な放熱部材は、半導体素子を搭載する絶縁回路基板を冷却するための放熱部材であって、冷媒が流れる方向に沿う第1方向、かつ第1方向に直交する第2方向に広がり、第1方向および第2方向に直交する第3方向に厚みを有し、第3方向一方側に前記絶縁回路基板が配置される板形状のベース部と、前記ベース部から前記第3方向他方側に突出し、第1方向かつ第3方向に広がって第2方向を厚み方向とする平板状の側壁部を有し、第2方向に複数配置されるフィンと、を有する。少なくとも1つの前記フィンは、第1方向に複数配置される前記半導体素子と第3方向に対向するフィン領域部を第1方向に複数有する。前記複数の前記フィン領域部のうち2以上の前記フィン領域部のそれぞれにおいて、前記側壁部にスポイラーが形成される。前記2以上の前記フィン領域部の間で、前記スポイラーの数は等しく、前記冷媒が流れる上流側の前記フィン領域部から下流側の前記フィン領域部に向かうに従って、前記フィン領域部における前記スポイラーの構造による流路抵抗が大きくなる。
【発明の効果】
【0007】
本開示の例示的な放熱部材によれば、半導体素子の冷却性能の均等化が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の例示的な実施形態に係る放熱部材の斜視図である。
【
図2】
図2は、本開示の例示的な実施形態に係る放熱部材の第2方向途中を第2方向他方側から第2方向一方側へ視た場合の側面図である。
【
図3】
図3は、本開示の例示的な実施形態に係る放熱部材を第3方向他方側から第3方向一方側へ視た場合の平面図である。
【
図4】
図4は、シングルスポイラーの一例を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、ダブルスポイラーの一例を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、スポイラーの長さ調整を説明するための図である。
【
図7】
図7は、スポイラーの突出量調整を説明するための図である。
【
図8】
図8は、スポイラーの角度調整を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示の例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
なお、図面においては、第1方向をX方向として、X1を第1方向一方側、X2を第1方向他方側として示す。第1方向は、冷媒Wが流れる方向Fに沿い、下流側をF1、上流側をF2として示す。第1方向に直交する第2方向をY方向として、Y1を第2方向一方側、Y2を第2方向他方側として示す。第1方向および第2方向に直交する第3方向をZ方向として、Z1を第3方向一方側、Z2を第3方向他方側として示す。なお、上記直交とは、90度から若干ずれた角度での交差も含む。上記の各方向は、放熱部材を各種機器に組み込んだときの方向を限定しない。
【0011】
<1.放熱部材>
図1は、本開示の例示的な実施形態に係る放熱部材1の斜視図である。
図2は、本開示の例示的な実施形態に係る放熱部材1の第2方向途中を第2方向他方側から第2方向一方側へ視た場合の側面図である。
図3は、放熱部材1を第3方向他方側から第3方向一方側へ視た場合の平面図である。
【0012】
なお、
図2および
図3においては、放熱部材1の第3方向一方側に配置される絶縁回路基板41~43、および半導体素子5A~5F(以下、5A等)も図示している。半導体モジュール100は、放熱部材1と、絶縁回路基板41~43と、半導体素子5A等と、を備える。
【0013】
放熱部材1は、図示しない液冷ジャケットに設置可能であり、ベース部2と、放熱フィン部3と、を有する。
【0014】
ベース部2は、第1方向かつ第2方向に広がり、第3方向に厚みを有する板形状である。ベース部2は、熱伝導性の高い金属から構成され、例えば銅合金から構成される。
【0015】
放熱フィン部3は、フィン(フィンプレート)6を第2方向に複数配置することで、いわゆるスタックドフィンとして構成される。フィン6は、第1方向に延びる金属板から構成され、例えば、銅板により構成される。放熱フィン部3は、ベース部2の第3方向他方側面21に例えばろう付けにより固定される。
【0016】
図2に示すように、フィン6は、第1方向に延びる側壁部61と、側壁部61の第3方向一方側端部において第2方向他方側に延びる底板部62と、側壁部61の第3方向他方側端部において第2方向他方側に延びる天板部63と、を有する。すなわち、放熱部材1は、ベース部2から第3方向他方側に突出し、第1方向かつ第3方向に広がって第2方向を厚み方向とする平板状の側壁部61を有し、第2方向に複数配置されるフィン6を有する。なお、天板部63は、側壁部61の先端を折り曲げることで設けられる。ただし、天板部63は、側壁部61の先端に板状の部材を取り付けることで設けられてもよい。
【0017】
冷媒Wは、第1方向他方側(上流側)から放熱フィン部3内部へ流れ込み、第2方向に隣接するフィン6間に形成される流路チャンネルを第1方向一方側(下流側)に流れ、放熱フィン部3から第1方向一方側へ排出される。
【0018】
<2.半導体素子>
半導体素子5A等は、放熱部材1により冷却される対象である発熱体である。半導体素子5A等は、例えば、車両の車輪を駆動するためのトラクションモータに備えられるインバータに設けられる。半導体素子5A等は、トランジスタであり、例えばIGBTである。
【0019】
ベース部2の第3方向一方側に絶縁回路基板41~43が接合される。当該接合には、はんだ付け、溶接、溶着、ネジ止めなど、絶縁回路基板を固定できる各種方法が採用されうる。絶縁回路基板41,42,43は、この順に第1方向他方側から第1方向一方側にかけて並べられる。
【0020】
半導体素子5A,5Bは、絶縁回路基板41の第3方向一方側に配置される。半導体素子5Bは、半導体素子5Aの第1方向一方側に配置される。半導体素子5C,5Dは、絶縁回路基板42の第3方向一方側に配置される。半導体素子5Dは、半導体素子5Cの第1方向一方側に配置される。半導体素子5E,5Fは、絶縁回路基板43の第3方向一方側に配置される。半導体素子5Fは、半導体素子5Eの第1方向一方側に配置される。
【0021】
なお、絶縁回路基板および半導体素子のレイアウトは、上記に限らない。絶縁回路基板の個数は、上記のような複数に限らず、単数であってもよい。半導体素子の個数は、上記のような6個に限らず、6個以外の複数であってもよい。半導体素子の種類は、上記のように1種類に限らず、2種類以上であってもよい。
【0022】
半導体素子5A等から発生した熱が絶縁回路基板41~43およびベース部2を介してフィン6に伝えられ、冷媒Wへ移動することで、半導体素子5A等の冷却が行われる。すなわち、放熱部材1は、半導体素子5A等を搭載する絶縁回路基板41~43を冷却するための放熱部材である。
【0023】
<3.スポイラーの構成>
図2に示すように、本実施形態では、フィン6の側壁部61にスポイラー9が設けられる。後述するように、スポイラー9には、シングルスポイラーとダブルスポイラーの2種類がある。
図2では、一例として、フィン6にスポイラー9としてダブルスポイラーのみが形成されている。シングルスポイラーは、1個のスポイラー9に相当し、ダブルスポイラーは、2個のスポイラー9に相当する。
【0024】
図4は、シングルスポイラー91の一例を示す斜視図である。シングルスポイラー91は、開口部90に対して設けられる。開口部90は、側壁部61を第2方向に貫通する。シングルスポイラー91は、四角状の開口部90の1つの辺において第2方向に突出する。シングルスポイラー91は、第3方向一方側かつ第1方向一方側に傾斜する。シングルスポイラー91は、開口部90における第3方向一方側または第3方向他方側の辺に設けられる。
【0025】
図5は、ダブルスポイラー92の一例を示す斜視図である。ダブルスポイラー92は、開口部90に対して設けられる。ダブルスポイラー92は、四角状の開口部90の2つの対向する辺においてそれぞれ第2方向に突出する。ダブルスポイラー92は、第3方向一方側かつ第1方向一方側に傾斜する。
【0026】
このようなシングルスポイラー91またはダブルスポイラー92は、冷媒Wが流れる方向に対向するので乱流が発生しやすくなり、流路抵抗を大きく設定しやすく、冷却性能が向上する。
【0027】
<4.スポイラーの配置>
図2に示すように、フィン6は、半導体素子5Aと第3方向に対向するフィン領域部RAと、半導体素子5Bと第3方向に対向するフィン領域部RBと、半導体素子5Cと第3方向に対向するフィン領域部RCと、半導体素子5Dと第3方向に対向するフィン領域部RDと、半導体素子5Eと第3方向に対向するフィン領域部REと、半導体素子5Fと第3方向に対向するフィン領域部RFと、を有する。すなわち、少なくとも1つのフィン6は、第1方向に複数配置される半導体素子5A等と第3方向に対向するフィン領域部RA~RFを第1方向に複数有する。
【0028】
図2に示すように、フィン領域部RC,RD,RE,RFのそれぞれにおいてスポイラー9が設けられる。フィン領域部RA,RBにおいては、スポイラー9は設けられない。このように、スポイラー9は、必ずしもすべてのフィン領域部に設けなくてもよい。すなわち、複数のフィン領域部RA~RFのうち2以上のフィン領域部RC~RFのそれぞれにおいて、側壁部61にスポイラー9が形成される。
【0029】
図2では、フィン領域部RC~RFのそれぞれにおいて、ダブルスポイラー92が3個ずつ設けられ、スポイラー9の個数は2×3=6個である。すなわち、2以上のフィン領域部RC~RFの間で、スポイラー9の個数は等しい。なお、
図2はあくまで例示であり、例えばフィン領域部RC~RFのそれぞれにおいて、シングルスポイラー91のみを設けてもよいし、例えばフィン領域部RC~RFの少なくともいずれかにおいて、シングルスポイラー91とダブルスポイラー92とを混在させてもよい。すなわち、1×シングルスポイラーの個数+2×ダブルスポイラーの個数=スポイラーの個数として、2以上のフィン領域部の間で、スポイラーの個数が等しければよい。
【0030】
なお、
図2に示すように、フィン領域部RC~RFのそれぞれにおいて、スポイラー9が形成される位置P1,P2,P3の半導体素子5C~5Fの第1方向他方側端の位置P0に対する相対関係は、同じである。
【0031】
<5.流路抵抗の調整>
本実施形態では、上記のようなスポイラーの配置を行うことに加え、スポイラーの構造によってそれぞれのフィン領域部における流路抵抗を調整している。具体的には、フィン領域部RC~RFのそれぞれにおける流路抵抗をFRC~FRFとすると、FRC<FRD<FRE<FRFとしている。すなわち、下流側に向かうほど流路抵抗を大きくしている。なお、上記に限らず、例えばFRC=FRD=FRE<FRF、あるいはFRC=FRD<FRE=FRF、あるいはFRC<FRD=FRE=FRF、あるいはFRC<FRD=FRE<FRFなどとしてもよい。すなわち、下流側に向かう方向の途中で、第1方向に隣り合うフィン領域部の間で流路抵抗が等しくなってもよい。なお、流路抵抗を調整するためのスポイラーの構造については、後述する。
【0032】
すなわち、冷媒Wが流れる上流側のフィン領域部RCから下流側のフィン領域部RFに向かうに従って、フィン領域部RC~RFにおけるスポイラー9の構造による流路抵抗が大きくなる。
【0033】
上記のようにスポイラーによって簡便に乱流を形成することが可能であり、スポイラーの個数を下流側で増やすことで、冷媒Wの温度が高温となりやすい下流側の冷却性能を向上させ、第1方向に複数配置される半導体素子の冷却性能を均等化することが考えられる。しかしながら、スポイラーの個数は整数値であるため、乱流形成度を微調整することができない。また、前段のスポイラーによって乱流が発生した状態で後段のスポイラーに冷媒が到達する場合、スポイラー相互の間隔が乱流発生状況に強く関係するため、単にスポイラーの間隔を狭めてスポイラーの個数を増やしても、冷却性能が相応に向上しない場合がある。また、半導体素子と第3方向に対向する領域にスポイラーを配置する必要があり、配置可能なスポイラーの数量は限定的となる。
【0034】
そこで、本実施形態では、2以上のフィン領域部RC~RFのそれぞれにおけるスポイラー9の個数を等しくしつつ、スポイラー9の構造により流路抵抗(乱流形成度)を調整することで、第1方向に複数配置される半導体素子5C~5Fの冷却性能を微調整することが可能であり、当該冷却性能の均等化が容易となる。
【0035】
また、先述のように流路抵抗をFRC<FRD<FRE<FRFとすることを換言すれば、第1方向に隣接するフィン領域部のすべての組(RC,RD)(RD,RE)(RE,RF)において、上流側のフィン領域部よりも下流側のフィン領域部のほうが流路抵抗が大きい。
【0036】
また、先述のように流路抵抗を例えばFRC=FRD=FRE<FRFなどとすることを換言すれば、第1方向に隣接するフィン領域部の組の少なくともいずれかにおいて、フィン領域部の間の流路抵抗は等しい。
【0037】
<6.スポイラーの構造>
次に、流路抵抗を調整するためのスポイラー9の構造(設計パラメータ)について述べる。
【0038】
図6の上段は、
図2に示すように1つのフィン領域部において3つのダブルスポイラー92を設ける場合の具体的なダブルスポイラー92の構造例を示す図である。
図6の上段では、1つのフィン領域部においてダブルスポイラー92A,92B,92Cが設けられる。すなわち、スポイラー9の個数は、2×3=6個である。そして、
図6の上段では、一例として、最も下流側(第1方向一方側)のダブルスポイラー92Cの第1方向および第3方向に延びる長さLcを、上流側のダブルスポイラー92A,92Bの第1方向および第3方向に延びる長さLa,Lbよりも長くしている(Lc>La=Lb)。
【0039】
このように、スポイラー9が第1方向および第3方向に延びる長さによって、流路抵抗が調整される。スポイラー9の長さを長くすれば乱流形成度が大きくなり、流路抵抗が大きくなる。スポイラー9の長さを調整することで冷却性能の微調整が容易となる。
【0040】
なお、1つのフィン領域部において、スポイラー9の第1方向および第3方向に延びる長さは、すべてのスポイラー9において等しくしてもよい。また、
図6の下段に示す例では、上流側に2つのダブルスポイラー92A,92Bを設け、下流側に2つのシングルスポイラー91A,91Bを設けている。このようにしても、スポイラー9の個数=2×2+1×2=6個であり、
図6の上段と効果は同等である。
図6の下段では、シングルスポイラー91A,91Bの第1方向および第3方向に延びる長さを、ダブルスポイラー92A,92Bの第1方向および第3方向に延びる長さよりも長くしている。
【0041】
図7の左方においては、ダブルスポイラー92を第1方向に視た図を示す。ダブルスポイラー92は、側壁部61から突出量Hだけ第2方向他方側に突出する。なお、シングルスポイラー91についても側壁部61から所定の突出量だけ第2方向他方側に突出する。このようなスポイラー9が側壁部61から第2方向に突出する突出量によって、流路抵抗が調整される。スポイラー9の突出量を大きくすれば乱流形成度が大きくなり、流路抵抗が大きくなる。スポイラー9の突出量を調整することで冷却性能の微調整が容易となる。
【0042】
図8は、一例として、フィン領域部RC,RDそれぞれにおいて設けられるダブルスポイラー92を第2方向に視た場合の図である。具体的には、フィン領域部RCにはダブルスポイラー92A~92Cが設けられ、フィン領域部RDにはダブルスポイラー92D~92Fが設けられる。下流側のダブルスポイラー92D~92Fそれぞれの第1方向から傾く角度θ2は、上流側のダブルスポイラー92A~92Cそれぞれの第1方向から傾く角度θ1よりも大きくしている。すなわち、第2方向に視てスポイラー9が第1方向から傾く角度によって、流路抵抗が調整される。スポイラー9が傾く角度が大きくなるほど乱流形成度が大きくなり、流路抵抗が大きくなる。スポイラー9が傾く角度を調整することで冷却性能の微調整が容易となる。なお、シングルスポイラー91が傾く角度を調整してもよい。
【0043】
<7.その他>
以上、本開示の実施形態を説明した。なお、本開示の範囲は上述の実施形態に限定されない。本開示は、発明の主旨を逸脱しない範囲で上述の実施形態に種々の変更を加えて実施することができる。また、上述の実施形態で説明した事項は、矛盾を生じない範囲で適宜任意に組み合わせることができる。
【0044】
<8.付記>
以上のように、本開示の一態様に係る放熱部材は、
半導体素子を搭載する絶縁回路基板を冷却するための放熱部材であって、
冷媒が流れる方向に沿う第1方向、かつ第1方向に直交する第2方向に広がり、第1方向および第2方向に直交する第3方向に厚みを有し、第3方向一方側に前記絶縁回路基板が配置される板形状のベース部と、
前記ベース部から前記第3方向他方側に突出し、第1方向かつ第3方向に広がって第2方向を厚み方向とする平板状の側壁部を有し、第2方向に複数配置されるフィンと、
を有し、
少なくとも1つの前記フィンは、第1方向に複数配置される前記半導体素子と第3方向に対向するフィン領域部を第1方向に複数有し、
前記複数の前記フィン領域部のうち2以上の前記フィン領域部のそれぞれにおいて、前記側壁部にスポイラーが形成され、
前記2以上の前記フィン領域部の間で、前記スポイラーの数は等しく、
前記冷媒が流れる上流側の前記フィン領域部から下流側の前記フィン領域部に向かうに従って、前記フィン領域部における前記スポイラーの構造による流路抵抗が大きくなる構成としている(第1の構成)。
【0045】
また、上記第1の構成において、第1方向に隣接する前記フィン領域部のすべての組において、上流側の前記フィン領域部よりも下流側の前記フィン領域部のほうが前記流路抵抗が大きい構成としてもよい(第2の構成)。
【0046】
また、上記第1の構成において、第1方向に隣接する前記フィン領域部の組の少なくともいずれかにおいて、前記フィン領域部の間の前記流路抵抗は等しい構成としてもよい(第3の構成)。
【0047】
また、上記第1から第4のいずれかの構成において、前記スポイラーが第1方向および第3方向に延びる長さによって、前記流路抵抗が調整される構成としてもよい(第4の構成)。
【0048】
また、上記第1から第5のいずれかの構成において、前記スポイラーが前記側壁部から第2方向に突出する突出量によって、前記流路抵抗が調整される構成としてもよい(第5の構成)。
【0049】
また、上記第1から第6のいずれかの構成において、第2方向に視て前記スポイラーが第1方向から傾く角度によって、前記流路抵抗が調整される構成としてもよい(第6の構成)。
【0050】
また、本開示の一態様に係る半導体モジュールは、上記第1から第6のいずれかの構成の放熱部材と、前記絶縁回路基板と、前記半導体素子と、を備える(第7の構成)。
【0051】
また、本開示の一態様に係る半導体モジュールは、上記第1から第7のいずれかの構成の放熱部材と、前記半導体素子と、を備える(第8の構成)。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本開示は、各種用途の半導体素子の冷却に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 放熱部材
2 ベース部
3 放熱フィン部
5A~5F 半導体素子
6 フィン
9 スポイラー
21 第3方向他方側面
41~43 絶縁回路基板
61 側壁部
62 底板部
63 天板部
90 開口部
91 シングルスポイラー
92 ダブルスポイラー
100 半導体モジュール
RA~RF フィン領域部
W 冷媒