(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132022
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ウォーターサーバー
(51)【国際特許分類】
B67D 3/02 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B67D3/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042642
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】316003276
【氏名又は名称】株式会社コスモライフ
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100127340
【弁理士】
【氏名又は名称】飛永 充啓
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】荒川 眞吾
【テーマコード(参考)】
3E082
【Fターム(参考)】
3E082AA01
3E082BB01
3E082EE01
3E082FF05
3E082FF09
(57)【要約】
【課題】温水注出弁として手動弁を使用し、かつ、温水による幼児のやけど事故を防ぐことができるウォーターサーバーを提供する。
【解決手段】温水注出弁23は、出水操作部材29を非操作位置から操作位置に移動させる手動の操作力で弁体24を閉弁位置から開弁位置に移動させる手動弁であるウォーターサーバーにおいて、筐体1の上端面は、筐体1の下端から100cm以上の高さに位置し、温水用の出水操作部材29を、筐体1の上端面に配置し、筐体1の上端面に配置された温水用の出水操作部材29と温水注出弁23の弁体24との間を機械的に連結する温水用の操作力伝達機構30を設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体(1)と、
前記筐体(1)の内部に配置された温水タンク(5)と、
前記温水タンク(5)内の温水を前記筐体(1)の外部に注出する温水注出路(22)と、
前記温水注出路(22)に設けられた温水注出弁(23)と、を有し、
前記温水注出弁(23)は、前記温水注出路(22)を開閉する温水用の弁体(24)と、非操作位置と操作位置との間で移動可能に設けられた温水用の出水操作部材(29)とを有し、前記温水用の出水操作部材(29)を非操作位置から操作位置に移動させる手動の操作力で前記温水用の弁体(24)を閉弁位置から開弁位置に移動させる手動弁であるウォーターサーバーにおいて、
前記筐体(1)の上端面は、前記筐体(1)の下端から100cm以上の高さに位置し、
前記温水用の出水操作部材(29)を、前記筐体(1)の上端面に配置し、
前記筐体(1)の上端面に配置された前記温水用の出水操作部材(29)と前記温水注出弁(23)の弁体(24)との間を機械的に連結する温水用の操作力伝達機構(30)を設けたことを特徴とするウォーターサーバー。
【請求項2】
前記温水用の出水操作部材(29)は、前記筐体(1)の上端面に開口する収容孔(31)に上下にスライド可能に収容して設けられ、
前記温水用の弁体(24)と一体に軸方向移動する温水用の弁棒(25)が前記弁体(24)に接続して設けられ、
前記温水用の操作力伝達機構(30)は、前記温水用の出水操作部材(29)の前記収容孔(31)における下方への移動を前記温水用の弁棒(25)の軸方向移動に変換して伝達するように、前記温水用の出水操作部材(29)と前記温水用の弁棒(25)の間を連結するリンク機構である請求項1に記載のウォーターサーバー。
【請求項3】
前記温水用の操作力伝達機構(30)は、前記温水用の出水操作部材(29)に上端が回動可能に連結された上部リンクアーム(32)と、前記上部リンクアーム(32)の下端に一端が回動可能に連結され、前記温水用の弁棒(25)に他端が回動可能に連結された下部リンクアーム(33)とを有し、
前記下部リンクアーム(33)の前記温水用の弁棒(25)との連結部の近傍部分には、前記温水注出弁(23)に設けられた梃子受け面(41)に揺動可能に支持されて梃子の支点となる角部(40)が形成されている請求項2に記載のウォーターサーバー。
【請求項4】
前記筐体(1)の内部に配置された冷水タンク(4)と、
前記冷水タンク(4)内の冷水を前記筐体(1)の外部に注出する冷水注出路(20)と、
前記冷水注出路(20)に設けられた冷水注出弁(21)と、を更に有し、
前記冷水注出弁(21)は、前記冷水注出路(20)を開閉する冷水用の弁体(24)と、非操作位置と操作位置との間で移動可能に設けられた冷水用の出水操作部材(29)とを有し、前記冷水用の出水操作部材(29)を非操作位置から操作位置に移動させる手動の操作力で前記冷水用の弁体(24)を閉弁位置から開弁位置に移動させる手動弁であり、
前記冷水用の出水操作部材(29)を、前記筐体(1)の上端面に配置し、
前記筐体(1)の上端面に配置された前記冷水用の出水操作部材(29)と前記冷水注出弁(21)の弁体(24)との間を機械的に連結する冷水用の操作力伝達機構(30)を設けた請求項1から3のいずれかに記載のウォーターサーバー。
【請求項5】
前記冷水用の出水操作部材(29)は、前記筐体(1)の上端面に開口する収容孔(31)に上下にスライド可能に収容して設けられ、
前記冷水用の弁体(24)と一体に軸方向移動する冷水用の弁棒(25)が前記弁体(24)に接続して設けられ、
前記冷水用の操作力伝達機構(30)は、前記冷水用の出水操作部材(29)の前記収容孔(31)における下方への移動を前記冷水用の弁棒(25)の軸方向移動に変換して伝達するように、前記冷水用の出水操作部材(29)と前記冷水用の弁棒(25)の間を連結するリンク機構である請求項4に記載のウォーターサーバー。
【請求項6】
前記冷水用の操作力伝達機構(30)は、前記冷水用の出水操作部材(29)に上端が回動可能に連結された上部リンクアーム(32)と、前記上部リンクアーム(32)の下端に一端が回動可能に連結され、前記冷水用の弁棒(25)に他端が回動可能に連結された下部リンクアーム(33)とを有し、
前記下部リンクアーム(33)の前記冷水用の弁棒(25)との連結部の近傍部分には、前記冷水注出弁(21)に設けられた梃子受け面(41)に支持されて梃子の支点となる角部(40)が形成されている請求項5に記載のウォーターサーバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ウォーターサーバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主にオフィスや病院などでウォーターサーバーが利用されてきたが、近年、水の安全や健康への関心の高まりから、一般家庭にもウォーターサーバーが普及しつつある。ウォーターサーバーは、一般に、筐体と、筐体の内部に配置された冷水タンクおよび温水タンクと、冷水タンク内の冷水を筐体の外部に注出する冷水注出路と、冷水注出路に設けられた冷水注出弁と、温水タンク内の温水を筐体の外部に注出する温水注出路と、温水注出路に設けられた温水注出弁とを有する。そして、冷水注出弁と温水注出弁を選択的に開弁することで、いつでもすぐに美味しい冷水または温水を注出することができ、優れた利便性をもつ(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-166862号公報
【特許文献2】特開2021-195146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、温水を注出することができるウォーターサーバーにおいては、幼児が温水を注出してやけどするのを防止するため、一般に、チャイルドロック機能が設けられている。チャイルドロック機能は、ウォーターサーバーから温水を注出するための操作を、2つ以上の操作の組み合わせとすることにより、幼児がウォーターサーバーを操作しても、簡単には温水を注出することができないようにしたものである(例えば、特許文献1、2)。
【0005】
しかしながら、チャイルドロック機能を設けた場合であっても、大人が行なうウォーターサーバーの操作を幼児が見てその操作を真似し、温水でやけどするおそれを完全に無くすのは難しい。
【0006】
ここで、本願の発明者は、大人が行なうウォーターサーバーの操作を幼児が見てその操作を真似するのを防ぐためはどのようにすればよいかを検討した。そして、幼児は背が低いため、視点の高さが低いという点に着眼し、ウォーターサーバーの温水用の出水操作部を、ウォーターサーバーの筐体のうち、幼児の目からは視認しにくい位置(ただし大人の目からは視認しやすい位置)に配置すれば、大人がウォーターサーバーの温水用の出水操作部を操作するときに、幼児からはその操作が見えないので、大人が温水を注出する操作を幼児が見て真似するのを防ぐことができるという着想を得た。
【0007】
一方、ウォーターサーバーは、温水注出弁として電磁弁を使用するタイプのもの(例えば、特許文献1)と、温水注出弁として手動弁を使用するタイプのもの(例えば、特許文献2)とに大別される。
【0008】
温水注出弁として電磁弁を使用するウォーターサーバーは、温水注出弁を電気的に作動させる構成なので、温水用の出水操作部を、温水注出弁から離れた任意の位置に配置することができ、レイアウトの自由度が高いというメリットがあるが、地震や台風などの災害で停電が生じたときに、温水注出弁を開弁することができず、温水タンク内の飲料水を注出することができなくなるというデメリットがある。また、温水注出弁として電磁弁を使用するウォーターサーバーは、温水注出弁を全閉から全開に切り替えることはできるが、その開弁量を調整することができないので、例えば、ウォーターサーバーから注出する温水でコーヒーを淹れようとするときに、温水の単位時間あたりの注出量を調整することができない。
【0009】
一方、温水注出弁として手動弁を使用するウォーターサーバーは、温水用の出水操作部材を非操作位置から操作位置に移動させる手動の操作力で、温水用の弁体を閉弁位置から開弁位置に移動させるので、地震や台風などの災害で停電が生じたときにも、温水注出弁を開弁することが可能であり、温水タンク内の飲料水を注出することができるというメリットがある。また、温水注出弁として手動弁を使用するウォーターサーバーは、温水用の出水操作部材の操作量を調整することで、温水注出弁の開弁量を調整することができるというメリットもある。
【0010】
この発明が解決しようとする課題は、温水注出弁として手動弁を使用し、かつ、温水による幼児のやけど事故を防ぐことができるウォーターサーバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、この発明では、以下の構成のウォーターサーバーを提供する。
[構成1]
筐体と、
前記筐体の内部に配置された温水タンクと、
前記温水タンク内の温水を前記筐体の外部に注出する温水注出路と、
前記温水注出路に設けられた温水注出弁と、を有し、
前記温水注出弁は、前記温水注出路を開閉する温水用の弁体と、非操作位置と操作位置との間で移動可能に設けられた温水用の出水操作部材とを有し、前記温水用の出水操作部材を非操作位置から操作位置に移動させる手動の操作力で前記温水用の弁体を閉弁位置から開弁位置に移動させる手動弁であるウォーターサーバーにおいて、
前記筐体の上端面は、前記筐体の下端から100cm以上の高さに位置し、
前記温水用の出水操作部材を、前記筐体の上端面に配置し、
前記筐体の上端面に配置された前記温水用の出水操作部材と前記温水注出弁の弁体との間を機械的に連結する温水用の操作力伝達機構を設けたことを特徴とするウォーターサーバー。
【0012】
この構成を採用すると、温水用の出水操作部材がウォーターサーバーの筐体の上端面に配置されているので、温水用の出水操作部材を操作するときに、幼児の目の高さからはその操作が見えにくい。そのため、大人が温水を注出する操作を幼児が見て真似するのを防ぐことができ、温水による幼児のやけど事故を防ぐことができる。また、温水用の出水操作部材を非操作位置から操作位置に移動させる手動の操作力で温水用の弁体を閉弁位置から開弁位置に移動させる手動弁を使用しているので、地震や台風などの災害で停電が生じたときにも、温水注出弁を開弁することが可能であり、温水タンク内の飲料水を注出することができる。また、温水用の出水操作部材の操作量を調整することで、温水注出弁の開弁量を調整することも可能である。
【0013】
[構成2]
前記温水用の出水操作部材は、前記筐体の上端面に開口する収容孔に上下にスライド可能に収容して設けられ、
前記温水用の弁体と一体に軸方向移動する温水用の弁棒が前記弁体に接続して設けられ、
前記温水用の操作力伝達機構は、前記温水用の出水操作部材の前記収容孔における下方への移動を前記温水用の弁棒の軸方向移動に変換して伝達するように、前記温水用の出水操作部材と前記温水用の弁棒の間を連結するリンク機構である構成1に記載のウォーターサーバー。
【0014】
この構成を採用すると、温水用の出水操作部材が、筐体の上端面に開口する収容孔に上下にスライド可能に収容して設けられていることから、筐体の上端面に手を置き、手の指で温水用の出水操作部材を下方に押し動かすことで、温水を注出することが可能となる。ここで、筐体の上端面に置いた手の指で温水用の出水操作部材を下方に押し動かす操作は、幼児の目の高さから見ると、単に筐体の上端面に手を置いているだけにも見えることから、大人が温水を注出するときに、その操作を幼児が見て真似するのを効果的に防ぐことができる。
【0015】
[構成3]
前記温水用の操作力伝達機構は、前記温水用の出水操作部材に上端が回動可能に連結された上部リンクアームと、前記上部リンクアームの下端に一端が回動可能に連結され、前記温水用の弁棒に他端が回動可能に連結された下部リンクアームとを有し、
前記下部リンクアームの前記温水用の弁棒との連結部の近傍部分には、前記温水注出弁に設けられた梃子受け面に支持されて梃子の支点となる角部が形成されている構成1または2に記載のウォーターサーバー。
【0016】
この構成を採用すると、温水用の出水操作部材を押し下げたときに、その出水操作部材の下方への移動が、上部リンクアームを介して下部リンクアームに伝達し、その下部リンクアームが、下部リンクアームの温水用の弁棒との連結部の近傍部分に形成された角部を支点として揺動し、温水用の弁棒を移動させる。このとき、出水操作部材から上部リンクアームを介して下部リンクアームに伝達する操作力は、梃子の原理により、大きい力となって温水用の弁棒を移動させる。そのため、温水用の出水操作部材を押し下げて温水を注出するときに、小さい力で温水を注出することが可能である。
【0017】
[構成4]
前記筐体の内部に配置された冷水タンクと、
前記冷水タンク内の冷水を前記筐体の外部に注出する冷水注出路と、
前記冷水注出路に設けられた冷水注出弁と、を更に有し、
前記冷水注出弁は、前記冷水注出路を開閉する冷水用の弁体と、非操作位置と操作位置との間で移動可能に設けられた冷水用の出水操作部材とを有し、前記冷水用の出水操作部材を非操作位置から操作位置に移動させる手動の操作力で前記冷水用の弁体を閉弁位置から開弁位置に移動させる手動弁であり、
前記冷水用の出水操作部材を、前記筐体の上端面に配置し、
前記筐体の上端面に配置された前記冷水用の出水操作部材と前記冷水注出弁の弁体との間を機械的に連結する冷水用の操作力伝達機構を設けた構成1から3のいずれかに記載のウォーターサーバー。
【0018】
この構成を採用すると、冷水用の出水操作部材がウォーターサーバーの筐体の上端面に配置されているので、冷水用の出水操作部材を操作するときに、幼児の目の高さからはその操作が見えにくい。そのため、大人が冷水を注出する操作を幼児が見て真似するのを防ぐことができる。また、冷水用の出水操作部材を非操作位置から操作位置に移動させる手動の操作力で冷水用の弁体を閉弁位置から開弁位置に移動させる手動弁を使用しているので、地震や台風などの災害で停電が生じたときにも、冷水注出弁を開弁することが可能であり、冷水タンク内の飲料水を注出することができる。また、冷水用の出水操作部材の操作量を調整することで、冷水注出弁の開弁量を調整することも可能である。
【0019】
[構成5]
前記冷水用の出水操作部材は、前記筐体の上端面に開口する収容孔に上下にスライド可能に収容して設けられ、
前記冷水用の弁体と一体に軸方向移動する冷水用の弁棒が前記弁体に接続して設けられ、
前記冷水用の操作力伝達機構は、前記冷水用の出水操作部材の前記収容孔における下方への移動を前記冷水用の弁棒の軸方向移動に変換して伝達するように、前記冷水用の出水操作部材と前記冷水用の弁棒の間を連結するリンク機構である構成4に記載のウォーターサーバー。
【0020】
この構成を採用すると、冷水用の出水操作部材が、筐体の上端面に開口する収容孔に上下にスライド可能に収容して設けられていることから、筐体の上端面に手を置き、手の指で冷水用の出水操作部材を下方に押し動かすことで、冷水を注出することが可能となる。ここで、筐体の上端面に置いた手の指で冷水用の出水操作部材を下方に押し動かす操作は、幼児の目の高さから見ると、単に筐体の上端面に手を置いているだけにも見えることから、大人が冷水を注出するときに、その操作を幼児が見て真似するのを効果的に防ぐことができる。
【0021】
[構成6]
前記冷水用の操作力伝達機構は、前記冷水用の出水操作部材に上端が回動可能に連結された上部リンクアームと、前記上部リンクアームの下端に一端が回動可能に連結され、前記冷水用の弁棒に他端が回動可能に連結された下部リンクアームとを有し、
前記下部リンクアームの前記冷水用の弁棒との連結部の近傍部分には、前記冷水注出弁に設けられた梃子受け面に支持されて梃子の支点となる角部が形成されている構成4または5に記載のウォーターサーバー。
【0022】
この構成を採用すると、冷水用の出水操作部材を押し下げたときに、その出水操作部材の下方への移動が、上部リンクアームを介して下部リンクアームに伝達し、その下部リンクアームが、下部リンクアームの冷水用の弁棒との連結部の近傍部分に形成された角部を支点として揺動し、冷水用の弁棒を移動させる。このとき、出水操作部材から上部リンクアームを介して下部リンクアームに伝達する操作力は、梃子の原理により、大きい力となって冷水用の弁棒を移動させる。そのため、冷水用の出水操作部材を押し下げて冷水を注出するときに、小さい力で冷水を注出することが可能である。
【発明の効果】
【0023】
この発明のウォーターサーバーは、温水用の出水操作部材がウォーターサーバーの筐体の上端面に配置されているので、温水用の出水操作部材を操作するときに、幼児の目の高さからはその操作が見えにくい。そのため、大人が温水を注出する操作を幼児が見て真似するのを防ぐことができ、温水による幼児のやけど事故を防ぐことができる。また、温水用の出水操作部材を非操作位置から操作位置に移動させる手動の操作力で温水用の弁体を閉弁位置から開弁位置に移動させる手動弁を使用しているので、地震や台風などの災害で停電が生じたときにも、温水注出弁を開弁することが可能であり、温水タンク内の飲料水を注出することができる。また、温水用の出水操作部材の操作量を調整することで、温水注出弁の開弁量を調整することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】この発明の実施形態のウォーターサーバーの正面図
【
図7】
図3に示す出水操作部材を押し下げた状態を示す図
【
図9】
図5に示す上部リンクアームおよび下部リンクアームの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に、この発明の実施形態のウォーターサーバーを示す。このウォーターサーバーは、床面Fに載置される筐体1を有する。筐体1の前面には、冷水を注出する冷水注出口2と、温水を注出する温水注出口3とが設けられている。
【0026】
図2に示すように、筐体1の上部には、冷水タンク4および温水タンク5が収容され、筐体1の下部には、ボトル載置部6と、ボトル載置部6に載置した交換式の水ボトル7とが収容されている。また、筐体1の下部には、ボトル載置部6に載置した水ボトル7から飲料水を組み上げる電動ポンプ8が設けられている。電動ポンプ8は、水ボトル7と冷水タンク4の間を接続する給水管9の途中に設けられている。
【0027】
筐体1は、左右に対向する一対の側板10と、一対の側板10の上端に固定された天板11と、一対の側板10の下端に固定された底板12と、一対の側板10の前端同士を連結する前面パネル13と、一対の側板10の後端同士を連結する背面板14と、筐体1の内部を上下に仕切るように一対の側板10に水平に固定されたタンク固定板15とを有する。タンク固定板15には、冷水タンク4と温水タンク5が固定されている。
【0028】
前面パネル13の上端と天板11は、筐体1の上端に位置する。前面パネル13の上面と天板11の上面は、筐体1の上端面を構成している。筐体1の下端(底板12の下面)から筐体1の上端面(前面パネル13の上面および天板11の上面)までの高さは、100cm以上(好ましくは110cm以上)に設定されている。また、冷水注出口2および温水注出口3(
図1参照)の位置から筐体1の上端面(前面パネル13の上面および天板11の上面)までは20cm以上の高さがある。
【0029】
前面パネル13と底板12の間には、筐体1の前面下部を開閉する前面扉16が取り付けられ、この前面扉16を開閉することで、ボトル載置部6に載置された水ボトル7の交換作業をすることが可能となっている。
【0030】
冷水タンク4には、水ボトル7から電動ポンプ8で汲み上げられた飲料水が収容されている。冷水タンク4には、冷水タンク4内の飲料水を冷却する冷却装置17が取り付けられている。冷水タンク4に収容された飲料水は、冷却装置17で所定の低温(例えば10℃以下)に保たれている。
【0031】
冷水タンク4の底面には、冷水タンク4内の冷水を筐体1の外部に注出する冷水注出路20が接続されている。冷水注出路20には冷水注出弁21が設けられている。この冷水注出弁21を開弁すると、水の自重によって、冷水タンク4内の冷水が冷水注出弁21を通って押し出され、冷水注出口2から冷水を注出することが可能となっている。
【0032】
温水タンク5は、冷水タンク4の下方に配置されている。温水タンク5と冷水タンク4は、タンク接続管18を介して接続され、そのタンク接続管18を通って、冷水タンク4から温水タンク5に飲料水が導入されるようになっている。温水タンク5には、温水タンク5内の飲料水を加熱する加熱装置19が取り付けられている。温水タンク5に収容された飲料水は、加熱装置19で所定の高温(例えば80℃以上)に保たれている。
【0033】
温水タンク5の上面には、温水タンク5内の温水を筐体1の外部に注出する温水注出路22が接続されている。温水注出路22には温水注出弁23(
図1参照)が設けられている。この温水注出弁23を開弁すると、温水タンク5の上方に位置する冷水タンク4内の水の自重によって、温水タンク5内の温水が温水注出路22を通って押し出され、温水注出口3(
図1参照)から温水を注出することが可能となっている。ここでは、冷水タンク4の水の自重を利用して温水タンク5内の温水を押し出すようにしたが、温水タンク5の上方に冷水タンク4とは別のバッファタンクを追加して設け、そのバッファタンク内の水の自重によって、温水タンク5内の温水が温水注出路22を通って押し出されるように構成してもよい。
【0034】
図4に示すように、冷水注出弁21と温水注出弁23は、設ける位置が冷水注出路20か温水注出路22かで異なるのみであり、それ以外は同一構成なので、以下、冷水注出弁21の構成を説明し、温水注出弁23の対応する部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0035】
図5に示すように、冷水注出弁21は、冷水注出路20を閉鎖する閉弁位置(
図5に示す位置)と冷水注出路20を開放する開弁位置(
図8に示す位置)との間で移動可能に設けられた弁体24と、弁体24と一体に軸方向移動するように弁体24に接続した弁棒25と、弁体24を開弁位置から閉弁位置に向けて移動させるように弁棒25を付勢するバルブスプリング26と、弁体24を収容するバルブハウジング27とを有する。バルブハウジング27は、弁棒25を軸方向に移動可能に支持する弁棒支持孔28を有する。バルブハウジング27は、タンク固定板15の前端に固定されている。
【0036】
図3に示すように、弁棒25は、筐体1の上端面(前面パネル13の上面)に配置された出水操作部材29に操作力伝達機構30を介して機械的に連結されている。出水操作部材29は、筐体1の上端面(前面パネル13の上面)に開口する収容孔31に上下にスライド可能に収容されている。出水操作部材29は、非操作位置(
図3に示す位置)と、非操作位置に対して下方に移動した操作位置(
図7に示す位置)との間で移動可能に設けられ、バルブスプリング26(
図5参照)から操作力伝達機構30を介して伝達するばね力によって非操作位置(
図3に示す位置)に保持されている。
【0037】
ここでは、筐体1の上端面に出水操作部材29を配置する例として、前面パネル13の上面に開口して設けた収容孔31に、出水操作部材29を上下にスライド可能に収容して設けた構成を挙げて説明したが、天板11(
図2参照)の上面に収容孔31を開口して設け、その収容孔31に出水操作部材29を上下にスライド可能に収容して設けた構成を採用することも可能である。
【0038】
操作力伝達機構30は、くの字状に連結された上部リンクアーム32および下部リンクアーム33を有する。上部リンクアーム32の上端は、上部連結ピン34を介して出水操作部材29に回動可能に連結され、上部リンクアーム32の下端は、中間連結ピン35を介して下部リンクアーム33の一端(図では右端)に回動可能に連結されている。下部リンクアーム33の他端(図では左端)は、下部連結ピン36を介して弁棒25に回動可能に連結されている。上部連結ピン34と中間連結ピン35と下部連結ピン36は、互いに平行な水平方向の軸体である。上部連結ピン34と中間連結ピン35の軸心間距離は、中間連結ピン35と下部連結ピン36の軸心間距離の2倍以上(好ましくは2.5倍以上)に設定されている。
【0039】
図5、
図6、
図9に示すように、下部リンクアーム33は、弁棒25を間に挟んで水平に対向する対向壁部37を有し、その対向壁部37に形成されたピン穴38に、弁棒25に形成されたピン穴39を水平に貫通する下部連結ピン36の両端が嵌合している。
【0040】
図5、
図8に示すように、下部リンクアーム33は、弁棒25との連結部(下部連結ピン36)と上部リンクアーム32との連結部(中間連結ピン35)の間に形成された角部40を支点として揺動可能に支持されている。角部40は、バルブハウジング27に設けられた梃子受け面41に接触して支持される突起状の部分である。梃子受け面41は、バルブハウジング27に形成された弁棒25と直交する平面である。
【0041】
ここで、下部リンクアーム33の上部リンクアーム32との連結部(中間連結ピン35)を力点とし、下部リンクアーム33の弁棒25との連結部(下部連結ピン36)を作用点としたときに、角部40が梃子の支点となるように、角部40は、下部リンクアーム33の弁棒25との連結部(下部連結ピン36)の近傍、すなわち、下部リンクアーム33の弁棒25との連結部(下部連結ピン36)と下部リンクアーム33の上部リンクアーム32との連結部(中間連結ピン35)の間における下部リンクアーム33の弁棒25との連結部(下部連結ピン36)寄りの位置に形成されている。
【0042】
図3、
図7に示すように、上部リンクアーム32と下部リンクアーム33は、出水操作部材29の収容孔31における下方への移動を弁棒25の軸方向移動に変換して伝達するように、出水操作部材29と弁棒25の間を連結するリンク機構を構成している。ここで、
図4に示す冷水注出弁21は、
図3に示す出水操作部材29を非操作位置(
図3に示す位置)から操作位置(
図7に示す位置)に移動させる手動の操作力で、
図5に示す弁体24を閉弁位置(
図5に示す位置)から開弁位置(
図8に示す位置)に移動させる手動弁を構成している。同様に、
図4に示す温水注出弁23も、出水操作部材29を非操作位置(
図3に示す位置)から操作位置(
図7に示す位置)に移動させる手動の操作力で、
図5に示す弁体24を閉弁位置から開弁位置に移動させる手動弁を構成している。
【0043】
このウォーターサーバーは、
図1、
図4に示すように、温水注出弁23および冷水注出弁21の出水操作部材29がウォーターサーバーの筐体1の上端面に配置されているので、温水注出弁23または冷水注出弁21の出水操作部材29を操作するときに、幼児の目の高さからはその操作が見えにくい。そのため、大人が温水を注出する操作を幼児が見て真似するのを防ぐことができ、温水による幼児のやけど事故や、冷水で床面Fが水浸しになるのを防ぐことができる。また、出水操作部材29を非操作位置から操作位置に移動させる手動の操作力で弁体24を閉弁位置から開弁位置に移動させる手動弁を使用しているので、地震や台風などの災害で停電が生じたときにも、温水注出弁23および冷水注出弁21を開弁することが可能であり、温水タンク5および冷水タンク4内の飲料水を注出することができる。また、出水操作部材29の操作量を調整することで、温水注出弁23および冷水注出弁21の開弁量を調整することも可能である。
【0044】
また、このウォーターサーバーは、
図1、
図4に示すように、温水注出弁23および冷水注出弁21の出水操作部材29が、筐体1の上端面に開口する収容孔31に上下にスライド可能に収容して設けられていることから、筐体1の上端面に手を置き、手の指で出水操作部材29を下方に押し動かすことで、温水(または冷水)を注出することが可能となる。ここで、筐体1の上端面に置いた手の指で出水操作部材29を下方に押し動かす操作は、幼児の目の高さから見ると、単に筐体1の上端面に手を置いているだけにも見えることから、大人が温水(または冷水)を注出するときに、その操作を幼児が見て真似するのを効果的に防ぐことができる。
【0045】
また、このウォーターサーバーは、
図3、
図7に示すように、温水注出弁23(または冷水注出弁21)の出水操作部材29を押し下げたときに、その出水操作部材29の下方への移動が、上部リンクアーム32を介して下部リンクアーム33に伝達し、その下部リンクアーム33が、下部リンクアーム33の弁棒25との連結部の近傍部分に形成された角部40を支点として揺動し、弁棒25を移動させる。このとき、出水操作部材29から上部リンクアーム32を介して下部リンクアーム33に伝達する操作力は、梃子の原理により、大きい力となって弁棒25を移動させる。そのため、出水操作部材29を押し下げて温水(または冷水)を注出するときに、小さい力で温水(または冷水)を注出することが可能である。
【0046】
上記実施形態では、筐体1の下部に交換式の水ボトル7を設置するタイプのウォーターサーバーを例に挙げて説明したが、この発明は、交換式の水ボトル7に代えて、家庭の水道水を収容する原水タンクを有し、その原水タンクの水を筐体1の内部に配置した浄水カートリッジで濾過し、その濾過後の浄水を冷水タンク4および温水タンク5に収容するタイプの浄水式ウォーターサーバーに同様に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 筐体
4 冷水タンク
5 温水タンク
20 冷水注出路
21 冷水注出弁
22 温水注出路
23 温水注出弁
24 弁体
25 弁棒
29 出水操作部材
30 操作力伝達機構
31 収容孔
32 上部リンクアーム
33 下部リンクアーム
40 角部
41 梃子受け面