(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132023
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】紫外線処理装置
(51)【国際特許分類】
B01J 19/12 20060101AFI20240920BHJP
B08B 7/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B01J19/12 C
B08B7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042643
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】宮本 聡一朗
(72)【発明者】
【氏名】安永 成克
【テーマコード(参考)】
3B116
4G075
【Fターム(参考)】
3B116AA46
3B116AB14
3B116BC01
4G075AA30
4G075AA37
4G075BA05
4G075CA33
4G075DA02
4G075DA18
4G075EB01
4G075EB33
4G075ED11
(57)【要約】
【課題】紫外線光源の種類に関する選択肢の幅の拡大と、処理能力の向上とを図ることができる紫外線処理装置を提供することである。
【解決手段】実施形態に係る紫外線処理装置は、箱状を呈する筐体と;前記筐体の内部に設けられ、前記筐体の内部にある処理物に、紫外線を照射する光源と;前記筐体の内部にオゾンを供給するオゾン供給部と;を具備している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱状を呈する筐体と;
前記筐体の内部に設けられ、前記筐体の内部にある処理物に、紫外線を照射する光源と;
前記筐体の内部にオゾンを供給するオゾン供給部と;
を具備した紫外線処理装置。
【請求項2】
前記オゾン供給部は、前記筐体が設けられる雰囲気に含まれている酸素を用いて、前記オゾンを生成する請求項1記載の紫外線処理装置。
【請求項3】
前記筐体の内部に供給される前記オゾンの濃度は、50ppm以上、500ppm以下である請求項1または2に記載の紫外線処理装置。
【請求項4】
前記光源は、波長が320nm以下の前記紫外線を照射する請求項1または2に記載の紫外線処理装置。
【請求項5】
前記光源は、前記紫外線を照射する放電ランプ、および前記紫外線を照射する発光素子の少なくともいずれかを有する請求項1または2に記載の紫外線処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、紫外線処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線を処理物に照射して、処理物の表面に付着している、有機物を含む異物を除去する紫外線処理装置がある。紫外線には、有機物の結合を解離させる作用と、雰囲気(空気)に含まれている酸素から活性酸素原子である一重項酸素原子を生成する作用と、がある。有機物の結合が解離し、且つ、一重項酸素原子が生成されると、有機物の解離された原子と、一重項酸素原子とを結合させることができるので、処理物の表面に付着してる異物を効率良く除去することができる。
【0003】
この様なドライ処理には、有機溶剤などを用いたウェット処理に比べて、処理物の表面に与える影響が少ないこと、処理物の表面に有機溶剤など残留物が残らないこと、作業効率が高いこと、環境負荷が小さいことなどの利点がある。そのため、紫外線処理装置は、例えば、半導体装置、フラットパネルディスプレイ、レンズなどの光学部品のドライ処理に用いられている。
【0004】
ここで、紫外線の波長が242nm以上の場合には、雰囲気(空気)に含まれている酸素に紫外線を照射しても一重項酸素原子を直接生成することができない。そのため、紫外線処理装置には、波長が242nm未満の紫外線を照射する光源が用いられている。
しかしながら、波長が242nm以上の紫外線を照射する光源を用いることができないと、使用できる光源が限られるので、紫外線処理装置の低価格化などを図るのが困難となる。
また、近年においては、一重項酸素原子の生成効率を高めることで、処理能力の向上を図ることが望まれている。
【0005】
そこで、紫外線光源の種類に関する選択肢の幅の拡大と、処理能力の向上とを図ることができる紫外線処理装置の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、紫外線光源の種類に関する選択肢の幅の拡大と、処理能力の向上とを図ることができる紫外線処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る紫外線処理装置は、箱状を呈する筐体と;前記筐体の内部に設けられ、前記筐体の内部にある処理物に、紫外線を照射する光源と;前記筐体の内部にオゾンを供給するオゾン供給部と;を具備している。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、紫外線光源の種類に関する選択肢の幅の拡大と、処理能力の向上とを図ることができる紫外線処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態に係る紫外線処理装置を例示するための模式図である。
【
図2】他の実施形態に係る処理装置を例示するための模式図である。
【
図3】オゾン供給部の効果を例示するための表である。
【
図4】オゾン供給部の効果を例示するためのグラフである。
【
図5】接触角と、紫外線の照射光量との関係を例示するための表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0012】
図1は、本実施の形態に係る紫外線処理装置1を例示するための模式図である。
図1に示すように、紫外線処理装置1(以下、単に、処理装置1と称する)は、例えば、供給部10、移動部20、処理部30、収容部40、およびコントローラ50を備えている。
【0013】
供給部10は、移動部20の搬入側の端部の近傍に設けられている。供給部10は、処理対象となる処理物100を内部に複数収容し、収容されている処理物100を移動部20に1つずつ供給する。例えば、供給部10は、複数の処理物100を収納するホッパと、ホッパの内部に収容されている処理物100を取り出して移動部20に供給する供給装置とを有することができる。
なお、供給部10の構成は例示をしたものに限定されるわけではない。供給部10は、処理物100同士が重ならないようにして、処理物100を移動部20に供給することができるものであればよい。
【0014】
また、供給部10は、必ずしも必要ではなく省くこともできる。供給部10を省く場合には、例えば、作業者やロボットが、処理物100を移動部20に供給すればよい。
【0015】
処理物100は、紫外線を照射することで、表面に付着してる、有機物を含む異物を除去できるものであればよい。例えば、処理物100は、紫外線に対して、ある程度の耐性を有するものであればよい。処理物100は、例えば、半導体装置などの電子部品、フラットパネルディスプレイ、レンズなどの光学部品、容器などに収納された食品などとすることができる。なお、処理物100は、例示をしたものに限定されるわけではない。
【0016】
移動部20は、処理物100を移動する。例えば、移動部20は、供給部10による処理物100の供給位置から、収容部40への処理済みの処理物100aの排出位置まで処理物100、100aを移動する。移動部20は、例えば、ベルトコンベアやローラコンベアなどとすることができる。
【0017】
なお、移動部20が、処理物100、100aを水平方向に移動する場合を例示したが、移動部20が、処理物100、100aを水平に対して傾斜した方向に移動してもよい。 また、移動部20がコンベアの場合を例示したが、例えば、移動部は、水平方向に回転する円板などであってもよい。
また、移動部20に代えて、処理物100を載置する台を、処理部30の照射領域に設けることもできる。処理物100を載置する台を設ける場合には、作業者やロボットが、処理を行う処理物100を台の上に載置したり、処理済みの処理物100aを台の上から取り出したりすればよい。ただし、移動部20が設けられていれば、処理物100を連続的に処理することができるので、生産性を向上させることができる。
【0018】
処理部30は、例えば、処理物100の供給位置から、処理済みの処理物100aの排出位置までの間に設けることができる。
処理部30は、例えば、筐体31、光源32、リフレクタ33、オゾン供給部34、および給気部35を有する。
【0019】
筐体31は、箱状を呈し、内部に、光源32およびリフレクタ33が収納される空間を有する。移動部20が設けられる場合には、移動部20の、処理物100が載置される部分が、筐体31の内部を通過する。そのため、筐体31の側面に、2つの孔31aを設けることができる。移動部20の、処理物100が載置される部分は、筐体31の2つの孔31aの内部を通過する。
【0020】
また、筐体31の側面には、孔31aの少なくとも一部を覆う遮蔽部31bを設けることができる。遮蔽部31bは、膜状を呈し、弾性変形が容易な材料から形成することができる。また、遮蔽部31bにスリットなどを設け、弾性変形が容易となるようにしてもよい。遮蔽部31bが弾性変形すれば、処理物100、100aが遮蔽部31bを押しのけることができるので、筐体31の内部への処理物100の搬入、および筐体31の内部からの処理物100aの搬出を行うことができる。また、孔31aの少なくとも一部を覆う遮蔽部31bが設けられていれば、紫外線や、後述するオゾン101が筐体31の外部に漏れるのを抑制することができる。
【0021】
処理物100を載置する台が設けられる場合には、台が、筐体31の内部に設けられる。また、筐体31の側面に、処理物100の搬入、および処理物100aの搬出を行う孔を設けることができる。また、孔を開閉する開閉扉を設けることができる。
【0022】
筐体31の外形形状には特に限定がない。筐体31の外形形状は、例えば、立方体、直方体、円柱などとすることができる。筐体31、遮蔽部31b、および開閉扉の材料は、紫外線、およびオゾン101に対する耐性を有するものとすることができる。筐体31、および開閉扉の材料は、例えば、ステンレスなどの金属、ポリカーボネート、フッ素樹脂などとすることができる。遮蔽部31bの材料は、例えば、ポリカーボネート、フッ素樹脂などとすることができる。
【0023】
また、筐体31の内壁や、開閉扉の筐体31の内部に露出する面の、紫外線に対する反射率を高くすることができる。例えば、筐体31の内壁や、開閉扉の筐体31の内部に露出する面にバフ研磨などを施して、これらを平坦な面とすることができる。また、例えば、筐体31の内壁や、開閉扉の筐体31の内部に露出する面を白色の樹脂などから形成することができる。また、例えば、筐体31の内壁や、開閉扉の筐体31の内部に露出する面に、アルミニウム合金などの紫外線に対する反射率が高い材料を含む板材やシートなどを貼り付けることができる。筐体31の内壁や、開閉扉の筐体31の内部に露出する面の、紫外線に対する反射率が高ければ、これらに入射した紫外線を反射させて、反射させた紫外線を処理物100に照射することができる。そのため、紫外線の利用効率を向上させることができる。
【0024】
光源32は、少なくとも紫外線を照射可能なものとすることができる。光源32は、例えば、波長が、320nm以下の紫外線を含む光を照射する。光源32は、例えば、放電ランプとすることができる。放電ランプは、例えば、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマランプ、フラッシュランプなどとすることができる。
以下においては、一例として、光源32が低圧水銀ランプである場合を説明する。
【0025】
光源32は、筐体31の内部であって、移動部20と対向する位置に設けられている。光源32は、筐体31の内部にある処理物100に、紫外線を照射する。低圧水銀ランプである光源32は、例えば、筐体31の内壁に設けられたソケットに着脱自在に設けることができる。光源32は、少なくとも1つ設けることができる。
図1に例示をした処理部30には、2つの光源32が設けられている。複数の光源32を設ける場合には、
図1に示すように、複数の光源32を処理物100の搬送方向に並べて設けることができる。光源32は、処理物100の搬送方向に交差する方向に延びている。なお、光源32の数は、
図1に例示をしたものに限定されるわけではなく、処理物100の処理数や、必要となる積算光量などに応じて適宜変更することができる。
【0026】
リフレクタ33は、1つの光源32に対して1つ設けることができる。なお、複数の光源32が設けられる場合には、複数の光源32に対して1つのリフレクタ33を設けることもできる。リフレクタ33は、光源32の、処理物100の側(移動部20の側)とは反対側に設けられている。リフレクタ33は、光源32から照射され、処理物100の側(移動部20の側)とは反対側に向かう紫外線を反射させる。リフレクタ33により反射された紫外線の一部は、処理物100に照射される。リフレクタ33は、例えば、凹面鏡などとすることができる。リフレクタ33が設けられていれば、光源32から照射された紫外線の利用効率を向上させることができる。
【0027】
また、
図1に示すように、移動部20の、処理物100が載置される部分を挟んで、互いに対向する2つのリフレクタ33を設けることもできる。この場合、処理物100の、光源32の側とは反対側に設けられるリフレクタ33の反射面は凹面とすることもできるし、平坦な面とすることもできる。処理物100の、光源32の側とは反対側にもリフレクタ33が設けられていれば、処理物100の、光源32の側とは反対側に付着している、有機物を含む異物に紫外線を照射することができる。そのため、処理物100のより広い領域における異物の除去を行うことができる。
【0028】
ここで、紫外線には、有機物の結合を解離させる作用と、雰囲気(空気)に含まれている酸素から活性酸素原子である一重項酸素原子を生成する作用と、がある。有機物の結合が解離し、且つ、一重項酸素原子が生成されると、有機物の解離された原子と、一重項酸素原子とを結合させることができるので、処理物100に付着してる異物を効率良く除去することができる。
【0029】
ところが、紫外線の波長が242nm以上の場合には、雰囲気(空気)に含まれている酸素に紫外線を照射しても一重項酸素原子を直接生成することができない。また、放電ランプの種類に応じて、照射される紫外線の波長領域が異なる。例えば、メタルハライドランプの場合には、波長が200nm~450nmの紫外線が照射される。例えば、低圧水銀ランプの場合には、ピーク波長が185nm、および254nmの紫外線が照射される。そのため、低圧水銀ランプのように、波長が242nm未満の紫外線の光量が多い放電ランプを選択すれば、雰囲気(空気)に含まれている酸素から一重項酸素原子を効率良く生成することができる。
【0030】
ここで、近年においては、一重項酸素原子の生成効率を高めることで、処理能力の向上を図ることが望まれている。また、波長が242nm未満の紫外線の光量が多い放電ランプのみを用いれば、使用できる放電ランプの種類が制限されることになる。
【0031】
そこで、処理部30には、オゾン供給部34が設けられている。オゾン供給部34は、例えば、処理装置1(筐体31)が設けられる雰囲気(空気)に含まれている酸素を用いてオゾン101を生成する。生成されたオゾン101は、筐体31の内部に供給される。この場合、オゾン101は、波長が、200nm以上、320nm以下の紫外線に対して強い吸収帯を有する。そのため、筐体31の内部において、光源32から波長が200nm以上、320nm以下の紫外線が照射されれば、紫外線がオゾン101に吸収されて一重項酸素原子が生成される。
【0032】
すなわち、オゾン供給部34が設けられていれば、雰囲気(空気)に含まれている酸素から直接生成される一重項酸素原子の量が少ない場合であっても、オゾン供給部34から供給されたオゾン101から一重項酸素原子を生成することができる。そのため、一重項酸素原子の生成効率を高めることができるので、処理能力の向上を図ることができる。また、波長が242nm未満の紫外線の光量が少ない放電ランプを用いても、処理能力の向上を図ることができる。
そのため、処理能力の向上と、放電ランプの種類に関する選択肢の幅の拡大とを図ることができる。
【0033】
また、前述したように、低圧水銀ランプは、ピーク波長が185nm、および254nmの紫外線を照射する。そのため、低圧水銀ランプを用いれば、波長が185nm近傍の紫外線が空気に含まれている酸素の照射されるので、一重項酸素原子を直接生成することができる。また、波長が254nm近傍の紫外線が、オゾン供給部34から供給されたオゾン101に吸収されて一重項酸素原子が生成される。また、紫外線が、筐体31の内部の雰囲気に含まれている酸素に照射されれば、オゾン101が生成される。そのため、筐体31の内部において生成されたオゾン101に、波長が200nm以上、320nm以下の紫外線が吸収されて一重項酸素原子が生成される。
すなわち、低圧水銀ランプと、オゾン供給部34と、を設ければ、一重項酸素原子の生成効率をさらに高めることができるので、処理能力のさらなる向上を図ることができる。
【0034】
オゾン供給部34は、酸素からオゾン101を生成することができるものであれば特に限定はない。例えば、オゾン供給部34は、高周波放電方式のオゾン発生器でも良いし、沿面放電方式のオゾン発生器でも良いし、無声放電方式のオゾン発生器でも良いし、エキシマランプを用いたオゾン発生器でも良い。ただし、オゾン供給部34が無声放電方式のオゾン発生器であれば、大容量のオゾン101を効率良く生成することができる。オゾン供給部34がエキシマランプを用いたオゾン発生器などであれば、オゾン供給部34の低価格化を図ることができる。
【0035】
ここで、オゾン供給部34から筐体31の内部に供給される気体のオゾン101の濃度を高くし過ぎると、一重項酸素原子の生成に用いられず、筐体31の排気管31cから排出されて無駄になるオゾン101の量が多くなる。そのため、オゾン供給部34から筐体31の内部に供給される気体のオゾン101の濃度は、例えば、50ppm以上、500ppm以下とすることが好ましい。オゾン101の濃度は、例えば、無声放電方式のオゾン発生器の電極に印加する高周波電圧の周波数を制御することで制御することができる。
【0036】
この場合、オゾン101の濃度は、例えば、有機物を含む異物の量が多い場合や、処理物100の処理時間を長くできない場合などには増やすことができる。また、オゾン101の濃度は、例えば、有機物を含む異物の量が少ない場合や、処理物100の処理時間を長くできる場合などには減らすことができる。
【0037】
給気部35の排気側は、例えば、オゾン供給部34の給気側に接続することができる。給気部35は、処理装置1が設けられている雰囲気に含まれている空気(酸素)をオゾン供給部34に供給する。給気部35は、オゾン供給部34に空気(酸素)を供給できるものであれば特に限定はない。給気部35は、例えば、軸流ファン、遠心ファン、ブロア(シロッコファン)などとすることができる。ただし、給気部35の種類は例示をしたものに限定されるわけではない。
【0038】
給気部35によりオゾン供給部34に供給された空気に含まれている酸素の少なくとも一部は、オゾン供給部34においてオゾン101の生成に用いられる。生成されたオゾン101は、筐体31の内部に供給され、前述した一重項酸素原子の生成に用いられる。
【0039】
一重項酸素原子の生成に用いられなかったオゾン101が含まれた気体は、筐体31に設けられた排気管31cから筐体31の外部に排出される。この場合、排気管31cに、ドラフターやスクラバーなどの酸排気処理装置や、オゾンフィルター分解器などを接続して、排気中のオゾン101を除去することができる。また、排気管31cにフロアなどを接続して、排気中のオゾン101の濃度を低下させたり、オゾン101を拡散させたりすることもできる。
【0040】
なお、給気部35の排気側をオゾン供給部34の給気側に接続する場合を例示したが、給気部35の給気側をオゾン供給部34の排気側と接続し、給気部35の排気側を筐体31に接続することもできる。また、給気部35の給気側を排気管31cに接続することもできる。ただし、給気部35の排気側がオゾン供給部34の給気側に接続されていれば、オゾン供給部34により生成されたオゾン101で、給気部35に損傷が発生するのを抑制することができる。
【0041】
また、給気部35に代えて、あるいは給気部35とともに、オゾン供給部34の給気側に酸素供給装置を接続することもできる。酸素供給装置は、オゾン供給部34の給気側に酸素を供給する。また、酸素供給装置は、供給する酸素の流量を制御することができる。酸素供給装置は、例えば、酸素が収納され、流量調整バルブを備えたボンベや、流量調整バルブを備えた工場配管(酸素供給ライン)などとすることができる。
【0042】
酸素供給装置を設けることで、オゾン供給部34に供給される気体の酸素濃度が高くなれば、生成されるオゾン101の量を多くすることができる。筐体31の内部に供給される気体のオゾン101の濃度が高くなれば、生成される一重項酸素原子の量が多くなるので、有機物を含む異物の除去が容易となる。
【0043】
ただし、酸素供給装置を設けてオゾン供給部34に酸素を供給すると、処理装置1のランニングコストが高くなったり、処理装置1の製造コストが高くなったりする。そのため、例えば、酸素供給装置は、必要に応じて設けることができる。
【0044】
また、酸素供給装置からオゾン供給部34への酸素の供給は、必要に応じて行うこともできる。例えば、有機物を含む異物の量が多い場合や、処理物100の処理時間を長くできない場合などには、酸素供給装置からオゾン供給部34への酸素供給量を増やすことができる。例えば、有機物を含む異物の量が少ない場合や、処理物100の処理時間を長くできる場合などには、酸素供給装置からオゾン供給部34への酸素供給量を減らしたり、停止したりすることができる。
【0045】
また、以上においては、雰囲気(空気)に含まれている酸素や、酸素供給装置から供給された酸素からオゾン101を生成するオゾン供給部34を例示したが、予め製造されたオゾン101を筐体31の内部に供給するオゾン供給部としてもよい。例えば、オゾン供給部34は、オゾン101が収納され、流量調整バルブを備えたボンベや、流量調整バルブを備えた工場配管(オゾン供給ライン)などとしてもよい。
ただし、オゾン供給部34が、雰囲気(空気)に含まれている酸素からオゾン101を生成するものであれば、ランニングコストの低減を図ることができる。
【0046】
収容部40は、処理済みの処理物100aを収容する。収容部40は、例えば、移動部20の排出側の端部の近傍に設けられたコンテナなどとすることができる。また、収容部40には、移動部20からの処理物100aの排出を促進させるための振動装置などを設けることもできる。
【0047】
コントローラ50は、処理装置1に設けられた各要素の動作を制御する。コントローラ50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの演算部と、半導体メモリなどの記憶部とを有する。コントローラ50は、例えば、コンピュータである。記憶部には、例えば、処理装置1に設けられた各要素の動作を制御する制御プログラムを格納することができる。また、コントローラ50には、光源32を点灯させるための点灯回路や、オゾン供給部34において放電を生じさせるための放電回路などを設けることができる。
また、コントローラ50は、オゾン供給部34を制御して、筐体31の内部に供給される気体のオゾン101の濃度を制御することもできる。
【0048】
図2は、他の実施形態に係る処理装置1aを例示するための模式図である。
図2に示すように、処理装置1aは、例えば、供給部10、移動部20、処理部30a、収容部40、およびコントローラ50を備えている。
処理部30aは、例えば、筐体31、光源32a、リフレクタ33、オゾン供給部34、および給気部35を有する。
【0049】
光源32aは、筐体31の内部であって、移動部20と対向する位置に設けられている。光源32a(基板32a1)は、例えば、筐体31の内壁に設けられたブラケットに着脱自在に設けることができる。光源32aは、少なくとも1つ設けることができる。複数の光源32aを設ける場合には、
図2に示すように、複数の光源32aを処理物100の搬送方向に並べて設けることができる。なお、光源32aの数は、
図2に例示をしたものに限定されるわけではなく、処理物100の処理数や、必要となる積算光量などに応じて適宜変更することができる。
【0050】
光源32aは、例えば、基板32a1、および発光素子32a2を有する。
基板32a1は、板状を呈している。基板32a1の材料は、例えば、酸化アルミニウムや窒化アルミニウムなどの無機材料、紙フェノールやガラスエポキシなどの有機材料、金属板の表面を絶縁材料で被覆したメタルコア基板などとすることができる。この場合、発光素子32a2において発生した熱の放熱と、オゾン101に対する耐性とを考慮すると、基板32a1は、例えば、酸化アルミニウムや窒化アルミニウムなどのセラミックス、メタルコア基板などから形成することが好ましい。
【0051】
発光素子32a2は、基板32a1の、移動部20と対向する面に設けられている。発光素子32a2は、基板32a1の面に設けられた配線パターンに電気的に接続されている。発光素子32a2は、少なくとも1つ設けることができる。複数の発光素子32a2を設ける場合には、例えば、複数の発光素子32a2をマトリクス状に並べて設けることができる。複数の発光素子32a2は、直列接続することができる。
【0052】
発光素子32a2は、紫外線を照射可能な発光素子であれば特に限定はない。発光素子32a2は、例えば、ピーク波長が、200nm以上、320nm以下の紫外線を照射可能な発光ダイオードや、レーザダイオードなどとすることができる。前述した様に、波長が242nm未満の紫外線が、筐体31の内部の雰囲気に含まれている酸素に照射されると、一重項酸素原子が直接生成される。また、オゾン101は、波長が、200nm以上、320nm以下の紫外線に対して強い吸収帯を有しているので、光源32aから波長が200nm以上、320nm以下の紫外線が照射されれば、紫外線がオゾン101に吸収されて一重項酸素原子が生成される。
【0053】
本実施の形態に係る処理装置1aには、オゾン供給部34が設けられているので、ピーク波長が、242nm以上の紫外線(一重項酸素原子を直接生成することができない波長を有する紫外線)を照射する発光素子32a2を用いても、オゾン101から一重項酸素原子を生成することができる。そのため、発光素子32a2の種類に関する選択肢の幅を拡大することができる。
【0054】
この場合、オゾン101の紫外線に対する吸収帯を考慮すると、ピーク波長が、320nm以下の紫外線を照射する発光素子32a2とすることが好ましい。また、ピーク波長が、242nm未満の紫外線を照射する発光素子32a2とすれば、一重項酸素原子を直接生成することができ、且つ、オゾン101から一重項酸素原子を生成することができる。そのため、ピーク波長が、242nm未満の紫外線を照射する発光素子32a2とすることがさらに好ましい。
【0055】
発光素子32a2の形式には特に限定がない。例えば、発光素子32a2は、表面実装型の発光素子とすることもできるし、砲弾型などのリード線を有する発光素子とすることもできるし、チップ状の発光素子とすることもできる。チップ状の発光素子は、例えば、COB(Chip On Board)により、基板32a1に設けられた配線パターンに実装することができる。また、チップ状の発光素子を覆う封止部を設けることができる。発光素子32a2がチップ状の発光素子であれば、狭い領域に多くの発光素子32a2を設けることができる。そのため、光源32aの小型化を図ることができる。
【0056】
また、
図2に示すように、移動部20の、処理物100が載置される部分を挟んで、光源32aと対向する位置にリフレクタ33を設けることもできる。この場合、リフレクタ33の反射面は凹面とすることもできるし、平坦な面とすることもできる。処理物100の、光源32aの側とは反対側にリフレクタ33が設けられていれば、処理物100の、光源32aの側とは反対側に付着している、有機物を含む異物に紫外線を照射することができる。そのため、処理物100のより広い領域における異物の除去を行うことができる。
【0057】
なお、以上においては、光源32が紫外線を照射する放電ランプを有する場合、または、光源32aが紫外線を照射する発光素子32a1を有する場合を説明したが、オゾン供給部34が設けられていれば、光源は、紫外線を照射する放電ランプ、および紫外線を照射する発光素子32a1を有していても良い。すなわち、オゾン供給部34が設けられていれば、光源は、紫外線を照射する放電ランプ、および紫外線を照射する発光素子32a1の少なくともいずれかを有していれば良い。
【0058】
図3は、オゾン供給部34の効果を例示するための表である。
図4は、オゾン供給部34の効果を例示するためのグラフである。
図3、および
図4は、光源32として低圧水銀ランプを用いた場合である。
図3、および
図4における「オゾン供給無し」は、雰囲気(空気)に含まれている酸素に紫外線が照射されることで生成されたオゾン101のみが、筐体31の内部の雰囲気に含まれている場合である。この場合、筐体31の内部の雰囲気におけるオゾン101の濃度は30ppm程度であった。
【0059】
図3、および
図4における「オゾン供給有り」は、雰囲気(空気)に含まれている酸素に紫外線が照射されることで生成されたオゾン101と、オゾン供給部34から供給されたオゾン101とが、筐体31の内部の雰囲気に含まれている場合である。この場合、筐体31の内部の雰囲気におけるオゾン101の濃度は160ppm程度であった。
【0060】
また、異物の除去効果は、無アルカリガラスの表面における水滴の接触角で評価した。この場合、θ/2法を用いて接触角を求めた。接触角による評価においては、接触角が小さくなるほど表面が清浄であること(付着している異物が少ないこと)を意味する。
【0061】
図3、および
図4から分かるように、オゾン供給部34を設け、筐体31の内部の雰囲気におけるオゾン101の濃度を高くすれば、接触角を小さくすることができる。すなわち、オゾン供給部34を設ければ、処理能力の向上を図ることができる。
【0062】
図5は、接触角と、紫外線の照射光量との関係を例示するための表である。
なお、
図5における光源32、オゾン101の濃度、および異物の除去効果の評価は、
図3、および
図4の場合と同様とした。
図5から分かるように、オゾン供給部34を設け、筐体31の内部の雰囲気におけるオゾン101の濃度を高くすれば、同じ接触角となるのに必要となる紫外線の照射光量を少なくすることができる。例えば、オゾン供給部34を設ければ、接触角を30°にするのに必要となる紫外線の照射光量を30%程度低減させることができる。このことは、紫外線の照射時間を30%程度短くすることができることを意味する。そのため、オゾン供給部34を設ければ、ランニングコストの低減や生産性の向上を図ることができる。
【0063】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【0064】
以下、前述した実施形態に関する付記を示す。
【0065】
(付記1)
箱状を呈する筐体と;
前記筐体の内部に設けられ、前記筐体の内部にある処理物に、紫外線を照射する光源と;
前記筐体の内部にオゾンを供給するオゾン供給部と;
を具備した紫外線処理装置。
【0066】
(付記2)
前記オゾン供給部は、前記筐体が設けられる雰囲気に含まれている酸素を用いて、前記オゾンを生成する付記1記載の紫外線処理装置。
【0067】
(付記3)
前記筐体の内部に供給される前記オゾンの濃度は、50ppm以上、500ppm以下である付記1または2に記載の紫外線処理装置。
【0068】
(付記4)
前記光源は、波長が320nm以下の前記紫外線を照射する付記1~3のいずれか1つに記載の紫外線処理装置。
【0069】
(付記5)
前記光源は、前記紫外線を照射する放電ランプ、および前記紫外線を照射する発光素子の少なくともいずれかを有する付記1~4のいずれか1つに記載の紫外線処理装置。
【符号の説明】
【0070】
1 処理装置、1a 処理装置、30 処理部、30a 処理部、31 筐体、32 光源、32a 光源、32a2 発光素子、34 オゾン供給部、35 給気部、100 処理物、101 オゾン