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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132027
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】充填材用シート
(51)【国際特許分類】
   F28F 25/08 20060101AFI20240920BHJP
   F28C 1/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F28F25/08 A
F28C1/00 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042648
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】山崎 幸司
(57)【要約】
【課題】環境に優しい冷却塔を提供すること。
【解決手段】冷却塔の充填材を構成する充填材用シートであって、樹脂と卵殻粒子とを含む樹脂組成物で構成されている充填材用シート、を提供する。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却塔の充填材を構成する充填材用シートであって、
樹脂と卵殻粒子とを含む樹脂組成物で構成されている充填材用シート。
【請求項2】
前記樹脂組成物における卵殻粒子の含有量が10質量%以上である請求項1記載の充填材用シート。
【請求項3】
前記樹脂が、ポリ塩化ビニル樹脂である請求項1又は2記載の充填材用シート。
【請求項4】
前記樹脂組成物が、更にアクリル系樹脂を含む請求項3記載の充填材用シート。
【請求項5】
高さが30μm以上1000μm以下の複数の突起が少なくとも片面側に設けられている請求項1又は2記載の充填材用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填材用シートに関し、より詳しくは、冷却塔の充填材を構成する充填材用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空調設備などの各種設備での熱交換により加温された水は、冷却塔で冷却してから冷却水として再使用されている。この種の冷却塔としては、複数の充填材用シートで構成された冷却塔用充填材を備えたタイプのものが知られている。下記特許文献1に示すように、この冷却塔用充填材では、縦置きにされた充填材用シートが所定の隙間を設けて略等間隔に並べられており、該充填材用シートを伝って冷却水を流下させるとともに隙間に外気を流通させることで冷却水の冷却が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-220652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、持続可能な社会の構築が求められており、環境に優しい製品が求められている。上記の特許文献1では、充填材用シートの表面積を増大させるべく、充填材用シートの略全域に、前後方向に波打った波模様状の凹凸波形状部が形成されている。冷却塔では、充填材用シートと冷却水との接触面積を広く確保することで熱交換効率が向上され、エネルギー消費の削減が可能となり、環境に優しい製品となり得る。しかしながら、熱交換効率の観点以外において冷却塔をより環境に優しいものにする取り組みは殆ど行われていない。世界的なカーボンニュートラル社会の実現に向けて、工業製品にもより環境負荷の低い製品が求められる。そこで、本発明は、これまで以上に環境に優しい冷却塔を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明は、
冷却塔の充填材を構成する充填材用シートであって、
樹脂と卵殻粒子とを含む樹脂組成物で構成されている充填材用シート、を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、その多くが廃棄物として処理されている卵殻が充填材用シートの形成材料として有効活用され得る。しかも、本発明によれば充填材用シートが卵殻粒子を含む樹脂組成物で構成されることで当該充填材用シートと水との接触面積を広く確保することができる。このようなことから、本発明によれば環境に優しい冷却塔が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、冷却システムの一例を示した概略図である。
図2図2は、一実施形態の冷却塔を示す概略斜視図である。
図3図3は、冷却塔の内部構造を示す概略図(図2でのIII-III線矢視断面図)である。
図4図4は、冷却塔用充填材を示す概略斜視図である。
図5図5は、充填材用シートを示す概略正面図である。
図6図6は、2枚の充填材用シートを並べた状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施の形態について図を参照しつつ説明する。本実施形態においては、冷却水で熱交換される被冷却装置がビル空調用の冷凍機などであり、該被冷却装置に冷却水を循環供給する冷却システムの構成機器として冷却塔が設けられている場合を例に本発明の実施の形態について説明する。
【0009】
図1に示すように、本実施形態の冷却システムCSは、冷却塔100と、被冷却装置200とを備えている。本実施形態の冷却システムCSは、冷却塔100で冷却された冷却水を被冷却装置200に供給し、該被冷却装置200で熱交換されて加熱された冷却水を冷却塔100に供給して該冷却塔100で冷却して再び冷却水として被冷却装置200に供給するように構成されている。
【0010】
本実施形態の冷却システムCSは、冷却塔100と被冷却装置200とを通って循環するように配された冷却水循環経路300と、該冷却水循環経路300などでのスケールの発生を防止するスケール防止装置400とをさらに備える。
【0011】
本実施形態の冷却塔100は、外気を利用して冷却水の一部を蒸発させ、該蒸発による気化熱によって残りの冷却水を冷却し得るように構成されている。冷却塔100は、外気によって冷却する間、冷却水を自然流下させ得るように構成されている。本実施形態の冷却塔100は、冷却水の冷却に用いられ、該冷却水による冷却対象である被冷却装置200を通過して温度上昇した冷却水を散水する散水部と、該散水部での散水によって被水する位置に設けられた冷却塔用充填材とを備え、該冷却塔用充填材が複数枚の充填材用シートで構成され、該冷却塔用充填材では、前記充填材用シートどうしの間に隙間を設けて複数枚の充填材用シートが並べられており、該冷却塔用充填材と前記散水部とは該散水部で散水された冷却水が前記冷却塔用充填材を構成している前記充填材用シートを伝って流れるように配置され、前記充填材用シートの間の隙間を風が通り抜けることで該充填材用シートの表面を伝って流れる前記冷却水が冷却されるように構成されている。
【0012】
本実施形態の冷却塔100は、例えば、図2図3に示すものを採用することができる。尚、以下においては、水平面と平行する方向の内、図2図3に矢印D1で示した方向(以下、第1方向ともいう)を「横方向」、「左右方向」などと称し、該「横方向」に直交し且つ水平面と平行な矢印D2で示された第2方向を「前後方向」、「奥行方向」などと称し、該前後方向と前記横方向との両方に直交し、垂直方向と平行する矢印D3で示された第3方向を「高さ方向」、「上下方向」などと称することがある。
【0013】
本実施形態における前記冷却塔100は、図2図3に示すように大気による前記気流Fを生じさせるための気流発生部1と、該気流発生部1によって生じた前記気流Fで前記冷却水を冷却する冷却部2と、該冷却部2で冷却する前記水を冷却部2に対して散水する散水部3とを備えている。
【0014】
本実施形態における前記冷却塔100は、塔中央部に空洞部Vが設けられ、該空洞部Vを包囲する側壁部Wの少なくとも一部が前記冷却部2となっている。本実施形態における前記冷却塔100は、角筒状となって前記空洞部Vを包囲する側壁部Wを備えている。前記側壁部Wは、上下が開口した状態となるように設けられ、第1方向D1(横方向)において前記空洞部Vを介して対向する一対の側壁w1,w2(以下、「第1側壁w1」、「第2側壁w2」ともいう)と、前記第2方向D2(前後方向)において前記空洞部を介して対向する一対の側壁w3,w4(以下、「第3側壁w3」、「第4側壁w4」ともいう)とを備えている。
【0015】
前記気流発生部1は、前記空洞部Vの上方に位置し、且つ、上向きに延びるように形成された大口径のファンスタック11と、該ノズル内に収容された送風機12とを備えている。前記送風機12は、駆動時に前記ファンスタック11の内部を上方に向けて移動する気流Fを形成し得るように配されている。即ち、前記気流発生部1は、前記空洞部Vの空気を前記送風機12で吸い出して上方に向けて移動させ得るように構成されている。
【0016】
本実施形態における前記冷却塔100は、第1側壁w1及び第2側壁w2が前記冷却部2となっている。前記第1側壁w1及び前記第2側壁w2のそれぞれは、上方に向けて垂直よりもやや外側に傾斜した状態となるように立設されている。これらに設けられた冷却部2では、上下方向D3に2段積みにされた冷却塔用充填材(以下、単に「充填材」ともいう)が備えられている。該充填材21の内、下段側の充填材(以下、「第1冷却塔用充填材」又は「第1充填材」ともいう)と上段側の充填材(以下、「第2冷却塔用充填材」又は「第2充填材」ともいう)とは、共通する形状を有しており、いずれも平行6面体形状となっている。充填材21は、前面21F及び背面21Bが平行四辺形で、上面21T、下面21U、左側面21L、及び、右側面21Rのそれぞれが長方形又は正方形となるように冷却塔100に配置されている。
【0017】
本実施形態での第1充填材211(第1冷却塔用充填材)と第2充填材212(第2冷却塔用充填材)とのそれぞれは、図4に示すように複数枚の充填材用シート21sで構成されている。前記充填材用シート21sには、図4図6に示すように少なくとも一面側に複数の突起が備えられている。そして、本実施形態での第1充填材211と第2充填材212とのそれぞれでは、前記複数の充填材用シート21sが縦置きとなるように並べて配され、一つの前記充填材用シート21sが前記突起の先端部を隣りに位置する他の前記充填材用シート21sに当接させることで隣り合う2つの前記充填材用シート21sの間に気流Fの通り道となる隙間OPが設けられている。前記第1充填材211と前記第2充填材212とのそれぞれでは、前記充填材用シート21sが奥行方向に並んだ状態となって配されている。
【0018】
本実施形態の充填材用シート21sでは、前面21sfの側に複数の突起(以下、前面突起B1ともいう)が配されている。一つの充填材用シート21sに設けられている複数の前面突起B1は、同じ形状を有している。該前面突起B1の配されている範囲は、概ねシート全体に及んでいる。従って、本実施形態の充填材用シート21sは、2枚並べて配置した際にその間にできる前記隙間OPの寸法(シートが並ぶ方向での寸法)が、シート平面方向において概ね均一となるように構成されている。
【0019】
本実施形態の充填材用シート21sは、樹脂組成物で構成されたシート成形品であり、前記前面突起B1は、背面21sbの側では凹部(以下、背面凹部H2ともいう)となっている。
【0020】
本実施形態の充填材用シート21sの前面側には前記前面突起B1とは逆に前面21sf側より背面21sb側に向けて凹入した凹部(以下、前面凹部H1ともいう)が設けられている。該複数の前面凹部H1は、同じ形状を有している。該前面凹部H1も前面突起B1と同様に複数備えられており、シート全体に及ぶ配置となっている。前面凹部H1は、前面突起B1とは逆に背面21sb側において突出して突起(以下、背面突起B2ともいう)となっている。即ち、十分に軟化した状態となるまで加熱した平坦な原料樹脂シートに成形型で凹凸形状が形成されるように作製されたシート成形品である本実施形態の充填材用シート21sは、突起と凹部とが表裏一体となって設けられている。
【0021】
充填材用シート21sの形状は、一辺の長さが例えば、50cm~250cm程度の四角形となっており、本実施形態では平行四辺形である。充填材用シート21sの外形自体は、平行四辺形であるため、対角線DLどうしが交わる交点を通ってシート平面に対して直交する方向に延びる仮想線を中心軸AXとしたときに2回対称となる回転対称性を有している。一方、本実施形態の充填材用シート21sは、前記中心軸AX周りに180度回転した時に、回転前に前面突起B1が設けられていた位置に前面凹部H1が位置し、回転前に前面凹部H1が設けられていた位置に前面突起B1が位置するように構成されている。従って、本実施形態の充填材用シート21sは、2枚並べて配置し、且つ、一方を他方に対して前記中心軸AX周りに180度回転して配置した際には、一方の前面突起B1と他方の背面突起B2とを当接させてそれぞれの高さを足し合わせた広さの隙間OPが形成されるようになっている。
【0022】
充填材用シート21sでの前面突起B1と前面凹部H1とが設けられている部位以外の部位(以下、「基板部S1」ともいう)は、水がゆっくりと流れ落ちるように僅かな凹凸(2mm以下程度の凹凸)を有する波板状となっている。
【0023】
本実施形態の散水部3は、平行6面体となった充填材21の上面21T(第2充填材212の上面21T)に対して加温された冷却水(温水)を散布し得るように構成されている。本実施形態では前記第1側壁w1や前記第2側壁w2の上端部の上方に設けられた温水ピット31と、該温水ピット31に加温された冷却水(温水)を供給するための温水配管32とが散水部3に備えられ、該散水部3では、前記温水ピット31が上面視において前記第2充填材212の上面21Tと重なり合うように配されている。
【0024】
本実施形態の前記温水ピット31の底壁には、上下に貫通する貫通孔31hが複数穿設されている。前記貫通孔31hは、前記温水ピット31の底壁の全面にわたって設けられている。即ち、本実施形態の前記散水部3は、前記温水ピット31に供給された温水を第2充填材212の上面21Tの概ね全域に散水し得るように構成されている。
【0025】
前記冷却部2は、前記充填材用シート21sの表面を伝って前記第1側壁w1や前記第2側壁w2の上端部から下端部に向けて移動する間に前記充填材21に設けられた隙間OPを外側(外気側)から内側(空洞部V側)へと通過する気流Fによって温水の一部を蒸発させて当該温水を冷水へと変化させ得るように構成されている。
【0026】
本実施形態の冷却塔100は、前記側壁部Wや前記空洞部Vの下方において前記冷却部2で冷却された後の水(冷水)を貯留するための冷水ピット5をさらに備え、該冷水ピット5の水を設備で利用可能な冷却水として供給し得るよう構成されている。
【0027】
本実施形態の充填材21や個々の充填材用シート21sには、冷却塔100の運転時には、それぞれの自重だけでなく水による荷重が加えられる。そのため、本実施形態での第1充填材211、及び、第1充填材211を構成する複数の充填材用シート21sのそれぞれには上下方向にむけて自重のみならず水による荷重が加わるように配されている。
【0028】
上記のようなことから本実施形態での充填材用シート21sは、成形型で精度よく形状付与することが可能な良好な成形性と、上下方向に加わる荷重によって撓みが生じないように高い圧縮剛性を有することが望ましい。
【0029】
本実施形態の充填材用シート21sは、樹脂と卵殻粒子とを含む樹脂組成物で構成されている。充填材用シート21sを構成する樹脂組成物でのベース樹脂は、合成樹脂、天然樹脂を選択可能であるが、合成樹脂であることが好ましく、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂とすることができる。これらのベース樹脂は、架橋されていてもよく、非架橋であってもよい。樹脂組成物における前記ベース樹脂の含有率は、例えば、60質量%以上とすることができる。前記ベース樹脂の含有率は、65質量%以上であってもよく、70質量%以上であってもよく、75質量%以上であってもよい。樹脂組成物における前記ベース樹脂の含有率は、例えば、95質量%以下とすることができる。前記ベース樹脂の含有率は、93質量%以下であってもよく、91質量%以下であってもよく、89質量%以下であってもよい。
【0030】
前記ベース樹脂は、強度や耐候性に優れる点においてポリ塩化ビニル樹脂であることが好ましい。即ち、本実施形態の充填材用シート21sは、ポリ塩化ビニル樹脂組成物で構成されることが好ましい。本実施形態では、重合度などの異なる2種類以上のポリ塩化ビニル樹脂の混合樹脂を前記ベース樹脂として用いてもよい。前記ベース樹脂は、再生材とバージン材との混合樹脂であってもよい。再生材は、例えば、樹脂製品などから回収されて再生されたものや樹脂製品を製造する過程で生じる端材を回収して再生されたものであってもよい。
【0031】
再生されたポリ塩化ビニル樹脂は、通常、バージン材に比べて分子量分布がブロードであり、バージン材に比べて分枝構造が多く含まれる場合がある。従って、再生されたポリ塩化ビニル樹脂を含むことは、原料樹脂シートに高い溶融張力を発揮させる上で有利となり得る。本実施形態の充填材用シート21sは、卵殻粒子を含むため、シート成形において前面突起B1や背面突起B2を形成する際に破れなどが形成され易いものの再生材を使用することでそのような問題の解消を図ることができる。また、再生材の利用は、冷却塔100を環境に優しいものとする上においても有利である。一方で、バージン材は、充填材用シート21sに高い強度を付与する上で有利である。
【0032】
ベース樹脂としてポリ塩化ビニル樹脂の混合樹脂を採用する場合、樹脂組成物に含まれるポリ塩化ビニル樹脂の総量を100質量%とすると、再生材の割合は、例えば、10質量%以上とすることができる。再生材の割合は、20質量%以上であってもよく、30質量%以上であってもよい。再生材の割合は、例えば、80質量%以下とすることができる。再生材の割合は、70質量%以下であってもよく、60質量%以下であってもよく、50質量%以下であってもよい。
【0033】
ポリ塩化ビニル樹脂のバージン材は、JIS K 6720-2:1999に規定のK値より求められる重合度が、例えば、700以上のものを採用することができる。バージン材の重合度は、800以上であってもよく、900以上であってもよい。バージン材の重合度は、例えば、2000以下とすることができる。バージン材の重合度は、1800以下であってもよく、1600以下であってもよい。バージン材の重合度は、1400以下であってもよく、1300以下であってもよい。
【0034】
充填材用シート21sを構成する樹脂組成物には、ポリ塩化ビニル樹脂とともに可塑剤を含有させることもできる。可塑剤としては、例えば、フタル酸系可塑剤、脂肪族系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、リン酸系可塑剤などを用いることができる。
【0035】
フタル酸系可塑剤としては、例えば、フタル酸エステルを挙げることができる。エステルを構成するアルコールとしては、例えば、炭素数8~13の飽和脂肪族アルコールなどを挙げることができる。これらのアルコールは、1種または2種以上用いることができる。より具体的には、フタル酸系可塑剤としては、例えば、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、フタル酸ジ-n-オクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジトリデシルなどを挙げることができる。
【0036】
脂肪族系可塑剤としては、例えば、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステルなどを挙げることができる。エステルを構成するアルコールとしては、例えば、炭素数3~13の飽和脂肪族アルコールなどを挙げることができる。これらのアルコールは、1種または2種以上用いることができる。より具体的には、脂肪族系可塑剤としては、例えば、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸イソノニル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジオクチルなどを挙げることができる。
【0037】
トリメリット酸系可塑剤としては、例えば、トリメリット酸エステルを挙げることができる。また、ピロメリット酸系可塑剤としては、例えば、ピロメリット酸エステルを挙げることができる。さらに、リン酸系可塑剤としては、例えば、リン酸エステルを挙げることができる。エステルを構成するアルコールとしては、例えば、炭素数8~13の飽和脂肪族アルコールなどを挙げることができる。これらのアルコールは、1種または2種以上用いることができる。
【0038】
樹脂組成物に含まれる可塑剤は、フタル酸系可塑剤であることが好ましい。フタル酸系可塑剤としては、フタル酸ジ-2-エチルヘキシルかフタル酸ジイソノニルかの何れかを用いることが好ましい。
【0039】
樹脂組成物に含まれる可塑剤の割合は、例えば、1質量%以上であってもよい。可塑剤の割合は、1.5質量%以上であってもよく、2質量%以上であってもよい。樹脂組成物に含まれる可塑剤の割合は、例えば、7質量%以下とすることができる。可塑剤の割合は、6質量%以下であってもよく、5質量%以下であってもよい。樹脂組成物に含まれるポリ塩化ビニル樹脂の総量を100質量部とした場合、樹脂組成物に含まれる可塑剤の割合は、例えば、1質量部以上であってもよい。可塑剤の割合は、2質量部以上であってもよく、3質量部以上であってもよい。樹脂組成物に含まれる可塑剤の割合は、例えば、10質量部以下とすることができる。可塑剤の割合は、8質量部以下であってもよく、6質量部以下であってもよい。
【0040】
樹脂組成物における卵殻粒子の割合は、多い方が、廃棄物削減への寄与が大きい。一方で卵殻粒子の割合が少ない方が充填材用シート21sを製造容易にすることができる。樹脂組成物における卵殻粒子の割合は、例えば、5質量%以上とすることができる。卵殻粒子の割合は、8質量%以上であってもよく、10質量%以上であってもよく、12質量%以上であってもよい。樹脂組成物における卵殻粒子の割合は、例えば、25質量%以下とすることができる。卵殻粒子の割合は、20質量%以下であってもよく、18質量%以下であってもよく、16質量%以下であってもよい。
【0041】
本実施形態の卵殻粒子は、卵殻を粉末状に粉砕したものである。そのため所定の割合で卵殻粒子を含む本実施形態の充填材用シート21sは、一般社団法人日本有機資源協会などのバイオマス関連の認定機関より規格適合品(バイオマスマーク認定品)としての認定を受けることが可能となる。本実施形態の充填材用シート21sは、少なくとも一部の機関に認定されるべく卵殻粒子を10質量%以上含有することが好ましい。
【0042】
卵殻粒子は、30μm~1000μm程度の突出高さの微小突起を充填材用シート21sの表面に形成して冷却水との接触面積を広げるのに有効である。突起の突出高さは、50μm以上であってもよく、100μm以上であってもよい。また、卵殻粒子は、ポリ塩化ビニル樹脂などに比べて親水性が高いことから、充填材用シート21sの表面での冷却水の濡れ性の改善への寄与に期待が持てる。卵殻粒子は、粒径が大きい方が突起の形成に有利となる。卵殻粒子は、レーザー回折散乱法などで測定される平均粒子径(体積基準での累積粒度分布曲線での中位径:D50)が、10μm以上であることが好ましい。卵殻粒子の平均粒子径(D50)は、20μm以上であってもよく、30μm以上であってもよい。卵殻粒子は、充填材用シート21sの成形性を良好にする点では粒径が小さい方が有利である。卵殻粒子の平均粒子径(D50)は、200μm以下であることが好ましい。卵殻粒子の平均粒子径(D50)は、100μm以下であってもよく、80μm以下であってもよい。
【0043】
上記のような突出高さの突起は、単位面積あたりに一定以上の割合で存在することが好ましい。充填材用シート21sは、1cm×1cmの正方形となる領域を設定し、該正方形の領域内で基板部S1だけでなく凹部H1や突起B1においても上記のような高さの突起の数をカウントした際に、該突起の数が5個/1cm以上となるように形成されていることが好ましい。突起の数は、10個/1cm以上であることがより好ましく、20個/1cm以上であることが更に好ましく、30個/1cm以上であることが特に好ましく、50個/1cm以上であることがとりわけ好ましい。突起の割合は、無作為に選択した複数(例えば、5箇所)の領域で突起の数を測定した結果の平均値として求めることができる。このような割合での突起は、充填材用シート21sの少なくとも片面に設けられていることが好ましく、両面に形成されていることがより好ましい。
【0044】
卵殻粒子と樹脂との相溶性を向上させて成形加工性を改善するために、樹脂組成物にはアクリル系樹脂を含有させることが好ましい。アクリル系樹脂の添加は、充填材用シート21sの親水性の向上を図る上でも有利である。
【0045】
本実施形態でのアクリル系樹脂は、単一の(メタ)アクリルモノマーのみによって構成された単独重合体樹脂であってもよく、複数の(メタ)アクリルモノマー、又は、(メタ)アクリルモノマーと他のビニル系モノマーとで構成された共重合体樹脂であってもよい。本実施形態でのアクリル系樹脂は、構成単位に複数の(メタ)アクリルモノマーを含む共重合体樹脂であることが好ましい。尚、本明細書での「(メタ)アクリル」とは「メタクリル」と「アクリル」との両方の意味を含む用語として用いている。即ち、「(メタ)アクリルモノマー」との用語には「メタクリルモノマー」と「アクリルモノマー」との両方が含まれている。
【0046】
アクリル系樹脂の構成単位とされるアクリルモノマーとしては、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシルなどが挙げられる。アクリルモノマーは、例えば、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸クロロエチル、アクリル酸トリフルオロエチル、アクリル酸ヘプタデカフルオロオクチルエチル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸アダマンチルおよびアクリル酸トリシクロデシニルなどであってもよい。
【0047】
アクリル系樹脂の構成単位とされるメタクリルモノマーとしては、例えば、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシルなどが挙げられる。メタクリルモノマーは、例えば、メタクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸クロロエチル、メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸ヘプタデカフルオロオクチルエチル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸アダマンチルおよびメタクリル酸トリシクロデシニルなどであってもよい。
【0048】
本実施形態のアクリル系樹脂は、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」を構成単位として含むアクリル樹脂であることが好ましい。本実施形態のアクリル系樹脂は、「アクリル酸アルキルエステル」と「メタクリル酸アルキルエステル」との両方を構成単位として含むことが好ましい。エステルを構成するアルコールとしては、例えば、炭素数1~5の飽和脂肪族アルコールなどが好ましい。即ち、「アクリル酸アルキルエステル」は、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチルの何れかであることが好ましい。「メタクリル酸アルキルエステル」は、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチルの何れかであることが好ましい。「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」でのアルキル基は、ノルマル構造である必要はなく、異性構造であってもよい。即ち、(メタ)アクリル酸プロピルは、(メタ)アクリル酸イソプロピルであってもよい。(メタ)アクリル酸ブチルは、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルであってもよい。(メタ)アクリル酸ペンチルは、(メタ)アクリル酸s-ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸3-ペンチル、(メタ)アクリル酸t-ペンチルであってもよい。本実施形態のアクリル系樹脂は、アクリル酸ブチルとメタクリル酸メチルとが構成単位として含まれる共重合体であることが特に好ましい。即ち、本実施形態のアクリル系樹脂は、アクリル酸ブチル-メタクリル酸メチル共重合体であることが好ましい。
【0049】
上記のようなアクリル系樹脂は、GPC法によって測定される質量平均分子量(ポリスチレン換算値)が300万以上であることが好ましい。アクリル系樹脂の質量平均分子量は、400万以上であってもよい。アクリル系樹脂の質量平均分子量は、例えば、1000万以下とされる。アクリル系樹脂の質量平均分子量は、900万以下であってもよく、800万以下であってもよく、700万以下であってもよい。
【0050】
樹脂組成物に含まれるアクリル系樹脂の割合は、例えば、0.5質量%以上であってもよい。アクリル系樹脂の割合は、1質量%以上であってもよく、1.5質量%以上であってもよい。樹脂組成物に含まれるアクリル系樹脂の割合は、例えば、6質量%以下とすることができる。アクリル系樹脂の割合は、5質量%以下であってもよく、4質量%以下であってもよい。樹脂組成物に含まれる卵殻粒子の総量を100質量部とした場合、樹脂組成物に含まれるアクリル系樹脂の割合は、例えば、10質量部以上であってもよい。アクリル系樹脂の割合は、15質量部以上であってもよく、20質量部以上であってもよい。樹脂組成物に含まれる卵殻粒子の総量を100質量部とした場合のアクリル系樹脂の割合は、例えば、50質量部以下とすることができる。アクリル系樹脂の割合は、40質量部以下であってもよく、30質量部以下であってもよい。
【0051】
充填材用シート21sを構成する樹脂組成物には、更に、安定剤を含有させてもよい。安定剤としては、例えば、カルシウム-亜鉛系安定剤、バリウム-亜鉛系安定剤、オクチルスズやメチルスズなどのスズ系安定剤、鉛系安定剤、ハイドロタルサイト系安定剤などが挙げられる。樹脂組成物に含まれるポリ塩化ビニル樹脂の総量を100質量部とした場合、樹脂組成物に含まれる該安定剤の割合は、例えば、1質量部以上であってもよい。安定剤の割合は、1.5質量部以上であってもよく、2質量部以上であってもよい。樹脂組成物に含まれる安定剤の割合は、例えば、10質量部以下とすることができる。安定剤の割合は、8質量部以下であってもよく、6質量部以下であってもよい。
【0052】
充填材用シート21sを構成する樹脂組成物には、上記以外にも各種の添加剤を含有させることができる。該添加剤としては、顔料、染料などの着色剤が挙げられる。また、添加剤としては、耐候剤、抗菌剤、酸化防止剤、老化防止剤などの各種機能性薬剤が挙げられる。
【0053】
本実施形態の充填材用シート21sは、前述のように、例えば、シート成形法によって製造することができる。具体的には、充填材用シート21sは、帯状の原料シート、又は、予め外形加工がされた原料シートと、充填材用シート21sの凹凸形状とは逆形状の成形面を備えた成形型とを用いて作製することができる。シート成形法は、例えば、真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法、プレス成形法などの何れであってもよい。
【0054】
前記原料シートは、強度と成形性との観点から、例えば、平均厚さが0.3mm以上1mm以下のものを採用することができる。そのような原料シートを用いることで基板部S1の厚さが0.3mm以上1mm以下となる充填材用シート21sを作製することができる。前面突起B1(背面凹部H2)などでは深絞り成形がされることでシート厚さが原料シートよりも薄くなってしまうが、立体構造的な面で強度が発揮される。また、射出成形やトランスファー成形などの注型法と違ってシート成形法では充填材用シート21sを作製する際に前面突起B1や背面突起B2で原料シートが薄く伸長されるため卵殻粒子による凹凸を発現させ易くなる。従って、前面、背面の内の一方面だけでなく両面に突起を有する本実施形態の充填材用シート21sは、気液接触面積を広く確保することができるとともに表面での高い保水性を発揮して冷却水を効率よく冷却することができる。
【0055】
上記のような充填材用シート21sを備えた冷却塔100で冷却水の冷却が行われる被冷却装置としては、冷媒圧縮機や吸収式冷凍機などの空調用の冷凍機、水冷式ガスエンジン、水冷式モーターなどの駆動装置、水冷式発電装置などの各種の発熱装置が挙げられる。
【0056】
前記冷却水循環経路300は、管材、継手、バルブ、ポンプなどによって構成させることができる。前記スケール防止装置400は、配管等にコイルを装着して用いられる電磁気方式のものやスケール防止剤を冷却水中に注入する薬剤式のものを採用することができる。
【0057】
以上に示したように本明細書は以下の開示を含む。
(1)
冷却塔の充填材を構成する充填材用シートであって、
樹脂と卵殻粒子とを含む樹脂組成物で構成されている充填材用シート。
(2)
前記樹脂組成物における卵殻粒子の含有量が10質量%以上である(1)記載の充填材用シート。
(3)
前記樹脂が、ポリ塩化ビニル樹脂である(1)又は(2)記載の充填材用シート。
(4)
前記樹脂組成物が、更にアクリル系樹脂を含む(3)記載の充填材用シート。
(5)高さが30μm以上1000μm以下の複数の突起が少なくとも片面側に設けられている(1)~(4)の何れかに記載の充填材用シート。
【符号の説明】
【0058】
1:気流発生部、2:冷却部、3:散水部、5:冷水ピット、21:充填材、21B:背面、21F:前面、21L:左側面、21R:右側面、21T:上面、21U:下面、21s:充填材用シート、21sb:背面、21sf:前面、31:温水ピット、31h:貫通孔、32:温水配管、100:冷却塔、200:被冷却装置、300:冷却水循環経路:400:スケール防止装置、AX:中心軸、B1:前面突起、B2:背面突起、CS:冷却システム、F:気流、H1:前面凹部、H2:背面凹部、OP:隙間、S1:基板部、V:空洞部、W:側壁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6