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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013203
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】窒化物半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/337 20060101AFI20240124BHJP
   H01L 21/338 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
H01L29/80 C
H01L29/80 H
H01L29/80 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096392
(22)【出願日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2022114622
(32)【優先日】2022-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 和也
【テーマコード(参考)】
5F102
【Fターム(参考)】
5F102GB01
5F102GC01
5F102GD04
5F102GJ02
5F102GJ03
5F102GJ04
5F102GJ10
5F102GK04
5F102GK08
5F102GL04
5F102GL07
5F102GM04
5F102GM08
5F102GQ01
5F102GS08
5F102GT03
5F102GT06
5F102HC01
5F102HC11
(57)【要約】
【課題】窒化物半導体装置のオン抵抗の上昇を抑制しつつ、ゲート信頼性を向上させる。
【解決手段】窒化物半導体装置10は、電子走行層16と、電子供給層18と、ゲート層20と、ゲート層20上に形成されたゲート電極22と、第1方向に互いに離隔された第1開口24Aおよび第2開口24Bを有するパッシベーション層24と、ソース電極26と、ドレイン電極28とを備えている。ゲート層20は、リッジ部32と、ソース側延在部34と、ドレイン側延在部36とを含む。ソース側延在部34は、第1ステップ部38と、第1ステップ部38をリッジ部32に接続する第1中間部40とを含む。ドレイン側延在部36は、第2ステップ部42と、第2ステップ部42をリッジ部32に接続する第2中間部44とを含む。第1中間部40は、第2方向と直交する平面において、第2中間部44よりも大きな断面積を有している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体によって構成された電子走行層と、
前記電子走行層上に形成され、前記電子走行層よりも大きなバンドギャップを有する窒化物半導体によって構成された電子供給層と、
前記電子供給層の一部上に形成され、アクセプタ型不純物を含む窒化物半導体によって構成されたゲート層と、
前記ゲート層上に形成されたゲート電極と、
前記電子供給層、前記ゲート層、および前記ゲート電極を覆うとともに、第1方向に互いに離隔された第1開口および第2開口を有するパッシベーション層と、
前記第1開口を介して前記電子供給層に接しているソース電極と、
前記第2開口を介して前記電子供給層に接しているドレイン電極と
を備え、前記ゲート層は、前記第1開口と前記第2開口との間に位置するとともに、平面視で前記第1方向と直交する第2方向に延在しており、前記ゲート電極が形成される上面と、前記電子供給層に接する底面とを含み、
前記ゲート層は、
前記電子供給層に接するとともに、前記ゲート層の前記上面を含むリッジ部と、
前記電子供給層に接するとともに、前記リッジ部から前記第1開口に向かって延びる、前記リッジ部よりも薄いソース側延在部と、
前記電子供給層に接するとともに、前記リッジ部から前記第2開口に向かって延びる、前記リッジ部よりも薄いドレイン側延在部と
を含み、
前記ソース側延在部は、前記ゲート層の前記底面と平行な上面を含む第1ステップ部と、前記第1ステップ部を前記リッジ部に接続する第1中間部とを含み、
前記ドレイン側延在部は、前記ゲート層の前記底面と平行な上面を含む第2ステップ部と、前記第2ステップ部を前記リッジ部に接続する第2中間部とを含み、
前記第1中間部は、前記第2方向と直交する平面において、前記第2中間部よりも大きな断面積を有している、窒化物半導体装置。
【請求項2】
前記リッジ部は、第1側面、および前記第1側面と反対の第2側面を含み、
前記第1中間部は、前記リッジ部の前記第1側面と、前記第1ステップ部の前記上面とを接続する第1中間面を含み、
前記第2中間部は、前記リッジ部の前記第2側面と、前記第2ステップ部の前記上面とを接続する第2中間面を含む、請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項3】
前記第1側面および前記第2側面は平坦である、請求項2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項4】
前記第1中間面および前記第2中間面の各々は、1つまたは複数の段を含み、前記第1中間面の段の数は、前記第2中間面の段の数以上である、請求項2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項5】
前記第1中間面は、前記第1中間部の上面および側面を含み、
前記第1中間部の上面は、前記第1ステップ部の前記上面と平行であり、
前記第1中間部の側面は、前記第1中間部の上面と前記第1ステップ部の上面とを接続し、
前記第2中間面は、前記第2中間部の上面および側面を含み、
前記第2中間部の上面は、前記第2ステップ部の前記上面と平行であり、
前記第2中間部の側面は、前記第2中間部の上面と前記第2ステップ部の上面とを接続している、請求項2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項6】
前記第1中間面は、前記第1ステップ部の前記上面に対して傾斜しており、前記第2中間面は、前記第2ステップ部の前記上面に対して傾斜している、請求項2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項7】
前記第1中間面は、1つまたは複数の段を含み、前記第2中間面は、前記第2ステップ部の前記上面に対して傾斜している、請求項2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項8】
前記第1中間面および前記第2中間面のうちの少なくとも一方は、少なくとも部分的に湾曲している、請求項2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項9】
前記第1中間部の前記第1方向の寸法は、前記第2中間部の前記第1方向の寸法よりも大きい、請求項1~8のうちのいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項10】
前記リッジ部と隣接する位置における前記第1中間部の厚さは、前記リッジ部と隣接する位置における前記第2中間部の厚さよりも大きい、請求項1~8のうちのいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項11】
前記第1中間部の厚さは、前記第1ステップ部の厚さ以上前記リッジ部の厚さ未満であり、前記第2中間部の厚さは、前記第2ステップ部の厚さ以上前記リッジ部の厚さ未満である、請求項1~8のうちのいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項12】
前記リッジ部の厚さは、50nm以上200nm以下であり、
前記第1ステップ部および前記第2ステップ部の厚さは、5nm以上25nm以下である、請求項1~8のうちのいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項13】
前記第1中間部および前記第2中間部の厚さは、10nm~80nmの範囲内である、請求項1~8のうちのいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項14】
前記第1ステップ部は、前記第2ステップ部と同じ厚さを有している、請求項1~8のうちのいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項15】
前記ゲート層は、前記第2開口よりも前記第1開口の近くに位置している、請求項1~8のうちのいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項16】
前記ドレイン側延在部は、前記ソース側延在部よりも大きい前記第1方向の寸法を有している、請求項1~8のうちのいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項17】
前記ソース側延在部は、前記第1方向において、0.05μm以上0.3μm以下の寸法を有し、前記ドレイン側延在部は、前記第1方向において、0.05μm以上0.6μm以下の寸法を有している、請求項1~8のうちのいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項18】
前記第1中間部は、前記第1方向において、5nm以上100nm以下の寸法を有し、前記第2中間部は、前記第1方向において、5nm以上100nm以下の寸法を有している、請求項1~8のうちのいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項19】
前記第1ステップ部は、前記第1開口寄りに位置する前記ゲート層の第1端を含み、前記第2ステップ部は、前記第2開口寄りに位置する前記ゲート層の第2端を含む、請求項1~8のうちのいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項20】
前記電子走行層がGaNであり、
前記電子供給層がAlGa1-xNであり、0<x<0.3であり、
前記ゲート層がMgおよびZnのうちの少なくとも一方を不純物として含むGaNである、請求項1~8のうちのいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、窒化物半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、窒化ガリウム(GaN)等の窒化物半導体を用いた高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor,HEMT)の製品化が進んでいる。例えば、窒化物半導体HEMTは、窒化ガリウム(GaN)層によって構成された電子走行層と、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)層によって構成された電子供給層とを含む。電子走行層と電子供給層とがヘテロ接合を形成することにより、電子走行層と電子供給層との界面付近の電子走行層内に、HEMTのチャネルとして使用される二次元電子ガス(2DEG)が形成される。
【0003】
ノーマリーオフ型HEMTの場合、例えば、アクセプタ型不純物を含む窒化物半導体層(例えばp型GaN層)が、ゲート電極と電子走行層との間にゲート層として設けられる。このp型GaN層に含まれるアクセプタ型不純物の存在により、ゲート電極の直下の領域における電子走行層のチャネルが消失することで、ノーマリーオフ動作が実現される。特許文献1は、このようなノーマリーオフ型のHEMTを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-73506号公報
【0005】
[概要]
窒化物半導体HEMTにおいて、ゲート層内の局所的な電界集中により、ゲート信頼性が低下することがある。
【0006】
本開示の一態様による窒化物半導体装置は、窒化物半導体によって構成された電子走行層と、前記電子走行層上に形成され、前記電子走行層よりも大きなバンドギャップを有する窒化物半導体によって構成された電子供給層と、前記電子供給層の一部上に形成され、アクセプタ型不純物を含む窒化物半導体によって構成されたゲート層と、前記ゲート層上に形成されたゲート電極と、前記電子供給層、前記ゲート層、および前記ゲート電極を覆うとともに、第1方向に互いに離隔された第1開口および第2開口を有するパッシベーション層と、前記第1開口を介して前記電子供給層に接しているソース電極と、前記第2開口を介して前記電子供給層に接しているドレイン電極とを備えている。前記ゲート層は、前記第1開口と前記第2開口との間に位置するとともに、平面視で前記第1方向と直交する第2方向に延在しており、前記ゲート電極が形成される上面と、前記電子供給層に接する底面とを含む。前記ゲート層は、前記電子供給層に接するとともに、前記ゲート層の前記上面を含むリッジ部と、前記電子供給層に接するとともに、前記リッジ部から前記第1開口に向かって延びる、前記リッジ部よりも薄いソース側延在部と、前記電子供給層に接するとともに、前記リッジ部から前記第2開口に向かって延びる、前記リッジ部よりも薄いドレイン側延在部とを含む。前記ソース側延在部は、前記ゲート層の前記底面と平行な上面を含む第1ステップ部と、前記第1ステップ部を前記リッジ部に接続する第1中間部とを含む。前記ドレイン側延在部は、前記ゲート層の前記底面と平行な上面を含む第2ステップ部と、前記第2ステップ部を前記リッジ部に接続する第2中間部とを含む。前記第1中間部は、前記第2方向と直交する平面において、前記第2中間部よりも大きな断面積を有している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態に係る例示的な窒化物半導体装置の概略平面図である。
図2図2は、図1のF2-F2線に沿った窒化物半導体装置の概略断面図である。
図3図3は、図2の部分拡大図である。
図4図4は、図2に示す窒化物半導体装置の例示的な製造工程を示す概略断面図である。
図5図5は、図4に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。
図6図6は、図5に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。
図7図7は、図6に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。
図8図8は、図7に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。
図9図9は、図8に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。
図10図10は、図9に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。
図11図11は、図10に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。
図12図12は、図11に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。
図13図13は、図12に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。
図14図14は、比較例に係る窒化物半導体装置の概略断面図である。
図15図15は、図14に示す窒化物半導体装置の電界分布のシミュレーション結果を示す等電位線図である。
図16図16は、ゲート層の第1変更例を説明するための例示的な窒化物半導体装置の概略断面図である。
図17図17は、ゲート層の第2変更例を説明するための例示的な窒化物半導体装置の概略断面図である。
図18図18は、ゲート層の第3変更例を説明するための例示的な窒化物半導体装置の概略断面図である。
【0008】
[詳細な説明]
以下、添付図面を参照して本開示の窒化物半導体装置のいくつかの実施形態を説明する。なお、説明を簡単かつ明確にするために、図面に示される構成要素は必ずしも一定の縮尺で描かれていない。また、理解を容易にするために、断面図では、ハッチング線が省略されている場合がある。添付の図面は、本開示の実施形態を例示するに過ぎず、本開示を制限するものとみなされるべきではない。
【0009】
以下の詳細な記載は、本開示の例示的な実施形態を具体化する装置、システム、および方法を含む。この詳細な記載は本来説明のためのものに過ぎず、本開示の実施形態またはこのような実施形態の適用および使用を限定することを意図しない。
【0010】
(窒化物半導体装置の概略構造)
図1は、一実施形態に係る例示的な窒化物半導体装置10の概略平面図である。図2は、図1のF2-F2線に沿った窒化物半導体装置10の概略断面図である。図2に示すように、窒化物半導体装置10は、半導体基板12と、半導体基板12上に形成されたバッファ層14とを含んでいてよい。図1および図2に示される互いに直交するXYZ軸のZ軸方向は、半導体基板12の面と直交する方向である。なお、本明細書において使用される「平面視」という用語は、明示的に別段の記載がない限り、Z軸方向に沿って上方から窒化物半導体装置10を視ることをいう。窒化物半導体装置10は、電子走行層16と、電子走行層16上に形成された電子供給層18とをさらに含む。
【0011】
半導体基板12は、シリコン(Si)、シリコンカーバイド(SiC)、GaN、サファイア、または他の基板材料によって形成することができる。一例では、半導体基板12は、Si基板であってよい。半導体基板12の厚さは、例えば200μm以上1500μm以下とすることができる。
【0012】
バッファ層14は、1つまたは複数の窒化物半導体層を含んでいてよい。電子走行層16は、バッファ層14上に形成することができる。バッファ層14は、例えば半導体基板12と電子走行層16との間の熱膨張係数の不整合に起因する半導体基板12の反りや、窒化物半導体装置10におけるクラックの発生を抑制することができる任意の材料によって構成することができる。例えば、バッファ層14は、窒化アルミニウム(AlN)層、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)層、および異なるアルミニウム(Al)組成を有するグレーデッドAlGaN層のうちの少なくとも1つを含むことができる。例えば、バッファ層14は、単一のAlN層、単一のAlGaN層、AlGaN/GaN超格子構造を有する層、AlN/AlGaN超格子構造を有する層、またはAlN/GaN超格子構造を有する層によって構成されていてもよい。
【0013】
一例において、バッファ層14は、半導体基板12上に形成されたAlN層である第1バッファ層と、AlN層上に形成されたAlGaN層である第2バッファ層を含むことができる。第1バッファ層は、例えば、200nmの厚さを有するAlN層であってよく、一方、第2バッファ層は、例えば、300nmの厚さを有するグレーデッドAlGaN層を複数回積層することによって形成されていてもよい。なお、バッファ層14におけるリーク電流を抑制するために、バッファ層14の一部に不純物を導入してバッファ層14を半絶縁性にしてもよい。その場合、不純物は、例えば炭素(C)または鉄(Fe)であり、不純物の濃度は、例えば4×1016cm-3以上とすることができる。
【0014】
電子走行層16は、窒化物半導体によって構成されている。電子走行層16は、例えば、GaN層であってよい。電子走行層16の厚さは、例えば、0.5μm以上2μm以下とすることができる。なお、電子走行層16におけるリーク電流を抑制するために、電子走行層16の一部に不純物を導入することによって、電子走行層16の表層領域以外を半絶縁性にしてもよい。この場合、不純物は、例えばCであってよい。電子走行層16中の不純物濃度は、例えば4×1016cm-3以上とすることができる。すなわち、電子走行層16は、不純物濃度の異なる複数のGaN層、一例では、CドープGaN層と、ノンドープGaN層とを含むことができる。この場合、CドープGaN層は、バッファ層14上に形成されていてよい。CドープGaN層は、0.3μm以上2μm以下の厚さを有することができる。CドープGaN層中のC濃度は、5×1017cm-3以上9×1019cm-3以下とすることができる。ノンドープGaN層は、CドープGaN層上に形成され、0.05μm以上0.4μm以下の厚さを有することができる。ノンドープGaN層は、電子供給層18と接している。一例では、電子走行層16は、厚さ0.4μmのCドープGaN層と、厚さ0.4μmのノンドープGaN層とを含んでいてよい。また、CドープGaN層中のC濃度は約2×1019cm-3であってよい。
【0015】
電子供給層18は、電子走行層16よりも大きなバンドギャップを有する窒化物半導体によって構成されている。電子供給層18は、例えばAlGaN層であってよい。Al組成が大きいほどバンドギャップが大きくなるため、AlGaN層である電子供給層18は、GaN層である電子走行層16よりも大きなバンドギャップを有している。一例では、電子供給層18は、AlGa1-xNによって構成され、xは0.1<x<0.4であり、より好ましくは、0.1<x<0.3である。電子供給層18は、5nm以上20nm以下の厚さを有していてよい。一例では、電子供給層18は、8nm以上の厚さを有していてよい。
【0016】
電子走行層16と電子供給層18とは、互いに異なる格子定数を有する窒化物半導体によって構成されている。したがって、電子走行層16を構成する窒化物半導体(例えば、GaN)と電子供給層18を構成する窒化物半導体(例えば、AlGaN)とは、格子不整合系のヘテロ接合を形成する。電子走行層16および電子供給層18の自発分極と、ヘテロ接合界面付近の結晶歪みに起因するピエゾ分極とによって、ヘテロ接合界面付近における電子走行層16の伝導帯のエネルギーレベルはフェルミ準位よりも低くなる。これにより、電子走行層16と電子供給層18とのヘテロ接合界面に近い位置(例えば、界面から数nm程度の範囲内)において電子走行層16内に二次元電子ガス(2DEG)が広がっている。なお、電子供給層18のAl組成および厚さのうちの少なくとも一方を増加させることにより、電子走行層16に生成される2DEGのシートキャリア密度を増加させることができる。
【0017】
(ゲート層およびゲート電極)
窒化物半導体装置10は、電子供給層18上に形成されたゲート層20と、ゲート層20上に形成されたゲート電極22とをさらに含む。ゲート層20は、電子供給層18の一部の上に形成されていてよい。
【0018】
ゲート層20は、アクセプタ型不純物を含む窒化物半導体によって構成されている。本実施形態では、ゲート層20は、アクセプタ型不純物がドーピングされた窒化ガリウム層(p型GaN層)であってよい。アクセプタ型不純物は、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、および炭素(C)のうちの少なくとも1つを含むことができる。ゲート層20中のアクセプタ型不純物の最大濃度は、7×1018cm-3以上1×1020cm-3以下とすることができる。一例では、ゲート層20は、MgおよびZnのうちの少なくとも一方を不純物として含むGaNであってよい。ゲート層20のさらなる詳細については後述する。
【0019】
ゲート電極22は、1つまたは複数の金属層によって構成されていてよい。一例では、ゲート電極22は、窒化チタン(TiN)層によって構成されていてよい。別の例では、ゲート電極22は、Tiからなる第1金属層と、第1金属層上に設けられたTiNからなる第2金属層とによって構成されていてもよい。ゲート電極22は、ゲート層20とショットキー接合を形成することができる。ゲート電極22は、平面視でゲート層20よりも小さい領域に形成され得る。ゲート電極22の厚さは、例えば、50nm以上200nm以下であってよい。
【0020】
窒化物半導体装置10は、電子供給層18、ゲート層20、およびゲート電極22を覆うパッシベーション層24をさらに含む。パッシベーション層24は、X軸方向に離隔された第1開口24Aおよび第2開口24Bを有している。なお、本明細書では、X軸方向を第1方向、Y軸方向を第2方向とも呼ぶ。したがって、第2方向は、平面視で第1方向と直交している。ゲート層20は、第1開口24Aと第2開口24Bとの間に位置している。より詳細には、ゲート層20は、第1開口24Aと第2開口24Bとの間であって、第2開口24Bよりも第1開口24Aの近くに配置されていてよい。パッシベーション層24は、例えば、窒化シリコン(SiN)、二酸化シリコン(SiO)、酸窒化シリコン(SiON)、アルミナ(Al)、AlN、および酸窒化アルミニウム(AlON)のうちの少なくとも1つによって形成されていてよい。パッシベーション層24の厚さは、例えば、80nm以上150nm以下であってよい。
【0021】
(ソース電極およびドレイン電極)
窒化物半導体装置10は、第1開口24Aを介して電子供給層18に接しているソース電極26と、第2開口24Bを介して電子供給層18に接しているドレイン電極28とをさらに含む。ソース電極26およびドレイン電極28は、1つまたは複数の金属層(例えば、Ti層、TiN層、Al層、AlSiCu層、およびAlCu層などの任意の組み合わせ)によって構成することができる。
【0022】
ソース電極26の少なくとも一部は、第1開口24A内に充填されているので、第1開口24Aを介して電子供給層18直下の2DEGとオーミック接触することができる。同様に、ドレイン電極28の少なくとも一部は、第2開口24B内に充填されているので、第2開口24Bを介して電子供給層18直下の2DEGとオーミック接触することができる。
【0023】
(フィールドプレート電極)
窒化物半導体装置10は、任意選択で、パッシベーション層24上に形成されたフィールドプレート電極30をさらに含んでいてよい。フィールドプレート電極30は、ソース電極26に電気的に接続されている。図2に示すように、フィールドプレート電極30は、ソース電極26と連続していてよい。この場合、フィールドプレート電極30は、ソース電極26と一体的に形成されている。一体的に形成された電極のうち、ソース電極26は、少なくともパッシベーション層24の第1開口24Aに埋設された部分を含んでいてよく、フィールドプレート電極30は、残りの部分を含んでいてよい。
【0024】
フィールドプレート電極30は、ドレイン電極28から離隔されている。フィールドプレート電極30は、平面視でドレイン電極28(第2開口24B)とゲート層20との間に位置する端部30Aを含んでいてよい。
【0025】
フィールドプレート電極30は、ゲート電極22にゲート電圧が印加されていないゼロバイアスの状態でドレイン電極28にドレイン電圧が印加された場合に、ゲート電極22の端部近傍の電界集中を緩和させることができる。
【0026】
(窒化物半導体装置の平面レイアウト)
次に、図1を参照して、窒化物半導体装置10の平面レイアウトの一例について説明する。図1では、ゲート電極22、ソース電極26、ドレイン電極28、およびフィールドプレート電極30は破線で描かれている。また、パッシベーション層24については、第1開口24Aおよび第2開口24Bが実線で描かれており、それ以外の部分は透過的に示されている。
【0027】
図1に示されるように、ゲート層20は、平面視において、ドレイン電極28を取り囲むように形成されていてよい。ゲート層20は、Y軸方向に延びる本体部70と、隣り合う2つの本体部70を接続する接続部72とを含んでいてよい。ゲート層20の本体部70は、パッシベーション層24の第1開口24Aと第2開口24Bとの間に配置されている。
【0028】
ゲート電極22は、平面視において、ゲート層20と重なるように配置されている。したがって、ゲート電極22は、ゲート層20と同様、平面視において、ドレイン電極28を取り囲むように形成されていてよい。ゲート電極22は、Y軸方向に延びる本体部74と、隣り合う2つの本体部74を接続する接続部76とを含んでいてよい。ゲート電極22は、平面視でゲート層20よりも小さい面積を有していてよい。
【0029】
窒化物半導体装置10は、ゲート配線78、ソース配線80、およびドレイン配線82を含んでいてよい。図1では、ゲート配線78、ソース配線80、およびドレイン配線82は、一点鎖線で描かれている。ゲート配線78、ソース配線80、およびドレイン配線82は、Z軸方向においてソース電極26およびドレイン電極28よりも上方に位置している。ゲート配線78は、X軸方向に延びるとともに、ゲート電極22の接続部76の上方に配置されていてよい。ソース配線80およびドレイン配線82は、X軸方向に延びるとともに、それぞれ平面視でソース電極26およびドレイン電極28と交差するように配置されていてよい。一例では、ゲート電極22は、接続部76上に配置されたビア84を介してゲート配線78に電気的に接続されていてよい。ソース電極26は、ビア86を介してソース配線80に電気的に接続されていてよい。ドレイン電極28は、ビア88を介してドレイン配線82に電気的に接続されていてよい。
【0030】
窒化物半導体装置10の平面レイアウトは、図1に示す例に限られない。任意の他の平面レイアウトを窒化物半導体装置10に適用することができる。
(ゲート層の詳細)
再び図2を参照すると、ゲート層20は、ゲート電極22が形成される上面20Aと、電子供給層18に接する底面20Bとを含んでいてよい。ゲート層20は、ゲート電極22が形成される上面20Aを含むリッジ部32と、リッジ部32よりも薄いソース側延在部34およびドレイン側延在部36とを含んでいる。リッジ部32、ソース側延在部34、およびドレイン側延在部36は、いずれも電子供給層18に接している。ソース側延在部34およびドレイン側延在部36は、平面視でリッジ部32から外側に延びている。なお、図1においては、ソース側延在部34およびドレイン側延在部36は省略されている。
【0031】
ソース側延在部34は、リッジ部32から第1開口24Aに向かって延びている。ソース側延在部34は、第1開口24Aまでは達していない。第1開口24Aに埋め込まれたソース電極26とソース側延在部34との間には、パッシベーション層24が配置されている。
【0032】
ドレイン側延在部36は、リッジ部32から第2開口24Bに向かって延びている。ドレイン側延在部36は、第2開口24Bまでは達していない。第2開口24Bに埋め込まれたドレイン電極28とドレイン側延在部36との間には、パッシベーション層24が配置されている。
【0033】
リッジ部32は、ソース側延在部34とドレイン側延在部36との間にあり、ソース側延在部34およびドレイン側延在部36と一体的に形成されている。ソース側延在部34およびドレイン側延在部36の存在により、ゲート層20の底面20Bは、上面20Aよりも大きな面積を有している。図2に示す例では、ドレイン側延在部36は、ソース側延在部34よりも、平面視でリッジ部32の外側に向けて長く延びていてよい。すなわち、ドレイン側延在部36は、ソース側延在部34よりも大きいX軸方向の寸法を有していてよい。ソース側延在部34は、X軸方向において、0.05μm以上0.3μm以下の寸法を有し得る。より好ましくは、ソース側延在部34は、X軸方向において、例えば0.2μm以上0.3μm以下の寸法を有していてよい。一方、ドレイン側延在部36は、X軸方向において、0.05μm以上0.6μm以下の寸法を有し得る。より好ましくは、ドレイン側延在部36は、X軸方向において、例えば0.2μm以上0.6μm以下の寸法を有していてよい。
【0034】
リッジ部32は、ゲート層20の比較的厚い部分に相当する。リッジ部32は、50nm以上200nm以下の厚さを有し得る。より好ましくは、リッジ部32は、例えば、80nm以上150nm以下の厚さを有していてよい。リッジ部32の厚さは、ゲート閾値電圧を含むパラメータを考慮して定めることができる。一例では、リッジ部32は、110nmよりも大きい厚さを有していてよい。
【0035】
ソース側延在部34は、ゲート層20の底面20Bと平行な上面38Aを含む第1ステップ部38と、第1ステップ部38をリッジ部32に接続する第1中間部40とを含む。また、ドレイン側延在部36は、ゲート層20の底面20Bと平行な上面42Aを含む第2ステップ部42と、第2ステップ部42をリッジ部32に接続する第2中間部44とを含む。なお、本明細書において、第1面が第2面と平行であるとは、第1面の法線と第2面の法線とのなす角度が10°以内であることを指すものとする。第1ステップ部38は、第1開口24A寄りに位置するゲート層20の第1端20Cを含み、第2ステップ部42は、第2開口24B寄りに位置するゲート層20の第2端20Dを含む。第1端20Cおよび第2端20Dは、ゲート層20のX軸方向における端である。
【0036】
第1ステップ部38は、略一定の厚さを有していてよい。なお、本明細書において「略一定の厚さ」とは、厚さが製造上のばらつき(例えば、20%)の範囲内にあることを指すものとする。一例では、第1ステップ部38の厚さは、5nm以上25nm以下であってよい。より好ましくは、第1ステップ部38の厚さは、15nm以上20nm以下であってよい。第1中間部40の厚さは、第1ステップ部38の厚さ以上リッジ部32の厚さ未満であってよい。
【0037】
第2ステップ部42は、略一定の厚さを有していてよい。一例では、第2ステップ部42の厚さは、5nm以上25nm以下であってよい。より好ましくは、第2ステップ部42の厚さは、15nm以上20nm以下であってよい。第2中間部44の厚さは、第2ステップ部42の厚さ以上リッジ部32の厚さ未満であってよい。第2ステップ部42は、第1ステップ部38と同じ厚さを有していてよい。
【0038】
図3は、ゲート層20をさらに説明するための、図2の一点鎖線F3で囲まれた部分の拡大図である。リッジ部32は、第1側面32A、および第1側面32Aと反対の第2側面32Bを含む。第1側面32Aおよび第2側面32Bは、平坦であってよい。第1側面32Aおよび第2側面32Bは、X軸方向と交差している。第1側面32Aおよび第2側面32Bは、X軸方向と直交していてもよいし、他の角度で交差していてもよい。
【0039】
第1中間部40は、リッジ部32の第1側面32Aと、第1ステップ部38の上面38Aとを接続する第1中間面40Aを含む。第2中間部44は、リッジ部32の第2側面32Bと、第2ステップ部42の上面42Aとを接続する第2中間面44Aを含む。
【0040】
図3の例では、第1中間面40Aは、1つの段を含んでいてよい。具体的には、第1中間面40Aは、第1中間部40の上面40A1および側面40A2を含んでいてよい。第1中間部40の上面40A1は、第1ステップ部38の上面38Aと平行であってよい。第1中間部40の側面40A2は、第1中間部40の上面40A1と第1ステップ部38の上面38Aとを接続している。第1中間部40の側面40A2は、第1中間部40の上面40A1と第1ステップ部38の上面38Aとの間に垂直に延びていてもよいし、傾斜して延びていてもよい。第1中間部40の上面40A1は、Z軸方向において、ゲート層20の上面20Aと、第1ステップ部38の上面38Aとの間に位置している。
【0041】
同様に、第2中間面44Aは、1つの段を含んでいてよい。具体的には、第2中間面44Aは、第2中間部44の上面44A1および側面44A2を含んでいてよい。第2中間部44の上面44A1は、第2ステップ部42の上面42Aと平行であってよい。第2中間部44の側面44A2は、第2中間部44の上面44A1と第2ステップ部42の上面42Aとを接続している。第2中間部44の側面44A2は、第2中間部44の上面44A1と第2ステップ部42の上面42Aとの間に垂直に延びていてもよいし、傾斜して延びていてもよい。第2中間部44の上面44A1は、Z軸方向において、ゲート層20の上面20Aと、第2ステップ部42の上面42Aとの間に位置している。
【0042】
第1中間部40は、Y軸方向と直交する平面において、第2中間部44よりも大きな断面積を有している。第1中間部40の断面積は、第1中間面40Aとゲート層20の底面20Bとの間の領域(図3においてドットパターンが付された領域)の面積に相当する。第2中間部44の断面積は、第2中間面44Aとゲート層20の底面20Bとの間の領域(図3においてドットパターンが付された領域)の面積に相当する。
【0043】
図3の例では、第1中間部40のX軸方向の寸法D1は、第2中間部44のX軸方向の寸法D2よりも大きくてよい。一例では、第1中間部40は、X軸方向において、5nm以上100nm以下の寸法D1を有していてよく、第2中間部44は、X軸方向において、5nm以上100nm以下の寸法D2を有していてよい。一方、第1中間部40のZ軸方向の寸法D3は、第2中間部44のZ軸方向の寸法D4と同じであってよい。第1中間部40のZ軸方向の寸法D3は、第1中間部40の最も厚い部分の厚さであってよく、第2中間部44のZ軸方向の寸法D4は、第2中間部44の最も厚い部分の厚さであってよい。一例では、第1中間部40および第2中間部44の厚さは、10nm~80nmの範囲内であってよい。なお、第1中間部40のZ軸方向の寸法D3は、リッジ部32と隣接する位置における第1中間部40の厚さであってよく、第2中間部44のZ軸方向の寸法D4は、リッジ部32と隣接する位置における第2中間部44の厚さであってよい。本明細書では、第1中間部40のZ軸方向の寸法D3を、単に第1中間部40の厚さと呼び、第2中間部44のZ軸方向の寸法D4を、単に第2中間部44の厚さと呼ぶことがある。
【0044】
別の例では、寸法D1は寸法D2以下であってもよい。その場合、第1中間部40が第2中間部44よりも大きな断面積を有するように、寸法D3を寸法D4よりも大きくすることができる。
【0045】
(窒化物半導体装置の製造方法)
次に、図2に示す窒化物半導体装置10の製造方法の一例を説明する。図4図13は、窒化物半導体装置10の例示的な製造工程を示す概略断面図である。なお、理解を容易にするために、図4図13では、図2の構成要素と同様な構成要素には同一の符号が付されている。
【0046】
図4に示すように、窒化物半導体装置10の製造方法は、例えばSi基板である半導体基板12上に、バッファ層14、電子走行層16、電子供給層18、窒化ガリウム(GaN)層50、金属層52を順に形成することを含んでいる。バッファ層14、電子走行層16、電子供給層18、およびGaN層50は、有機金属気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition,MOCVD)法を用いてエピタキシャル成長させることができる。金属層52は、一例では、スパッタ法を用いて形成することができる。
【0047】
詳細な図示は省略するが、一例では、バッファ層14は多層バッファ層であってよい。多層バッファ層は、半導体基板12上に形成されたAlN層(第1バッファ層)と、AlN層上に形成されたグレーデッドAlGaN層(第2バッファ層)とを含み得る。グレーデッドAlGaN層は、例えば、AlN層に近い側から順にAl組成を75%、50%、25%とした3つのAlGaN層を積層することによって形成することができる。
【0048】
バッファ層14上に形成される電子走行層16は、GaN層であってよい。電子走行層16上に形成される電子供給層18は、AlGaN層であってよい。したがって、電子供給層18は、電子走行層16よりも大きなバンドギャップを有する窒化物半導体によって構成されている。
【0049】
電子供給層18上に形成されるGaN層50は、アクセプタ型不純物としてマグネシウムを含んでいてよい。電子供給層18上にGaN層50を成長させる間にマグネシウムをドーピングすることによって、アクセプタ型不純物を含むGaN層50を形成することができる。GaN層50にドーピングされるマグネシウムの量は、例えば、成長チャンバ内に導入されるドーピングガス(例えば、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(CpMg))の流量、成長温度などを制御することにより調整することができる。一例では、GaN層50は、1×1018cm-3以上1×1020cm-3未満の濃度のマグネシウムを不純物として含んでいてよい。
【0050】
金属層52は、例えばスパッタ法によってGaN層50上に形成することができる。金属層52は、一例では、TiN層であってよい。
図5は、図4に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。図5に示すように、窒化物半導体装置10の製造方法は、金属層52(図4参照)をリソグラフィおよびエッチングによって選択的に除去して、ゲート電極22を形成することをさらに含む。この工程では、金属層52のうち、ゲート電極22とされるべき部分上にマスク54が形成される。マスク54は、例えば金属層52上に設けたフォトレジストを露光することにより形成することができる。別の例では、マスク54はハードマスクであってもよい。次いで、このマスク54を用いて金属層52をエッチングすることにより、マスク54に覆われていない領域の金属層52が除去される。この結果、マスク54に覆われた領域の金属層52が残り、ゲート電極22を形成することができる。マスク54は、エッチング後に除去される。
【0051】
図6は、図5に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。図6に示すように、窒化物半導体装置10の製造方法は、ゲート電極22の上面および側面と、ゲート電極22の周囲のGaN層50の領域を覆うマスク56を形成することをさらに含む。マスク56に覆われたゲート電極22の周囲のGaN層50の領域は、ゲート電極22を中心としてX軸方向に対称的に広がっている。換言すると、マスク56は、X軸方向においてマスク56の中心がゲート電極22の中心と位置合わせされるように形成されている。マスク56は、レジストマスクであってよい。
【0052】
図7は、図6に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。図7に示すように、窒化物半導体装置10の製造方法は、マスク56を用いてGaN層50をエッチングすることをさらに含む。この結果、マスク56の下に位置するGaN層50はエッチング後も残り、図2を参照して説明したリッジ部32が形成される。マスク56に覆われていないGaN層50の厚さはエッチングにより減少する。例えば、GaN層50の厚さの三分の一に相当する部分がエッチングで除去されてよい。マスク56は、エッチング後に除去される。
【0053】
図8は、図7に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。図8に示すように、窒化物半導体装置10の製造方法は、ゲート電極22の上面および側面と、リッジ部32と、リッジ部32の周囲のGaN層50の領域を覆うマスク58を形成することをさらに含む。マスク58に覆われたリッジ部32の周囲のGaN層50の領域は、リッジ部32を中心としてX軸方向に非対称的に広がっている。換言すると、マスク58は、X軸方向においてマスク58の中心がリッジ部32の中心(ゲート電極22の中心)からずれるように形成されている。
【0054】
図9は、図8に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。図9に示すように、窒化物半導体装置10の製造方法は、マスク58を用いてGaN層50をエッチングすることをさらに含む。この結果、マスク58の下に位置するGaN層50(リッジ部32を含む)はエッチング後も残り、図2を参照して説明した第1中間部40および第2中間部44が形成される。マスク58に覆われていないGaN層50の厚さはエッチングにより減少する。マスク58に覆われていないGaN層50は、図2に示す第1ステップ部38および第2ステップ部42の厚さに相当する厚さを有するようにエッチングされる。マスク58は、エッチング後に除去される。
【0055】
図10は、図9に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。図10に示すように、窒化物半導体装置10の製造方法は、GaN層50(図9参照)をリソグラフィおよびエッチングによって選択的に除去して、第1ステップ部38および第2ステップ部42を形成することをさらに含む。この工程では、ゲート電極22と、リッジ部32と、第1中間部40および第2中間部44と、第1ステップ部38および第2ステップ部42に相当するGaN層50の部分とを覆うマスク60が形成される。次いで、マスク60を利用してGaN層50がパターニングされる。この結果、リッジ部32、ソース側延在部34(第1ステップ部38および第1中間部40)、ドレイン側延在部36(第2ステップ部42および第2中間部44)を含むゲート層20が、電子供給層18上に形成される。マスク60は、エッチング後に除去される。
【0056】
図11は、図10に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。図11に示すように、窒化物半導体装置10の製造方法は、電子供給層18、ゲート層20、およびゲート電極22の露出した表面全体を覆うようにパッシベーション層24を形成することをさらに含む。一例では、パッシベーション層24は、減圧CVD(Low-Pressure Chemical Vapor Deposition,LPCVD)法により形成されたSiN層であってよい。
【0057】
図12は、図11に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。図12に示すように、窒化物半導体装置10の製造方法は、パッシベーション層24をリソグラフィおよびエッチングによって選択的に除去して、第1開口24Aおよび第2開口24Bを形成することをさらに含む。この工程では、第1開口24Aおよび第2開口24Bが形成される領域を除き、パッシベーション層24を覆うマスク62が形成され、次いでマスク62を利用してパッシベーション層24がパターニングされる。この結果、パッシベーション層24を貫通して電子供給層18を露出させる第1開口24Aおよび第2開口24Bが形成される。第1開口24Aおよび第2開口24Bは、ゲート層20が第1開口24Aと第2開口24Bとの間に位置するように形成される。ゲート層20は、第2開口24Bよりも第1開口24Aの近くに位置していてよい。マスク62は、エッチング後に除去される。
【0058】
図13は、図12に示す工程に続く製造工程を示す概略断面図である。図13に示すように、窒化物半導体装置10の製造方法は、パッシベーション層24を覆う金属層64を形成することをさらに含む。金属層64は、第1開口24Aおよび第2開口24Bを充填し、第1開口24Aおよび第2開口24Bを介して電子供給層18と接するように形成される。一例では、金属層64は、Ti層、TiN層、Al層、AlSiCu層、およびAlCu層のうちの少なくとも1つを含んでいてよい。
【0059】
次いで、金属層64をリソグラフィおよびエッチングによって選択的に除去することにより、図2に示すソース電極26、ドレイン電極28、およびフィールドプレート電極30を形成することができる。これにより、図2に示す窒化物半導体装置10を得ることができる。
【0060】
(窒化物半導体装置の作用)
以下、本実施形態の窒化物半導体装置10の作用について説明する。窒化物半導体装置10のゲート電極22に閾値電圧を超える電圧が印加されている場合、電子走行層16に2DEGによるチャネルが形成されてソース-ドレイン間が導通する。一方、ゼロバイアス時には、電子走行層16中、ゲート層20の下に位置する領域の少なくとも一部で2DEGが形成されない。これは、ゲート層20がアクセプタ型不純物を含んでいるために、電子走行層16および電子供給層18のエネルギーレベルが引き上げられ、その結果、2DEGが空乏化されるためである。これにより、窒化物半導体装置10のノーマリーオフ動作が実現される。
【0061】
ゲート層20は、リッジ部32よりも薄いソース側延在部34およびドレイン側延在部36を含んでいる。ゲート電極22に電圧が印加される場合、リッジ部32内の等電位線の一部はソース側延在部34およびドレイン側延在部36を通る。したがって、ソース側延在部34およびドレイン側延在部36が存在しない場合に生じ得る、リッジ部32の端近傍(例えば電子供給層18内)における局所的な電界集中を抑制することができる。
【0062】
なお、ソース側延在部34およびドレイン側延在部36が比較的厚い場合、窒化物半導体装置10のオン抵抗が上昇する。したがって、ソース側延在部34の第1ステップ部38およびドレイン側延在部36の第2ステップ部42は、窒化物半導体装置10の耐圧を改善しつつ、オン抵抗が所望の値となるような任意の厚さ(例えば、20nm以下)を有していてよい。一方、リッジ部32よりも薄いソース側延在部34およびドレイン側延在部36のそれぞれにおける等電位線の密度は、リッジ部32内と比べて高くなり得る。ソース側延在部34における等電位線の密度を低減するため、ソース側延在部34は、第1ステップ部38をリッジ部32に接続する第1中間部40を含んでいる。第1中間部40の厚さは、第1ステップ部38の厚さ以上リッジ部32の厚さ未満であってよい。同様に、ドレイン側延在部36における等電位線の密度を低減するため、ドレイン側延在部36は、第2ステップ部42をリッジ部32に接続する第2中間部44を含んでいる。第2中間部44の厚さは、第2ステップ部42の厚さ以上リッジ部32の厚さ未満であってよい。
【0063】
比較のために、第1中間部40および第2中間部44のような構造を有しないゲート層における等電位線の密度について図14および図15を参照して説明する。図14は、比較例に係る窒化物半導体装置100の概略断面図である。図14において、図3に示す窒化物半導体装置10と同様の構成要素には同じ符号が付されている。また、窒化物半導体装置10と同様な構成要素については詳細な説明を省略する。
【0064】
図14に示す窒化物半導体装置100は、ゲート層102を含む。ゲート層102は、ゲート電極22が形成される上面102Aと、電子供給層18に接する底面102Bとを含む。ゲート層102は、ゲート電極22が形成される上面102Aを含むリッジ部104と、リッジ部104よりも薄いソース側延在部106およびドレイン側延在部108とを含んでいる。リッジ部104、ソース側延在部106、およびドレイン側延在部108は、いずれも電子供給層18に接している。ソース側延在部106およびドレイン側延在部108は、平面視でリッジ部104から外側に延びている。
【0065】
ソース側延在部106は、ゲート層102の底面102Bと平行な上面106Aを含む。ドレイン側延在部108は、ゲート層102の底面102Bと平行な上面108Aを含む。ソース側延在部106は、図3に示す第1中間部40のような構造を有しておらず、図3に示す第1ステップ部38に相当する構造を有している。ドレイン側延在部108は、図3に示す第2中間部44のような構造を有しておらず、図3に示す第2ステップ部42に相当する構造を有している。
【0066】
図15は、図14に示す窒化物半導体装置100の電界分布のシミュレーション結果を示す等電位線図である。このシミュレーション結果は、ゲート電極22に所定のゲート電圧(例えば10V)を印加した場合のリッジ部104およびソース側延在部106の一部の電界分布を示している。ソース側延在部106は、リッジ部104よりも薄いため、図15に示すように、ソース側延在部106内において等電位線の密度が比較的高い。図示は省略するが、これはドレイン側延在部108(図14参照)においても同様である。
【0067】
これに対し、本実施形態では、図3に示すように、ソース側延在部34は、第1中間部40を含み、ドレイン側延在部36は、第2中間部44を含んでいる。したがって、ソース側延在部34およびドレイン側延在部36(特にリッジ部32近傍)における等電位線の密度を低減することができる。
【0068】
上述のように、ソース側延在部34およびドレイン側延在部36の厚さは、窒化物半導体装置10のオン抵抗に影響する。したがって、Y軸方向と直交する平面における第1中間部40および第2中間部44の断面積は、窒化物半導体装置10のゲート信頼性とオン抵抗とのトレードオフを考慮して設定することができる。
【0069】
窒化物半導体装置10において、ゲート電極22が配置されるゲート層20は、ドレイン電極28が電子供給層18に接触する第2開口24Bよりも、ソース電極26が電子供給層18に接触する第1開口24Aの近くに配置されている。したがって、ゲート電極22に電圧を印加する場合、ドレイン電極28が配置される第2開口24Bよりも、ソース電極26が配置される第1開口24Aに近い領域においてより電界が強くなり得る。したがって、特にソース側延在部34における等電位線の密度を低減して、窒化物半導体装置10のゲート信頼性を向上させること(例えば、ゲートリーク電流の低減、電圧ストレス耐性の向上など)が効果的である。
【0070】
この点、本実施形態の窒化物半導体装置10では、ソース側延在部34の第1中間部40は、Y軸方向と直交する平面において、ドレイン側延在部36の第2中間部44よりも大きな断面積を有している。これにより、ドレイン側延在部36の第2中間部44の存在による窒化物半導体装置10のオン抵抗の上昇を抑制しつつ、ソース側延在部34の第1中間部40における等電位線の密度を低減することができる。したがって、本実施形態の窒化物半導体装置10によれば、オン抵抗の上昇を抑制しつつ、ゲート信頼性を向上させることができる。
【0071】
本実施形態の窒化物半導体装置10は、以下の利点を有する。
(1)ソース側延在部34の第1中間部40は、Y軸方向(第2方向)と直交する平面において、ドレイン側延在部36の第2中間部44よりも大きな断面積を有している。これにより、ドレイン側延在部36の第2中間部44の存在による窒化物半導体装置10のオン抵抗の上昇を抑制しつつ、ソース側延在部34の第1中間部40における等電位線の密度を低減することができる。この結果、窒化物半導体装置10において、オン抵抗の上昇を抑制しつつ、ゲート信頼性を向上させることができる。
【0072】
(2)第1中間部40の厚さは、第1ステップ部38の厚さ以上リッジ部32の厚さ未満であり、第2中間部44の厚さは、第2ステップ部42の厚さ以上リッジ部32の厚さ未満であってよい。各中間部40,44における等電位線の密度がリッジ部32内よりも低減されることにより、窒化物半導体装置10のゲート信頼性を向上させることができる。
【0073】
(3)ゲート層20は、第2開口24Bよりも第1開口24Aの近くに位置していてよい。これにより、ゲート電極22とドレイン電極28との距離を相対的に大きくすることができるため、比較的大きな電圧がかかりやすいゲート・ドレイン間の絶縁破壊を抑制することができる。
【0074】
(4)ドレイン側延在部36は、ソース側延在部34よりも大きいX軸方向(第1方向)の寸法を有していてよい。これにより、比較的大きな電界が印加され得るゲート電極22とドレイン電極28との間の領域におけるゲートリーク電流の発生を抑制することができる。
【0075】
[ゲート層の変更例]
(第1変更例)
図16は、ゲート層の第1変更例を説明するための例示的な窒化物半導体装置200の概略断面図である。図16において、図2および図3に示す窒化物半導体装置10と同様の構成要素には同じ符号が付されている。また、窒化物半導体装置10と同様な構成要素については詳細な説明を省略する。
【0076】
図16に示すように、窒化物半導体装置200は、図3に示すゲート層20に代えて、電子供給層18上に形成されたゲート層202を含む。ゲート層202を構成する材料はゲート層20と同様であってよい。ゲート層202は、第1開口24Aと第2開口24Bとの間に位置している。より詳細には、ゲート層202は、第1開口24Aと第2開口24Bとの間であって、第2開口24Bよりも第1開口24Aの近くに配置されていてよい。
【0077】
ゲート層202は、ゲート電極22が形成される上面202Aと、電子供給層18に接する底面202Bとを含んでいてよい。ゲート層202は、ゲート電極22が形成される上面202Aを含むリッジ部204と、リッジ部204よりも薄いソース側延在部206およびドレイン側延在部208とを含んでいる。リッジ部204、ソース側延在部206、およびドレイン側延在部208は、いずれも電子供給層18に接している。ソース側延在部206およびドレイン側延在部208は、平面視でリッジ部204から外側に延びている。
【0078】
ソース側延在部206は、リッジ部204から第1開口24Aに向かって延びている。ソース側延在部206は、第1開口24Aまでは達していない。第1開口24Aに埋め込まれたソース電極26とソース側延在部206との間には、パッシベーション層24が配置されている。
【0079】
ドレイン側延在部208は、リッジ部204から第2開口24Bに向かって延びている。ドレイン側延在部208は、第2開口24Bまでは達していない。第2開口24Bに埋め込まれたドレイン電極28とドレイン側延在部208との間には、パッシベーション層24が配置されている。
【0080】
リッジ部204は、ソース側延在部206とドレイン側延在部208との間にあり、ソース側延在部206およびドレイン側延在部208と一体的に形成されている。ソース側延在部206およびドレイン側延在部208の存在により、ゲート層202の底面202Bは、上面202Aよりも大きな面積を有している。図16に示す例では、ドレイン側延在部208は、ソース側延在部206よりも、平面視でリッジ部204の外側に向けて長く延びていてよい。すなわち、ドレイン側延在部208は、ソース側延在部206よりも大きいX軸方向の寸法を有していてよい。ソース側延在部206は、X軸方向において、0.05μm以上0.3μm以下の寸法を有し得る。より好ましくは、ソース側延在部206は、X軸方向において、例えば、0.2μm以上0.3μm以下の寸法を有していてよい。一方、ドレイン側延在部208は、X軸方向において、0.05μm以上0.6μm以下の寸法を有し得る。より好ましくは、ドレイン側延在部208は、X軸方向において、例えば、0.2μm以上0.6μm以下の寸法を有していてよい。
【0081】
リッジ部204は、ゲート層202の比較的厚い部分に相当する。リッジ部204は、50nm以上200nm以下の厚さを有し得る。より好ましくは、リッジ部204は、例えば、80nm以上150nm以下の厚さを有していてよい。リッジ部204の厚さは、ゲート閾値電圧を含むパラメータを考慮して定めることができる。一例では、リッジ部204は、110nmよりも大きい厚さを有していてよい。
【0082】
ソース側延在部206は、ゲート層202の底面202Bと平行な上面210Aを含む第1ステップ部210と、第1ステップ部210をリッジ部204に接続する第1中間部212とを含む。また、ドレイン側延在部208は、ゲート層202の底面202Bと平行な上面214Aを含む第2ステップ部214と、第2ステップ部214をリッジ部204に接続する第2中間部216とを含む。第1ステップ部210は、第1開口24A寄りに位置するゲート層202の第1端202Cを含み、第2ステップ部214は、第2開口24B寄りに位置するゲート層202の第2端202Dを含む。第1端202Cおよび第2端202Dは、ゲート層202のX軸方向における端である。
【0083】
第1ステップ部210および第2ステップ部214は、図3に示す第1ステップ部38および第2ステップ部42とそれぞれ同様の寸法を有していてよい。第1中間部212は、リッジ部204から遠ざかるほど漸減する厚さを有していてよい。同様に、第2中間部216は、リッジ部204から遠ざかるほど漸減する厚さを有していてよい。
【0084】
リッジ部204は、第1側面204A、および第1側面204Aと反対の第2側面204Bを含む。第1側面204Aおよび第2側面204Bは、平坦であってよい。第1側面204Aおよび第2側面204Bは、X軸方向と交差している。第1側面204Aおよび第2側面204Bは、X軸方向と直交していてもよいし、他の角度で交差していてもよい。
【0085】
第1中間部212は、リッジ部204の第1側面204Aと、第1ステップ部210の上面210Aとを接続する第1中間面212Aを含む。第2中間部216は、リッジ部204の第2側面204Bと、第2ステップ部214の上面214Aとを接続する第2中間面216Aを含む。
【0086】
図16の例では、第1中間面212Aは、傾斜面または湾曲面であってよい。すなわち、第1中間面212Aは、第1ステップ部210の上面210Aに対して傾斜していてよい。第1中間面212Aは、リッジ部204の第1側面204Aに対して傾斜していてよい。第1中間面212Aは、湾曲していてもよいし、平坦であってもよい。第1中間面212Aは、少なくとも部分的に湾曲していてよい。
【0087】
同様に、第2中間面216Aは、傾斜面または湾曲面であってよい。すなわち、第2中間面216Aは、第2ステップ部214の上面214Aに対して傾斜していてよい。第2中間面216Aは、リッジ部204の第2側面204Bに対して傾斜していてよい。第2中間面216Aは、湾曲していてもよいし、平坦であってもよい。第2中間面216Aは、少なくとも部分的に湾曲していてよい。一例では、第1中間面212Aおよび第2中間面216Aのうちの少なくとも一方が、少なくとも部分的に湾曲していてよい。
【0088】
第1中間部212は、Y軸方向と直交する平面において、第2中間部216よりも大きな断面積を有している。第1中間部212の断面積は、第1中間面212Aとゲート層202の底面202Bとの間の領域(図16においてドットパターンが付された領域)の面積に相当する。第2中間部216の断面積は、第2中間面216Aとゲート層202の底面202Bとの間の領域(図16においてドットパターンが付された領域)の面積に相当する。
【0089】
図16の例では、第1中間部212のX軸方向の寸法D1は、第2中間部216のX軸方向の寸法D2よりも大きい。一例では、第1中間部212は、X軸方向において、5nm以上100nm以下の寸法D1を有していてよく、第2中間部216は、X軸方向において、5nm以上100nm以下の寸法D2を有していてよい。また、第1中間部212のZ軸方向の寸法D3は、第2中間部216のZ軸方向の寸法D4よりも大きい。第1中間部212のZ軸方向の寸法D3は、第1中間部212の最も厚い部分の厚さであってよく、第2中間部216のZ軸方向の寸法D4は、第2中間部216の最も厚い部分の厚さであってよい。一例では、第1中間部212および第2中間部216の厚さは、10nm~80nmの範囲内であってよい。なお、第1中間部212のZ軸方向の寸法D3は、リッジ部204と隣接する位置における第1中間部212の厚さであってよく、第2中間部216のZ軸方向の寸法D4は、リッジ部204と隣接する位置における第2中間部216の厚さであってよい。本明細書では、第1中間部212のZ軸方向の寸法D3を、単に第1中間部212の厚さと呼び、第2中間部216のZ軸方向の寸法D4を、単に第2中間部216の厚さと呼ぶことがある。
【0090】
別の例では、寸法D1は寸法D2以下であってもよい。その場合、第1中間部212が第2中間部216よりも大きな断面積を有するように、寸法D3を寸法D4よりも大きくすることができる。
【0091】
さらに別の例では、寸法D3は寸法D4以下であってもよい。その場合、第1中間部212が第2中間部216よりも大きな断面積を有するように、寸法D1を寸法D2よりも大きくすることができる。
【0092】
このように、窒化物半導体装置200において、第1中間部212は、Y軸方向と直交する平面において、第2中間部216よりも大きな断面積を有している。これにより、ドレイン側延在部208の第2中間部216の存在による窒化物半導体装置200のオン抵抗の上昇を抑制しつつ、ソース側延在部206の第1中間部212における等電位線の密度を低減することができる。したがって、第1変更例の窒化物半導体装置200によれば、オン抵抗の上昇を抑制しつつ、ゲート信頼性を向上させることができる。
【0093】
(第2変更例)
図17は、ゲート層の第2変更例を説明するための例示的な窒化物半導体装置300の概略断面図である。図17において、図2および図3に示す窒化物半導体装置10と同様の構成要素には同じ符号が付されている。また、窒化物半導体装置10と同様な構成要素については詳細な説明を省略する。
【0094】
図17に示すように、窒化物半導体装置300は、図3に示すゲート層20に代えて、電子供給層18上に形成されたゲート層302を含む。ゲート層302を構成する材料はゲート層20と同様であってよい。ゲート層302は、第1開口24Aと第2開口24Bとの間に位置している。より詳細には、ゲート層302は、第1開口24Aと第2開口24Bとの間であって、第2開口24Bよりも第1開口24Aの近くに配置されていてよい。
【0095】
ゲート層302は、ゲート電極22が形成される上面302Aと、電子供給層18に接する底面302Bとを含んでいてよい。ゲート層302は、ゲート電極22が形成される上面302Aを含むリッジ部304と、リッジ部304よりも薄いソース側延在部306およびドレイン側延在部308とを含んでいる。リッジ部304、ソース側延在部306、およびドレイン側延在部308は、いずれも電子供給層18に接している。ソース側延在部306およびドレイン側延在部308は、平面視でリッジ部304から外側に延びている。
【0096】
ソース側延在部306は、リッジ部304から第1開口24Aに向かって延びている。ソース側延在部306は、第1開口24Aまでは達していない。第1開口24Aに埋め込まれたソース電極26とソース側延在部306との間には、パッシベーション層24が配置されている。
【0097】
ドレイン側延在部308は、リッジ部304から第2開口24Bに向かって延びている。ドレイン側延在部308は、第2開口24Bまでは達していない。第2開口24Bに埋め込まれたドレイン電極28とドレイン側延在部308との間には、パッシベーション層24が配置されている。
【0098】
リッジ部304は、ソース側延在部306とドレイン側延在部308との間にあり、ソース側延在部306およびドレイン側延在部308と一体的に形成されている。ソース側延在部306およびドレイン側延在部308の存在により、ゲート層302の底面302Bは、上面302Aよりも大きな面積を有している。図17に示す例では、ドレイン側延在部308は、ソース側延在部306よりも、平面視でリッジ部304の外側に向けて長く延びていてよい。すなわち、ドレイン側延在部308は、ソース側延在部306よりも大きいX軸方向の寸法を有していてよい。ソース側延在部306は、X軸方向において、0.05μm以上0.3μm以下の寸法を有し得る。より好ましくは、ソース側延在部306は、X軸方向において、例えば、0.2μm以上0.3μm以下の寸法を有していてよい。一方、ドレイン側延在部308は、X軸方向において、0.05μm以上0.6μm以下の寸法を有し得る。より好ましくは、ドレイン側延在部308は、X軸方向において、例えば、0.2μm以上0.6μm以下の寸法を有し得る。
【0099】
リッジ部304は、ゲート層302の比較的厚い部分に相当する。リッジ部304は、50nm以上200nm以下の厚さを有し得る。より好ましくは、リッジ部304は、例えば、80nm以上150nm以下の厚さを有していてよい。リッジ部304の厚さは、ゲート閾値電圧を含むパラメータを考慮して定めることができる。一例では、リッジ部304は、110nmよりも大きい厚さを有していてよい。
【0100】
ソース側延在部306は、ゲート層302の底面302Bと平行な上面310Aを含む第1ステップ部310と、第1ステップ部310をリッジ部304に接続する第1中間部312とを含む。また、ドレイン側延在部308は、ゲート層302の底面302Bと平行な上面314Aを含む第2ステップ部314と、第2ステップ部314をリッジ部304に接続する第2中間部316とを含む。第1ステップ部310は、第1開口24A寄りに位置するゲート層302の第1端302Cを含み、第2ステップ部314は、第2開口24B寄りに位置するゲート層302の第2端302Dを含む。第1端302Cおよび第2端302Dは、ゲート層302のX軸方向における端である。
【0101】
第1ステップ部310および第2ステップ部314は、図3に示す第1ステップ部38および第2ステップ部42とそれぞれ同様の寸法を有していてよい。
リッジ部304は、第1側面304A、および第1側面304Aと反対の第2側面304Bを含む。第1側面304Aおよび第2側面304Bは、平坦であってよい。第1側面304Aおよび第2側面304Bは、X軸方向と交差している。第1側面304Aおよび第2側面304Bは、X軸方向と直交していてもよいし、他の角度で交差していてもよい。
【0102】
第1中間部312は、リッジ部304の第1側面304Aと、第1ステップ部310の上面310Aとを接続する第1中間面312Aを含む。第2中間部316は、リッジ部304の第2側面304Bと、第2ステップ部314の上面314Aとを接続する第2中間面316Aを含む。
【0103】
図17の例では、第1中間面312Aは、2つの段を含んでいてよい。具体的には、第1中間面312Aは、第1中間部312の第1上面312A1、第1側面312A2、第2上面312A3、および第2側面312A4を含んでいてよい。第1中間部312の第1上面312A1および第2上面312A3は、第1ステップ部310の上面310Aと平行であってよい。第1中間部312の第1側面312A2は、第1中間部312の第1上面312A1と第2上面312A3とを接続している。第1中間部312の第2側面312A4は、第1中間部312の第2上面312A3と第1ステップ部310の上面310Aとを接続している。第1中間部312の第1側面312A2は、第1中間部312の第1上面312A1と第2上面312A3との間に垂直に延びていてもよいし、傾斜して延びていてもよい。第1中間部312の第2側面312A4は、第1中間部312の第2上面312A3と第1ステップ部310の上面310Aとの間に垂直に延びていてもよいし、傾斜して延びていてもよい。第1中間部312の第1上面312A1は、Z軸方向において、ゲート層302の上面302Aと、第1中間部312の第2上面312A3との間に位置している。第1中間部312の第2上面312A3は、Z軸方向において、第1中間部312の第2上面312A3と、第1ステップ部310の上面310Aとの間に位置している。
【0104】
一方、第2中間面316Aは、1つの段を含んでいてよい。具体的には、第2中間面316Aは、第2中間部316の上面316A1および側面316A2を含んでいてよい。第2中間部316の上面316A1は、第2ステップ部314の上面314Aと平行であってよい。第2中間部316の側面316A2は、第2中間部316の上面316A1と第2ステップ部314の上面314Aとを接続している。第2中間部316の側面316A2は、第2中間部316の上面316A1と第2ステップ部314の上面314Aとの間に垂直に延びていてもよいし、傾斜して延びていてもよい。第2中間部316の上面316A1は、Z軸方向において、ゲート層302の上面302Aと、第2ステップ部314の上面314Aとの間に位置している。
【0105】
第1中間部312は、Y軸方向と直交する平面において、第2中間部316よりも大きな断面積を有している。第1中間部312の断面積は、第1中間面312Aとゲート層302の底面302Bとの間の領域(図17においてドットパターンが付された領域)の面積に相当する。第2中間部316の断面積は、第2中間面316Aとゲート層302の底面302Bとの間の領域(図17においてドットパターンが付された領域)の面積に相当する。
【0106】
図17の例では、第1中間部312のX軸方向の寸法D1は、第2中間部316のX軸方向の寸法D2よりも大きい。一例では、第1中間部312は、X軸方向において、5nm以上100nm以下の寸法D1を有していてよく、第2中間部316は、X軸方向において、5nm以上100nm以下の寸法D2を有していてよい。また、第1中間部312のZ軸方向の寸法D3は、第2中間部316のZ軸方向の寸法D4よりも大きい。第1中間部312のZ軸方向の寸法D3は、第1中間部312の最も厚い部分の厚さであってよく、第2中間部316のZ軸方向の寸法D4は、第2中間部316の最も厚い部分の厚さであってよい。一例では、第1中間部312および第2中間部316の厚さは、10nm~80nmの範囲内であってよい。なお、第1中間部312のZ軸方向の寸法D3は、リッジ部304と隣接する位置における第1中間部312の厚さであってよく、第2中間部316のZ軸方向の寸法D4は、リッジ部304と隣接する位置における第2中間部316の厚さであってよい。本明細書では、第1中間部312のZ軸方向の寸法D3を、単に第1中間部312の厚さと呼び、第2中間部316のZ軸方向の寸法D4を、単に第2中間部316の厚さと呼ぶことがある。
【0107】
別の例では、寸法D1は寸法D2以下であってもよい。その場合、第1中間部312が第2中間部316よりも大きな断面積を有するように、寸法D3を寸法D4よりも大きくすることができる。
【0108】
さらに別の例では、寸法D3は寸法D4以下であってもよい。その場合、第1中間部312が第2中間部316よりも大きな断面積を有するように、寸法D1を寸法D2よりも大きくすることができる。
【0109】
このように、窒化物半導体装置300において、第1中間部312は、Y軸方向と直交する平面において、第2中間部316よりも大きな断面積を有している。これにより、ドレイン側延在部308の第2中間部316の存在による窒化物半導体装置300のオン抵抗の上昇を抑制しつつ、ソース側延在部306の第1中間部312における等電位線の密度を低減することができる。したがって、第2変更例の窒化物半導体装置300によれば、オン抵抗の上昇を抑制しつつ、ゲート信頼性を向上させることができる。
【0110】
(第3変更例)
図18は、ゲート層の第3変更例を説明するための例示的な窒化物半導体装置400の概略断面図である。図18において、図2および図3に示す窒化物半導体装置10と同様の構成要素には同じ符号が付されている。また、窒化物半導体装置10と同様な構成要素については詳細な説明を省略する。
【0111】
図18に示すように、窒化物半導体装置400は、図3に示すゲート層20に代えて、電子供給層18上に形成されたゲート層402を含む。ゲート層402を構成する材料はゲート層20と同様であってよい。ゲート層402は、第1開口24Aと第2開口24Bとの間に位置している。より詳細には、ゲート層402は、第1開口24Aと第2開口24Bとの間であって、第2開口24Bよりも第1開口24Aの近くに配置されていてよい。
【0112】
ゲート層402は、ゲート電極22が形成される上面402Aと、電子供給層18に接する底面402Bとを含んでいてよい。ゲート層402は、ゲート電極22が形成される上面402Aを含むリッジ部404と、リッジ部404よりも薄いソース側延在部406およびドレイン側延在部408とを含んでいる。リッジ部404、ソース側延在部406、およびドレイン側延在部408は、いずれも電子供給層18に接している。ソース側延在部406およびドレイン側延在部408は、平面視でリッジ部404から外側に延びている。
【0113】
ソース側延在部406は、リッジ部404から第1開口24Aに向かって延びている。ソース側延在部406は、第1開口24Aまでは達していない。第1開口24Aに埋め込まれたソース電極26とソース側延在部406との間には、パッシベーション層24が配置されている。
【0114】
ドレイン側延在部408は、リッジ部404から第2開口24Bに向かって延びている。ドレイン側延在部408は、第2開口24Bまでは達していない。第2開口24Bに埋め込まれたドレイン電極28とドレイン側延在部408との間には、パッシベーション層24が配置されている。
【0115】
リッジ部404は、ソース側延在部406とドレイン側延在部408との間にあり、ソース側延在部406およびドレイン側延在部408と一体的に形成されている。ソース側延在部406およびドレイン側延在部408の存在により、ゲート層402の底面402Bは、上面402Aよりも大きな面積を有している。図18に示す例では、ドレイン側延在部408は、ソース側延在部406よりも、平面視でリッジ部404の外側に向けて長く延びていてよい。すなわち、ドレイン側延在部408は、ソース側延在部406よりも大きいX軸方向の寸法を有していてよい。ソース側延在部406は、X軸方向において、0.05μm以上0.3μm以下の寸法を有し得る。より好ましくは、ソース側延在部406は、X軸方向において、例えば、0.2μm以上0.3μm以下の寸法を有していてよい。一方、ドレイン側延在部408は、X軸方向において、0.05μm以上0.6μm以下の寸法を有し得る。より好ましくは、ドレイン側延在部408は、X軸方向において、例えば、0.2μm以上0.6μm以下の寸法を有していてよい。
【0116】
リッジ部404は、ゲート層402の比較的厚い部分に相当する。リッジ部404は、50nm以上200nm以下の厚さを有し得る。より好ましくは、リッジ部404は、例えば、80nm以上150nm以下の厚さを有していてよい。リッジ部404の厚さは、ゲート閾値電圧を含むパラメータを考慮して定めることができる。一例では、リッジ部404は、110nmよりも大きい厚さを有していてよい。
【0117】
ソース側延在部406は、ゲート層402の底面402Bと平行な上面410Aを含む第1ステップ部410と、第1ステップ部410をリッジ部404に接続する第1中間部412とを含む。また、ドレイン側延在部408は、ゲート層402の底面402Bと平行な上面414Aを含む第2ステップ部414と、第2ステップ部414をリッジ部404に接続する第2中間部416とを含む。第1ステップ部410は、第1開口24A寄りに位置するゲート層402の第1端402Cを含み、第2ステップ部414は、第2開口24B寄りに位置するゲート層402の第2端402Dを含む。第1端402Cおよび第2端402Dは、ゲート層402のX軸方向における端である。
【0118】
第1ステップ部410および第2ステップ部414は、図3に示す第1ステップ部38および第2ステップ部42とそれぞれ同様の寸法を有していてよい。
リッジ部404は、第1側面404A、および第1側面404Aと反対の第2側面404Bを含む。第1側面404Aおよび第2側面404Bは、平坦であってよい。第1側面404Aおよび第2側面404Bは、X軸方向と交差している。第1側面404Aおよび第2側面404Bは、X軸方向と直交していてもよいし、他の角度で交差していてもよい。
【0119】
第1中間部412は、リッジ部404の第1側面404Aと、第1ステップ部410の上面410Aとを接続する第1中間面412Aを含む。第2中間部416は、リッジ部404の第2側面404Bと、第2ステップ部414の上面414Aとを接続する第2中間面416Aを含む。
【0120】
図18の例では、第1中間面412Aは、1つの段を含んでいてよい。具体的には、第1中間面412Aは、第1中間部412の上面412A1および側面412A2を含んでいてよい。第1中間部412の上面412A1は、第1ステップ部410の上面410Aと平行であってよい。第1中間部412の側面412A2は、第1中間部412の上面412A1と第1ステップ部410の上面410Aとを接続している。第1中間部412の側面412A2は、第1中間部412の上面412A1と第1ステップ部410の上面410Aとの間に垂直に延びていてもよいし、傾斜して延びていてもよい。第1中間部412の上面412A1は、Z軸方向において、ゲート層402の上面402Aと、第1ステップ部410の上面410Aとの間に位置している。
【0121】
一方、第2中間面416Aは、傾斜面または湾曲面であってよい。すなわち、第2中間面416Aは、リッジ部404の第2側面404Bおよび第2ステップ部414の上面414Aに対して傾斜していてよい。第2中間面416Aは、湾曲していてもよいし、平坦であってもよい。第2中間面416Aは、少なくとも部分的に湾曲していてよい。
【0122】
第1中間部412は、Y軸方向と直交する平面において、第2中間部416よりも大きな断面積を有している。第1中間部412の断面積は、第1中間面412Aとゲート層402の底面402Bとの間の領域(図18においてドットパターンが付された領域)の面積に相当する。第2中間部416の断面積は、第2中間面416Aとゲート層402の底面402Bとの間の領域(図18においてドットパターンが付された領域)の面積に相当する。
【0123】
図18の例では、第1中間部412のX軸方向の寸法D1は、第2中間部416のX軸方向の寸法D2よりも大きい。一例では、第1中間部412は、X軸方向において、5nm以上100nm以下の寸法D1を有していてよく、第2中間部416は、X軸方向において、5nm以上100nm以下の寸法D2を有していてよい。また、第1中間部412のZ軸方向の寸法D3は、第2中間部416のZ軸方向の寸法D4よりも大きい。第1中間部412のZ軸方向の寸法D3は、第1中間部412の最も厚い部分の厚さであってよく、第2中間部416のZ軸方向の寸法D4は、第2中間部416の最も厚い部分の厚さであってよい。一例では、第1中間部412および第2中間部416の厚さは、10nm~80nmの範囲内であってよい。なお、第1中間部412のZ軸方向の寸法D3は、リッジ部404と隣接する位置における第1中間部412の厚さであってよく、第2中間部416のZ軸方向の寸法D4は、リッジ部404と隣接する位置における第2中間部416の厚さであってよい。本明細書では、第1中間部412のZ軸方向の寸法D3を、単に第1中間部412の厚さと呼び、第2中間部416のZ軸方向の寸法D4を、単に第2中間部416の厚さと呼ぶことがある。
【0124】
別の例では、寸法D1は寸法D2以下であってもよい。このような場合であっても、第1中間面412Aが1つの段を含む第1中間部412は、第2中間面416Aが段を含まない第2中間部416よりも大きな断面積を有し得る。
【0125】
さらに別の例では、寸法D3は寸法D4以下であってもよい。このような場合であっても、第1中間面412Aが1つの段を含む第1中間部412は、第2中間面416Aが段を含まない第2中間部416よりも大きな断面積を有し得る。
【0126】
このように、窒化物半導体装置400において、第1中間部412は、Y軸方向と直交する平面において、第2中間部416よりも大きな断面積を有している。これにより、ドレイン側延在部408の第2中間部416の存在による窒化物半導体装置400のオン抵抗の上昇を抑制しつつ、ソース側延在部406の第1中間部412における等電位線の密度を低減することができる。したがって、第3変更例の窒化物半導体装置400によれば、オン抵抗の上昇を抑制しつつ、ゲート信頼性を向上させることができる。
【0127】
[他の変更例]
上記実施形態および変更例の各々は、以下のように変更して実施することができる。
図3に示す窒化物半導体装置10において、第1中間部40の側面40A2および第2中間部44の側面44A2のうちの少なくとも一方が、少なくとも部分的に湾曲していてもよい。
【0128】
・窒化物半導体装置300において、第1中間面312Aおよび第2中間面316Aの各々に含まれる段の数は、図17に示す例に限られない。第1中間面312Aおよび第2中間面316Aの各々は、1つまたは複数の段を含み、第1中間面312Aの段の数は、第2中間面316Aの段の数以上であってよい。例えば、第1中間面312Aが3つの段を含み、第2中間面316Aが3つ以下の段を含んでいてもよい。
【0129】
図18に示す窒化物半導体装置400において、第1中間面412Aは、複数の段を含んでいてもよい。
・所望の形状のゲート層を形成するための製造工程は上記のものに限られない。一例では、ゲート層として、化学的安定性の異なる複数の窒化物半導体材料を用いることにより非対称な形状を得ることもできる。
【0130】
本明細書に記載の様々な例のうちの1つまたは複数を、技術的に矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
本明細書において、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」とは、「Aのみ、または、Bのみ、または、AおよびBの両方」を意味するものとして理解されるべきである。
【0131】
本開示で使用される「~上に」という用語は、文脈によって明らかにそうでないことが示されない限り、「~上に」と「~の上方に」の意味を含む。したがって、「第1層が第2層上に形成される」という表現は、或る実施形態では第1層が第2層に接触して第2層上に直接配置され得るが、他の実施形態では第1層が第2層に接触することなく第2層の上方に配置され得ることが意図される。すなわち、「~上に」という用語は、第1層と第2層との間に他の層が形成される構造を排除しない。例えば、電子供給層18が電子走行層16上に形成されている構造は、2DEGを安定して形成するために電子供給層18と電子走行層16との間に中間層が位置している構造を含んでいてもよい。
【0132】
本開示で使用される「垂直」、「水平」、「上方」、「下方」、「上」、「下」、「前方」、「後方」、「縦」、「横」、「左」、「右」、「前」、「後」などの方向を示す用語は、説明および図示された装置の特定の向きに依存する。本開示においては、様々な代替的な向きを想定することができ、したがって、これらの方向を示す用語は、狭義に解釈されるべきではない。
【0133】
例えば、本開示で使用されるZ軸方向は必ずしも鉛直方向である必要はなく、鉛直方向に完全に一致している必要もない。したがって、本開示による種々の構造(例えば、図2に示される構造)は、本明細書で説明されるZ軸方向の「上」および「下」が鉛直方向の「上」および「下」であることに限定されない。例えば、X軸方向が鉛直方向であってもよく、またはY軸方向が鉛直方向であってもよい。
【0134】
[付記]
本開示から把握できる技術的思想を以下に記載する。なお、限定する意図ではなく理解の補助のために、付記に記載される構成要素には、実施形態中の対応する構成要素の参照符号が付されている。参照符号は、理解の補助のために例として示すものであり、各付記に記載された構成要素は、参照符号で示される構成要素に限定されるべきではない。
【0135】
(付記1)
窒化物半導体によって構成された電子走行層(16)と、
前記電子走行層(16)上に形成され、前記電子走行層(16)よりも大きなバンドギャップを有する窒化物半導体によって構成された電子供給層(18)と、
前記電子供給層(18)の一部上に形成され、アクセプタ型不純物を含む窒化物半導体によって構成されたゲート層(20;202;302;402)と、
前記ゲート層(20;202;302;402)上に形成されたゲート電極(22)と、
前記電子供給層(18)、前記ゲート層(20;202;302;402)、および前記ゲート電極(22)を覆うとともに、第1方向に互いに離隔された第1開口(24A)および第2開口(24B)を有するパッシベーション層(24)と、
前記第1開口(24A)を介して前記電子供給層(18)に接しているソース電極(26)と、
前記第2開口(24B)を介して前記電子供給層(18)に接しているドレイン電極(28)と
を備え、前記ゲート層(20;202;302;402)は、前記第1開口(24A)と前記第2開口(24B)との間に位置するとともに、平面視で前記第1方向と直交する第2方向に延在しており、前記ゲート電極(22)が形成される上面(20A;202A;302A;402A)と、前記電子供給層(18)に接する底面(20B;202B;302B;402B)とを含み、
前記ゲート層(20;202;302;402)は、
前記電子供給層(18)に接するとともに、前記ゲート層(20;202;302;402)の前記上面(20A;202A;302A;402A)を含むリッジ部(32;204;304;404)と、
前記電子供給層(18)に接するとともに、前記リッジ部(32;204;304;404)から前記第1開口(24A)に向かって延びる、前記リッジ部(32;204;304;404)よりも薄いソース側延在部(34;206;306;406)と、
前記電子供給層(18)に接するとともに、前記リッジ部(32;204;304;404)から前記第2開口(24B)に向かって延びる、前記リッジ部(32;204;304;404)よりも薄いドレイン側延在部(36;208;308;408)と
を含み、
前記ソース側延在部(34;206;306;406)は、前記ゲート層(20;202;302;402)の前記底面(20B;202B;302B;402B)と平行な上面(38A;210A;310A;410A)を含む第1ステップ部(38;210;310;410)と、前記第1ステップ部(38;210;310;410)を前記リッジ部(32;204;304;404)に接続する第1中間部(40;212;312;412)とを含み、
前記ドレイン側延在部(36;208;308;408)は、前記ゲート層(20;202;302;402)の前記底面(20B;202B;302B;402B)と平行な上面(42A;214A;314A;414A)を含む第2ステップ部(42;214;314;414)と、前記第2ステップ部(42;214;314;414)を前記リッジ部(32;204;304;404)に接続する第2中間部(44;216;316;416)とを含み、
前記第1中間部(40;212;312;412)は、前記第2方向と直交する平面において、前記第2中間部(44;216;316;416)よりも大きな断面積を有している、窒化物半導体装置。
【0136】
(付記2)
前記リッジ部(32;204;304;404)は、第1側面(32A;204A;304A;404A)、および前記第1側面(32A;204A;304A;404A)と反対の第2側面(32B;204B;304B;404B)を含み、
前記第1中間部(40;212;312;412)は、前記リッジ部(32;204;304;404)の前記第1側面(32A;204A;304A;404A)と、前記第1ステップ部(38;210;310;410)の前記上面(38A;210A;310A;410A)とを接続する第1中間面(40A;212A;312A;412A)を含み、
前記第2中間部(44;216;316;416)は、前記リッジ部(32;204;304;404)の前記第2側面(32B;204B;304B;404B)と、前記第2ステップ部(42;214;314;414)の前記上面(42A;214A;314A;414A)とを接続する第2中間面(44A;216A;316A;416A)を含む、付記1に記載の窒化物半導体装置。
【0137】
(付記3)
前記第1側面(32A;204A;304A;404A)および前記第2側面(32B;204B;304B;404B)は平坦である、付記2に記載の窒化物半導体装置。
【0138】
(付記4)
前記第1中間面(40A;312A)および前記第2中間面(44A;316A)の各々は、1つまたは複数の段を含み、前記第1中間面(40A;312A)の段の数は、前記第2中間面(44A;316A)の段の数以上である、付記2または3に記載の窒化物半導体装置。
【0139】
(付記5)
前記第1中間面(40A)は、前記第1中間部(40)の上面(40A1)および側面(40A2)を含み、
前記第1中間部(40)の上面(40A1)は、前記第1ステップ部(38)の前記上面(38A)と平行であり、
前記第1中間部(40)の側面(40A2)は、前記第1中間部(40)の上面(40A1)と前記第1ステップ部(38)の上面(38A)とを接続し、
前記第2中間面(44A)は、前記第2中間部(44)の上面(44A1)および側面(44A2)を含み、
前記第2中間部(44)の上面(44A1)は、前記第2ステップ部(42)の前記上面(42A)と平行であり、
前記第2中間部(44)の側面(44A2)は、前記第2中間部(44)の上面(44A1)と前記第2ステップ部(42)の上面(42A)とを接続している、付記2または3に記載の窒化物半導体装置。
【0140】
(付記6)
前記第1中間面(212A)は、前記第1ステップ部(210)の前記上面(210A)に対して傾斜しており、前記第2中間面(216A)は、前記第2ステップ部(214)の前記上面(214A)に対して傾斜している、付記2または3に記載の窒化物半導体装置。
【0141】
(付記7)
前記第1中間面(412A)は、1つまたは複数の段を含み、前記第2中間面(416A)は、前記第2ステップ部(414)の前記上面(414A)に対して傾斜している、付記2または3に記載の窒化物半導体装置。
【0142】
(付記8)
前記第1中間面(40A;212A;312A;412A)および前記第2中間面(44A;216A;316A;416A)のうちの少なくとも一方は、少なくとも部分的に湾曲している、付記2または3に記載の窒化物半導体装置。
【0143】
(付記9)
前記第1中間部(40;212;312;412)の前記第1方向の寸法(D1)は、前記第2中間部(44;216;316;416)の前記第1方向の寸法(D2)よりも大きい、付記1~8のうちのいずれか1つに記載の窒化物半導体装置。
【0144】
(付記10)
前記リッジ部(32;204;304;404)と隣接する位置における前記第1中間部(40;212;312;412)の厚さ(D3)は、前記リッジ部(32;204;304;404)と隣接する位置における前記第2中間部(44;216;316;416)の厚さ(D4)よりも大きい、付記1~9のうちのいずれか1つに記載の窒化物半導体装置。
【0145】
(付記11)
前記第1中間部(40;212;312;412)の厚さは、前記第1ステップ部(38;210;310;410)の厚さ以上前記リッジ部(32;204;304;404)の厚さ未満であり、前記第2中間部(44;216;316;416)の厚さは、前記第2ステップ部(42;214;314;414)の厚さ以上前記リッジ部(32;204;304;404)の厚さ未満である、付記1~10のうちのいずれか1つに記載の窒化物半導体装置。
【0146】
(付記12)
前記リッジ部(32;204;304;404)の厚さは、50nm以上200nm以下であり、
前記第1ステップ部(38;210;310;410)および前記第2ステップ部(42;214;314;414)の厚さは、5nm以上25nm以下である、付記1~11のうちのいずれか1つに記載の窒化物半導体装置。
【0147】
(付記13)
前記第1中間部(40;212;312;412)および前記第2中間部(44;216;316;416)の厚さは、10nm~80nmの範囲内である、付記1~12のうちのいずれか1つに記載の窒化物半導体装置。
【0148】
(付記14)
前記第1ステップ部(38;210;310;410)は、前記第2ステップ部(42;214;314;414)と同じ厚さを有している、付記1~13のうちのいずれか1つに記載の窒化物半導体装置。
【0149】
(付記15)
前記ゲート層(20;202;302;402)は、前記第2開口(24B)よりも前記第1開口(24A)の近くに位置している、付記1~14のうちのいずれか1つに記載の窒化物半導体装置。
【0150】
(付記16)
前記ドレイン側延在部(36;208;308;408)は、前記ソース側延在部(34;206;306;406)よりも大きい前記第1方向の寸法を有している、付記1~15のうちのいずれか1つに記載の窒化物半導体装置。
【0151】
(付記17)
前記ソース側延在部(34;206;306;406)は、前記第1方向において、0.05μm以上0.3μm以下の寸法を有し、前記ドレイン側延在部(36;208;308;408)は、前記第1方向において、0.05μm以上0.6μm以下の寸法を有している、付記1~16のうちのいずれか1つに記載の窒化物半導体装置。
【0152】
(付記18)
前記第1中間部(40;212;312;412)は、前記第1方向において、5nm以上100nm以下の寸法(D1)を有し、前記第2中間部(44;216;316;416)は、前記第1方向において、5nm以上100nm以下の寸法(D2)を有している、付記1~17のうちのいずれか1つに記載の窒化物半導体装置。
【0153】
(付記19)
前記第1ステップ部(38;210;310;410)は、前記第1開口(24A)寄りに位置する前記ゲート層(20;202;302;402)の第1端(20C;202C;302C;402C)を含み、前記第2ステップ部(42;214;314;414)は、前記第2開口(24B)寄りに位置する前記ゲート層(20;202;302;402)の第2端(20D;202D;302D;402D)を含む、付記1~18のうちのいずれか1つに記載の窒化物半導体装置。
【0154】
(付記20)
前記電子走行層(16)がGaNであり、
前記電子供給層(18)がAlGa1-xNであり、0<x<0.3であり、
前記ゲート層(20;202;302;402)がMgおよびZnのうちの少なくとも一方を不純物として含むGaNである、付記1~19のうちのいずれか1つに記載の窒化物半導体装置。
【0155】
以上の説明は単に例示である。本開示の技術を説明する目的のために列挙された構成要素および方法(製造プロセス)以外に、より多くの考えられる組み合わせおよび置換が可能であることを当業者は認識し得る。本開示は、特許請求の範囲を含む本開示の範囲内に含まれるすべての代替、変形、および変更を包含することが意図される。
【符号の説明】
【0156】
10,100,200,300,400…窒化物半導体装置
12…半導体基板
14…バッファ層
16…電子走行層
18…電子供給層
20,102,202,302,402…ゲート層
22…ゲート電極
24…パッシベーション層
24A…第1開口
24B…第2開口
26…ソース電極
28…ドレイン電極
30…フィールドプレート電極
32,104,204,304,404…リッジ部
34,106,206,306,406…ソース側延在部
36,108,208,308,408…ドレイン側延在部
38,210,310,410…第1ステップ部
40,212,312,412…第1中間部
40A,212A,312A,412A…第1中間面
42,214,314,414…第2ステップ部
44,216,316,416…第2中間部
44A,216A,316A,416A…第2中間面
50…窒化ガリウム層
52,64…金属層
54,56,58,60,62…マスク
70,74…本体部
72,76…接続部
78…ゲート配線
80…ソース配線
82…ドレイン配線
84,86,88…ビア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18