(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132032
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】磁気部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20240920BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20240920BHJP
H01F 10/16 20060101ALI20240920BHJP
H01F 41/18 20060101ALI20240920BHJP
H01F 10/20 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F17/00 B
H01F10/16
H01F41/18
H01F10/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042654
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(72)【発明者】
【氏名】石戸 亮祐
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 達也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼村 陽太
(72)【発明者】
【氏名】中川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】藤▲崎▼ 啓介
【テーマコード(参考)】
5E049
5E070
【Fターム(参考)】
5E049AA01
5E049AA04
5E049AB04
5E049GC01
5E070AA01
5E070AB03
5E070BB01
5E070CB12
(57)【要約】
【課題】磁気的性質を改善することが可能な磁気部品を提供する。
【解決手段】磁気部品A10は、コイル部2と、磁性体3とを備える。コイル部2は、導電体を含む。磁性体3は、コイル部2を覆う。磁性体3は、第1磁性方向d1と第2磁性方向d2とを有する。第1磁性方向d1と第2磁性方向d2とは、磁気的性質の大きさが互いに異なる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電体を含むコイル部と、
前記コイル部を覆う磁性体と、
を備え、
前記磁性体は、第1磁性方向と第2磁性方向とを有し、
前記第1磁性方向と前記第2磁性方向とは、磁気的性質の大きさが互いに異なる、磁気部品。
【請求項2】
前記磁性体は、前記コイル部が発生させる磁束の方向に前記第1磁性方向が沿うように配置される、請求項1に記載の磁気部品。
【請求項3】
前記磁気的性質は、透磁率であり、
前記第1磁性方向の透磁率は、前記第2磁性方向の透磁率よりも高い、請求項2に記載の磁気部品。
【請求項4】
前記磁気的性質は、ヒステリシス損失であり、
前記第1磁性方向のヒステリシス損失は、前記第2磁性方向のヒステリシス損失よりも小さい、請求項2に記載の磁気部品。
【請求項5】
前記磁性体は、前記コイル部に流れる電流の方向に前記第1磁性方向が直交するように配置される、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の磁気部品。
【請求項6】
前記磁性体は、互いに分離する複数の磁性部を含み、
前記複数の磁性部の各々は、前記第1磁性方向および前記第2磁性方向を有し、
前記コイル部を仮想的に複数の領域に分けたとき、当該複数の領域の各々に対して、前記複数の磁性部がそれぞれ個別に配置される、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の磁気部品。
【請求項7】
前記コイル部は、前記磁気部品の厚さ方向に直交する平面に沿って形成された導体パターンを含み、
前記第1磁性方向および前記第2磁性方向の各々は、前記厚さ方向に直交する、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の磁気部品。
【請求項8】
前記導体パターンは、前記厚さ方向に見てスパイラル状に巻回される、請求項7に記載の磁気部品。
【請求項9】
前記導体パターンに接する絶縁被膜をさらに備え、
前記絶縁被膜は、前記導体パターンの配線方向に見て前記導体パターンを覆う、請求項7に記載の磁気部品。
【請求項10】
前記磁性体は、前記絶縁被膜を覆う、請求項9に記載の磁気部品。
【請求項11】
前記磁性体は、少なくとも1つの第1磁性膜と少なくとも1つの第2磁性膜とを含み、
前記少なくとも1つの第1磁性膜と前記少なくとも1つの第2磁性膜とは、前記厚さ方向において前記導体パターンを挟んで互いに反対側に配置される、請求項7に記載の磁気部品。
【請求項12】
前記少なくとも1つの第1磁性膜と前記少なくとも1つの第2磁性膜とは、互いに離れている、請求項11に記載の磁気部品。
【請求項13】
前記導体パターンは、第1環状部と、前記第1環状部に繋がる第2環状部とを含み、
前記磁性体は、前記第1環状部と前記第2環状部との間に介在する第3磁性膜を含む、請求項11に記載の磁気部品。
【請求項14】
前記第3磁性膜は、少なくとも1つの第2磁性膜に繋がる、請求項13に記載の磁気部品。
【請求項15】
前記第3磁性膜と前記少なくとも1つの第1磁性膜と間に介在する絶縁層をさらに備える、請求項13に記載の磁気部品。
【請求項16】
前記少なくとも1つの第1磁性膜は、複数の第1磁性膜を含み、
前記複数の第1磁性膜は、前記絶縁層を隔てて配置される、請求項15に記載の磁気部品。
【請求項17】
前記磁性体は、コバルト鉄ボロン、あるいは、フェライトを含む、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の磁気部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁気部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器および電気自動車などには、磁気部品が搭載されることがある。このような磁気部品には、たとえばインダクタがある。特許文献1には、従来のインダクタの一例が開示されている。特許文献1に記載のインダクタは、基板とコイル導体とを備える。コイル導体は、基板に形成されている。コイル導体は、平面視螺旋状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のインダクタは、Q値(Quality Factor)を向上させたものである。しかしながら、インダクタは、その用途に合わせて、Q値と異なる磁気的性質の改善が求められる。このような磁気的性質には、たとえばインダクタンス値およびヒステリシス損失などがある。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みて考え出されたものであり、その目的は、磁気的性質を改善することが可能な磁気部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によって提供される磁気部品は、導電体を含むコイル部と、前記コイル部を覆う磁性体と、を備え、前記磁性体は、第1磁性方向と第2磁性方向とを有し、前記第1磁性方向と前記第2磁性方向とは、磁気的性質の大きさが互いに異なる。
【発明の効果】
【0007】
本開示の磁気部品によれば、磁気的性質の改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態にかかる磁気部品を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態にかかる磁気部品を示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図2の平面図において、一対の外部端子と一対の絶縁層の一方とを省略した図である。
【
図4】
図4は、
図3の平面図において、磁性体の一部(第2磁性膜)を省略した図である。
【
図5】
図5は、
図4の平面図において、コイル部の一部(一対の接続配線部)と、絶縁体の一部(絶縁被膜)と、磁性体の一部(第3磁性膜)とを省略した図である。
【
図6】
図6は、
図5の平面図において、絶縁体の一部(絶縁層)を省略し、コイル部の一部(導体パターン)を想像線で示した図である。
【
図7】
図7は、磁性体(複数の磁性部)の磁性方向と、コイル部の導体パターンとの関係を示す平面模式図である。
【
図8】
図8は、
図3のVIII-VIII線に沿う断面図である。
【
図11】
図11は、第1実施形態にかかる磁気部品の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図12】
図12は、第1実施形態にかかる磁気部品の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図13】
図13は、第1実施形態にかかる磁気部品の製造方法の一工程を示す平面図である。
【
図14】
図14は、第1実施形態にかかる磁気部品の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図15】
図15は、第1実施形態にかかる磁気部品の製造方法の一工程を示す平面図である。
【
図16】
図16は、第1実施形態にかかる磁気部品の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図17】
図17は、第1実施形態にかかる磁気部品の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図18】
図18は、第1実施形態にかかる磁気部品の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図19】
図19は、第1実施形態にかかる磁気部品の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図20】
図20は、第1実施形態にかかる磁気部品の製造方法の一工程を示す平面図である。
【
図21】
図21は、第1実施形態にかかる磁気部品の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図22】
図22は、第1実施形態にかかる磁気部品の製造方法の一工程を示す平面図である。
【
図23】
図23は、第1実施形態にかかる磁気部品の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図24】
図24は、第1実施形態にかかる磁気部品の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図25】
図25は、第1実施形態の第1変形例にかかる磁気部品を示す平面図である。
【
図26】
図26は、第1実施形態の第2変形例にかかる磁気部品を示す断面図である。
【
図27】
図27は、第1実施形態の第3変形例にかかる磁気部品を示す断面図である。
【
図28】
図28は、第1実施形態の第4変形例にかかる磁気部品を示す平面図である。
【
図29】
図29は、第1実施形態の第4変形例にかかる磁気部品を示す断面図であって、
図28のXXIX-XXIX線に沿う断面図である。
【
図30】
図30は、第2実施形態にかかる磁気部品を示す平面図である。
【
図31】
図31は、第2実施形態にかかる磁気部品を示す断面図であって、
図30のXXXI-XXXI線に沿う断面図である。
【
図32】
図32は、第2実施形態の変形例にかかる磁気部品を示す断面図である。
【
図33】
図33は、第3実施形態にかかる磁気部品を示す断面図である。
【
図34】
図34は、第4実施形態にかかる磁気部品を示す平面図である。
【
図35】
図35は、第4実施形態にかかる磁気部品を示す断面図であって、
図34のXXXV-XXXV線に沿う断面図である。
【
図36】
図36は、変形例にかかる磁気部品を示す平面模式図である。
【
図37】
図37は、変形例にかかる磁気部品を示す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の磁気部品の好ましい実施の形態について、図面を参照して、以下に説明する。以下では、同一あるいは類似の構成要素に、同じ符号を付して、重複する説明を省略する。本開示における「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、単にラベルとして用いたものであり、必ずしもそれらの対象物に順列を付することを意図していない。
【0010】
本開示において、「ある物Aがある物Bに形成されている」および「ある物Aがある物B(の)上に形成されている」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに直接形成されていること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物を介在させつつ、ある物Aがある物Bに形成されていること」を含む。同様に、「ある物Aがある物Bに配置されている」および「ある物Aがある物B(の)上に配置されている」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに直接配置されていること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物を介在させつつ、ある物Aがある物Bに配置されていること」を含む。同様に、「ある物Aがある物B(の)上に位置している」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに接して、ある物Aがある物B(の)上に位置していること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物が介在しつつ、ある物Aがある物B(の)上に位置していること」を含む。また、「ある方向に見てある物Aがある物Bに重なる」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bのすべてに重なること」、および、「ある物Aがある物Bの一部に重なること」を含む。また、「ある物A(の材料)がある材料Cを含む」とは、「ある物A(の材料)がある材料Cからなる場合」、および、「ある物A(の材料)の主成分がある材料Cである場合」を含む。
【0011】
図1~
図10は、第1実施形態にかかる磁気部品A10を示している。磁気部品A10は、たとえばインダクタである。図示された例では、磁気部品A10は、表面実装されるチップ型である。磁気部品A10は、たとえば厚さ方向zに見て、矩形である。磁気部品A10は、支持基板1、コイル部2、磁性体3、絶縁体4、一対の外部端子51,52および一対の絶縁層61,62を備える。
【0012】
説明の便宜上、磁気部品A10の厚さ方向を「厚さ方向z」という。以下の説明では、厚さ方向zの一方を上方といい、他方を下方ということがある。なお、「上」、「下」、「上方」、「下方」、「上面」および「下面」などの記載は、厚さ方向zにおける各部品等の相対的位置関係を示すものであり、必ずしも重力方向との関係を規定する用語ではない。また、「平面視」とは、厚さ方向zに見たときをいう。厚さ方向zに対して直交する方向を「第1方向x」という。厚さ方向zおよび第1方向xに直交する方向を「第2方向y」という。
【0013】
支持基板1は、
図8~
図10に示すように、コイル部2および磁性体3などを支持する。支持基板1は、たとえば半導体基板である。当該半導体基板は、半導体材料としてのケイ素(Si)を含む。支持基板1は、半導体基板ではなく絶縁性樹脂基板、ガラス基板あるいはセラミックス基板であってもよい。支持基板1の平面視形状は、何ら限定されないが、図示された例では矩形である。
【0014】
図8~
図10に示すように、支持基板1は、基板主面10aおよび基板裏面10bを有する。基板主面10aおよび基板裏面10bは、厚さ方向zに離間する。基板主面10aおよび基板裏面10bは、厚さ方向zにおいて互いに反対側を向く。基板裏面10bは、磁気部品A10の外部に露出する。基板主面10aは、絶縁層61に覆われている。
【0015】
コイル部2は、導電体材料を含む。当該導電体材料は、何ら限定されないが、たとえば銅または銅合金である。コイル部2は、導体パターン21および一対の接続配線部22を含む。
【0016】
導体パターン21は、厚さ方向zに直交する平面に沿って形成されている。
図4および
図5などに示すように、磁気部品A10では、導体パターン21は、厚さ方向zに見て、スパイラル状に巻回されている。導体パターン21の巻回軸は、厚さ方向zに平行である。
【0017】
磁気部品A10では、
図4~
図6に示すように、導体パターン21は、平面視において、仮想的に4つの領域2A~2Dに分ける。4つの領域2A~2Dは、導体パターン21の配線方向に基づいて、分けられている。2つの領域2A,2Cにおいては、導体パターン21の配線方向は、第2方向yに平行である。領域2Aにおいて電流が流れる方向と、領域2Cにおいて電流が流れる方向とは、互いに反対である。2つの領域2B,2Dにおいては、導体パターン21の配線方向は、第1方向xに平行である。領域2Bにおいて電流が流れる方向と、領域2Dにおいて電流が流れる方向とは、互いに反対である。よって、図示された例では、4つの領域2A~2Dは、平面視矩形状の支持基板1の2つの対角線によって区画される4つの領域に相当する。このため、4つの領域2A~2Dはそれぞれ、厚さ方向zに見て略均等な大きさの三角形である。2つの領域2A,2Cは、第1方向xに離間し、第2方向yに沿う軸を対称軸とする線対称であり、2つの領域2B,2Dは、第2方向yに離間し、第1方向xに沿う軸を対称軸とする線対称である。
【0018】
図5に示すように、導体パターン21は、複数の環状部210および一対の接続端211,212を含む。導体パターン21は、接続端211から複数の環状部210を介して接続端212に至る。
【0019】
複数の環状部210は、隣接する環状部210同士が、互いに繋がっている。図示された例では、複数の環状部210の各々は、厚さ方向zに見て矩形環状である。この例と異なり、各環状部210は、厚さ方向zに見て、円環状であってもよいし、楕円環状であってもよい。環状部210の数は、図示された例に限定されず、環状部210の数が多い程、インダクタンス値を向上できる。
【0020】
一対の接続端211,212はそれぞれ、導体パターン21の巻回方向における端部である。接続端211は、厚さ方向zに見て、導体パターン21の巻回軸に近い方の端部であり、接続端212は、厚さ方向zに見て、導体パターン21の巻回軸に遠い方の端部である。
【0021】
一対の接続配線部22,23はそれぞれ、
図9および
図10に示すように、磁性体3の一部(後述の第2磁性膜32)および絶縁層62を厚さ方向zに貫通する。接続配線部22は、導体パターン21の接続端211と外部端子51とを電気的に接続する。接続配線部23は、導体パターン21の接続端212と外部端子52とを電気的に接続する。なお、一対の接続配線部22,23の各側面は、図示しない絶縁膜で覆われていてもよい。
【0022】
磁性体3は、
図8~
図10に示すように、コイル部2を覆う。磁性体3の構成材料は、何ら限定されないが、たとえばCoFeB(コバルト鉄ボロン)を含む。磁性体3は、CoFeBの代わりに、フェライトを含んでいてもよい。当該フェライトは、たとえばCo(コバルト)、Ni(ニッケル)あるいはMn(マンガン)を含む。磁性体3の形成方法は、何ら限定されないが、たとえばスパッタリング法が用いられる。
【0023】
磁性体3は、磁気異方性を有する。磁気異方性とは、磁性体3において、互いに異なる2つの方向で磁気的性質の大きさが互いに異なる特性のことである。以下では、先述の2つの方向を、「第1磁性方向d1」、「第2磁性方向d2」という。つまり、磁性体3は、第1磁性方向d1および第2磁性方向d2を有し、第1磁性方向d1と第2磁性方向d2とで、磁気的性質の大きさが異なる。本実施形態では、当該磁気的性質は、透磁率であり、磁性体3において、第1磁性方向d1の透磁率は、第2磁性方向d2の透磁率よりも高い。磁性体3は、コイル部2の通電によって発生する磁束の向きに第1磁性方向d1が沿うように配置される。本実施形態では、磁性体3は、複数の磁性部3A~3Dを含む。
【0024】
複数の磁性部3A~3Dは、互いに分離する。複数の磁性部3A~3Dの各々は、第1磁性方向d1および第2磁性方向d2を有する。本実施形態では、
図7に示すように、各磁性部3A~3Dにおいて、第1磁性方向d1と第2磁性方向d2とは、互いに直交するが、これらは、互いに同じ方向にならない範囲で直交していなくてもよい。各磁性部3A~3Dにおいて、第1磁性方向d1および第2磁性方向d2はそれぞれ、厚さ方向zに直交する。図示された導体パターン21の形状では、コイル部2(導体パターン21)によって発生する磁束の向きは、複数の領域2A~2Dによってそれぞれ異なることから、各領域2A~2Dにおける磁束の向きに対応させるように、磁性体3を、複数の磁性部3A~3Dに分割している。複数の磁性部3A~3Dは、複数の領域2A~2Dにそれぞれ個別に配置される。よって、導体パターン21を4つの領域2A~2Dに分けた時、磁性体3は、4つの磁性部3A~3Dを含む。磁性部3Aは、領域2Aに配置され、磁性部3Bは、領域2Bに配置され、磁性部3Cは、領域2Cに配置され、磁性部3Dは、領域2Dに配置される。2つの磁性部3A,3Cはそれぞれ、2つの磁性部3B,3Dの各々に接し、2つの磁性部3B,3Dはそれぞれ、2つの磁性部3A,3Cの各々に接する。
【0025】
各磁性部3A~3Dは、導体パターン21(コイル部2)に流れる電流の方向に第1磁性方向d1が直交するように配置されている。なお、導体パターン21に流れる電流の方向は、導体パターン21の配線方向に対応する。各領域2A,2Cにおける導体パターン21の配線方向は、第2方向yに平行であるから、
図7に示すように、2つの磁性部3A,3Cの各々では、第1磁性方向d1が第1方向xに沿い且つ第2磁性方向d2が第2方向yに沿う。また、各領域2B,2Dにおける導体パターン21の配線方向は、第1方向xに平行であるから、
図7に示すように、2つの磁性部3B,3Dの各々では、第1磁性方向d1が第2方向yに沿い且つ第2磁性方向d2が第1方向xに沿う。
【0026】
磁性体3は、複数の第1磁性膜31、複数の第2磁性膜32および複数の第3磁性膜33を含む。複数の磁性部3A~3Dはそれぞれ、複数の第1磁性膜31、複数の第2磁性膜32および複数の第3磁性膜33をそれぞれ1つずつ含んでいる。
【0027】
複数の第1磁性膜31は、導体パターン21に対して、厚さ方向zの下方に配置される。複数の第1磁性膜31は、互いに接する。
【0028】
複数の第2磁性膜32は、導体パターン21に対して、厚さ方向zの上方に配置される。複数の第2磁性膜32は、互いに接する。複数の第2磁性膜32は、複数の第1磁性膜31から厚さ方向zに離間する。
【0029】
複数の第3磁性膜33は、導体パターン21のうちの隣り合う2つの環状部210同士の間に介在する。複数の第3磁性膜33は、厚さ方向zにおいて導体パターン21と同じ位置に形成される。
図8および
図9に示すように、複数の第3磁性膜33は、複数の第2磁性膜32に繋がり、複数の第1磁性膜31から離間する。厚さ方向zにおいて、各第3磁性膜33と各第1磁性膜31との間には、絶縁体4の一部(後述の絶縁層41)が配置される。
【0030】
絶縁体4は、導体パターン21と磁性体3とを絶縁する。
図8~
図10に示すように、絶縁体4は、磁性体3に覆われる。絶縁体4は、たとえば酸化ケイ素(SiO
2)を含む。絶縁体4は、絶縁層41および絶縁被膜42を含む。
【0031】
絶縁層41は、
図8~
図10に示すように、厚さ方向zにおいて、導体パターン21と複数の第1磁性膜31との間に形成される。また、絶縁層41は、厚さ方向zにおいて、各第1磁性膜31と各第3磁性膜33との間に配置される。
【0032】
絶縁被膜42は、絶縁層41に繋がる。
図8~
図10に示すように、絶縁被膜42は、導体パターン21の配線方向に見て、導体パターン21を覆う。図示された例では、上記領域2A,2Cでは、導体パターン21の配線方向は第2方向yに平行であるので、絶縁被膜42は、第2方向yに見た導体パターン21の周縁を覆う。上記領域2B,2Dでは、導体パターン21の配線方向は第1方向xに平行であるので、絶縁被膜42は、第1方向xに見た導体パターン21の周縁を覆う。絶縁層41と絶縁被膜42とにより、導体パターン21の配線方向に見て、導体パターン21の全周が覆われる。絶縁被膜42は、磁性体3に覆われる。
【0033】
絶縁層61は、支持基板1の基板主面10aを覆う。絶縁層61は、厚さ方向zにおいて、支持基板1と第1磁性膜31との間に配置される。絶縁層61は、第1磁性膜31と支持基板1とを絶縁する。各第1磁性膜31と支持基板1との絶縁が確保される場合には、磁気部品A10は、絶縁層61を備えていなくてもよい。絶縁層61は、たとえば支持基板1の酸化膜である。絶縁層61は、絶縁性を有するものであれば何ら限定されないが、たとえばSiO2を含む。
【0034】
絶縁層62は、厚さ方向zにおいて、一対の外部端子51,52と第2磁性膜32との間に配置される。絶縁層62は、第2磁性膜32と一対の外部端子51,52とを絶縁する。各第2磁性膜32と各外部端子51,52との絶縁が確保される場合には、磁気部品A10は、絶縁層62を備えていなくてもよい。絶縁層62は、絶縁性を有するものであれば何ら限定されないが、たとえばSiO2を含む。
【0035】
一対の外部端子51,52は、電子機器などの回路基板に磁気部品A10を実装するための端子である。
図8~
図10に示すように、一対の外部端子51,52はそれぞれ、絶縁層62を挟んで、複数の第2磁性膜32上に形成される。一対の外部端子51,52はそれぞれ、たとえばニッケル層、パラジウム層および金層の積層構造をなす。なお、一対の外部端子51,52の積層構造は、先述の例に限定されず、ニッケル層および金層であってもよい。また、一対の外部端子51,52は、積層構造ではなく、1つの金属層の単層構造であってもよい。当該金属層は、たとえば銅または銅合金、もしくは、金または金合金などを含む。
【0036】
図9に示すように、外部端子51は、接続配線部22に接する。外部端子51は、接続配線部22を介して導体パターン21の接続端211に導通する。
図10に示すように、外部端子52は、接続配線部23に接する。外部端子52は、接続配線部23を介して導体パターン21の接続端212に導通する。一対の外部端子51,52のいずれか一方から入力された電流は、導体パターン21を介して、一対の外部端子51,52のいずれか他方から出力される。
【0037】
【0038】
磁気部品A10の製造方法では、まず、
図11に示すように、支持基板1を準備し、当該支持基板1に絶縁層61を形成する。支持基板1の準備では、たとえばSiウエハを用意する。用意するSiウエハは、複数の磁気部品A10を製造可能な大きさである。そして、準備した支持基板1の基板主面10aに絶縁層61を形成する。絶縁層61の形成は、たとえば熱酸化である。絶縁層61の形成方法は、熱酸化に限定されず、スパッタリング法であってもよい。
【0039】
次いで、
図12~
図15に示すように、絶縁層61上に、複数の第1磁性膜31を形成する。複数の第1磁性膜31は、たとえばCoFeBを含む。複数の第1磁性膜31の形成では、次に示す第1処理および第2処理を有する。第1処理では、
図12および
図13に示すように、各磁性部3A,3Cの第1磁性膜31をそれぞれ、スパッタリング法により形成する。なお、理解の便宜上、
図13において、各第1磁性膜31の形成領域をドット柄で示す。このとき、第1磁性方向d1が第1方向xに沿い且つ第2磁性方向d2が第2方向yに沿うように、各磁性部3A,3Cの第1磁性膜31を形成する。第2処理では、
図14および
図15に示すように、各磁性部3B,3Dの第1磁性膜31をそれぞれ、スパッタリング法により形成する。なお、理解の便宜上、
図15において、各第1磁性膜31の形成領域をドット柄で示す。このとき、第1磁性方向d1が第2方向yに沿い且つ第2磁性方向d2が第1方向xに沿うように、各磁性部3B,3Dの第1磁性膜31を形成する。なお、第1処理および第2処理は、どちらを先に行ってもよい。
【0040】
次いで、
図16に示すように、複数の第1磁性膜31上に、絶縁層41を形成する。絶縁層41の形成では、たとえば、SiO
2をスパッタリング法により積層させる。
【0041】
次いで、
図17に示すように、絶縁層41上に、導体パターン21を形成する。導体パターン21の形成では、まず、シード層をスパッタリング法により絶縁層41の上面全体に形成する。シード層は、たとえばCuを含む。続いて、シード層上にレジストを部分的に形成する。続いて、シード層を導電経路とする電解めっきにより、レジストから露出するシード層上にめっき層を形成する。めっき層は、シード層と同様に、たとえばCuを含む。その後、レジストおよび不要なシード層(めっき層から露出するシード層)を除去する。以上の処理を経て、導体パターン21が形成される。形成された導体パターン21は、スパイラル状に平面巻回されている。
【0042】
次いで、
図18に示すように、導体パターン21を覆う絶縁被膜42を形成する。絶縁被膜42の形成は、たとえばCVD(Chemical Vapor Deposition)法によりSiO
2を成膜する。
【0043】
次いで、
図19~
図22に示すように、複数の第2磁性膜32および複数の第3磁性膜33を形成する。複数の第2磁性膜32および複数の第3磁性膜33は、たとえばCoFeBを含む。複数の第2磁性膜32および複数の第3磁性膜33の形成では、次に示す第3処理および第4処理を有する。第3処理では、
図19および
図20に示すように、各磁性部3A,3Cの第2磁性膜32および第3磁性膜33をそれぞれ、スパッタリング法により形成する。なお、理解の便宜上、
図20において、各第2磁性膜32および各第3磁性膜33の形成領域をドット柄で示す。このとき、第1磁性方向d1が第1方向xに沿い且つ第2磁性方向d2が第2方向yに沿うように、各磁性部3A,3Cの第2磁性膜32および第3磁性膜33を形成する。第4処理では、
図21および
図22に示すように、各磁性部3B,3Dの第2磁性膜32および第3磁性膜33をそれぞれ、スパッタリング法により形成する。なお、理解の便宜上、
図22において、各第2磁性膜32および第3磁性膜33の形成領域をドット柄で示す。このとき、第1磁性方向d1が第2方向yに沿い且つ第2磁性方向d2が第1方向xに沿うように、各磁性部3B,3Dの第2磁性膜32および第3磁性膜33を形成する。第3処理および第4処理は、どちらを先に行ってもよい。
【0044】
次いで、
図23に示すように、複数の第2磁性膜32上に、絶縁層62を形成する。絶縁層62の形成では、たとえば、SiO
2をスパッタリング法により積層させる。
【0045】
次いで、
図24に示すように、コイル部2の一対の接続配線部22,23を形成する。一対の接続配線部22,23の形成では、まず、絶縁層62、第2磁性膜32および絶縁被膜42をそれぞれ部分的に除去し、導体パターン21の一対の接続端211,212をそれぞれ露出させる。続いて、露出させた一対の接続端211,212に繋がる一対の接続配線部22,23を形成する。
【0046】
次いで、一対の外部端子51,52をそれぞれ形成する。一対の外部端子51,52は、
図25に示す想像線の範囲に形成される。一対の外部端子51,52の形成方法は、何ら限定されないが、たとえば電解めっき、無電解めっき、スパッタリング法などが用いられる。その後、磁気部品A10毎に個片化することで、
図1~
図10に示す磁気部品A10が製造される。
【0047】
第1実施形態にかかる磁気部品A10の作用および効果は、次の通りである。
【0048】
磁気部品A10は、コイル部2と、磁性体3とを備える。磁性体3は、第1磁性方向d1および第2磁性方向d2を有し、第1磁性方向d1と第2磁性方向d2とは、磁気的性質の大きさが異なる。この構成によれば、第1磁性方向d1あるいは第2磁性方向d2のいずれかを、コイル部2の通電によって発生する磁束に合わせて配置することで、磁気部品A10の磁気的性質を調整することが可能となる。したがって、磁気部品A10は、磁気的性質の改善を図ることが可能となる。
【0049】
磁気部品A10では、上記磁気的性質は、透磁率であり、第1磁性方向d1の透磁率は、第2磁性方向d2の透磁率よりも高い。この構成によれば、コイル部2の通電によって発生する磁束に対して、磁性体3の透磁率が高くなる。これにより、磁気部品A10は、インダクタンス値を向上できる。
【0050】
磁気部品A10では、磁性体3は、複数の磁性部3A~3Dを含む。複数の磁性部3A~3Dはそれぞれ、第1磁性方向d1および第2磁性方向d2を有する。複数の磁性部3A~3Dは、コイル部2(導体パターン21)を仮想的に複数の領域2A~2Dに分けたとき、複数の領域2A~2Dの各々に対して、それぞれ個別に配置される。複数の領域2A~2Dの各々においては、たとえばコイル部2への通電によって発生する磁束の向きがそれぞれ異なる。このため、磁性体3を複数の磁性部3A~3Dに分けることで、各領域2A~2Dにおける磁束の向きに対応させることができる。これにより、磁気部品A10は、各領域2A~2Dにおける磁気抵抗を低減できるので、インダクタンス値を向上できる。
【0051】
以下に、本開示の磁気部品の他の実施形態および変形例について、説明する。各実施形態および各変形例における各部の構成は、技術的な矛盾が生じない範囲において相互に組み合わせ可能である。
【0052】
図25は、第1実施形態の第1変形例にかかる磁気部品A11を示している。
図25に示す平面図は、
図3に示す平面に対応する。上記磁気部品A10では、複数の磁性部3A~3Dの各々が略均等な大きさとなるように、磁性体3を分割していた。これに対して、磁気部品A11では、
図25に示すように、複数の磁性部3A~3Dの大きさが均等ではない。
【0053】
磁気部品A11では、複数の磁性部3A~3Dは、コイル部2の通電によって発生する磁束の向きに応じて、異なる大きさおよび異なる形状で分割されている。この構成によれば、コイル部2による磁束の向きに対して、各磁性部3A~3Dの第1磁性方向d1が一致する割合を高めることができる。したがって、磁気部品A11では、磁気部品A10よりもさらに磁気的性質の改善を図ることができる。
【0054】
図26は、第1実施形態の第2変形例にかかる磁気部品A12を示している。
図26に示す断面図は、
図9に示す断面に対応する。上記磁気部品A10では、一対の外部端子51,52が絶縁層62上に形成されていた。これに対して、磁気部品A12は、一対の外部端子51,52は、支持基板1の基板裏面10b上に形成されている。
【0055】
磁気部品A12で示すように、一対の外部端子51,52は、導体パターン21に対して、厚さ方向zのどちら側に配置されていてもよい。さらには、一対の外部端子51,52は、導体パターン21を挟んで、厚さ方向zに互いに反対側に配置されていてもよい。つまり、一対の外部端子51,52の一方は、支持基板1の基板裏面10b上に形成され、一対の外部端子51,52の他方は、絶縁層62上に形成されていてもよい。
【0056】
図27は、第1実施形態の第3変形例にかかる磁気部品A13を示している。
図27に示す断面図は、
図8に示す断面に対応する。上記磁気部品A10では、支持基板1を備えた例を示した。これに対して、磁気部品A13は、支持基板1を備えていない。
【0057】
磁気部品A13は、たとえば、磁気部品A10の製造方法において、支持基板1を基板裏面10b側から研削する工程を追加することで、製造される。この研削工程は、たとえば、複数の第2磁性膜32および複数の第3磁性膜33の形成後であって、個片化前のいずれかで行われる。
【0058】
磁気部品A13は、支持基板1を備えていない。この構成によれば、支持基板1の厚さ(厚さ方向zの寸法)だけ、磁気部品A13の厚さ(厚さ方向zの寸法)が縮小される。したがって、磁気部品A13は、磁気部品A10よりも薄型化される。
【0059】
図28および
図29は、第1実施形態の第4変形例にかかる磁気部品A14を示している。
図28に示す平面図は、
図3に示す平面に対応し、
図29に示す断面図は、
図8に示す断面に対応する。上記磁気部品A10では、厚さ方向zに見て、導体パターン21の巻回軸の周辺まで、磁性体3(複数の磁性部3A~3D)が形成されていた。これに対して、磁気部品A14では、厚さ方向zに見て、導体パターン21の巻回軸の周辺には、磁性体3(複数の磁性部3A~3D)が形成されていない。
【0060】
図示された導体パターン21では、導体パターン21の巻回軸周辺には、環状部210が形成されていない。この場合、導体パターン21の巻回軸の周辺での磁束密度の第1方向xの成分あるいは第2方向yの成分が、導体パターン21の近辺での磁束密度よりも小さいことがある。そこで、磁気部品A14では、導体パターン21の近辺にのみ、磁性体3(複数の磁性部3A~3D)が形成されている。このように、磁束密度の大きさに応じて、磁性体3の形成範囲を変えることも可能である。この構成によれば、磁性体3を形成する範囲を小さくできるため、製造コストを抑制することが可能となる。
【0061】
先述の各磁気部品A11~A14は、磁気部品A10と同様に、次の特徴を有する。それは、磁性体3は、磁気的性質の大きさが異なる第1磁性方向d1および第2磁性方向d2を有する。したがって、各磁気部品A11~A14は、磁気部品A10と同様に、磁気的性質の改善を図ることが可能となる。その他、各磁気部品A11~A14は、磁気部品A10と共通する構成により、当該磁気部品A10と同様の効果を奏する。
【0062】
図30および
図31は、第2実施形態にかかる磁気部品A20を示している。磁気部品A20は、磁気部品A10と比較して、次の点で異なる。それは、複数の磁性部3A~3Dが、間隙39を隔てて配置されている点である。
図30に示す平面図は、
図3に示す平面に対応し、
図31に示す断面図は、
図8に示す断面に対応する。
【0063】
間隙39は、磁性体3を厚さ方向zに貫通する。つまり、間隙39は、厚さ方向zにおいて、各第1磁性膜31(下面)から各第2磁性膜32(上面)に跨って形成されている。磁気部品A20では、間隙39により、複数の磁性部3A~3Dは、互いに接していない。
図31に示すように、間隙39には、絶縁層41および絶縁層62が充填される。磁気部品A10では、複数の磁性部3A~3Dが互いに接するように形成されるが、磁性体3の形成精度によって、各磁性部3A~3Dの間に間隙39を設けることが好ましい場合がある。このように、磁性体3の形成精度に応じて、磁性体3に間隙39を設けてもよい。
【0064】
磁気部品A20は、磁気部品A10と同様に、次の特徴を有する。それは、磁性体3は、磁気的性質の大きさが異なる第1磁性方向d1および第2磁性方向d2を有する。したがって、磁気部品A20は、磁気部品A10と同様に、磁気的性質の改善を図ることが可能となる。その他、磁気部品A20は、磁気部品A10と共通する構成により、当該磁気部品A10と同様の効果を奏する。
【0065】
図32は、第2実施形態の変形例にかかる磁気部品A21を示している。
図32に示す断面図は、
図31に示す断面に対応する。上記磁気部品A20では、間隙39には、絶縁層41および絶縁層62が充填されていた。そのため、絶縁層41および絶縁層62はそれぞれ、部分的に厚さが大きい部分を有する。これに対して、磁気部品A21では、絶縁層41および絶縁層62は、厚さが一様である薄膜で構成される。
【0066】
磁気部品A21の磁性体3は、各磁気部品A10,A20と同様に、磁気的性質の大きさが異なる第1磁性方向d1および第2磁性方向d2を有する。したがって、磁気部品A21は、各磁気部品A10,A20と同様に、磁気的性質の改善を図ることが可能となる。その他、磁気部品A21は、先述の磁気部品A10,A20と共通する構成により、当該磁気部品A10,A20と同様の効果を奏する。
【0067】
図33は、第3実施形態にかかる磁気部品A30を示している。
図33に示す断面図は、
図8に示す断面に対応する。磁気部品A30は、磁気部品A10と比較して、次の点で異なる。第1に、磁気部品A30は、支持基板1を備えない。第2に、磁気部品A30の絶縁体4は、絶縁層41を含んでいない。
【0068】
磁気部品A30では、
図33に示すように、絶縁体4の絶縁被膜42は、導体パターン21の配線方向に見て、導体パターン21の全周を覆っている。
【0069】
磁気部品A30は、たとえば、次のように製造される。まず、導体パターン21を準備する。次いで、準備した導体パターン21に、絶縁被膜42を形成する。次いで、絶縁被膜42を覆う磁性体3(複数の磁性部3A~3D)を形成する。次いで、磁性体3の厚さ方向zの両面に一対の絶縁層61,62を形成する。次いで、一対の接続配線部22,23を形成した後、一対の外部端子51,52を形成する。以上のような工程を経て、磁気部品A30が製造されうる。
【0070】
磁気部品A30は、各磁気部品A10,A20と同様に、次の特徴を有する。それは、磁性体3は、磁気的性質の大きさが異なる第1磁性方向d1および第2磁性方向d2を有する。したがって、磁気部品A30は、各磁気部品A10,A20と同様に、磁気的性質の改善を図ることが可能となる。その他、磁気部品A30は、先述の磁気部品A10,A20と共通する構成により、当該磁気部品A10,A20と同様の効果を奏する。
【0071】
図34および
図35は、第4実施形態にかかる磁気部品A40を示している。
図34に示す平面図は、
図3に示す平面に対応し、
図35に示す断面図は、
図8に示す断面に対応する。磁気部品A40は、磁気部品A10と比較して、磁性体3が複数の磁性部3A~3Dに分割されていない点で異なる。
【0072】
磁気部品A40は、磁性体3により、導体パターン21の全体が覆われている。磁気部品A40では、
図34に示すように、磁性体3の第1磁性方向d1が第2方向yに沿って配置され、磁性体3の第2磁性方向d2が第1方向xに沿って配置されている。この例とは異なり、磁性体3の第1磁性方向d1が第1方向xに沿って配置され、磁性体3の第2磁性方向d2が第2方向yに沿って配置されていてもよい。
【0073】
磁気部品A40は、各磁気部品A10,A20,A30と同様に、次の特徴を有する。それは、磁性体3は、磁気的性質の大きさが異なる第1磁性方向d1および第2磁性方向d2を有する。
【0074】
磁気部品A40では、磁性体3は、複数の磁性部3A~3Dに分割されていない。磁気部品A10では、磁性体3が複数の磁性部3A~3Dに分割されていたため、磁気部品A10の製造方法においては、たとえば
図12~
図15に示すように、第1磁性膜31の形成を複数回に分けている。一方は、磁気部品A40は、複数の磁性部3A~3Dに分割されていないので、先述のように、第1磁性膜31の形成を複数回に分けて形成する必要がない。したがって、磁気部品A40は、磁気部品A10と比較して、容易に製造することが可能である。ただし、磁気的性質の改善においては、導体パターン21の形状に合わせて、磁性体3を複数の磁性部3A~3Dに分割することが好ましい。
【0075】
上記第1実施形態ないし上記第4実施形態では、コイル部2(導体パターン21)は、平面スパイラル状に巻回された例を示したが、コイル部2(導体パターン21)の形状は、これに限定されない。たとえば、コイル部2(導体パターン21)は、トロイダル形状、つづら折り形状、あるいは、ソレノイド形状に形成されていてもよい。トロイダル形状である場合と、つづら折り形状である場合とをそれぞれ、
図36および
図37を参照して、以下に説明する。
図36および
図37に示す各平面図は、
図7に示す平面模式図に対応する。
【0076】
図36および
図37に示す例では、磁性体3が複数の磁性部3Kに分割されている。複数の磁性部3Kは、導体パターン21を複数の領域に分割したとき、当該複数の領域にそれぞれ個別に配置される。複数の領域は、上述する通り、導体パターン21の通電により発生する磁束の向きに応じて、仮想的に分割されたものである。
図36に示す例では、磁性体3は、8つの磁性部3Kに分割され、8つの磁性部3Kは、厚さ方向zに見たときの導体パターン21の径方向に沿って配列される。そして、8つの磁性部3Kはそれぞれ、第1磁性方向d1が厚さ方向zに見たときの導体パターン21の径方向に沿うように配置される。これは、
図36に示す例において発生する磁束は、トロイダル形状の導体パターン21によって区画される内側の空間を通るためである。
図37に示す例では、3つの磁性部3Kが第2方向yに沿って配列される。そして、3つの磁性部3Kのうちの中央は、第1磁性方向d1が第1方向xに沿うように配置され、3つの磁性部3Kのうちの両外側のそれぞれは、第1磁性方向d1が第2方向yに沿うように配置される。これは、
図37に示す例において、第2方向y中央の領域では、導体パターン21の配線方向が、主に第2方向yに沿っており、第2方向y両外側の領域では、導体パターン21の配線方向が、主に第1方向xに沿っているためである。
【0077】
図36および
図37に示す磁気部品においても、磁気的性質の改善を図ることが可能となる。なお、
図36および
図37に示す例において、磁性部3Kの数は、上記した例に限定されない。磁性体3をより細分化して、磁性部3Kの数を多くすると、第1磁性方向d1と磁束の向きとが一致する割合が大きくなるため、磁気的性質を改善する上で好ましい。一方で、磁性体3をより大まかに分けて、磁性部3Kの数を少なくすると、製造を簡略化する上で好ましい。
【0078】
上記第1実施形態ないし第4実施形態(これらの変形例を含む)では、コイル部2は、導体パターン21を含む例を示した。この例とは異なり、コイル部2は、導体パターン21の代わりに、導線を物理的に巻回したものを用いてもよい。
【0079】
上記第1実施形態ないし第4実施形態(これらの変形例を含む)では、第1磁性方向d1の透磁率が、第2磁性方向d2の透磁率よりも高い例を示した。この例とは異なり、第1磁性方向d1の透磁率が、第2磁性方向d2の透磁率よりも低くてもよい。
【0080】
上記第1実施形態ないし第4実施形態(これらの変形例を含む)では、磁性体3の磁気異方性について、第1磁性方向d1と第2磁性方向d2とで透磁率が互いに異なる例を示した。この例とは異なり、第1磁性方向d1と第2磁性方向d2とでヒステリシス損失が異なっていてもよい。つまり、上記磁気的性質は、透磁率ではなくヒステリシス損失であってもよい。たとえば、第1磁性方向d1のヒステリシス損失は、第2磁性方向d2のヒステリシス損失よりも小さい。この例においては、コイル部2の通電によって発生する磁束に対して、磁性体3のヒステリシス損失が小さくなる。これにより、当該変形例にかかる磁気部品は、エネルギー損失を低減できる。
【0081】
本開示にかかる磁気部品は、上記した実施形態に限定されるものではない。本開示の磁気部品の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。たとえば、本開示の磁気部品は、以下の付記に関する実施形態を含む。
付記1.
導電体を含むコイル部と、
前記コイル部を覆う磁性体と、
を備え、
前記磁性体は、第1磁性方向と第2磁性方向とを有し、
前記第1磁性方向と前記第2磁性方向とは、磁気的性質の大きさが互いに異なる、磁気部品。
付記2.
前記磁性体は、前記コイル部が発生させる磁束の方向に前記第1磁性方向が沿うように配置される、付記1に記載の磁気部品。
付記3.
前記磁気的性質は、透磁率であり、
前記第1磁性方向の透磁率は、前記第2磁性方向の透磁率よりも高い、付記2に記載の磁気部品。
付記4.
前記磁気的性質は、ヒステリシス損失であり、
前記第1磁性方向のヒステリシス損失は、前記第2磁性方向のヒステリシス損失よりも小さい、付記2に記載の磁気部品。
付記5.
前記磁性体は、前記コイル部に流れる電流の方向に前記第1磁性方向が直交するように配置される、付記1ないし付記4のいずれかに記載の磁気部品。
付記6.
前記磁性体は、互いに分離する複数の磁性部を含み、
前記複数の磁性部の各々は、前記第1磁性方向および前記第2磁性方向を有し、
前記コイル部を仮想的に複数の領域に分けたとき、当該複数の領域の各々に対して、前記複数の磁性部がそれぞれ個別に配置される、付記1ないし付記5のいずれかに記載の磁気部品。
付記7.
前記コイル部は、前記磁気部品の厚さ方向に直交する平面に沿って形成された導体パターンを含み、
前記第1磁性方向および前記第2磁性方向の各々は、前記厚さ方向に直交する、付記1ないし付記6のいずれかに記載の磁気部品。
付記8.
前記導体パターンは、前記厚さ方向に見てスパイラル状に巻回される、付記7に記載の磁気部品。
付記9.
前記導体パターンに接する絶縁被膜をさらに備え、
前記絶縁被膜は、前記導体パターンの配線方向に見て前記導体パターンを覆う、付記7または付記8に記載の磁気部品。
付記10.
前記磁性体は、前記絶縁被膜を覆う、付記9に記載の磁気部品。
付記11.
前記磁性体は、少なくとも1つの第1磁性膜と少なくとも1つの第2磁性膜とを含み、
前記少なくとも1つの第1磁性膜と前記少なくとも1つの第2磁性膜とは、前記厚さ方向において前記導体パターンを挟んで互いに反対側に配置される、付記7ないし付記10のいずれかに記載の磁気部品。
付記12.
前記少なくとも1つの第1磁性膜と前記少なくとも1つの第2磁性膜とは、互いに離れている、付記11に記載の磁気部品。
付記13.
前記導体パターンは、第1環状部と、前記第1環状部に繋がる第2環状部とを含み、
前記磁性体は、前記第1環状部と前記第2環状部との間に介在する第3磁性膜を含む、付記11または付記12に記載の磁気部品。
付記14.
前記第3磁性膜は、少なくとも1つの第2磁性膜に繋がる、付記13に記載の磁気部品。
付記15.
前記第3磁性膜と前記少なくとも1つの第1磁性膜と間に介在する絶縁層をさらに備える、付記13または付記14に記載の磁気部品。
付記16.
前記少なくとも1つの第1磁性膜は、複数の第1磁性膜を含み、
前記複数の第1磁性膜は、前記絶縁層を隔てて配置される、付記15に記載の磁気部品。
付記17.
前記磁性体は、コバルト鉄ボロン、あるいは、フェライトを含む、付記1ないし付記16のいずれかに記載の磁気部品。
【符号の説明】
【0082】
A10~A14,A20,A21,A30,A40:磁気部品
1 :支持基板
10a :基板主面
10b :基板裏面
2 :コイル部
2A~2D:領域
21 :導体パターン
210 :環状部
211,212:接続端
22,23:接続配線部
3 :磁性体
3A~3D,3K:磁性部
31 :第1磁性膜
32 :第2磁性膜
33 :第3磁性膜
39 :間隙
4 :絶縁体
41 :絶縁層
42 :絶縁被膜
51,52:外部端子
61,62:絶縁層
d1 :第1磁性方向
d2 :第2磁性方向