(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132035
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】フレキシブルバスバー
(51)【国際特許分類】
H01R 4/58 20060101AFI20240920BHJP
H01R 11/01 20060101ALI20240920BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20240920BHJP
H01M 50/505 20210101ALN20240920BHJP
H01M 50/588 20210101ALN20240920BHJP
H01M 50/591 20210101ALN20240920BHJP
H01M 50/503 20210101ALN20240920BHJP
【FI】
H01R4/58 C
H01R11/01 Q
H01B7/00 302
H01M50/505
H01M50/588
H01M50/591
H01M50/503
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042657
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000175722
【氏名又は名称】サンコール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】向井 康裕
【テーマコード(参考)】
5G309
5H043
【Fターム(参考)】
5G309BA01
5G309BA04
5G309BA11
5H043AA19
5H043CA05
5H043CA22
5H043FA04
5H043FA26
5H043GA23
5H043GA25
5H043JA02F
(57)【要約】
【課題】絶縁体で覆ったとしても柔軟性を維持することができるフレキシブルバスバーを提供する。
【解決手段】柔軟性のあるフレキシブルバスバー本体2と、フレキシブルバスバー本体2の一部を被覆する絶縁体3と、を備えている。そして、その絶縁体3は、内部Sが中空に形成され、その中空内にフレキシブルバスバー本体2が挿入される。その後、その挿入されたフレキシブルバスバー本体2に、絶縁体3の一部を熱収縮させることによって、絶縁体3の一部を固定させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性のあるフレキシブルバスバー本体と、
前記フレキシブルバスバー本体の一部を被覆する絶縁体と、を有し、
前記絶縁体は、
内部が中空に形成されると共に、熱収縮可能な樹脂にて形成され、
前記中空内に前記フレキシブルバスバー本体が挿入され、その挿入されたフレキシブルバスバー本体に、前記絶縁体の一部を熱収縮させることによって、前記絶縁体の一部を固定させてなるフレキシブルバスバー。
【請求項2】
前記フレキシブルバスバー本体は、両端側に貫通孔が形成されており、
前記絶縁体は、前記絶縁体の一部を前記フレキシブルバスバー本体に固定させるにあたって、前記貫通孔に接触しないように、該絶縁体の両端側を熱収縮させることによって、前記フレキシブルバスバー本体に固定させてなる請求項1に記載のフレキシブルバスバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルバスバーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、通電可能な部材同士(例えば、電気自動車やハイブリッドカー等に搭載されるバッテリ)を連結するにあたって、バスバーを使用することが知られている。このようなバスバーとして、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。このバスバーは、プレス加工により両端を扁平化された端子を形成し、曲げ加工により端子間を屈曲して形成されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、
図4(a)に示すように、従来のバスバー100は、銅等の金属からなり、例えば、厚み約3mm~5mmの厚板状で、長尺で断面視矩形状に形成されている。そして、このバスバー100は、
図4(a)に示すように、左側面100a側に、上下方向に向かって、断面視矩形状の左ボルト孔100a1が貫通して設けられると共に、右側面100b側に、上下方向に向かって、断面視矩形状の右ボルト孔100b1が貫通して設けられている。
【0005】
かくして、このようなバスバー100を使用して、
図4(b)に示す、正面視縦長矩形状の通電可能な第1部材B1と、正面視縦長矩形状の通電可能な第2部材B2とが連結されることとなる。具体的には、
図4(b)に示す第1部材B1に設けられている第1ボルト孔B1aと右ボルト孔100b1を合わせて、図示しないボルトで締結し、
図4(b)に示す第2部材B2に設けられている第2ボルト孔B2aと左ボルト孔100a1を合わせて、図示しないボルトで締結する。これにより、バスバー100は、第1部材B1と第2部材B2との間で締結固定されることから、バスバー100を使用して、第1部材B1と、第2部材B2とが連結されることとなる。
【0006】
しかしながら、
図4(b)に示すように、第1部材B1と第2部材B2との間に高さの差があった場合、
図4(a)に示すようなバスバー100では、
図4(b)に示す第1ボルト孔B1aと右ボルト孔100b1を合わせることができず、
図4(b)に示す第2ボルト孔B2aと左ボルト孔100a1を合わせることができない。そのため、このままでは、バスバー100を使用して、第1部材B1と、第2部材B2とを連結させることができないことから、高さの差を埋めるため、上記特許文献1に記載のように、バスバー100は、曲げ加工されることとなる。
【0007】
しかしながら、高さの差を埋めるため、曲げ加工したとしても、上記のようなバスバー100は、柔軟性がないことから、少しでも位置がずれてしまうと、第1部材B1と、第2部材B2とを連結することができないという問題があった。
【0008】
そこで、このような問題を解決すべく、柔軟性のあるフレキシブルバスバーを使用することが考えられる。
【0009】
ところで、電気自動車やハイブリッドカー等に搭載されるバッテリ等に使用する場合、上記のようなフレキシブルバスバーに大電流が流れることとなる。そのため、危険防止や他の通電可能な部材と接触し、誤動作してしまうことが無いよう、樹脂などの絶縁体で、フレキシブルバスバーを覆う必要がある。フレキシブルバスバーを絶縁体で覆うにあたっては、フレキシブルバスバーを液状の樹脂に浸漬し、硬化させることによって絶縁体を覆う方法が知られている。
【0010】
しかしながら、これでは、絶縁体によってフレキシブルバスバーの柔軟性が損なわれてしまう可能性があり、さらには、
図4(b)に示すような高さの差を埋めるために、フレキシブルバスバーを曲げると絶縁体が割れてしまう可能性があるという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、絶縁体で覆ったとしても柔軟性を維持することができるフレキシブルバスバーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記本発明の目的は、以下の手段によって達成される。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0013】
請求項1の発明によれば、柔軟性のあるフレキシブルバスバー本体(2)と、
前記フレキシブルバスバー本体(2)の一部を被覆する絶縁体(3)と、を有し、
前記絶縁体(3)は、
内部(S)が中空に形成されると共に、熱収縮可能な樹脂にて形成され、
前記中空内に前記フレキシブルバスバー本体(2)が挿入され、その挿入されたフレキシブルバスバー本体(2)に、前記絶縁体(3)の一部を熱収縮させることによって、前記絶縁体(3)の一部を固定させてなることを特徴としている。
【0014】
請求項2の発明によれば、上記請求項1に記載のフレキシブルバスバー(1)において、前記フレキシブルバスバー本体(2)は、両端側(左端子部22,右端子部23)に貫通孔(左ボルト孔22a,右ボルト孔23a)が形成されており、
前記絶縁体(3)は、前記絶縁体(3)の一部を前記フレキシブルバスバー本体(2)に固定させるにあたって、前記貫通孔(左ボルト孔22a,右ボルト孔23a)に接触しないように、該絶縁体(3)の両端側(左側面3a側,右側面3b側)を熱収縮させることによって、前記フレキシブルバスバー本体(2)に固定させてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0016】
請求項1に係る発明によれば、絶縁体(3)の一部をフレキシブルバスバー本体(2)に固定させているから、フレキシブルバスバー本体(2)と絶縁体(3)の内部(S)とに空間が形成される。これにより、フレキシブルバスバー本体(2)は、柔軟性が損なわれないため、フレキシブルバスバー本体(2)の形状を柔軟に変更することができる。
【0017】
したがって、本発明によれば、絶縁体(3)で覆ったとしても柔軟性を維持することができる。
【0018】
請求項2に係る発明によれば、貫通孔(左ボルト孔22a,右ボルト孔23a)に絶縁体(3)が接触することがないため、通電可能な部材同士を連結した際、電流が流れない等の誤動作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】(a)は、本発明の一実施形態に係るフレキシブルバスバーの斜視図、(b)は、同実施形態に係るフレキシブルバスバーの側面図で、一部縦断面図である。
【
図2】(a)は、同実施形態に係る絶縁体を縦断面図で示し、その絶縁体内にフレキシブルバスバー本体を配置した状態を示す側面図、(b)は、(a)に示す状態から絶縁体の両端をフレキシブルバスバー本体に固定した状態を示す側面図である。
【
図3】同実施形態に係るフレキシブルバスバーを、第1部材と、第2部材との間に配置した状態を示す説明図である。
【
図4】(a)は、従来のバスバーの縦断面図、(b)は、従来のバスバーを、第1部材と、第2部材との間に配置した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係るフレキシブルバスバーを、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明において、上下左右の方向を示す場合は、図示正面から見た場合の上下左右をいうものとする。
【0021】
<フレキシブルバスバーの概略説明>
図1に示すフレキシブルバスバー1は、絶縁体で覆ったとしても柔軟性を維持することができるものである。具体的に説明すると、
図1に示すフレキシブルバスバー1は、フレキシブルバスバー本体2と、絶縁体3と、で主に構成されている。以下、各構成について詳しく説明する。
【0022】
<フレキシブルバスバー本体の説明>
フレキシブルバスバー本体2は、
図1(b)に示すように、側面視横長矩形状に形成されており、薄板状で柔軟性のある銅などの金属からなる導電材料箔20を積層させて形成しているもので、大電流を流することができるものである。
【0023】
かくして、このように形成されるフレキシブルバスバー本体2は、
図1(b)に示すように、中間部21と、左端子部22と、右端子部23と、で構成されている。中間部21は、導電材料箔20が積層されているだけで、導電材料箔20が固定されていない。そのため、中間部21は、柔軟性を備えている。
【0024】
一方、左端子部22は、
図1(b)に示すように、中間部21の左側に位置し、導電材料箔20が積層させているものの、これら導電材料箔20が圧着や溶接などによって固定されている。そのため、左端子部22は、柔軟性を備えていない。なお、この左端子部22には、
図1(a),(b)に示すように、上下方向に向かって、長孔楕円状の左ボルト孔22aが貫通して設けられている。
【0025】
また一方、右端子部23は、
図1(b)に示すように、中間部21の右側に位置し、導電材料箔20が積層させているものの、これら導電材料箔20が圧着や溶接などによって固定されている。そのため、右端子部23は、柔軟性を備えていない。なお、この右端子部23には、
図1(a),(b)に示すように、上下方向に向かって、長孔楕円状の右ボルト孔23aが貫通して設けられている。
【0026】
<絶縁体の説明>
絶縁体3は、熱硬化性樹脂系エラストマーなどからなる熱収縮可能な樹脂にて形成された絶縁性材料からなり、柔軟性を備えているものである。そして、このような絶縁体3は、
図2(a)に示すように、内部Sが中空に形成されていると共に、左側面3a及び右側面3bが開放された断面視矩形状の筒状に形成されている。
【0027】
<フレキシブルバスバーの製造方法の説明>
かくして、このように構成されるフレキシブルバスバー1を製造するにあたっては、まず、
図2(a)に示すように、絶縁体3の内部Sに、フレキシブルバスバー本体2を挿入する。これにより、
図2(a)に示すように、中間部21が、絶縁体3の内部Sに位置し、左端子部22が、外部に露呈すると共に、絶縁体3の左側面3a側に位置し、右端子部23が、外部に露呈すると共に、絶縁体3の右側面3b側に位置することとなる。
【0028】
次に、この状態で、
図2(a)に示す絶縁体3の左側面3a側に熱を加え、
図2(a)に示す絶縁体3の右側面3b側に熱を加えるようにする。これにより、
図2(b)に示すように、絶縁体3の左側面3a側が熱収縮し、中間部21の左側上面21a及び下面21bに固定される。そしてさらに、
図2(b)に示すように、絶縁体3の右側面3b側が熱収縮し、中間部21の右側上面21a及び下面21bに固定される。これにより、絶縁体3がフレキシブルバスバー本体2に位置決め固定されることとなる。
【0029】
したがって、このようにして、
図1に示すフレキシブルバスバー1が製造されることとなる。
【0030】
<フレキシブルバスバーの使用例の説明>
ところで、上記のように製造されるフレキシブルバスバー1は、
図3に示すように、第1部材B1に設けられている第1ボルト孔B1aと右ボルト孔23aを合わせて、図示しないボルトで締結し、
図3に示す第2部材B2に設けられている第2ボルト孔B2aと左ボルト孔22aを合わせて、図示しないボルトで締結する。この際、
図3に示すように、第1部材B1と第2部材B2とは高さの差がある。しかしながら、中間部21と絶縁体3の内部Sとは空間が形成されているから、従来のように、中間部21の柔軟性が損なわれるということがない。すなわち、従来は、中間部21と絶縁体3が密着していることから、中間部21の柔軟性が絶縁体3の柔軟性に依存することとなり、絶縁体3が硬化し柔軟性を失うと、中間部21の柔軟性が損なわれることとなる。この点、本実施形態においては、中間部21と絶縁体3の内部Sとは空間が形成されているから、従来のように、中間部21の柔軟性が損なわれるということがない。そのため、中間部21は、その高さの差を埋めるように、柔軟に形状を変更(
図3では、湾曲を例示)することとなる。これにより、通電可能な部材同士を連結するにあたって、フレキシブルバスバー1の形状を柔軟に変更することができる。
【0031】
また、本実施形態においては、絶縁体3が中間部21に完全に固定されているわけではないため、中間部21が形状を変更(
図3では、湾曲を例示)したとしても、従来のように、絶縁体3が割れてしまうということもない。
【0032】
したがって、以上説明した本実施形態によれば、絶縁体3で覆ったとしても柔軟性を維持することができる。
【0033】
<変形例の説明>
なお、本実施形態において示した形状等はあくまで一例であり、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、本実施形態においては、絶縁体3の左側面3a側及び右側面3b側を熱収縮させ、フレキシブルバスバー本体2に固定させる例を示したが、それに限らず、フレキシブルバスバー本体2に絶縁体3を位置決め固定できれば、どの箇所でも良い。すなわち、絶縁体3の一部をフレキシブルバスバー本体2に固定させるのであれば、どの箇所でも良い。
【0034】
しかしながら、絶縁体3の左側面3a側及び右側面3b側を熱収縮させ、フレキシブルバスバー本体2に固定させた方が好ましい。絶縁体3の位置がずれて、左端子部22の左ボルト孔22a及び/又は右端子部23の右ボルト孔23aに絶縁体3がかかってしまう(接触してしまう)と、第1部材B1と第2部材B2との間で電流が流れない等の誤動作が生じてしまう可能性があるためである。そのため、絶縁体3の左側面3a側及び右側面3b側を熱収縮させ、フレキシブルバスバー本体2に固定させた方が好ましい。
【0035】
また、本実施形態にて示した
図3に示すように、フレキシブルバスバー1を使用して、第1部材B1と第2部材B2とを連結させた後、その位置で固定させるのであれば、絶縁体3の全てに熱を加えて、絶縁体3を熱収縮させ、中間部21の上面21a及び下面21bに完全に固定しても良い。しかしながら、このままの方が好ましい。フレキシブルバスバー1に振動が生じた場合、完全に固定させてしまっていると振動が吸収できず、第1部材B1と、第2部材B2とを連結するために使用しているボルト(図示せず)が外れてしまい、第1部材B1と、第2部材B2とを連結しているフレキシブルバスバー1が外れてしまうという不具合が生じる可能性があるためである。そのため、このままの方が好ましい。
【0036】
また、本実施形態においては、フレキシブルバスバー本体2として、薄板状で柔軟性のある銅などの金属からなる導電材料箔20を積層させたものを例示したが、それに限らず、編組線や、電線束など、どのようなフレキシブルバスバーにも適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 フレキシブルバスバー
2 フレキシブルバスバー本体
22 左端子部
22a 左ボルト孔
23 右端子部
23a 右ボルト孔
3 絶縁体
3a 左側面
3b 右側面
S (絶縁体の)内部