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特開2024-132037ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132037
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20240920BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20240920BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240920BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C08L69/00
C08K3/34
C08K3/04
C08L23/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042659
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 晃司
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB212
4J002CG001
4J002DA038
4J002DJ017
4J002DJ037
4J002DJ046
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD098
4J002GP00
(57)【要約】
【課題】低ダスト性で、高い弾性率と高いウェルド強度を有するポリカーボネート樹脂組成物。
【解決手段】ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、タルク(B)を10質量部超30質量部以下、シリカ及び/又はノイブルグ珪土(C)を10質量部超40質量部以下を含有し、上記(B)と上記(C)の含有量の質量比(C)/(B)が0.6以上3以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、タルク(B)を10質量部超30質量部以下、シリカ及び/又はノイブルグ珪土(C)を10質量部超40質量部以下を含有し、上記(B)と上記(C)の含有量の質量比(C)/(B)が0.6以上3以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、カルボキシ基またはそれから誘導される基を含む重合体(D)を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.1~10質量部含有する請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、黒色着色剤(E)を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.1~5質量部含有する請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品。
【請求項5】
請求項4に記載の成形品を含む光学モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品に関し、詳しくは、低ダスト性で、高い弾性率と高いウェルド強度を達成するポリカーボネート樹脂組成物及び成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は優れた機械特性を有し、エンジニアリングプラスチックとして広く使用されており、利用分野によってはその性質、特に機械的物性を改善する目的で、種々の強化剤、添加剤を配合することが行われてきた。そして高い機械的強度、剛性の要求される分野においては、ガラス繊維等の繊維状の強化材を用いることが行われている。
【0003】
しかし、ポリカーボネート樹脂にガラス繊維を配合した樹脂組成物は機械的強度、剛性は優れるものの、繊維の配向による成形収縮率の異方性が生じてしまう欠点を有している。このため、特許文献1では、扁平断面ガラス繊維と板状強化材で強化された機械的強度、低異方性、流動性に優れ、さらに良好な難燃性を併せ持つガラス繊維強化難燃性樹脂組成物が提案されている。
【0004】
近年、例えばカメラ等のレンズを備える撮像機器又は光学機器においては、軽量化や低コスト化のため、レンズ及びそれを保持する鏡胴用筒状体(レンズ鏡筒)を樹脂化したカメラモジュール(レンズユニット)が採用されてきており、ポリカーボネート樹脂をガラス繊維で強化された材料も使用されている。しかし、ガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂は、ダスト性、即ちフィラーが脱落していきやすいという欠点があり、ガラス繊維で低ダスト性を解決するのは容易ではない。
【0005】
そして、最近は、レンズユニット、特にスマートフォンのカメラユニット等は、小型化と薄肉化が極限まで要求されており、さらに変形しにくく、且つ割れにくいポリカーボネート樹脂組成物材料が求められている。例えば、スマートフォンのカメラユニットにおいて、複数枚からなる円盤状の樹脂レンズを保持するレンズ鏡筒は、レンズ形状に合わせた複雑な形状の円筒状成形品となるため、これを射出成形にて製造する場合、複数のゲートを使って成形するため、必ずウェルド部が形成されることになる。そのため、このようなレンズ鏡筒等には、変形しにくいための高い弾性率と、さらにウェルド部でも割れにくい高いウェルド強度の両方を、高度のレベルで達成することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5021918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記状況に鑑みなされたものであり、その目的(課題)は、低ダスト性で、高い弾性率と高いウェルド強度を達成するポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、タルクに、シリカまたはノイブルグ珪土を、それぞれ特定の含有量で含有し、且つ両者を特定の量比で含有することにより、低ダスト性で、高い弾性率と高いウェルド強度を達成するポリカーボネート樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下のポリカーボネート樹脂組成物及び成形品に関する。
【0009】
1.ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、タルク(B)を10質量部超30質量部以下、シリカ及び/又はノイブルグ珪土(C)を10質量部超40質量部以下を含有し、上記(B)と上記(C)の含有量の質量比(C)/(B)が0.6以上3以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
2.さらに、カルボキシ基またはそれから誘導される基を含む重合体(D)を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.1~10質量部含有する上記1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
3.さらに、黒色着色剤(E)を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.1~5質量部含有する上記1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
4.上記1~3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品。
5.上記4に記載の成形品を含む光学モジュール。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、低ダスト性で、高い弾性率と高いウェルド強度を高いレベルで達成ことができる。タルクを配合すると弾性率は高くなるがウェルド強度が劣り、一方、シリカやノイブルグ珪土はウェルド強度に優れるが弾性率が劣る。本発明の樹脂組成物は、シリカ粒子及び/又はノイブルグ珪土(C)/タルク(B)の比を0.6以上3以下で組み合わせることにより、初めて高い弾性率とウェルド強度の両方を高いレベルで達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を構成する各成分等につき、詳細に説明する。
なお、本明細書において、「~」を用いてその前後を数値又は物性値で挟んで範囲を表現する場合、その前後の値を含む範囲を意味する。
【0012】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、タルク(B)を10質量部超30質量部以下、シリカ及び/又はノイブルグ珪土(C)を10質量部超40質量部以下を含有し、上記(B)と上記(C)の含有量の質量比(C)/(B)が0.6以上3以下であることを特徴とする。
【0013】
[ポリカーボネート樹脂(A)]
本発明において使用するポリカーボネート樹脂(A)は、特に限定されず、種々のものが用いられる。ポリカーボネート樹脂は、炭酸結合に直接結合する炭素がそれぞれ芳香族炭素である芳香族ポリカーボネート樹脂、及び脂肪族炭素である脂肪族ポリカーボネート樹脂に分類できるが、いずれを用いることもできる。中でも、ポリカーボネート樹脂(A)としては、耐熱性、機械的物性、電気的特性等の観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0014】
芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、芳香族ジヒドロキシ化合物の例を挙げると、
1,2-ジヒドロキシベンゼン、1,3-ジヒドロキシベンゼン(即ち、レゾルシノール)、1,4-ジヒドロキシベンゼン等のジヒドロキシベンゼン類;
2,5-ジヒドロキシビフェニル、2,2’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類;
【0015】
2,2’-ジヒドロキシ-1,1’-ビナフチル、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;
【0016】
2,2’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエーテル、1,4-ビス(3-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン等のジヒドロキシジアリールエーテル類;
【0017】
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールC)、
2,2-ビス(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1-ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、
1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)(4-プロペニルフェニル)メタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-ナフチルエタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、
4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ドデカン、
等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
【0018】
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3-ジメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,4-ジメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,5-ジメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-プロピル-5-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-tert-ブチル-シクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-tert-ブチル-シクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン、
等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
【0019】
9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、
9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;
【0020】
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、
4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、
4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;
等が挙げられる。
【0021】
これらの中ではビス(ヒドロキシアリール)アルカン類が好ましく、中でもビス(4-ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、特に耐衝撃性、耐熱性の点から2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールC)が好ましい。
なお、芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0022】
ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、カーボネート前駆体の例を挙げると、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート前駆体は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0023】
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
【0024】
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;ジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等のジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。
【0025】
ポリカーボネート樹脂(A)の製造方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。これらの中では、界面重合法、溶融エステル交換法によるものが耐湿熱性の向上効果がより高い点から好ましく、界面重合法が特に好ましい。
【0026】
ポリカーボネート樹脂(A)の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量(Mv)で、好ましくは10,000~50,000であり、より好ましくは10,000~40,000,中でも10,000~30,000、10,000~26,000であり、更には10,500以上、11,000以上、特には11,500以上、最も好ましくは12,000以上であり、さらには24,000以下、特に好ましくは20,000以下である。粘度平均分子量を上記範囲の下限値以上とすることにより、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の機械的強度をより向上させることができ、粘度平均分子量を上記範囲の上限値以下とすることにより、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の流動性低下を抑制して改善でき、成形加工性を高めて成形加工を容易に行えるようになる。
なお、粘度平均分子量の異なる2種類以上のポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合してもよい。
【0027】
なお、粘度平均分子量[Mv]とは、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度25℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10-4Mv0.83から算出される値を意味する。また、極限粘度[η]とは、各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
【数1】
【0028】
また、成形体の外観の向上や流動性の向上を図るため、ポリカーボネート樹脂(A)は、ポリカーボネートオリゴマーを含有していてもよい。このポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量[Mv]は、通常1,500以上、好ましくは2,000以上であり、また、通常9,500以下、好ましくは9,000以下である。さらに、含有されるポリカーボネートオリゴマーは、ポリカーボネート樹脂(ポリカーボネートオリゴマーを含む)の30質量%以下とすることが好ましい。
【0029】
さらに、ポリカーボネート樹脂(A)は、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂(いわゆるマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂)であってもよく、バージン原料とリサイクル樹脂の両方を含有することも好ましく、リサイクルポリカーボネート樹脂からなることでもよい。ポリカーボネート樹脂(A)中のリサイクルポリカーボネート樹脂の割合は40%以上、50%以上、60%以上、80%以上が好ましく、100%が特に好ましい。
【0030】
[タルク(B)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、タルク(B)を含有する。タルク(B)を含有することで樹脂組成物を低異方性かつ低線膨張とすることができ、剛性も向上させることができる。さらに、タルク(B)をシリカ及び/又はノイブルグ珪土(C)と共に所定の量と量比で含有することで、樹脂組成物を高い弾性率と高いウェルド強度を達成することができる。
【0031】
タルクは、周知のとおり、層状構造を持つ含水ケイ酸マグネシウムである。
タルク(B)としては、平均粒子径が0.1~10μmであるものが好ましく、0.3~8μm、特に0.7~5μmであれば更に好ましい。平均粒子径を0.1μm以上とすることで樹脂組成物の熱安定性がより向上する傾向にあり、また平均粒子径を10μm以下とすることで樹脂組成物の成形品外観や剛性がより向上する傾向にある。
なお、タルクは通常、鱗片状であるが、タルク(B)の平均粒子径は、その長径の長さの平均粒子径とし、レーザー回折・散乱法(ISO13320-1)により測定されるD50をいう。
【0032】
タルク(B)は、ポリカーボネート樹脂(A)との親和性を高めるために、表面処理が施されていることも好ましい。表面処理剤としては、具体的には例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のアルコール類、トリエチルアミン等のアルカノールアミン、オルガノポリシロキサン等の有機シリコーン系化合物、ステアリン酸等の高級脂肪酸、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩、ポリエチレンワックス、流動パラフィン等の炭化水素系滑剤、リジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸、ポリグリセリン及びそれらの誘導体、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等のカップリング剤から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0033】
また、タルク(B)は、樹脂組成物に含有させたときの表面外観性および熱安定性の観点から、バインダーを用いて造粒した顆粒状のものであることも好ましい。顆粒状タルクである場合の嵩密度は0.4~1.5g/mlであることが好ましい。
【0034】
タルク(B)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、10質量部超30質量部以下である。このような範囲で、且つシリカ及び/又はノイブルグ珪土(C)の所定量と組み合わせて含有することで、高い弾性率と高いウェルド強度が得られる。タルクの含有量が、10質量部以下では、十分な弾性率を有することが出来ず、また剛性が不足し、30質量部を上回ると、生産安定性が低下しウェルド強度や靱性も低下する。
タルク(B)の好ましい含有量は11質量部以上、より好ましくは12質量部以上、さらに好ましくは13質量部以上であり、また好ましくは28質量部以下、より好ましくは26質量部以下である。
【0035】
[シリカ、ノイブルグ珪土(C)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、シリカまたはノイブルグ珪土(C)を含有し、タルク(B)と共に所定の量と量比で含有することで、樹脂組成物を高い弾性率と高いウェルド強度を達成することができる。
【0036】
シリカ(C1)としては、フューム、沈殿または採掘形態から得られた微粉砕シリカ、シリカ粉末等であり、好ましくは粒子状であるシリカ粒子が好ましい。
シリカ(C1)の平均粒子径は、0.03~3μmが好ましく、より好ましくは0.05μm以上、中でも0.1μm以上、0.2μm以上、特には0.5μm以上が好ましく、また、より好ましくは2.5μm以下、中でも2μm以下、1.5μm以下、特には1μm以下が好ましい。
シリカ(C1)の平均粒子径は、長径と短径がある場合は、長径の長さの平均粒子径とし、レーザー回折・散乱法(ISO13320-1)により測定されるD50をいう。
【0037】
ノイブルグ珪土(C2)は、ドイツ南部のノイブルグ地方で産出される珪土であり、球状で非結晶(アモルファス)のシリカと板状のカオリナイトからなる天然鉱物である。
ノイブルグ珪土(C2)の平均粒子径は1~10μm程度が好ましく、化学組成はSiO分82~91質量%程度、Al分5~11質量%程度であることが好ましい。
ノイブルグ珪土(C2)の平均粒子径は、長径と短径がある場合は、長径の長さの平均粒子径とし、レーザー回折・散乱法(ISO13320-1)により測定されるD50をいう。
【0038】
シリカ(C1)及び/又はノイブルグ珪土(C2)は、ポリカーボネート樹脂(A)との密着性を向上させるため、表面処理剤によって表面処理されていることも好ましい。
表面処理は、例えば、シラン系、ポリシロキサン系、チタネート系、アルミネート系、ジルコネート系の各種カップリング剤、カチオン、アニオン、両性、中性の各種界面活性剤、フェノール樹脂等の極性基を有する樹脂等を用いて行うことができる。
【0039】
表面処理に用いる表面処理剤の量は、シリカ及び/又はノイブルグ珪土(C)と表面処理剤の合計100質量%基準で、20質量%未満、中でも15質量%未満、10質量%未満、特に6質量%未満とすることが望ましい。20質量%以上と多くすると樹脂組成物の耐久性を低下させることになりやすい。また、表面処理の効果を充分に発揮させるためには、0.05質量%以上とすることが望ましい。
【0040】
シリカ及び/又はノイブルグ珪土(C)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、10質量部超40質量部以下であり、前記タルト(B)との含有量の質量比(C)/(B)が0.6以上3以下である。シリカ及び/又はノイブルグ珪土(C)の含有量が、10質量部以下ではウェルド強度が低下し、40質量部を超えると靭性が低下する。好ましい含有量は、11質量部以上、中でも12質量部以上であり、35質量部以下、中でも30質量部以下、特に28質量部以下が好ましい。シリカ、ノイブルグ珪土(C)は1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、その合計量が上記範囲となる。
そして、シリカ及び/又はノイブルグ珪土(C)の含有量/タルト(B)の含有量比が0.6以上3以下の範囲にあることで、後記実施例に示すように、引張ウェルド強度と曲げウェルド強度、且つ曲げ弾性率と引張弾性率を十分高いレベルで達成できる。(C)/(B)が0.6を下回ると引張ウェルド強度と曲げウェルド強度が悪くなり、3を超えてもウェルド特性が悪化する。(C)/(B)は好ましくは0.7以上、中でも0.8以上、好ましくは2.8以下、中でも2.6以下が好ましい。
【0041】
[カルボキシ基またはそれから誘導される基を含む重合体(D)]
本発明の樹脂組成物は、カルボキシ基及び/又はそれから誘導される基を含む重合体(D)を含むことが好ましい。カルボキシ基及び/又はそれから誘導される基を含む重合体(D)を含むことにより、タルク(B)あるいはシリカ及び/又はノイブルグ珪土(C)による樹脂組成物の劣化を防止しやすく靭性を向上させやすく、弾性率とウェルド強度をより向上させることができる。
【0042】
カルボキシ基から誘導される基としては、ハロゲン化アシル基、ジカルボン酸無水物基、エステル基、アミド基、ニトリル基等が挙げられる。中でも、カルボキシ基及び/又はジカルボン酸無水物基を含むことが好ましく、ジカルボン酸無水物基を含む重合体であることが特に好ましい。
【0043】
該カルボキシ基またはそれから誘導される基は、重合体(C)の主鎖、側鎖のいずれにあってもよい。
重合体(D)を製造する際に、カルボキシ基またはそれから誘導される基を含む単量体(d1)とその他共重合可能な単量体(d2)を用い、これらを共重合することで主鎖にカルボキシ基またはそれから誘導される基を含む重合体(D)を得ることができる。
また、基材となる重合体(dベース樹脂)をあらかじめ準備し、有機過酸化物や熱分解法等によってラジカルを発生させ、カルボキシ基またはそれから誘導される基を含む単量体(d1)を重合体に対して反応させることで、側鎖にカルボキシ基またはそれから誘導される基を含む重合体(D)を得ることもできる。
【0044】
中でも、重合体(D)の主鎖にカルボキシ基またはそれから誘導される基を含むことが好ましい。
【0045】
カルボキシ基またはそれから誘導される基を含む単量体(d1)としては、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、メチルフマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、グルタコン酸、ノルボルナン-5-エン-2,3-ジカルボン酸等のカルボキシ基含有単量体や、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物等の酸無水物基含有単量体が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、二種以上を併用しても良い。
中でも、酸無水物基含有単量体として、炭素数が4以上10以下の酸無水物基含有単量体であることが好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。
【0046】
共重合可能な単量体(d2)としては、特に限定されないが、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-メチル-1-ブテン、ペンテン、ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン等の脂肪族オレフィン単量体;シクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン、ノルボルネン等の脂環式オレフィン単量体;ブタジエン、イソプレン、ヘキサジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、ジビニルベンゼン等のジエン単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、i-ブチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート単量体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート等のアルキルアクリレート単量体;スチレン、アルキル置換スチレンやアルキル置換イソプロペニルベンゼン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体等が挙げられる。
これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
中でも、単量体(d2)は、脂肪族オレフィン単量体を含むことが好ましく、α-オレフィン単量体を含むことがさらに好ましい。なかでも、α-オレフィンの炭素原子数は、10以上であることが好ましく、16以上であることがより好ましく、24以上であることがさらに好ましく、一方、80以下であることが好ましく、72以下であることがより好ましく、64以下であることがさらに好ましい。
炭素原子数が10以上80以下のα-オレフィン単量体を含むことで、重合体(C)とポリアミド樹脂(A)との反応性がさらに高まり、樹脂組成物の溶融粘度を制御しやすくなる。
【0048】
前記した基材となる重合体(dベース樹脂)を構成する成分としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-メチル-1-ブテン、ペンテン、ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン等の脂肪族オレフィン;シクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン、ノルボルネン等の脂環式オレフィン;ブタジエン、イソプレン、ヘキサジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、ジビニルベンゼン等のジエン類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、i-ブチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート等のアルキルアクリレート;スチレン、アルキル置換スチレンやアルキル置換イソプロペニルベンゼン等の芳香族ビニル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル等が挙げられる。
これらは1種の単独重合体でもよく、2種以上の共重合体でもよい。さらに、得られた重合体に対して水素化等の後処理を行ってもよい。
中でも、ポリカーボネート樹脂(A)との相溶性に優れ、重合体(D)としたときの耐熱分解性にも優れることから、基材となる重合体(dベース樹脂)は脂肪族オレフィン単量体を含む単量体群に由来する重合体を含むことが好ましく、エチレンまたはプロピレンを含む単量体群に由来する重合体を含むことがさらに好ましい。
【0049】
重合体(D)の分子量としては、特に制限はないが、GPC換算の質量平均分子量は0.1万~20万であることが好ましく、0.1万~15万であることがより好ましく、0.3万~10万であることがさらに好ましく、1万~5万であることが最も好ましい。
【0050】
重合体(D)の好ましい含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.5~10質量部である。このような範囲であることで、耐衝撃性が高くなりやすく、また発生ガスによる金型汚染が少なくなりやすい。共重合体(D)の含有量が、0.5質量部を下回ると、成形品の耐衝撃性が低下しやすく、10質量部を上回ると、成形時の発生ガスに起因する金型汚染が増加しやすい。共重合体(D)のより好ましい含有量は、0.5~5質量部であり、より好ましくは0.5~3質量部である。
【0051】
[黒色着色剤(E)]
本発明の樹脂組成物は、黒色着色剤を含んでいてもよい。黒色着色剤を配合することにより、遮光性に優れた成形品が得られ、特にレンズ鏡筒等に好適である。
黒色着色剤(E)としては、カーボンブラックが好ましく例示される。
また、カーボンブラック等の黒色着色剤を配合する場合、押出時のハンドリング性改良、樹脂組成物中への分散性改良の目的のために、他の樹脂とのマスターバッチの形でポリカーボネート樹脂(A)と混練することが好ましい。他の樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂等が好ましく挙げられる。
【0052】
黒色着色剤(E)を含有する場合の量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上であり、より好ましくは0.5質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、中でも5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。着色剤の含有割合が多すぎると耐衝撃性が十分でなくなる可能性がある。
本発明の成形品は、黒色着色剤を、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0053】
[添加剤等]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上記した以外の他の添加剤、例えば、難燃剤、滴下防止剤(フッ素樹脂等)、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤)、離型剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、可塑剤、相溶化剤などの添加剤を含有することができる。これらの添加剤あるいは他の樹脂は1種または2種以上を配合してもよい。
【0054】
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)以外の他の樹脂を含有することもできる。その他の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリスルホン樹脂等が挙げられる。その他の樹脂は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
ただし、ポリカーボネート樹脂(A)以外の他の樹脂を含有する場合の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、20質量部以下とすることが好ましく、10質量部以下がより好ましく、さらには5質量部以下、特には3質量部以下が好ましい。
【0055】
[ポリカーボネート樹脂組成物の製造]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、上記した必須成分、並びに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常260~320℃の範囲である。
【0056】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上記したポリカーボネート樹脂組成物をペレタイズしたペレットを各種の成形法で成形して各種成形品を製造することができる。またペレットを経由せずに、押出機で溶融混練された樹脂を直接、成形して成形品にすることもできる。
【0057】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ISO178に基づき測定した曲げ弾性率が、好ましくは3500MPa以上であり、より好ましくは3600MPa以上、特に好ましくは3700MPa以上であり、また、好ましくは15000MPa以下である。
ISO527-1及びISO527-2に基づき測定した引張弾性率が、好ましくは3500MPa以上、より好ましくは3600MPa以上であり、また、好ましくは15000MPa以下である。
【0058】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、引張ウェルド強度が、好ましくは25MPa以上であり、より好ましくは28MPa以上、特に好ましくは30MPa以上であり、また、好ましくは150MPa以下である。
曲げウェルド強度は、好ましくは45MPa以上であり、より好ましくは48MPa以上、特に好ましくは50MPa以上であり、また、好ましくは150MPa以下である。
引張ウェルド強度及び曲げウェルド強度の具体的な測定法の詳細は、実施例に記載する通りである。
【0059】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物から得られた成形品は、耐衝撃性と曲げ弾性率に優れ、さらに低い線膨張率と低異方性を示し、線膨脹係数がアルミニウムやマグネシウム金属等と同レベルである。
従って、その用途としては、例えば、カメラ、望遠鏡、顕微鏡、投影露光装置、光学測定装置等の筐体部品やレンズ鏡筒等、スマートフォン用カメラ、車載カメラ、ドライブレコーダー、監視カメラ、ドローン搭載用小型カメラ等の筐体部品や機構部品等、車の衝突防止センサー、バックモニター用センサー、車速センサー、温度センサー、防犯用センサー等のセンサーの筐体や機構部品、自動車、バイク、自転車、車椅子等のフレーム部材や外板部材、家庭用テレビ、パソコン用ディスプレイ、車載モニター、スマートフォン、ヘッドマウントディスプレイのパネル部材や機構部品等、バーコードリーダー、スキャナー等の読み取り装置の筐体や機構部品、エアコン、空気清浄器、コンプレッサー等の筐体や機構部品、有線・無線LANルーター、WIFI受信機、WIFIストレージ、USBメモリ、メモリーカード、カードリーダー、データーサーバー保存機器等の情報機器の筐体や機構部品、光学機器、半導体パッケージ基板、半導体製造装置などの製造・加工設備部品、計測機器部品等が好ましく挙げられる。
【0060】
特に、本発明のポリカーボネート樹脂組成物から得られた成形品は、光学機器部品に好適に用いることができ、中でも高弾性率と高ウェルド強度の両方を兼ね備えることが求められる、ウェルド部を有する、薄肉で小型のレンズ保持部を有する部品に好適であり、特に成形品を含むカメラモジュール、例えばレンズユニットを構成するレンズ鏡筒やレンズホルダー、アクチュエーターユニットを構成するスリーブや台座、ハウジング等のカメラモジュールに好適に用いられる。
特にスマートフォン等のカメラユニットにおける、複数枚からなる円盤状の樹脂レンズを保持するレンズ鏡筒は、レンズ形状に合わせた複雑な形状の円筒状成形品となり、複数のゲートを使って射出成形するため、必ずウェルド部が形成されることになるので、本発明のポリカーボネート樹脂組成物はこのような高弾性率と高ウェルド強度の両方を兼ね備えることが求められる成形品向けに特に好適である。
【実施例0061】
以下、本発明を実施例により、更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
以下の実施例及び比較例で使用した原料は、以下の表1の通りである。
【0062】
【表1】
【0063】
(実施例1~7、比較例1~10)
[樹脂組成物ペレットの製造]
上記した各成分を、表2以下に記載した割合(全て質量部)で配合し、タンブラーミキサーにて均一混合した後、ホッパーから、押出機にフィードして溶融混練した。
押出機としては、日本製鋼所社製二軸押出機(TEX25αIII、L/D=52.5)を用い、スクリュー回転数200rpm、シリンダー温度300℃、吐出量25kg/hrの条件で溶融押出した。押出されたストランドを水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化した。
【0064】
[ISO多目的試験片の成形]
上記で得られたペレットを100℃、5時間乾燥後、射出成形機(日本製鋼所製「J55-60H」)を用い、シリンダー設定温度280~300℃、金型温度100℃、射出時間2秒、成形サイクル40秒の条件で射出成形を行い、ISO多目的試験片(4mm厚)を射出成形した。
【0065】
[曲げ弾性率]
ISO178に準拠して、上記ISO試験片(4mm)を用い、23℃において、曲げ弾性率(単位:MPa)を測定した。
[引張弾性率]
上記ISO試験片(4mm)を用い、ISO527-1及びISO527-2に準拠して、引張弾性率(単位:MPa)を測定した。
【0066】
[引張ウェルド強度、曲げウェルド強度]
前記で得られたペレットを原料として、射出成形機(住友重機械社製「SG-75SYCAP-MIII」)を使用し、シリンダー温度を280℃~300℃、金型温度を100℃に設定して、中央にウェルドを有する引張ウェルド強度及び曲げウェルド強度試験用の試験片(厚さ4mmのもの)をISOに準拠して成形した。
ISO527-1及びISO527-2に準拠して、引張ウェルド強度(単位:MPa)を、ISO178に準拠して23℃において、曲げウェルド強度(単位:MPa)を測定した。
以上の評価結果を以下の表2以下に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、低ダスト性で、高い弾性率と高いウエルド強度を達成するので、光学機器部品他、各種の用途に好適に使用でき、産業上の利用性は高い。