(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132050
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】流体移送装置
(51)【国際特許分類】
F04D 13/02 20060101AFI20240920BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F04D13/02 D
F04D13/02 G
H02K7/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042685
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】517221310
【氏名又は名称】コアレスモータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108947
【弁理士】
【氏名又は名称】涌井 謙一
(74)【代理人】
【識別番号】100117086
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典弘
(74)【代理人】
【識別番号】100124383
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一永
(74)【代理人】
【識別番号】100173392
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100189290
【弁理士】
【氏名又は名称】三井 直人
(72)【発明者】
【氏名】白木 学
(72)【発明者】
【氏名】土屋 一郎
【テーマコード(参考)】
3H130
5H607
【Fターム(参考)】
3H130AA02
3H130AA12
3H130AB12
3H130AB22
3H130AB52
3H130AC30
3H130BA66C
3H130CB01
3H130DA02
3H130DD01X
3H130EA02C
3H130EB01C
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607CC01
5H607DD02
5H607FF08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】筒状体からなる流体移送管の内部を流動する流体に対して流動方向への推進力を与える流体移送装置を提供する。
【解決手段】回転中心軸に対して同心円状に配置される円筒状の内ヨークとその半径方向外側面に配備される円筒状のマグネットとからなる円筒状の回転子と、内ヨークの半径方向外側で、回転中心軸に対して同心円状に配置される円筒状の外ヨークとその半径方向内側に配備される円筒状のコイルとからなる円筒状の固定子とを備えているスロットレスモータの構成からなる流体移送装置。コイルの半径方向内側面とマグネットの半径方向外側面との間に形成されている空間部が回転中心軸が伸びる軸方向で流体が流動する第一の流体流路になる。円筒状のマグネットは、回転中心軸を中心とする円周方向で互いの間に間隔を空けていると共に、軸方向で互いの間に間隔を空けている複数個のマグネット細片から形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転中心軸に対して同心円状に配置される円筒状の内ヨークと、当該内ヨークの半径方向外側面に配備される円筒状のマグネットとからなる円筒状の回転子と、
前記内ヨークの半径方向外側で、前記回転中心軸に対して同心円状に配置される円筒状の外ヨークと、当該外ヨークの半径方向内側に配備される円筒状のコイルとからなる円筒状の固定子と
を備えているスロットレスモータの構成からなり、前記コイルの半径方向内側面と前記マグネットの半径方向外側面との間に形成されている空間部が、前記回転中心軸が伸びる軸方向で流体が流動する第一の流体流路となる液体移送装置であって、
円筒状の前記マグネットは、前記回転中心軸を中心とする円周方向で互いの間に間隔を空けていると共に、前記軸方向で互いの間に間隔を空けている複数個のマグネット細片から形成されていて、
前記円周方向で隣接する前記マグネット細片の対向する一方の円周方向辺部と他方の円周方向辺部との間に、前記軸方向に伸びる第一の溝が形成されることで前記円周方向で互いに間に間隔を空けて前記第一の溝が複数本形成され、
前記軸方向で隣接する前記マグネット細片の対向する一方の軸方向辺部と他方の軸方向辺部との間に前記第一の溝に対して斜め方向に交差する第二の溝が形成されることで前記第一の溝に対して斜め方向に交差する螺旋状の溝が前記軸方向で互いに間に間隔を空けて複数本形成され、
円筒状の前記マグネットの前記流体の流動方向における上流側の端部に、前記第一の溝及び前記第二の溝に向かって次第に円周方向の間隔を狭めつつ前記第一の溝及び前記第二の溝に連続する流体導入口部が、
円筒状の前記マグネットの前記流体の流動方向における下流側の端部に、前記第一の溝及び前記第二の溝から連続して下流側の前記端部に向かって次第に円周方向の間隔が広がる流体導出口部が、それぞれ形成されている
流体移送装置。
【請求項2】
前記軸方向で配備されている複数個の前記マグネット細片の中には、一方の前記円周方向辺部の縁辺と、一方の前記軸方向辺部の縁辺と、他方の前記円周方向辺部の縁辺と、他方の前記軸方向辺部の縁辺とによって区画される、前記マグネットの半径方向外側から見て略平行四辺形形状のマグネット細片が少なくとも一個含まれている
請求項1記載の流体移送装置。
【請求項3】
円筒状の前記コイルの半径方向内側に透磁性材料からなる円筒状のパイプが配備されていて、前記パイプの半径方向内側面と前記マグネットの半径方向外側面との間に形成されている空間部が、前記第一の流体流路になる請求項1又は2記載の流体移送装置。
【請求項4】
前記マグネットを形成している複数の前記マグネット細片は前記内ヨークの半径方向外側面に固定されている請求項1又は2記載の流体移送装置。
【請求項5】
前記内ヨークの半径方向内側が、前記軸方向で前記流体が流動する第二の流路になる請求項1又は2記載の流体移送装置。
【請求項6】
前記内ヨークと一体に回転する回転軸が前記回転中心軸の位置に配置されている請求項1又は2記載の流体移送装置。
【請求項7】
前記外ヨークは電磁鋼板又は絶縁被覆処理した磁性鉄粉の圧粉成形体からなる請求項1又は2記載の流体移送装置。
【請求項8】
前記内ヨークは強磁性体からなる請求項7記載の流体移送装置。
【請求項9】
略平行四辺形形状の前記マグネット細片は、前記内ヨークと同等の前記軸方向の長さで、前記内ヨークの半径方向外側面に沿うように湾曲している磁性帯板を、前記軸方向における中心側で、前記略平行四辺形形状に切断することで調製されている請求項1又は2記載の流体移送装置。
【請求項10】
略平行四辺形形状の切断が行われた後の前記磁性帯板の前記軸方向における端部の残余部分が、前記マグネットの前記軸方向における端部側の前記マグネット細片に使用される請求項9記載の流体移送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流体移送管の内部を流動する液体、気体、等の流体に対して前記流動方向に流動する推進力を与える流体移送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体移送管の内部を流動する液体、等の流体に対して前記流動方向に流動する推進力を与える流体移送装置の一つとして軸流ポンプが知られている。軸流ポンプはその回転中心軸が伸びる方向に流体を送り出すもので、例えば、自動車用エンジンの冷却水を循環させることに使用されるものが知られている(特許文献1)。
【0003】
本願出願人は、流体が内部を移送されていく流体移送管の途中に配備されて使用される流体移送装置を提案している(特許文献2)。内部を流体が移送されていく筒状体で、断面環状の磁界を形成する磁石体と、当該磁石体による断面環状の磁界の中を筒状体が伸びる方向に伸びる円筒状のコイルとを備えている。断面環状の磁界を形成する磁石体は、筒状体の中心を伸びる中心軸の周方向に互いの間に所定の間隔をあけて配備されている複数個の磁石から構成されている。コイルに通電することで、モータの原理によって、磁石体を構成する複数の磁石が周方向に回転する。この回転する複数個の磁石が流体に対して流動方向に流動する推進力を与える羽根や、プロペラの役割を果たし、流体に流動方向に流動する推進力を与えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-228977号公報
【特許文献2】特開2022-145462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、流体移送管の内部を流動する液体、気体、等の流体に対して前記流動方向に流動する推進力を与える流体移送装置を提供することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の流体移送装置は、液体、気体、等の流体が内部を移送されていく流体移送管の途中などに配備する等して使用することができる。
【0007】
回転中心軸に対して同心円状に配置される円筒状の内ヨークとその半径方向外側面に配備される円筒状のマグネットとからなる円筒状の回転子と、内ヨークの半径方向外側で、回転中心軸に対して同心円状に配置される円筒状の外ヨークとその半径方向内側に配備される円筒状のコイルとからなる円筒状の固定子とを備えているスロットレスモータの構成からなる流体移送装置である。
【0008】
前記コイルの半径方向内側面と前記マグネットの半径方向外側面との間に形成されている空間部が回転中心軸が伸びる軸方向で流体が流動する第一の流体流路になる。
【0009】
円筒状の前記マグネットは、回転中心軸を中心とする円周方向で互いの間に間隔を空けていると共に、軸方向で互いの間に間隔を空けている複数個のマグネット細片から形成されている。
【0010】
円周方向で隣接するマグネット細片同士の間に軸方向に伸びる第一の溝が形成されることで円周方向に間隔を空けて複数本の第一の溝が形成されている。
【0011】
第一の溝に対して斜め方向に交差する第二の溝が軸方向で隣接するマグネット細片同士の間に形成されることで第一の溝に対して斜め方向に交差する螺旋状の溝が軸方向で互いの間に間隔を空けて複数本形成されている。
【0012】
円筒状のマグネットの流体流動方向における上流側の端部に、第一の溝及び第二の溝に向かって次第に円周方向の間隔を狭めつつ第一の溝及び第二の溝に連続する流体導入口部が形成されている。
【0013】
下流側の端部に、第一の溝及び第二の溝から連続して下流側の端部に向かって次第に円周方向の間隔が広がる流体導出口部が形成されている。
【0014】
流体が流動する方向に伸びる円筒状の回転子が備えている内ヨーク、マグネットと、同じく円筒状の固定子が備えている外ヨークによって断面環状の磁界が形成され、この磁界の中に、流体が流動する方向に伸びる円筒状のコイルが配備されているスロットレスモータの構成で、前記コイルに通電すると、モータの原理によって回転子(内ヨーク、マグネット)が回転中心軸を中心として円周方向に回転する。
【0015】
これにより、複数個のマグネット細片も回転中心軸を中心として円周方向に回転し、これが流体に対して流動方向に流動する推進力を与える羽根、プロペラの役割を果たす。これによって、流体移送管の内部を流動する液体や気体、等の流体に対して流動方向への推進力が付与され、流動方向への推進力付与を受けた流体移送管の内部を流動していく。
【0016】
本発明の流体移送装置の代表的な態様は以下の通りである。
[1]
回転中心軸に対して同心円状に配置される円筒状の内ヨークと、当該内ヨークの半径方向外側面に配備される円筒状のマグネットとからなる円筒状の回転子と、
前記内ヨークの半径方向外側で、前記回転中心軸に対して同心円状に配置される円筒状の外ヨークと、当該外ヨークの半径方向内側に配備される円筒状のコイルとからなる円筒状の固定子と
を備えているスロットレスモータの構成からなり、前記コイルの半径方向内側面と前記マグネットの半径方向外側面との間に形成されている空間部が、前記回転中心軸が伸びる軸方向で流体が流動する第一の流体流路となる液体移送装置であって、
円筒状の前記マグネットは、前記回転中心軸を中心とする円周方向で互いの間に間隔を空けていると共に、前記軸方向で互いの間に間隔を空けている複数個のマグネット細片から形成されていて、
前記円周方向で隣接する前記マグネット細片の対向する一方の円周方向辺部と他方の円周方向辺部との間に、前記軸方向に伸びる第一の溝が形成されることで前記円周方向で互いに間に間隔を空けて前記第一の溝が複数本形成され、
前記軸方向で隣接する前記マグネット細片の対向する一方の軸方向辺部と他方の軸方向辺部との間に前記第一の溝に対して斜め方向に交差する第二の溝が形成されることで前記第一の溝に対して斜め方向に交差する螺旋状の溝が前記軸方向で互いに間に間隔を空けて複数本形成され、
円筒状の前記マグネットの前記流体の流動方向における上流側の端部に、前記第一の溝及び前記第二の溝に向かって次第に円周方向の間隔を狭めつつ前記第一の溝及び前記第二の溝に連続する流体導入口部が、
円筒状の前記マグネットの前記流体の流動方向における下流側の端部に、前記第一の溝及び前記第二の溝から連続して下流側の前記端部に向かって次第に円周方向の間隔が広がる流体導出口部が、それぞれ形成されている
流体移送装置。
【0017】
[2]
前記軸方向で配備されている複数個の前記マグネット細片の中には、一方の前記円周方向辺部の縁辺と、一方の前記軸方向辺部の縁辺と、他方の前記円周方向辺部の縁辺と、他方の前記軸方向辺部の縁辺とによって区画される、前記マグネットの半径方向外側から見て略平行四辺形形状のマグネット細片が少なくとも一個含まれている[1]の流体移送装置。
【0018】
[3]
円筒状の前記コイルの半径方向内側に透磁性材料からなる円筒状のパイプが配備されていて、前記パイプの半径方向内側面と前記マグネットの半径方向外側面との間に形成されている空間部が、前記第一の流体流路になる[1]又は[2]の流体移送装置。
【0019】
[4]
前記マグネットを形成している複数の前記マグネット細片は前記内ヨークの半径方向外側面に固定されている[1]~[3]のいずれかの流体移送装置。
【0020】
[5]
前記内ヨークの半径方向内側が、前記軸方向で前記流体が流動する第二の流路になる[1]~[4]のいずれかの流体移送装置。
【0021】
[6]
前記内ヨークと一体に回転する回転軸が前記回転中心軸の位置に配置されている[1]~[5]のいずれかの流体移送装置。
【0022】
[7]
前記外ヨークは電磁鋼板又は絶縁被覆処理した磁性鉄粉の圧粉成形体からなる[1]~[6]のいずれかの流体移送装置。
【0023】
[8]
前記内ヨークは強磁性体からなる[7]の流体移送装置。
【0024】
[9]
略平行四辺形形状の前記マグネット細片は、前記内ヨークと同等の前記軸方向の長さで、前記内ヨークの半径方向外側面に沿うように湾曲している磁性帯板を、前記軸方向における中心側で、前記略平行四辺形形状に切断することで調製されている[1]~[8]のいずれかの流体移送装置。
【0025】
[10]
略平行四辺形形状の切断が行われた後の前記磁性帯板の前記軸方向における端部の残余部分が、前記マグネットの前記軸方向における端部側の前記マグネット細片に使用される[9]の流体移送装置。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、流体移送管の内部を流動する液体、気体、等の流体に対して前記流動方向に流動する推進力を与える流体移送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】この発明の一実施形態に係る流体移送装置の一部を省略した横断面図。
【
図2】
図1図示の流体移送装置で、円筒状の内ヨークの半径方向外側面に配備される円筒状マグネットの一実施形態を説明する側面図。
【
図6】半径方向で対向する位置関係になる円筒状のコイルと、複数個のマグネット細片から形成される円筒状のマグネットとの間の関係を一部を省略して説明する図。
【
図7】
図6図示の関係で円筒状のコイルと円筒状のマグネットとが半径方向で対向しているときの、回転子の回転方向と、流体が流動する方向の関係を説明する図。
【
図8】
図7で円筒状のマグネットの流体流動方向における上流側の端部に形成される流体導入口部及び、下流側の端部に形成される流体導出口部を説明する図。
【
図9】
図2~
図5に図示されている形態のマグネット細片を磁性帯板から切り出して調製する一例を説明する図。
【
図10】
図1の流体移送装置の一部を省略した縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図を用いて本発明の流体移送装置の一実施形態を説明する。
【0029】
図1図示の実施形態では、液体、気体、等の流体を流動させていく流体移送管(チューブなど)を構成する筒状体10の内部に本実施形態の流体移送装置1が配備されている。筒状体10における筒状部10cの内側に流体移送装置1が配備され、筒状部10cの左右両側は図示を省略している流体移送管(チューブなど)にそれぞれ筒状部10a、10bを介して連続している。
【0030】
筒状部10cの左右両側端と筒状部10a、10bとの間は螺着など適宜の方法で固定する構造にすることができる。
【0031】
この実施形態の流体移送装置1は、流体移送管(チューブなど)を構成する筒状体10が伸びる方向、すなわち、流体が流動する方向に伸びる円筒状の回転子と、同じく流体が流動する方向に伸びる円筒状の固定子とを備えているスロットレスモータの構成からなる。
【0032】
円筒状の回転子は、この回転子の回転運動の中心となる回転中心軸に対して同心円状に配置される円筒状の内ヨーク3と、内ヨーク3の半径方向外側面に配備される円筒状のマグネット4とからで構成されている。
【0033】
円筒状の固定子は、内ヨーク3の半径方向外側で、前記回転中心軸に対して同心円状に配置される円筒状の外ヨーク7と、外ヨーク7の半径方向内側に配備される円筒状のコイル6とからで構成されている。
【0034】
流体が流動する方向に伸びる円筒状の回転子が備えている内ヨーク3、マグネット4と、同じく流体が流動する方向に伸びる円筒状の固定子が備えている外ヨーク7によって断面環状の磁界が形成される。この磁界の中に、流体が流動する方向に伸びる円筒状のコイル6が配備されてスロットレスモータが構成される。
【0035】
上述したように、内ヨーク3、マグネット4、外ヨーク7によって断面環状の磁界が形成されるので、内ヨーク3の材質は磁性体、好ましくは、強磁性体にすることができる。また、外ヨーク7の材質も磁性体、好ましくは、強磁性体にすることができる。強磁性体の中でも、電磁鋼板、等の強磁性体を使用すれば、渦電流損を抑える上で有効である。外ヨーク7には電磁鋼板の他に、絶縁被覆処理した磁性鉄粉の圧粉成形体を使用することも有効である。
【0036】
円筒状のコイル6には、モータや発電機などに使用される中空の円筒型のコイルを採用することができる。モータや発電機などに使用される中空の円筒型のコイルとしては、例えば、本願出願人による特許第特許第6989204号や特許第6948748号で提案している中空円筒型コイルを用いることができる。
【0037】
流体移送装置1が、例えば、三相モータで構成される場合で、円筒状のコイル6の円周方向にコイル単体を複数個配置してコイル6を構成するときには、コイル単体は、それぞれ、U相、V相、W相のいずれかを構成するコイル体になる。この場合、円筒状のコイル6の円周方向に連続的に配置されてコイル6の周壁を形成する複数個のコイル単体は、円周方向で次位の同相のコイル単体と電気的に接続する構造にすることができる。
【0038】
このような円筒状コイルの構成、コイル単体におけるコイル巻線となる線材の巻回方法などについては、上述した本願出願人による特許第特許第6989204号や特許第6948748号の記載を援用して説明を省略する。なお、円筒状コイルの構成などについては、これらの特許公報の記載に限定されるものではない。
【0039】
円筒状の内ヨーク3、マグネット4とからで構成されている回転子がその回転運動の中心となる回転中心軸の円周方向に回転可能になっている構造の一例を
図10、
図1を参照して説明する。
【0040】
図示の実施形態では、
図10図示のように、筒状体10における筒状部10cの内周壁面から半径方向内側に向かって支持腕14a、14bが伸びている。円筒状の内ヨーク3、マグネット4とからで構成されている回転子の回転運動の中心となる回転中心軸の位置で軸方向に伸びる軸2が、支持腕14a、14bの半径方向における内側部によって支持されている(
図1、
図10)。
【0041】
軸2の先端側(
図1における左端側)に回転子支持軸15が回転可能に支持されている。回転子支持軸15は、その半径方向の中心部に軸2が貫通する孔を備えていて、回転子支持軸15の半径方向の中心部が、軸2の先端側に回転可能に支持される構造になっている。
【0042】
回転子を構成する内ヨーク3は、半径方向の中心部が回転子支持軸15に支持されている回転子支持腕16a、16bの半径方向外側部15dに支持されている。
【0043】
回転子支持軸15が、円筒状の内ヨーク3、マグネット4とからで構成されている回転子の回転運動の中心となる回転中心軸の位置に配置されていて、内ヨーク3と一体に回転する回転軸の役割を果たす。
【0044】
図示の実施形態では、このような構成・構造によって、円筒状の内ヨーク3、マグネット4とからで構成される回転子は、軸2、回転子支持軸15を中心として
図10に矢印17で示すように円周方向に回転可能になっている。
【0045】
円筒状の内ヨーク3、マグネット4とからで構成されている回転子がその回転運動の中心となる回転中心軸の円周方向に回転可能になっている構造であれば、上述した構造以外の種々の構成、構造を採用できる。
【0046】
図1図示の実施形態では、筒状体10における筒状部10aに制御・駆動用の導線を取り入れる取入部19(
図1)が形成されている。ここを介して不図示の制御信号ケーブル、電源ケーブルが接続される。なお、各図面において、制御、駆動用の導線などの図示は省略している。
【0047】
図示していないが、
図1の筒状体10における筒状部10aと筒状部10bとが連続して筒状体からなる流体移送管を構成し、流体移送装置1を構成する円筒状の固定子は、流体移送管の内周壁から半径方向内側に向かって延びる支持椀によって支持されて流体移送管の内側に配備される構成にすることもできる。
【0048】
図1図示の実施形態は、流体移送装置1が筒状体10内に嵌装されている構造の一例を表すものである。流体移送装置1の半径方向の最外部が、筒状体10の筒状部10c内側に納まるように、流体移送装置1全体として筒状体10内に挿入される構造である。
【0049】
流体移送装置1の半径方向で外側に位置している筒状部10cが上述した固定子の一部を構成する構造にすることもできる。
【0050】
また、筒状部10cは固定子を構成する外ヨーク7を兼ねる構造にすることもできる。
【0051】
図1に符号4で示している円筒状のマグネットは、本実施形態では、上述した回転子の回転運動の中心となる回転中心軸を中心とする円周方向で互いの間に間隔を空けていると共に、前記回転中心軸が伸びる軸方向で互いの間に間隔を空けている複数個のマグネット細片から形成されている。
【0052】
図2~
図5を参照して、このような構成からなる円筒状のマグネット4の一実施形態を説明する。
【0053】
図2~
図5図示の実施形態では、複数個のマグネット細片41a、41b、41c、41d、・・・、42a、42b、42c、42d、・・・が、円筒状の内ヨーク3の半径方向外側面に固定されている形態で円筒状のマグネット4が形成されている。図示していないが、円筒状の内ヨーク3が不図示の強磁性体からなる円筒状体の内側に嵌装され、この円筒状体の半径方向外側面に複数個のマグネット細片41a、等が固定されている形態にして円筒状のマグネット4とすることもできる。
【0054】
上述した回転子の回転運動の中心となる回転中心軸が伸びる軸方向(
図2における上下方向)では、
図2図示のように、マグネット細片42aとマグネット細片41aとが軸方向に間隔を空けて配備されている。また、マグネット細片41bとマグネット細片42bとが軸方向に間隔を空けて、マグネット細片42cとマグネット細片41cとが軸方向に間隔を空けて、マグネット細片41dとマグネット細片42dとが軸方向に間隔を空けてそれぞれ配備されている。
【0055】
円周方向では、マグネット細片41a、42aの円周方向に間隔を空けてマグネット細片42b、41bが、マグネット細片41bの円周方向に間隔を空けてマグネット細片41cが、マグネット細片41c、42cの円周方向に間隔を空けてマグネット細片42d、41dが配備されている。
【0056】
スロットレスモータの構成からなる本実施形態では、円筒状のマグネット4を構成する上述のマグネット細片は、例えば、軸方向に配備されているマグネット細片42a、41aがN極であれば、マグネット細片41b、42bはS極、マグネット細片42c、41cはN極、マグネット細片41d、42dはS極という、円周方向で交互に磁極が換わる配置形態になる。
【0057】
複数のマグネット細片は円周方向で互いの間に間隔を空けて配備されていることから、円周方向でのマグネット細片同士の間の空隙部によって、上述した軸方向(
図2における上下方向)に伸びる第一の溝f(
図2)が、円周方向で隣接するマグネット細片の対向する一方の円周方向辺部と他方の円周方向辺部との間に存在する。これによって、
図2~
図5図示のように、第一の溝fが、円筒状のマグネット4の円周方向で互いの間に間隔を空けて複数本形成されている。
【0058】
また、複数のマグネット細片は軸方向(
図2における上下方向)で互いの間に間隔を空けて配備されていることから、軸方向でのマグネット細片同士の間の空隙部によって、第二の溝e(
図2)が、軸方向で隣接するマグネット細片の対向する一方の軸方向辺部と他方の軸方向辺部との間に存在する。
【0059】
本実施形態では、第二の溝eは、
図2図示のように、第一の溝fに対して斜め方向に交差する構造になっている。
【0060】
これによって、上述した複数本の第一の溝fに対して斜め方向に交差する螺旋状の溝が、円筒状のマグネット4の軸方向で互いの間に間隔を空けて複数本形成されている(
図2~
図4)。
【0061】
図2を参照して説明すると、第一の溝fは、円周方向で隣接するマグネット細片42a、41bの対向する一方の円周方向辺部43aと他方の円周方向辺部43bとの間及び、円周方向で隣接するマグネット細片41a、42bの対向する一方の円周方向辺部43aと他方の円周方向辺部43bとの間に形成される。また、円周方向で隣接するマグネット細片41b、41cの対向する一方の円周方向辺部43aと他方の円周方向辺部43bとの間に第一の溝fが形成される。
【0062】
第一の溝fは、本実施形態の流体移送装置1によって推進力が付与される流体の流動方向(
図2の上下方向)に伸びるものになっている。
【0063】
第二の溝eは、軸方向で隣接するマグネット細片42b、41bの対向する一方の軸方向辺部44aと他方の円周方向辺部44bとの間、軸方向で隣接するマグネット細片41c、42cの対向する一方の軸方向辺部44aと他方の軸方向辺部44bとの間に形成される。
【0064】
このように形成される第二の溝eは、上述したように、第一の溝fに対して斜め方向に交差して、円筒状のマグネット4に形成される螺旋状の溝になる。
【0065】
この実施形態では、マグネット細片41b、41c、41dは、マグネット4の半径方向外側から見て略平行四辺形形状のマグネット細片になっている(
図2)。マグネット細片41bの場合で説明すると、
図2図示のように、マグネット細片41bは、一方の円周方向辺部43aの縁辺と、一方の軸方向辺部44aの縁辺と、他方の円周方向辺部43bの縁辺と、他方の軸方向辺部44bの縁辺とによって区画される、マグネット4の半径方向外側から見て略平行四辺形形状のマグネット細片になっている。マグネット細片41c、41dについても同様になっている。
【0066】
この結果、本実施形態では、
図2~
図4図示のように、軸方向(
図2の上下方向)で配備されている複数個のマグネット細片の中に、マグネット細片41b、41c、41dのように、マグネット4の半径方向外側から見て略平行四辺形形状のマグネット細片が少なくとも一個含まれている構造になっている。
【0067】
このような構造になっている円筒状のマグネット4は、
図2~
図4図示のように、第一の溝fによって形成される、本実施形態の流体移送装置1によって推進力が付与される流体の流動方向(
図2の上下方向)に伸びて、円周方向で互いの間に間隔を空けている複数本の溝を備えている。また、第二の溝eによって形成される、複数本の第一の溝fに対して斜め方向に交差し、円筒状のマグネット4の軸方向で互いの間に間隔を空けている複数本の螺旋状の溝を備えている。
【0068】
図9を参照して、複数個のマグネット細片41a、等が、円筒状の内ヨーク3の半径方向外側面に固定されている形態で上述した構造からなる円筒状のマグネット4が形成される場合の一例を説明する。
【0069】
図9の最も左側に図示したように、内ヨーク3と同等の軸方向の長さで、内ヨーク3の半径方向外側面に沿うように湾曲している磁性帯板40を準備する。
図9の最も左側の図は、準備した磁性帯板40を凸湾している側から見た正面図である。
【0070】
磁性帯板40としては、例えば、Fe-Nd-B合金を主成分とし、粉末合金焼結法で作られているネオジウム磁石からなる磁性帯板を採用できる。
【0071】
この磁性帯板40を軸方向(
図9の上下方向)における中心側で、マグネット細片41a、等の上述した略平行四辺形形状に切断する。切断は、例えば、ワイヤカットにより行うことができる。
【0072】
切断によって調製した略平行四辺形形状のマグネット細片41a、41b、・・を、円筒状の内ヨーク3の半径方向外側面に対して、
図2に図示されている所定箇所で、接着剤など用いて接着固定する。
【0073】
上述した略平行四辺形形状の切断が行われた後の磁性帯板の軸方向(
図9の上下方向)における端部の残余部分が、円筒状のマグネット4の軸方向における端部側のマグネット細片42a、42b、・・として使用され、同様に、円筒状の内ヨーク3の半径方向外側面に対して、
図2に図示されている所定箇所で、接着剤など用いて接着固定される。
【0074】
こうして、上述した構造からなる円筒状のマグネット4が形成される。
【0075】
図9の最も左側に図示した磁性帯板40からワイヤカットによって調製した所定形状のマグネット細片41a、・・、42a、・・を、タイル状に内ヨーク3の半径方向外側面に貼り付けて円筒状のマグネット4を形成するものである。
【0076】
使用するマグネット細片41a、・・、42a、・・の形状や、数に応じて、
図9の最も左側に図示した磁性帯板40の軸方向(
図9の上下方向)長さや、これに直交する幅方向の長さを選定することで、マグネット素材の残余分を少なくし、素材利用の無駄を少なくして、製作コスト低減を図ることができる。
【0077】
本実施形態では、マグネット細片は略平行四辺形状のマグネット細片41a、41b、41c、41d、・・・と、台形形状のマグネット細片42a、42b、42c、42d、・・・になっている。これらに限られず、上述した複数本の第一の溝f、第二の溝eを形成できるならば、種々の形状のマグネット細片を採用できる。
【0078】
上記では、ネオジウム磁石からなる磁性帯板40をワイヤカットしてマグネット細片を調製したが、ネオジウム磁石はFe-Nd-B合金を主成分として粉末合金焼結法で作られるものであるので、種々の形状のマグネット細片を金型成形加工で調製することもできる。この場合でも、略平行四辺形状のマグネット細片41a、台形形状のマグネット細片42aを調製するだけで済むので金型数は少なくて済む。
【0079】
ワイヤカットで調製する場合でも、金型成形で調製する場合でも、マグネット細片の形状は、簡単で、種類も少ないので量産し易くコスト減に寄与する。
【0080】
このように、ネオジウム磁石などからなる磁性帯板から同形状、同寸法のマグネット細片を切り出すか、同形状、同寸法のマグネット細片を金型成形して、望ましくは2種類、多くとも数3種類の細片(チップ)を作り、これらを、複数本の第一の溝f、第二の溝eを形成しながら、タイル状に内ヨーク3の半径方向外側面に貼り付けて円筒状のマグネット4を形成することができる。
【0081】
図6は半径方向で対向する位置関係になる円筒状のコイル6と、複数個のマグネット細片41a、等から形成される円筒状のマグネット4との間の関係を、一部を省略して、説明する図である。
【0082】
スロットレスモータの構成からなる本実施形態の流体移送装置における円筒状の内ヨーク3とマグネット4とからで構成される回転子の回転運動の中心となる回転中心軸から展開し、一部を省略して
図6に図示している。円筒状のコイル6の半径方向内側の面と、円筒状のマグネット4の半径方向外側の面とが半径方向で対向する関係になるので、展開した場合、全周にわたって対向するが、
図6では、円筒状のマグネット4は半周にあたる部分のみ図示している。
【0083】
図6図示の実施形態では、円筒状のコイル6は、コイル巻線となる線材が、図面の背面側から正面側方向に向かって伸びる巻回軸(不図示)の周りに、螺旋状に複数回巻回されて形成されており、流体が流動する方向(
図6の上下方向)に伸びているコイル巻線の部分がコイルの有効長部分となる。
【0084】
そこで、図示の実施形態では、流体移送装置1によって推進力が付与される流体の流動方向(
図6の上下方向)に伸びる第一の溝fは、前述したコイルの有効長部分が伸びる方向に沿っている。
【0085】
図示していないが、コイルの有効長部分が伸びる方向が、流体の流動方向(
図6の上下方向)に対して斜交して伸びるように、円筒状のコイル6のコイル巻線を巻回しておくこともできる。この場合、流体移送装置1によって推進力が付与される流体の流動方向(
図6の上下方向)に伸びる第一の溝fは、コイルの有効長部分が伸びる方向に沿っていない構造になる。
【0086】
流体が流動する方向に伸びる円筒状の回転子が備えている内ヨーク3、マグネット4と、同じく流体が流動する方向に伸びる円筒状の固定子が備えている外ヨーク7によって断面環状の磁界が形成され、この磁界の中に、流体が流動する方向に伸びる円筒状のコイル6が配備されるスロットレスモータの構成からなる本実施形態の流体移送装置1では、コイル6の半径方向内側面とマグネット4の半径方向外側面との間に空間部が形成される。
【0087】
この空間部が、上述した回転子の回転運動の中心となる回転中心軸が伸びる軸方向(
図2における上下方向)で流体が流動する第一の流体流路11となる(
図1)。
【0088】
上述したように、流体が流動する方向に伸びる円筒状の回転子が備えている内ヨーク3、マグネット4と、同じく円筒状の固定子が備えている外ヨーク7によって断面環状の磁界が形成され、この磁界の中に、流体が流動する方向に伸びる円筒状のコイル6が配備されているスロットレスモータの構成で、コイル6に通電すると、モータの原理によって回転子(内ヨーク3、マグネット4)は上述した回転中心軸を中心として円周方向に回転する。
これにより、複数個の複数個のマグネット細片41a、等も回転中心軸を中心として円周方向に回転する。回転子(内ヨーク3、マグネット4)の回転に連れて回転する複数個のマグネット細片41a、等が、流体に対して流動方向に流動する推進力を与える羽根、プロペラの役割を果たす。これによって、流体移送管の内部を流動する液体や気体、等の流体に対して流動方向への推進力が付与され、流動方向への推進力付与を受けた流体は、第一の流体流路11内を流動していく。
【0089】
図示の実施形態では、回転子(内ヨーク3、マグネット4)が、例えば、
図10に矢印17で示す円周方向に回転し、流体は、第一の流体流路11内を
図1の右側から左側に向かって流動する。
【0090】
図1に図示しているように、円筒状のコイル6の半径方向内側に円筒状のパイプ5が配備されていて、パイプ5の半径方向内側面とマグネット4の半径方向外側面との間に形成されている空間部が第一の流体流路11になる構造にすることもできる。
【0091】
円筒状のコイル6の半径方向内側とマグネット4の半径方向外側面との間に形成されている空間部が第一の流体流路11になっている場合、流体の流動はコイル6の半径方向内側面に接して行われる。この場合、コイル6の半径方向内側面に凹凸があると乱流が発生して流体の流動に好ましくないことになる。また、コイル6の半径方向内側面が傷つけられるおそれもある。
【0092】
そこで、半径方向内側面が平滑面になっていて、流体の流動に対して影響を与えるおそれが少ない円筒状のパイプ5を、
図1図示のように、円筒状のコイル6の半径方向内側に配備し、パイプ5の半径方向内側面とマグネット4の半径方向外側面との間に形成されている空間部で第一の流体流路11を構成する形態にすることができる。
【0093】
なお、内ヨーク3、マグネット4と、外ヨーク7によって断面環状の磁界が形成され、この磁界の中の円筒状のコイル6が配置される構造であることから、半径方向内側面が平滑面になっている円筒状のパイプ5は、透磁性材料から形成することになる。
【0094】
図示の実施形態では、内ヨーク3は中空の円筒状体で形成されている。そこで、内ヨーク3の半径方向内側は、上述したように、流体が第一の流体流路11内を流動する際に、これにつれて流体が流動する第二の流路12になる(
図1)。このようにすれば流動量を増加できるので有利である。
【0095】
本実施形態では、上述したように、スロットレスモータの構成を用いている。スロットレスモータの場合、内ヨークか外ヨークのいずれかのみの回転になるので両ヨークを繋ぐ物理的なブリッジが不要になる。内ヨーク、外ヨークの双方が回転するので両者がブリッジで繋がれている場合、ブリッジは、流体流動方向に直交しながら回転するので、流体の流動に対する邪魔になる。そこで、スロットレスモータの構成からなり、流体流動方向に対して直交しながら回転する部材が存在しない本実施形態の流体移送装置は、ポンプなどの流体移送装置として使用するときに有利になる。
【0096】
また、内ヨーク、外ヨークの双方が回転する場合、コイルの半径方向で内側と内ヨークとの間、コイルの半径方向で外側と外ヨークとの間に、また、外ヨークの半径方向で外側に空隙部が必要になる。流体が流動している筒状体の半径方向でこのように空隙部が増えればそれだけ流体の圧抜けにつながってしまう。
【0097】
上述した本実施形態のスロットレスモータの構成を用いる場合、内ヨークのみが回転子になるので、コイルの半径方向で外側と外ヨークとの間、外ヨークの半径方向で外側に空隙部は不要になる。この点でも、本実施形態の流体移送装置は、ポンプなどの流体移送装置として使用するときに有利になる。
【0098】
図7、
図8を用いて、
図6図示の関係で円筒状のコイル6と円筒状のマグネット4とが半径方向で対向しているときの、回転子(
図7、8ではマグネット4を構成する複数個のマグネット細片41a、等のみを図示している)の回転方向と、流体が流動する方向の関係を説明する。
【0099】
図7、
図8では回転子は図面の右側から左側に向かう方向に回転し、流体は、図面の下側から上側に向かう方向に流動する。これとは逆に、回転子が図面の左側から右側に向かう方向に回転すれば、流体は、図面の上側から下側に向かう方向に流動することになる。
【0100】
円筒状のマグネット4を構成する複数個のマグネット細片41a、等が、
図2~
図5に図示した配置形態である場合、円筒状のマグネット4の流体流動方向における上流側(
図8の下側)の端部に、第一の溝f及び第二の溝eに向かって次第に円周方向の間隔を狭めつつ第一の溝f及び第二の溝eに連続する流体導入口部aが形成される。
【0101】
また、円筒状のマグネット4の流体流動方向における下流側(
図8の上側)の端部に、第一の溝f及び第二の溝eから連続して下流側の端部に向かって次第に円周方向の間隔が広がる流体導出口部a´が形成される。
【0102】
流体導入口部aの円周方向の間隔が、円筒状のマグネット4の流体流動方向における上流側の端部から第一の溝f及び第二の溝eに向かって次第に狭まるようになっていることから、流動してきた流体は流動状態が乱されることなく、第一の溝f及び第二の溝eに向かって流動する。
【0103】
また、流体導出口部a´の円周方向の間隔が、第一の溝f及び第二の溝eに連続している箇所から、円筒状のマグネット4の流体流動方向における下流側の端部に向かって広がるようになっていることから、第一の溝f、第二の溝eを流動してきた流体は流動状態が乱されることなく、下流方向に向けてスムーズに流動する。
【0104】
図8図示のように、円筒状のマグネット4の流体流動方向における上流側の端部には流体導入口部b、下流側の端部には流体導出口部b´も形成される。流体導入口部b、流体導出口部b´の円周方向間隔は、いずれも、第一の溝fの円周方向の間隔(第一の溝fの横幅)と同じである。
【0105】
そこで、流体導入口部aのように、流動方向に向けて円周方向間隔が次第に狭まる構造ではないことから、流体導入口部bに流体が流入するところでは渦流が発生するなどして乱流が発生し、流体の流動が乱される。
【0106】
また、流体導出口部a´のように、流動方向に向けて円周方向間隔が次第に広くなる構造ではないことから、流体導出口部b´から流体が流出するところでも渦流が発生するなどして乱流が発生し、流体の流動が乱される。
【0107】
そこで、円筒状のマグネット4の上流側端部、下流側端部に、それぞれ、上述した構造の流体導入口部a、流体導出口部a´が形成されていることが、第一の流体流路11内を流動していく流体に対して流動方向への推進力をより効果的に付与する上で望ましい。
【0108】
図2~
図5図示の実施形態では、円筒状のマグネット4の上流側の端部において上述した構造の流体導入口部aと流体導入口部bとが円周方向で交互に形成されていて、円筒状のマグネット4の下流側の端部において上述した構造の流体導出口部a´と流体導出口部b´とが円周方向で交互に形成されている構造になっている。
【0109】
流体導入口部aの円周方向における間隔が上流側から下流側に向けて縮径する程度、流体導出口部a´の円周方向における間隔が上流側から下流側に向けて拡径する程度は、第一の溝fが伸びる方向と、第二の溝eが伸びる方向との間の角度θ(
図2、
図7)に依存する。
【0110】
本願発明者の検討によれば、上述した角度θは5度~85度に設定することが望ましかった。角度θが小さくなる方が流体の流量を増加できるが、角度θが5度未満になるとポンプとしての機能が小さくなるので好ましくない、一方、角度θが大きくなると液流に対する圧力が大きくなる。角度θが85度を越えると液流に対する圧力が高くなって流れの方向が妨げられる状態になるので好ましくない。この観点から、角度θは10度~80度に設定することがより望ましい。
【0111】
なお、角度θが大きくなればなるほど流体から受ける流れの抵抗が大きくなる。一方、角度θが小さくなるほど流体から受ける流れの抵抗は小さくなる。
【0112】
そこで、流動させる対象になっている流体の物性を勘案して角度θを選定することでこの実施形態の流体移送装置による移送効果(ポンプ効果)を調整することができる。
【0113】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述した実施形態に限られず、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々に変更可能である。