(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132051
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】電子制御式機械時計
(51)【国際特許分類】
G04C 10/00 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
G04C10/00 D
G04C10/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042686
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 照彦
【テーマコード(参考)】
2F101
【Fターム(参考)】
2F101DA00
2F101DJ05
2F101DJ07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】持続時間を維持でき、かつ、発電能力を向上できる電子制御式機械時計の提供する。
【解決手段】電子制御式機械時計は、ゼンマイと、ゼンマイの機械エネルギーを伝達する輪列と、輪列と連動するローターと、輪列によって駆動されて時刻を表示する指針と、ゼンマイの機械エネルギーから電気エネルギーを生成し、且つ、ローターに与える磁界を発生して輪列の回転速度を制御する第1発電コイルと、ゼンマイの機械エネルギーから電気エネルギーを生成する第2発電コイルと、第1発電コイルおよび第2発電コイルで生成さ
れた電気エネルギーを蓄電する蓄電装置と、第1制御信号に基づいて第1発電コイルで生成された電気エネルギーを蓄電装置に充電し、且つ、第1発電コイルを介して輪列の回転速度を制御する第1充電回路と、第2発電コイルで生成された電気エネルギーを蓄電装置に充電する第2充電回路と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼンマイと、
前記ゼンマイの機械エネルギーを伝達する輪列と、
前記輪列と連動するローターと、
前記輪列によって駆動されて時刻を表示する指針と、
前記ゼンマイの前記機械エネルギーから電気エネルギーを生成し、且つ、前記ローター
に与える磁界を発生して前記輪列の回転速度を制御する第1発電コイルと、
前記ゼンマイの前記機械エネルギーから電気エネルギーを生成する第2発電コイルと、
前記第1発電コイルおよび前記第2発電コイルで生成された前記電気エネルギーを蓄電
する蓄電装置と、
第1制御信号に基づいて前記第1発電コイルで生成された前記電気エネルギーを前記蓄
電装置に充電し、且つ、前記第1発電コイルを介して前記輪列の回転速度を制御する第1
充電回路と、
前記第2発電コイルで生成された前記電気エネルギーを前記蓄電装置に充電する第2充
電回路と、
を備えることを特徴とする電子制御式機械時計。
【請求項2】
請求項1に記載の電子制御式機械時計において、
前記第1充電回路は、前記第1制御信号に基づいて前記第1発電コイルの端子を短絡す
る第1チョッピング制御によって、前記第1発電コイルで生成された前記電気エネルギー
を昇圧して前記蓄電装置に充電し、且つ、前記輪列の回転速度の制御を行い、
前記第2充電回路は、前記第1制御信号とは異なる第2制御信号に基づいて前記第2発
電コイルの端子を短絡する第2チョッピング制御によって、前記第2発電コイルで生成さ
れた前記電気エネルギーを昇圧して前記蓄電装置に充電する
ことを特徴とする電子制御式機械時計。
【請求項3】
請求項2に記載の電子制御式機械時計において、
発振信号を出力する振動子を備え、
前記第1制御信号は、前記第1発電コイルの起電圧波形に基づく回転検出信号と、前記
発振信号に基づく基準信号とを比較した比較結果に基づいて生成され、パルス幅が可変制
御された第1チョッパ信号であり、
前記第2制御信号は、パルス幅が固定された第2チョッパ信号である
ことを特徴とする電子制御式機械時計。
【請求項4】
請求項3に記載の電子制御式機械時計において、
前記第2制御信号の周期に対するブレーキ期間の割合を示すデューティー比は、60%
以上、90%以下である
ことを特徴とする電子制御式機械時計。
【請求項5】
請求項2に記載の電子制御式機械時計において、
前記第1充電回路は、前記第1発電コイルと電源ラインとの間に接続された第1のダイ
オードと、前記第1発電コイルの端子を短絡する第1のトランジスターとを備え、
前記第2充電回路は、前記第2発電コイルと前記電源ラインとの間に接続された第2の
ダイオードと、前記第2発電コイルの端子を短絡する第2のトランジスターとを備え、
前記第1充電回路と前記第2充電回路とは、直列に接続される
ことを特徴とする電子制御式機械時計。
【請求項6】
請求項1に記載の電子制御式機械時計において、
前記第2発電コイルは、前記ローターによって前記電気エネルギーを生成する
ことを特徴とする電子制御式機械時計。
【請求項7】
請求項1に記載の電子制御式機械時計において、
前記輪列と連動する第2ローターをさらに備え、
前記第2発電コイルは、前記第2ローターによって前記電気エネルギーを生成する
ことを特徴とする電子制御式機械時計。
【請求項8】
請求項7に記載の電子制御式機械時計において、
前記輪列は、
前記ローターのカナと噛み合う第1歯車と、
前記第2ローターのカナに噛み合い、且つ、前記第1歯車の回転を増速して伝達する増
速歯車と、
を備えることを特徴とする電子制御式機械時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御式機械時計に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼンマイによって輪列を介して駆動されて誘起電力を発生する発電機と、輪列に結合さ
れた指針と、発電機の回転周期を制御して輪列に結合された指針の運針速度を調速する電
子制御式機械時計が知られている(例えば特許文献1参照)。
前記特許文献1の電子制御式機械時計では、発電機のコイル両端をショートさせるスイ
ッチを設け、このスイッチをオン、オフさせるチョッピング制御を行っている。これによ
り、スイッチをオンしたときは、ショートブレーキによる調速制御に加えて発電機のコイ
ルにエネルギーをためることができ、スイッチをオフしたときにはコイルにたまっていた
エネルギーが含まれるため起電圧を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電子制御式機械時計において、発電能力を向上させるために、動力となるゼンマ
イの巻き解きトルクを増やすとゼンマイが巻き解けるまでの持続時間が短くなるという課
題がある。また、インダクタンス値を増やすためにコイルを大きくすると発電機自体が大
きくなるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の電子制御式機械時計は、ゼンマイと、前記ゼンマイの機械エネルギーを伝達す
る輪列と、前記輪列と連動するローターと、前記輪列によって駆動されて時刻を表示する
指針と、前記ゼンマイの前記機械エネルギーから電気エネルギーを生成し、且つ、前記ロ
ーターに与える磁界を発生して前記輪列の回転速度を制御する第1発電コイルと、前記ゼ
ンマイの前記機械エネルギーから電気エネルギーを生成する第2発電コイルと、前記第1
発電コイルおよび前記第2発電コイルで生成された前記電気エネルギーを蓄電する蓄電装
置と、第1制御信号に基づいて前記第1発電コイルで生成された前記電気エネルギーを前
記蓄電装置に充電し、且つ、前記第1発電コイルを介して前記輪列の回転速度を制御する
第1充電回路と、前記第2発電コイルで生成された前記電気エネルギーを前記蓄電装置に
充電する第2充電回路と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態の電子制御式機械時計を示す正面図である。
【
図2】電子制御式機械時計の構成を示すブロック図である。
【
図3】電子制御式機械時計のムーブメントの要部を示す概略平面図である。
【
図5】ムーブメントの第1充電回路および第2充電回路を示す回路図である。
【
図6】第1充電回路用の第1チョッパ信号を示す波形図である。
【
図7】ブレーキデューティーと発電電圧との関係を示すグラフである。
【
図9】第2実施形態のムーブメントの要部を示す概略平面図である。
【
図10】第3実施形態のムーブメントの要部を示す概略平面図である。
【
図11】変形例の第1充電回路を示す回路図である。
【
図12】変形例の第2充電回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[第1実施形態]
以下、第1実施形態の電子制御式機械時計1を図面に基づいて説明する。
電子制御式機械時計1は、
図1に示すように、ケース2と、文字板3と、指針である時
針4、分針5、秒針6と、りゅうず7と、日車8とを備える。
電子制御式機械時計1は、
図2に示すように、ムーブメント10を備える。ムーブメン
ト10は、ゼンマイ11と、輪列20と、調速機を兼用する第1発電機30と、発電専用
の第2発電機40と、第1発電機30で発電された交流電力を整流して充電する第1充電
回路50と、第2発電機40で発電された交流電力を整流して充電する第2充電回路60
と、第1充電回路50および第2充電回路60によって充電される蓄電装置80と、水晶
振動子100と、制御部70とを備える。
【0008】
図3は、ムーブメント10の要部を示す平面図である。
ムーブメント10は、香箱車12と、輪列20と、第1発電機30および第2発電機4
0と、を備えている。
香箱車12は、図示略のゼンマイ11と、香箱歯車13と、香箱真14とを備える。ゼ
ンマイ11は、外端が香箱歯車13、内端が香箱真14に固定される。香箱真14は、地
板に設けられた支持部材に挿通されて角穴ネジによって固定され、角穴車15と一体で回
転する。角穴車15は、りゅうず7を回転することで、巻真16、つづみ車17、きち車
18、丸穴車19、角穴中間車151等を備えた巻き上げ機構によって回転する。角穴車
15が回転することで、香箱真14が回転するため、ゼンマイ11が巻き上げられる。
【0009】
ゼンマイ11が巻き解けることで回転駆動する香箱歯車13の回転は、二番車21、二
番車21と噛み合う三番車22、二番車21と重なり、三番車22と噛み合う四番車23
、四番車23と噛み合う五番車24、五番車24と噛み合う六番車25により構成された
増速輪列である輪列20を介して増速される。六番車25には、第1発電機30および第
2発電機40で兼用するローター35に設けられたカナ36が噛み合う。
二番車21と一体の図示略の筒カナには、分針5が取り付けられ、筒カナから日の裏車
を介して回転が伝達される筒車には、時針4が取り付けられる。四番車23の軸部先端に
は、秒針6が取り付けられる。さらに、最も高速となる六番車25の回転は、カナ36を
介して第1発電機30および第2発電機40のローター35に伝達される。
【0010】
第1発電機30は、第1磁心31と、第1磁心31に巻かれた第1発電コイル32と、
第1磁心31の両端に連結される第1ステーター33と、第1発電コイル32の端部がそ
れぞれ接続された端子を有する第1回路基板34と、第1ステーター33の開口に配置さ
れ、2極に着磁されたローター35とを備える。
第2発電機40は、第2磁心41と、第2磁心41に巻かれた第2発電コイル42と、
第2磁心41の両端に連結される第2ステーター43と、第2発電コイル42の端部がそ
れぞれ接続された端子を有する第2回路基板44と、第2ステーター43の開口に配置さ
れたローター35とを備える。
本実施形態では、第1磁心31および第2磁心41は、連結部311を介して一体に製
造されている。具体的には、第1磁心31および第2磁心41は、連結部311から互い
に90~100°程度の角度で交差する方向に延長されている。
第1ステーター33および第2ステーター43も、一体に製造されている。すなわち、
第1ステーター33および第2ステーター43は、ローター35が配置された開口部から
3方向に延出された延出部331、332、333を有する。延出部331は、第1磁心
31の端部に連結され、延出部332は第2磁心41の端部に連結され、延出部333は
連結部311に連結されている。
したがって、第1ステーター33は、主に延出部331および延出部333で構成され
、第2ステーター43は、主に延出部332および延出部333で構成される。
【0011】
図4は、ムーブメント10の回路構成を示すブロック図である。ムーブメント10は、
発電および調速用のコイルである第1発電コイル32と、発電専用のコイルである第2発
電コイル42と、第1発電コイル32用の第1充電回路50と、第2発電コイル42用の
第2充電回路60と、制御部70と、蓄電装置80と、電圧検出部90と、水晶振動子1
00とを備える。制御部70は、発振回路71、回転検出回路72、制御回路73を備え
る。
なお、制御部70、蓄電装置80、電圧検出部90は、第1の電源ライン81と、第2
の電源ライン82とに接続されている。また、第1充電回路50および第2充電回路60
は、第1の電源ライン81、第2の電源ライン82つまり蓄電装置80に対して直列に接
続されている。なお、本実施形態では、第1の電源ライン81の電位はVDDであり、第
2の電源ライン82の電位はVSSである。
【0012】
第1発電機30および第2発電機40は、前述のとおり、ゼンマイ11から輪列20を
介して伝達される機械エネルギーでローター35を回転することで、第1ステーター33
および第1磁心31、第2ステーター43および第2磁心41を流れる磁力線の向きを変
化させ、第1発電コイル32および第2発電コイル42に誘起電力を発生させる電磁発電
機である。
【0013】
蓄電装置80は、二次電池やコンデンサーなどで構成される。蓄電装置80は、第1の
電源ライン81、第2の電源ライン82を介して、第1充電回路50、第2充電回路60
、制御部70、電圧検出部90に接続されている。このため、第1発電機30、第2発電
機40で発電された電気エネルギーは、第1充電回路50、第2充電回路60を介して蓄
電装置80に蓄えられる。また、蓄電装置80に蓄積された電気エネルギーは、制御部7
0に供給される。
【0014】
電圧検出部90は、蓄電装置80の電圧を検出し、検出結果を制御部70に出力する。
水晶振動子100は、制御部70の発振回路71で発振され、所定周波数のクロック信
号を出力する。なお、クロック信号を出力する振動子は、水晶振動子100に限定されず
、シリコン製のMEMS振動子でもよい。MEMSは、Micro Electro Mechanical Syste
msの略語であり、MEMS振動子を用いた場合、水晶振動子100に比べて精度は劣るが
小型化が可能である。
【0015】
発振回路71は、水晶振動子100を発振させ、発振信号を分周して所定周波数の基準
クロックを制御回路73に出力する。基準クロックの周波数は、ローター35の回転周期
に応じて設定される。例えば、輪列20に設けられた各指針が正確に運針されるローター
35の回転周期が8Hzの場合、基準クロックの周波数も8Hzに設定される。
【0016】
回転検出回路72は、ローター35の回転周期を検出する回路であり、例えば、第1発
電機30に接続された波形整形回路とモノマルチバイブレータとで構成される。波形整形
回路は、アンプ、コンパレータで構成され、起電圧波形である正弦波を矩形波に変換する
。モノマルチバイブレータは、ある周期以下のパルスだけを通過させるバンドパス・フィ
ルターとして機能し、ノイズを除去した回転検出信号を制御回路73に出力する。
【0017】
制御回路73は、第1充電回路50に対し、発振回路71から入力される基準クロック
と、回転検出回路72から入力される回転検出信号とに基づいて設定された第1制御信号
として第1チョッパ信号P1を出力する。また、制御回路73は、第2充電回路60に対
して第2制御信号として第2チョッパ信号P2を出力する。この制御回路73の処理につ
いては後述する。
【0018】
第1充電回路50は、第1発電機30からの交流電力を整流して蓄電装置80を充電す
る。第2充電回路60は、第2発電機40からの交流電力を整流して蓄電装置80を充電
する。本実施形態では、
図5に示すように、第1充電回路50および第2充電回路60は
、蓄電装置80に導通された第1の電源ライン81および第2の電源ライン82に対して
直列に接続されている。これにより、蓄電装置80の充電電圧を高めることができる。
【0019】
第1充電回路50は、全波整流回路であり、かつ、チョッピングにより第1発電機30
の第1発電コイル32をショートさせて、第1発電コイル32に発生する交流電力を昇圧
整流して蓄電装置80に充電し、かつ、第1発電コイル32を介してローター35つまり
輪列20の回転速度を制御するものである。すなわち、第1充電回路50は、第1発電機
30の交流電力を昇圧整流するチョッパ整流回路と、輪列20の回転速度を調速する調速
回路とを兼用する。
第2充電回路60は、全波整流回路であり、かつ、チョッピングにより第2発電機40
の第2発電コイル42をショートさせて昇圧整流して蓄電装置80に充電するものである
。このため、第2充電回路60は、第2発電機40の交流電力を昇圧整流するチョッパ整
流回路である。
【0020】
第1充電回路50は、第1のスイッチ51と、第2のスイッチ52と、ダイオード57
、58とを備える。
第1のスイッチ51は、第1発電コイル32の第1端子MG11と、第1の電源ライン
81との間に接続されたPチャネルの電界効果型トランジスター53、54で構成される
。電界効果型トランジスター53、54は互いに並列に接続され、電界効果型トランジス
ター53のゲートは第1発電コイル32の第2端子MG12に接続され、電界効果型トラ
ンジスター54のゲートは制御回路73に接続されている。
第2のスイッチ52は、第2端子MG12と、第1の電源ライン81との間に接続され
たPチャネルの電界効果型トランジスター55、56で構成される。電界効果型トランジ
スター55、56は互いに並列に接続され、電界効果型トランジスター55のゲートは第
1端子MG11に接続され、電界効果型トランジスター56のゲートは制御回路73に接
続されている。
【0021】
第1のスイッチ51の電界効果型トランジスター53と、第2のスイッチ52の電界効
果型トランジスター55とは、ゲートが第2端子MG12、第1端子MG11にそれぞれ
接続されているため、第1発電機30で発電しているときは、電界効果型トランジスター
53、55のうち、第1発電コイル32の低電位側の端子に接続されたトランジスターが
オフ状態となり、高電位側の端子に接続されたトランジスターがオン状態となる。
第1のスイッチ51の電界効果型トランジスター54と、第2のスイッチ52の電界効
果型トランジスター56とは、制御回路73から出力される第1チョッパ信号P1がゲー
トに入力されることによって第1チョッピング制御が実行され、同時にオン状態またはオ
フ状態に制御される。このため、電界効果型トランジスター54、56は、第1充電回路
50において、第1発電コイル32の第1端子MG11および第2端子MG12を短絡す
る第1のトランジスターである。
【0022】
ダイオード57、58は、第1発電コイル32の第1端子MG11、第2端子MG12
と、第2充電回路60に接続される接続ライン83との間に配置されている。ダイオード
57、58は、一方向に電流を流す一方向性素子であればよく、その種類は問わず、例え
ば、ショットキーバリアダイオードやシリコンダイオードを利用できる。このため、ダイ
オード57、58は、第1発電コイル32と接続ライン83との間に接続された第1のダ
イオードである。
【0023】
第2充電回路60は、第1充電回路50と同様の構成であり、第3のスイッチ61と、
第4のスイッチ62と、ダイオード67、68とを備える。
第3のスイッチ61は、第2発電コイル42の第1端子MG21と、接続ライン83と
の間に接続されたPチャネルの電界効果型トランジスター63、64で構成される。電界
効果型トランジスター63、64は互いに並列に接続され、電界効果型トランジスター6
3のゲートは第2発電コイル42の第2端子MG22に接続され、電界効果型トランジス
ター64のゲートは制御回路73に接続されている。
第4のスイッチ62は、第2端子MG22と、接続ライン83との間に接続されたPチ
ャネルの電界効果型トランジスター65、66で構成される。電界効果型トランジスター
65、66は互いに並列に接続され、電界効果型トランジスター65のゲートは第1端子
MG21に接続され、電界効果型トランジスター66のゲートは制御回路73に接続され
ている。
【0024】
第3のスイッチ61の電界効果型トランジスター63と、第4のスイッチ62の電界効
果型トランジスター65とは、ゲートが第2端子MG22、第1端子MG21にそれぞれ
接続されているため、第2発電機40で発電しているときは、電界効果型トランジスター
63、65のうち、第2発電コイル42の低電位側の端子に接続されたトランジスターが
オフ状態となり、高電位側の端子に接続されたトランジスターがオン状態となる。
第3のスイッチ61の電界効果型トランジスター64と、第4のスイッチ62の電界効
果型トランジスター66とは、制御回路73から出力される第2チョッパ信号P2がゲー
トに入力されることによって第2チョッピング制御が実行され、同時にオン状態またはオ
フ状態に制御される。このため、電界効果型トランジスター64、66は、第2充電回路
60において、第2発電コイル42の第1端子MG21および第2端子MG22を短絡す
る第2のトランジスターである。
【0025】
ダイオード67、68は、第2発電コイル42の第1端子MG21、第2端子MG22
と、第2の電源ライン82との間に配置されている。ダイオード67、68は、ダイオー
ド57、58と同様に、一方向に電流を流す一方向性素子であればよく、その種類は問わ
ず、例えば、ショットキーバリアダイオードやシリコンダイオードを利用できる。このた
め、ダイオード67、68は、第2発電コイル42と第2の電源ライン82との間に接続
された第2のダイオードである。
【0026】
次に、第1充電回路50における第1チョッピング制御に関して説明する。
第1チョッピング制御は、制御回路73から出力される第1チョッパ信号P1により、
ローター35の回転に比べて高い周波数で、電界効果型トランジスター54、56を同時
にオン/オフさせる制御である。この制御により、第1発電コイル32の両端のショート
とオープンとが繰り返される。電界効果型トランジスター54、56が同時にオンしてい
る期間は、第1発電コイル32の両端はショート状態になるため、第1発電コイル32の
内部には大きな電流が流れる。次に,電界効果型トランジスター54、56を同時にオフ
にすると、その瞬間に第1発電コイル32に流れていた電流は、電圧に変換されて高い誘
起電圧が発生する。
【0027】
また、第1チョッピング制御により第1発電コイル32の両端をオン/オフする制御は
、ローター35の調速制御と関連する。
図6に第1チョッピング制御のブレーキ信号波形
である第1チョッパ信号P1を示す。電界効果型トランジスター54、56は、第1チョ
ッパ信号P1がLレベルのときに同時にオン状態となり、Hレベルのときに同時にオフ状
態となる。したがって、第1チョッパ信号P1がLレベルの期間がブレーキ期間であり、
第1チョッパ信号P1の1周期に対するブレーキ期間の割合をデューティー比またはブレ
ーキデューティーと定義する。すなわち、ブレーキデューティーは、第1チョッパ信号P
1の周期に対するブレーキ期間の割合を意味する。例えば、
図6の第1チョッパ信号P1
は、チョッピングの周期が256Hzであり、前半の信号波形は、Lレベルの期間が80
%つまりブレーキデューティーが80%であって強いブレーキを加える波形である。第1
チョッパ信号P1の後半の信号波形は、Lレベルの期間が30%つまりブレーキデューテ
ィーが30%であって弱いブレーキを加える波形である。
【0028】
したがって、制御回路73からの第1チョッパ信号P1によって電界効果型トランジス
ター54、56がオン状態になると、第1のスイッチ51、第2のスイッチ52がオンと
なって第1発電コイル32の両端間が短絡されて閉ループとなる。これにより、第1発電
コイル32に流れる電流により磁界が発生し、ローター35に制動力が働く。すなわち、
第1発電機30にショートブレーキが掛かり、第1発電コイル32にエネルギーがたまる
。
一方、制御回路73からの第1チョッパ信号P1によって電界効果型トランジスター5
4、56がオフ状態になると、第1発電機30が動作し、第1発電コイル32の第1端子
MG11、第2端子MG12の電位が変化することで電界効果型トランジスター53、5
5の一方がオン状態、他方がオフ状態となる。このため、第1のスイッチ51、第2のス
イッチ52の一方がオン、他方がオフとなり、ショートブレーキ時に第1発電コイル32
にたまっていたエネルギー分を含めて発電されるため、起電圧が高まる。
【0029】
第2充電回路60は、第1充電回路50と同様に、第2チョッピング制御によって昇圧
整流を行う。すなわち、制御回路73からの第2チョッパ信号P2によって電界効果型ト
ランジスター64、66がオン状態になると、第3のスイッチ61、第4のスイッチ62
がオンとなって第2発電コイル42の両端間が短絡されて閉ループとなる。これにより、
第2発電機40にショートブレーキが掛かり、第2発電コイル42にエネルギーがたまる
。
一方、制御回路73からの第2チョッパ信号P2によって電界効果型トランジスター6
4、66がオフ状態になると、第2発電機40が動作し、第2発電コイル42の第1端子
MG21、第2端子MG22の電位が変化することで電界効果型トランジスター63、6
5の一方がオン状態、他方がオフ状態となる。このため、第3のスイッチ61、第4のス
イッチ62は、一方がオン、他方がオフとされ、第2発電コイル42にたまっていたエネ
ルギー分を含めて発電されるため、起電圧が高まる。
なお、第2充電回路60は、ローター35の調速制御は行わず、昇圧整流のみを行う。
このため、制御回路73から第2充電回路60に出力される第2チョッパ信号P2は、第
2チョッパ信号P2の周期に対するブレーキ期間の割合であるデューティー比つまりブレ
ーキデューティーが所定値に固定されて昇圧整流に適したパルス信号である。
図7は、発
電電圧とブレーキデューティーの関係を示す測定データの一例である。第2発電機40に
印加される第2チョッパ信号P2のブレーキデューティーが大きくなるにつれ、発電電圧
が上昇していく特性が認められる。この特性は,以下の理由による。第2発電コイル42
の両端をオフする瞬間に第2発電コイル42に流れている電流はブレーキオフ期間、すな
わちブレーキデューティーによって異なる。この電流は、ブレーキデューティーが大きく
なるにつれて大きくなるため、誘起電圧も大きくなる。ただし、ブレーキデューティーが
90%を超えると、この電流は飽和し、発電電圧はそれ以上大きくならない。
図7の実験
結果からは、最も高い発電電圧を得ることができるのは、約60%~90%のブレーキデ
ューティーのときであることがわかる。このため、発電専用の第2発電コイル42に接続
されている第2充電回路60は、発電電圧が高くなる60%~90%の範囲でブレーキデ
ューティーを設定すればよく、例えば、ブレーキデューティーが80%(=0.8)の第
2チョッパ信号P2で第2チョッピング制御が行われる。
【0030】
本実施形態では、第1発電機30および第2発電機40でローター35が兼用されてい
るため、ローター35には、第1充電回路50によるショートブレーキと、第2充電回路
60によるショートブレーキとが加わる。第2充電回路60のショートブレーキ量は、第
2チョッパ信号P2が固定デューティーのため、一定である。したがって、第1充電回路
50による調速用のショートブレーキ量は、第2充電回路60によるショートブレーキ量
を加味して設定すればよい。この際、発電および調速用の第1発電コイル32によるブレ
ーキ量と、発電専用の第2発電コイル42によるブレーキ量は、それぞれコイルやステー
ターの仕様によって変えることができる。本実施形態では、発電専用の第2発電コイル4
2のブレーキ量は、第2チョッパ信号P2のブレーキデューティーが80%とされた強ブ
レーキであるが、第1発電コイル32のブレーキ量に比べて低くなるように設定されてい
る。このため、第1発電コイル32のブレーキ量を設定する第1チョッパ信号P1のブレ
ーキデューティーを強ブレーキ制御用および弱ブレーキ制御用に切り替えることで、ロー
ター35を調速できるように設定されている。
【0031】
次に、制御回路73による調速制御について、
図8のフローチャートを参照して説明す
る。
制御回路73は、蓄電装置80の充電電圧が所定電圧以上になったか否かを判定するス
テップS1を実行する。すなわち、ゼンマイ11の巻き上げにより、輪列20を介してロ
ーター35が回転し、第1発電機30、第2発電機40が作動し始めると、電圧検出部9
0は、蓄電装置80の充電電圧を検出し、充電電圧が所定値以上に上昇したか否かを判定
する。
制御回路73は、ステップS1でNOと判定している間は、ステップS1を継続する。
すなわち、蓄電装置80の充電電圧が所定電圧未満の場合、ゼンマイ11が巻き解けてロ
ーター35を回転させる機械エネルギーが低下している可能性や、水晶振動子100が発
振を停止している可能性があり、安定して制御できないためである。
【0032】
制御回路73は、電圧検出部90で検出した充電電圧が所定電圧以上になってステップ
S1でYESと判定した場合は、ステップS2の信号計数処理を実行する。具体的には、
回転検出回路72から入力される回転検出信号に基づくアップカウント信号と、発振回路
71から入力される基準信号に基づくダウンカウント信号とを、制御回路73内のアップ
ダウンカウンターでカウントする。なお、これらの各カウント信号は、アップダウンカウ
ンターに同時に入力されないように設定されている。
アップダウンカウンターの初期値は、例えば「11」であり、初期値「11」の状態で
回転検出信号に基づくアップカウント信号が入力されると、アップダウンカウンターのカ
ウント値は「12」となる。次に、基準信号に基づくダウンカウント信号が入力されると
、アップダウンカウンターのカウント値は「11」となる。
【0033】
制御回路73は、ステップS2の信号計数処理の次に、アップダウンカウンターのカウ
ント値が初期値「11」よりも大きいかを判定するステップS3を実行する。制御回路7
3は、ステップS3でYESと判定すると、ステップS4の強ブレーキ制御を実行し、ス
テップS3でNOと判定すると、ステップS5の弱ブレーキ制御を実行する。
すなわち、ローター35の基準周期が8Hzであれば、回転検出信号も8Hzとなるた
め、ローター35が正常に調速されていればアップカウント信号とダウンカウント信号と
が交互に入力される。この場合、カウント値は「12」と「11」とに交互に変化し、強
ブレーキ制御と弱ブレーキ制御とが交互に実行されるため、平均的なブレーキ量が一定と
なり、ローター35を安定して調速できる。
また、ゼンマイ11からの機械エネルギーが大きく、ブレーキ量が不十分であると、回
転検出信号が連続して入力されてカウント値が「12、13、…」と増加する。この場合
、カウント値が「11」に低下するまで、強ブレーキ制御が継続するため、ローター35
を一定速度に調速できる。一方、電子制御式機械時計1の姿勢などの影響で、一時的にロ
ーター35の回転速度が低下し、基準信号が連続して入力されてカウント値が「11、1
0、…」と減少した場合は、カウント値が「12」に増加するまで、弱ブレーキ制御が継
続するため、ローター35を一定速度に調速できる。
【0034】
制御回路73は、ステップS4の強ブレーキ制御時は、ブレーキデューティーが80%
の第1チョッパ信号P1を出力する。従って、基準周期におけるブレーキオン時間が長く
なり、第1発電機30に対しては強ブレーキ制御が行われるが、一定周期でブレーキがオ
フされるためにチョッピング制御が行われ、発電電力の低下を抑えつつ制動トルクを向上
することができる。
【0035】
制御回路73は、ステップS5の弱ブレーキ制御時は、ブレーキデューティーが30%
の第1チョッパ信号P1を出力する。従って、基準周期におけるブレーキオン時間が短く
なり、第1発電機30に対しては、ほとんどブレーキが掛けられない、つまり発電電力を
優先した弱ブレーキ制御が行われる。
また、第2発電機40に対しては、制御回路73は、ブレーキデューティーが固定され
た第2チョッパ信号P2を出力する。第2チョッパ信号P2のブレーキデューティーは、
図7のグラフで最も発電電圧が高い80%に固定されている。
【0036】
以上のとおり、第1充電回路50および第2充電回路60は、それぞれ第1発電機30
および第2発電機40で発電される交流電力をチョッピングにより昇圧しながら整流し、
さらに直列に接続されているため、蓄電装置80の充電電圧を高めることができる。
【0037】
[第1実施形態の効果]
第1実施形態によれば、発電および調速用に兼用される第1発電機30および第1充電
回路50と、発電専用の第2発電機40および第2充電回路60とを設けたので、ゼンマ
イ11の巻き解けトルクを増大したり、第1発電機30の第1発電コイル32のサイズを
大きくすることなく、発電効率を向上できる。このため、電子制御式機械時計1の発電能
力を高めてゼンマイ11の持続時間を延ばすことができる。
第1発電機30の第1発電コイル32と、第2発電機40の第2発電コイル42とは別
々に配置できるので、1つの発電機のみで発電能力を高める場合に比べて、ムーブメント
10における部品レイアウトの自由度を高めることができ、電子制御式機械時計1を小型
化できる。
第1発電機30および第2発電機40は、ローター35が兼用され、コアやステータも
一体化されているので、1つの部品としてムーブメント10に組み込むことができ、組立
作業性を向上できる。
【0038】
発電専用の第2発電機40および第2充電回路60は、発電に最適な固定デューティー
の第2チョッパ信号P2で制御できるので、発電性能を最大限に向上できる。
第1充電回路50および第2充電回路60を蓄電装置80に対して直列に接続している
ので、蓄電装置80の充電電圧を高めることができる。このため、第1発電コイル32、
第2発電コイル42として小さいコイルを用いても、蓄電装置80の充電に必要な電圧を
確保することができる。
電子制御式機械時計1の発電能力を向上できるため、IC等の部品として低消費電力の
コストが高い部品を使用する必要がなく、汎用プロセスで製造した低コストのIC等を利
用できる。
【0039】
[第2実施形態]
第2実施形態の電子制御式機械時計1Bは、
図9に示すように、第1発電機30Bおよ
び第2発電機40Bが独立して設けられたムーブメント10Bを用いている点が第1実施
形態と相違する。このため、第1実施形態のムーブメント10と同一の構成は同一符号を
付して説明を省略する。
【0040】
第1発電機30Bは、第1発電機30と同様に、発電および調速用に兼用される発電機
であり、第1磁心31B、第1発電コイル32B、第1ステーター33B、第1回路基板
34B、第1ローター35Bを備え、第1ローター35Bに設けられた第1カナ36Bが
六番車25に噛み合っている。
第2発電機40Bは、第2発電機40と同様に、発電専用の発電機であり、第2磁心4
1B、第2発電コイル42B、第2ステーター43B、第2回路基板44B、第2ロータ
ー45Bを備え、第2ローター45Bに設けられた第2カナ46Bが六番車25に噛み合
っている。
【0041】
第1ローター35Bは、第1実施形態のローター35と同じくN極およびS極がそれぞ
れ1つずつ設けられた2極のローターである。第2ローター45Bは、2極のローターを
利用することもできるが、本実施形態では、N極およびS極が3つずつ設けられた6極の
ローターを用いている。また、第1ステーター33Bおよび第2ステーター43Bは、一
般的なパーマロイ材で構成されているが、発電専用の第2ステーター43Bは、より鉄損
が少ないアモルファスコアの磁性材料を使用して発電性能を高めてもよい。
【0042】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られる上、発電および調速用の
第1ローター35Bと、発電専用の第2ローター45Bとを別々に設けることで、各用途
に最適なローター磁石材料を採用することができ、性能を最大限高めることができる。
第2ローター45Bは、6極の多極磁石とすることができ、発電周波数を高くできて大
きな起電圧を得ることができる。
第1ローター35Bは、第2ローター45Bの第2チョッピング制御の影響を受けない
ため、調速制御の安定性を高めることができる。
【0043】
[第3実施形態]
第3実施形態のムーブメント10Cは、
図10に示すように、第2実施形態と同様に、
発電および調速用の第1発電機30Cと、発電専用の第2発電機40Cとが独立して設け
られている。さらに、第2発電機40Cの第2ローター45Cの第2カナ46Cに噛み合
う増速歯車26を追加している。なお、輪列20は、増速歯車26を設けた点以外は、第
2実施形態と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0044】
第1発電機30Cは、第1発電機30と同様に、発電および調速用に兼用される発電機
であり、第1磁心31C、第1発電コイル32C、第1ステーター33C、第1ローター
35Cを備え、第1ローター35Cに設けられた第1カナ36Cが六番車25に噛み合っ
ている。したがって、第1カナ36Cに噛み合う六番車25が第1歯車である。
第2発電機40Cは、第2発電機40と同様に、発電専用の発電機であり、第2磁心4
1C、第2発電コイル42C、第2ステーター43C、第2ローター45Cを備え、第2
ローター45Cに設けられた第2カナ46Cが増速歯車26に噛み合っている。なお、第
3実施形態では、第1カナ36Cに噛み合う第1歯車である六番車25と、第2カナ46
Cとの間に1つの増速歯車26を設けていたが、複数の増速歯車を設けてもよい。
また、第1発電機30C、第2発電機40Cには、図示を省略したが、第1発電コイル
32Cに導通する第1回路基板と、第2発電コイル42Cに導通する第2回路基板とがそ
れぞれ設けられる。
【0045】
第3実施形態によれば、第1、2実施形態と同様の効果が得られる上、第2ローター4
5Cは、第2カナ46Cが増速歯車26に噛み合っているので、第1ローター35Cに比
べて高速で回転することができる。このため、第2発電機40Cは、より大きな起電圧で
発電することができる。
【0046】
[変形例]
なお、本発明は前記各実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施
が可能である。
前記第1実施形態では、第1充電回路50および第2充電回路60を蓄電装置80に対
して直列に接続していたが、例えば、発電専用の第2発電機40の第2発電コイル42が
大きくて十分な発電電圧が確保できる場合は、第1充電回路50および第2充電回路60
を蓄電装置80に対して並列に接続してもよい。
また、第1充電回路50および第2充電回路60としては、前記第1実施形態の構成に
限定されない。例えば、
図11に示す第1充電回路50Dのように、第1発電コイル32
の一方の端子である第1端子MG11にダイオード57を接続し、他方の端子である第2
端子MG12に昇圧用のコンデンサー59を接続し、並列に接続されたダイオード57、
コンデンサー59に対して直列に接続されるダイオード85を設けた倍昇圧整流回路を用
いてもよい。第2充電回路も同じ構成の倍昇圧整流回路を用いてもよい。
【0047】
また、発電専用の第2発電機40の第2充電回路60は、ブレーキ制御が不要であるた
め、チョッピング昇圧を行わない整流回路で構成してもよい。例えば、
図12に示す第2
充電回路60Eのように、整流用の電界効果型トランジスター63、65のみを設け、チ
ョッピング用の電界効果型トランジスター64、66を備えない全波整流回路を用いても
よい。
さらに、第1充電回路50および第2充電回路60としては、半波整流回路等の他の整
流回路を用いてもよい。この際、第1充電回路50には、ローター35にショートブレー
キを加えるために、第1発電コイル32の両端を短絡可能とするスイッチとして、第1チ
ョッパ信号P1でオン、オフされる電界効果型トランジスターを設ければよい。また、第
2充電回路60は、第2チョッピング制御は必須ではないが、第2発電コイル42の両端
を短絡可能とするスイッチとして、第2チョッパ信号P2でオン、オフされる電界効果型
トランジスターを設ければ、チョッパ昇圧を行えて充電電圧を高めることができる。
すなわち、第1充電回路は、第1発電コイルと電源ラインとの間に接続されて交流電力
を整流する少なくとも1つの第1のダイオードと、第1発電コイルの端子を短絡する少な
くとも1つの第1のトランジスターとを備えればよい。同様に、第2充電回路は、第2発
電コイルと電源ラインとの間に接続されて交流電力を整流する少なくとも1つの第2のダ
イオードと、第2発電コイルの端子を短絡する少なくとも1つの第2のトランジスターと
を備えればよい。
【0048】
第1制御信号は、強ブレーキ制御用のブレーキデューティーが80%のチョッパ信号と
、弱ブレーキ制御用のブレーキデューティーが30%のチョッパ信号との2種類を選択し
て出力していたが、3種類以上のチョッパ信号を選択して出力してもよい。例えば、アッ
プダウンカウンターのカウント値が「11」であれば、ブレーキデューティーが40%の
チョッパ信号を出力し、カウント値が「10」以下であれば、ブレーキデューティーが3
0%のチョッパ信号を出力し、カウント値が「12」であれば、ブレーキデューティーが
70%のチョッパ信号を出力し、カウント値が「13」以上であれば、ブレーキデューテ
ィーが80%のチョッパ信号を出力するように構成してもよい。
【0049】
前記実施形態では、ゼンマイ11からの機械エネルギーで調速機を兼用する第1発電機
30、30B、30Cのローター35、第1ローター35B、35Cを回転し、ローター
35、第1ローター35B、35Cの回転速度を調速制御することで、時針4、分針5、
秒針6の運針速度を制御する電子制御式機械時計1、1Bに適用していたが、これに限定
されない。例えば、ゼンマイ11からの機械エネルギーを伝達する輪列20を、ガンギ車
、アンクル、テンプを用いて調速する際に、テンプの振動を検出してテンプの動作を調速
する電子制御式機械時計に適用してもよい。例えば、テンプのテン真に、第1発電機およ
び第2発電機で兼用するローターを取り付け、このローターの回転によって第1発電コイ
ル、第2発電コイルで発電し、かつ、第1発電コイルを第1チョッピング制御することで
ローターの回転つまりはテンプの回転速度を高精度に調速してもよい。また、第1発電機
および第2発電機で別々のローターを用いる場合は、第1発電機の第1ローターをテン真
に取り付けて発電および調速を行えば良い。この場合、第2発電機の第2ローターは、第
1ローターと同様にテン真に取り付けてもよいし、第2カナを設けて輪列によって回転す
るように配置してもよい。
【0050】
[まとめ]
本開示の電子制御式機械時計は、ゼンマイと、前記ゼンマイの機械エネルギーを伝達す
る輪列と、前記輪列と連動するローターと、前記輪列によって駆動されて時刻を表示する
指針と、前記ゼンマイの前記機械エネルギーから電気エネルギーを生成し、且つ、前記ロ
ーターに与える磁界を発生して前記輪列の回転速度を制御する第1発電コイルと、前記ゼ
ンマイの前記機械エネルギーから電気エネルギーを生成する第2発電コイルと、前記第1
発電コイルおよび前記第2発電コイルで生成された前記電気エネルギーを蓄電する蓄電装
置と、第1制御信号に基づいて前記第1発電コイルで生成された前記電気エネルギーを前
記蓄電装置に充電し、且つ、前記第1発電コイルを介して前記輪列の回転速度を制御する
第1充電回路と、前記第2発電コイルで生成された前記電気エネルギーを前記蓄電装置に
充電する第2充電回路と、を備えることを特徴とする。
発電および調速用の第1発電コイルおよび第1充電回路に加えて、発電専用の第2発電
コイルおよび第2充電回路を追加しているので、ゼンマイの巻き解きトルクや第1発電コ
イルの大きさを維持したまま、発電効率を向上することができる。このため、電子制御式
機械時計の発電能力を高めてゼンマイの持続時間を延ばすことができる。また、第1発電
コイルと第2発電コイルとを分散配置できるので、ムーブメントにおける部品レイアウト
の自由度を高めることができる。
【0051】
本開示の電子制御式機械時計において、前記第1充電回路は、前記第1制御信号に基づ
いて前記第1発電コイルの端子を短絡する第1チョッピング制御によって、前記第1発電
コイルで生成された前記電気エネルギーを昇圧して前記蓄電装置に充電し、且つ、前記輪
列の回転速度の制御を行い、前記第2充電回路は、前記第1制御信号とは異なる第2制御
信号に基づいて前記第2発電コイルの端子を短絡する第2チョッピング制御によって、前
記第2発電コイルで生成された前記電気エネルギーを昇圧して前記蓄電装置に充電するこ
とが好ましい。
このような構成によれば、第1充電回路を制御する第1制御信号と、第2充電回路を制
御する第2制御信号とを別々に設定できる。このため、第1制御信号は、第1発電機の発
電および調速に適した制御信号に設定でき、第2制御信号は、第2発電機の発電に適した
制御信号に設定でき、発電効率を向上しながら、ローターを効率良く調速することができ
る。
【0052】
本開示の電子制御式機械時計において、発振信号を出力する振動子を備え、前記第1制
御信号は、前記第1発電コイルの起電圧波形に基づく回転検出信号と、前記発振信号に基
づく基準信号とを比較した比較結果に基づいて生成され、パルス幅が可変制御された第1
チョッパ信号であり、前記第2制御信号は、パルス幅が固定された第2チョッパ信号であ
ることが好ましい。
このような構成によれば、第1制御信号は、第1発電コイルの起電圧波形に基づくロー
ターの回転検出信号と、基準信号とを比較した比較結果に基づいて第1制御信号を生成し
ているので、ローターの回転速度の変化に応じた調速を行うことができる。第2制御信号
は、パルス幅が固定されたチョッパ信号であるため、発電に最適な第2制御信号で制御で
きる。
【0053】
本開示の電子制御式機械時計において、前記第2制御信号の周期に対するブレーキ期間
の割合を示すデューティー比は、60%以上、90%以下であることが好ましい。
第2制御信号のデューティー比を60%以上、90%以下に設定したので、第2発電機
の発電効率を向上することができる。
【0054】
本開示の電子制御式機械時計において、前記第1充電回路は、前記第1発電コイルと電
源ラインとの間に接続された第1のダイオードと、前記第1発電コイルの端子を短絡する
第1のトランジスターとを備え、前記第2充電回路は、前記第2発電コイルと前記電源ラ
インとの間に接続された第2のダイオードと、前記第2発電コイルの端子を短絡する第2
のトランジスターとを備え、前記第1充電回路と前記第2充電回路とは、直列に接続され
ることが好ましい。
第1充電回路および第2充電回路を直列に接続したので、第1発電コイルや第2発電コ
イルが小さいコイルであっても高い発電電圧を得ることができる。
【0055】
本開示の電子制御式機械時計において、前記第2発電コイルは、前記ローターによって
前記電気エネルギーを生成することが好ましい。
第1発電コイルと、第2発電コイルとで共用のローターを設けているので、省スペース
化を実現できる。
【0056】
本開示の電子制御式機械時計において、前記輪列と連動する第2ローターをさらに備え
、前記第2発電コイルは、前記第2ローターによって前記電気エネルギーを生成すること
が好ましい。
発電および調速用の第1ローターと、発電専用の第2ローターとを別々に設けているの
で、各用途に最適なローター磁石材料を採用することができ、各性能を最大限高めること
ができる。
第1発電機は、第2発電機の影響を受けずに第1ローターの回転を制御でき、安定した
調速制御を行うことができる。また、第2発電機も第1発電機の影響を受けずに第2ロー
ターの回転を制御でき、発電に最適な制御を行うことができる。
【0057】
本開示の電子制御式機械時計において、前記輪列は、前記ローターのカナと噛み合う第
1歯車と、前記第2ローターのカナに噛み合い、且つ、前記第1歯車の回転を増速して伝
達する増速歯車と、を備えることが好ましい。
第1歯車の回転を増速して第2ローターのカナに伝達する増速歯車を備えるため、発電
専用の第2ローターの回転速度を高くすることができ、発電性能をより向上できる。
【符号の説明】
【0058】
1…電子制御式機械時計、1B…電子制御式機械時計、4…時針、5…分針、6…秒針
、10…ムーブメント、10B…ムーブメント、10C…ムーブメント、11…ゼンマイ
、12…香箱車、20…輪列、25…六番車、26…増速歯車、30…第1発電機、30
B…第1発電機、30C…第1発電機、32…第1発電コイル、32B…第1発電コイル
、32C…第1発電コイル、35…ローター、35B…第1ローター、35C…第1ロー
ター、36…カナ、36B…第1カナ、36C…第1カナ、40…第2発電機、40B…
第2発電機、40C…第2発電機、42…第2発電コイル、42B…第2発電コイル、4
2C…第2発電コイル、45B…第2ローター、45C…第2ローター、46B…第2カ
ナ、46C…第2カナ、50…第1充電回路、50D…第1充電回路、51…第1のスイ
ッチ、52…第2のスイッチ、53…電界効果型トランジスター、54…電界効果型トラ
ンジスター、55…電界効果型トランジスター、56…電界効果型トランジスター、57
…ダイオード、58…ダイオード、59…コンデンサー、60…第2充電回路、60E…
第2充電回路、61…第3のスイッチ、62…第4のスイッチ、63…電界効果型トラン
ジスター、64…電界効果型トランジスター、65…電界効果型トランジスター、66…
電界効果型トランジスター、67…ダイオード、68…ダイオード、70…制御部、71
…発振回路、72…回転検出回路、73…制御回路、80…蓄電装置、81…第1の電源
ライン、82…第2の電源ライン、85…ダイオード、90…電圧検出部、100…水晶
振動子。