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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132055
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】汚泥乾燥焼却システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/06 20060101AFI20240920BHJP
   C02F 11/12 20190101ALI20240920BHJP
   F23G 5/04 20060101ALI20240920BHJP
   F23G 5/50 20060101ALI20240920BHJP
   F23G 7/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C02F11/06 B
C02F11/12 ZAB
F23G5/04 A
F23G5/50 Q
F23G7/00 104
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042692
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000133032
【氏名又は名称】株式会社タクマ
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【弁理士】
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】坂口 孝瑛
(72)【発明者】
【氏名】水野 孝昭
【テーマコード(参考)】
3K062
3K065
3K161
4D059
【Fターム(参考)】
3K062AA02
3K062AB01
3K062AC02
3K062BA02
3K062CB01
3K062DA35
3K065AA02
3K065AB01
3K065AC02
3K065BA02
3K065CA13
3K161AA23
3K161CA01
3K161DA02
3K161EA31
3K161JA25
4D059AA03
4D059BB01
4D059BB12
4D059BB13
4D059BD01
4D059BD12
4D059BD23
4D059BE00
4D059BJ03
4D059BJ17
4D059CB01
4D059CB07
4D059EA01
4D059EB02
4D059EB10
4D059EB16
4D059EB20
(57)【要約】
【課題】 測定された含水率に基づいて、焼却炉における燃焼状態をいっそう安定化し得る汚泥乾燥焼却システムを提供する。
【解決手段】 脱水汚泥Dを受け入れ、加熱して乾燥させ、乾燥汚泥Kとして排出する汚泥乾燥機2と、汚泥乾燥機2から排出された乾燥汚泥が供給され、供給された乾燥汚泥を燃焼させる焼却炉3と、焼却炉3に供給される乾燥汚泥の含水率を連続的に測定する水分測定器4と、汚泥乾燥機2を制御する乾燥機制御装置5と、焼却炉3を制御する燃焼制御装置6と、を備え、乾燥機制御装置5は、水分測定器4の測定値が予め設定された目標含水率となるように、汚泥乾燥機2を制御し、燃焼制御装置6は、水分測定機4による測定値が連続的に入力され、入力された測定値に応じて焼却炉3の燃焼を制御する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱水汚泥を受け入れ、加熱して乾燥させ、乾燥汚泥として排出する汚泥乾燥機と、
前記汚泥乾燥機から排出された乾燥汚泥が供給され、供給された乾燥汚泥を燃焼させる焼却炉と、
前記焼却炉に供給される前記乾燥汚泥の含水率を連続的に測定する水分測定器と、
前記汚泥乾燥機を制御する乾燥機制御装置と、
前記焼却炉を制御する燃焼制御装置と、を備え、
前記乾燥機制御装置は、前記水分測定器の測定値が予め設定された目標含水率となるように、前記汚泥乾燥機を制御し、
前記燃焼制御装置は、前記水分測定機による測定値が連続的に入力され、入力された前記測定値に応じて前記焼却炉の燃焼を制御する、
汚泥乾燥焼却システム。
【請求項2】
前記汚泥乾燥機は、汚泥乾燥機内での汚泥の滞留時間を調整するための高さ調整可能な堰部と、前記堰部の高さを調整する昇降駆動部と、を備え、
前記乾燥機制御装置は、前記昇降駆動部を制御することにより、前記測定値が前記目標含水率となるように前記堰部の高さを調整する、請求項1に記載の汚泥乾燥焼却システム。
【請求項3】
前記汚泥乾燥機は、熱媒が通る中空軸に取り付けられ前記中空軸に内部連通する中空の複数のパドル翼と、前記中空軸を回転駆動させる駆動モータと、を更に備え、
前記乾燥機制御装置は、前記堰部の高さが上限設定高さにある時に前記水分測定器による測定値が前記目標含水率より高い場合に、前記測定値が前記目標含水率となるように、前記駆動モータを制御することにより、前記中空軸の回転速度を調整する、請求項2に記載の汚泥乾燥焼却システム。
【請求項4】
前記乾燥機制御装置は、
前記昇降駆動部の制御により前記堰部の高さを調整する時は、前記制御モータを初期設定回転速度で制御し、
前記駆動モータの制御により前記中空軸の回転速度を調整する時は、前記中空軸の回転速度を、前記初期設定回転速度以上であって上限設定回転速度以下の範囲で調整する、
請求項3に記載の汚泥乾燥焼却システム。
【請求項5】
前記乾燥機制御装置は、前記熱媒の温度を調整可能な熱媒温度調整部を更に有し、前記中空軸の回転速度が上限設定値に達している時に前記測定値が前記目標含水率より高い場合に、前記測定値が前記目標含水率となるように、前記熱媒温度調整部を制御することにより前記熱媒温度を調整する、請求項3に記載の汚泥乾燥焼却システム。
【請求項6】
前記乾燥機制御装置は、
前記駆動モータの制御により前記中空軸の回転速度を調整する時は、前記熱媒温度を初期設定温度で制御し、
前記熱媒温度調整部の制御により前記熱媒温度を調整する時は、前記熱媒温度を、前記初期設定温度以上であって上限設定温度以下の範囲で調整する、
請求項5に記載の汚泥乾燥システム。
【請求項7】
前記汚泥乾燥機は、脱水汚泥を受け入れるための第1受入口と、乾燥させた乾燥汚泥を排出するための排出口と、前記第1受入口と前記排出口との間で脱水汚泥を分散投入するための第2受入口と、前記第1受入口及び前記第2受入口への分散投入比率を制御する投入量制御部と、を備える、
請求項1に記載の汚泥焼却システム。
【請求項8】
前記乾燥機制御装置は、前記測定値が前記目標含水率となるように、前記投入量制御部を制御することにより前記第1受入口への投入比率を調節する、請求項7に記載の汚泥乾燥焼却システム。
【請求項9】
前記汚泥乾燥機は、熱媒が通る中空軸に取り付けられ前記中空軸に内部連通する中空の複数のパドル翼と、前記中空軸を回転駆動させる駆動モータと、を備え、
前記乾燥機制御装置は、前記測定値が前記目標含水率となるように、前記駆動モータを制御することにより、前記中空軸の回転速度を調整する、請求項1に記載の汚泥乾燥焼却システム。
【請求項10】
前記汚泥乾燥機は、汚泥乾燥機内での汚泥の滞留時間を調整するための高さ調整可能な堰部と、前記堰部の高さを調整する昇降駆動部と、を更に備え、
前記乾燥機制御装置は、前記中空軸の回転速度が上限設定値に達している時に前記測定値が前記目標含水率より高い場合に、前記測定値が前記目標含水率となるように、前記昇降駆動部を制御することにより、前記測定値が前記目標含水率となるように前記堰部の高さを調整する、請求項9に記載の汚泥乾燥焼却システム。
【請求項11】
前記汚泥乾燥機は、
汚泥乾燥機内での汚泥の滞留時間を調整するための高さ調整可能な堰部と、前記堰部の高さを調整する昇降駆動部と、
熱媒が通る中空軸に取り付けられ前記中空軸に内部連通する中空の複数のパドル翼と、前記中空軸を回転駆動させる駆動モータと、を備え、
前記乾燥機制御装置は、昇降駆動部及び前記駆動モータを同時に制御することにより、前記測定値が前記目標含水率となるように、前記堰部の高さ及び前記中空軸の回転速度を調整する、請求項1に記載の汚泥乾燥焼却システム。
【請求項12】
前記汚泥乾燥機は、
汚泥乾燥機内での汚泥の滞留時間を調整するための高さ調整可能な堰部と、前記堰部の高さを調整する昇降駆動部と、
熱媒が通る中空軸に取り付けられ前記中空軸に内部連通する中空の複数のパドル翼と、前記中空軸を回転駆動させる駆動モータと、を備え、
前記乾燥機制御装置は、前記水分測定器の測定値の変化の割合を演算し、前記変化の割合に基づいて、前記昇降駆動部の調整及び前記駆動モータの調整の何れを優先するかを決定し、決定した優先順位に従って、前記測定値が前記目標含水率となるように、前記堰部の高さ及び前記中空軸の回転速度を調整する、請求項1に記載の汚泥乾燥焼却システム。
【請求項13】
前記汚泥乾燥機は、
汚泥乾燥機内での汚泥の滞留時間を調整するための高さ調整可能な堰部と、前記堰部の高さを調整する昇降駆動部と、
熱媒が通る中空軸に取り付けられ前記中空軸に内部連通する中空の複数のパドル翼と、前記中空軸を回転駆動させる駆動モータと、を備え、
前記乾燥機制御装置は、前記水分測定器の測定値の変化の割合を演算し、前記変化の割合に基づいて、前記昇降駆動部及び前記駆動モータの何れを優先して調整するか或いは同時に調整するかを決定し、前記決定に従って、前記測定値が前記目標含水率となるように、前記堰部の高さ及び前記中空軸の回転速度を調整する、請求項1に記載の汚泥乾燥焼却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物である汚泥を乾燥させて焼却する汚泥乾燥焼却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水道施設等において発生する脱水汚泥を、蒸気を熱媒体として脱水汚泥と間接的に熱の授受を行うことにより汚泥中の水分を蒸発させる乾燥方式(以下、蒸気間接加熱式)の汚泥乾燥機で乾燥させてから焼却炉で焼却処理する焼却システムが知られている(特許文献1,非特許文献1、2等)。
【0003】
また、汚泥乾燥機から焼却炉へ供給される乾燥汚泥の含水率を非接触水分計で計測し、計測された含水率に基づいて、汚泥乾燥機への脱水汚泥の供給量、汚泥乾燥機での脱水汚泥に対する乾燥温度、汚泥乾燥機での脱水汚泥の乾燥時間、汚泥乾燥機から焼却炉への乾燥汚泥供給量、焼却炉内での火格子による汚泥送り速度、焼却炉内への燃焼空気供給量等を調整することにより、焼却炉の燃焼状態を制御する燃焼制御手段を備える汚泥焼却設備が知られている(特許文献2等)。前記燃焼制御手段は、計測された乾燥汚泥の水分率から、乾燥汚泥の発熱量の増加傾向又は減少傾向を予測し、予測される発熱量の増加減少を抑えるように、汚泥乾燥機への脱水汚泥の供給量、汚泥乾燥機での脱水汚泥に対する乾燥温度、汚泥乾燥機での脱水汚泥の乾燥時間、汚泥乾燥機から焼却炉への乾燥汚泥供給量、焼却炉内での火格子による汚泥送り速度、焼却炉内への燃焼空気供給量等の運転条件を調整し、焼却炉の燃焼運転を安定化させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-126788号公報
【特許文献2】特開2022-81039号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】中西譲、株丹直樹著、「京都市鳥羽水環境保全センター 階段炉乾燥・焼却設備長寿命化工事」、タクマ技報Vol.22 No.1、2014年6月25日発行、P.37~P.41
【非特許文献2】堀井靖生、水野孝昭和、株丹直樹、宍田健一著、「蒸気間接加熱型汚泥乾燥機の開発」タクマ技報VOL.27、No.1、2019年6月29日発行、P.52~p.57
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来、汚泥乾燥機と焼却炉とは別々に運転されており、例えば、乾燥汚泥の含水率測定値に基づいて乾燥汚泥の発熱量の増加傾向又は減少傾向を予測(計算)し、予測される発熱量の増加減少を抑えるように汚泥乾燥機の運転条件を変更することにより含水率が変動すると、焼却炉は変動した汚泥含水率で安定燃焼するように制御されるため、燃焼状態が変動するおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、上記従来の問題に鑑み、測定された含水率に基づいて、焼却炉における燃焼状態をいっそう安定化し得る汚泥乾燥焼却システムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る汚泥乾燥焼却システムは、脱水汚泥を受け入れ、加熱して乾燥させ、乾燥汚泥として排出する汚泥乾燥機と、前記汚泥乾燥機から排出された乾燥汚泥が供給され、供給された乾燥汚泥を燃焼させる焼却炉と、前記焼却炉に供給される前記乾燥汚泥の含水率を連続的に測定する水分測定器と、前記汚泥乾燥機を制御する乾燥機制御装置と、前記焼却炉を制御する燃焼制御装置と、を備え、前記乾燥機制御装置は、前記水分測定器の測定値が予め設定された目標含水率となるように、前記汚泥乾燥機を制御し、前記燃焼制御装置は、前記水分測定機による測定値が連続的に入力され、入力された前記測定値に応じて前記焼却炉の燃焼を制御する。
【0009】
前記汚泥乾燥機は、汚泥乾燥機内での汚泥の滞留時間を調整するための高さ調整可能な堰部と、前記堰部の高さを調整する昇降駆動部と、を備え、前記乾燥機制御装置は、前記昇降駆動部を制御することにより、前記測定値が前記目標含水率となるように前記堰部の高さを調整する構成とし得る。
【0010】
前記汚泥乾燥機は、熱媒が通る中空軸に取り付けられ前記中空軸に内部連通する中空の複数のパドル翼と、前記中空軸を回転駆動させる駆動モータと、を更に備え、前記乾燥機制御装置は、前記堰部の高さが上限設定高さにある時に前記水分測定器による測定値が前記目標含水率より高い場合に、前記測定値が前記目標含水率となるように、前記駆動モータを制御することにより、前記中空軸の回転速度を調整する構成とし得る。
【0011】
前記乾燥機制御装置は、前記昇降駆動部の制御により前記堰部の高さを調整する時は、前記制御モータを初期設定回転速度で制御し、前記駆動モータの制御により前記中空軸の回転速度を調整する時は、前記中空軸の回転速度を、前記初期設定回転速度以上であって上限設定回転速度以下の範囲で調整する構成とし得る。
【0012】
前記乾燥機制御装置は、前記熱媒の温度を調整可能な熱媒温度調整部を更に有し、前記中空軸の回転速度が上限設定値に達している時に前記測定値が前記目標含水率より高い場合に、前記測定値が前記目標含水率となるように、前記熱媒温度調整部を制御することにより前記熱媒温度を調整する構成とし得る。
【0013】
前記乾燥機制御装置は、前記駆動モータの制御により前記中空軸の回転速度を調整する時は、前記熱媒温度を初期設定温度で制御し、前記熱媒温度調整部の制御により前記熱媒温度を調整する時は、前記熱媒温度を、前記初期設定温度以上であって上限設定温度以下の範囲で調整する構成とし得る。
【0014】
前記汚泥乾燥機は、脱水汚泥を受け入れるための第1受入口と、乾燥させた乾燥汚泥を排出するための排出口と、前記第1受入口と前記排出口との間で脱水汚泥を分散投入するための第2受入口と、前記第1受入口及び前記第2受入口への分散投入比率を制御する投入量制御部と、を備え得る。
【0015】
前記乾燥機制御装置は、前記測定値が前記目標含水率となるように、前記投入量制御部を制御することにより前記第1受入口への投入比率を調節する構成とし得る。
【0016】
前記汚泥乾燥機は、熱媒が通る中空軸に取り付けられ前記中空軸に内部連通する中空の複数のパドル翼と、前記中空軸を回転駆動させる駆動モータと、を備え、
前記乾燥機制御装置は、前記測定値が前記目標含水率となるように、前記駆動モータを制御することにより、前記中空軸の回転速度を調整する構成とし得る。
【0017】
前記汚泥乾燥機は、汚泥乾燥機内での汚泥の滞留時間を調整するための高さ調整可能な堰部と、前記堰部の高さを調整する昇降駆動部と、を更に備え、前記乾燥機制御装置は、前記中空軸の回転速度が上限設定値に達している時に前記測定値が前記目標含水率より高い場合に、前記測定値が前記目標含水率となるように、前記昇降駆動部を制御することにより、前記測定値が前記目標含水率となるように前記堰部の高さを調整する構成とし得る。
【0018】
前記汚泥乾燥機は、汚泥乾燥機内での汚泥の滞留時間を調整するための高さ調整可能な堰部と、前記堰部の高さを調整する昇降駆動部と、熱媒が通る中空軸に取り付けられ前記中空軸に内部連通する中空の複数のパドル翼と、前記中空軸を回転駆動させる駆動モータと、を備え、前記乾燥機制御装置は、昇降駆動部及び前記駆動モータを同時に制御することにより、前記測定値が前記目標含水率となるように、前記堰部の高さ及び前記中空軸の回転速度を調整する構成とし得る。
【0019】
前記汚泥乾燥機は、汚泥乾燥機内での汚泥の滞留時間を調整するための高さ調整可能な堰部と、前記堰部の高さを調整する昇降駆動部と、熱媒が通る中空軸に取り付けられ前記中空軸に内部連通する中空の複数のパドル翼と、前記中空軸を回転駆動させる駆動モータと、を備え、前記乾燥機制御装置は、前記水分測定器の測定値の変化の割合を演算し、前記変化の割合に基づいて、前記昇降駆動部の調整及び前記駆動モータの調整の何れを優先するかを決定し、決定した優先順位に従って、前記測定値が前記目標含水率となるように、前記堰部の高さ及び前記中空軸の回転速度を調整する構成とし得る。
【0020】
前記汚泥乾燥機は、汚泥乾燥機内での汚泥の滞留時間を調整するための高さ調整可能な堰部と、前記堰部の高さを調整する昇降駆動部と、熱媒が通る中空軸に取り付けられ前記中空軸に内部連通する中空の複数のパドル翼と、前記中空軸を回転駆動させる駆動モータと、を備え、前記乾燥機制御装置は、前記水分測定器の測定値の変化の割合を演算し、前記変化の割合に基づいて、前記昇降駆動部及び前記駆動モータの何れを優先して調整するか或いは同時に調整するかを決定し、前記決定に従って、前記測定値が前記目標含水率となるように、前記堰部の高さ及び前記中空軸の回転速度を調整する構成とし得る。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、乾燥機制御装置による汚泥乾燥機の制御により乾燥汚泥の含水率の測定値を設定された目標含水率に安定化させると同時に、汚泥乾燥機の制御により安定した含水率の測定値を焼却炉の燃焼制御装置に入力して燃焼を制御することにより、焼却炉の燃焼をいっそう安定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る汚泥乾燥焼却システムの一実施形態を示す概略構成図である。
図2図1の汚泥乾燥焼却システムの構成要素である汚泥乾燥機の一実施形態を示す縦断側面図である。
図3】本発明に係る汚泥乾燥焼却システムの制御フローの一例を示すフローチャートである。
図4】本発明に係る汚泥乾燥焼却システムの制御フローの他の一例を示すフローチャートである。
図5】本発明に係る汚泥乾燥焼却システムの制御フローの更に他の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る汚泥乾燥焼却システムの実施形態について、図1図5を参照して説明する。なお、全図及び全実施形態を通して同一又は類似の構成要素については同符号を付している。
【0024】
図1を参照して、汚泥乾燥焼却システム1は、図外の下水道処理施設や産業排水処理施設等において発生する脱水汚泥Dを乾燥させて乾燥汚泥Kとして排出する汚泥乾燥機2と、汚泥乾燥機2から排出された乾燥汚泥Kが供給される焼却炉3と、焼却炉3に供給される乾燥汚泥Kの含水率を連続的に測定する水分測定器4と、汚泥乾燥機2を制御する乾燥機制御装置5と、焼却炉3の燃焼を制御する燃焼制御装置6と、を備えている。脱水汚泥Dは一般に含水率70~80%程度であり、この脱水汚泥Dを汚泥乾燥機2によって含水率20~40%程度の乾燥汚泥Kに乾燥させる。
【0025】
脱水汚泥Dは、脱水汚泥バンカ7に貯留され、脱水汚泥バンカ7から脱水汚泥供給コンベヤ8により乾燥機投入ホッパ9に投入され、乾燥機投入ホッパ9を通じて、汚泥乾燥機2に供給される。
【0026】
汚泥乾燥機2で乾燥された乾燥汚泥Kは、乾燥汚泥集合コンベア10、乾燥汚泥バンカ11、及び、汚泥投入コンベア12を通じて、焼却炉3のホッパ13に投入される。
【0027】
焼却炉3は、炉本体14、炉本体14に接続されたホッパ13、ホッパ13内の焼却対象物を炉本体14内に供給する給じん装置15、炉本体14内に設けられたストーカ16、炉本体14内で発生する燃焼排ガスから熱回収する廃熱ボイラ17、炉本体14内に燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給装置18、主灰シュート19等を備えている。廃熱ボイラ17で発生した蒸気Vは、汚泥乾燥機2の熱媒に利用される。
【0028】
図示例のストーカ16は、階段式ストーカであり、上流側から下流側にかけて、乾燥ストーカ16a、燃焼ストーカ16b、後燃焼ストーカ16cで構成されている。ストーカ16は、ごみ送り方向(図1の左側から右側へ向かう方向)に、可動火格子16dと固定火格子16eとが交互に階段状に配列されている。
【0029】
油圧シリンダ等の油圧機器で構成されるストーカ駆動装置16f、16g、16hによって、乾燥ストーカ16a、燃焼ストーカ16b、及び後燃焼ストーカ16cの其々の可動火格子16dを往復動させることにより、乾燥汚泥を攪拌しながら上流側から下流側へ移送する。ストーカ速度調整部を構成するストーカ駆動装置16f、16g、16hは、燃焼制御装置6により制御される。燃焼制御装置6は、制御部、演算部、記憶部、インターフェース等を備えている。可動火格子16dが往復動する速度、即ちストーカ速度は、ストーカ駆動装置16f、16g、16hを構成する油圧機器を制御することにより、調整される。
【0030】
図示例の給じん装置15は、プッシャー15aの往復動により、ホッパ13内のごみを焼却炉内に押し込むプッシャー方式である。プッシャー15aは、油圧シリンダ等のプッシャー駆動装置15bによって往復動する。燃焼制御装置6によってプッシャー駆動装置15bを制御することにより、プッシャー15aの往復動速度、即ち、給じん速度が制御され、ホッパ13から炉本体14内に供給されるごみの送り量が制御される。
【0031】
燃焼用空気供給装置18は、燃焼に必要な空気、即ち燃焼用空気を炉内に送り込む装置であり、押込送風機18a、ダンパ18bを備えている。燃焼用空気は、ストーカ16の下から送られる1次空気と、燃焼室上部に送られる2次空気とに分けられる。燃焼空気供給量調整部を構成するダンパ18b及び又は押込送風機18aが燃焼制御装置6によって制御され、それにより燃焼用空気量が制御される。
【0032】
図2は、汚泥乾燥機の一例を示している。汚泥乾燥機2は、図2に示すように、伝熱ジャケット20を有するケーシング21の内部に、単一または複数本の中空軸22にパドル翼23(伝熱翼とも言う。)が適宜間隔で配列された伝熱体が回転自在に支持されている。ケーシング21は、一端側に脱水汚泥を受け入れるための第1受入口24を備え、他端側に乾燥汚泥を排出するための排出口25を備え、第1受入口24と排出口25との間に、脱水汚泥を分散投入するための第2受入口26を備えている。第1受入口24と第2受入口26への分散投入比率は、投入量制御部27(図1参照)によって変更可能である。投入量制御部27は、例えば、開口量調整可能なゲートバルブとすることができる。投入量制御部27は、図示例では乾燥機制御装置5によって制御されるように構成されている態様を示しているが、他の態様において乾燥機制御装置5によらず手動で調整する構成とすることもできる。第2受入口26は、図示例では一つであるが、複数あってもよい。
【0033】
汚泥乾燥機2は、排出口25の手前に、ケーシング21に投入された乾燥汚泥が排出口25から排出されるまでの滞留時間を調整するための高さ調整可能な堰部28と、堰部28の高さを調整するための昇降駆動部29とを更に備えている。昇降駆動部29は、乾燥機制御装置5によって制御される。昇降駆動部29は、堰部28の高さを、下限高さと上限高さの間で、段階的(例えば5段階)に、或いは、無段階で連続的に変更することもできる。昇降駆動部29は、例えば、パワーシリンダで構成することができる。堰部28は、例えば、ケーシング21の下部に設けたスリット(図示せず。)に摺動可能に挿通された板状部材とすることができる。
【0034】
汚泥乾燥機2は、中空軸22の内部に熱媒を供給する熱媒供給口22aと、中空軸22の中空部から熱媒を排出するための熱媒排出口22bとが設けられている。中空軸22及びパドル翼23は、内部を連通する中空とされており、熱媒供給口22aから導入された熱媒が、前記中空を通ってドレンとなって熱媒排出口22bから排出される。中空軸22は、ケーシング21の外側で、伝動チェーン30等を介して駆動モータ31と駆動連結されて回転駆動する。駆動モータ31は、乾燥機制御装置5によって回転速度が制御される。
【0035】
ケーシング21には、乾燥により発生した水蒸気を排出するため、排気ファン(図示せず。)が設けられており、ケーシング21に設けられたキャリアガス入口21aからキャリアガス(外部空気)をケーシング21内に吸い込み、キャリアガスとともに水蒸気をケーシング21に設けられた排気口21bから排気する。伝熱ジャケット20にも、ジャケット用熱媒供給口20aとジャケット用熱媒排出口20bが設けられている。ケーシング21は、排出口25の側が低くなる下り勾配の傾斜を持たせて設置することもできる。
【0036】
間接加熱型式の汚泥乾燥機2は、熱媒として廃熱ボイラ17で発生した蒸気Vが用いられる。熱媒供給口22a及びジャケット用熱媒供給口20aから供給された蒸気Vは、中空軸22及びパドル翼23の内部空間及び伝熱ジャケット20内を通って熱媒排出口22b及びジャケット用熱媒排出口20bから排出される間に、中空軸22、パドル翼23、及び伝熱ジャケット20を通じて汚泥との間接接触により汚泥を加熱して乾燥させる。乾燥により発生した水蒸気は、キャリアガスとともに排気口21bから排気される。汚泥乾燥機2に供給される熱媒としての蒸気Vは、熱媒温度調整部32(図1参照)によって温度調整される。熱媒温度調整部32は、例えば圧力調整弁とすることができ、蒸気Vの圧力を制御することにより、蒸気温度を調整することができる。熱媒温度調整部32は、乾燥機制御装置により制御され得る。
【0037】
水分測定器4は、非接触式の赤外線水分計を好適に用いることができる。水分測定器4は、汚泥乾燥機2と焼却炉3との間の搬送経路に設置することができ、図示例では乾燥汚泥集合コンベア10に設置されているが、乾燥汚泥バンカ11或いは汚泥投入コンベア12に設置することもできる。水分測定器4による測定データは、乾燥機制御装置5にリアルタイムで送られる。
【0038】
乾燥機制御装置5は、水分測定器4の測定値Pと予め設定された乾燥汚泥の目標含水率Wとを比較し、測定値Pが目標含水率Wとなるように、昇降駆動部29を制御することにより堰部28の高さを調整する。堰部28の高さを調整することにより、汚泥乾燥機2内の汚泥の滞留時間を調整することができ、滞留時間の調整により加熱時間が調整され、それにより汚泥の含水率を調整することができる。なお、目標含水率は、所定値(例えば40%)で設定することもできるし、所定範囲(例えば40%±5%)で設定することもできる。
【0039】
駆動モータ31の制御により中空軸22の回転速度を調整することによっても、含水率の調整をすることができる。中空軸22の回転速度を速めることにより、パドル翼23と汚泥との接触回数が増えることで伝熱が良くなり、乾燥を促進することができる。中空軸22の回転速度調整は、堰部28の高さ調整に比べて、含水率のより急速な調整、即ち、含水率をより急速に上昇又は下降させることができる。堰部28の高さ調整は、含水率の緩やかな調整に適している。
【0040】
例えば、乾燥機制御装置5は、堰部28の高さが上限設定高さ以下の高さにある時に含水率の測定値Pが目標含水率W以下であるときは、堰部28のみを制御し、一方、堰部28の高さが上限設定高さにある時に含水率の測定値Pが目標含水率Wより高い場合には、駆動モータ31を制御して、中空軸22の回転速度を初期設定回転速度から増速しその増速度合を調整することにより、含水率の測定値Pが目標含水率Wとなるように調整することができる。
【0041】
一方、例えば、堰部28の高さが上限設定高さにあって駆動モータ31が初期設定回転速度から増速した回転速度で回転している時に、含水率の測定値Pが目標含水率Wより低くなった場合には、測定値Pが目標含水率Wとなるように回転速度を減速する。中空軸22の回転速度を減速して初期設定回転速度になっても測定値Pが目標含水率W以下である場合は、中空軸22の回転速度を初期設定回転速度に維持し、再び、堰部28の高さ調整により汚泥の含水率を調整する。
【0042】
上記制御例の場合、乾燥機制御装置5は、堰部28の高さが上限設定高さ以下の高さにあって堰部28の高さ調整により水分測定器4による測定値Pが目標含水率Wに調整されている場合は、中空軸22の回転速度を初期設定回転速度で回転させておき、堰部28のみによる制御では測定値Pを目標含水率Wに調整できない場合、即ち、堰部28の高さが上限設定高さ位置にある時に水分測定器4による測定値Pが目標含水率Wより高い場合に、測定値Pが目標含水率Wになるように、中空軸22の回転速度を、初期回転速度以上で上限設定回転速度以下の範囲で調整し、初期回転速度に対する増速度合を調整することができる。
【0043】
また、熱媒温度調整部32の制御により熱媒となる蒸気Vの温度を調整することによっても、汚泥の含水率を調整することができる。蒸気温度の変更は、蒸気系統への影響があるため、蒸気系統への影響が少ない範囲で、補助的な制御として用いることが望ましい。
【0044】
従って、乾燥機制御装置5は、通常は蒸気Vの温度を初期設定温度で制御するが、例えば、上記のように中空軸22の回転速度制御により中空軸22の回転速度が上限設定値に達しても測定値Pが目標含水率Wより未だ高い場合に、測定値Pが目標含水率Wとなるように、熱媒温度調整部32を制御して蒸気Vの温度を初期設定温度以上で上限設定温度以下の範囲で調整することにより、含水率の測定値Pを目標含水率Wになるように調整し、それ以外の場合は蒸気Vの温度を初期設定温度で制御することができる。
【0045】
汚泥乾燥機2における乾燥機制御装置5による上記制御例では、堰部28の高さ調整による含水率の調整を、中空軸22の回転速度の調整による含水率の調整に優先して行うこととしたが、その逆、即ち、中空軸22の回転速度の調整による含水率の調整を、堰部28の高さ調整による含水率の調整より優先することもできるし、或いは、堰部28の高さ調整による含水率の調整と、中空軸22の回転速度の調整による含水率の調整とを並行して同時に行うこともできる。
【0046】
下水道処理施設や産業排水処理施設において発生する脱水汚泥Dは、処理施設によって可燃分率の変動等の質的変動があり、脱水汚泥Dの質に応じて、堰部28の高さ調整による含水率の調整と、中空軸22の回転速度の調整による含水率の調整とについて、いずれの調整を優先するか、或いは、双方の調整を同時に行うか、を適宜設定することができる。例えば、可燃分率が低く水分蒸発速度が高い脱水汚泥Dの場合は、堰部28の高さ調整を中空軸22の回転速度の調整に優先し、緩やかに目標含水率に近づけることができる。逆に、例えば、可燃分率が高く水分蒸発速度が低い脱水汚泥Dの場合は、中空軸22の回転速度の調整を堰部28の高さ調整に優先し、急速に目標含水率に近づけることができる。また、例えば、可燃分率が中間程度であれば、堰部28の高さ調整と中空軸22の回転速度の調整とを同時に行う等とすることができる。
【0047】
ある実施態様において、乾燥機制御装置5は、水分測定器4で測定される測定値Pが変化する割合(傾き、平均変化率、微分係数等)を演算し、その演算結果に基づいて、堰部28の高さ調整による含水率の調整、及び、中空軸22の回転速度の調整による含水率の調整について、いずれの調整を優先するか或いは同時に行うかを決定し、切り替えることもできる。例えば、測定値Pの変化する割合が、予め設定された変化割合より大きく、急激な含水率の変動がある場合は、できるだけ早く含水率の変動を抑えるために、中空軸22の回転速度の調整による含水率の調整を、堰部28の高さ調整による含水率の調整に優先して行うことができる。一方、例えば、測定値Pの変化する割合が、予め設定された変化割合より小さく、緩慢な含水率の変動がある場合は、緩やかに含水率の変動を調整するために、堰部28の高さ調整による含水率の調整を、中空軸22の回転速度の調整による含水率の調整に優先して行うことができる。また、例えば、測定値Pの変化する割合が、予め設定された変化割合より小さくも大きくもなく中間的な変化割合である場合は、堰部28の高さ調整と中空軸22の回転速度の調整とを同時に平行して行い、含水率を調整する構成とすることもできる。
【0048】
図3は、水分測定器4で測定される測定値Pが予め設定された目標含水率Wとなるように、乾燥機制御装置5により汚泥乾燥機2を制御する制御フローチャートの一例を示している。運転開始時において、中空軸22の回転速度R、蒸気温度Tは、それぞれ、初期設定回転速度R0、初期設定温度T0に設定されている。なお、図3に示されていないが、堰部28の高さHは初期設定高さH0に設定されている。
【0049】
図3を参照して、測定値Pが入力され(S1)、測定値Pと目標含水率Wとが比較される(S2)。測定値Pが目標含水率Wになっている場合は、堰部28の高さH、回転速度R、蒸気温度Tは、初期設定値(H0、R0,T0)が維持される。測定値Pが目標含水率Wから外れている場合、後述の理由により蒸気温度T及び回転速度Rを其々の初期値(R0,T0)と比較し(S3,S4)、初期値(R0,T0)が維持されている場合に、堰部28の高さ調整がなされる(S5)。堰部28の高さHの調整は、上限高さ(Tmax)と下限高さ(Hmin)との間でなされ、測定値Pと目標含水率Wとが比較される(S6)。堰部28の高さ調整により測定値Pが目標含水率Wになった場合は、その高さが維持される。堰部28の高さ調整によって測定値Pが目標含水率Wにならない場合には、堰部28の高さが上限高さ(Hmax)に達しているかを判定し(S7)、上限高さ(Hmax)に達していない場合は高さ調整が繰り返され、上限高さに達している場合は、中空軸22の回転速度Rを調整し(S8)、測定値Pと目標含水率Wとを比較する(S9)。回転速度Rの調整は、上限回転速度(Rmax)以下で初期設定回転速度R0以上の範囲で調整される。回転速度Rの調整により測定値Pが目標含水率Wになった場合はその回転速度Rを維持する。回転速度Rの調整により測定値Pが目標含水率Wになっていない場合は、回転速度Rが上限回転速度(Rmax)に達しているか否かを判断する(S10)。回転速度Rが上限に達していない場合は、回転速度調整を繰り返し、回転速度Rが上限に達している場合は、測定値Pが目標含水率Wとなるように蒸気温度Tを調整する(S11、S12)。蒸気温度Tは、初期設定温度T0と上限設定温度(Tmax)との間で調整される。蒸気温度Tの調整(S11,S12)によって蒸気温度Tが初期設定温度T0より高い温度に調整されて維持されている場合は、制御フローの初期段階で判断され(S3)、堰部28で高さ調整(S5)を行わずに、蒸気温度の調整(S11,S12)を行う。また、中空軸22の回転速度の調整(S8,S9)により回転速度Rが初期設定回転速度R0より速い速度に調整され維持されている場合も、制御フローの初期段階で判断され(S4)、堰部28の高さ調整(S5)を行わずに、回転速度Rの調整(S8,S9)を行う。中空軸22の回転速度の調整(S8,S9)を行っている間に回転速度Rが初期設定回転速度R0に戻った場合は、堰部28の高さ調整に進む(S4,S5)。また、蒸気温度の調整を行っている間に蒸気温度Tが初期設定温度T0に戻った場合は、堰部28の高さ調整を行わず、回転速度Rの調整に進む(S3,S4、S8)。上記の制御フローにより、堰部28の高さ調整→中空軸22の回転速度調整→蒸気温度調整→中空軸22の回転速度調整→堰部28の高さ調整のように、其々の制御項目が優先順位に従って制御されるため、最適な調整がなされ、含水率も早期に安定する。
【0050】
また、汚泥乾燥機2は、投入量制御部27の制御により第1受入口24への脱水汚泥の投入比率を調節することによっても、汚泥の含水率を調整することができる。例えば、通常は第1受入口24へ全ての脱水汚泥を投入し、含水率を下げたい場合に第1受入口24への投入比率を上げ、第2受入口26への脱水汚泥の投入比率を下げると、含水率を低下させることができる。
【0051】
このように、投入量制御部27の制御により、汚泥乾燥機2に投入する脱水汚泥の全体量を変更せずに、排出口25から排出される乾燥汚泥の含水率を調整することができる。汚泥乾燥機2へ投入する脱水汚泥量を削減することにより含水率を低下させることも可能であるが、処理の必要な脱水汚泥量を直ちに変更することは汚泥処理計画上望ましくないため、上記の何れの方法によっても含水率の測定値Pを目標含水率Wにまで低下させることができない場合は、脱水汚泥の供給量が過剰である等のメッセージ情報を、制御室のモニターM(図1)等に表示するようにしてもよい。
【0052】
上記のようにして、汚泥乾燥機2において乾燥汚泥の含水率の測定値Pが目標含水率Wになるようにリアルタイムで調整されることで、乾燥汚泥Kの含水率の測定値Pが常にほぼ一定の値で安定する。汚泥乾燥機2で目標含水率Wになるように調整され、安定した含水率が水分測定器4によって測定され、燃焼制御装置6に常時入力されている。燃焼制御装置6は、汚泥乾燥機2で調整され安定した含水率の測定値Pに応じて安定燃焼するように、焼却炉3を制御する。
【0053】
なお、図3に示す制御フローチャートにおいて、測定値Pと目標含水率Wとを比較するステップ(S2、S6、S9)では、P=W?としているが、目標含水率Wが所定範囲(W1~W2)である場合は、ステップS2、S6、S9をW1≦P≦W2?として測定値Pが所定範囲(W1~W2)に収まっているか否かを判定することができる。
【0054】
図4は、乾燥機制御装置5により汚泥乾燥機2を制御する制御フローチャートの他の一例を示している。図3の制御フローチャートでは、堰部28の高さ調整を中空軸22の回転速度の調整よりも優先する制御例を示したが、図4の制御フローチャートでは、中空軸22の回転速度の調整を堰部28の高さ調整よりも優先する制御とし、その他のフローは図3と同様である。
【0055】
図5は、乾燥機制御装置5により汚泥乾燥機2を制御する制御フローチャートの更に他の一例を示している。図4の制御フローチャートは、中空軸22の回転速度の調整と堰部28の高さ調整を同時に行う制御例を示している。
【0056】
焼却炉の燃焼制御には、一般に自動燃焼制御(ACC: Automatic Combustion Control)システムが用いられる。自動燃焼制御システムで構成される燃焼制御装置6は、燃焼状態を安定させるために、ごみ(乾燥汚泥)の状況により、ごみ(乾燥汚泥)の供給量や燃焼空気供給量の自動調整を行う。具体的には、燃焼制御装置6は、燃料である乾燥汚泥の量と燃焼に必要な燃焼空気供給量との比率調整(空気比調整)を、乾燥汚泥の発熱量、焼却量、ボイラの発生蒸気量、燃焼室ガス温度、排ガス分析値などの様々な値をもとにしてコンピュータで解析し、多変数制御する。制御目標としては、例えば、燃焼室ガス温度や一酸化炭素濃度、酸素濃度、燃え切り位置、ボイラの発生蒸気量などが用いられる。
【0057】
燃焼制御装置6は、含水率の測定値Pに応じて安定燃焼させるために必要な燃焼空気供給量Qをリアルタイムで供給するように、燃焼空気供給量調整部(18a、18b)を制御する。
【0058】
燃焼空気供給量Qは、例えば、完全燃焼に必要な理論酸素量から求めることができる。例えば、乾燥汚泥1kg中に、炭素c(kg)、水素h(kg)、酸素o(kg)、硫黄s(kg)が含まれていると、乾燥汚泥中にある酸素o(kg)は燃焼に寄与することを考慮すると、乾燥汚泥1kgの完全燃焼に必要な理論酸素量O(kmol)は、O=(c/12)+(h/4)+(s/32)-(o/32)[kmol/kg]であり、理論酸素量から理論空気量が求められる。理論酸素量の計算に、含水率(HO)が計算要素の一つとして用いられる。なお、理論空気量の計算方法は公知であるので、詳細な説明を省略する。完全燃焼させるための燃焼空気供給量Qは、一般に、理論空気量Qより多めに設定され、Q=λ・Q[m /kg]で得られる。ここでλは、空気比(又は空気過剰率)である。
【0059】
以上の説明から明らかなように、乾燥汚泥の含水率を水分測定器4により連続的に測定し、含水率の測定値Pが予め設定された目標含水率Wとなるように汚泥乾燥機2を制御することにより、焼却炉3に供給する乾燥汚泥Kの含水率が常に安定し、その安定した含水率に応じて焼却炉3の燃焼が制御されるため、焼却炉3における乾燥汚泥の燃焼状態がいっそう安定する。
【0060】
また、汚泥乾燥機2において脱水汚泥を乾燥させるための複数の制御要素を、優先順位を設けて制御することにより、汚泥の乾燥が最適化される。
【0061】
本発明は、上記実施形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、汚泥乾燥機の熱媒として、蒸気の他に、熱媒油、或いは高温水を利用する構成とすることもできる。焼却炉としてストーカ式焼却炉を例示したが、流動床炉であってもよい。また、汚泥乾燥機の例として間接加熱型汚泥乾燥機を例示したが、直接加熱型汚泥乾燥機を用いることもできる。
【符号の説明】
【0062】
1 汚泥乾燥焼却システム
2 汚泥乾燥機
3 焼却炉
4 水分測定器
5 乾燥機制御装置
6 燃焼制御装置
28 堰部
29 昇降駆動部
22 中空軸
23 パドル翼
24 第1受入口
25 排出口
26 第2受入口
27 投入量制御部
31 駆動モータ
32 熱媒温度調整部
D 脱水汚泥
K 乾燥汚泥
P 測定値
V 蒸気
W 目標含水率
図1
図2
図3
図4
図5