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特開2024-132058樹脂組成物、積層体、積層体の製造方法、光学部材、及び画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132058
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】樹脂組成物、積層体、積層体の製造方法、光学部材、及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/12 20060101AFI20240920BHJP
   C08F 2/48 20060101ALI20240920BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240920BHJP
   B32B 27/08 20060101ALI20240920BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20240920BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C08L101/12
C08F2/48
B32B27/00 B
B32B27/08
B05D5/00 B
B05D5/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042696
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201732
【弁理士】
【氏名又は名称】松縄 正登
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100227019
【弁理士】
【氏名又は名称】安 修央
(72)【発明者】
【氏名】西尾 美保
(72)【発明者】
【氏名】足立 貴之
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 拓実
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 寛也
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4J002
4J011
【Fターム(参考)】
4D075CA02
4D075CB03
4D075DA04
4D075DB33
4D075DB36
4D075DB38
4D075DB43
4D075DB48
4D075DB53
4D075DC24
4D075EB12
4D075EB22
4D075EB33
4D075EB35
4D075EB37
4D075EB38
4D075EB43
4F100AJ04A
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK12B
4F100AK25B
4F100BA02
4F100CC00B
4F100EH46B
4F100EJ08B
4F100GB41
4F100JA06B
4F100JB12B
4F100JN30B
4F100YY00B
4J002AA011
4J002AA01W
4J002AA021
4J002AA02W
4J002BG041
4J002BG04W
4J002BG062
4J002BG06X
4J002CP032
4J002CP03X
4J002FD202
4J002FD20X
4J002GH01
4J002GH02
4J002GP00
4J002GQ00
4J011AA05
4J011AC04
4J011CA01
4J011CC10
4J011PC02
4J011PC08
4J011QA24
4J011QB24
4J011SA04
4J011SA14
4J011SA16
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA02
(57)【要約】
【課題】 塗工スジの発生を抑制することができる、樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の樹脂組成物は、樹脂基材の少なくとも一方の面上に積層される表面処理層を形成するための樹脂組成物であって、せん断速度1[1/s]における前記樹脂組成物のせん断粘度の最大値をAとし、せん断速度を1000[1/s]から1[1/s]へ切替えてから60秒後における前記樹脂組成物のせん断粘度をBとしたとき、下記式(1)におけるXが、1.6以下であることを特徴とする、樹脂組成物。
X=A/B (1)
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材の少なくとも一方の面上に積層される表面処理層を形成するための樹脂組成物であって、
せん断速度1[1/s]における前記樹脂組成物のせん断粘度の最大値をAとし、
せん断速度を1000[1/s]から1[1/s]へ切替えてから60秒後における前記樹脂組成物のせん断粘度をBとしたとき、
下記式(1)におけるXが、1.6以下であることを特徴とする、樹脂組成物。
X=A/B (1)
【請求項2】
せん断速度を1000[1/s]から1[1/s]へ切替えてから30秒後における前記樹脂組成物のせん断粘度をCとしたとき、
下記式(2)を満たす、請求項1記載の樹脂組成物。
C>B/2 (2)
【請求項3】
前記せん断粘度Bが、0.09[Pa・s]以上である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項4】
せん断速度を1000[1/s]から1[1/s]へ切替えてから30秒後から60秒後までのせん断粘度の最大値をDとし、最小値をEとし、
せん断速度を1000[1/s]から1[1/s]へ切替えてから30秒後から60秒後までのせん断粘度の平均値をFとしたとき、
下記式(3)におけるY及び下記式(4)におけるZが、0.85~1.1である、請求項1記載の樹脂組成物。
Y=D/F (3)
Z=E/F (4)
【請求項5】
せん断速度1000[1/s]におけるせん断粘度の平均値Gが0.0090[Pa・s]以下である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記表面処理層が、ハードコート層又はアンチグレア層である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項7】
樹脂基材の少なくとも一方の面上に表面処理層が積層された積層体であって、
前記表面処理層が、請求項1記載の樹脂組成物の硬化物で形成されていることを特徴とする、積層体。
【請求項8】
前記表面処理層が、ハードコート層又はアンチグレア層である、請求項7記載の積層体。
【請求項9】
塗工工程、塗膜形成工程、及び硬化工程を含み、
前記塗工工程は、樹脂基材の少なくとも一方の面上に塗液を塗工する工程であり、
前記塗膜形成工程は、塗工した前記塗液を乾燥させて塗膜を形成する工程であり、
前記硬化工程は、前記塗膜を硬化させて表面処理層を形成する工程であり、
前記塗液が、請求項1記載の樹脂組成物を含む、
請求項7記載の積層体の製造方法。
【請求項10】
請求項7記載の積層体を含む光学部材。
【請求項11】
ハードコートフィルムである請求項10記載の光学部材。
【請求項12】
アンチグレアフィルムである請求項10記載の光学部材。
【請求項13】
偏光板である請求項10記載の光学部材。
【請求項14】
請求項7もしくは8記載の積層体、又は請求項10から13のいずれか一項に記載の光学部材を含む画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、積層体、積層体の製造方法、光学部材、及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハードコート層などの表面処理層が形成された積層体を作製する方法として、基材に樹脂組成物を含む塗液を塗工し、これを硬化させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-071336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記積層体が光学部材として用いられる場合、前記表面処理層に塗工スジ等の外観不良が発生すると、品質上問題となる。
【0005】
そこで、本発明は、塗工スジの発生を抑制することができる、樹脂組成物、積層体、積層体の製造方法、光学部材、及び画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の樹脂組成物は、
樹脂基材の少なくとも一方の面上に積層される表面処理層を形成するための樹脂組成物であって、
せん断速度1[1/s]における前記樹脂組成物のせん断粘度の最大値をAとし、
せん断速度を1000[1/s]から1[1/s]へ切替えてから60秒後における前記樹脂組成物のせん断粘度をBとしたとき、
下記式(1)におけるXが、1.6以下であることを特徴とする。
X=A/B (1)
【0007】
本発明の積層体は、
樹脂基材の少なくとも一方の面上に表面処理層が積層された積層体であって、
前記表面処理層が、本発明の樹脂組成物の硬化物で形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の積層体の製造方法は、
塗工工程、塗膜形成工程、及び硬化工程を含み、
前記塗工工程は、樹脂基材の少なくとも一方の面上に塗液を塗工する工程であり、
前記塗膜形成工程は、塗工した前記塗液を乾燥させて塗膜を形成する工程であり、
前記硬化工程は、前記塗膜を硬化させて表面処理層を形成する工程であり、
前記塗液が、本発明の樹脂組成物を含む。
【0009】
本発明の光学部材は、本発明の積層体を含む。
【0010】
本発明の画像表示装置は、本発明の積層体、又は本発明の光学部材を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、塗工スジの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1(a)及び(b)は、本発明の積層体の構成を例示する断面図である。
図2図2(a)及び(b)は、本発明の積層体の構成における別の例を示す断面図である。
図3図3(a)及び(b)は、本発明の積層体の構成におけるさらに別の例を示す断面図である。
図4図4は、実施例1~5及び比較例1~2の樹脂組成物のせん断粘度を測定した際のレオメーターによる測定グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、本発明について、例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により、なんら限定されない。
【0014】
なお、本発明において、「上に」又は「面上に」は、上に、又は面上に直接接触した状態でもよいし、他の層等を介した状態でもよい。
【0015】
[1.樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物における前記せん断粘度は、例えば、レオメーターにより測定することができる。前記レオメーターによるせん断粘度の測定条件は、例えば、後述する実施例記載の測定条件とすることができる。
【0016】
前記式(1)におけるXは、例えば、下限値が1.0以上、1.01以上、1.02以上、1.03以上、1.04以上、又は1.05以上であってもよく、上限値が1.5以下、1.4以下、1.3以下、1.2以下、又は1.1以下であってもよい。
【0017】
本発明の樹脂組成物は、例えば、せん断速度を1000[1/s]から1[1/s]へ切替えてから30秒後における前記樹脂組成物のせん断粘度をCとしたとき、下記式(2)を満たす。
C>B/2 (2)
【0018】
本発明の樹脂組成物は、例えば、前記せん断粘度Bが、下限値が0.09[Pa・s]以上、0.1[Pa・s]以上、0.2[Pa・s]以上、又は0.3[Pa・s]以上であってもよく、上限値が0.6[Pa・s]以下、0.5[Pa・s]以下、又は0.4[Pa・s]以下であってもよい。
【0019】
本発明の樹脂組成物は、例えば、せん断速度を1000[1/s]から1[1/s]へ切替えてから30秒後から60秒後までのせん断粘度の最大値をDとし、最小値をEとし、せん断速度を1000[1/s]から1[1/s]へ切替えてから30秒後から60秒後までのせん断粘度の平均値をFとしたとき、下記式(3)におけるY及び下記式(4)におけるZが、下限値が0.85以上、又は0.9以上であってもよく、上限値が1.1以下であってもよく、例えば、0.85~1.1、又は0.9~1.1であってもよい。
Y=D/F (3)
Z=E/F (4)
【0020】
本発明の樹脂組成物は、例えば、せん断速度1000[1/s]におけるせん断粘度の平均値Gが、下限値が0.0030[Pa・s]以上、0.0040[Pa・s]以上、0.0050[Pa・s]以上、又は0.0060[Pa・s]以上であってもよく、上限値が0.0090[Pa・s]以下、又は0.0080[Pa・s]以下であってもよい。
【0021】
本発明の前記樹脂組成物は、例えば、ハードコート剤、アンチグレアコート剤、アンチブロッキング剤、インデックスマッチング剤又は防汚剤である。
【0022】
本発明の前記樹脂組成物は、例えば、熱硬化性樹脂、又は紫外線や光で硬化する電離放射線硬化性樹脂等の樹脂を含む。前記樹脂として、例えば、市販の熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂等を用いることも可能である。
【0023】
前記熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂としては、例えば、熱、光(紫外線等)又は電子線等により硬化するアクリレート基及びメタクリレート基の少なくとも一方の基を有する硬化型化合物が使用でき、例えば、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物のアクリレートやメタクリレート等のオリゴマー又はプレポリマー等があげられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0024】
前記樹脂には、例えば、アクリレート基及びメタクリレート基の少なくとも一方の基を有する反応性希釈剤を用いることもできる。前記反応性希釈剤は、例えば、特開2008-88309号公報に記載の反応性希釈剤を用いることができ、例えば、単官能アクリレート、単官能メタクリレート、多官能アクリレート、多官能メタクリレート等を含む。前記反応性希釈剤としては、例えば、3官能以上のアクリレート、3官能以上のメタクリレート等があげられる。前記反応性希釈剤としては、例えば、ブタンジオールグリセリンエーテルジアクリレート、イソシアヌル酸のアクリレート、イソシアヌル酸のメタクリレート等もあげられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0025】
本発明の樹脂組成物は、例えば、微粒子を含んでもよい。前記微粒子としては、例えば、無機微粒子と有機微粒子とがある。前記無機微粒子は、特に制限されず、例えば、酸化ケイ素粒子、酸化チタン粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化亜鉛粒子、酸化錫粒子、炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、タルク粒子、カオリン粒子、硫酸カルシウム粒子等があげられる。また、前記有機微粒子は、特に制限されず、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末(PMMA粒子)、シリコーン樹脂粉末、ポリスチレン樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、アクリルスチレン樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン樹脂粉末、ポリオレフィン樹脂粉末、ポリエステル樹脂粉末、ポリアミド樹脂粉末、ポリイミド樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂粉末等があげられる。これらの無機微粒子及び有機微粒子は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0026】
本発明の樹脂組成物は、例えば、溶媒を含んでもよい。前記溶媒は、特に制限されず、種々の溶媒を使用可能であり、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。前記樹脂の組成、前記微粒子の種類、含有量等に応じて、前記表面処理層を得るために、最適な溶媒種類や溶媒比率を適宜選択してもよい。前記溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、ブタノール、t-ブチルアルコール(TBA)、2-メトキシエタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等があげられる。また、例えば、前記溶媒が、炭化水素溶媒と、ケトン溶媒とを含んでいてもよい。前記炭化水素溶媒は、例えば、芳香族炭化水素であってもよい。前記芳香族炭化水素は、例えば、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、及びベンゼンからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記ケトン溶媒は、例えば、シクロペンタノン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、及びアセトフェノンからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。
【0027】
本発明の樹脂組成物における前記表面処理層は、例えば、ハードコート層、アンチグレア層、アンチブロッキング層、インデックスマッチング層又は防汚層である。
【0028】
本発明の樹脂組成物における前記樹脂基材は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー等があげられる。また、前記樹脂基材の形成材料としては、例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル‐スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン‐プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー等もあげられる。さらに、前記樹脂基材の形成材料としては、例えば、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや前記ポリマーのブレンド物等もあげられる。前記樹脂基材は、光透過性を有してもよいし、有さなくてもよい。
【0029】
また、前記樹脂基材は、例えば、前記樹脂基材の少なくとも一方の面に、コロナ処理、易接着処理等の表面処理を行ったものを使用してもよい。前記表面処理は、例えば、前記樹脂層形成工程の前に表面処理工程を設けて行ってもよいし、前記樹脂層形成工程と同一の行程で同時に行ってもよい。
【0030】
前記樹脂基材の厚みは、特に制限されないが、例えば、強度、取り扱い性などの作業性及び薄層性などの点を考慮すると、10~500μmの範囲が好ましく、より好ましくは20~300μmの範囲であり、最適には、30~200μmの範囲である。前記樹脂基材が光透過性を有する場合、屈折率は、特に制限されないが、例えば、1.30~1.80又は1.40~1.70の範囲である。
【0031】
[2.積層体]
図1(a)の断面図に、本発明の積層体における構成の一例を示す。図示のとおり、この積層体10は、樹脂基材11の片面に表面処理層12が直接積層されている。また、図1(b)の断面図に、本発明の積層体における構成の別の一例を示す。図示のとおり、この積層体10aは、樹脂基材11の両面に表面処理層12が直接積層されている。表面処理層12は、例えば、ハードコート層、又はアンチグレア層等であってもよい。
【0032】
また、図2(a)の積層体10bは、図示のとおり、樹脂基材11の片面に、表面処理層12が他の層13を介して積層されている。この積層体10bは、樹脂基材11と表面処理層12との間に他の層13が存在していること以外は、図1(a)の積層体10と同じである。他の層13は、コロナ処理、又は易接着処理等により形成された層である。図2(b)の積層体10cは、図示のとおり、樹脂基材11の両面に表面処理層12が他の層13を介して積層されている。この積層体10cは、樹脂基材11とそれぞれの表面処理層12との間に他の層13が存在していること以外は、図1(b)の積層体10aと同じである。他の層13は、図2(a)と同様に、コロナ処理、又は易接着処理等により形成された層である。
【0033】
また、本発明の積層体、及び本発明の製造方法により製造される積層体は、前記樹脂基材、前記表面処理層、及び前記他の層以外の他の構成要素を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。前記他の構成要素も特に限定されないが、例えば、粘接着層等であってもよい。図3に、そのような本発明の積層体の例を示す。図3(a)の積層体10dは、図示のとおり、樹脂基材11における表面処理層12と反対側の面上に粘接着層14が直接接触して設けられていること以外は図1(a)の積層体10と同じである。図3(b)の積層体10eは、図示のとおり、樹脂基材11における表面処理層12と反対側の面上に、他の層13を介して粘接着層14が設けられていること以外は図2(a)の積層体10bと同じである。しかし、本発明はこれに限定されず、例えば、粘接着層14と樹脂基材11又は他の層13との間に他の構成要素が存在していてもよい。前記他の構成要素も特に限定されないが、例えば、光学機能層でもよい。前記光学機能層も特に限定されず、例えば、一般的な光学フィルムに用いられる光学機能層でもよく、例えば、マイクロレンズフィルム、プリズムフィルム、拡散フィルム、偏光反射フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、高屈折率層等であってもよい。
【0034】
本発明において、「粘接着層」は、粘着剤及び接着剤の少なくとも一方により形成された層をいう。本発明において、「粘接着層」は、特に断らない限り、粘着剤により形成された「粘着剤層」であってもよく、接着剤により形成された「接着剤層」であってもよく、粘着剤及び接着剤の両方を含む層であってもよい。また、本発明において、粘着剤と接着剤とをまとめて「粘接着剤」という場合がある。一般的に、粘着力又は接着力が比較的弱い剤(例えば、被接着物の再剥離が可能な剤)を「粘着剤」と呼び、粘着力又は接着力が比較的強い剤(例えば、被接着物の再剥離が不可能であるか、又はきわめて困難な剤)を「接着剤」と呼んで区別する場合がある。本発明において、粘着剤と接着剤とに明確な区別は無い。また、本発明において、「粘着力」と「接着力」とに明確な区別はない。
【0035】
本発明の積層体における前記表面処理層は、例えば、前述した本発明の樹脂組成物における表面処理層と同様である。
【0036】
本発明の積層体における前記樹脂基材は、例えば、前述した本発明の樹脂組成物における樹脂基材と同様である。
【0037】
[3.積層体の製造方法]
本発明の積層体の製造方法は、前述のとおり、塗工工程、塗膜形成工程、及び硬化工程を含む。前記塗工工程は、例えば、前樹脂基材の一方の面上にのみ前記塗液を塗工してもよい。
【0038】
前記塗工工程は、例えば、スロットダイ法等の塗工方法を用いることができる。
【0039】
前記塗膜形成工程における乾燥条件は、特に限定されず、例えば、使用する樹脂基材や塗液の性状に応じて任意に設定可能である。
【0040】
前記硬化工程は、例えば、熱硬化、又は光硬化等の硬化方法を用いることができる。前記熱硬化である場合、例えば、前記塗膜形成工程における乾燥熱により前記樹脂組成物を硬化させてもよい。前記光硬化は、例えば、光(紫外線等)、又は電子線等による硬化である。前記硬化工程における硬化条件は、特に限定されず、例えば、使用する樹脂基材や塗液の性状に応じて任意に設定可能である。
【0041】
本発明の積層体の製造方法による前記表面処理層の形成方法は、例えば、一般的な表面処理層の形成方法に準じて、又はそれを参考にして適宜設定することができる。
【0042】
本発明の積層体の製造方法は、例えば、前記樹脂基材の一方の面上に前記表面処理層を形成し、他方の面上に前記粘接着層を形成する、粘接着層形成工程を含んでもよい。具体的には、例えば、前記樹脂基材上に、粘着剤又は接着剤を塗布(塗工)することにより、前記粘接着層を形成しても良い。また、基材上に前記粘接着層が積層された粘着テープ等の、前記粘接着層側を、前記樹脂基材に貼り合せることにより、前記樹脂基材上に前記粘接着層を形成しても良い。この場合、前記粘着テープ等の基材は、そのまま貼り合せたままにしても良いし、前記粘接着層から剥離しても良い。
【0043】
[4.光学部材及び画像表示装置]
本発明の光学部材は、例えば、ハードコートフィルム、アンチグレアフィルム、アンチブロッキングフィルム、インデックスマッチングフィルム、防汚フィルム又は偏光板であってもよい。
【0044】
本発明の画像表示装置は、どのような画像表示装置でもよいが、例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置等があげられる。
【0045】
本発明の積層体の用途は、特に限定されず、任意の用途に使用可能である。その用途としては、例えば、パソコンモニター、ノートパソコン、コピー機等のOA機器、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機等の携帯機器、ビデオカメラ、テレビ、電子レンジ等の家庭用電気機器、バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオ等の車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニター等の展示機器、監視用モニター等の警備機器、介護用モニター、医療用モニター等の介護・医療機器等があげられる。
【実施例0046】
つぎに、本発明の実施例について、比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、以下の実施例及び比較例により制限されない。
【0047】
なお、以下の実施例及び比較例において、物質の部数は、特に断らない限り、質量部(重量部)である。
【0048】
[1.評価方法]
実施例及び比較例において、せん断粘度、及び塗工スジは、下記の方法により評価した。
【0049】
<せん断粘度>
JIS K7117-2に準じて、レオメーター(Anton Paar社製、商品名:MCR 302)を用いて樹脂組成物のせん断粘度を測定した。せん断速度は、1000[1/s](高速条件)、及び1[1/s](低速条件)のいずれかとした。下記の実施例1~5及び比較例1~2の樹脂組成物について、高速条件で30秒間のせん断を掛けた場合におけるせん断粘度と、低速条件で60秒間のせん断を掛けた場合におけるせん断粘度とを交互に測定し、計2サイクル測定を実施した。本実施例におけるデータは、2サイクル目のデータに基づき算出した。
【0050】
<塗工スジ>
塗工スジは、後述する積層体の塗工外観を目視により観察して評価した。具体的には、照明部に偏光板を取り付けたZライト(登録商標)(山田照明(株)製、型番「Z-208」)の光を、後述する積層体の塗工面(ハードコート面)に対して45度の角度で400mm離れた位置から照射し、サンプルから45度(光源から90度)の角度で300mm離れた位置から、塗工面を目視により観察して塗工スジの有無を評価した。
【0051】
[2.積層体の製造]
以下の手順により、実施例1~5及び比較例1~2の樹脂組成物を調製し、調製した塗工液を用いて積層体を製造した。なお、本実施例及び本比較例では、樹脂組成物としてアンチグレアコート剤を調製し、表面処理層としてアンチグレア層を形成し、積層体としてアンチグレアフィルムの製造を行った。
【0052】
<実施例1>
(アンチグレアコート剤の調製)
アンチグレア層に含まれる樹脂として、紫外線硬化型アクリレート樹脂(三菱ケミカル(株)製、商品名「紫光 UT-7314」、固形分80%)40重量部、紫外線硬化型アクリレート樹脂(大阪有機化学工業(株)製、商品名「ビスコート#300」、固形分100%)40重量部、紫外線硬化型アクリレート樹脂(荒川化学工業(株)製、商品名「オプスターNC035HS」、固形分50%)20重量部を準備した。前記樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、光重合開始剤(BASF社製、商品名「OMNIRAD184」)を3重量部、増粘剤(クニミネ工業(株)製、商品名「スメクトンSAN」を固形分濃度が6重量%になるように事前にトルエンで希釈したもの)を1.5重量部、粒子1(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマー SSX-103DXE」)を5.0重量部、粒子2(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名「トスパール130ND」)を2.8重量部、レベリング剤(DIC(株)製、商品名「GRANDIC PC4100」、固形分10重量%)を0.1重量部混合した。この混合物を固形分濃度が40重量%となるように酢酸ブチル/シクロペンタノン混合溶媒(重量比68/32)で希釈して、実施例1のアンチグレアコート剤を調製した。
【0053】
(アンチグレアフィルムの製造)
透光性基材である樹脂基材として、透明プラスチックフィルム基材(TAC、富士フイルム(株)製、商品名「TJ40UL」)を準備した。前記透明プラスチックフィルム基材の片面に、作製したアンチグレア層形成用塗工液を、スロットダイを用いて塗膜を形成した。そして、この塗膜が形成された透明プラスチックフィルム基材を、乾燥工程へと搬送した。乾燥工程において、90℃で1分間加熱することにより前記塗膜を乾燥させた。その後、高圧水銀ランプにて積算光量230mJ/cmの紫外線を照射し、前記塗膜を硬化処理して厚み9.0μmのアンチグレア層を形成し、実施例1のアンチグレアコート剤を使用したアンチグレアフィルムを得た。
【0054】
<実施例2>
(アンチグレアコート剤の調製)
アンチグレア層に含まれる樹脂として、紫外線硬化型アクリレート樹脂(三菱ケミカル(株)製、商品名「紫光 UT-7314」、固形分80%)40重量部、紫外線硬化型アクリレート樹脂(大阪有機化学工業(株)製、商品名「ビスコート#300」、固形分100%)40重量部、紫外線硬化型アクリレート樹脂(荒川化学工業(株)製、商品名「オプスターNC035HS」、固形分50%)20重量部を準備した。前記樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、光重合開始剤(BASF社製、商品名「OMNIRAD184」)を3重量部、増粘剤(クニミネ工業(株)製、商品名「スメクトンSAN」を固形分濃度が6重量%になるように事前にトルエンで希釈したもの)を1.5重量部、粒子1(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマー SSX-103DXE」)を5.0重量部、粒子2(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名「トスパール130ND」)を3.1重量部、レベリング剤(DIC(株)製、商品名「PC4100」、固形分10重量%)を0.1重量部混合した。この混合物を固形分濃度が40重量%となるように、酢酸ブチル/シクロペンタノン混合溶媒(重量比68/32)で希釈して、実施例2のアンチグレアコート剤を調製した。
【0055】
(アンチグレアフィルムの作製)
透光性基材である樹脂基材として、透明プラスチックフィルム基材(TAC、富士フイルム(株)製、商品名「TJ40UL」)を準備した。前記透明プラスチックフィルム基材の片面に、作製したアンチグレア層形成用塗工液を、スロットダイを用いて塗膜を形成した。そして、この塗膜が形成された透明プラスチックフィルム基材を、乾燥工程へと搬送した。乾燥工程において、90℃で1分間加熱することにより前記塗膜を乾燥させた。その後、高圧水銀ランプにて積算光量230mJ/cmの紫外線を照射し、前記塗膜を硬化処理して厚み7.5μmのアンチグレア層を形成し、実施例2のアンチグレアコート剤を使用したアンチグレアフィルムを得た。
【0056】
<実施例3>
(アンチグレアコート剤の調製)
アンチグレア層に含まれる樹脂として、紫外線硬化型アクリレート樹脂(DIC(株)製、商品名「ルクシディア17-806」、固形分80%)100重量部あたり、光重合開始剤(BASF社製、商品名「OMNIRAD907」)を5重量部、増粘剤(クニミネ工業(株)製、商品名「スメクトンSAN」を固形分濃度が4.6重量%になるように事前に酢酸エチルで希釈したもの)を2.5重量部、粒子(綜研化学アジア(株)製、商品名「SX-350H」)を13.8重量部、レベリング剤(DIC(株)製、商品名「メガファックF-556」、固形分30重量%)を0.5重量部混合した。この混合物を固形分濃度が32重量%となるように、トルエン/酢酸エチル混合溶媒(重量比93/7)で希釈して、実施例3のアンチグレアコート剤を調製した。
【0057】
(アンチグレアフィルムの作製)
透光性基材である樹脂基材として、透明プラスチックフィルム基材(TAC、コニカミノルタ(株)製、商品名「KC4UYW」)を準備した。前記透明プラスチックフィルム基材の片面に、作製したアンチグレア層形成用塗工液を、スロットダイを用いて塗膜を形成した。そして、この塗膜が形成された透明プラスチックフィルム基材を、乾燥工程へと搬送した。乾燥工程において、90℃で1分間加熱することにより前記塗膜を乾燥させた。その後、高圧水銀ランプにて積算光量 245mJ/cmの紫外線を照射し、前記塗膜を硬化処理して厚み 5.0μmのアンチグレア層を形成し、実施例3のアンチグレアコート剤を使用したアンチグレアフィルムを得た。
【0058】
<実施例4>
(アンチグレアコート剤の調製)
アンチグレア層に含まれる樹脂として、紫外線硬化型アクリレート樹脂(荒川化学工業(株)製、商品名「オプスター Z7540」、固形分56%)100重量部あたり、光重合開始剤(BASF社製、商品名「OMNIRAD127」)を0.5重量部、粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名「トスパール145ND」)を5重量部、レベリング剤(DIC(株)製、商品名「GRANDIC PC4100」、固形分10重量%)を0.5重量部混合した。この混合物を固形分濃度が45重量%となるように、MEK/酢酸ブチル混合溶媒(重量比67/33)で希釈して、実施例4のアンチグレアコート剤を調製した。
【0059】
(アンチグレアフィルムの作製)
透光性基材である樹脂基材として、透明プラスチックフィルム基材(TAC、コニカミノルタ(株)製、商品名「KC4UYW」)を準備した。前記透明プラスチックフィルム基材の片面に、作製したアンチグレア層形成用塗工液を、スロットダイを用いて塗膜を形成した。そして、この塗膜が形成された透明プラスチックフィルム基材を、乾燥工程へと搬送した。乾燥工程において、60℃で1分間加熱することにより前記塗膜を乾燥させた。その後、高圧水銀ランプにて積算光量245mJ/cmの紫外線を照射し、前記塗膜を硬化処理して厚み7.5μmのアンチグレア層を形成し、実施例4のアンチグレアコート剤を使用したアンチグレアフィルムを得た。
【0060】
<実施例5>
(アンチグレアコート剤の調製)
アンチグレア層に含まれる樹脂として、紫外線硬化型アクリレート樹脂(新中村化学工業(株)製、商品名「NKオリゴ UA-53H-80BK」、固形分80%)25重量部、紫外線硬化型アクリレート樹脂(大阪有機化学工業(株)製、商品名「ビスコート#300」、固形分100%)60重量部、HEAAを15重量部準備した。前記樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、光重合開始剤(BASF社製、商品名「OMNIRAD907」)を5重量部、増粘剤(コープケミカル(株)製、商品名「ルーセンタイトSAN」を固形分濃度が6重量%になるように事前にトルエンで希釈したもの)を1.0重量部、粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマー SSX-103DXE」)を0.5重量部、レベリング剤(DIC(株)製、商品名「GRANDIC PC4100」、固形分10重量%)を1.0重量部混合した。この混合物を固形分濃度が44重量%となるようにトルエン/IPA混合溶媒(重量比65/35)で希釈して、実施例5のアンチグレアコート剤を調製した。
【0061】
(アンチグレアフィルムの作製)
透光性基材である樹脂基材として、透明プラスチックフィルム基材(アクリル、カネカ(株)製、商品名「HX-40UC」)を準備した。前記透明プラスチックフィルム基材の片面に、作製したアンチグレア層形成用塗工液を、スロットダイを用いて塗膜を形成した。そして、この塗膜が形成された透明プラスチックフィルム基材を、乾燥工程へと搬送した。乾燥工程において、95℃で1分間加熱することにより前記塗膜を乾燥させた。その後、高圧水銀ランプにて積算光量245mJ/cmの紫外線を照射し、前記塗膜を硬化処理して厚み 6.0μmのアンチグレア層を形成し、実施例5のアンチグレアコート剤を使用したアンチグレアフィルムを得た。
【0062】
<比較例1>
(アンチグレアコート剤の調製)
アンチグレア層に含まれる樹脂として、紫外線硬化型アクリレート樹脂(三菱ケミカル(株)製、商品名「紫光 UT-7314」、固形分80%)40重量部、紫外線硬化型アクリレート樹脂(大阪有機化学工業(株)製、商品名「ビスコート#300」、固形分100%)45重量部、紫外線硬化型アクリレート樹脂(荒川化学工業(株)製、商品名「オプスターNC035HS」、固形分50%)15重量部を準備した。前記樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、光重合開始剤(BASF社製、商品名「OMNIRAD184」)を3重量部、増粘剤(クニミネ工業(株)製、商品名「スメクトンSAN」を固形分濃度が6重量%になるように事前にトルエンで希釈したもの)を2.5重量部、粒子1(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマー SSX-103DXE」)を6.0重量部、粒子2(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名「トスパール130ND」)を2.8重量部、レベリング剤(共栄社化学(株)製、商品名「LE-303」、固形分40重量%)を0.1重量部混合した。この混合物を固形分濃度が48.5重量%となるように酢酸ブチル/シクロペンタノン混合溶媒(重量比53/47)で希釈して、比較例1のアンチグレアコート剤を調製した。
【0063】
(アンチグレアフィルムの作製)
透光性基材である樹脂基材として、透明プラスチックフィルム基材(TAC、富士フイルム(株)製、商品名「TJ40UL」)を準備した。前記透明プラスチックフィルム基材の片面に、作製したアンチグレア層形成用塗工液を、スロットダイを用いて塗膜を形成した。そして、この塗膜が形成された透明プラスチックフィルム基材を、乾燥工程へと搬送した。乾燥工程において、90℃で1分間加熱することにより前記塗膜を乾燥させた。その後、高圧水銀ランプにて積算光量230mJ/cmの紫外線を照射し、前記塗膜を硬化処理して厚み8.5μmのアンチグレア層を形成し、比較例1のアンチグレアコート剤を使用したアンチグレアフィルムを得た。
【0064】
<比較例2>
(アンチグレアコート剤の調製)
アンチグレア層に含まれる樹脂として、紫外線硬化型アクリレート樹脂(三菱ケミカル(株)製、商品名「紫光 UT-7314」、固形分80%)40重量部、紫外線硬化型アクリレート樹脂(大阪有機化学工業(株)製、商品名「ビスコート#300」、固形分「オプスターNC035HS」、固形分50%)15重量部を準備した。前記樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、光重合開始剤(BASF社製、商品名「OMNIRAD184」)を3重量部、増粘剤(クニミネ工業(株)製、商品名「スメクトンSAN」を固形分濃度が6重量%になるように事前にトルエンで希釈したもの)を2.0重量部、粒子1(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマー SSX-103DXE」)を4.5重量部、粒子2(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名「トスパール130ND」)を2.8重量部、レベリング剤(共栄社化学(株)製、商品名「LE-303」、固形分40重量%)を0.1重量部混合した。この混合物を固形分濃度が45重量%となるように酢酸ブチル/シクロペンタノン混合溶媒(重量比63/37)で希釈して、比較例2のアンチグレアコート剤を調製した。
【0065】
(アンチグレアフィルムの作製)
透光性基材である樹脂基材として、透明プラスチックフィルム基材(TAC、富士フイルム(株)製、商品名「TJ40UL」)を準備した。前記透明プラスチックフィルム基材の片面に、作製したアンチグレア層形成用塗工液を、スロットダイを用いて塗膜を形成した。そして、この塗膜が形成された透明プラスチックフィルム基材を、乾燥工程へと搬送した。乾燥工程において、90℃で1分間加熱することにより前記塗膜を乾燥させた。その後、高圧水銀ランプにて積算光量230mJ/cmの紫外線を照射し、前記塗膜を硬化処理して厚み8.5μmのアンチグレア層を形成し、比較例2のアンチグレアコート剤を使用したアンチグレアフィルムを得た。
【0066】
実施例1~5及び比較例1~2の樹脂組成物のせん断粘度の算出値を、下記表1に示す。また、実施例1~5及び比較例1~2の樹脂組成物のせん断粘度を測定した際のレオメーターによる測定グラフを、図4に示す。なお、図4において、縦軸はせん断粘度[Pa・s]であり、横軸は時間[s]である。
【0067】
【表1】
【0068】
A/Bが1.6以下である実施例1~5の樹脂組成物は、いずれも、塗工スジの発生を抑制することができた。これに対し、A/Bが1.6を超える比較例1~2の樹脂組成物は、塗工スジが発生した。すなわち、図4のとおり、高速条件から低速条件へ切り替えた後の急激な粘度上昇がない樹脂組成物については、塗工スジの発生を抑制する効果があることがわかった。
【0069】
C>B/2を満たす、実施例1~5の樹脂組成物は、いずれも、塗工スジの発生を抑制することができた。これに対し、C>B/2を満たさない比較例1~2の樹脂組成物は、塗工スジが発生した。すなわち、図4のとおり、高速条件から低速条件へ切り替えた後の粘度の変化が指数関数的なものではない樹脂組成物については、塗工スジの発生を抑制する効果があることがわかった。
【0070】
Bが0.09[Pa・s]以上である、高粘度の樹脂組成物についても、本発明の設定条件によれば、塗工スジの発生を抑制できることがわかった。
【0071】
D/F及びE/Fが0.85~1.1であるもの、すなわち、図4のとおり、高速条件から低速条件へ切り替えた後に大幅な粘度変化がない樹脂組成物についても、塗工スジの発生を抑制できることがわかった。
【0072】
Gが0.0090[Pa・s]以下である実施例1~5の樹脂組成物は、いずれも、塗工スジの発生を抑制することができた。これに対し、0.0090[Pa・s]を超える比較例1~2の樹脂組成物は、塗工スジが発生した。これは、例えば、Gが0.0090[Pa・s]以下である場合には、ポンプを用いて塗工液をスロットダイへ送液する際に、送液した塗工液がスロットダイへ十分に供給されるため、塗工スジが発生しなかったと考えられる。一方で、Gが0.0090[Pa・s]を超える場合には、ポンプ送液により塗工液がスロットダイへ十分に供給されなかったため、塗工スジが発生したと考えられる。
【0073】
<付記>
上記実施形態及び実施例の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載し得るが、以下には限定されない。
(付記1)
樹脂基材の少なくとも一方の面上に積層される表面処理層を形成するための樹脂組成物であって、
せん断速度1[1/s]における前記樹脂組成物のせん断粘度の最大値をAとし、
せん断速度を1000[1/s]から1[1/s]へ切替えてから60秒後における前記樹脂組成物のせん断粘度をBとしたとき、
下記式(1)におけるXが、1.6以下であることを特徴とする、樹脂組成物。
X=A/B (1)
(付記2)
せん断速度を1000[1/s]から1[1/s]へ切替えてから30秒後における前記樹脂組成物のせん断粘度をCとしたとき、
下記式(2)を満たす、付記1記載の樹脂組成物。
C>B/2 (2)
(付記3)
前記せん断粘度Bが、0.09[Pa・s]以上である、付記1又は2記載の樹脂組成物。
(付記4)
せん断速度を1000[1/s]から1[1/s]へ切替えてから30秒後から60秒後までのせん断粘度の最大値をDとし、最小値をEとし、
せん断速度を1000[1/s]から1[1/s]へ切替えてから30秒後から60秒後までのせん断粘度の平均値をFとしたとき、
下記式(3)におけるY及び下記式(4)におけるZが、0.85~1.1である、付記1から3のいずれかに記載の樹脂組成物。
Y=D/F (3)
Z=E/F (4)
(付記5)
せん断速度1000[1/s]におけるせん断粘度の平均値Gが0.0090[Pa・s]以下である、付記1から4のいずれかに記載の樹脂組成物。
(付記6)
前記表面処理層が、ハードコート層又はアンチグレア層である、付記1から5のいずれかに記載の樹脂組成物。
(付記7)
樹脂基材の少なくとも一方の面上に表面処理層が積層された積層体であって、
前記表面処理層が、付記1から6のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物で形成されていることを特徴とする、積層体。
(付記8)
前記表面処理層が、ハードコート層又はアンチグレア層である、付記7記載の積層体。
(付記9)
塗工工程、塗膜形成工程、及び硬化工程を含み、
前記塗工工程は、樹脂基材の少なくとも一方の面上に塗液を塗工する工程であり、
前記塗膜形成工程は、塗工した前記塗液を乾燥させて塗膜を形成する工程であり、
前記硬化工程は、前記塗膜を硬化させて表面処理層を形成する工程であり、
前記塗液が、付記1から6のいずれかに記載の樹脂組成物を含む、
付記7又は8記載の積層体の製造方法。
(付記10)
付記7又は8記載の積層体を含む光学部材。
(付記11)
ハードコートフィルムである付記10記載の光学部材。
(付記12)
アンチグレアフィルムである付記10記載の光学部材。
(付記13)
偏光板である付記10記載の光学部材。
(付記14)
付記7もしくは8記載の積層体、又は付記10から13のいずれかに記載の光学部材を含む画像表示装置。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上、説明したとおり、本発明によれば、塗工スジの発生を抑制することができる。本発明の樹脂組成物の硬化物は、前述のとおり、光学部材や画像表示装置等に用いられる積層体の表面処理層として用いることができるため、その産業上利用価値は多大である。
【符号の説明】
【0075】
10、10a、10b、10c、10d、10e 積層体
11 樹脂基材
12 表面処理層
13 他の層
14 粘接着層
図1
図2
図3
図4