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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132059
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】排ガス処理システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/92 20060101AFI20240920BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20240920BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B01D53/92 240
B01D53/62 ZAB
B01D53/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042698
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(72)【発明者】
【氏名】安田 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】福村 琢
(72)【発明者】
【氏名】畑間(田岸) 未来子
【テーマコード(参考)】
4D002
4D006
【Fターム(参考)】
4D002AA02
4D002AA09
4D002AA12
4D002AC07
4D002AC10
4D002BA13
4D002BA14
4D002BA16
4D002BA20
4D002EA04
4D002GA02
4D002GA03
4D002GB01
4D002GB02
4D002GB04
4D002GB20
4D006GA41
4D006HA41
4D006JA71
4D006KE01Q
4D006KE06Q
4D006KE12P
4D006MA03
4D006MB04
4D006PC80
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ガスの排出源における運転負荷の変化に対応しつつ、コストの低減を図ること。
【解決手段】排ガス処理システム1は第1分離膜ユニット81および第2分離膜ユニット91と制御部70とを備え、第1分離膜ユニット81および第2分離膜ユニット91は上流側の第1分離膜ユニット81に流入する流入ガスの圧力が第1分離膜ユニット81の透過ガスの圧力よりも大きくなるよう第1分離膜ユニット81に流入する流入ガスの圧力を調整する第1圧縮機82を備え、分離系統83a~83d、93a~93dは流入ガスの流量を調整する調整弁84a~84d、94a~94dを備え、制御部70は第1分離膜ユニット81および第2分離膜ユニット91のうち、第1分離膜ユニット81へ流入される第1流量値と第1分離膜ユニット81の下流側に流入又は排出される第2流量値とに基づいて、第2分離膜ユニット91の第2圧縮機92と調整弁94a~94dを制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数の分離膜ユニットと、
前記複数の分離膜ユニットを制御する制御部と、を備え、
前記複数の分離膜ユニットは、それぞれ、
複数の分離系統と、
前記複数の分離膜ユニットのうち、上流側に接続された上流側の分離膜ユニットに流入する流入ガスの圧力が前記上流側の分離膜ユニットの透過ガスの圧力よりも大きくなるように、前記上流側の分離膜ユニットに流入する前記流入ガスの圧力を調整する圧力調整部と、を備え、
前記複数の分離系統は、それぞれ、
複数の分離膜と、
前記流入ガスの流量を調整する複数の調整弁と、を備え、
前記制御部は、
前記複数の分離膜ユニットのうち、前記上流側の分離膜ユニットへ流入される前記流入ガスの流量に応じたパラメータと、前記上流側の分離膜ユニットの透過ガス又は非透過ガスの流量に応じたパラメータと、に基づいて、前記上流側の分離膜ユニットの下流側に接続された下流側の分離膜ユニットの前記圧力調整部と前記複数の調整弁の少なくとも一方を制御する
ことを特徴とする排ガス処理システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記複数の分離膜ユニットのうち、前記上流側の分離膜ユニットへ流入される前記流入ガスの流量に応じたパラメータと、前記下流側の分離膜ユニットへ流入される前記流入ガスの流量に応じたパラメータと、に基づいて、前記下流側の分離膜ユニットの前記圧力調整部と複数の前記複数の調整弁の少なくとも一方を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の排ガス処理システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記複数の分離膜ユニットのうち、前記上流側の分離膜ユニットへ流入される前記流入ガスの流量に応じたパラメータと、前記上流側の分離膜ユニットの前記非透過ガスの流量に応じたパラメータと、に基づいて、前記下流側の分離膜ユニットの前記圧力調整部と前記複数の調整弁の少なくとも一方を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の排ガス処理システム。
【請求項4】
前記上流側の分離膜ユニットへ流入される前記流入ガスの流量を測定し、前記制御部に第1流量値を出力する第1流量測定部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の排ガス処理システム。
【請求項5】
前記下流側の分離膜ユニットへ流入される前記流入ガスの流量を測定し、前記制御部に第2流量値を出力する第2流量測定部をさらに備える
ことを特徴とする請求項4に記載の排ガス処理システム。
【請求項6】
前記上流側の分離膜ユニットから大気中に排出される前記流入ガスの流量を測定し、前記制御部に第4流量値を出力する第4流量測定部をさらに備える
ことを特徴とする請求項4に記載の排ガス処理システム。
【請求項7】
前記制御部は、
前記第1流量測定部により測定された前記第1流量値と、前記第2流量測定部により測定された前記第2流量値と、の比に基づいて、前記下流側の分離膜ユニットの前記圧力調整部と前記複数の調整弁の少なくとも一方を制御する
ことを特徴とする請求項5に記載の排ガス処理システム。
【請求項8】
前記制御部は、
前記第1流量測定部により測定された前記第1流量値と、前記第4流量測定部により測定された前記第4流量値と、の差分に基づいて、前記下流側の分離膜ユニットの前記圧力調整部と前記複数の調整弁の少なくとも一方を制御する
ことを特徴とする請求項6に記載の排ガス処理システム。
【請求項9】
前記下流側の分離膜ユニットを透過した前記流入ガスの流量を測定し、前記制御部に第3流量値を出力する第3流量測定部と、
前記上流側の分離膜ユニットへ流入される前記流入ガスの濃度を測定し、前記制御部に第1濃度値を出力する第1濃度測定部と、
前記下流側の分離膜ユニットを透過した前記流入ガスの濃度を測定し、前記制御部に第3濃度値を出力する第3濃度測定部と、を更に備え、
前記制御部は、目標とする二酸化炭素の回収率である目標回収率と、前記目標回収率に対して前記各測定部の測定値から演算した計測回収率と、に基づいて、前記下流側の分離膜ユニットの前記圧力調整部と前記複数の調整弁の少なくとも一方を制御する
ことを特徴とする請求項4に記載の排ガス処理システム。
【請求項10】
前記計測回収率は、前記第3流量値および前記第3濃度値の積と、前記第1流量値および前記第1濃度値の積と、の比に基づいて演算する
ことを特徴とする請求項9に記載の排ガス処理システム。
【請求項11】
前記制御部は、前記目標回収率に対して前記計測回収率を差し引いた偏差を演算し、演算した前記偏差と所定の閾値との比較に基づいて、前記圧力調整部と前記複数の調整弁の少なくとも一方を制御するb
ことを特徴とする請求項9に記載の排ガス処理システム。
【請求項12】
前記制御部は、前記偏差が前記閾値より大きい場合、前記圧力調整部の駆動を制御してから前記複数の調整弁を制御する
ことを特徴とする請求項11に記載の排ガス処理システム。
【請求項13】
前記制御部は、前記偏差が前記閾値より大きい場合、前記複数の調整弁を制御してから前記圧力調整部の駆動を制御する
ことを特徴とする請求項11に記載の排ガス処理システム。
【請求項14】
前記圧力調整部の数は、前記分離系統の数よりも少ない
ことを特徴とする請求項4に記載の排ガス処理システム。
【請求項15】
前記上流側の分離膜ユニットが備える前記分離膜、前記複数の調整弁と、前記下流側の分離膜ユニットが備える前記分離膜、前記複数の調整弁と、はそれぞれ同種である
ことを特徴とする請求項4に記載の排ガス処理システム。
【請求項16】
前記複数の分離系統を透過した各透過ガスを統合する集合ラインを更に備える
ことを特徴とする請求項1から15のうち何れか1項に記載の排ガス処理システム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
2種類以上のガスを含む混合ガスを分離する技術の必要性が増している。そこで例えば、特許文献1は、混合ガスからガス分離膜を用いて未透過ガスを回収するガス分離システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-128868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2種類以上のガスを処理する技術においては、ガスの排出源における運転負荷の変化に対応する必要がある。一方、2種類以上のガスを処理するにあたり、コストの低減を図ることも求められる。よって、二酸化炭素などの2種類以上のガスを処理する技術にあっては、ガスの排出源における運転負荷の変化への対応と、コストの低減とを両立することが求められる。
【0005】
本実施形態の課題としては、ガスの排出源における運転負荷の変化に対応しつつ、コストの低減を図ることができる排ガス処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態における一態様の排ガス処理システムは、直列に接続された複数の分離膜ユニットと、前記複数の分離膜ユニットを制御する制御部と、を備え、前記複数の分離膜ユニットは、それぞれ、複数の分離系統と、前記複数の分離膜ユニットのうち、上流側に接続された上流側の分離膜ユニットに流入する流入ガスの圧力が前記上流側の分離膜ユニットの透過ガスの圧力よりも大きくなるように、前記上流側の分離膜ユニットに流入する前記流入ガスの圧力を調整する圧力調整部と、を備え、前記複数の分離系統は、それぞれ、複数の分離膜と、前記流入ガスの流量を調整する複数の調整弁と、を備え、前記制御部は、前記複数の分離膜ユニットのうち、前記上流側の分離膜ユニットへ流入される前記流入ガスの流量に応じたパラメータと、前記上流側の分離膜ユニットの透過ガス又は非透過ガスの流量に応じたパラメータと、に基づいて、前記上流側の分離膜ユニットの下流側に接続された下流側の分離膜ユニットの前記圧力調整部と前記複数の調整弁の少なくとも一方を制御することを特徴とする。
【0007】
上述の構成によれば、複数の分離膜ユニットのうち、上流側に接続された上流側の分離膜ユニットに流入する流入ガスの圧力が上流側の分離膜ユニットの透過ガスの圧力よりも大きくなるように、上流側の分離膜ユニットに流入する流入ガスの圧力が調整される。そして、上流側の分離膜ユニットへ流入される流入ガスの流量に応じたパラメータと、上流側の分離膜ユニットの透過ガス又は非透過ガスの流量に応じたパラメータと、に基づいて、下流側の分離膜ユニットの圧力調整部と複数の調整弁の少なくとも一方が制御される。複数の分離膜ユニットが直列に接続されているため、上流側の分離膜ユニットに流入する流入ガスの圧力を調整する場合、圧縮機や真空ポンプ1台で圧縮や減圧を行い下流側の分離膜ユニットを構成する分離膜により二酸化炭素などの排ガスを分離することができる。これにより、排ガス処理システムを構成する圧縮機の数を少なくすることができ、コストの低減と省スペース化を図ることができる。更に、最小限の圧縮機を制御するだけで二酸化炭素を分離することができるためガスの排出源における運転負荷の変化に柔軟に対応して運転制御の簡素化を図ることができる。更に、上流側の分離膜ユニットにおいては、分離膜を透過しなかった非透過ガスは大気中に排出される。したがって、下流側に接続された分離膜ユニットに流入される透過ガスの流量は、上流側に接続された分離膜ユニットに流入される流入ガスの流量よりも少なくなる。このため、下流側の分離膜ユニットを構成する分離系統の機器数を上流側の分離膜ユニットを構成する分離系統の機器数よりも少なく構成することができる。これにより、排ガスに含まれる二酸化炭素の排出削減を図りつつ、コストの低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、二酸化炭素の排出削減を図りつつ、コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態に係る排ガス処理システムの一例を示す概略構成図である。
図2】前処理部の構成の一例を示す図である。
図3】時間と、第1流量測定部および第2流量測定部により測定された流入ガスの流量と、第1分離膜ユニットを構成する第1圧縮機の駆動および調整弁の運転数と、第2分離膜ユニットを構成する第2圧縮機の駆動および調整弁の運転数との関係の一例を示すグラフである。
図4】排ガスの流量変動に応じた制御を説明するためのフロー図である。
図5】計測回収率PVと目標回収率SVとの偏差eと、第1圧縮機の回転数との関係の一例を示す図である。
図6】計測回収率PVと目標回収率SVとの偏差eと、開弁状態の調整弁の数との関係の一例を示す図である。
図7】計測回収率PVと目標回収率SVとの偏差eと、第2圧縮機の回転数との関係の一例を示す図である。
図8】計測回収率PVと目標回収率SVとの偏差eと、開弁状態の調整弁の数との関係の一例を示す図である。
図9】計測回収率の制御方法の一例を示すブロック図である。
図10】計測回収率PVと目標回収率SVと、の関係の変形例を示す図である。
図11】計測回収率PVと目標回収率SVと、の関係の変形例を示す図である。
図12】計測回収率PVと目標回収率SVと、の関係の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施の形態に係る排ガス処理システムの一例を示す概略構成図である。なお、本実施の形態に係る排ガス処理システムとしては、燃焼器として船舶に使用されるエンジンから排出される排ガスのCO(二酸化炭素)を回収するシステムを考える。ただし、これに限られず、本実施の形態に係る排ガス処理システムは、火力発電プラントや化学工業プラント、廃棄物焼却施設における排ガスの処理に適用可能である。
【0011】
図1は、本実施の形態に係る排ガス処理システムの一例を示す概略構成図である。図1に示すように、排ガス処理システム1は、排ガスの発生源となるエンジン(燃焼器)10、燃料タンク9、第1計測器21、前処理部30、調整弁40、分離ユニット50、第3計測器23、および液化部60を備える。分離ユニット50は、制御部70、第1分離膜ユニット(上流側の分離膜ユニット)81、第2分離膜ユニット(下流側の分離膜ユニット)91、および第2計測器22、を備える。第1分離膜ユニット81は、ライン15を通じて第2分離膜ユニット91の上流側に配置され、第2分離膜ユニット91は、第1分離膜ユニット81の下流側に直列して接続されている。分離ユニット50は、分離膜ユニットとして、第1分離膜ユニット81、および第2分離膜ユニット91の2つを備えているがこの限りではなく、少なくとも2つ以上複数備えていればよく3つ以上備えていてもよい。
【0012】
エンジン10は、主機エンジンであってよく、補機発電機であってもよい。また、エンジン10は、主機エンジンおよび補機発電機の両方であってよい。主機エンジンは、主として船舶が航行中に稼働される。補機発電機は、主として船舶の電気をまかなうため稼働される。エンジン10には、燃料タンク9に貯留される燃料が供給される。なお、本実施の形態の排ガス処理システム1を各種プラント等に適用する場合には、エンジン10に代えてボイラを用いてもよい。
【0013】
エンジン10と前処理部30とは、エンジン10から排出された排ガスが流れるライン11で接続される。
【0014】
本実施形態において、流入ガスとは、前処理部30において前処理が実施された後の排ガスと、上流側に配置された分離膜ユニット(例えば、第1分離膜ユニット81)を透過した透過ガスと、のうちどちらか一方が含まれる。例えば、排ガス処理システム1が2つの分離膜ユニットを備える場合、上流側に配置された第1分離膜ユニット81には前処理が実施された後の排ガス、下流側に配置された第2分離膜ユニット91には上流側に配置された第1分離膜ユニット81の透過ガスが流入する。
【0015】
前処理部30は、複数の分離膜ユニット(第1分離膜ユニット81、第2分離膜ユニット91)に流入する流入ガスの前処理を実施する。前処理部30は、流入ガスに含まれるCO以外の不純物の少なくとも一部を処理する。不純物には、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)または粒子状物質(PM(Particulate matter))が含まれてよい。
【0016】
図2は、前処理部の構成の一例を示す図である。前処理部30は、窒素酸化物処理装置31、除塵装置32、硫黄酸化物処理装置33、およびミスト除去装置34を備えている。なお、前処理部30は、上記各窒素酸化物処理装置31、除塵装置32、硫黄酸化物処理装置33、およびミスト除去装置34の少なくとも1つを有する構成に変更してもよい。
【0017】
窒素酸化物処理装置31は、エンジン10から排出される排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を処理する。窒素酸化物(NOx)を処理するとは、窒素酸化物(NOx)を除去することを指してよい。窒素酸化物処理装置31は、脱硝装置であってよい。該脱硝装置は、例えば選択式触媒還元脱硝(SCR(Selective Catalytic Reduction))装置である。なお、前処理部30が窒素酸化物処理装置31を有することに代えて、エンジン10が排気再循環(EGR(Exhaust Gas Recirculation))の機能を有していてもよい。
【0018】
除塵装置32は、窒素酸化物処理装置31を経た後の排ガスに含まれる粒子状物質(PM)を除去する。除塵装置32は、電気集塵機(ESP(Electrostatic Precipitator))、ディーゼル・パーティキュレート・フィルタ(DPF(Diesel Paticulate Filter))または活性炭フィルタであってよい。
【0019】
硫黄酸化物処理装置33は、除塵装置32を経た後の排ガスに含まれる硫黄酸化物(SOx)を処理する。硫黄酸化物(SOx)を処理するとは、硫黄酸化物(SOx)を除去することを指してよい。排ガス処理システム1が船舶に搭載される場合、硫黄酸化物処理装置33は、該船舶に搭載される湿式のスクラバであってよい。
【0020】
ミスト除去装置34は、硫黄酸化物処理装置33を経た後の排ガスに含まれる水分を除去する。ミスト除去装置34は、排ガスに含まれている水分をデミスタによって捕集分離除去する噴霧分離器であってよい。
【0021】
図1に戻り、前処理部30と第1分離膜ユニット81とは、前処理部30にて不純物が除去された流入ガスが流れるライン12で接続される。ライン12にて、前処理部30の下流側であって第1分離膜ユニット81の上流側には、第1計測器21が設けられる。
【0022】
第1計測器21は、第1濃度測定部211および第1流量測定部212を備える。第1濃度測定部211は、CO濃度計とされ、例えば、レーザ式ガス分析計により構成される。第1濃度測定部211は、前処理部30により処理された後の排ガスのCO濃度の変動を連続して測定し、制御部70に出力する。よって、第1濃度測定部211は、第1分離膜ユニット81に導入される前の排ガスのCO濃度を測定している。
【0023】
第1流量測定部212は、例えば、流量計(マスフローメータ等)により構成される。第1流量測定部212は、パラメータとして前処理部30にて処理された後の排ガスの流量(第1流量値)の変動を連続して測定し、制御部70に出力する。よって、第1流量測定部212は、第1分離膜ユニット81に導入される前の排ガスの流量を測定している。
【0024】
また、ライン12にて第1計測器21の下流側であって第1分離膜ユニット81の上流側には、調整弁40が設けられる。調整弁40は、前処理部30にて処理された排ガスの第1分離膜ユニット81への供給量を調整する。よって、調整弁40は、前処理部30を経た排ガスの一部を第1分離膜ユニット81へ供給する場合、残りの排ガスを大気中に排出する機能を有している。
【0025】
第1分離膜ユニット81は、第1圧縮機82、4つの分離系統83a~分離系統83dを備える。図1では、分離系統83a~分離系統83dは4つ備えられているがこの限りではなく、少なくともxつ以上複数(xは2以上の整数)備えていればよい。
【0026】
第1圧縮機(圧力調整部)82は、エンジン10から排出されて前処理部30を経た排ガスを圧縮し、第1分離膜ユニット81を構成する4つの分離系統83a~分離系統83dでの受入圧力にまで排ガスを昇圧することができる性能を有する。具体的には、第1圧縮機82は、第1分離膜ユニット81を構成する4つの分離系統83a~分離系統83dの分圧を合計した受入圧力にまで排ガスを昇圧することができる。よって、第1圧縮機82は、4つの分離系統83a~分離系統83dに導入される前の排ガスを圧縮している。第1圧縮機82としては、所定の駆動源となるモータによって駆動される羽根車やロータ(何れも不図示)を備えた構成を例示できる。
【0027】
第1圧縮機82と4つの分離系統83a~分離系統83dとは、第1圧縮機82にて昇圧された排ガスが流れる分岐ライン(分岐配管)13で接続される。分岐ライン13は、第1圧縮機82で昇圧された排ガスを4つの分離系統83a~分離系統83dに配分して送出されるように設けられる。
【0028】
複数の分離系統83a~分離系統83dは、本実施の形態では、4つの分離系統を備えている。分離系統83a~分離系統83dは、それぞれ図1中一点鎖線で囲まれる構成とされ、上流側で分岐ライン13に接続され、下流側で集合ライン14に接続される。集合ライン14は1本のライン15に合流して統合され、かかるライン15を介して第2分離膜ユニット91に接続される。これにより、第1分離膜ユニット81において分離回収された流入ガスを第2分離膜ユニット91へ導入させることができる。
【0029】
ここで、本実施の形態では、分離系統83a~分離系統83dは同種の構成が採用される。同種とは、本実施形態において、大きさ、種類、型式のうち少なくとも1つ以上が同じ構成であることを示す。分離系統83a~分離系統83dはそれぞれ、上流側から下流側に向かって直列に順に接続される調整弁84a~調整弁84dおよび、分離部85a~分離部85dを備えている。分離系統83a~分離系統83dは、同種のパーツにより構成される。分離系統83a~分離系統83dは、各分離系統83a~分離系統83dを接続する分岐ライン13に設けられる。
【0030】
調整弁84a~調整弁84dは、本実施の形態では、中間開度で使用せずに全開か全閉で使用する弁構造を採用するが、開度を調整可能な電磁弁により構成することを妨げるものでない。調整弁84a~調整弁84dは、開閉駆動によって分岐ライン13からの流入ガスの導入および導入の停止を切り替える機能を有する。
【0031】
分離部85a~分離部85dはそれぞれ分離膜86a~分離膜86dを備え、第1圧縮機82で昇圧されてから各調整弁84a~調整弁84dを経て導入された流入ガスを、各分離膜86a~分離膜86dによって透過ガスと非透過ガスとに分離する。各分離部85a~分離部85dにて、各分離膜86a~分離膜86dを透過しなかった非透過ガスは、透過した透過ガスに比べてCO濃度が低い酸素および窒素を主とするガスとなり、排出ライン等を介して大気中に排出される。各分離膜86a~分離膜86dを透過した透過ガスはCOを含み、分離部85a~分離部85dに導入前の流入ガスに比べてCO濃度が高くなる。したがって、分離部85a~分離部85dは、分離膜86a~分離膜86dを介して非透過ガスを大気中に排出した分だけ流量を減らしつつCO濃度を高めた流入ガスを下流側の第2分離膜ユニット91に送出する。
【0032】
第1分離膜ユニット81と第2分離膜ユニット91とは、第1分離膜ユニット81から排出された流入ガスが流れるライン15で接続される。ライン15にて、第1分離膜ユニット81の下流側であって第2分離膜ユニット91の上流側には、第2計測器22が設けられる。
【0033】
第2計測器22は、第2濃度測定部221および第2流量測定部222を備える。第2濃度測定部221は、CO濃度計とされ、例えば、レーザ式ガス分析計により構成される。第2濃度測定部221は、第1分離膜ユニット81から排出された直後の流入ガスのCO濃度の変動を連続して測定し、制御部70に出力する。よって、第2濃度測定部221は、第2分離膜ユニット91に導入される前の流入ガスのCO濃度を測定している。
【0034】
第2流量測定部222は、例えば、流量計により構成される。第2流量測定部222は、パラメータとして第1分離膜ユニット81から排出された直後の流入ガスの流量(第2流量値)の変動を連続して測定し、制御部70に出力する。よって、第2流量測定部222は、第2分離膜ユニット91に導入される前の流入ガスの流量を測定している。
【0035】
第2分離膜ユニット91は、第2圧縮機92、4つの分離系統93a~分離系統93dを備える。図1では、分離系統93a~分離系統93dは4つ備えられているがこの限りではなく、yつ以上複数(yは2以上かつx未満を満たす整数)備えていればよい。上流側に配置された第1分離膜ユニット81においては、分離膜86a~分離膜86dを透過しなかった流入ガスの一部は大気中に排出される。したがって、下流側に配置された第2分離膜ユニット91に流入される流入ガスの流量は、上流側の第1分離膜ユニット81に流入される流入ガスの流量よりも少なくなる。このため、下流側の第2分離膜ユニット91を構成する分離系統93a~分離系統93dの機器数を上流側の第1分離膜ユニット81を構成する分離系統83a~分離系統83dの機器数よりも少なく構成することができる。例えば、第1分離膜ユニット81の分離系統83a~分離系統83dを通過する流入ガス流量が二分の一となる場合には、第2分離膜ユニット91を構成する分離系統93a~分離系統93dは、2つに設定することができる。これにより、製造コストの低減と設置コストの低減を図ることができる。
【0036】
第2圧縮機(圧力調整部)92は、第1分離膜ユニット81から排出された流入ガスを圧縮し、第2分離膜ユニット91を構成する4つの分離系統93a~分離系統93dでの受入圧力にまで流入ガスを昇圧することができる性能を有する。具体的には、第2圧縮機92は、第2分離膜ユニット91を構成する4つの分離系統93a~分離系統93dの分圧を合計した受入圧力にまで流入ガスを昇圧することができる。よって、第2圧縮機92は、4つの分離系統93a~分離系統93dに導入される前の流入ガスを圧縮している。第2圧縮機92としては、所定の駆動源となるモータによって駆動される羽根車やロータ(何れも不図示)を備えた構成を例示できる。
【0037】
第2圧縮機92と4つの分離系統93a~分離系統93dとは、第2圧縮機92にて昇圧された流入ガスが流れる分岐ライン(分岐配管)16で接続される。分岐ライン16は、第2圧縮機92で昇圧された流入ガスを4つの分離系統93a~分離系統93dに配分して送出されるように設けられる。
【0038】
複数の分離系統93a~分離系統93dは、本実施の形態では、4つの分離系統を備えている。分離系統93a~分離系統93dは、それぞれ図1中一点鎖線で囲まれる構成とされ、上流側で分岐ライン16に接続され、下流側で集合ライン17に接続される。集合ライン17は1本のライン18に合流し、かかるライン18を介して液化部60に接続される。
【0039】
ここで、本実施の形態では、分離系統93a~分離系統93dは同種の構成が採用される。また、第2分離膜ユニット91を構成する分離系統93a~分離系統93dは、第1分離膜ユニット81を構成する分離系統83a~分離系統83dと同種のパーツを採用することができる。これにより、パーツを複数種類作成する必要がなくなるため、製造コストの低減を図ることができる。
【0040】
分離系統93a~分離系統93dはそれぞれ、上流側から下流側に向かって直列に順に接続される調整弁94a~調整弁94dおよび、分離部95a~分離部95dを備えている。分離系統93a~分離系統93dは、同種のパーツにより構成される。分離系統93a~分離系統93dは、各分離系統93a~分離系統93dを接続する分岐ライン16に設けられる。
【0041】
調整弁94a~調整弁94dは、本実施の形態では、中間開度で使用せずに全開か全閉で使用する弁構造を採用するが、開度を調整可能な電磁弁により構成することを妨げるものでない。調整弁94a~調整弁94dは、開閉駆動によって分岐ライン16からの流入ガスの導入および導入の停止を切り替える機能を有する。
【0042】
分離部95a~分離部95dはそれぞれ分離膜96a~分離膜96dを備え、第2圧縮機92で昇圧されてから各調整弁94a~調整弁94dを経て導入された流入ガスを、各分離膜96a~分離膜96dによって透過ガスと非透過ガスとに分離する。各分離部95a~分離部95dにて、各分離膜96a~分離膜96dを透過しなかった非透過ガスは、透過した透過ガスに比べてCO濃度が低い酸素および窒素を主とするガスとなり、排出ライン等を介して大気中に排出される。各分離膜96a~分離膜96dを透過した透過ガスはCOを含み、分離部95a~分離部95dに導入前の流入ガスに比べてCO濃度が高くなる。したがって、分離部95a~分離部95dは、分離膜96a~分離膜96dを介して非透過ガスを大気中に排出した分だけ流量を減らしつつCO濃度を高めた流入ガスを下流側の液化部60に送出する。1台の第2圧縮機92のみで昇圧してから各調整弁94a~調整弁94dを経て導入した流入ガスを、各分離膜96a~分離膜96dによって透過ガスと非透過ガスとに分離することができるため、圧縮機を最低限の数で構成することができ、省スペースが可能で、かつ、運転制御の簡素化を図ることができる。
【0043】
集合ライン17と液化部60とを接続するライン18には、第3計測器23が設けられる。
【0044】
第3計測器23は、第3濃度測定部231および第3流量測定部232を備える。第3濃度測定部231は、CO濃度計とされ、例えば、レーザ式ガス分析計により構成される。第3濃度測定部231は、第2分離膜ユニット91から排出された直後の流入ガスのCO濃度の変動を連続して測定し、制御部70に出力する。よって、第3濃度測定部231は、液化部60に導入される前の流入ガスのCO濃度を測定している。
【0045】
第3流量測定部232は、例えば、流量計により構成される。第3流量測定部232は、パラメータとして第2分離膜ユニット91から排出された直後の流入ガスの流量(第3流量値)の変動を連続して測定し、制御部70に出力する。よって、第3流量測定部232は、液化部60に導入される前の流入ガスの流量を測定している。
【0046】
液化部60は、導入される流入ガスと冷媒との間で熱交換を行う熱交換器を備えて構成することが例示できる。液化部60は、少なくとも流入ガスに含まれるCOが凝縮して液化され、好ましくは、COが液化し、酸素および窒素が気体に維持された状態とする。液化部60は、気液分離器およびタンクを更に備え、上述した状態の流入ガスをオフガスと液化COとに分離し、オフガスは大気中に排出し、液化COをタンクに貯留する。
【0047】
制御部70は、第1圧縮機82および第2圧縮機92のモータ、第1分離膜ユニット81および第2分離膜ユニット91等に接続され、第1圧縮機82、第2圧縮機92の駆動を制御する機能等を有する。制御部70は、例えば、第1圧縮機82、第2圧縮機92のモータの回転数を制御するインバータを有している。制御部70は、第1分離膜ユニット81、第2分離膜ユニット91それぞれの調整弁84a~調整弁84d、調整弁94a~調整弁94dに接続され、調整弁84a~調整弁84d、調整弁94a~調整弁94dの開閉駆動を制御する。制御部70には、第1計測器21を構成する第1濃度測定部211、第1流量測定部212、第2計測器22を構成する第2濃度測定部221、第2流量測定部222、第3計測器23を構成する第3濃度測定部231、第3流量測定部232の測定値がそれぞれ出力される。制御部70は、第1計測器21~第3計測器23の測定値に基づき、第1圧縮機82、第2圧縮機92および各調整弁84a~調整弁84d、調整弁94a~調整弁94dの何れか一方の駆動状態の制御や、各調整弁84a~調整弁84d、調整弁94a~調整弁94dの駆動状態の制御をすると共に第1圧縮機82、第2圧縮機92の駆動状態を制御する。制御部70の具体的制御については後述する。
【0048】
ここで、図1中二点鎖線で囲まれる第1分離膜ユニット81、第2分離膜ユニット91、第2計測器22および制御部70を備えて分離ユニット50が構成される。分離ユニット50は、貨物運搬用のコンテナ等によって構成される単一の筐体に、上述した各構成を搭載することによって構成される。よって、排ガス処理システム1にて、分離ユニット50毎に設置、運搬、メンテナンスを行うことができる。
【0049】
排ガス処理システム1は、分離膜86a~分離膜86d、分離膜96a~分離膜96dでのCOの分離にあたり、分離系統83a~分離系統83d、分離系統93a~分離系統93d全て、または、任意の少なくとも1つに排ガスを送出することを選択することができる。
【0050】
以下、エンジン10の負荷変動によって排出される排ガスの流量が変化して、第1分離膜ユニット81を構成する第1圧縮機82の駆動および調整弁84a~調整弁84dの運転数、第2分離膜ユニット91を構成する第2圧縮機92の駆動および調整弁94a~調整弁94dの運転数が変化する場合の制御の一例について、図3を用いて説明する。
【0051】
図3は、時間と、第1流量測定部212および第2流量測定部222により測定された流入ガスの流量と、第1分離膜ユニット81を構成する第1圧縮機82の駆動および調整弁84a~調整弁84dの運転数と、第2分離膜ユニット91を構成する第2圧縮機92の駆動および調整弁94a~調整弁94dの運転数との関係の一例を示すグラフである。
【0052】
図3のグラフにて、横軸は時間、縦軸は第1流量測定部212および第2流量測定部222による所定時間間隔毎の流入ガス流量の相対値、および第1圧縮機82、調整弁84a~調整弁84d、第2圧縮機92、調整弁94a~調整弁94dの制御状態を表している。
【0053】
図3に示すように、初期状態の第1流量測定部212に測定される流入ガス流量の測定値が相対値として400とされ、この流入ガス流量の条件下で、第1分離膜ユニット81を構成する分離系統83a~分離系統83dの全てが運転されているものとする。このとき、分離系統83a~分離系統83dの全ての調整弁84a~調整弁84dが開弁した状態を維持するよう制御部70によって制御される。
【0054】
この場合、4つの分離系統83a~分離系統83dには流入ガスが相対値として100ずつ流入され、分離膜86a~分離膜86dにより第1圧縮機82で昇圧された相対値400の流入ガスは、4つの分離系統83a~分離系統83dにおいて相対値として100ずつ分配される。そして、各分離系統83a~分離系統83dを構成する調整弁84a~調整弁84dを経て導入された流入ガスが各分離膜86a~分離膜86dによって透過ガスと非透過ガスとに分離される。本実施形態においては、各分離膜86a~分離膜86dを透過しなかった非透過ガスは、排出ライン等を介して大気中に相対値50の気体として排出される。分離膜86a~分離膜86dを透過した残りの相対値50の各透過ガスは、ライン15に統合されて相対値200の流入ガスとして第2分離膜ユニット91へ導入される。これにより、初期状態の第2流量測定部222に測定される流入ガス流量の測定値が相対値として200とされる。
【0055】
第2流量測定部222に測定される流入ガス流量の測定値が相対値として200とされる流入ガス流量の条件下で、第2分離膜ユニット91を構成する分離系統93a~分離系統93dのうち、分離系統93cおよび分離系統93dのみが運転されているものとする。このとき、分離系統93cおよび分離系統93dの調整弁94cおよび調整弁94dのみが開弁した状態を維持するよう制御部70によって制御される。そして、分離系統93aおよび分離系統93bの調整弁94aおよび調整弁94bが閉弁した状態を維持するよう制御部70によって制御される。
【0056】
この場合、2つの分離系統93cおよび分離系統93dには流入ガスが相対値として100ずつ流入され、分離膜96cおよび分離膜96dにより第2圧縮機92で昇圧された相対値200の流入ガスは、2つの分離系統93cおよび分離系統93dにおいて相対値100ずつ分配される。そして、2つの分離系統93cおよび分離系統93dを構成する調整弁94cおよび調整弁94dを経て導入された流入ガスが各分離膜96cおよび分離膜96dによって透過ガスと非透過ガスとに分離される。本実施形態においては、各分離膜96cおよび分離膜96dを透過しなかった各非透過ガスは、排出ライン等を介して大気中に相対値50の気体として排出される。分離膜96cおよび分離膜96dを透過した残りの相対値50の各透過ガスは、集合ライン17に統合されて相対値100の流入ガスとして液化部60へ導入される。これにより、初期状態の第3流量測定部232に測定される流入ガス流量の測定値が相対値として100とされる。
【0057】
図3のグラフにて所定時間の経過後、第1分離膜ユニット81に流れる第1流量測定部212の測定値の相対値が時間t1から時間t2において400から200に変化される。第1流量測定部212の測定値は制御部70に出力され、第1流量測定部212の測定値の相対値が400から200に変化することにより、時間t2のあとにおける時間t3において第1圧縮機82の駆動が100%から50%へと制限されるよう制御される。
【0058】
第1圧縮機82の駆動が100%から50%へと制限されること対応して時間t4において、制御部70にて第1分離膜ユニット81を構成する分離系統83a~分離系統83dの調整弁84a~調整弁84dの駆動が制御される。具体例としては、分離系統83a~分離系統83dのうち、分離系統83cの調整弁84cおよび分離系統83dの調整弁84dにおける開弁が維持されるよう駆動制御され、その他の分離系統83aの調整弁84a、分離系統83bの調整弁84bが閉じるよう駆動制御される。
【0059】
これにより、エンジン10の負荷変動によって排出される排ガスの流量が変化しても、複数の分離系統83a~分離系統83dからCOを分離するよう運転する分離系統83a~分離系統83dを任意に選択することができる。よって、排ガスの流量が大きくなる程、運転する分離系統83a~分離系統83dの選択数を多くし、排ガスの流量が小さくなる程、運転する分離系統83a~分離系統83dの選択数を少なくすることができ、排ガスの流量変動に追従してCOを分離することができる。これにより、COの排出削減を図りつつ、分離系統83a~分離系統83dの運転数が過剰になることを回避して省エネルギー化を図ることがでる。
【0060】
具体的には、調整弁84a~調整弁84dの駆動制御と共に、分離系統83a~分離系統83dの運転数に応じて第1圧縮機82による排ガスの圧力を調整してもよい。かかる調整は、第1流量測定部212の測定値に基づき、制御部70にて第1圧縮機82のモータの回転数を制御するとよい。第1圧縮機82による排ガスの圧力を適宜調整することで、第1分離膜ユニット81において運転される分離系統83a~分離系統83dでの分離膜86a~分離膜86dによるCOの分離性能を良好に保つことができる。
【0061】
図3のグラフにて第1分離膜ユニット81に流れる第1流量測定部212の測定値の相対値が時間t1から時間t2において400から200へと変化することに対応して、第2分離膜ユニット91に流れる第2流量測定部222の測定値の相対値が時間t1から時間t3において200から100へと変化される。第2流量測定部222の測定値は制御部70に出力され、第2流量測定部222の測定値の相対値が200から100に変化することにより、時間t3のあとの時間t5において第2圧縮機92の駆動が50%から25%へと制限されるよう制御される。
【0062】
第2圧縮機92の駆動が50%から25%へと制限されることに対応して時間t6において、制御部70にて分離系統93a~分離系統93dの調整弁94a~調整弁94dの駆動が制御される。具体例としては、分離系統93a~分離系統93dのうち、分離系統93dの調整弁94dにおける開弁が維持されるよう駆動制御され、分離系統93aの調整弁94aおよび分離系統93bの調整弁94bにおける閉弁が維持されるよう駆動制御され、分離系統93cの調整弁94cが閉じるよう駆動制御される。
【0063】
これにより、エンジン10の負荷変動によって排出される排ガスの流量が変化しても、第1分離膜ユニット81の直後に配置される第2分離膜ユニット91を構成する複数の分離系統93a~分離系統93dからCOを分離するよう運転する分離系統93a~分離系統93dを任意に選択することができる。よって、排ガスの流量が大きくなる程、運転する分離系統93a~分離系統93dの選択数を多くし、排ガスの流量が小さくなる程、運転する分離系統93a~分離系統93dの選択数を少なくすることができ、排ガスの流量変動に追従してCOを分離することができる。これにより、COの排出削減を図りつつ、分離系統93a~分離系統93dの運転数が過剰になることを回避して省エネルギー化を図ることがでる。
【0064】
具体的には、調整弁94a~調整弁94dの駆動制御と共に、分離系統93a~分離系統93dの運転数に応じて第2圧縮機92による流入ガスの圧力を調整してもよい。かかる調整は、第2流量測定部222の測定値に基づき、制御部70にて第2圧縮機92のモータの回転数を制御するとよい。第2圧縮機92による流入ガスの圧力を適宜調整することで、第2分離膜ユニット91において運転される分離系統93a~分離系統93dでの分離膜96a~分離膜96dによるCOの分離性能を良好に保つことができる。
【0065】
また、エンジン10からの排ガスの流量が変動する場合、上記一例とは他の制御として、図4を用いて以下に説明する制御を行ってもよい。図4は、排ガスの流量変動に応じた制御を説明するためのフロー図である。図4のフローでは、エンジン10からの排ガスの流量の変動に対し、排ガスの第1分離膜ユニット81への導入前と、第2分離膜ユニット91での分離後にて、排ガスの流量およびCO濃度を測定して制御を行っている。
【0066】
ここでは、予め、目標とするCOの回収率(以下、「目標回収率SV」とする)を求めて制御部70に記憶しておく。ここでは、予め、目標とするCOの回収率(以下、「目標回収率SV」とする)を求めて制御部70に記憶しておく。また、目標回収率SVから、後述する測定および演算に基づくCOの回収率(以下、「計測回収率PV」とする)を差し引いて算出した偏差eと比較し、制御内容を判断するための閾値を設定しておく。
【0067】
排ガス処理システム1の運転にて、図4のフローのステップS11において、制御部70は、第1濃度測定部211、第1流量測定部212、第3濃度測定部231および第3流量測定部232にて測定が行われた測定値に基づき、計測回収率PVを演算する。かかる計測回収率PVは、以下の式1によって演算される。すなわち、計測回収率PVは、第3流量値および第3濃度値の積と、第1流量値および第1濃度値の積と、の比に基づいて演算される。
【式1】
【0068】
式1は、複数の分離膜ユニットのうち、上流側に接続された第1分離膜ユニット81へ流入される流入ガス中のCO流量と、上流側に接続された第1分離膜ユニット81の下流側に接続された第2分離膜ユニット91を透過した排ガス中のCO流量と、の割合を表す。制御部70は、式1に基づいて算出した計測回収率PVに基づいて、上流側に接続された第1分離膜ユニット81の第1圧縮機82の制御と、分離系統83a~分離系統83dに含まれる調整弁84a~調整弁84dとの開閉を制御する。また、制御部70は、下流側に接続された第2分離膜ユニット91の第2圧縮機92の制御と、分離系統93a~分離系統93dに含まれる調整弁94a~調整弁94dとの開閉を制御する。
【0069】
ステップS12において、制御部70は、ステップS11で演算された計測回収率PVを目標回収率SVに対し差し引いた偏差eを算出する。
【0070】
ステップS13において、制御部70は、ステップS12において算出された偏差eが閾値(第1閾値)以上であるか否かを判定する。閾値は、任意の値を設定することができる。例えば、閾値の任意の値として「0」~「±100」を設定することができる。また、閾値は、目標回収率SVに対する計測回収率PVの任意の割合(%)を設定することができる。例えば、閾値の任意の割合として0.1~数10.0%を設定することができる。
具体的には、エンジン10の負荷に大きな変化がなく、目標回収率SVと計測回収率PVとの間に大きな差がない場合には、偏差eが閾値未満と判定され(ステップS13:NO)、処理はステップS20に進む。
【0071】
これに対し、エンジン10の負荷が低下し、目標回収率SVが計測回収率PVより相当大きくなるか、または、エンジン10の負荷が増大し、計測回収率PVが目標回収率SVより相当小さくなると、偏差eが閾値以上と判定され(ステップS13:YES)、処理はステップS14に進む。
【0072】
ステップS14において、制御部70は、ステップS12で算出した偏差eに基づき、第1圧縮機82の回転数(制御量MV)を制御する。この処理では、制御部70によって第1圧縮機82の回転数が制御され、分離系統83a~分離系統83dに導入される流入ガスの圧力が調整される。図5は、計測回収率PVと目標回収率SVとの偏差eと、第1圧縮機82の回転数との関係の一例を示す図である。図5に示すように、制御部70は、偏差eが小さくなる程、第1圧縮機82の回転数が小さくなるように制御し、偏差eが大きくなる程、第1圧縮機82の回転数が大きくなるように制御する。
【0073】
ステップS15において、制御部70は、ステップS12で算出した偏差eに基づき、第1分離膜ユニット81の調整弁84a~調整弁84dの開閉を制御する。この処理では、制御部70によって調整弁84a~調整弁84dの開閉駆動(制御量MV)が制御され、流入ガスの流量変動に追従して分離系統83a~分離系統83dの運転数が増減される。図6は、計測回収率PVと目標回収率SVとの偏差eと、開閉状態の調整弁の数との関係の一例を示す図である。図6に示すように、制御部70は、偏差eが大きくなる程、開弁状態の調整弁84a~調整弁84dの数が段階的に多くなるように制御し、偏差eが小さくなる程、開弁状態の調整弁84a~調整弁84dの数が段階的に少なくなるように制御する。
【0074】
ステップS16において、制御部70は、ステップS12で算出した偏差eに基づき、第2圧縮機92の回転数(制御量MV)を制御する。この処理では、制御部70によって第2圧縮機92の回転数が制御され、分離系統93a~分離系統93dに導入される流入ガスの圧力が調整される。図7は、計測回収率PVと目標回収率SVとの偏差eと、第2圧縮機92の回転数との関係の一例を示す図である。図7に示すように、制御部70は、偏差eが小さくなる程、第2圧縮機92の回転数が小さくなるように制御し、偏差eが大きくなる程、第2圧縮機92の回転数が大きくなるように制御する。
【0075】
ステップS17において、制御部70は、ステップS12で算出した偏差eに基づき、第2分離膜ユニット91の調整弁94a~調整弁94dの開閉を制御する。この処理では、制御部70によって調整弁94a~調整弁94dの開閉駆動(制御量MV)が制御され、流入ガスの流量変動に追従して分離系統93a~分離系統93dの運転数が増減される。図8は、計測回収率PVと目標回収率SVとの偏差eと、開閉状態の調整弁の数との関係の一例を示す図である。図8に示すように、制御部70は、偏差eが大きくなる程、開弁状態の調整弁94a~調整弁94dの数が段階的に多くなるように制御し、偏差eが小さくなる程、開弁状態の調整弁94a~調整弁94dの数が段階的に少なくなるように制御する。
【0076】
上述のステップS14、ステップS15においては、制御部70は、偏差eに応じて第1圧縮機82の回転数の制御を行った後、各調整弁84a~調整弁84dの開閉制御を行っているがこの限りではない。例えば、制御部70は、偏差eに応じて各調整弁84a~調整弁84dの開閉制御を行った後、偏差eに応じて第1圧縮機82の回転数の制御を行ってもよい。ステップS14、ステップS15において、第1圧縮機82および調整弁84a~調整弁84dの制御の順番を逆とすることで、エンジン10の排圧が高くなることを抑制することができる。
【0077】
同様に、上述のステップS16、ステップS17においては、制御部70は、偏差eに応じて第2圧縮機92の回転数の制御を行った後、各調整弁94a~調整弁94dの開閉制御を行っているがこの限りではない。例えば、制御部70は、偏差eに応じて各調整弁94a~調整弁94dの開閉制御を行った後、偏差eに応じて第2圧縮機92の回転数の制御を行ってもよい。ステップS16、ステップS17において、第2圧縮機92および調整弁94a~調整弁94dの制御の順番を逆とすることで、エンジン10の排圧が高くなることを抑制することができる。
【0078】
ステップS18において、第1濃度測定部211、第1流量測定部212、第2濃度測定部221、第2流量測定部222、第3濃度測定部231および第3流量測定部232にて測定が行われ、測定値が制御部70に出力される。更に詳述すると、ライン11にて第1分離膜ユニット81に導入される前の流入ガスに対し、第1濃度測定部211によりCO濃度が測定され、第1流量測定部212により流量が測定される。また、ライン15にて第1分離膜ユニット81を透過し、第2分離膜ユニット91に導入される前の流入ガスに対し、第2濃度測定部221によりCO濃度が測定され、第2流量測定部222により流量が測定される。また、ライン18にて第2分離膜ユニット91を透過した流入ガスに対し、第3濃度測定部231によりCO濃度が測定され、第3流量測定部232により流量が測定される。
【0079】
この処理では、ステップS14~ステップS17の処理において、偏差eが閾値未満となるように第1圧縮機82、第2圧縮機92、分離系統83a~分離系統83d、分離系統93a~分離系統93dの運転数の制御を行った後、上記の各測定を行っている。また、この処理では、ステップS13の判定処理において、偏差eが閾値未満、すなわち、偏差eが許容範囲内であれば、第1圧縮機82、第2圧縮機92の運転や、分離系統83a~分離系統83d、分離系統93a~分離系統93dの稼働数を維持したまま、上記の各測定を行っている。なお、上述の実施の形態においては、偏差eが閾値未満である場合に、第1濃度測定部211、第1流量測定部212、第2濃度測定部221、第2流量測定部222、第3濃度測定部231および第3流量測定部232による各測定を行っているがこの限りではない。偏差eが閾値以下である場合に、第1濃度測定部211、第1流量測定部212、第2濃度測定部221、第2流量測定部222、第3濃度測定部231および第3流量測定部232の各測定を行ってもよい。この場合、ステップS13の処理において、偏差eが閾値より大きいか否か、すなわち、「偏差>閾値」の関係が成立するか否かが判定される。
【0080】
なお、閾値(第1閾値)より小さい所定の第2閾値(例えば、「0」以下の値)を設定してもよい。ステップS20~ステップS24のフローは、閾値(第1閾値)より小さい所定の第2閾値を設定した場合の排ガスの流量変動に応じた制御を説明するための処理である。
【0081】
偏差が「偏差≦第2閾値」の場合は、計測回収率が目標回収率よりも相当大きいため、計測回収率PVを目標回収率SVに合わせるように第1圧縮機82の回転数を下げる制御を行ってもよい。本実施形態においては、第1閾値として回収量の下限を設定することができ、第2閾値として回収量の上限を設定することができる。
【0082】
例えば、第1閾値として「+5」が設定され、第2閾値として「-10」が設定されている場合において、目標回収率として40%が設定され、計測回収率が55%の場合には、偏差=40-55=「-15」となる。
【0083】
ここで、ステップS13において偏差と第1閾値との関係を判定すると、「偏差≧第1閾値」の関係は、「-15≧5」となるため、ステップS13の判定においてNOとなり、処理は図4のステップS20へ進む。
【0084】
ステップS20の処理において、偏差eは第2閾値以下であるか否かが判定される。ステップS20において偏差と第2閾値との関係を判定すると、「偏差≦第2閾値」の関係は、「-15≦-10」となるため、ステップS20の判定においてYESとなり、処理はステップS21へ進む。なお、ステップS20の判定においてNOとなる場合には、第1圧縮機82、第2圧縮機92の回転数や、第1分離膜ユニット81の調整弁84a~調整弁84d、第2分離膜ユニット91の調整弁94a~調整弁94dの開閉の調整は不要であるため、処理はステップS18へ進む。
【0085】
ステップS21において、制御部70は、ステップS12で算出した偏差eに基づき、第1圧縮機82の回転数(制御量MV)を制御する。この処理では、制御部70によって第1圧縮機82の回転数が制御され、分離系統83a~分離系統83dに導入される流入ガスの圧力が調整される。具体的には、制御部70は、偏差eが小さくなる程、第1圧縮機82および/または第2圧縮機92の回転数を小さくする(回転数を下げる)制御が実行される。
【0086】
ステップS22において、制御部70は、ステップS12で算出した偏差eに基づき、第1分離膜ユニット81の調整弁84a~調整弁84dの開閉を制御する。この処理では、制御部70によって調整弁84a~調整弁84dの開閉駆動(制御量MV)が制御され、流入ガスの流量変動に追従して分離系統83a~分離系統83dの運転数が増減される。具体的には、制御部70は、偏差eが大きくなる程、開弁状態の調整弁84a~調整弁84dの数が段階的に少なくなる(閉める)制御が実行される。
【0087】
ステップS23において、制御部70は、ステップS12で算出した偏差eに基づき、第2圧縮機92の回転数(制御量MV)を制御する。この処理では、制御部70によって第2圧縮機92の回転数が制御され、分離系統93a~分離系統93dに導入される流入ガスの圧力が調整される。具体的には、制御部70は、偏差eが小さくなる程、第2圧縮機92の回転数を小さくする(下げる)制御が実行される。
【0088】
ステップS24において、制御部70は、ステップS12で算出した偏差eに基づき、第2分離膜ユニット91の調整弁94a~調整弁94dの開閉を制御する。この処理では、制御部70によって調整弁94a~調整弁94dの開閉駆動(制御量MV)が制御され、流入ガスの流量変動に追従して分離系統93a~分離系統93dの運転数が増減される。具体的には、制御部70は、偏差eが大きくなる程、開弁状態の調整弁94a~調整弁94dの数が段階的に少なくなる(閉める)制御が実行される。ステップS24の処理が終了すると、処理はステップS18へ進む。
【0089】
図4に示すステップS11~ステップS18の処理、および、ステップS11~S13、S20~S24、S18の処理は、時間Δt毎に繰り返し行われる。よって、時間Δt毎に、第1圧縮機82、第2圧縮機92の運転や、分離系統83a~分離系統83d、分離系統93a~分離系統93dの稼働数を調整するよう制御される。言い換えると、偏差eが許容範囲に収まって、流入ガスの目標回収率SVに計測回収率PVが近似した状態が維持されるようフィードバック制御が行われる。
【0090】
図9は、計測回収率の制御方法の一例を示すブロック図である。図9において、制御部70は加算部71およびPID制御部73を有する。図9において、制御部70による制御対象を制御対象110とする。制御対象110は、第1圧縮機82、第2圧縮機92、調整弁84a~調整弁84d、調整弁94a~調整弁94dの少なくとも一つを含む。図9において、計測回収率PVを演算するための物理量を計測するセンサ等を測定部120とする。測定部120は、第1濃度測定部211、第1流量測定部212、第2濃度測定部221、第2流量測定部222、第3濃度測定部231および第3流量測定部232の少なくとも一つを含む。
【0091】
加算部71は、計測回収率PVと目標回収率SVとの偏差eを算出する。PID制御部73は、偏差eに基づいて制御対象110のPID制御する制御量MVを算出する。制御部70は、制御量MVにより制御対象110を制御してよい。
【0092】
測定部120は、制御量MVにより制御された制御対象110における物理量を計測し、かかる計測による物理量に基づいて、制御部70により計測回収率PVが演算される。
【0093】
このように、本実施の形態によれば、第1濃度測定部211、第1流量測定部212、第2濃度測定部221、第2流量測定部222、第3濃度測定部231および第3流量測定部232の各測定値に基づき、調整弁84a~調整弁84d、調整弁94a~調整弁94dの開閉制御や第1圧縮機82および第2圧縮機92の回転数制御等を行うことで、計測回収率PVを目標回収率SVに近付けて運転することができる。かかる運転での調整弁84a~調整弁84d、調整弁94a~調整弁94dの開閉制御によって、分離系統83a~分離系統83d、分離系統93a~分離系統93dの運転数を選択することができる。これにより、エンジン10の運転負荷だけでなく、段階的に強化される規制や、使用燃料の変化に応じて第1圧縮機82、第2圧縮機92の運転数や、調整弁84a~調整弁84d、調整弁94a~調整弁94dの運転数を増減でき、流入ガスの流量変動に追従してCOを分離してCOの排出量を削減した状態を維持できる。
【0094】
しかも、第1圧縮機82、第2圧縮機92の運転数が過剰になることを回避でき、第1圧縮機82、第2圧縮機92の動力削減を通じてエネルギー消費量の低減を図ることができる。このように、本実施の形態においては、COの排出削減と、効率的なエネルギー消費との両立を図ることができる。
【0095】
上述の実施形態によれば、上流側に配置された第1分離膜ユニット81から排出された流入ガスを下流側に接続した第2分離膜ユニット91を構成する1台の第2圧縮機92で圧縮して下流側の第2分離膜ユニット91を構成する分離膜96a~分離膜96dによりCOを分離することができる。これにより、排ガス処理システム1を構成する圧縮機の数を少なくすることができ、省スペース化を図ることができる。更に、最小限に構成された第2圧縮機92を制御するだけで第2分離膜ユニット91においてCOを分離することができるため運転制御の簡素化を図ることができる。更に、上流側に配置された第1分離膜ユニット81においては、分離膜86a~分離膜86dを透過しなかった流入ガスの一部は大気中に排出される。したがって、下流側に配置された第2分離膜ユニット91に流入される流入ガスの流量は、上流側に配置された第1分離膜ユニット81に流入される流入ガスの流量よりも少なくなるため、下流側の第2分離膜ユニット91を構成する分離系統93a~分離系統93dの機器数を上流側の第1分離膜ユニット81を構成する分離系統83a~分離系統83dの機器数よりも少なく構成することができる。これにより、COの排出削減を図りつつ、コストの低減を図ることができる。
【0096】
更に、上流側に配置された第1分離膜ユニット81を構成する第1圧縮機82および分離膜86a~分離膜86dと、下流側に配置された2段目以降の第2分離膜ユニット91を構成する第2圧縮機92および分離膜96a~分離膜96dの構成を共通化することができるため、排ガス処理システム1を構成する構成機器の部品点数を少なくすることができ、システムの省スペース化を図ることができる。
【0097】
更に、上流側に配置された第1分離膜ユニット81を構成する第1圧縮機82および分離膜86a~分離膜86dと、下流側に配置された2段目以降の第2分離膜ユニット91を構成する第2圧縮機92および分離膜96a~分離膜96dの仕様を共通化することでシステムの簡素化を図ることができる。更に、システムの簡素化により第1分離膜ユニット81および第2分離膜ユニット91を構成する各構成部品の運転制御の簡素化を図ることができる。
【0098】
本発明の実施の形態は上記の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。更には、技術の進歩または派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【0099】
上記各実施の形態では、第1分離膜ユニット81と、第2分離膜ユニット91と、は直列に配置されたものが一組配置されているがこの限りではない。第1分離膜ユニット81と、第2分離膜ユニット91と、を直列に配置した組み合わせを並列に複数接続してもよい。これにより、並列の組み合わせを適宜増減することで、排ガスの処理量の増減に容易に対応することができる。
【0100】
上述の実施形態においては、第2流量測定部222は、第1分離膜ユニット81から排出された直後の流入ガスの流量(第2流量値)の変動を連続して測定し、制御部70に出力する。よって、第2流量測定部222は、第2分離膜ユニット91に導入される前の流入ガスの流量を測定しているがこれに限られない。例えば、上流側に配置された第1分離膜ユニット81から大気中に排出される排出ガス、つまり第1分離膜ユニット81の非透過ガスの流量を測定し、制御部70に第4流量値を出力する第4流量測定部(図示なし)を更に備えてもよい。制御部70は、第1流量測定部212により測定された第1分離膜ユニット81に導入される前の流入ガス(第1流量値)から、第4流量測定部により測定された第1分離膜ユニット81から大気中に排出される排出ガスの流量(第4流量値)を減算することにより、第2分離膜ユニット91に導入される前の流入ガスの流量を算出してもよい。これにより流量測定部の配置の自由度をあげることができる。
【0101】
上述の実施形態においては、第1圧縮機82は、エンジン10から排出されて前処理部30を経た排ガスを圧縮し、第1分離膜ユニット81を構成する4つの分離系統83a~分離系統83dでの受入圧力にまで排ガスを昇圧し、第2圧縮機92は、第1分離膜ユニット81から排出された流入ガスを圧縮し、第2分離膜ユニット91を構成する4つの分離系統93a~分離系統93dでの受入圧力にまで流入ガスを昇圧しているがこれに限られない。例えば、第1分離膜ユニット81の下流に第1真空ポンプ(図示なし)を配置し、第2分離膜ユニット91下流に第2真空ポンプ(図示なし)を配置してもよい。第1真空ポンプ(圧力調整部)により第1分離膜ユニット81を構成する4つの分離系統83a~分離系統83dを減圧し圧力を調整して流入ガスを排出し、第2真空ポンプ(圧力調整部)により第2分離膜ユニット91を構成する4つの分離系統93a~分離系統93dを減圧し圧力を調整して流入ガスを排出してもよい。これにより圧力調整部を構成する圧縮機や真空ポンプの配置の自由度をあげることができる。
【0102】
各分離膜86a~分離膜86d、分離膜96a~分離膜96dは有機材料および無機材料の何れかから選択して構成することが例示できる。有機材料の分離膜としては、高分子や樹脂からなる中空糸状の多孔質材料を用い、無機材料の分離膜としては、酸化シリコン(SiO)またはアルミノ珪酸塩(所謂ゼオライト)からなる中空糸状の材料を用いることが例示できる。
【0103】
具体的には、第1分離膜ユニット81を構成する分離部85a~分離部85dの分離膜86a~分離膜86dが無機材料により構成され、第2分離膜ユニット91を構成する分離部95a~分離部95dの分離膜96a~分離膜96dが有機材料により構成されるとよい。最も上流側となる分離部85a~分離部85dの分離膜86a~分離膜86dは、耐久性の観点から無機材料により構成して交換頻度を少なくし、下流側となる分離部95a~分離部95dの分離膜96a~分離膜96dを安価な有機材料により構成することでコスト的に有利となることを期待できる。
【0104】
また、上述の実施形態においては、計測回収率PVとの閾値を設定しているがこれに限られない。例えば、計測回収率PVに上限と下限を設け、上限と下限の間(許容範囲)収まっているか否かで制御方法を変更してもよい。図10図12は、計測回収率PVと目標回収率SVと、の関係の変形例を示す図である。
【0105】
例えば、図10図12に示すように、目標回収率SVの値よりも大きい計測回収率PVの上限と、目標回収率SVの値よりも小さい計測回収率PVの下限を設定し、制御部70は、計測回収率PVがその上限と下限の間(許容範囲)に収まるか否かにより判断してもよい。
【0106】
図10に示す実施形態においては、目標回収率SVが「40%」であり、上限が目標回収率SVに対して「+7%」で設定され、下限が目標回収率SVに対して「-3%」で設定されている。本実施形態において、計測回収率PVが「44%」の場合、計測回収率PVは上限「47%」と下限「37%」の間(許容範囲)に収まっているため、制御部70は、制御の変更は必要がないと判定し、処理は図4のステップS18以降へ進む。
【0107】
図11に示す実施形態においては、計測回収率PVは「35%」であり、計測回収率PVは上限「47%」と下限「37%」の間(許容範囲)の間に収まっておらず、かつ、計測回収率PVが下限「37%」よりも小さい(すなわち、目標に対して回収量が足りていない)ため、制御部70は、第1圧縮機82および/または第2圧縮機92の回転数を上げる制御を行う。この場合、制御部70は、図4のステップS14~S17の各処理を行う。
【0108】
図12に示す実施形態においては、計測回収率PVは「50%」であり、計測回収率PVは上限「47%」と下限「37%」の間(許容範囲)の間に収まっておらず、かつ、上限「47%」よりも大きい(すなわち、目標よりも回収し過ぎている)ため、第1圧縮機82および第2圧縮機92の回転数を下げる制御を行う。この場合、制御部70は、図4のステップS20~S24の各処理を行う。
【符号の説明】
【0109】
1 :排ガス処理システム
9 :燃料タンク
10 :エンジン
11 :ライン
12 :ライン
13 :分岐ライン
14 :集合ライン
15 :ライン
16 :分岐ライン
17 :集合ライン
18 :ライン
21 :第1計測器
22 :第2計測器
23 :第3計測器
30 :前処理部
31 :窒素酸化物処理装置
32 :除塵装置
33 :硫黄酸化物処理装置
34 :ミスト除去装置
40 :調整弁
50 :分離ユニット
60 :液化部
70 :制御部
71 :加算部
73 :PID制御部
81 :第1分離膜ユニット
82 :第1圧縮機
83a~83d :分離系統
84a~84d :調整弁
85a~85d :分離部
86a~86d :分離膜
91 :第2分離膜ユニット
92 :第2圧縮機
93a~93d :分離系統
94a~94d :調整弁
95a~95d :分離部
96a~96d :分離膜
110 :制御対象
120 :測定部
211 :第1濃度測定部
212 :第1流量測定部
221 :第2濃度測定部
222 :第2流量測定部
231 :第3濃度測定部
232 :第3流量測定部
MV :制御量
PV :計測回収率
SV :目標回収率

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12